(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】食品用包装体および食品用包装体の使用方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/24 20060101AFI20231114BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231114BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231114BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20231114BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B65D81/24 F
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B65D77/04 F
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2017067028
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】森田 涼介
(72)【発明者】
【氏名】岡部 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】外山 達也
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】八木 誠
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-270968(JP,A)
【文献】特開2014-148104(JP,A)
【文献】特開2006-6269(JP,A)
【文献】実開平6-53442(JP,U)
【文献】特開2006-187939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D67/00-79/02, 81/18-81/30, 81/38
B65D85/50-85/52, 85/60, 85/72-85/84, 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を包装するために用いられ、かつ、食品用包装フィルムにより構成された食品用包装体であって、
前記食品用包装体のヒートシール部に対し、当該食品用包装体の内部から着色液を噴霧したとき、毛細管現象により前記着色液が浸透する細孔が存在する食品用包装体であって、
前記細孔に浸透した着色液の長さが0.1mm以上50mm以下であり、
前記細孔の孔径が0.05mm以上2.0mm以下であ
り、
前記食品用包装フィルムが、プロピレン重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された二軸延伸フィルム層と、前記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面に直接接するように設けられたヒートシール層と、を備え、
前記ヒートシール層が最外層であり、かつ、前記ヒートシール層の厚みが0.1μm以上10μm以下であり、
前記食品が乾燥食品を含む食品用包装体。
【請求項2】
請求項
1に記載の食品用包装体において、
前記ヒートシール層が単層である食品用包装体。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の食品用包装体において、
前記ヒートシール層が二軸延伸されている食品用包装体。
【請求項4】
請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の食品用包装体において、
前記ヒートシール層がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン単独重合体から選択される少なくとも一種を含む食品用包装体。
【請求項5】
請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の食品用包装体において、
前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの比が0.50以上0.998以下である食品用包装体。
【請求項6】
請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の食品用包装体において、
前記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の食品用包装体において、
外装包装袋に用いられる食品用包装体。
【請求項8】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の食品用包装体を乾燥食品の包装体に用いる食品用包装体の使用方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の食品用包装体の使用方法において、
前記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体の使用方法。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載の食品用包装体の使用方法において、
前記食品用包装体は外装包装袋に用いる食品用包装体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用包装体および食品用包装体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルムとも呼ぶ。)は、加工性、水蒸気バリア性、透明性、機械的強度および剛性等の性能バランスに優れており、食品を包装するための包装フィルムとして用いられている。
【0003】
このようなOPPフィルムを用いた食品用包装フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2008-73926号公報)および特許文献2(特開2004-82499号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1にはプロピレン単独重合体(A)75~90重量%及び粘着付与剤(D)25~10重量%を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、融点が155℃以上のプロピレン系重合体(B)からなる層を介して融点が125~145℃の範囲のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、上記二軸延伸フィルムの他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが記載されている。
特許文献2には、上記のような構成を有する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは石油樹脂等のフィルム表面への滲み出しを抑制でき、ラミネート強度および防湿性に優れると記載されている。
【0005】
特許文献2には、高結晶化樹脂を10~40重量%と石油樹脂を6~15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする多層樹脂フィルムが記載されている。
特許文献2には、上記のような構成を有する多層樹脂フィルムは優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-73926号公報
【文献】特開2004-82499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OPPフィルムは水蒸気バリア性を有しているもののヒートシール性に劣っている。そのため、OPPフィルムを食品用包装袋等の食品用包装体に用いる場合は、ヒートシール性に優れる無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPフィルムとも呼ぶ。)等をOPPフィルムに積層させる必要があった。OPPフィルムにCPPフィルムをさらに積層させることにより、得られる食品用包装体のヒートシール強度が高まりシール部における水分や酸素の侵入が抑制され、食品用包装体の水蒸気バリア性および酸素バリア性を良好にすることができる。
ここで、OPPフィルムとCPPフィルムとは接着性が悪いため、CPPフィルムは接着剤を利用してOPPフィルムに積層する必要があった。そのため、食品用包装体に用いられるOPPフィルムを用いた食品用包装フィルムは、接着剤を利用してCPPフィルムをさらに積層する工程を含んでいるため製造工程が多く、製造工程の簡略化やコストの点で改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な水蒸気バリア性を有するとともに、コストおよび生産性にも優れた食品用包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、ヒートシール部に毛細管現象により着色液が浸透する細孔が存在するようなヒートシール性に劣る食品用包装体であっても十分な水蒸気バリア性を有しており、食品用包装体として十分に使用できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す食品用包装体および食品用包装体の使用方法が提供される。
【0011】
[1]
食品を包装するために用いられ、かつ、食品用包装フィルムにより構成された食品用包装体であって、
上記食品用包装体のヒートシール部に対し、当該食品用包装体の内部から着色液を噴霧したとき、毛細管現象により上記着色液が浸透する細孔が存在する食品用包装体であって、
上記細孔に浸透した着色液の長さが0.1mm以上50mm以下であり、
上記細孔の孔径が0.05mm以上2.0mm以下である食品用包装体。
[2]
上記[1]に記載の食品用包装体において、
上記食品用包装フィルムが、プロピレン重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された二軸延伸フィルム層と、上記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面に直接接するように設けられたヒートシール層と、を備え、
上記ヒートシール層が最外層であり、かつ、上記ヒートシール層の厚みが0.1μm以上10μm以下である食品用包装体。
[3]
上記[2]に記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層が単層である食品用包装体。
[4]
上記[2]または[3]に記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層が二軸延伸されている食品用包装体。
[5]
上記[2]乃至[4]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン単独重合体から選択される少なくとも一種を含む食品用包装体。
[6]
上記[2]乃至[5]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する上記二軸延伸フィルム層の厚みの比が0.50以上0.998以下である食品用包装体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記食品が乾燥食品を含む食品用包装体。
[8]
上記[7]に記載の食品用包装体において、
上記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
外装包装袋に用いられる食品用包装体。
[10]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の食品用包装体を乾燥食品の包装体に用いる食品用包装体の使用方法。
[11]
上記[10]に記載の食品用包装体の使用方法において、
上記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体の使用方法。
[12]
上記[10]または[11]に記載の食品用包装体の使用方法において、
上記食品用包装体は外装包装袋に用いる食品用包装体の使用方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な水蒸気バリア性を有するとともに、コストおよび生産性にも優れた食品用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施形態の食品用包装体を形成するための食品用包装フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0015】
<食品用包装体>
本実施形態に係る食品用包装体は、食品を包装するために用いられ、かつ、食品用包装フィルムにより構成された食品用包装体であって、上記食品用包装体のヒートシール部に対し、当該食品用包装体の内部から着色液を噴霧したとき、毛細管現象により上記着色液が浸透する細孔が存在する。本実施形態に係る食品用包装体とは、例えば、食品を収容することを目的として使用される包装袋自体または当該袋に食品を収容したものである。また、本実施形態に係る食品用包装体の包装形態は、例えば、周縁の全部又は一部に、熱融着により形成されたヒートシール部を有する三方袋や四方袋、ピロー袋、合掌袋、スティック袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。また、食品用包装体の内部には食品の他に、脱酸素剤等を入れてもよい。
ここで、着色液としては、エージレスシールチェックスプレー(赤色浸透液、三菱ガス化学社製)を用いることができる。食品用包装体の内側からヒートシール部にエージレスシールチェックスプレーを吹きかけると、赤い液が細孔から浸みだしていくことにより、着色液が浸透する細孔を確認することができる。
【0016】
ここで、従来は、ヒートシール部に毛細管現象により着色液が浸透する細孔が存在するようなヒートシール性に劣る食品用包装体は密封性が悪いため、水蒸気バリア性に劣ると考えられており、製品としては採用されず、製造工程において不良品として破棄されていた。
しかし、本発明者らの検討によれば、このような食品用包装体でも、驚くべきことに十分な水蒸気バリア性を有し、食品用包装体として十分に使用できることを見出した。
ここで、本実施形態に係る食品用包装体は密封性に優れる包装体に比べて酸素バリア性に劣っているが、水蒸気バリア性は十分な性能を示している。そのため、水蒸気バリア性は求められるものの、酸素バリア性はあまり求められない食品(例えば、乾燥食品)を包装するための食品用包装体として特に好適に用いることができる。
また、本実施形態に係る食品用包装体は、例えば、ヒートシール性に優れるCPPフィルムを接着剤を用いてさらに積層させる工程を省略できたり、ヒートシールをおこなうときのシール温度や圧力を幅広い条件でおこなったりして生産することができる。そのため、コストおよび生産性にも優れている。
以上から、本実施形態によれば、十分な水蒸気バリア性を有するとともに、コストおよび生産性にも優れた食品用包装体を提供することができる。
【0017】
本実施形態に係る食品用包装体において、上記細孔に浸透した着色液の長さは、食品用包装体の生産性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上であり、水蒸気バリア性の観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下であり、さらに好ましくは25mm以下、さらにより好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0018】
本実施形態に係る食品用包装体において、上記細孔の孔径は、食品用包装体の生産性の観点から、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上、特に好ましくは0.1mm以上であり、水蒸気バリア性の観点から、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下、さらにより好ましくは2.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。
【0019】
本実施形態に係る食品用包装体は水蒸気バリア性が特に求められる乾燥食品に対しても十分な水蒸気バリア性を発揮できるため、乾燥食品を含む食品を包装するための包装体として特に好適に用いることができる。
ここで、本実施形態に係る乾燥食品は乾燥状態または半乾燥状態にある食品(ペットフードも含む)をいう。ここで乾燥状態にある食品とは、食品中の水分量が15質量%以下の食品をいい、半乾燥状態にある食品とは、食品中の水分量が15質量%を超え、50質量%未満の食品をいう。乾燥食品としては、例えば、ナッツ食品類、スナック食品類、シリアル食品類、嗜好品類、乾麺・パスタ類、穀類・穀粉類、乾燥野菜類、菓子類、米菓類、乳製品類、調味料類等を挙げることができる。
これらの中でも、本実施形態の効果をより効果的に得ることができる観点から、乾燥食品としては米菓を含むことが好ましく、醤油でコートされた乾燥米菓および乾燥豆、または表面に醤油でコートされていない煎餅を含むことがより好ましい。
また、本実施形態の効果をより効果的に得ることができる観点から、乾燥食品の水分活性は0.05以上0.3以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る食品用包装体は水蒸気バリア性が求められる外装包装袋に用いることが好ましい。
また、本実施形態に係る食品用包装体が食品、食品を個包装する個包装袋、および複数の個包装袋を包装する外装包装袋により構成される集積包装体に用いられる場合、本実施形態に係る食品用包装体は集積包装体において水蒸気バリア性が求められる外装包装袋に用いることが好ましい。これにより、十分な水蒸気バリア性を有する集積包装体を得ることができる。
【0021】
<食品用包装フィルム>
図1は、本発明に係る実施形態の食品用包装体を形成するための食品用包装フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る食品用包装フィルム100としては、例えば、プロピレン重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された二軸延伸フィルム層101と、二軸延伸フィルム層101の少なくとも一方の面に直接接するように設けられたヒートシール層103と、を備えるフィルムを用いることができる。ここで、ヒートシール層103は最外層であり、かつ、ヒートシール層103の厚みが0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、本実施形態において、二軸延伸フィルム層101の両面にヒートシール層103が設けられる場合、ヒートシール層103の上記厚みは二軸延伸フィルム層101の片面に設けられたヒートシール層103の厚みを示す。
【0022】
上述したように、OPPフィルムは水蒸気バリア性を有しているもののヒートシール性に劣っている。そのため、OPPフィルムを食品用包装袋等の食品用包装体に用いる場合は、ヒートシール性に優れるCPPフィルム等をOPPフィルムに積層させる必要があった。OPPフィルムにCPPフィルムをさらに積層させることにより、得られる食品用包装体のヒートシール強度が高まりシール部における水分や酸素の侵入が抑制され、食品用包装体の水蒸気バリア性および酸素バリア性を良好にすることができる。
ここで、OPPフィルムとCPPフィルムとは接着性が悪いため、CPPフィルムは接着剤を利用してOPPフィルムに積層する必要があった。そのため、食品用包装体に用いられるOPPフィルムを用いた食品用包装フィルムは、接着剤を利用してCPPフィルムをさらに積層する工程を含んでいるため製造工程が多く、製造工程の簡略化やコストの点で改善の余地があった。
【0023】
一方、本実施形態に係る食品用包装フィルム100は、二軸延伸フィルム層101上にヒートシール層103を直接形成することができるため、OPPフィルムとCPPフィルムとの積層フィルムのように接着剤を利用してCPPフィルムをさらに積層する工程を行う必要はなく、製造工程を簡略化することができ、その結果、生産性を向上できる。また、CPPフィルムを用いる必要がないためコストも低減できる。
【0024】
ここで、本実施形態に係る食品用包装フィルム100を用いて作製した食品用包装体は、OPPフィルムとCPPフィルムとの積層フィルムを用いて作製した食品用包装体に比べてヒートシール強度が低く密封性が悪いため酸素バリア性に劣っているが、驚くべきことに密封性が悪くても水蒸気バリア性は十分な性能を示している。そのため、水蒸気バリア性は求められるものの、酸素バリア性はあまり求められない食品(例えば、乾燥食品)を包装するための食品用包装体を構成するフィルムとして特に好適に用いることができる。
【0025】
本実施形態に係る食品用包装フィルム100の厚みは特に限定しないが、水蒸気バリア性、コスト、機械的強度、透明性等の所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、通常は5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上50μm以下であり、より好ましく15μm以上40μm以下である。
食品用包装フィルム100の厚みが上記範囲内であると、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、軽量性等のバランスがより優れる。
【0026】
以下、食品用包装フィルム100を構成する各層について説明する。
【0027】
[二軸延伸フィルム層]
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層101(二軸延伸ポリプロピレン系フィルム層とも呼ぶ。)は、例えば、プロピレン重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成されたフィルムを二軸延伸することにより形成されたものである。
【0028】
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層101の厚みは水蒸気バリア性、コスト、機械的強度、透明性等の所望の目的に応じて任意に設定することができるため特に限定されないが、通常は10μm以上100μm以下であり、好ましくは15μm以上75μm以下であり、より好ましく20μm以上50μm以下である。
二軸延伸フィルム層101の厚みが上記範囲内であると、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、軽量性等のバランスがより優れる。
【0029】
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層101は単層であってもよいし、プロピレン重合体組成物により構成された層が複数積層された構成でもよいが、二軸延伸されてなることが必要である。
【0030】
また、食品用包装フィルム100において、食品用包装フィルム100の全体の厚みに対する二軸延伸フィルム層101の厚みの比が、好ましくは0.50以上0.998以下であり、より好ましくは0.60以上0.99以下であり、より好ましくは0.70以上0.97以下であり、さらに好ましくは0.75以上0.95以下である。
【0031】
(プロピレン重合体組成物)
本実施形態に係るプロピレン重合体組成物はプロピレン重合体を含む。
本実施形態に係るプロピレン重合体組成物すなわち二軸延伸フィルム層101に含まれるプロピレン重合体の含有量は、プロピレン重合体組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、水蒸気バリア性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性等のバランスをより良好にすることができる。
【0032】
(プロピレン重合体)
本実施形態に係るプロピレン重合体は、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中でもエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またブロック共重合体を形成してもよい。エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、プロピレン重合体の全体を100モル%としたとき、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。二軸延伸フィルム層101中のプロピレン重合体は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、耐熱性、水蒸気バリア性、機械的特性および剛性等の性能バランスにより一層優れた二軸延伸フィルム層101を得る観点から、プロピレン重合体としてはプロピレン単独重合体が好ましい。
【0033】
本実施形態に係るプロピレン重合体は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0034】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるプロピレン重合体のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。
【0035】
(その他の成分)
本実施形態に係るプロピレン重合体組成物には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0036】
(プロピレン重合体組成物の調製方法)
本実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0037】
[ヒートシール層]
本実施形態に係る食品用包装フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、二軸延伸フィルム層101の少なくとも一方の面にヒートシール層103を最外層として備える。ヒートシール層103は、二軸延伸フィルム層101の両面に設けられていてもよい。
【0038】
食品用包装フィルム100において、ヒートシール層103の厚みは好ましくは0.1μm以上10μm以下であるが、より好ましくは0.2μm以上9μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上8μm以下、特に好ましくは1μm以上8μm以下である。ここで、ヒートシール層103の厚みとは、二軸延伸フィルム層101の片面に設けられたヒートシール層103の厚みをいう。
ヒートシール層103の厚みが上記下限値以上であることにより、食品用包装フィルム100のヒートシール性を良好にすることができる。
また、ヒートシール層103の厚みが上記上限値以下であることにより、二軸延伸フィルム層101との接着性が向上し、接着剤を用いなくとも二軸延伸フィルム層101上に積層させることが可能となる。すなわち、二軸延伸フィルム層101の表面上に直接接するようにヒートシール層103を設けることが可能となるため、食品用包装フィルム100の製造工程すなわち本実施形態に係る食品用包装体の製造工程を簡略化することができる。
【0039】
食品用包装フィルム100において、一方の面に設けられるヒートシール層103は、単層であることが好ましい。これにより、食品用包装フィルム100の製造工程すなわち本実施形態に係る食品用包装体の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0040】
また、ヒートシール層103は、二軸延伸フィルム層101の二軸延伸前の状態にあるフィルムと同時に二軸延伸されて形成されることが好ましい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すなわち一度の成形で作製した積層フィルムを用いて食品用包装フィルム100を作製することができるため、食品用包装フィルム100の製造工程すなわち本実施形態に係る食品用包装体の製造工程をより一層簡略化することができる。したがって、ヒートシール層103は二軸延伸されていることが好ましい。
【0041】
(ポリオレフィン)
本実施形態に係るヒートシール層103は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成される。ヒートシール層103を構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ヒートシール層103を構成するポリオレフィンとしては、二軸延伸フィルム層101との接着性や、ヒートシール性等のバランスが優れる点から、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン単独重合体から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0042】
本実施形態に係るプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体であり、α―オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これら共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0043】
本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィンの融点は、好ましくは90℃以上170℃以下、より好ましくは95℃以上165℃以下、さらに好ましくは100℃以上163℃以下の範囲にある。ポリオレフィンの融点が上記下限値以上であると、ヒートシール層103の表面のベタツキを抑制することができ、食品用包装フィルム100のブロッキング性を向上させることができる。
また、ポリオレフィンの融点が上記上限値以下であると、食品用包装フィルム100のヒートシール性をより良好にすることができる。
【0044】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。
【0045】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物すなわちヒートシール層103中のポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、二軸延伸フィルム層101との接着性や、ヒートシール性等のバランスをより良好にすることができる。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0047】
また、ヒートシール層103のヒートシール性を良好にする観点から、ヒートシール層103には、粘着付与剤は実質的に含まれないことが好ましい。より具体的には、ヒートシール層103中の粘着付与剤の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましく、特に好ましくは0質量%である。
ここで、粘着付与剤とは、一般的に粘着付与剤として製造・販売されている粘着性を付与する性質を有する樹脂状物質である。
このような粘着付与剤としては、例えば、クロマン・インデン樹脂等のクロマン系樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂およびキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、テルペン樹脂(α,β-ピネン樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体および炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂;上記石油系炭化水素樹脂の水素添加物(水素添加石油系炭化水素樹脂とも呼ぶ。);ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセリン・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジン・エステル、特殊ロジン・エステルおよびロジン系粘着付与剤等のロジン系樹脂等を挙げることができる。
【0048】
(ポリオレフィン系樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0049】
<食品用包装フィルムの製造方法>
本実施形態に係る食品用包装フィルム100は、例えば、二軸延伸フィルム層101を形成するための上記プロピレン重合体組成物と、ヒートシール層103を形成するための上記ポリオレフィン系樹脂組成物と、をフィルム状に共押出し成形して得た積層フィルムを、公知の同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法を用いて二軸延伸することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、多層T-ダイ押出機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。二軸延伸の条件は、例えば、公知のOPPフィルムの製造条件を採用することができる。より具体的には、逐次二軸延伸法では、例えば、縦延伸温度を100℃~145℃、縦延伸倍率を4.5~6倍の範囲、横延伸温度を130℃~190℃、横延伸倍率を9~11倍の範囲にすればよい。
また、本実施形態に係る食品用包装フィルム100は、二軸延伸フィルム層101とヒートシール層103をそれぞれ別々に成形し、これらを積層して加熱成形することによっても得ることができる。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態を付記する。
[1]
食品を包装するために用いられ、かつ、食品用包装フィルムにより構成された食品用包装体であって、
上記食品用包装体のヒートシール部に対し、当該食品用包装体の内部から着色液を噴霧したとき、毛細管現象により上記着色液が浸透する細孔が存在する食品用包装体。
[2]
上記[1]に記載の食品用包装体において、
上記細孔に浸透した着色液の長さが0.1mm以上50mm以下である食品用包装体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の食品用包装体において、
上記細孔の孔径が0.05mm以上5.0mm以下である食品用包装体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記食品用包装フィルムが、プロピレン重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された二軸延伸フィルム層と、上記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面に直接接するように設けられたヒートシール層と、を備え、
上記ヒートシール層が最外層であり、かつ、上記ヒートシール層の厚みが0.1μm以上10μm以下である食品用包装体。
[5]
上記[4]に記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層が単層である食品用包装体。
[6]
上記[4]または[5]に記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層が二軸延伸されている食品用包装体。
[7]
上記[4]乃至[6]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記ヒートシール層がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン単独重合体から選択される少なくとも一種を含む食品用包装体。
[8]
上記[4]乃至[7]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する上記二軸延伸フィルム層の厚みの比が0.50以上0.998以下である食品用包装体。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
上記食品が乾燥食品を含む食品用包装体。
[10]
上記[9]に記載の食品用包装体において、
上記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の食品用包装体において、
外装包装袋に用いられる食品用包装体。
[12]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の食品用包装体を乾燥食品の包装体に用いる食品用包装体の使用方法。
[13]
上記[12]に記載の食品用包装体の使用方法において、
上記乾燥食品の水分活性が0.05以上0.3以下である食品用包装体の使用方法。
[14]
上記[12]または[13]に記載の食品用包装体の使用方法において、
上記食品用包装体は外装包装袋に用いる食品用包装体の使用方法。
【実施例】
【0051】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0052】
1.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)プロピレン重合体
PP1:プロピレン単独重合体(MFR:3g/10分、融点:157℃、プライムポリマー社製)
PP2:プロピレン・エチレンランダム共重合体(MFR:6g/10分、融点:109℃、プライムポリマー社製)
【0053】
2.測定および評価方法
(1)プロピレン重合体のMFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0054】
(2)プロピレン重合体の融点
DSC(示差走査熱量計)を用いて得られた、プロピレン重合体のDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。
【0055】
(3)水蒸気バリア性
実施例および比較例でられた食品用包装袋を40℃、湿度90%RHの条件で72時間保管した。保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m2・24h))をそれぞれ算出した。
【0056】
(4)細孔評価、
実施例および比較例でられた食品用包装袋の内側からヒートシール部に対してエージレスシールチェックスプレー(赤色浸透液、三菱ガス化学社製)を約5mL噴霧した。
次いで、エージレスシールチェックスプレーを噴霧したヒートシール部を鉛直方向下方にして袋を吊り下げ、0.5時間放置した。その後、ヒートシール部を観察し、毛細管現象により着色液が浸透する細孔の有無、細孔の孔径、細孔に浸透した着色液の長さ、細孔の数をそれぞれ評価した。
【0057】
(5)生産性
食品用包装袋の生産性を以下の基準で評価した。
○:ヒートシール条件の範囲を広くできる(毛細管現象により着色液が浸透する細孔を塞ぐためにヒートシール温度や圧力を上げる必要がない)
×:ヒートシール条件の範囲を広くできない(毛細管現象により着色液が浸透する細孔を塞ぐためにヒートシール温度や圧力を上げる必要がある)
【0058】
[実施例1~12および比較例1]
二軸延伸フィルム層(厚み:27μm)を形成するためのPP1およびヒートシール層(厚み:3μm)を形成するためのPP2を共押出成形し、次いで、二軸延伸処理することで食品用包装フィルムを作製した。共押出成形条件および二軸延伸処理条件は以下のとおりである。
多層押出成形機:60mmφ多層T-ダイ押出成形機(L/D=27、スクリュー精機株式会社製)
押出設定温度:200~250℃、加工速度:13.5m/min
縦延伸温度:110~120℃
縦延伸倍率:5.0倍
横延伸温度:140~170℃
横延伸倍率:10.0倍
次いで、食品用包装フィルムをヒートシール層が内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした。ここで、ヒートシール部の一方に幅が0.3mm~5mmのPETフィルム(厚み12μm)をそれぞれ挟み込んでヒートシールをそれぞれおこなった。PETフィルムを抜き取った後、内容物として塩化カルシウムを入れた。次いで、もう1方をヒートシールして表面積が0.01m2になるように食品用包装袋を作製した。これにより細孔の孔径が0.3mm以上5.0mm以下である実施例1~12の食品用包装袋をそれぞれ得た。なお、比較例1の食品用包装袋は、PETフィルムを挟み込まない以外は実施例1~12と同様にして食品用包装袋を得た。
ここで、ヒートシール部に挟むPETフィルムの幅を調整することにより細孔の孔径を調整した。また、ヒートシール部に挟むPETフィルムの数を調整することにより細孔の数を調整した。
なお、ヒートシールの条件は以下の通りである。
ヒートシール温度:120℃
ヒートシール時間:0.5秒
ヒートシール圧力:1.0kgf
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
ヒートシール部に着色液が浸透する細孔が存在する実施例の食品用包装体は、このような細孔が存在しない比較例の食品用包装体と同等の水蒸気バリア性を有していた。このことから、本実施形態に係る食品用包装体は、十分な水蒸気バリア性を有していることが理解できる。
【符号の説明】
【0063】
100 食品用包装フィルム
101 二軸延伸フィルム層
103 ヒートシール層