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特許7384559高周波用封止材樹脂組成物および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】高周波用封止材樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20231114BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231114BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231114BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20231114BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20231114BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20231114BHJP
   C08L 61/20 20060101ALI20231114BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08G59/62
C08K3/013
C08K5/13
C08K5/3445
C08K5/357
C08K5/544
C08L61/20
C08L63/00 B
H01L23/30 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019015931
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122115
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇津野 智久
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 駿
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160427(JP,A)
【文献】特開平11-060898(JP,A)
【文献】特開2000-327882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181857(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105743(WO,A1)
【文献】特開2000-154225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08K,C08L,H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)ベンゾオキサジン樹脂と、(C)フェノール硬化剤と、(D)硬化促進剤と、(E)無機充填剤とを含む樹脂組成物であって、
前記(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、及び(C)フェノール硬化剤の合計100質量%に対し、(A)エポキシ樹脂の含有量が5~30質量%、(B)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が45~83.1質量%、(C)フェノール硬化剤の含有量が5~20質量%であり、
前記(B)ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン樹脂であり、
【化1】

(一般式(1)中、Xは炭素数1~10のアルキレン基、下記一般式(2)で表される基、-SO-、-CO-、酸素原子又は単結合であり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基である。複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(一般式(2)中、Xaは芳香環を有する炭素数6~30の炭化水素基であり、mは0~6の整数である。)
下記測定条件による120秒での硬化度が0.35以上0.55未満、150秒での硬化度が0.50以上0.75未満であり、
前記樹脂組成物の硬化物の70GHzにおける比誘電率が3.40以下である高周波用封止材樹脂組成物。
(硬化度の測定条件)
キュラストメータを用いて、金型温度175℃、成形時間300秒の条件で、前記樹脂組成物を硬化させる際に、成形時間120秒、及び150秒におけるトルク値を測定し、下記式(1)及び(2)よりそれぞれの硬化度を算出する。
硬化度120=トルク値120/トルク値300 (1)
硬化度150=トルク値150/トルク値300 (2)
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基当量(a)、
前記(B)ベンゾオキサジン樹脂が有するベンゾオキサジンが開環した際に生じる水酸基に基づく水酸基当量(b)、
前記(C)フェノール硬化剤が有する水酸基当量(c)、
としたときの当量比[((b)+(c))/(a)]が1.5~20であることを特徴とする請求項に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)硬化促進剤の含有量が前記樹脂組成物全量に対し0.05~2質量%であり、前記(E)無機充填剤の含有量が前記樹脂組成物全量に対し70~95質量%であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)硬化促進剤がイミダゾール化合物及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【請求項5】
更に(F)下記一般式(3)で表される珪素含有トリアジン化合物を含み、該(F)珪素含有トリアジン化合物の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し0.05~2質量%であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【化3】

(一般式(3)中、aは3~10の整数であり、bは0~2の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルキルイミノ基、アリールイミノ基又はイミノアルキルシリル基、Rはアルキル基又はアルコキシ基、Rはアルコキシ基である。)
【請求項6】
基板と、該基板上に搭載された半導体素子と、該半導体素子を封止した請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用封止材樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの送電信号の高周波化が進んでおり、関連部材を高周波領域(10GHz~70GHz)で使用する場合、低誘電率の封止材が要求されている。封止材にベンゾオキサジン樹脂を用いると、通常封止材で使用されるエポキシ樹脂やフェノール樹脂よりも誘電率が低くなることが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、ベンゾオキサジン樹脂は硬化しにくく、特定の触媒で200℃以上の高温で成形しないと完全には硬化しない。そのため、金型汚れの原因となり連続成形ができず、信頼性の低下を招くこととなる。
【0003】
また、高周波環境で使用される通信機器には、基板上の配線の細線化、高密度化及び搭載部品の小型化されたパッケージ(小型・軽量PKG)及びモジュールが用いられる。また、車載用の基板では高信頼性が要求されている。しかし、ベンゾオキサジン樹脂は高粘度のため、小型・軽量PKG及びモジュールの封止の際、狭小部への充填性低下や、成形物中にボイドが発生する等の問題がある。また、ベンゾオキサジン樹脂は剛直な骨格のため脆いという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献2では、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂2~87重量%、エポキシ樹脂3~67重量%及びフェノール樹脂10~31重量%からなり、且つこれら3成分の混合物の150℃での溶融粘度が2P以下となる熱硬化性樹脂組成物を必須成分として含有し、この熱硬化性樹脂組成物100重量部に対し、添加剤0.01~35重量部、及び無機質充填材200~1200重量部からなる半導体封止用樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-154225号公報
【文献】特開平11-60898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の封止用樹脂組成物は、高周波環境への適用について検討されておらず、小型・軽量PKG及びモジュールに求められる特性、狭小部への充填性、ボイドの抑制等が十分なものではない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、狭小部への高充填性及びボイドの発生を抑制し成形性に優れるとともに、耐リフロー性及び密着性に優れた硬化物を得ることができる高周波用封止材樹脂組成物及び該樹脂組成物により封止された高信頼性の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の測定条件により測定される120秒における硬化度及び150秒における硬化度がそれぞれ特定の範囲内であり、かつ硬化物の70GHzにおける比誘電率が特定の値以下である高周波用封止材樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本願開示は、以下に関する。
[1](A)エポキシ樹脂と、(B)ベンゾオキサジン樹脂と、(C)フェノール硬化剤と、(D)硬化促進剤と、(E)無機充填剤とを含む樹脂組成物であって、
下記測定条件による120秒での硬化度が0.35以上0.55未満、150秒での硬化度が0.50以上0.75未満であり、
前記樹脂組成物の硬化物の70GHzにおける比誘電率が3.40以下である高周波用封止材樹脂組成物。
(硬化度の測定条件)
キュラストメータを用いて、金型温度175℃、成形時間300秒の条件で、前記樹脂組成物を硬化させる際に、成形時間120秒、及び150秒におけるトルク値を測定し、下記式(1)及び(2)よりそれぞれの硬化度を算出する。
硬化度120=トルク値120/トルク値300 (1)
硬化度150=トルク値150/トルク値300 (2)
[2]前記(B)ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン樹脂である上記[1]に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【0010】
【化1】

(一般式(1)中、Xは炭素数1~10のアルキレン基、下記一般式(2)で表される基、-SO-、-CO-、酸素原子又は単結合であり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基である。複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
【化2】

(一般式(2)中、Xaは芳香環を有する炭素数6~30の炭化水素基であり、mは0~6の整数である。)
[3]前記(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基当量(a)、
前記(B)ベンゾオキサジン樹脂が有するベンゾオキサジンが開環した際に生じる水酸基に基づく水酸基当量(b)、
前記(C)フェノール硬化剤が有する水酸基当量(c)、
としたときの当量比[((b)+(c))/(a)]が1.5~20であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高周波用封止材樹脂組成物。
[4]前記(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、及び(C)フェノール硬化剤の合計100質量%に対し、(A)エポキシ樹脂の含有量が5~35質量%、(B)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が45~90質量%、(C)フェノール硬化剤の含有量が5~20質量%であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の高周波用封止材樹脂組成物。
[5]前記(D)硬化促進剤の含有量が前記樹脂組成物全量に対し0.05~2質量%であり、前記(E)無機充填剤の含有量が前記樹脂組成物全量に対し70~95質量%であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載の高周波用封止材樹脂組成物。
[6]前記(D)硬化促進剤がイミダゾール化合物及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれかに記載の高周波用封止材樹脂組成物。
[7]更に(F)下記一般式(3)で表される珪素含有トリアジン化合物を含み、該(F)珪素含有トリアジン化合物の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し0.05~2質量%であることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれかに記載の高周波用封止材樹脂組成物。
【0012】
【化3】

(一般式(3)中、aは3~10の整数であり、bは0~2の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルキルイミノ基、アリールイミノ基又はイミノアルキルシリル基、Rはアルキル基又はアルコキシ基、Rはアルコキシ基である。)
[8]基板と、該基板上に搭載された半導体素子と、該半導体素子を封止した上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、狭小部への高充填性及びボイドの発生を抑制し成形性に優れるとともに、耐リフロー性及び密着性に優れた硬化物を得ることができる高周波用封止材樹脂組成物及び該樹脂組成物により封止された高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、一実施形態を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
<高周波用封止材樹脂組成物>
本実施形態の高周波用封止材樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、(A)エポキシ樹脂と、(B)ベンゾオキサジン樹脂と、(C)フェノール硬化剤と、(D)硬化促進剤と、(E)無機充填剤とを含む樹脂組成物であって、
下記測定条件による120秒での硬化度が0.35以上0.55未満、150秒での硬化度が0.50以上0.75未満であり、
前記樹脂組成物の硬化物の70GHzにおける比誘電率が3.40以下であることを特徴とする。
(硬化度の測定条件)
キュラストメータを用いて、金型温度175℃、成形時間300秒の条件で、前記樹脂組成物を硬化させる際に、成形時間120秒、及び150秒におけるトルク値を測定し、下記式(1)及び(2)よりそれぞれの硬化度を算出する。
硬化度120=トルク値120/トルク値300 (1)
硬化度150=トルク値150/トルク値300 (2)
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、120秒での硬化度が0.35以上0.55未満であり、好ましくは0.35以上0.50以下である。120秒での硬化度が0.35未満であると樹脂組成物の硬化が十分に進行しないので、連続成型性が悪くなるおそれがある。一方、120秒での硬化度が0.55以上であると流動性が悪くなり、ボイドが発生するそれがある。
【0017】
また、本実施形態の樹脂組成物は、150秒での硬化度が0.50以上0.75未満であり、好ましくは0.52以上0.70以下である。150秒での硬化度が0.50未満であるとスティッキングが起き成型性が悪くなるおそれがある。一方、150秒での硬化度が0.75以上であると流動性が悪くなり、ボイドが発生するおそれがある。
【0018】
上記120秒での硬化度及び150秒での硬化度は、キュラストメータを用いて、金型温度175℃、成形時間300秒の条件で、上記樹脂組成物を硬化させる際に、成形時間120秒、及び150秒におけるトルク値を測定し、下記式(1)及び(2)より算出することができる。
硬化度120=トルク値120/トルク値300 (1)
硬化度150=トルク値150/トルク値300 (2)
なお、120秒での硬化度及び150秒での硬化度は、いずれも(D)硬化促進剤の種類及び含有量を適宜調整することにより上述の範囲内とすることができる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の70GHzにおける比誘電率は3.40以下であり、好ましくは3.30以下である。下限値は特に限定されないが好ましくは2.80以上である。上記硬化物の70GHzにおける比誘電率が3.40を超えると伝送損失が大きくなり高周波領域での通信が阻害されるおそれがある。また、該樹脂組成物により封止された半導体装置を高周波領域(10GHz~70GHz)で使用することが困難となる。
上記比誘電率は、JIS C2138:2007に準じて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、比誘電は、(B)ベンゾオキサジン樹脂の種類及び含有量を適宜調整することにより、3.40以下に調整することができる。
【0020】
以下、本発明の一実施形態である樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0021】
本実施形態で用いられる(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、その分子量や分子構造等は特に限定されない。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの二量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等の、ナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)エポキシ樹脂としては、中でも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
(A)エポキシ樹脂の軟化点は、好ましくは40~120℃、より好ましくは50~110℃である。この範囲にあると溶融粘度が良好である。
なお、本明細書における軟化点とは、「環球式軟化点」を指し、ASTM D36に準拠して測定された値をいう。
【0023】
また、(A)エポキシ樹脂の融点は、好ましくは50~120℃、より好ましくは60~110℃である。
なお、上記(A)エポキシ樹脂の融点は、示差走査型熱量計(DSC)の吸熱ピークにより測定することができる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、及び(C)フェノール硬化剤の合計100質量%に対し、好ましくは5~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。(A)エポキシ樹脂の含有量が5質量%以上であると樹脂組成物の硬化性が向上し、30質量%以下であると樹脂組成物の硬化物の密着性が向上する。
【0025】
本実施形態で用いられる(B)ベンゾオキサジン樹脂は、(A)エポキシ樹脂及び(C)フェノール硬化剤とともに用いることにより、樹脂組成物の反応開始温度を下げることができ、通常、用いられる封止材の成形温度(175℃前後)で十分に硬化するため、該樹脂組成物の連続成形性及び信頼性を向上させることができる。また、(A)エポキシ樹脂及び(C)フェノール硬化剤は、(B)ベンゾオキサジン樹脂よりも粘度が低いため、(B)ベンゾオキサジン樹脂を単独で用いた場合よりも樹脂組成物の粘度を低下させることができ、充填性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物に柔軟性が付与されるため、脆さが改善される。
【0026】
(B)ベンゾオキサジン樹脂は1分子中にベンゾオキサジン環を2つ以上有し、重合可能な化合物であればよく、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される、1分子中に2個以上のベンゾオキサジン環を含む化合物が好ましく用いられる。
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(1)中、Xは炭素数1~10のアルキレン基、下記一般式(2)で表される基、-SO-、-CO-、酸素原子又は単結合であり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基である。また、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0029】
【化5】

一般式(2)中、Xaは芳香環を有する炭素数6~30の炭化水素基であり、mは0~6の整数である。
【0030】
Xのアルキレン基の炭素数は1~10、好ましくは1~3である。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0031】
及びRの炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基などの1価の炭化水素基が挙げられる。
【0032】
一般式(1)において、Xは、-SO-、-CO-、又は-CH-が好ましく、-CH-がより好ましい。R及びRは、水素原子が好ましい。
【0033】
(B)ベンゾオキサジン樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、及び(C)フェノール硬化剤の合計100質量%に対し、好ましくは45~90質量%、より好ましくは50~85質量%である。(B)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が50質量%以上であると樹脂組成物の硬化物の誘電率を低下させることができ、90質量%以下であると樹脂組成物の硬化物の強度が向上し、カル・ランナー折れの発生を抑制することができる。
【0034】
本実施形態で用いられる(C)フェノール硬化剤は、主として成形性を高める作用を有する。(C)フェノール硬化剤は、上記(A)エポキシ樹脂のエポキシ基と反応し得るフェノール性水酸基を一分子中に2個以上有する公知の硬化剤であれば、特に制限なく使用することができる。
【0035】
(C)フェノール硬化剤としては、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール類及び/又はナフトール類と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、上記フェノール樹脂の2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂であってもよい。(C)フェノール硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)フェノール硬化剤としては、中でも、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂が好ましい。
【0036】
(C)フェノール硬化剤の軟化点は、ブロッキングの観点から、好ましくは50~120℃、より好ましくは60~110℃である。
【0037】
(C)フェノール硬化剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、及び(C)フェノール硬化剤の合計100質量%に対し、好ましくは5~20質量%、より好ましくは5~18質量%である。(C)フェノール硬化剤の含有量が5質量%以上であると樹脂組成物の硬化物の密着性が向上し、20質量%以下であると樹脂組成物の吸水性が低下し、得られる半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物において、水酸基当量とエポキシ基当量の比(当量比)が1.5~20であることが好ましく、2~20であることがより好ましい。当量比が1.5以上であると樹脂組成物の硬化物の密着性が向上し、当量比が20以下であると樹脂組成物の硬化性が良好となる。
なお、エポキシ当量は(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ当量(a)であり、水酸基当量には(C)フェノール硬化剤中の水酸基だけでなく、(B)ベンゾオキサジン樹脂中のベンゾオキサジン環が開環した際に生じる水酸基も含み、上記水酸基当量は、(B)ベンゾオキサジン樹脂が有するベンゾオキサジンが開環した際に生じる水酸基に基づく水酸基当量(b)及び(C)フェノール硬化剤が有する水酸基当量(c)を合計したものである。すなわち、上記当量比は[((b)+(c))/(a)]と表すことができる。また、(B)ベンゾオキサジン樹脂の水酸基当量については、ベンゾオキサジン環が全て開環したと仮定して計算を行う。ベンゾオキサジン環の開環で生じる水酸基は、通常1つである。
【0039】
本実施形態で用いられる(D)硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使用されているものであれば特に制限なく使用される。(D)硬化促進剤としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;これらのシクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物及びこれらの誘導体;2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等のイミダゾール環を有するジアミノ-s-珪素含有トリアジン化合物等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;これらの有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラウブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、硬化性を向上させる観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体が好ましく、特に、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンが好ましい。
(D)硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(D)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~1質量%、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。(D)硬化促進剤の含有量が0.05質量%以上であると実用的な速度で硬化することができ、2質量%以下であるとボイドの発生を抑制することができる。
【0041】
本実施形態で用いられる(E)無機充填剤は、樹脂組成物に一般に使用されている無機充填剤であれば特に制限なく使用できる。(E)無機充填剤としては、具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維等を用いることができる。(E)無機充填剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(E)無機充填剤としては、コストの観点からは溶融シリカが好ましく、また高熱伝導性を高める観点からは、アルミナが好ましい。また、(E)無機充填剤の形状は、成形時の流動性を向上させ、金型の摩耗を抑える観点からは、球形であることが好ましい。特に、コストと性能のバランスを考慮すると、(E)無機充填剤としては溶融シリカを用いることが好ましく、溶融球状シリカを用いることがより好ましい。
【0043】
(E)無機充填剤の平均粒径は0.5~30μmであることが好ましく、3~20μmであることがより好ましい。平均粒径を0.5μm以上とすることにより成形性が良好となり、平均粒径を30μm以下とすることにより充填性が良好となる。
なお、本明細書において、平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができ、同装置で測定された粒度分布において積算体積が50%になる粒径(d50)である。
【0044】
(E)無機充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して好ましくは70~95質量%、より好ましくは80~92質量%である。(E)無機充填剤の含有量が70質量%以上であるとボイドの発生を抑制することができ、95質量%以下であると溶融粘度の増大が抑えられ流動性が向上し、成形性が良好となる。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物は、更に(F)下記一般式(3)で表される珪素含有トリアジン化合物(以下、単に珪素含有トリアジン化合物ともいう)を含むことが、樹脂組成物の硬化物の密着性を高める観点から好ましい。
【0046】
【化6】
【0047】
一般式(3)中、aは3~10の整数であり、bは0~2の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルキルイミノ基、アリールイミノ基又はイミノアルキルシリル基、Rはアルキル基又はアルコキシ基、Rはアルコキシ基である。
【0048】
およびRのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
およびRのアルキルイミノ基としては、例えば、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基等が挙げられる。
およびRのアリールイミノ基としては、例えば、フェニルイミノ基が挙げられる。
【0049】
上記一般式(3)において、RおよびRとしては、アミノ基が好ましい。
【0050】
のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0051】
およびRのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0052】
(F)珪素含有トリアジン化合物は、例えば、下記一般式(4)で表されるアミノアルキルシリル基を含有する有機ケイ素化合物を下記一般式(5)で表されるハロゲン化シアヌルに結合したハロゲン原子の少なくとも1つと反応させることにより製造することができる。ハロゲン化シアヌル上の他の2個のハロゲン原子は、アミノアルキルケイ素化合物と反応させることもできるし、トリアジン環に付着させたままにすることもできる。さらに、これらの2つの残存ハロゲン原子の一方または両方を、水、アンモニアまたは有機第一級アミンと反応させることができる。
【0053】
【化7】
【0054】
一般式(4)中、aは3以上の整数であり、好ましくは3~4の整数、bは0~2の整数であり、Rはアルキル基又はアルコキシ基、Rはアルコキシ基を表す。
【0055】
【化8】
【0056】
一般式(5)中、R~Rは、それぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。
【0057】
一般式(4)で表される有機ケイ素化合物としては、アミノアルキルアルコキシシラン、アミノアルキルアルキルシランおよびアミノアルキルポリシロキサンが好ましく用いられる。
さらに具体的には、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメチルシラン、γ-アミノプロピルフェニルジメチルシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、デルタアミノブチルチエニルジエトキシシラン、デルタアミノブチルジエトキシシラン、デルタアミノブチルフェニルジエトキシシラン、オメガアミノヘキシルトリエチルシランなどが挙げられる。
【0058】
ハロゲン化シアヌルとアミノアルキルケイ素化合物の反応は、不活性ガスの存在下および不活性液体有機溶媒中で反応させることが好ましく、液体有機化合物としては、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、アセトン、エタノール、四塩化炭素などが好ましい。
【0059】
(F)珪素含有トリアジン化合物の含有量は、樹脂組成物全量に対して好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。(F)珪素含有トリアジン化合物の含有量が上記範囲内であると該樹脂組成物の硬化物の密着性をより向上させることができる。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物は、更に(G)クマロン樹脂を含むことが好ましい。該樹脂組成物が(G)クマロン樹脂を含むことで、硬化物の熱時弾性率が低下し、耐リフロー性を向上させることができる。
(G)クマロン樹脂は、応力緩和剤として作用し、樹脂組成物の硬化物の低弾性化に寄与する。(G)クマロン樹脂は、クマロン、インデン、スチレンの共重合体樹脂であり、例えば、下記一般式(6)で表される骨格を有する樹脂を使用することができる。
【0061】
【化9】
【0062】
上記一般式(6)において、u、v及びwは0又は1以上の整数であって、かつu+v≧1を満たす数である。
【0063】
(G)クマロン樹脂の軟化点は90~140℃であることが好ましく、100~140℃であることがより好ましい。(G)クマロン樹脂の軟化点が90℃以上であると硬化物の外観が良好となり、軟化点が140℃以下であると混練時の分散性が良好となり、硬化物内部に発生するボイドを抑制することができる。
【0064】
このようなクマロン樹脂として、ニットレジンクマロンG-90(軟化点90℃)、ニットレジンクマロンG-100(軟化点100℃)、ニットレジンクマロンV-120(軟化点120℃)(以上いずれも、日塗化学(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0065】
(G)クマロン樹脂の含有量は、樹脂組成物全量に対して好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.1~0.5質量%である。(G)クマロン樹脂の含有量が0.1質量%以上であると十分な低弾性化効果が得られ、半田リフロー時に半導体素子やリードフレームと、樹脂組成物の硬化物との界面に発生する応力が緩和され、剥離が発生しにくくなる。一方、(G)クマロン樹脂の含有量が2質量%以下であると硬化性が良好となり、硬化物内部に発生するボイドを抑制することができる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物中、上記(A)~(E)成分の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0067】
本実施形態の樹脂組成物は、必須成分である上記(A)~(E)成分の他に、上記(F)成分及び(G)成分、さらには本発明の効果を阻害しない範囲で、封止用樹脂組成物に一般に配合されるその他の添加剤を必要に応じて配合することができる。その他の添加剤としては、難燃剤;カップリング剤;合成ワックス、天然ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等の離型剤;カーボンブラック、コバルトブルー等の着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の改質剤;ハイドロタルサイト類等の安定剤;イオン捕捉剤等が挙げられる。これらの各添加剤はいずれも、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
カップリング剤の具体例としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、ウレイドシラン系、ビニルシラン系、アルキルシラン系、有機チタネート系、アルミニウムアルコレート系等のカップリング剤が挙げられる。硬化性を向上させる観点からは、中でも、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物全量に対して好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物を調製するにあたっては、(A)エポキシ樹脂、(B)ベンゾオキサジン樹脂、(C)フェノール硬化剤、(D)硬化促進剤、(E)無機充填剤、必要に応じて配合される(F)珪素含有トリアジン化合物、(G)クマロン樹脂及び各種添加剤をミキサー等によって十分に混合(ドライブレンド)した後、熱ロールやニーダ等の混練装置により溶融混練し、冷却後、適当な大きさに粉砕すればよい。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率は、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.6以下、更に好ましくは3.5以下である。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける誘電正接及び70GHzにおける誘電正接は、いずれも0.007以下であることが好ましい。
上記比誘電率及び誘電正接は実施例に記載の方法により求めることができる。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物は、各種電気部品、又は半導体素子等の各種電子部品の、被覆、絶縁、封止等に用いることができる。
【0073】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置は、基板と、該基板上に搭載された半導体素子と、該半導体素子を封止した上記樹脂組成物の硬化物と、を有することを特徴とする。
半導体素子としては、トランジスタ、集積回路、ダイオード、サイリスタ等が例示される。本実施形態の樹脂組成物によって、基板上に搭載された半導体素子等の電子部品を封止する方法としては、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法が用いられる。この成形は、例えば、温度120~200℃、圧力2~20MPaで行うことができる。
【実施例
【0074】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1~12、比較例1~5)
表1に記載の種類及び配合量の各成分を常温(23℃)でミキサーを用いて混合し、熱ロールを用いて70~110℃で加熱混練し、冷却後、粉砕して樹脂組成物を調製した。
なお、表1中、空欄は配合なしを表す。
【0076】
樹脂組成物の調製に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0077】
〔(A)エポキシ樹脂〕
・NC-3000:ビフェニルノボラックエポキシ樹脂(商品名、日本化薬(株)製、エポキシ当量276、軟化58℃)
・YSLV-80XY:ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名、新日鉄住金化学(株)製、エポキシ当量193、融点66℃)
・YX-4000H:ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量192、融点105℃)
【0078】
〔(B)ベンゾオキサジン樹脂〕
・ベンゾオキサジンP-d:一般式(1)において、Xがメチレン基、R及びRが水素原子であるベンゾオキサジン樹脂(商品名、四国化成工業(株)製、水酸基当量(開環時)217、軟化点80℃)
【0079】
〔(C)フェノール硬化剤〕
・HE200C-10:ビフェニル型フェノール樹脂(商品名、エア・ウォーター(株)製、水酸基当量204、軟化点66℃)
・BRG-557:ノボラック型フェノール樹脂(商品名、アイカ工業(株)製、水酸基当量104、軟化点84℃)
・MEHC-7800SS:アラルキル型フェノール樹脂(商品名、明和化成(株)製、水酸基当量172、軟化点65℃)
【0080】
〔(D)硬化促進剤〕
・2MZA-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名、四国化工業(株)製)
・TPP:トリフェニルホスフィン(商品名、北興化学(株)製)
【0081】
〔(E)無機充填剤〕
・FC920G-SQ:溶融球状シリカ(商品名、(株)アドマテックス製、平均粒径5μm)
【0082】
〔(F)珪素含有トリアジン化合物〕
・VD-5:商品名、四国化工業(株)製
【0083】
〔(G)クマロン樹脂〕
・ニットレジンクマロンV-120:商品名、日塗化学(株)製、軟化点120℃
【0084】
〔その他の成分〕
・カップリング剤:Z-6883(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)
・離型剤:カルナバワックス(商品名:カルナバワックス1号、東洋アドレ(株)製)
・安定剤:ALCAMIZER1(商品名、協和化学工業(株)製)
・着色剤:MA-100RMJ(商品名、三菱化学(株)製)
【0085】
以下に示す測定条件により、実施例1~12、及び比較例1~5で調製した樹脂組成物の特性の測定、及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0086】
[評価項目]
(1)硬化度
樹脂組成物の反応率を求めるためにキュラストメータ(キュラストメータ_モデル7、(株)エー・アンド・デイ製)を用いて、硬化度の測定を行った。金型温度175℃、成形時間300秒のキュラストトルクの値を測定し、300秒の時のトルク値を100%としたときの、120秒及び150秒のトルク値から下記式(1)及び(2)よりそれぞれの硬化度を算出した。
硬化度120=トルク値120/トルク値300 (1)
硬化度150=トルク値150/トルク値300 (2)
【0087】
(2)比誘電率、誘電正接
樹脂組成物を、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、長さ15mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片について、Qメータ(横川ヒューレットパッカード(株)製)、PNAネットワークアナライザー(N5227A、N5261A、(株)キーエンス製)を用いて、JIS C2138:2007に準じて、下記測定条件により、周波数1MHz、10GHz、70GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。
(測定条件)
・測定方法:同軸励振平衡形円板共振器法
・測定原理:円板中央部から同軸励振線で電界結合した平衡形円板共振器の内部に励振される
・TMOmOモード(m=1,2,3・・・)の共振特性より比誘電率、誘電正接を算出する。
・試料形状:平板 50mm角 (厚みは0.4~0.5mm)
・測定環境:温度24℃、湿度40%RH
なお、70GHzにおける比誘電率は3.4以下であり、10GHzにおける比誘電率は3.7以下を合格とする。また、10GHz及び70GHzにおける誘電正接は、いずれも0.007以下を合格とする。
【0088】
(3)ガラス転移温度(Tg)
樹脂組成物を、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、長さ15mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片について、熱機械分析装置(TMA/SS150、(株)島津製作所製)を用いて、昇温速度5℃/分、空気中で圧縮測定により分析を行い、熱機械分析(TMA)曲線を得た。得られたTMA曲線の60℃及び240℃の接線の交点における温度を読み取り、この温度をガラス転移温度(単位:℃)とした。
【0089】
(4)熱時弾性率
樹脂組成物を、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、長さ30mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片について、動的粘弾性試験装置(DMS6100、セイコーインスツル(株)製)を用いて、DMS法により曲げ弾性率を測定した。測定条件は、支点間距離20mm、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、曲げモードにより30℃~300℃まで測定し、260℃における曲げ弾性率を求めた。この値を、熱時弾性率(単位:GPa)とした。
【0090】
(5)密着性
トランスファー成形機内の金型に、Cuリードフレーム((株)三井ハイテック製、商品名:KLF-125)を配置し、Cuリードフレーム上に樹脂組成物を充填し、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形し、さらに175℃、8時間の後硬化を行って、直径3.5mmのプリン状成形物を得た。ボンドテスター(SS-30WD、西進商事(株)製)を用いて、Cuリードフレーム上に成形した直径3.5mmのプリン状成形物を、成形品の下部より0.1mmの高さから速度5mm/分でせん断方向に引き剥がし、成形物とCuリードフレームとの密着力を測定した。これを4回行い、平均値を求めた。測定温度は25℃と260℃である。なお、測定温度25℃においては6.5MPa以上を合格とし、260℃においては1.5MPa以上を合格とする。
【0091】
(6)成形性(充填性、ボイド、カル・ランナー折れ)
樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形した後、得られた成形品20個の外観を目視観察し、金型と半導体素子間の狭小部の未充填部の発生を下記の基準で評価した。
また、得られた成形品3ショット分(6フレーム)の外観を目視で観察するとともに、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、商品名:FS300II)により内部及び外部におけるボイドの発生状況を観察した。さらに、カル・ランナー折れの発生の有無を調べた。これらを、以下の基準により判定した。
(充填性)
〇:未充填部分がない
×:未充填部分がある
(ボイド)
○:ボイドの発生なし
△:直径0.5mm以下のボイドが発生
×:直径0.5mm超のボイドが発生
(カル・ランナー折れ)
○:なし
×:あり
【0092】
(7)連続成形性
成形金型(30mm×30mm×1.0mm)を使用し、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、成形時間120秒の条件にて、樹脂組成物を連続成形した。連続成形を50回行うごとに成形した金型表面の汚れを目視で観察し、下記の基準により連続成形性の評価を行った。
〇:100回以上連続成形可
△:50回までは連続成形可、100回まで連続成形不可
×:50回まで連続成形不可
【0093】
(8)耐リフロー性(1)
樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃で、成形時間2分間の条件でトランスファー成形し、成形品32個を得た。得られた成形品32個に、175℃で、8時間の後硬化を行った後、30℃、相対湿度60%RH、192時間の吸湿処理を行った。その後、260℃の赤外線リフロー炉内で加熱し、冷却後、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、商品名:FS300II)により、樹脂硬化物とフレームとの界面、及び樹脂硬化物と半導体チップとの界面における剥離の有無を調べ、剥離が発生した数(NG数)を計数した。
【0094】
耐リフロー性(2)
樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃で、成形時間2分間の条件でトランスファー成形し、成形品32個を得た。得られた成形品32個に、175℃で、8時間の後硬化を行った後、85℃、相対湿度85%RH、168時間の吸湿処理を行った。その後、260℃の赤外線リフロー炉内で加熱し、冷却後、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、商品名:FS300II)により、樹脂硬化物とフレームとの界面、及び樹脂硬化物と半導体チップとの界面における剥離の有無を調べ、剥離が発生した数(NG数)を計数した。
【0095】
【0096】
特定の測定条件により測定される120秒における硬化度及び150秒における硬化度がそれぞれ特定の範囲内であり、かつ硬化物の70GHzにおける比誘電率が特定の値以下である実施例1~12の高周波用封止材樹脂組成物は、いずれも充填性が高く、ボイドの発生及びカル・ランナー折れがなく、成形性に優れるとともに、当該樹脂組成物の硬化物はいずれも耐リフロー性及び密着性に優れることがわかる。