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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】オフセット型ファスナ取付システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20231114BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20231114BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20231114BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20231114BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20231114BHJP
   F16B 19/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B23P19/06 N
B64F5/10
B64C1/00 A
B23P21/00 303Z
F16B4/00 J
F16B19/08 C
F16B19/08 D
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019038342
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2019195900
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】15/923,378
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】クオック トゥン チャン
(72)【発明者】
【氏名】タンニ シスコ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エム.レイド
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー マーティン デブリン
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202008014886(DE,U1)
【文献】特開2004-130443(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02628565(EP,A1)
【文献】米国特許第06158666(US,A)
【文献】特表平04-504081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
B64F 5/10
B64C 1/00
F16B 4/00
F16B 17/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体上で移動可能に配置されるプラットフォームと、
前記プラットフォームに接続されたオフセット型カラー取付部と、を含み、前記オフセット型カラー取付部は、回転軸を中心として回転可能であり、前記回転軸からずれた位置において取付用のカラーを保持して、係合部を備えるボルトに前記カラーを固定し、その際、前記オフセット型カラー取付部は、前記回転軸からずれた位置に枢動
それぞれが前記プラットフォームに接続された前記オフセット型カラー取付部、真空システム、及びセンサシステムは、前記回転軸を中心として一体的に回転する、ファスナ取付システム。
【請求項2】
前記オフセット型カラー取付部は、
前記ボルトを受容するために、前記位置で前記カラーを保持するように構成されたカラー保持部と、
前記カラーを前記ボルトに固定するように構成された係合形成部と、を含む、請求項1に記載のファスナ取付システム。
【請求項3】
前記プラットフォームに接続された移動システムをさらに含み、前記移動システムは、前記オフセット型カラー取付部に接続されており、前記プラットフォームの前記回転軸を中心として前記オフセット型カラー取付部を動かすように構成されている、請求項1又は2に記載のファスナ取付システム。
【請求項4】
前記移動システムは、
前記オフセット型カラー取付部に接続されるとともに、前記回転軸を中心として動くように構成されたベアリングアセンブリと、
前記ベアリングアセンブリに接続されたギアリングと、
前記ギアリングに対して移動可能に接続された駆動アセンブリと、を含み、前記駆動アセンブリの移動により、前記ギアリングを介して前記ベアリングアセンブリが移動する、請求項3に記載のファスナ取付システム。
【請求項5】
前記オフセット型カラー取付部は、第1オフセット型カラー取付部であって、さらに、
前記プラットフォームに接続された交換アセンブリを含み、前記第1オフセット型カラー取付部は、前記交換アセンブリに着脱可能に接続されており、前記第1オフセット型カラー取付部は、ツールを用いることなく、第2オフセット型カラー取付部との交換が可能である、請求項1~のいずれかに記載のファスナ取付システム。
【請求項6】
前記プラットフォームは、前記構造体に取り付けられる可撓性軌条システム、双軌条システム、又は、可撓性真空軌条システムのうちの少なくとも1つのシステム上を移動するように構成されている、請求項1~のいずれかに記載のファスナ取付システム。
【請求項7】
前記プラットフォーム及び前記オフセット型カラー取付部は、前記構造体の内側モールドライン側に設けられた内側モールドライン用マシンを形成しており、さらに、
前記構造体の外側モールドライン側から、ピンを孔に挿入するように構成された外側モールドライン用マシンを含む、請求項1~のいずれかに記載のファスナ取付システム。
【請求項8】
ファスナを取り付けるための方法であって、
オフセット型カラー取付部を用いてファスナを孔に取り付けるために、構造体の張出部に対する前記構造体上の位置を自動的に検出し、
前記回転軸を中心として前記位置まで前記オフセット型カラー取付部を動かして、前記
ファスナにおけるカラーが前記孔の上方における前記位置で保持されるようにし、前記オフセット型カラー取付部は、プラットフォームに接続されるとともに、前記回転軸を中心として回転可能であり、
前記カラーを、前記孔に挿入されたボルトの係合部に固定
その際、前記オフセット型カラー取付部は、前記回転軸からずれた位置に枢動し、
それぞれが前記プラットフォームに接続された前記オフセット型カラー取付部、真空システム、及びセンサシステムは、前記回転軸を中心として一体的に回転する、方法。
【請求項9】
前記位置は、前記構造体における張出部の下方である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記構造体上の前記プラットフォームを、前記構造体における前記孔まで移動させる、請求項又はに記載の方法。
【請求項11】
前記ボルトはピンであり、
前記カラーの保持は、前記オフセット型カラー取付部におけるカラー保持部を用いて、前記孔に挿入された前記ピンの前記係合部に対して前記カラーを加締めるために前記カラーを保持することを含み、その際、前記カラーは、前記カラー保持部によって前記回転軸からずれた前記位置で保持され、
前記ボルトに対する前記カラーの固定は、前記カラーを加締めて前記ピンにおける前記係合部と係合させるように構成された前記オフセット型カラー取付部における加締アセンブリを用いて、前記カラーを前記ピンに加締めることを含む、請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記プラットフォームに接続された移動システムを用いて、前記回転軸を中心として前記オフセット型カラー取付部を動かすことをさらに含み、前記移動システムは、前記オフセット型カラー取付部に接続されている、請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ボルトは、ピンテールを有するピンであって、さらに、
前記カラーを前記ピンに加締めた後、前記真空システムを用いて、前記孔の周りの砕片又は前記ピンから分離された前記ピンテールのうちの少なくとも一方を除去することを含む、請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記プラットフォーム及び前記オフセット型カラー取付部は、前記構造体の内側モールドライン側に設けられた内側モールドライン用マシンを形成しており、さらに、
外側モールドライン用マシンを用いて、前記構造体の外側モールドライン側からピンを前記孔に挿入することを含む、請求項13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、製造システムに関し、具体的には、ファスナを取り付けるための方法、装置、及び、システムに関する。より具体的には、本開示は、航空機の構造体にファスナを取り付けるための自動化された方法、装置、及び、システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
航空機の製造においては、航空機を形成するために多数のコンポーネントの組み立てが行われうる。例えば、中型商用ジェット機の形態をとる航空機は、当該ジェット機を形成するために製造されて組み立てられる数百万個の部品を有しうる。
【0003】
アセンブリ及びサブアセンブリを含む構造体を形成するための部品の組み立てには、ファスナが用いられる場合がある。航空機を組み立てるための工場レベルの自動化には、穿孔及びファスナの挿入の自動化が含まれる。例えば、航空機の胴体の様々なセクションの接合は、ロボットや可撓性軌条クローラ(flex track crawlers)などの装置を利用して自動化することができる。
【0004】
航空機の胴体は、胴体断面形状の一連のフープ状フレームが長手方向のストリンガに取り付けられたモノコック又はセミモノコックのシェルを含みうる。この構造体は、スキン材料で覆われている。最近の大型航空機の多くには、いくつかの大型のセクションが用いられており、これらのセクションを固定、リベット留め、又は、接着することにより接合して、航空機の完全な胴体が形成される。
【0005】
航空機の組み立てに必要なファスナの数は天文学的な数字になりうる。例えば、中型商用ジェット機は、様々な部品を接合するために取り付けられる数百万個のファスナを有しうる。
【0006】
このように多数のファスナを用いる場合、ファスナの取り付けに必要な時間が長くなり過ぎる可能性がある。また、航空機の部品、アセンブリ、サブアセンブリ、及び、他の構造体の形状が様々であるため、ファスナの取り付けを自動化するための装置が即座に接触してしまう可能性もある。さらに、ファスナのための孔の配向精度もファスナの取り付けの自動化をより困難にする可能性がある。
【0007】
ファスナ孔は、自動マシンで穿孔された場合であっても、穿孔される表面に対して完全に垂直でないことが多い。これらの孔は許容範囲内であれば、製造用途としては全く問題がない。しかしながら、挿入されたファスナの角度(angularity)によっては、孔に対する挿入後のファスナ端部の横ずれが顕著になりうる。
【0008】
横ずれは、ボルトの法線から外れた角度と、ボルトが孔を越えて延びる長さとの関数である。この横ずれを迅速且つ自動的に補正することは、ボルトに対してカラーを自動的に取り付ける場合、特に、張り出した構造によってスペースが制限される場合には、困難であろう。
【0009】
例えば、孔内のボルトが設定された許容範囲よりも表面に対する法線から外れている場合、自動装置は、構造体の内側モールドライン(inner mold line)側でボルトを受容できる位置までカラーを上手く移動させることができないかもしれない。この結果、自動装置の使用が制限されてしまい、いくつかの孔については人間の作業者が手動でファスナを取り付けなければならなかったり、自動装置によるファスナの取り付けにかかる時間が長くなったりする可能性がある。
【0010】
したがって、上述した問題のうちの少なくともいくつかと、その他の考えられる問題を考慮にいれた方法及び装置を有することが望ましい。例えば、ファスナの取り付けの自動化に関する技術的問題を克服する方法及び装置を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本開示の実施形態においては、ファスナ取付システムが提供される。当該ファスナ取付システムは、構造体上で移動可能に配置されたプラットフォームと、前記プラットフォームに関連付けられたオフセット型カラー取付部と、を含む。前記オフセット型カラー取付部は、回転軸を中心として回転可能であり、前記回転軸からずれた位置において取付用のカラーを保持して、係合部を備えるボルトに前記カラーを固定し、その際、前記オフセット型カラー取付部は、前記回転軸からずれた位置に枢動する。
【0012】
本開示の他の実施形態においては、ファスナを取り付けるための方法が提供される。オフセット型カラー取付部を用いてファスナを孔に取り付けるために、構造体の張出部に対する前記構造体上の位置が自動的に検出される。前記オフセット型カラー取付部は、回転軸を中心として前記位置まで動かされ、前記ファスナにおけるカラーが、前記孔の上方における前記位置で保持される。前記オフセット型カラー取付部は、プラットフォームに接続されるとともに、前記回転軸を中心として回転可能である。前記カラーは、前記孔におけるボルトの係合部に固定される。
【0013】
上記特徴及び機能は、本開示の様々な実施形態において個別に実現可能であり、また、他の実施形態との組み合わせも可能である。この詳細については、以下の記載と図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
例示的な実施形態に特有のものと考えられる新規の特徴は、添付の請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施形態、並びに、好ましい使用形態、さらに、その目的及び特徴は、本開示の例示的な実施形態について後述する詳細な説明を、添付図面と併せて参照することにより最もよく理解されるであろう。
【0015】
図1】例示的な実施形態による、ファスナ取付システムがファスナを取り付ける製造環境を示すブロック図である。
図2】例示的な実施形態による、ファスナが取り付けられる製造環境を示すブロック図である。
図3】例示的な実施形態による、ファスナ取付システムにおける内側モールドライン用マシンを示す図である。
図4】例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシンを示す底面図である。
図5】例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシンの一部を示す図である。
図6-15】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるために動作する内側モールドライン用マシンを示す図である。
図16-18】例示的な実施形態による、オフセット型カラー取付部を接続するための処理を示す図である。
図19】例示的な実施形態による、構造体の孔におけるピンを示す図である。
図20-26】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための改善された処理を示す図である。
図27】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートである。
図28】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートである。
図29】例示的な実施形態による、ファスナを動かすための処理を示すフローチャートである。
図30】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートである。
図31】例示的な実施形態による、カラーを位置決めするための処理を示すより詳細なフローチャートである。
図32】例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシン及び外側モールドライン用マシンを用いてファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートである。
図33】例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートである。
図34】例示的な実施形態による、データ処理システムを示すブロック図である。
図35】例示的な実施形態による、航空機の製造及び保守方法を示すブロック図である。
図36】例示的な実施形態を実施可能な航空機を示すブロック図である。
図37】例示的な実施形態による、製品管理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態においては、1つ又は複数の異なる事項が認識及び考慮されている。例えば、例示的な実施形態においては、構造体における張出部の下方に位置する孔にファスナを取り付ける場合があることが認識及び考慮されている。例示的な実施形態においては、既存のファスナ取付システムの高さでは、構造体における張出部の下方の孔にファスナを取り付けるのが不可能な場合もあることが認識及び考慮されている。例えば、既存のファスナ取付システムを用いてこれらの領域にカラーを自動的に取り付けることは非常に困難である。例示的な実施形態においては、ファスナ取付システムの高さが高すぎて、張出部の下方に入らない場合があることが認識及び考慮されている。例えば、張出部を有する構造体は、当該構造体の内部に胴体フレームや他の構造体を含む場合があり、これらは、自動的にファスナを取り付けることを困難にする制限的な構造を有しうる。例えば、既存のファスナ取付システムを用いる場合、胴体の内部におけるボルトの端部にカラーを自動的に取り付けることができない場合がある。
【0017】
したがって、例示的な実施形態においては、ファスナを取り付けるための方法、装置、及び、システムが提供される。一例においては、ファスナ取付システムは、プラットフォームとオフセット型カラー取付部とを含む。プラットフォームは、構造体上で移動可能に配置される。オフセット型カラー取付部は、プラットフォームに接続されている。
【0018】
1つのコンポーネントが他のコンポーネントと「接続して」いる場合、この接続は、物理的に関連付けられたものである。例えば、オフセット型カラー取付部などの第1コンポーネントは、プラットフォームなどの第2コンポーネントに対する固定、接着、搭載、溶接、締結、又は、他の適切な方法での接続、のうちの少なくとも1つにより、当該第2コンポーネントに物理的に接続していると看做すことができる。第1コンポーネントは、第3コンポーネントを用いて、第2コンポーネントにさらに接続されてもよい。第1コンポーネントは、第2コンポーネントの一部、第2コンポーネントの延出部、又は、これら両方として形成することにより、第2コンポーネントと物理的に接続されると看做してもよい。
【0019】
上記例においては、オフセット型カラー取付部は、回転軸からずれた位置で取付用のカラーを保持して、係合部を備えるボルトに前記カラーを固定する。オフセット型カラー取付部は、回転軸を中心として回転して、上記位置に移動する。
【0020】
さらに、例示的な実施形態においては、孔の配向、又は、ボルトが孔に挿入される態様によっては、カラーが、構造体の表面に対して法線方向にはない場合があるが、カラーが取り付けられたということは、それは許容範囲内であることが認識及び考慮されている。すなわち、孔の中心を通って延びる軸は、構造体の表面に対して法線方向にない。例えば、孔を通る中心線は、内側モールドライン面に対する垂線から角度がずれていてもよい。この状況は、外部モールドラインドリルやデザイン設計などによって生じうる。例示的な実施形態においては、最大5°までであれば、カラーは、内側モールドライン面からずれた角度で配置されていてもよく、この場合も構造上の要件を満たすことが認識及び考慮されている。これらの実施形態においては、さらに、フランジが内側モールドライン面に接触する単一フランジタイプのカラーは、カラー配向の影響を受けやすいことが認識及び考慮されている。加締ツールは、(3°未満の)ずれ角(off angle)で加締め処理を行うことができるが、この場合も要件を満たすことができる。
【0021】
例示的な実施形態においては、現在、ファスナにおいて、ピンの形態のボルトが構造体の外側モールドライン側から挿入され、孔を介して構造体の内側モールドライン側まで貫通し、この状態でピンが完全に固定されることが認識及び考慮されている。
【0022】
例示的な実施形態においては、ファスナにおけるカラーが内側モールドライン側におけるピンの端部に向かって動かされ、当該ピンが、孔を介してカラーに受容されることが認識及び考慮されている。カラーは加締め処理されて、ピンの係合部と係合する。
【0023】
例示的な実施形態においては、ボルトが内側モールドライン面に対して法線方向にない場合、自動装置を用いたファスナが困難になりうることが認識及び考慮されている。例示的な実施形態においては、ボルトが、設定された許容範囲よりも法線から外れている場合、自動装置は、構造体の内側モールドライン側でピンを受容するためにカラーを正しく移動できないことが認識及び考慮されている。
【0024】
したがって、例示的な実施形態においては、カラー及びピンなどのファスナを取り付けるための方法、装置、及び、システムが提供される。一例においては、ファスナを取り付けるための方法が提示される。この方法においては、ファスナのピンを外側モールドライン側から孔に挿入する前に、ワークピースの内側モールドライン側における孔にファスナのカラーを配置する。また、この方法においては、ピンが外側モールドライン側から孔に挿入されている状態で、カラーがピンのロック部に係合するように当該カラーを加締める。
【0025】
ここで図面を参照すると、特に図1には、例示的な実施形態による、ファスナ取付システムがファスナを取り付ける製造環境を示すブロック図が示されている。この図示例においては、製造環境100は、ファスナ取付システム120により、オブジェクト106のための構造体104に対してファスナ102を取り付けることのできる環境である。
【0026】
ファスナ102は、ボルト108とカラー110とを含む。この図示例においては、ボルト108は、ピン、ピンテール(pin-tail)を有するピン、ねじ付ボルト、及び、ロックボルトからなる群から選択することができる。
【0027】
図示のように、ボルト108は、係合部112を含む。係合部112は、例えば、ねじ山、一組の突起、一組の溝、フランジ、又は、一組の環状溝であってもよいし、カラー110と係合して、当該カラー110とボルト108とを互いに固定することが可能な他の適切なタイプの特異部であってもよい。カラー110は、フランジ付カラー、ねじ付カラー、ナット、及び、ボルト108を受容してこれに固定される他の適切な構造体からなる群から選択することができる。
【0028】
構造体104は、複数の異なる形態をとることができる。例えば、構造体104は、アセンブリ、サブアセンブリ、胴体セクション、翼、ウィングボックス、水平安定板、着陸ギアシステム、油圧システム、外板パネル、ストリンガ、胴体セクション、複合材胴体セクション、フレーム張出部(frame overhang)を有する支持体、及び、構造体104における2つのコンポーネントを互いに接合するためにファスナ102を取り付けることが可能な他の構造体からなる群から選択することができる。
【0029】
オブジェクト106は、複数の異なる形態をとることができる。例えば、オブジェクト106は、可動式プラットフォーム、固定プラットフォーム、陸上ベースの構造体、水上ベースの構造体、及び、宇宙ベースの構造体であってもよい。より具体的には、オブジェクト106は、水上艦、航空機、戦車、軍用人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家屋、製造施設、建物、及び、他の適切なタイプのオブジェクトであってもよい。
【0030】
図示のように、構造体104は、位置118において孔116を含む。この図示例においては、ファスナ取付システム120は、孔116にファスナ102を挿入して取り付けるように構成されている。この図示例においては、ファスナ取付システム120は、プラットフォーム122とオフセット型カラー取付部124とを含む。
【0031】
ファスナ取付システム120の動作中、プラットフォーム122は、構造体104上で移動可能に配置される。オフセット型カラー取付部124は、プラットフォーム122に接続されている。オフセット型カラー取付部124は、回転軸128からずれた位置126で取付用のカラー110を保持して、係合部112を備えるボルト108にカラー110を固定することができる。図示のように、オフセット型カラー取付部124は、回転軸128からずれた位置126に枢動することができる。例えば、オフセット型カラー取付部124は、回転軸128を中心として回転することにより当該回転軸128からずれた位置126に移動し、ファスナ102を孔116に取り付けることができる。
【0032】
この図示例においては、張出部132は、ファスナ取付システム120の全体が構造体104上を移動して当該張出部132の下方に入ることができないような構造を有しうる。図示のように、オフセット型カラー取付部124は、回転軸128を中心として回転してオフセット位置126に移動するように構成されており、これにより、当該オフセット型カラー取付部124が張出部132の下方に入り込んで、孔116に挿入されたボルト108に対してカラー110を配置及び固定することができるように構成されている。すなわち、オフセット型カラー取付部124の一部は、自動カラー取付システムにおける既存の他のカラー取付部が入ることができない領域、例えば、張出部132の下方や他の制限された領域に、入ることができる。
【0033】
この図示例においては、ファスナ取付システム120は、カラー保持部134と係合形成部136とを含む。図示のように、カラー保持部134は、ボルト108を受容するために、位置126でカラー110を保持するように構成されている。この例においては、カラー110は固定されており、ボルト108が孔116に挿通される。他の例においては、ボルト108は孔116に挿入された状態で固定されており、カラー110が孔116に向かって移動して、ボルト108を受容する。
【0034】
係合形成部136は、カラー110をボルト108に固定するように構成されている。例えば、係合形成部136は、カラー110をボルト108に加締めて、カラー110をボルト108に固定する。他の例においては、係合形成部136は、ボルト108に対してカラー110を回転させて、ボルト108をカラー110に固定する。図示のように、カラー保持部134及び係合形成部136は、オフセット型カラー取付部124を形成している。
【0035】
この例においては、ファスナ取付システム120は、複数の他のコンポーネントを含む。例えば、ファスナ取付システム120は、さらに、移動システム138と、真空システム140と、センサシステム142とを含む。
【0036】
図示のように、移動システム138は、プラットフォーム122に接続されている。移動システム138は、プラットフォーム122又はオフセット型カラー取付部124のうちの少なくともいずれか一方を移動させるように構成することができる。
【0037】
本明細書において、「少なくとも1つの」という語句が、要素の列挙とともに用いられる場合、列挙された要素のうちの1つ又は複数を様々な組み合わせで使用する場合もあるし、列挙された要素のうちの1つのみを必要とする場合もあることを意味する。すなわち、「少なくとも1つの」は、列挙された要素を任意の組み合わせで任意の数だけ使用してもよいが、列挙された要素の全てを必要としない場合もあることを意味する。要素は、特定の対象、物、又は、カテゴリであってもよい。
【0038】
例えば、限定するものではないが、「要素A、要素B、又は、要素Cのうちの少なくとも1つ」は、要素A;要素Aと要素B;又は、要素Bを含みうる。また、この例では、要素Aと要素Bと要素C、又は、要素Bと要素Cを含む場合もある。勿論、これらの要素のあらゆる組み合わせが存在する。いくつかの例において、「少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個の要素Aと、1個の要素Bと、10個の要素C;4個の要素Bと7個の要素C;又は、他の適切な組み合わせであってもよい。
【0039】
例えば、移動システム138は、オフセット型カラー取付部124に接続されており、回転軸128を中心としてオフセット型カラー取付部124を動かすように構成されている。また、移動システム138は、回転軸128を中心としてオフセット型カラー取付部124を動かすことに加えて、さらに、軸144に沿ってプラットフォーム122を移動させるように構成されている。
【0040】
一例においては、移動システム138は、軌条システム146に接続又は配置されていてもよい。図示のように、軸144に沿った移動は、軌条システム146に関するものであってもよい。軸144は、例えば、特定の実施態様に応じて、2軸、3軸、又は、それ以外の数の軸であってもよい。この例においては、プラットフォーム122は、軌条システム146上を移動するように構成されており、当該軌条システムは、構造体104に取り付けられる可撓性軌条システム、双軌条システム、可撓性真空軌条システム、又は、他の適切なタイプのうちの少なくとも1つから選択される。
【0041】
他の例においては、移動システム138は、複数の異なるコンポーネントを用いて、回転軸128を中心としてオフセット型カラー取付部124を動かすことができる。図示のように、移動システム138におけるこれらのコンポーネントは、ベアリングアセンブリ148と、ギアリング150と、駆動アセンブリ152とを含む。
【0042】
図示のように、ベアリングアセンブリ148は、オフセット型カラー取付部124に接続されている。ベアリングアセンブリ148は、回転軸128を中心として動くように構成されている。ギアリング150は、ベアリングアセンブリ148に接続されている。駆動アセンブリ152は、ギアリング150に対して駆動可能に接続されている。この例においては、駆動アセンブリ152は、ギアリング150を駆動させるように構成されている。結果として、駆動アセンブリ152の駆動により、ギアリング150を介してベアリングアセンブリ148が駆動する。
【0043】
この例においては、真空システム140は、プラットフォーム122に接続されている。真空システム140は、孔116の周りの砕片154を除去するように構成されている。砕片は、例えば、孔116の形成により生じる粒子である。他の例においては、ボルト108が、ピンテールを有するピンの形態をとる場合、砕片154は、カラーをピンに加締めた後に当該ピンから分離するピンテールを含みうる。例えば、ボルト108が、ピンテールを有するピンである場合、ピンテールがピンから分離した後、ピンテール偏向器(不図示)が、ピンテールを真空システム140におけるポート(不図示)に誘導するようにしてもよい。
【0044】
この例においては、センサシステム142もまた、プラットフォーム122に接続されている。図示のように、センサシステム142は、ファスナ取付システム120の周囲環境についての情報を検出する物理的なハードウェアシステムである。
【0045】
センサシステム142は、センサデータ156を生成するように構成されている。センサデータ156は、構造体104、オフセット型カラー取付部124の位置、構造体104に対するプラットフォーム122の位置、及び、孔116の画像に関する情報、並びに、ファスナ取付システム120の動作を制御するために使用可能な他の情報を含みうる。センサシステム142は、カメラシステム、レーザセンサ、超音波センサ、光検出・測距スキャナ、又は、他の適切な種類のセンサのうちの少なくとも1つを含みうる。
【0046】
センサデータ156は、コンピュータシステム160に設けられたコントローラ158に送信される。コントローラ158は、ソフトウェア又はハードウェアのうちの少なくとも一方で実施することができる。ソフトウェアを用いる場合、コントローラ158によって実行される動作は、プロセッサユニットなどの、ハードウェア上で動作するように構成されたプログラムコードで実施されてもよい。ファームウェアを用いる場合、コントローラ158によって実行される動作は、永続性メモリに格納され、プロセッサユニットで動作するプログラムコード及びデータで実施されてもよい。ハードウェアを用いる場合、そのハードウェアは、コントローラ158の機能を実行するように動作する回路を含みうる。
【0047】
例示的な実施形態においては、ハードウェアは、回路システム、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス、又は、複数の処理を行うように構成された他の適切なタイプのハードウェアのうちの少なくとも1つから選択された形態をとることができる。プログラマブルロジックデバイスを用いる場合、当該デバイスは、複数の処理を行うように構成してもよい。このデバイスは、後に構成を変更してもよいし、複数の処理を行うように恒久的に構成してもよい。プログラマブルロジックデバイスの例としては、プログラマブルロジックアレイ、プログラマブルアレイロジック、フィールドプログラマブルロジックアレイ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び、他の適切なハードウェアデバイスが挙げられる。また、上記処理は、無機要素と組み合わされた有機要素によって実施してもよいし、人間を除く有機要素によって全体を構成してもよい。例えば、上記処理は、有機半導体の回路として実施してもよい。
【0048】
コンピュータシステム160は、物理的なハードウェアシステムであって、1つ以上のデータ処理システムを含む。データ処理システムが複数ある場合、これらのデータ処理システムは、通信媒体を用いて互いに通信する。通信媒体はネットワークであってもよい。データ処理システムは、コンピュータ、サーバコンピュータ、タブレット、又は、他の適切なデータ処理システムから選択される少なくとも1つである。
【0049】
コントローラ158は、プログラム161を利用してファスナ取付システム120の動作を制御する。プログラム161は、例えば、ファスナ取付システム120の動作制御に使用可能なコンピュータ数値制御(CNC)プログラム、又は、他の適切なプログラムコードであってもよい。例えば、ファスナ取付システム120は、デカルト座標を使用するコンピュータ数値制御(CNC)マシンであってもよい。
【0050】
コントローラ158は、センサデータ156を用いて、ファスナ取付システム120における様々なコンポーネントの動作を制御することができる。コントローラ158及びコンピュータシステム160は、それぞれ異なるコンポーネントとして示されているが、他の実施形態においては、プラットフォーム122に設けられてもよい。
【0051】
さらに、ファスナ取付システム120は、プラットフォーム122に接続された交換アセンブリ162を含みうる。この例においては、オフセット型カラー取付部124は、第1オフセット型カラー取付部164であって、交換アセンブリ162への接続により間接的にプラットフォーム122に接続されている。第1オフセット型カラー取付部164は、交換アセンブリ162に着脱可能に接続されている。このため、第1オフセット型カラー取付部164は、ツール(不図示)を用いることなく、第2オフセット型カラー取付部164との交換が可能である。異なるオフセット型カラー取付部は、異なる寸法又は異なる構成のうちの少なくとも一方を有するファスナを取り付けることができる。すなわち、オフセット型カラー取付部を素早く交換することにより、異なる寸法のファスナを取り付けることができる。
【0052】
さらに、この図示例においては、プラットフォーム122、オフセット型カラー取付部124、移動システム138、真空システム140、及び、センサシステム142は、構造体104の内側モールドライン側170に設けられた内側モールドライン用マシン168を構成している。また、ファスナ取付システム120は、外側モールドライン用マシン172を含み、当該マシンは、構造体104の外側モールドライン側174から、孔116を介して、ピンなどのボルト108を挿入するように構成されている。この図示例においては、外側モールドライン用マシン172はまた、構造体104の孔116に対するファスナ102の取り付けを協調して行うために、コンピュータシステム160におけるコントローラ158によって制御されてもよい。
【0053】
この例においては、張出部132を有する構造体104に対して、孔116の形成、及び、ファスナの取り付けを行う際の技術的な課題を克服する1つ又は複数の技術的解決策が提供されている。図示例においては、内側モールドライン用マシン168の第1高さ176が高すぎて、内側モールドライン用マシン168が、張出部132の下方に入ることができない場合がある。
【0054】
このため、1つ又は複数の技術的解決策においては、オフセット型カラー取付部124が、プラットフォーム122の回転軸128の周りを移動するように当該オフセット型カラー取付部124を構成することにより、技術的効果がもたらされる。オフセット型カラー取付部124は、第1高さ176よりも低い第2高さ178を有する。さらに、第2高さ178は、オフセット型カラー取付部124が回転軸128の周りを枢動して、張出部132の下方の孔116まで移動できるような高さである。すなわち、オフセット型カラー取付部124の第2高さ178は、オフセット型カラー取付部124が、孔116の上方にカラー110を配置するための所定位置に枢動又は回転して、孔116に配置されたボルト108にカラー110を固定することができる程度に低い。この結果、ファスナ取付システム120は、張出部132に対するファスナ取付システムの現状の問題を回避して、ファスナ102を取り付けることができる。
【0055】
次に図2を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナが取り付けられる製造環境を示すブロック図が示されている。製造環境200は、ファスナ取付システム208を利用して、オブジェクト206のための構造体204に対してファスナ202を取り付けることのできる環境である。構造体204及びオブジェクト206は、図1に示す構造104及びオブジェクト106について説明した形態と同様の様々な形態をとることができる。例えば、構造体204は、限定するものではないが、金属構造体、複合材構造体、金属・複合材ワークピース、スプライス(splice)、バットスプライス(butt splice)、2つの胴体セクション用スプライス、又は、他の適切な構造体であってもよい。
【0056】
図示のように、ファスナ202は、ピン214とカラー212とを含む。この図示例においては、ピン214に対してカラー212を加締めることができる。すなわち、カラー212は、ピン214の係合部216と係合するために変形可能である。ピン214は、さらに、ピンテール218を含みうる。この図示例においては、係合部216は、例えば、ねじ山、一組の突起、一組の溝、又は、フランジであってもよいし、カラー212に係合して当該カラー212をピン214に固定することが可能な他のタイプの部材であってもよい。
【0057】
図示のように、ファスナ取付システム208は、カラー212をピン214に係合させるように構成された加締アセンブリ220を含む。この図示例においては、加締アセンブリ220は、図1に示すオフセット型カラー取付部124の一例であり、カラー保持部222と加締ツール224とを含む。カラー保持部222は、カラー212を保持するように構成されている。加締ツール224は、ピン214の係合部216にカラー212を係合させるように構成されている。この例においては、ピン214とピンテール218とがカラー212に挿入される。すなわち、ピン214及びピンテール218は、カラー212が孔232に配置された後、当該カラー212に挿通される。
【0058】
ピンテール218は、ピン214に接続された部品である。この特定の例においては、加締ツール224は、ピンテール218に係合するとともに、カラー212を通してピン214を引っ張り、その際、カラー212を変形させて係合部216に係合させる。係合部216は、ピン214に設けられた特異部であり、ピンテール218ではない。係合部216は、少なくとも、一組のねじ山、一組の溝、又は、一組の環状溝であってもよいし、カラー212を加締めてピン214に係合させることができる他のタイプの特異部であってもよい。
【0059】
例示的な実施形態においては、様々な方法でカラー212を係合部216に係合させることができる。例えば、ピンテール218を有するピン214が第2面258から孔232に挿入されると、ピンテール218がピン214から分離されるまで、カラー212の中心を通って延びる中心線251に沿ってカラー212又はピンテール218のうちの少なくとも一方に力233を加え、これにより、カラー212が、ピン214の係合部216と係合するようにしてもよい。すなわち、カラー212又はピンテール218のうちの一方、或いは、両方に力233を加えることにより、カラー212を加締めて当該カラーがピン214の係合部216に係合するようにしてもよい。
【0060】
この図示例においては、加締アセンブリ220は、図1に示すオフセット型カラー取付部124であってもよい。カラー保持部222は、図1に示すカラー保持部134の一例であってもよく、加締ツール224は、図1に示す係合形成部136の一例であってもよい。
【0061】
図示のように、加締アセンブリ220は、プラットフォーム226に接続されている。この図示例においては、プラットフォーム226は、内側モールドライン用プラットフォーム228の形態をとる。この図示例においては、内側モールドライン用プラットフォーム228は、可撓性軌条クローラ、ロボットアーム、及び、他の適切なタイプのプラットフォームを含む群から選択することができる。
【0062】
一例においては、加締アセンブリ220は、当該加締アセンブリ220が配置されている回転軸230からずれた位置にカラー212を保持するオフセット型加締アセンブリ238であってもよい。加締アセンブリ220は、実施態様に応じて回転軸230からずれている場合とそうでない場合がある。
【0063】
図示のように、加締アセンブリ220におけるカラー保持部222は、孔232にカラー212を配置するように構成されている。図示例においては、この配置は、カラー212が孔232と同心状に整列するように行われる。例えば、カラー212の中心線251は、孔232の中心線252と一致する。
【0064】
図示例においては、孔232に対するカラー212の配置は、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に行われ、そのため、ピン214が構造体204の内側モールドライン側234における孔232に挿入されたときにカラー212にピン214が受容される。図示のように、ピン214は、単一の動作で孔232及びカラー212を貫通する。
【0065】
ピン214が、外側モールドライン側236から孔232に挿入されてカラー212を貫通すると、加締アセンブリ220は、カラー212を加締めて、カラー212とピン214の係合部216とを係合させる。
【0066】
図示のように、孔232に対してカラー212を配置すると、カラー212が内側モールドライン側234に接触する。他の例においては、カラー212は、孔232に配置されている際、内側モールドライン側234に接触していない場合がある。この場合においては、加締ツール224は、ピンテール218に係合するとともに当該ピンテールを引っ張る。これにより、ピンテール218とピン214とがカラー212に挿通され、その際、カラー212が加締められて、当該カラーが、ピン214の係合部216と係合する。
【0067】
第2面258からピン214を孔232に挿入する前に、構造体204の第1面256における孔232にカラーを配置する際、加締アセンブリ220は、当該加締アセンブリ220におけるカラー保持部222にカラー212を保持して、カラー212が、構造体204の内側モールドライン側234における孔232に配置されるように、当該カラー212を動かす。この図示例においては、第1面256は、内側モールドライン側234であり、第2面258は、外側モールドライン側236である。
【0068】
他の例においては、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に、構造体204の内側モールドライン側234における孔232にカラー212を配置するが、その際、加締アセンブリ220は、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に、内側モールドライン側234に対してカラー212を法線方向に配置して、構造体204の内側モールドライン側234における孔232にカラー212を移動させる。上記法線方向への配置は、1つ又は複数の軸上でカラー212を移動させることを含む。この例においては、上記移動により、カラー212と孔232との間に同心性を持たせることができる。
【0069】
さらに、ファスナ取付システムは、図1に示すセンサシステム142に類似したセンサシステム240を含みうる。孔232に対するカラー212の配置するにあたり、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に、センサシステム240は、内側モールドライン側234における孔232の位置242を確認し、加締アセンブリ220は、構造体204の内側モールドライン側234の位置242における孔232にカラー212を移動させる。図示のように、カラー212は、当該カラー212と孔232との間に同心性を持たせるように配置される。この同心性により、ピン214をカラー212に貫通させて、当該ピン214にカラー212を固定させることができる。
【0070】
図示例においては、センサシステム142は、ファスナ取付システム208の周囲環境についての情報を検出する物理的なハードウェアシステムである。センサシステム240は、センサデータ215を生成するように構成されている。センサシステム240は、1つ以上のタイプのセンサを含みうる。例えば、センサシステム240は、カメラシステム、ビジョンシステム、レーザ距離計、又は、他の適切なタイプのセンサのうちの少なくとも1つから選択することができる。センサシステム240により生成されるセンサデータ215は、孔232に対するカラー212の位置合わせに用いられる。この位置合わせは、カラー212と孔232との間に同心性を持たせるために行われるものであり、これにより、所望の態様で、ピンテール218及びピン214を孔232に挿入して、これらをカラー212に貫通させることができる。
【0071】
この例においては、加締アセンブリ220及びプラットフォーム226は、内側モールドライン用マシン244を形成している。さらに、この図示例において、ファスナ取付システム208は、外側モールドライン用マシン246を含む。外側モールドライン用マシン246は、構造体204の外側モールドライン側236からピン214を孔232に挿入するように構成されている。図示のように、ピンテール218及びピン214を孔232に通してこれらをカラー212に貫通させる前に、カラー212は、内側モールドライン側234における孔232と位置合わせされる。
【0072】
この例においては、構造体204の孔232に対するファスナ202の取り付けを協調して行うために、内側モールドライン用マシン244及び外側モールドライン用マシン246は、コンピュータシステム250におけるコントローラ248によって制御されてもよい。
【0073】
センサデータ215は、コンピュータシステム250に設けられたコントローラ248に送信される。コントローラ248は、ソフトウェア又はハードウェアのうちの少なくとも一方で実施することができる。ソフトウェアを用いる場合、コントローラ248によって実行される動作は、プロセッサユニットなどの、ハードウェア上で動作するように構成されたプログラムコードで実施されてもよい。ファームウェアを用いる場合、コントローラ248によって実行される動作は、永続性メモリに格納され、プロセッサユニットで動作するプログラムコード及びデータで実施されてもよい。ハードウェアを用いる場合、そのハードウェアは、コントローラ248の機能を実行するように動作する回路を含みうる。
【0074】
例示的な実施形態においては、ハードウェアは、回路システム、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス、又は、複数の処理を行うように構成された他の適切なタイプのハードウェアのうちの少なくとも1つから選択された形態をとることができる。プログラマブルロジックデバイスを用いる場合、当該デバイスは、複数の処理を行うように構成してもよい。このデバイスは、後に構成を変更してもよいし、複数の処理を行うように恒久的に構成してもよい。プログラマブルロジックデバイスの例としては、プログラマブルロジックアレイ、プログラマブルアレイロジック、フィールドプログラマブルロジックアレイ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び、他の適切なハードウェアデバイスが挙げられる。また、上記処理は、無機要素と組み合わされた有機要素によって実施してもよいし、人間を除く有機要素によって全体を構成してもよい。例えば、上記処理は、有機半導体の回路として実施してもよい。
【0075】
コンピュータシステム250は、物理的なハードウェアシステムであって、1つ以上のデータ処理システムを含む。データ処理システムが複数ある場合、これらのデータ処理システムは、通信媒体を用いて互いに通信する。通信媒体はネットワークであってもよい。データ処理システムは、コンピュータ、サーバコンピュータ、タブレット、又は、他の適切なデータ処理システムから選択される少なくとも1つである。
【0076】
コントローラ248は、プログラム254を利用してファスナ取付システム208の動作を制御する。プログラム254は、例えば、ファスナ取付システム208の動作制御に使用可能なコンピュータ数値制御(CNC)プログラム、又は、他の適切なプログラムコードであってもよい。
【0077】
コントローラ248は、センサデータ215を用いて、ファスナ取付システム208における様々なコンポーネントの動作を制御することができる。コントローラ248及びコンピュータシステム250は、それぞれ異なるコンポーネントとして示されているが、他の実施形態においては、プラットフォーム226に設けられてもよい。
【0078】
一例においては、ファスナ取付システム208は、カラー保持部222と、センサシステム240と、コントローラ248とを含む。この例においては、カラー保持部222は、ファスナ202におけるカラー212を保持するように構成されている。センサシステム240は、構造体204の第1面256のためのセンサデータ215を生成するように構成されている。この例に示すように、コントローラ248は、センサシステム240及びカラー保持部222の動作を制御する。コントローラ248は、センサデータ215を用いて構造体204の第1面256における孔232の位置242を確認し、カラー保持部222を動かすことにより、カラー保持部222によって保持されるカラー212を位置242における孔232上に自動配置する。
【0079】
一例においては、ファスナの取り付けの自動化に関する技術的な課題を克服する1つ又は複数の技術的解決策が提供されている。現時点では、孔が法線からずれている場合、既存の処理によってファスナを取り付けることは不可能であろう。
【0080】
例示的な実施形態においては、構造体204に取り付けられたレール上を移動するマシンなどの現在用いられているマシンは、構造体204の表面の法線からの孔232のずれの程度によっては、孔232に挿入されたピン214にカラー212を配置できない場合があることが認識及び考慮されている。例えば、例示的な実施形態においては、既存のファスナ取付システムを用いる場合、法線から2°以上のずれ(ただし、許容範囲内)が生じていると、既存のマシンは、ファスナ202を自動的に取り付けるためにカラー212を正確に配置することができない可能性があることが認識及び考慮されている。
【0081】
例示的な実施形態においては、ピン214が孔232及びカラー212に挿入される前に、カラー212を孔232上に設ける技術的解決策が提供される。この結果、1つ以上の技術的解決策は、孔が、許容範囲内ではあるが構造体204の表面に対して法線からずれている場合であっても、当該孔に挿入されたピンに対してカラーを取り付けることができる、という技術的効果を奏することができる。
【0082】
この結果、例示的な実施形態における技術的解決法は、孔が、構造体204の表面に対して実質的に垂直ではなく傾斜している場合に、作業時間を削減するとともに位置精度を高める、という技術的効果を有しうる。この例においては、カラー212は、ピン214の挿入前に、構造体204に配置されている。
【0083】
図1に示す製造環境100、及び、図2に示す製造環境200の説明は、例示的な実施形態を実施する態様に対して物理的又は構造的な限定を加えるものではない。図示されたコンポーネントに加えて、或いは、これらのコンポーネントに代えて、他のコンポーネントを用いることもできる。いくつかのコンポーネントは、必要としない場合もある。また、図中のブロックは、機能コンポーネントを示す。これらのブロックのうち1つ又は複数は、例示的な実施形態において実施する際には、組み合わせたり、分割したり、組み合わせてから異なるブロックに分割したりすることができる。
【0084】
例えば、上述したように、オフセット型カラー取付部124、移動システム138、真空システム140、及び、センサシステム142は、構造体104の内側モールドライン側170に設けられた内側モールドライン用マシン168を構成するものであってよい。他の例においては、これらのコンポーネントは、外側モールドライン用マシンの一部であってもよく、内側モールドライン用マシンは、構造体104の内側モールドライン側170からボルト108を挿入してもよい。例えば他の実施形態においては、第1面256は、外側モールドライン側236であってもよく、第2面258は、内側モールドライン側234であってもよい。
【0085】
図3を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナ取付システムにおける内側モールドライン用マシン300が示されている。この例においては、内側モールドライン用マシン300は、軌条システム302上を移動する。軌条システム302は、第1軌条304と第2軌条306とを含む。
【0086】
図示のように、内側モールドライン用マシン300は、ファスナ取付システム120における内側モールドライン用マシン168の一実施例である。図示のように、内側モールドライン用マシン300は、プラットフォーム308と、オフセット型加締アセンブリ310と、移動システム312と、真空システム314と、カメラ316とを含む。この例においては、プラットフォーム308は、図1にブロック形式で示すプラットフォーム122の一実施例である。オフセット型加締アセンブリ310は、図1にブロック形式で示すオフセット型カラー取付部124の一実施例である。真空システム314は、図1にブロック形式で示す真空システム140の一実施例である。カメラ316は、図1にブロック形式で示すセンサシステム142の一実施例である。
【0087】
図示のように、移動システム312は、複数の異なる方向に内側モールドライン用マシン300を移動させるように構成されている。例えば、移動システム312は、x軸318、y軸320、及び、z軸322の方向にプラットフォーム308を移動させるように構成されている。
【0088】
さらに、移動システム312は、回転軸324を中心としてオフセット型加締アセンブリ310を動かすように構成されている。すなわち、移動システム312は、オフセット型加締アセンブリ310を回転軸324周りに枢動させることができる。回転軸324は、この例においては、z軸322と平行である。
【0089】
図示のように、モータ式ホイールシステム326は、x軸318に沿ってプラットフォーム308を移動させるように構成されている。ボールねじ駆動部328は、y軸320に沿ってプラットフォーム308を移動させるように構成されている。ボールねじ駆動部330は、z軸322に沿ってプラットフォーム308を移動させるように構成されている。
【0090】
図示のように、移動システム312は、ベアリングアセンブリ332を用いて、回転軸324を中心としてオフセット型加締アセンブリ310を動かすように構成されている。この図においては、ベアリングアセンブリ332には、ギアリング334と外側リング336とが含まれている。
【0091】
この図においては、オフセット型加締アセンブリ310は、ベアリングアセンブリ332のギアリング334に接続されている。この図示例においては、ギアリング334は、回転軸324を中心として回転する。外側リング336は、プラットフォーム308に接続されており、ギアリング334は、外側リング336内で回転するように構成されている。さらに、ベアリングアセンブリ332には、真空システム314及びカメラ316も接続されており、これらのコンポーネントもまた、回転軸324を中心として回転することができる。この例においては、オフセット型加締アセンブリ310は、アダプタ333によってプラットフォーム308に着脱可能に取り付けられている。
【0092】
次に図4を参照すると、例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシン300の底面図が示されている。この例においては、内側モールドライン用マシン300を、底面側から図3に示す線4-4の方向に見た図が示されている。
【0093】
この図示例に示すように、移動システム312は、ベアリングアセンブリ332を用いて、回転軸324を中心としてオフセット型加締アセンブリ310を動かすように構成されている。
【0094】
図示のように、ギアリング334は、プラットフォーム308に接続されている。図示のように、ギアリング334は、プラットフォーム308に対して移動可能に接続されている。
【0095】
この例においては、オフセット型加締アセンブリ310、真空システム314、及び、カメラ316が、ギアリング334に接続されている。すなわち、これらのコンポーネントは、ギアリング334が回転軸324を中心として回転すると、これに伴って、当該回転軸324の周りを回転するように構成されている。ギアリング334には異なるコンポーネントが直接的又は間接的に接続されていてもよい。
【0096】
図示のように、駆動部400は、モータ式ユニットであり、このモータ式ユニットは、ギアリング334を動かすことにより、オフセット型加締アセンブリ310、真空システム314、及び、カメラ316を、回転軸324周りに回転させるように構成されている。
【0097】
この図示例においては、レーザセンサ402は、カメラ316に隣接している。レーザセンサ402は、当該レーザセンサ402から内側モールドライン面(不図示)までの距離を検出する。
【0098】
この例においては、ベアリングアセンブリ332は、ギアリング334、外側リング336、及び、駆動部400を用いて、オフセット型加締アセンブリ310、真空システム314、カメラ316、及び、レーザセンサ338を、回転軸324周りに回転させることができる。このようにして、オフセット型加締アセンブリ310は、回転軸324からずれた所望の位置に枢動するように構成されている。
【0099】
図5を参照すると、例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシン300の一部が示されている。この図示例においては、オフセット型加締アセンブリ310はギアリング334内に配置されており、内側モールドライン用マシン300の他のコンポーネントは示されていない。この部分図は、オフセット型加締アセンブリ310のコンポーネントを説明する図であり、これらのコンポーネントの例示及び説明を不明瞭にすることを避ける目的で用いられている。
【0100】
この図示例において、オフセット型加締アセンブリ310は、複数の異なるコンポーネントを含む。図示のように、オフセット型加締アセンブリ310は、カラー保持部500と、カラー加締部502と、容器504とを含む。カラー保持部500は、図1にブロック形式で示すカラー保持部134の一実施例である。カラー加締部502は、図1にブロック形式で示す係合形成部136の一実施例である。
【0101】
この図示例においては、カラー保持部500は、容器504からカラー(不図示)を受け取って、カラー加締部502による加締め処理のためにカラーを保持するように構成されている。図示のように、容器504は、チューブ506によりカラー保持部500に接続されている。容器504は、カラー(不図示)を収容する。
【0102】
図示のように、カラー保持部500は、回転軸324と平行な軸508上にカラー(不図示)を保持する。この例に示すように、オフセット型加締アセンブリ310は、ギアリング334が動かされたとき、回転軸324を中心として回転するように構成されている。オフセット型加締アセンブリ310が回転すると、軸508は、回転軸324を中心として回転し、当該回転軸324の一方側から他方側まで移動することができる。
【0103】
図示例においては、図5に示す容器504は、カートリッジ510の形態をとる。カートリッジ510に格納されたカラー(不図示)は、カラーインジェクタ512を用いて、当該カートリッジ510からカラー保持部500に供給することができる。カラーインジェクタ512は、カム又はカム作動カラー供給機構であってもよく、チューブ506を介して容器504からカラー保持部500にカラー(不図示)を供給するために、圧縮空気を用いることができる。このようにして、カートリッジ510は、内側モールドライン用マシン300において、オフセット型加締アセンブリ310に搭載されたカラー供給部として機能する。
【0104】
図3~5に示す内側モールドライン用マシン300は、内側モールドライン用マシン、又は、オフセット型カラー取付部を使用する他のマシンの実施態様を制限するものではない。例えば、加締め処理によりピンやカラーを挿入するオフセット型加締アセンブリ310に代えて、他のタイプのファスナを用いることもできる。例えば、他のタイプのオフセット型カラー取付部は、カラー又はボルトのうちの少なくとも一方を回転させて、これらのコンポーネントにおけるねじ山又は溝を互いに係合させることにより、係合を実現することができる。
【0105】
他の例においては、運動範囲が360度以外である他のタイプの回転システムを実施してもよい。他の例においては、オフセット型加締アセンブリ310は、回転軸324を中心として90度、180度、270度、又は、他の運動量だけ回転する。さらに他の例においては、内側モールドライン用マシン300から真空システム314を省いてもよい。さらに他の例においては、これらのコンポーネントを外側モールドライン用マシンの一部として実施してもよい。
【0106】
他の例においては、他のタイプの容器を実施してもよい。例えば、容器504としてのカートリッジに代えて、遠隔ボウルフィーダ(remote bowl feeder)を用いてもよい。
【0107】
図6~15を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるために動作する内側モールドライン用マシンが示されている。これらの図は、オフセット型加締アセンブリ310を用いてファスナを取り付けるために行われる動作を示す。
【0108】
最初に図6を参照すると、例示的な実施形態による、胴体セクション602の内側モールドライン側600に取り付けられる軌条システム302が示されている。図示のように、胴体セクション602上のフレーム604にファスナ(不図示)を取り付けることができる。例えば、ファスナは、内側モールドライン用マシン300のオフセット型加締アセンブリ310を用いて、フレーム604における張出部606の下方に取り付けることができる。この例においては、フレーム604の断面がI字形状であるため、張出部606が形成されている。
【0109】
図示のように、内側モールドライン用マシン300のオフセット型加締アセンブリ310は、ファスナを取り付けるために、フレーム604の前側608に配置されている。
【0110】
この図示例に示すように、内側モールドライン用マシン300にはA軸620も存在する。A軸620は、中心であって、且つ、回転軸324に対して直交している。オフセット型加締アセンブリ310は、A軸620を中心として、矢印622の方向に回転することができる。このような枢動は、内側モールドライン面600が湾曲している場合に利用することができる。上記枢動により、内側モールドライン面600に対してオフセット型加締アセンブリ310を法線方向に配置することができる。
【0111】
この図示例においては、真空システム314及びカメラ316は、これらのコンポーネントのいくつかの動作中、回転軸324と一直線上に並んでいる。
【0112】
図7を参照すると、オフセット型加締アセンブリ310及び真空システム314は、内側モールドライン側600に向かって矢印700の方向に動いている。このオフセット型加締アセンブリ310及び真空システム314の動作は、ファスナ(不図示)を取り付けてフレーム604を胴体セクション602に接続するための準備として行われる。
【0113】
図8において、内側モールドライン用マシン300は、矢印800の方向に動かされる。図示のように、真空システム314の端部802は、位置804に配置されている。位置804は、フレーム604を胴体セクション602に接続するために、フレーム604にファスナ(不図示)を取り付ける位置である。
【0114】
次に図9を参照すると、例示的な実施形態に従って、真空システム314を延出させた様子が示されている。図示のように、真空システム314は、矢印900の方向に動かされている。この動作により、真空システム314が延出して、当該真空システム314の端部802が、位置804においてフレーム604に接触する。このような配置により、真空システム314は、位置804で孔(不図示)を形成する際に生じうる砕片(不図示)から、カメラ316及びレーザセンサ402を保護する。この位置において、真空システム314は、フレーム604に対してクランプされる。この真空システム314のクランプにより、位置804における孔(不図示)の形成中に生成される砕片を除去することができる。この例においては、クランプにより、削り屑(filings)の分離、バリ取り、及び、片づけを必要とせずに穿孔を行うことが可能になる。この例においては、穿孔及びこれに続くファスナの取り付けの前に、接合面用シーラントが既に塗布されている。
【0115】
次に図10を参照すると、例示的な実施形態による、孔1000が示されている。この例においては、孔1000は、位置804においてフレーム604及び胴体セクション602を貫通している。同図において、孔1000は、胴体セクション602の内側モールドライン側600に示されている。真空システム314の端部802の位置決めは、孔1000の形成により生じる砕片(不図示)を除去するために実行される。この図示例においては、孔1000は、外側モールドライン用マシン(不図示)によって形成される。
【0116】
図11は、例示的な実施形態に従って、孔1000を検査する様子を示している。この図示例においては、カメラ316が、孔1000を含む位置804の画像を生成することができるように、真空システム314が位置804から離れる方向に動かされている。このようにして、カメラ316は、オフセット加締アセンブリ310を再度位置決めしてファスナ(不図示)を取り付けるために用いられるデータを生成する。
【0117】
図12を参照すると、例示的な実施形態に従って、オフセット型加締アセンブリ310を再度位置決めする様子が示されている。図示のように、y軸320又はx軸318のうちの少なくとも一方に対してプラットフォーム308が動かされる。このプラットフォーム308の動作は、孔1000の位置804にオフセット型加締アセンブリ310を移動させるために実行される。これに加えて、孔1000の位置804において、仮想線で示されたカラー1200が、オフセット型加締アセンブリ310におけるカラー保持部500に供給される。
【0118】
図示のように、オフセット型加締アセンブリ310は、当該オフセット型加締アセンブリ310が孔1000に対して所望の配向になるように動かすことができる。この位置合わせは、複数の異なる方向で行うことができる。例えば、オフセット型加締アセンブリ310は、x軸318、y軸320、又は、z軸322のうちの少なくとも1つに沿って動かすことができる。さらに、オフセット型加締アセンブリ310は、当該オフセット加締アセンブリ310が孔1000に対して配置されるように、回転軸324を中心として回転することができる。さらに、オフセット型加締アセンブリ310は、A軸620を中心として枢動することができる。A軸620を中心としたオフセット型加締アセンブリ310の枢動は、孔1000の中心線1202がカラー保持部500におけるカラー1200の中心線1204に整列するように行われる。
【0119】
いくつかの例においては、この位置合わせは、孔1000に挿入されたピンのピンテールに対して行ってもよい。このような位置合わせは、カラー1200を位置決めする前に孔1000にピンが挿入されている場合に行うことができる。
【0120】
図13を参照すると、例示的な実施形態による、孔1000に挿入されたピン1300が示されている。この図示例においては、ピン1300は、当該ピン1300が孔1000内に完全に収まるように、当該孔1000に挿入される。この例においては、ピン1300は、仮想線で示されるカラー1200を貫通している。ピン1300及びカラー1200により、ファスナ1302が形成されている。この例においては、ピン1300の端部1312において、ピンテール1310がピン1300に接続されている。
【0121】
図14を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナ1302を加締める様子が示されている。同図においては、ピン1300がカラー1200を貫通した状態で、カラー保持部500が、位置804における孔1000から離れる方向に移動している。カラー1200を、ピン1300の端部1312におけるピンテール1310に挿入して、ファスナ1302におけるカラー1200及びピン1300を加締めて互いに固定し合うために、オフセット型加締アセンブリ310におけるカラー加締部502が、矢印1400の方向に動かされている。
【0122】
図15を参照すると、例示的な実施形態に従って、ファスナ1302が取り付けられた様子が示されている。図示のように、オフセット型加締アセンブリ310は、フレーム604と胴体セクション602とを互いに接続するために取り付けられたファスナ1302から離れる方向に動かされている。これらの例に示されるように、ファスナ1302の取り付けは、フレーム604における張出部606の下方に位置する内側モールドライン用マシン300のオフセット型加締アセンブリ310を用いて行われる。
【0123】
図6~15に示すオフセット型加締アセンブリ310を有する内側モールドライン用マシン300を用いてファスナ1302を取り付ける処理の図示は、ファスナ1302を取り付けることができる1つの方法を説明するために提供されている。上述した動作及びコンポーネントは、内側モールドライン用マシン300を用いてファスナを取り付けることができる方法を限定するものではない。例えば、いくつかの例においては、真空システム314を省いてもよい。例えば、孔1000は、予め形成されていてもよい。例示的な実施形態においては、カメラ316はプラットフォーム308から離して設置してもよい。
【0124】
図16~18は、例示的な実施形態による、オフセット型カラー取付部を接続するための処理を示す図である。最初に図16を参照すると、例示的な実施形態による、オフセット型カラー取付部1600及びマウント1602が示されている。図示のように、オフセット型カラー取付部1600は、マウント1602に対する迅速な接続及び取り外しが可能なアダプタ1604を含む。アダプタ1604及びマウント1602は、図1にブロック形式で示す交換アセンブリ162を実現するために使用可能なコンポーネントの例である。
【0125】
次に図17を参照すると、例示的な実施形態による、マウント1602に係合するアダプタ1604が示されている。同図に示すように、アダプタ1604を有するオフセット型カラー取付部1600を矢印1704の方向に動かすと、アダプタ1604の頂部1700が位置決めピン1702に係合する。オフセット型カラー取付部1600をさらに矢印1704の方向に動かすと、カムピン1706がカムロック1708に係合する。
【0126】
次に、図18を参照すると、例示的な実施形態による、マウント1602に接続されたオフセット型カラー取付部1600が示されている。同図においては、カムロック1708を操作して、アダプタ1604のカムピン1706(不図示)と係合させる。
【0127】
次に図19を参照すると、例示的な実施形態による、構造体1904の孔1902におけるピン1900が示されている。この例において、ピン1900は、軸1906上にある。図示のように、軸1906上のピン1900は、法線1908から2°ずれている。法線1908からの軸1906の上記ずれは、カラー(不図示)がピン1900と係合している場合は許容範囲内である。法線1908からの軸1906のずれが増大するにつれて、挿入端1910の横方向距離1912が長くなる。
【0128】
許容範囲内ではあるが、この偏差及び他の偏差により、既存のファスナ取付システムがファスナを取り付けることは困難又は不可能になる。図2にブロック形式で示すファスナ取付システム208を用いれば、図示のような法線1908からのずれがある場合であっても、カラーをピン1900に取り付けることができる。
【0129】
次に図20~26を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための改善された処理が示されている。この例においては、複数の異なる動作を行って、垂線からずれた位置にファスナを取り付けることができる。
【0130】
最初に図20を参照すると、例示的な実施形態による、構造体2004に対して位置決めされた加締ツール2000が示されている。図20は、加締ツール2000の一部、外側モールドライン用ツール2002、及び、構造体2004を示す断面図である。この図示例においては、加締ツール2000は、図2に示すファスナ取付システム208の一部であってもよいし、図3に示すオフセット型加締アセンブリ310の実施態様であってもよい。他の実施例においては、加締ツール2000は、既存の加締ツールを用いて実施してもよい。
【0131】
カラー2008とピン2010とを含むファスナ2006の取付動作を主に説明するために、上述したツールは、その一部のみを示している。図示のように、ピン2010の端部2013には、ピンテール2011が設けられている。これらのツールの他の部分は、処理の図示及び説明が不明瞭になるのを避けるために図示していない。
【0132】
図示のように、構造体2004は、図2にブロック形式で示す構造体204の一実施例である。構造体2004は、コンポーネント2012とコンポーネント2014とを含む。孔2016は、構造体2004を貫通して形成されている。
【0133】
この例に示すように、カラー2008を孔2016に整列させることにより、これら2つのコンポーネント間の整列に同心性を持たせている。すなわち、カラー2008の中心線2030を、孔2016の中心線2032に整列させることにより、これら2つのコンポーネント間の整列に同心性を持たせることができる。この例に示すように、中心線2032は、内側モールドライン側2018の表面2034に対して実質的に法線方向にあり、或いは、垂直である。結果として、カラー2008の配置は、中心線2030が中心線2032に整列又は一致するように行われる。
【0134】
図示のように、加締ツール2000は、図2にブロック形式で示す加締ツール224の一実施例である。外側モールドライン用ツール2002は、図2にブロック形式で示す外側モールドライン用マシン246の一実施例である。この図示例においては、加締ツール2000は、構造体2004の内側モールドライン側2018に設けられており、外側モールドライン用ツール2002は、構造体2004の外側モールドライン側2020に設けられている。
【0135】
図示のように、ピン2010は、外側モールドライン用ツール2002を用いて、構造体2004の外側モールドライン側2020から孔2016に挿入されている。この例においては、図示のように、外側モールドライン用ツール2002の一部のみが利用されて、ピン2010が挿入されている。
【0136】
次に図21を参照すると、例示的な実施形態による、カラー2008内に延びるピン2010が示されている。この図示例においては、ピン2010は、孔2016を貫通してカラー2008に入り込んでいる。
【0137】
この例においては、カラー2008は、孔2016から上に向かって距離2101だけ離れて、当該孔2016の上方に配置されている。距離2101は、孔2016において、内側モールドライン面2018に対する法線からのライン2100のずれを許容するように選択することができる。すなわち、距離2101は、端部2102が、カラー2008の通路2104を突き抜けることができるように選択される。距離2101が短くなると、カラー2008の通路2104にピン2010を挿入する際の、法線からのライン2100のずれの許容範囲が狭くなる。
【0138】
次に図22を参照すると、例示的な実施形態による、孔2016に完全に挿入された状態のピン2010が示されている。図示のように、ピン2010は、孔2016に完全に挿入されている。さらに、ピン2010の端部2013において当該ピン2010に接続されたピンテール2011は、加締ツール2000の顎体2202内で当該顎体に係合している。
【0139】
図23を参照すると、例示的な実施形態に従って、ピンテール2011を引っ張る様子が示されている。この例においては、加締ツール2000は、油圧式加締ツールである。加締ツール2000が起動されると、矢印2300の方向にピンテール2011を引っ張る。この動作により、加締ツール2000のアンビル(anvil)2302が、内側モールドライン側2018に向かって矢印2304の方向に移動する。この移動により、カラー2008に対して矢印2304の方向に力が加わる。
【0140】
図24を参照すると、例示的な実施形態に従って、カラー2008を加締める様子が示されている。この例においては、アンビル2302がカラー2008の上方で移動すると、カラー2008が内側モールドライン側2018に対して移動し、これに伴ってアンビル2302がカラー2008を加締める。この力によるカラー2008の加締めによりカラー2008が変形し、当該カラーがピン2010の係合部2400と係合する。
【0141】
図25を参照すると、例示的な実施形態による、ピン2010と係合するカラー2008が示されている。この例においては、アンビル2302は、カラー2008をピン2010に対して完全に加締めている。
【0142】
次に図26を参照すると、例示的な実施形態に従って、ファスナ2006の設置が完了した様子が示されている。この例から分かるように、ピンテール2011(不図示)は、ピン2010から破断される。この図においては、カラー2008とピン2010との係合が完了している。
【0143】
図20~26に示す加締ツール2000を用いたファスナ1302の取り付けは、ファスナ1302を取り付けるための1つの方法を説明するために図示されたものである。図示された動作及びコンポーネントは、加締ツール2000を用いてファスナ2006を取り付ける態様を限定するものではない。例えば、カラー2008と内側モールドライン面2018との間の距離2101は、いくつかの実施例においては、実質的にゼロであってもよい。他の例においては、加締ツール2000は、上記例に示すようなオフセット型加締ツールでない場合もある。
【0144】
次に図27を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートが示されている。図27に示す処理は、図1に示すファスナ取付システム120を用いて実行することができる。
【0145】
上記処理は、プラットフォーム122に接続されたオフセット型カラー取付部124を用いてファスナ102を孔116に取り付けるために、構造体104の張出部132に対する当該構造体104上の位置126を自動的に検出することにより、開始される(工程2700)。上記処理において、回転軸128を中心としてオフセット型カラー取付部124を位置126まで動かして、ファスナ102におけるカラー110が、孔116上の位置126で保持されるようにする(工程2702)。オフセット型カラー取付部124は、プラットフォーム122に接続されており、回転軸128を中心として回転可能である。図示のように、ファスナ102は、複数の異なる形態をとりうる。例えば、ファスナ102のボルト108は、ねじ山付のボルトであってもよいし、カラー110は、回転によりボルト108のねじ山に螺合させるナットであってもよい。他の例においては、ボルト108は、ピンテール付のピンであってもよいし、カラー110は、ピンに加締められるカラーであってもよい。
【0146】
上記処理において、孔116におけるボルト108の係合部112にカラー110を固定する(工程2704)。その後、処理を終了する。
【0147】
次に図28を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートが示されている。図28に示す処理は、図1に示すファスナ取付システム120を用いて実行することができる。
【0148】
上記処理は、構造体104における孔116まで当該構造体104上のプラットフォーム122を移動させることにより開始する(工程2800)。上記処理においては、オフセットカラー取付部124を用いて、孔116に挿入された、係合部112を有するボルト108に固定するためのカラー110を保持する(工程2802)。ボルト108がピンである場合、上記処理においては、オフセット型カラー取付部124におけるカラー保持部134を用いて、孔116に挿入された、係合部112を有するピンに対してカラー110を加締めるために当該カラーを保持し、その際、カラー保持部134によって、回転軸128からずれた位置126でカラー110を保持する。
【0149】
上記処理において、回転軸128からずれた位置126にオフセット型カラー取付部124を移動させることにより、カラー110が、孔116上の位置126で保持されるとともに、プラットフォーム122の回転軸128からずれた位置に配置されるようにする(工程2804)。上記処理により、ボルト108にカラー110を固定する(工程2806)。ボルト108がピンである場合、上記処理においては、オフセット型カラー取付部において、カラー110を加締めてピンの係合部に係合させるように構成された加締アセンブリを用いて、カラー110を当該ピンに加締める。その後、処理を終了する。
【0150】
図29を参照すると、例示的な実施形態による、取付システムを移動させるための処理を示すフローチャートが示されている。図29に示す処理は、図2に示すファスナ取付システム208を移動させるために実行することができる。この処理は、図1に示す移動システム138を用いて実行することができる。
【0151】
この処理は、孔116の位置126に対して、軸に沿ってプラットフォーム122を移動させることにより開始する(工程2900)。上記処理において、回転軸128周りにオフセット型カラー取付部124を動かす(工程1902)。オフセット型カラー取付部124の動作は、オフセット型カラー取付部124が、回転軸128の一方側から他方側に移動するように回転軸128を中心として回転する動作であってもよい。工程2900及び工程2902における動作は、カラー110を孔116の位置126に動かすのに利用することができる。その後、処理を終了する。
【0152】
図30を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理を示すフローチャートが示されている。この図に示された処理は、図2に示す構造体204にファスナ202を取り付けるための製造環境200において実行することができる。
【0153】
上記処理は、構造体204の第2面258から孔232にファスナ202のピン214を挿入する前に、構造体204の第1面256における孔232に対してファスナ取付システム208のカラー212を自動的に配置することにより開始される(工程3000)。工程3000において、ピン214は、ピンテール218を有する。さらに、カラー212は、孔232に接触してもよいし、孔232から離れていてもよい。図示のように、カラー212を孔232から離すことのできる距離は、孔232の中心線252とカラー212の中心線251との位置合わせによって決まる。
【0154】
工程3000においては、カラー212の自動位置決めは、当該カラー212が、構造体204の第1面256における孔232と同心状に整列するように行われる。工程3000においては、この整列により、カラー212と孔232との間に同心性が得られる。
【0155】
上記処理においては、ピンテール218を有するピン214をカラー212に挿入し、当該ピン214を孔232及びカラー212に貫通させる(3002)。工程3002の一例においては、上記処理において、ピンテール218を有するピン214を、単一の動作で孔232及びカラー212に挿入し、ピンテール218を有するピン214を、孔232及びカラー212に貫通させる。この例においては、ピンテール218を有するピン214を完全に挿入することにより、当該ピン214をカラー212に貫通させるとともに、カラー212を、ピン214に加締めることができる。この例においては、ピンテール218を有するピン214を、単一の動作で孔232及びカラー212に挿入する。
【0156】
他の例においては、工程3002において、カラー212を位置決めする前に、孔232にピン214を挿入することができる。この挿入は、カラー212と孔232との間に同心性を持たせるように当該カラー212を当該孔232に対して位置決めすることを、ピン214が妨げないように行われる。
【0157】
上記処理においては、ピンテール218を有するピン214が第2面258から孔232に挿入されると、ピンテール218がピン214から分離されるまで、カラー212の中心を通って延びる中心線251に沿ってカラー212又はピンテール218のうちの少なくとも一方に力を加えることにより、カラー212が、ピン214の係合部216と係合するようする(工程3004)。その後、処理を終了する。
【0158】
次に図31を参照すると、例示的な実施形態による、カラーを位置決めするための処理を示すより詳細なフローチャートが示されている。この図に示された処理は、図2に示す構造体204にファスナ202を取り付けるための製造環境200において実行することができる。
【0159】
上記処理において、加締アセンブリ220におけるカラー保持部222でカラー212を保持する(工程3100)。上記処理において、内側モールドライン面234に対してカラー212を法線方向に配置する(工程3102)。上記処理において、センサシステム240を用いて、内側モールドライン側234における孔232の位置242を確認する(工程3104)。
【0160】
上記処理において、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に、加締アセンブリ220を用いて、構造体204の内側モールドライン側234の位置242における孔232にカラー212を移動させる(工程3106)。その後、処理を終了する。
【0161】
工程3106においては、カラー212が孔232に配置されている際、当該カラー212は、内側モールドライン面234に接触してもよいし、接触しなくてもよい。すなわち、カラー212と内側モールドライン側234の表面との間には間隙又は距離があってもよい。これらの処理により、外側モールドライン側236から孔232にピン214を挿入する前に、構造体204の内側モールドライン側234における孔232にカラー212が配置される。
【0162】
図31に示す処理は、カラー212を配置することができる方法の単なる一例にすぎない。図31に示すように、カラー212は、孔232にピン214を挿入する前に、当該孔232に配置される。他の例においては、ピン214を孔232に挿入してもよいが、カラー212と係合させるために、当該カラー212が配置されるまでは当該ピンを貫通させない。すなわち、ピン214を孔232に挿入する前に、カラー212を配置しなくてもよい。
【0163】
次に図32を参照すると、例示的な実施形態による、内側モールドライン用マシン及び外側モールドライン用マシンを用いてファスナを取り付けるための処理についてのフローチャートが示されている。この図に示された処理は、図2に示す製造環境200において実行することができる。上記処理は、構造体204に取り付けられた軌条上を移動する内側モールドライン用マシン244及び外側モールドライン用マシン246を用いて実行することができる。
【0164】
上記処理は、内側モールドライン用マシン244が、構造体204における孔232の位置242まで内側モールドライン側234を移動することにより開始される(工程3200)。外側モールドライン用マシン246は、孔232の位置まで外側モールドライン側236を移動する(工程3202)。工程3202においては、孔232はまだ形成されていない。なお、工程3200及び工程3202は連続して図示及び説明されているが、これらは実質的に同時に行われてもよい。
【0165】
内側モールドライン用マシン244は、加締アセンブリ220におけるカラー保持部222にカラー212を供給する(工程3204)。内側モールドライン用マシン244は、内側モールドライン側234の表面に対してカラー212を法線方向に配置する(工程3206)。外側モールドライン用マシン246は、孔232を形成する(工程3208)。内側モールドライン用マシン244は、センサシステム240を用いて孔232のセンサデータ215を生成する(工程3210)。内側モールドライン用マシン244は、孔232に対するカラー212の配置を微調整する。上記処理の工程3210において、センサデータ215を用いてカラー212と孔232とを整列させる。この例においては、カラー212と孔232とを同心状に整列させる。
【0166】
外側モールドライン用マシン246は、ピンテール218が加締アセンブリ220における加締ツール224と係合するまで、外側モールドライン側236からピン214を孔232に挿入する(工程3212)。工程3212においては、ピンテール218は、ピンテール218を引っ張る際に力を加えることが可能な加締ツール224の顎体又はクランプに係合している。
【0167】
次に、内側モールドライン用マシンは、カラー212を加締めて、当該カラーをピン214の係合部216に係合させる(工程3214)。この図示例においては、カラー212の加締めは、ピンテール218を有するピン214が第2面258から孔232に挿入されると、ピンテール218がピン214から分離されるまで、カラー212の中心を通って延びる中心線251に沿ってカラー212又はピンテール218のうちの少なくとも一方に力233を加えることにより、カラー212がピン214の係合部216と係合するように、行われる。ピンテール218を有するピン214の挿入は、ピンテール218を有するピン214を、単一の動作で孔232及びカラー212に挿入することにより、行われる。
【0168】
その後、処理を終了する。この処理は、構造体204における複数の孔の複数の異なる位置において何回実行されてもよい。
【0169】
この処理は、ロボットアームの形態をとる内側モールドライン用マシン244及び外側モールドライン用マシン246によって実行することもできる。
【0170】
次に図33を参照すると、例示的な実施形態による、ファスナを取り付けるための処理についてのフローチャートが示されている。この図に示された処理は、図2に示す構造体204にファスナ202を取り付けるための製造環境200において実行することができる。
【0171】
上記処理は、構造体204の第1面256における孔232に対してカラー212を配置することにより開始する(工程3300)。上記処理において、ピンテール218を有するピン214を、単一の動作で構造体204の第2面258から孔232及びカラー212に挿入する(工程3302)。工程3302においては、ピンテール218を有するピン214は、孔232及びカラー212を貫通している。
【0172】
上記処理においては、ピンテール218を有するピン214が、単一の動作で、構造体204の第2面258から孔232及びカラー212に挿入されると、ピンテール218がピン214から分離されるまで、カラー212の中心を通って延びる中心線251に沿ってカラー212又はピンテール218のうちの少なくとも一方に力を加えることにより、カラー212が、ピン214の係合部216と係合するようにする(工程3304)。その後、処理を終了する。上記処理の工程3304においては、カラー212、ピンテール218、或いは、カラー212とピンテール218との両方に対して力を加えることにより、係合部216との係合を実現することができる。
【0173】
図示された様々な実施形態のフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態における装置及び方法のいくつかの考えられる実施態様の構造、機能、及び、工程を示すものである。この点に関し、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、又は、工程やステップの一部を示す場合もある。例えば、これらのブロックのうちの1つ又は複数は、プログラムコード、ハードウェア、又は、プログラムコードとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。ハードウェアにおいて実現する場合、当該ハードウェアは、例えば、フローチャート又はブロック図における1つ又は複数の工程を実行するように製造又は構成された集積回路の形態をとりうる。プログラムコードとハードウェアとの組み合わせとして実現する場合、ファームウェアの形態で実現されうる。フローチャート又はブロック図における各ブロックは、様々な動作を実行する特殊用途のハードウェアシステムを用いて実行されてもよいし、特殊用途のハードウェアと当該特殊用途のハードウェアにより実行されるプログラムコードとの組み合わせを用いて実行されてもよい。
【0174】
例示的な実施形態のいくつかの代替の態様において、ブロックで述べられている1つ又は複数の機能は、図で述べられている順序とは異なる順序で実行してもよい。例えば、いくつかのケースにおいては、関連する機能に応じて、連続して示されている2つのブロックは実質的に同時に実行されてもよいし、逆の順序で実行されてもよい。また、フローチャート又はブロック図に示されたブロックに対して、さらに他のブロックを追加してもよい。
【0175】
例えば、図32に示す工程3208は、外側モールドライン用マシン246によって省かれてもよい。外側モールドライン用マシン246は、穿孔を行わずにピンを挿入してもよい。他のマシンが、構造体204に孔を形成してもよい。
【0176】
次に図34を参照すると、例示的な実施形態による、データ処理システムのブロック図が示されている。図1に示すコンピュータシステム160、及び、図2に示すコンピュータシステム250を実現するために、データ処理システム3400を用いてもよい。この図示例においては、データ処理システム3400は、通信フレームワーク3402を含み、当該通信フレームワークは、プロセッサユニット3404と、メモリ3406と、永続記憶装置3408と、通信ユニット3410と、入出力ユニット3412と、表示部3414との間の通信を実現する。この例においては、通信フレームワーク3402は、バスシステムの形態をとりうる。
【0177】
プロセッサユニット3404は、メモリ3406に読み込み可能なソフトウェアに対する指示を実行するように機能する。プロセッサユニット3404は、特定の実施態様に応じて、複数のプロセッサ、マルチプロセッサコア、又は、他のタイプのプロセッサであってもよい。
【0178】
メモリ3406及び永続記憶装置3408は、記憶装置3416の例である。記憶装置は、例えば、限定するものではないが、データや関数形式のプログラムコードなどの情報、又は、一時的、永続的、若しくは一時的及び永続的な他の適切な情報のうちの少なくとも1つを保存できる任意のハードウェアである。記憶装置3416は、これらの例においては、コンピュータ可読記憶装置とも呼ばれる場合がある。メモリ3406は、これらの例では、例えば、ランダムアクセスメモリ、又は、任意の他の適切な揮発性又は不揮発性の記憶装置であってもよい。永続記憶装置3408は、特定の実施態様に応じて様々な形態をとりうる。
【0179】
例えば、永続記憶装置3408は、1つ又は複数のコンポーネント又は装置を含みうる。例えば、永続記憶装置3408は、ハードドライブ、固体ハードドライブ、フラッシュメモリ、書換可能な光ディスク、書換可能な磁気テープ、又は、これらの組合せであってもよい。永続記憶装置3408により用いられる媒体は、着脱可能であってもよい。例えば、着脱可能なハードドライブを、永続記憶装置3408に使用することができる。
【0180】
通信ユニット3410は、これらの例においては、他のデータ処理システム又は装置と通信を行う。これらの例においては、通信ユニット3410は、ネットワークインタフェースカードである。
【0181】
入出力ユニット3412は、データ処理システム3400に接続可能な他の装置とのデータの入出力を可能にする。例えば、入出力ユニット3412は、キーボード、マウス、又は、他の適切な入力装置を介して、ユーザ入力用の接続を提供することができる。さらに、入出力ユニット3412は、プリンタに出力を送信することができる。表示部3414は、ユーザに情報を表示する機構である。
【0182】
オペレーティングシステム、アプリケーション、又は、プログラムのうちの少なくとも1つに対する指示は、記憶装置3416に保存でき、当該記憶装置は、通信フレームワーク3402を介して、プロセッサユニット3404と通信を行う。様々な実施形態の処理は、コンピュータにより実施される命令を用いて、プロセッサユニット3404により実行することができ、これらの命令は、メモリ3406などのメモリに保存されてもよい。
【0183】
これらの命令は、プロセッサユニット3404内のプロセッサによって読み取り及び実行可能なプログラムコード、コンピュータ使用可能プログラムコード、又は、コンピュータ読取可能プログラムコードと呼ばれる。様々な実施形態におけるプログラムコードは、メモリ3406又は永続記憶装置3408などの様々な物理的記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体上で具現化することができる。
【0184】
プログラムコード3418は、選択的に着脱可能なコンピュータ可読媒体3420に関数形式で保存されており、プロセッサユニット3404によって実行されるために、データ処理システム3400に読み込むことも、そこに転送することもできる。プログラムコード3418及びコンピュータ可読媒体3420は、これらの実施例では、コンピュータプログラム製品3422を形成している。一例では、コンピュータ可読媒体3420は、コンピュータ可読記憶媒体3424である。
【0185】
これらの例では、コンピュータ可読記憶媒体3424は、プログラムコード3418の伝播又は伝達を行う媒体ではなく、プログラムコード3418の保存に使用される物理的又は有形の記憶装置である。
【0186】
これに代えて、プログラムコード3418は、コンピュータ可読信号媒体を用いてデータ処理システム3400に伝送することもできる。コンピュータ可読信号媒体は、例えば、プログラムコード3418を含む伝播データ信号であってもよい。例えば、コンピュータ可読信号媒体は、電磁信号、光信号、又は、任意の他の適切なタイプの信号であってもよい。これらの信号は、無線通信リンク、光ファイバケーブル、同軸ケーブル、ワイヤなどの通信リンク、又は、任意の他の適切なタイプの通信リンクのうちの少なくとも1つを介して送信することができる。
【0187】
データ処理システム3400について様々なコンポーネントを図示したが、これらは、様々な実施形態を実現する態様に構造上の限定を加えるものではない。データ処理システム3400について例示したコンポーネントに対する追加のコンポーネント、又は、これらに代わるコンポーネントを含むデータ処理システムにおいても、様々な例示的な実施形態を実施することができる。図34に示す他のコンポーネントは、図示された具体例から変更することができる。プログラムコード3418を実行可能であれば任意のハードウェア装置又はシステムを用いて、様々な実施形態を実現することができる。
【0188】
本開示の例示的な実施形態を、図35に示す航空機の製造及び保守方法3500、並びに、図36に示す航空機3600に関連させて説明する。まず、図35を参照すると、例示的な実施形態による、航空機の製造及び保守方法のブロック図が示されている。生産開始前において、航空機の製造及び保守方法3500は、図36に示す航空機3600の仕様決定及び設計3502と、材料調達3504とを含む。
【0189】
生産中には、図36に示す航空機3600の部品及び小組立品の製造3506、並びに、システムインテグレーション3508が行われる。その後、航空機3600は、認可及び納品3510の工程を経て、使用3512に入る。顧客による使用3512中は、航空機3600は、定例の整備及び保守3514に組み込まれる。これは、改良、再構成、改修、及び他の整備又は保守を含みうる。
【0190】
航空機の製造及び保守方法3500の各工程は、システムインテグレータ、第三者、オペレータ、又は、これらの組み合わせによって実行又は実施することができる。これらの例において、オペレータは顧客であってもよい。なお、システムインテグレータは、航空機製造業者及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0191】
次に図36を参照すると、例示的な実施形態を実施可能な航空機のブロック図が示されている。この例において、航空機3600は、図35に示す航空機の製造及び保守方法3500によって生産され、複数のシステム3604及び内装3606を備えた機体3602を含みうる。システム3604の例としては、1つ以上の推進系3608、電気系3610、油圧系3612、及び、環境系3614が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。なお、航空宇宙産業に用いた場合を例として示しているが、種々の例示的な実施形態を、例えば自動車産業等の他の産業に適用してもよい。
【0192】
本明細書において具現化される装置及び方法は、図35に示す航空機の製造及び保守方法3500おける、少なくとも1つの段階において、採用することができる。図示のように、ファスナ取付システム120、ファスナ取付システム208、及び、これらのファスナを用いて説明される様々な処理は、部品及び小組立品の製造3506、システムインテグレーション3508、又は、整備及び保守3514のうちの少なくとも1つの工程中に実行することができる。さらに、ファスナ取付システム120、ファスナ取付システム208、及び、これらのファスナを用いて説明される様々な処理は、航空機3600の機体3602又は内装3606のうちの少なくとも一方にファスナを取り付けるために利用することができる。
【0193】
一例において、図35に示す部品及び小組立品の製造3506において製造される部品及び小組立品は、図35に示す航空機3600の使用3512中に製造される部品及び小組立品と同様に作製又は製造されてもよい。さらに別の例として、1つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、これらの組合せは、図35に示す部品及び小組立品の製造3506及びシステムインテグレーション3508などの生産段階において用いることができる。1つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、これらの組み合わせは、図35に示すように、航空機3600の使用中3512、整備及び保守3514中、又は、これら両方の段階において用いることができる。
【0194】
例えば、ファスナ取付システム120又はファスナ取付システム208のうちの少なくとも一方は、部品同士を固定して構造体を形成したり、構造体に対して部品を固定したりするために、部品及び小組立品の製造3506の段階で動作することができる。これらの取付システムはまた、整備及び保守3514中に、部品同士を互いに固定して構造体を形成したり、構造体に対して部品を固定したりするために動作することもでき、具体的には、改良、再構成、改修、及び、他の整備又は保守を含みうる定例の整備及び保守3514のうちの少なくとも1つを実行している際に動作することができる。
【0195】
様々な例示的な実施形態を用いることによって、実質的に、航空機3600の組み立て速度を速めること、航空機3600のコストを削減すること、又は、航空機3600の組み立て速度を速めるとともに航空機3600のコストを削減することが可能となる。1つ以上の図示例により、作業員の労力を減らすとともに、ファスナの取り付けを自動化することができる。ファスナの取り付けを自動化することができるため、航空機3600の製造及び組み立てをより迅速且つ低コストで行うことができる。
【0196】
次に図37を参照すると、例示的な実施形態による、製品管理システムのブロック図が示されている。製品管理システム3700は、物理的なハードウェアシステムである。この例において、製品管理システム3700は、製造システム3702又は保守システム3704のうちの少なくとも一方を含みうる。
【0197】
製造システム3702は、図36に示す航空機3600などの製品を製造するように構成されている。図示のように、製造システム3702は、製造装置3706を含む。製造装置3706は、作製装置3708又は組立装置3710のうちの少なくとも一方を含む。
【0198】
作製装置3708は、航空機3600の形成に用いられる部品のコンポーネントを作製するために使用可能な装置である。例えば、作製装置3708は、マシン及びツールを含みうる。これらのマシン及びツールは、ドリル、油圧プレス、炉、モールド、複合テープ敷設機、真空システム、旋盤、又は、他の適切なタイプの装置のうちの少なくとも1つであってもよい。作製装置3708は、金属部品、複合部品、半導体、回路、ファスナ、リブ、外板パネル、翼桁、アンテナ、又は、他の適切なタイプの部品のうちの少なくとも1つを作製するために用いることができる。
【0199】
組立装置3710は、部品を組み立てて航空機3600を形成するために用いられる装置である。具体的には、組立装置3710は、コンポーネント及び部品を組み立てて航空機3600を形成するために用いられてもよい。組立装置3710は、さらに、マシン及びツールを含みうる。これらのマシン及びツールは、ロボットアーム、クローラ、ファスナ取付システム、レールを用いたドリルシステム、又は、ロボットのうちの少なくとも1つであってもよい。組立装置3710は、シート、水平安定板、翼、エンジン、エンジンハウジング、着陸ギアシステムなどの部品、及び、航空機3600のための他の部品を組み立てるために用いられてもよい。この例において、組立装置3710は、図1に示すファスナ取付システム120、又は、図2に示すファスナ取付システム208のうちの少なくとも一方を含みうる。
【0200】
この例において、保守システム3704は、保守装置3712を含む。保守装置3712は、航空機3600に対する保守を行うために必要な任意の装置を含みうる。保守装置3712は、航空機3600の部品に対して様々な作業を行うためのツールを含みうる。これらの作業は、部品の分解、部品の修理、部品の検査、部品の再加工、交換部品の製造、又は、航空機3600に対して保守を行うための他の作業のうちの少なくとも1つを含みうる。これらの作業は、定例の保守、検査、アップグレード、修理、又は、他のタイプの保守作業のためのものである。
【0201】
この例において、保守装置3712は、超音波検査装置、X線撮像システム、視覚システム、ドリル、クローラ、及び、他の適切な装置を含みうる。場合によっては、保守装置3712は、保守に必要となりうる他の部品の作製及び組み立てを行うために、作製装置3708、組立装置3710、又は、これら両方を含んでもよい。
【0202】
製品管理システム3700は、さらに、制御システム3714を含む。制御システム3714は、ハードウェアシステムであり、さらに、ソフトウェア又は他のタイプのコンポーネントを含みうる。制御システム3714は、製造システム3702又は保守システム3704のうちの少なくとも一方の動作を制御するように構成されている。具体的には、制御システム3714は、作製装置3708、組立装置3710、又は、保守装置3712のうちの少なくとも1つの動作を制御してもよい。
【0203】
制御システム3714内のハードウェアは、コンピュータ、回路、ネットワーク、及び、他のタイプの装置を含むハードウェアを用いてもよい。上記制御は、製造装置3706の直接制御の形態をとりうる。例えば、制御システム3714によって、ロボット、コンピュータ制御によるマシン、及び、他の装置が制御される。他の例において、制御システム3714は、航空機3600の製造又は保守を行う際、作業員3716により実行される作業を管理してもよい。例えば、制御システム3714は、タスクの割り当て、指示の送信、又は、モデルの表示を行ってもよいし、作業員3716によって行われる作業を管理するための他の処理を実行してもよい。これらの例において、図36に示す航空機3600の製造又は保守のうちの少なくとも一方を管理するために、図1に示すコンピュータシステム160におけるコントローラ158、及び、図2に示すコンピュータシステム250におけるコントローラ248を制御システム3714で実施してもよい。例えば、これらのコントローラは、ファスナの取り付けを自動化して航空機3600又は他の製品を製造するために、実施してもよい。
【0204】
様々な例において、作業員3716は、製造装置3706、保守装置3712、又は、制御システム3714のうちの少なくとも1つに対する操作又は対話を行ってもよい。この対話は、航空機3600を製造するために行われてもよい。
【0205】
当然ながら、製品管理システム3700は、航空機3600以外の他の製品を管理するように構成されていてもよい。製品管理システム3700の説明は、航空宇宙産業における製造に関連させて行ったが、製品管理システム3700は、他の産業における製品を管理するように構成されてもよい。例えば、製品管理システム3700は、自動車産業や他の好適な産業の製品を製造するように構成されてもよい。
【0206】
したがって、例示的な実施形態においては、ファスナを取り付けるための方法、装置、及び、システムが提供される。これらのファスナは、作業員によるファスナの取り付けを必要としうる張出部などの障害物を有しうる構造体に取り付けることができる。図示例においては、フローチャートに示す処理のうちの1つ又は複数を用いて、プラットフォームの一部を作製することができる。例えば、図27~33のフローチャートのうちの1つ又は複数に示す方法に従って、航空機の一部を組み立てることができる。
【0207】
さらに、図1~26に示す装置を用いてプラットフォームの一部を作製するために、方法を用いることができる。例えば、航空機の一部を作製するための方法においては、図1~26に示す装置を用いることができる。
【0208】
一例においては、張出部などの障害物が存在する部位にファスナを取り付けるために、コンピュータシステムで動作するコンピュータプログラムによって制御されるファスナ取付システムの一部として、オフセット型カラー取付部が採用される。例えば、張出部は、胴体コーナー(fuselage corner)の内部における水平突合わせ部(horizontal butt)、重ね接続部(lap splice)、又は、水平突合わせ部及び重ね接続部の両方に設けられる。
【0209】
他の例においては、ファスナ取付システムは、ピンが挿入される孔にカラーを配置することができる。カラーは、孔において、構造体の表面に接触してもよいし、接触しなくてもよい。孔及びカラーにピンを挿入する前にカラーを配置することにより、構造体の表面に対して孔が法線方向にない場合に作業員がファスナを取り付ける必要性を低減することができる。
【0210】
様々な例示的な実施形態の説明は、例示及び説明のために提示したものであり、全てを網羅することや、開示した形態での実施に限定することを意図するものではない。様々な例は、動作や工程を行うコンポーネントを説明している。例示的な実施形態において、コンポーネントは、説明した動作や工程を行うように構成することができる。例えば、コンポーネントは、実施例においてコンポーネントにより実行されると説明されている動作や処理を行うことが可能な構成又は設計を有しうる。
【0211】
本システムは、以下の付記においても言及されるが、これらは請求の範囲と混同されるべきではない。
【0212】
A1.構造体(104)上で移動可能に配置されるプラットフォーム(122)と、
前記プラットフォーム(122)に接続されたオフセット型カラー取付部(124)と、を含み、前記オフセット型カラー取付部(124)は、回転軸(128)を中心として回転可能であり、前記回転軸(128)からずれた位置(126)において取付用のカラー(110)を保持して、係合部(112)を備えるボルト(108)に前記カラー(110)を固定し、その際、前記オフセット型カラー取付部(124)は、前記回転軸(128)からずれた位置(126)に枢動する、ファスナ取付システム(120)。
【0213】
A2.前記オフセット型カラー取付部(124)は、
前記ボルト(108)を受容するために、前記位置(126)で前記カラー(110)を保持するように構成されたカラー保持部(134)と、
前記カラー(110)を前記ボルト(108)に固定するように構成された係合形成部(136)と、を含む、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0214】
A3.前記プラットフォーム(122)に接続された移動システム(138)をさらに含み、前記移動システム(138)は、前記オフセット型カラー取付部(124)に接続されており、前記プラットフォーム(122)の前記回転軸(128)を中心として前記オフセット型カラー取付部(124)を動かすように構成されている、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0215】
A4.前記移動システム(138)は、前記回転軸(128)を中心として前記オフセット型カラー取付部(124)を動かすことに加えて、さらに、軸(144)に沿って前記プラットフォーム(122)を動かすように構成されている、付記A3に記載のファスナ取付システム(120)。
【0216】
A5.前記移動システム(138)は、
前記オフセット型カラー取付部(124)に接続されたベアリングアセンブリ(148)であって、前記回転軸(128)を中心として動くように構成されたベアリングアセンブリ(148)と、
前記ベアリングアセンブリ(148)に接続されたギアリング(150)と、
前記ギアリング(150)に対して移動可能に接続された駆動アセンブリ(152)と、を含み、前記駆動アセンブリ(152)の移動により、前記ギアリング(150)を介して前記ベアリングアセンブリ(148)が移動する、付記A3に記載のファスナ取付システム(120)。
【0217】
A6.前記ボルト(108)はピン(1300)であり、さらに、
前記プラットフォーム(122)に接続された真空システム(140)を含み、前記真空システム(140)は、前記カラー(110)が前記ピン(1300)に加締められた後、前記孔(116)の周りの砕片(154)又は前記ピン(1300)から分離された前記ピンテール(1310)のうちの少なくとも一方を除去するように構成されている、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0218】
A7.前記真空システム(140)は、前記ピンテール(1310)を受容するように構成されたポートを含み、さらに、
前記ピンテール(1310)が前記ピン(1300)から分離された後、前記ピンテール(1310)を、前記真空システム(140)における前記ポートに誘導するように構成されたピンテール(1310)偏向器を含む、付記A6に記載のファスナ取付システム(120)。
【0219】
A8.プラットフォーム(122)に接続されたセンサシステム(142)をさらに含む、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0220】
A9.前記センサシステム(142)は、カメラシステム、レーザセンサ、超音波センサ、又は、光検出・測距スキャナのうちの少なくとも1つから選択される、付記A8に記載のファスナ取付システム(120)。
【0221】
A10.
前記オフセット型カラー取付部(124)は、第1オフセット型カラー取付部(164)であって、さらに、
前記プラットフォーム(122)に接続された交換アセンブリ(162)を含み、前記第1オフセット型カラー取付部(164)は、前記交換アセンブリ(162)に着脱可能に接続されており、前記第1オフセット型カラー取付部(164)は、ツールを用いることなく、第2オフセット型カラー取付部(166)との交換が可能である、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0222】
A11.前記プラットフォーム(122)は、前記構造体(104)に取り付けられる可撓性軌条システム、双軌条システム、又は、可撓性真空軌条システムのうちの少なくとも1つのシステム上を移動するように構成されている、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0223】
前記構造体(104)は、アセンブリ、サブアセンブリ、胴体セクション、翼、ウィングボックス、水平安定板、着陸ギアシステム、油圧システム、外板パネル、ストリンガ、胴体セクション、複合材胴体セクション、及び、フレーム張出部(132)を有する支持体からなる群から選択される、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0224】
A13.前記プラットフォーム(122)及び前記オフセット型カラー取付部(124)は、前記構造体(104)の内側モールドライン側(170)に設けられた内側モールドライン用マシン(168)を形成しており、さらに、
前記構造体(104)の外側モールドライン側(174)から、ピン(1300)を孔(116)に挿入するように構成された外側モールドライン用マシン(168)を含む、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0225】
A14.前記カラー(110)は、フランジ付カラー、ねじ付カラー、及び、ナットからなる群から選択される、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0226】
A15.前記ボルト(108)は、ピン(1300)、ピンテール(1310)を有するピン(1300)、ねじ付ボルト、及び、ロックボルトからなる群から選択される、付記A1に記載のファスナ取付システム(120)。
【0227】
A16.付記A1に記載のファスナ取付システム(120)を用いて航空機の一部を作製するための方法。
本方法のさらなる態様によれば、以下が提供される。
【0228】
B1.ファスナ(102)を取り付けるための方法であって、
オフセット型カラー取付部(124)を用いてファスナ(102)を孔(116)に取り付けるために、構造体(104)の張出部(132)に対する前記構造体(104)上の位置(126)を自動的に検出し、
回転軸(128)を中心として前記位置(126)まで前記オフセット型カラー取付部(124)を動かして、前記ファスナ(102)におけるカラー(110)が前記孔(116)の上方における前記位置(126)で保持されるようにし、前記オフセット型カラー取付部(124)は、プラットフォーム(122)に接続されるとともに、前記回転軸(128)を中心として回転可能であり、
前記カラー(110)を、前記孔(116)に挿入されたボルト(108)の係合部に固定する、方法。
【0229】
B2.前記位置(126)は、前記構造体(104)における張出部(132)の下方である、付記B1に記載の方法。
【0230】
B3.さらに、前記構造体(104)上の前記プラットフォーム(122)を、前記構造体(104)における前記孔(116)まで移動させる、付記B1に記載の方法。
【0231】
B4.前記ボルト(108)はピン(1300)であり、前記カラー(110)の保持は、
前記オフセット型カラー取付部(124)におけるカラー(110)保持部を用いて、前記孔(116)に挿入された前記ピン(1300)の前記係合部に対して前記カラー(110)を加締めるために前記カラーを保持することを含み、その際、前記カラー(110)は、前記カラー保持部(134)によって前記回転軸(128)からずれた前記位置(126)で保持され、
前記ボルト(108)に対する前記カラー(110)の固定は、
前記カラー(110)を加締めて前記ピン(1300)における前記係合部(112)と係合させるように構成された前記オフセット型カラー取付部(124)における加締アセンブリを用いて、前記カラー(110)を前記ピン(1300)に加締めることを含む、付記B1に記載の方法。
【0232】
B5.前記プラットフォーム(122)に接続された移動システム(138)を用いて、前記回転軸(128)を中心として前記オフセット型カラー取付部(124)を動かすことをさらに含み、前記移動システム(138)は、前記オフセット型カラー取付部(124)に接続されている、付記B1に記載の方法。
【0233】
B6.さらに、前記移動システム(138)を用いて、軸(144)に沿って前記プラットフォーム(122)を移動させる、付記B5に記載の方法。
【0234】
B7.前記移動システム(138)は、前記オフセット型カラー取付部(124)に接続されたベアリングアセンブリ(148)であって、前記回転軸(128)を中心として動くように構成されたベアリングアセンブリ(148)と、前記ベアリングアセンブリ(148)に接続されたギアリング(150)と、前記ギアリング(150)に接続された駆動アセンブリ(152)と、を含み、前記駆動アセンブリ(152)の移動により、前記ギアリング(150)を介して前記ベアリングアセンブリ(148)が移動する、付記B5に記載の方法。
【0235】
B8.前記ボルト(108)は、ピンテール(1310)を有するピン(1300)であって、さらに、
前記カラー(110)を前記ピン(1300)に加締めた後、前記プラットフォーム(122)に接続された真空システム(140)を用いて、前記孔(116)の周りの砕片(154)又は前記ピン(1300)から分離された前記ピンテール(1310)のうちの少なくとも一方を除去することを含む、付記B1に記載の方法。
【0236】
B9.前記ピンテール(1310)の除去は、
前記ピンテール(1310)が前記ピン(1300)から分離された後、前記ピンテール(1310)を、前記真空システム(140)におけるポートに偏向させ、
前記ポートを介して前記真空システム(140)において前記ピンテール(1310)を受容する、付記B8に記載の方法。
【0237】
B10.前記オフセット型カラー取付部(124)は、第1オフセット型カラー取付部(164)であって、さらに、
交換アセンブリ(162)を用いて、前記第1オフセット型カラー取付部(164)を第2オフセット型カラー取付部(162)と交換し、前記第1オフセット型カラー取付部(164)は、前記交換アセンブリ(162)に着脱可能に接続されており、前記第1オフセット型カラー取付部(164)は、ツールを用いることなく、前記第2オフセット型カラー取付部(166)との交換が可能である、付記B1に記載の方法。
【0238】
B11.さらに、前記構造体(104)に取り付けられる可撓性軌条システム、双軌条システム、又は、可撓性真空軌条システムのうちの少なくとも1つのシステムを用いて、前記構造体(104)上で前記プラットフォーム(122)を移動させる、付記B1に記載の方法。
【0239】
B12.前記構造体(104)は、アセンブリ、サブアセンブリ、胴体セクション、翼、ウィングボックス、水平安定板、着陸ギアシステム、油圧システム、外板パネル、ストリンガ、胴体セクション、複合材胴体セクション、及び、フレーム張出部(132)を有する支持体からなる群から選択される、付記B1に記載の方法。
【0240】
B13.前記プラットフォーム(122)及び前記オフセット型カラー取付部(124)は、前記構造体(104)の内側モールドライン側(170)に設けられた内側モールドライン用マシン(168)を形成しており、さらに、
外側モールドライン用マシン(172)を用いて、前記構造体(104)の外側モールドライン側(174)からピン(1300)を前記孔(116)に挿入することを含む、付記B1に記載の方法。
【0241】
B14.前記カラー(110)は、フランジ付カラー、ねじ付カラー、及び、ナットからなる群から選択される、付記B1に記載の方法。
【0242】
B15.前記ボルト(108)は、ピン(1300)であって、前記ボルト(108)に対する前記カラー(110)の固定は、
前記カラー(110)を前記ピン(1300)に加締めることを含む、付記B1に記載の方法。
【0243】
B16.前記ボルト(108)は、ねじ付ボルトであって、前記カラー(110)を、前記孔(116)における前記ボルト(108)の前記係合部(112)に固定することは、
前記カラー(110)を回転させて、前記カラーを、前記ねじ付ボルトにおける前記係合部(112)と係合させることを含む、付記B1に記載の方法。
【0244】
B17.前記ボルト(108)は、ピン(1300)、ピンテール(1310)を有するピン(1300)、ねじ付ボルト、及び、ロックボルトからなる群から選択される、付記B1に記載の方法。
【0245】
B18.付記B1の方法に従って組み立てられた航空機の一部。
【0246】
多くの改変又は変形が当業者には明らかであろう。また、例示的な実施形態は、他の好適な実施形態と比べて、互いに異なる特徴を有しうる。選択した実施形態は、実施形態の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の変形を加えた様々な実施形態のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
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