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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/24 20060101AFI20231114BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20231114BHJP
   F16F 15/121 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F16H41/24 A
F16D41/06 F
F16F15/121 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019074899
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020172975
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015215965(DE,A1)
【文献】特開昭58-061361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0355963(US,A1)
【文献】特開昭54-153960(JP,A)
【文献】特開2011-205831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 41/24
F16D 41/06
F16F 15/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
トルクコンバータと、
前記モータからのトルクを前記トルクコンバータに入力する入力軸と、
前記トルクコンバータからのトルクを出力する出力軸と、
を備え、
前記トルクコンバータは、
前記モータからのトルクが入力されるカバーと、
前記カバーと一体的に回転するインペラと、
前記インペラと対向するタービンと、
前記インペラと前記タービンとの間に配置されるステータと、
前記モータが正回転したとき、前記カバーを前記タービンに対して相対回転可能とし、前記モータが逆回転したとき、前記カバーを前記タービンと一体回転させる、第1ワンウェイクラッチと、
を有する、
駆動ユニット。
【請求項2】
前記トルクコンバータは、
前記ステータを前記正回転方向に回転可能にし、前記ステータを前記逆回転方向に回転不能とする第2ワンウェイクラッチ、
をさらに有する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記トルクコンバータは、
前記逆回転方向において、前記カバーからのトルクを前記第1ワンウェイクラッチに伝達する弾性部材、
をさらに有する、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記トルクコンバータは、
前記逆回転方向において、前記第1ワンウェイクラッチからのトルクを前記タービンに伝達する弾性部材、
をさらに有する、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記出力軸は、円筒状であり、
前記入力軸は、前記出力軸内を延びる、
請求項1から4のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記モータ側から順に、軸方向において、前記インペラ、前記タービン、前記カバーの順に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記モータと前記トルクコンバータとの間に配置され、前記トルクコンバータから伝達されるトルクを駆動輪側へと伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構からのトルクを駆動輪側へと伝達するデファレンシャルギアと、
をさらに備え、
前記デファレンシャルギアは、径方向視において、前記動力伝達機構と重複する、
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータは、トルクの増幅作用を有している。例えば特許文献1に開示されたトルクコンバータは、カバー、インペラ、タービン、ステータ、及びワンウェイクラッチを有している。原動機からのトルクがカバーに入力されると、インペラ、タービンに伝達されて出力される。ここで、ステータがタービンからの作動油をインペラに戻すことによって、トルクが増幅される。ステータは、ワンウェイクラッチを介して固定軸に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-142398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような構成のトルクコンバータにおいて、効率的にトルクを伝達することが要望される。そこで、本発明の課題は、効率的にトルクを伝達することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係るトルクコンバータは、カバー、インペラ、タービン、ステータ、及び第1ワンウェイクラッチを備える。カバーは、原動機からのトルクが入力される。インペラは、カバーと一体的に回転する。タービンは、インペラと対向する。ステータは、インペラとタービンとの間に配置される。第1ワンウェイクラッチは、正回転方向において、カバーをタービンに対して相対回転可能とする。そして、第1ワンウェイクラッチは、逆回転方向において、カバーをタービンと一体回転させる。
【0006】
この構成によれば、逆回転が可能なモータなどのような駆動源に取り付けた場合において、効率的にトルクを伝達することができる。すなわち、正回転方向に回転するときは、第1ワンウェイクラッチは、カバーをタービンに対して相対回転可能とする。すなわち、第1ワンウェイクラッチは、カバーからの正回転方向のトルクをタービンに伝達しない。このため、カバーからの正回転方向のトルクは、カバー、インペラ、タービンの順でトルクが伝達される。なお、この正回転方向のトルクは、ステータの作用によって増幅される方向のトルクである。
【0007】
一方、逆回転方向に回転するときは、第1ワンウェイクラッチは、カバーをタービンと一体回転させる。すなわち、第1ワンウェイクラッチは、カバーからの逆回転方向のトルクをタービンに伝達する。このため、カバーからのトルクは、作動流体を介さずにタービンに出力することができる。なお、この逆回転方向では、トルクコンバータはトルク増幅作用が発生しない。このため、無駄なトルク伝達経路を省略して効率的にトルクを伝達することができる。
【0008】
好ましくは、トルクコンバータは、第2ワンウェイクラッチをさらに備える。第2ワンウェイクラッチは、ステータを正回転方向に回転可能にする。そして、第2ワンウェイクラッチは、ステータを逆回転方向に回転不能とする。
【0009】
好ましくは、トルクコンバータは、弾性部材をさらに備える。弾性部材は、逆回転方向において、カバーからのトルクを第1ワンウェイクラッチに伝達する。この構成によれば、カバーからのトルクが弾性部材を介して第1ワンウェイクラッチ及びタービンに伝達されるため、急激なトルク伝達を緩和することができる。
【0010】
好ましくは、トルクコンバータは、弾性部材をさらに備える。弾性部材は、逆回転方向において、第1ワンウェイクラッチからのトルクをタービンに伝達する。この構成によれば、弾性部材を介してカバーから第1ワンウェイクラッチに伝達されたトルクがタービンに伝達されるため、急激なトルク伝達を緩和することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率的にトルクを伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】駆動ユニットの概略図。
図2】駆動ユニットの断面図。
図3】トルクコンバータの断面図。
図4】インペラハブの断面図。
図5】インペラハブの断面図。
図6】第1冷却流路を示すための、駆動ユニットの断面図。
図7】カバーの側壁部の断面図。
図8】カバーの側壁部の断面図。
図9】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図10】変形例に係る第1ワンウェイクラッチの概略図。
図11】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るトルクコンバータを有する駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る駆動ユニットの概略図、図2は本実施形態に係る駆動ユニットの断面図である。なお、以下の説明において、軸方向とは原動機2及びトルクコンバータ3の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、正回転とは、車両が前進するときの回転であり、逆回転とは、車両が後進するときの回転である。
【0014】
[駆動ユニット100]
図1及び図2に示すように、駆動ユニット100は、原動機2、トルクコンバータ3、減速機4(動力伝達機構の一例)、入力軸5、及び出力軸6、トルクコンバータケース7、作動流体溜り部8、及び第1冷却流路9aを備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。駆動ユニット100は、駆動輪101に原動機2からのトルクを伝達する。なお、トルクコンバータ3、トルクコンバータケース7、作動流体溜り部8、及び第1冷却流路9aを合わせて、トルクコンバータユニットと称する。
【0015】
<原動機2>
原動機2は、原動機ケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。本実施形態における原動機2は、モータである。詳細には、原動機2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。原動機ケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0016】
ステータ22は、原動機ケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。
【0017】
<トルクコンバータ3>
トルクコンバータ3は、軸方向において、原動機2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と原動機2との間に、減速機4が配置されている。トルクコンバータ3の回転軸Oは、原動機2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、原動機2からのトルクが入力される。そして、トルクコンバータ3は、原動機2からのトルクを増幅して減速機4へと出力する。
【0018】
図3に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、第1ワンウェイクラッチ35、及び第2ワンウェイクラッチ36を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心クラッチ37をさらに有している。
【0019】
トルクコンバータ3は、インペラ32が原動機2側(図3の左側)を向き、カバー31が原動機2と反対側(図3の右側)を向くように配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース7内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が供給されている。作動流体は、例えば作動油である。
【0020】
カバー31は、原動機2からのトルクが入力される。カバー31は、原動機2からのトルクによって回転する。カバー31は、原動機2から延びる入力軸5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、入力軸5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、入力軸5と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0021】
カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部から原動機2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0022】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0023】
カバーハブ313は、第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cを有している。第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cは、一つの部材によって構成されている。
【0024】
第1ボス部313aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第1ボス部313aに、入力軸5がスプライン嵌合する。図2に示すように、第1ボス部313aは、トルクコンバータケース7に軸受部材102を介して回転可能に支持されている。このため、第1ボス部313aは、軸方向において、第1フランジ部313bから原動機2と反対側に延びている。
【0025】
図3に示すように、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aから径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aの原動機2側の端部から径方向外側に延びている。この第1フランジ部313bの外周端部に、円板部311が固定されている。
【0026】
突出部313cは、第1フランジ部313bから軸方向に延びている。突出部313cは、原動機2に向かって延びている。突出部313cは、第1フランジ部313bの外周端部から延びている。突出部313cは、円筒状である。この突出部313cは、複数の貫通孔313dを有している。この貫通孔313dを介して作動流体がトルクコンバータ3から排出される。
【0027】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、インペラハブ323、及び複数の供給流路324を有している。
【0028】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0029】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0030】
インペラハブ323は、第2ボス部323aと、第2フランジ部323bとを有する。第2ボス部323aは、円筒状であって、方向に延びている。第2ボス部323aは、軸受部材103を介してトルクコンバータケース7に回転可能に支持されている(図2参照)。第2ボス部323a内を、固定軸104が方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を出力軸6が方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、減速機ケース42又はトルクコンバータケース7から延びている。固定軸104は、回転不能である。
【0031】
供給流路324は、インペラハブ323に形成されている。詳細には、供給流路324は、第2フランジ部323bに形成されている。供給流路324は、インペラハブ323の内周面から径方向外側に延びている。そして、供給流路324は、トーラスT内に開口している。なお、トーラスTは、インペラ32とタービン33とによって囲まれた空間である。
【0032】
供給流路324は、軸方向において閉じられている。すなわち、供給流路324は、インペラハブ323内を径方向に延びる貫通孔である。図4に示すように、供給流路324は、放射状に延びている。供給流路324は、径方向外側に向かって、正回転方向と反対側に傾斜している。すなわち、供給流路324は、径方向外側に向かって、逆回転方向(図4の反時計回り)に傾斜している。なお、供給流路324は直線状に延びているものに限らず、例えば、図5に示すように、供給流路324は曲線状に延びていてもよい。
【0033】
図3に示すように、タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からのトルクが伝達される。
【0034】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0035】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベットによって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0036】
タービンハブ333には、出力軸6が取り付けられている。詳細には、出力軸6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、出力軸6と一体的に回転する。
【0037】
タービンハブ333は、第3ボス部333a及び第3フランジ部333bを有している。第3ボス部333a及び第3フランジ部333bは、一つの部材によって構成されている。
【0038】
第3ボス部333aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第3ボス部333aに、出力軸6がスプライン嵌合する。第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bから原動機2と反対側に延びている。すなわち、第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからカバーハブ313に向かって延びている、
【0039】
第3ボス部333aは、径方向において、突出部313cと間隔をあけて配置されている。すなわち、径方向において、第3ボス部333aの外側に突出部313cが配置されている。第3ボス部333aと突出部313cとの間に、第1ワンウェイクラッチ35が配置されている。なお、第1ワンウェイクラッチ35が無い状態では、第3ボス部333aの外周面と、突出部313cの内周面とが対向する。
【0040】
第3ボス部333aの先端とカバーハブ313との間には作動流体が流れる流路が形成されている。本実施形態では、第3ボス部333aの先端部に複数の切り欠き部333cが形成されている。切り欠き部333cは、第3ボス部333aの先端部を径方向に延びている。この切り欠き333c及び貫通孔313dを介して作動流体がトルクコンバータ3から排出される。
【0041】
第3フランジ部333bは、第3ボス部333aから径方向外側に延びている。詳細には、第3フランジ部333bは、第3ボス部333aの原動機2側の端部から径方向外側に延びている。この第3フランジ部333bの外周端部に、タービンシェル331がリベットなどによって固定されている。
【0042】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、第2ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0043】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0044】
第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31とタービン33との間に配置されている。第1ワンウェイクラッチ35は、正回転方向において、カバー31をタービン33に対して相対回転可能とする。すなわち、車両が前進するように原動機2が正回転したとき、カバー31がタービン33と相対回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の前進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達しない。
【0045】
一方、第1ワンウェイクラッチ35は、逆回転方向において、カバー31をタービン33と一体回転させる。すなわち、車両が後進するように原動機2が逆回転したとき、カバー31がタービン33と一体回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の後進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達する。
【0046】
第2ワンウェイクラッチ36は、固定軸104とステータ34との間に配置されている。第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転方向に回転可能とするように構成されている。一方、第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転方向に回転不能とする。このステータ34によって、トルクが増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0047】
遠心クラッチ37は、タービン33に取り付けられている。遠心クラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。遠心クラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、カバー31とタービン33とを連結するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ37は、タービン33が所定の回転数以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0048】
遠心クラッチ37は、複数の遠心子371と、摩擦材372とを有している。摩擦材372は、遠心子371の外周面に取り付けられている。遠心子371は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心子371は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心子371は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0049】
この遠心クラッチ37は、タービン33の回転数が所定の回転数以上になると、遠心子371が径方向外側に移動し、摩擦材372がカバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心クラッチ37はオン状態となり、カバー31からのトルクが遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達される。なお、遠心クラッチ37がオン状態になっても、作動流体は遠心クラッチ37を介して流通可能である。
【0050】
タービン33の回転数が所定の回転数未満になると、遠心子371が径方向内側に移動し、摩擦材372とカバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心クラッチ37はオフ状態となり、カバー31からのトルクは遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からのトルクは、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0051】
<減速機4>
図2に示すように、減速機4は、軸方向において原動機2とトルクコンバータ3との間に配置されている。減速機4は、トルクコンバータ3からのトルクを駆動輪101側へと伝達する。詳細には、減速機4は、トルクコンバータ3からのトルクを増幅して、デファレンシャルギア109を介して、駆動輪101側へと伝達する。なお、減速機4は、複数の歯車41と、各歯車41を収容する減速機ケース42と、を有している。なお、複数の歯車41のうちの一つは、出力軸6に固定されている。本実施形態では、歯車41は出力軸6と一つの部材で形成されている。
【0052】
<入力軸5>
入力軸5は、原動機2から延びている。入力軸5は、トルクコンバータ3に向かって延びている。入力軸5の回転軸は、原動機2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0053】
入力軸5は、原動機2からのトルクをトルクコンバータ3に入力する。入力軸5の先端部は、トルクコンバータ3のカバーハブ313に取り付けられている。入力軸5は、原動機2のロータ23と一体的に回転する。入力軸5は、出力軸6内を延びている。入力軸5は、中実状である。入力軸5は、先端部に連通路51を有している。連通路51は、軸方向に延びている。そして、連通路51は、第1冷却流路9aに向かって開口している。
【0054】
<出力軸6>
出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを減速機4へと出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3から原動機2に向かって延びている。
【0055】
出力軸6は、円筒状である。入力軸5は、この出力軸6内を延びている。出力軸6の一方の端部(図2の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。一方、出力軸6の他方の端部(図2の左端部)は、減速機ケース42に軸受部材105を介して回転可能に支持されている。
【0056】
<トルクコンバータケース7>
図6に示すように、トルクコンバータケース7は、トルクコンバータ3を収容している。本実施形態では、トルクコンバータケース7は、減速機ケース42と一つの部材によって構成されているが、別部材によって構成されていてもよい。
【0057】
トルクコンバータケース7は、側壁部71と、外壁部72と、複数の放熱フィン73とを有している。側壁部71は、トルクコンバータ3のカバー31と対向するように配置されている。側壁部71は、回転軸Oと直交するように配置されている。
【0058】
軸方向において、側壁部71の一方側(図6の左側)には、トルクコンバータ3が配置されている。一方、側壁部71の他方側(図6の右側面)は、外気と接している。すなわち、側壁部71の他方側には、熱源となる部材は配置されていない。
【0059】
側壁部71の中央部には、軸受部材102を介して、カバー31が回転可能に取り付けられている。側壁部71は、第1冷却流路9a内を流れる作動流体から速やかに多くの熱を吸収して大気へ放熱できるように、比熱及び熱伝導率の大きい材料によって構成されている。例えば、側壁部71は、マグネシウム、又はアルミニウムなどによって構成されている。
【0060】
外壁部72は、トルクコンバータ3の外周面と対向するように配置されている。外壁部72は、側壁部71と一つの部材によって構成されているが、別部材によって構成されていてもよい。外壁部72は、側壁部71の外周端部から原動機2に向かって延びている。外壁部72は、回転軸Oと実質的に平行に延びている。なお、外壁部72の先端部(原動機2側の端部)は、径方向内側に向かって傾斜している。外壁部72の材質は、側壁部71と同様とすることができる。
【0061】
放熱フィン73は、側壁部71に形成されている。放熱フィン73は、側壁部71からトルクコンバータ3と反対側(図6の右側)に延びている。放熱フィン73は、第1冷却流路9a内を流れる作動流体を効率的に放熱するために側壁部71に取り付けられている。放熱フィン73の熱伝導率は、側壁部71の熱伝導率と同等、もしくはより高くすることが好ましいが、特に限定されない。例えば、放熱フィン73は、マグネシウム、アルミニウム、又は銅などによって構成されている。
【0062】
<第1冷却流路9a>
第1冷却流路9aは、トルクコンバータ3から排出された作動流体を冷却するための流路である。第1冷却流路9aは、トルクコンバータケース7内を延びている。本実施形態では、第1冷却流路9aは、トルクコンバータケース7の上半分のみに形成されている(図2参照)。
【0063】
第1冷却流路9aは、側壁部71の中央部から外周部まで延び、続いて、外壁部72を軸方向においてトルクコンバータ3を超えるまで延びている。第1冷却流路9aは、作動流体溜り部8と連通している。
【0064】
図7又は図8に示すように、第1冷却流路9aは、側壁部71内において、複数の経路を有している。本実施形態では、第1冷却流路9aは、側壁部71内において、2本の経路に分かれている。第1冷却流路9aは、側壁部71内において、中央部から外周部まで直線状に延びるのではなく、蛇行しながら延びている。
【0065】
第1冷却流路9aは、外壁部72内においても複数の経路を有していてもよい。本実施形態では、例えば、第1冷却流路9aは、外壁部72内において、3本の経路に分かれている。第1冷却流路9aは、外壁部72内では直線状に軸方向に延びているが、蛇行しながら延びていてもよい。
【0066】
[作動流体溜り部]
図6に示すように、作動流体溜り部8は、軸方向において、側壁部71と協働してトルクコンバータ3を挟むように配置されている。すなわち、軸方向において、作動流体溜り部8、トルクコンバータ3、側壁部71の順で並んでいる。作動流体溜り部8は、減速機ケース42内に配置されている。作動流体溜り部8は、回転軸Oの上方に配置されている。
【0067】
作動流体溜り部8は、トルクコンバータ3に供給する作動流体を内部に有している。作動流体溜り部8は、底面に供給孔81を有している。この供給孔81から排出された作動流体は、固定軸104とインペラハブ323の第2ボス部323aとの間の流路106を介して、トルクコンバータ3へと供給される。
【0068】
具体的には、トルクコンバータ3のインペラ32の回転によって遠心力が生じ、流路106内の作動流体が供給流路324を介してトーラスT内へと供給される。そして、トルクコンバータ3から排出された作動流体は、連通路51を介して第1冷却流路9aへと流れる。そして、第1冷却流路9aを流れて冷却された作動流体は、作動流体溜り部8に戻される。
【0069】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0070】
変形例1
例えば、図9に示すように、トルクコンバータユニットは、第2冷却流路9bをさらに有していてもよい。第2冷却流路9bは、トルクコンバータユニットが搭載される車両の車室107内を延びている。第2冷却流路9b内は、トルクコンバータ3から排出された作動流体が流れる。第2冷却流路9b内を流れる作動流体は、車室107内に放熱することによって冷却される。
【0071】
第2冷却流路9bは、連通路51から作動流体が供給される。また、第2冷却流路9bは、作動流体溜り部8に作動流体を戻す。
【0072】
トルクコンバータユニットは、選択機構11をさらに有している。選択機構11は、トルクコンバータ3から排出された作動流体を供給する冷却流路として、第1冷却流路9aと第2冷却流路9bとのどちらか一方を選択するように構成されている。
【0073】
変形例2
図10に示すように、トルクコンバータ3は、複数の弾性部材38をさらに有していてもよい。弾性部材38は、周方向において、第1ワンウェイクラッチ35とカバー31との間に配置されている。弾性部材38は、逆回転方向におけるカバー31からのトルクを第1ワンウェイクラッチ35に伝達する。なお、カバー31が第1ワンウェイクラッチ35に対して逆回転方向に所定角度を超えて回転すると、カバー31の第1ストッパー面314が第1ワンウェイクラッチ35の第2ストッパー面351と当接する。この結果、カバー31からのトルクが第1ワンウェイクラッチ35に直接伝達される。
【0074】
このように、逆回転時において、カバー31からのトルクは、まず弾性部材38を介して第1ワンウェイクラッチ35に伝達されることで、急激なトルクの伝達を緩和することができる。
【0075】
なお、弾性部材38は、周方向において、第1ワンウェイクラッチ35とタービン33との間に配置されていてもよい。この場合、弾性部材38は、逆回転方向における第1ワンウェイクラッチ35からのトルクをタービン33へと伝達する。
【0076】
変形例3
図11に示すように、動力伝達機構は、遊星歯車機構400と、クラッチ401とを有していてもよい。遊星歯車機構400は、サンギア402、複数の遊星ギア403、遊星キャリア404、及びリングギア405を有している。
【0077】
サンギア402は、入力軸5に取り付けられている。サンギア402は、入力軸5と一体回転する。遊星キャリア404は、出力軸6に取り付けられている。遊星キャリア404は、出力軸6と一体回転する。
【0078】
クラッチ401は、回転不能な部材(例えば、減速機ケース42又は原動機ケース21)と、リングギア405との間に配置されている。そして、クラッチ401は、リングギア405の回転を制動するように構成されている。
【0079】
クラッチ401は、例えば、ワンウェイクラッチである。このクラッチ401は、入力軸5及び出力軸6の正回転時において、リングギア405を回転可能とする。一方、クラッチ401は、入力軸5及び出力軸6の逆回転時において、リングギア405を回転不能とする。
【0080】
この構成によれば、入力軸5及び出力軸6の正回転時、すなわち、車両の前進時は、リングギア405が固定されずに回転しているため、遊星歯車機構400における増幅作用は働かない。このため、原動機2からのトルクは、トルクコンバータ3及び減速機4を介して、駆動輪101へ伝達される。
【0081】
一方、入力軸5及び出力軸6の逆回転時、すなわち、車両の後進時は、クラッチ401によってリングギア405が回転不能となるため、遊星歯車機構400の増幅作用が機能する。このため、原動機2からのトルクは、遊星歯車機構400によって増幅され、減速機4を介して駆動輪101へと伝達される。
【符号の説明】
【0082】
3 トルクコンバータ
31 カバー
32 インペラ
33 タービン
34 ステータ
35 第1ワンウェイクラッチ
36 第2ワンウェイクラッチ
38 弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11