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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】呼気分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01N33/497 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019109841
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020201194
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤坂 駿介
(72)【発明者】
【氏名】福田 真也
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026940(JP,A)
【文献】米国特許第04314564(US,A)
【文献】国際公開第2007/083350(WO,A1)
【文献】特開2019-045153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に呼気の入口である呼気入口を有し、他端に呼気出口を有する呼気流路と、
前記呼気流路の途中に設けられた呼気導入孔と、
前記呼気導入孔に設置され前記呼気中の所定ガス成分を検出するガスセンサと、
前記呼気流路の途中であって前記呼気導入孔よりも前記呼気出口側に設けられた換気孔と、
前記換気孔に設置され、前記呼気入口へ向けて外気を送り、または前記換気孔を通して前記呼気流路内を負圧にするブロワと、を備え、
前記換気孔は、前記呼気流路の軸方向から見て、前記呼気流路の中心を軸として前記呼気導入孔と対向する位置または前記呼気導入孔から90°回転した位置に設けられた、呼気分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、呼気中の所定のガス成分を検知するガスセンサを備えた呼気分析装置が開発されている。呼気には水分が含まれているが、この水分によりガスセンサの検知面や呼気流路内に結露が生じるという問題がある。これを解決するために、種々の発明が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載された呼気分析装置10は、一端に呼気入口20aを有し、他端に呼気出口20bを有する呼気流路20と、呼気流路から分岐した支流路30と、支流路がさらに2つに分岐した第1キャビティ70と第2キャビティ80と、第1キャビティ70に設置されたガスセンサ40と、第2キャビティ80に設置されたヒータ付ファン60とを備えている(図12参照)。ヒータ付ファン60は、外気取込孔50から外気を取り込むとともに、これを温風にしてガスセンサ40の検知面40aに対して吹き付ける。呼気入口20aから吹き込まれた呼気は、呼気流路20を通り、その一部が支流路30に取り込まれる。そして、呼気は第1キャビティ70において、ヒータ付ファン60によって生じた温風と混合される。これにより、検知面40aの表面と支流路30の内部における結露を防止することができる。また、検知面40aに結露が生じた場合でも、温風が検知面40aに吹き付けられることにより、結露を気化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-043915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の呼気分析装置では、ガスセンサの検知面に生じた結露を防止または除去することはできるが、呼気流路内の結露までは除去または防止することはできないという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、呼気流路内の結露を除去し、または防止することができる呼気分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0008】
本発明の呼気分析装置は、
一端に呼気入口を有し、他端に呼気出口を有する呼気流路と、
呼気流路の途中に設けられた呼気導入孔と、
呼気導入孔に設置され呼気中の所定ガス成分を検出するガスセンサと、
呼気流路の途中であって呼気導入孔よりも呼気出口側に設けられた換気孔と、
換気孔に設置され、呼気入口へ向けて外気を送り、または換気孔を通して呼気流路内を負圧にするブロワとを備えたものである。
【0009】
また、呼気出口が呼気入口よりも狭くなっていてもよい。
【0010】
また、呼気出口に開閉弁を備えたものであってもよい。
【0011】
上記3つの解決手段のいずれかにおいて、換気孔が呼気流路に対して鋭角に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呼気分析装置は、一端に呼気入口を有し、他端に呼気出口を有する呼気流路と、呼気流路の途中に設けられた呼気導入孔と、呼気導入孔に設置され呼気中の所定ガス成分を検出するガスセンサと、呼気流路の途中であって呼気導入孔よりも呼気出口側に設けられた換気孔と、換気孔に設置され、呼気入口へ向けて外気を送り、または換気孔を通して呼気流路内を負圧にするブロワとを備えたように構成した。
【0013】
したがって、本発明の呼気分析装置は、呼気流路内の結露を除去し、または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】呼気分析装置の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2】呼気導入孔とガスセンサの一例を示す模式的な断面図である。
図3】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図4】呼気流路における呼気導入孔と換気孔の位置関係の例を示す模式的な側面図である。
図5】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図6】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図7】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図8】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図9】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図10】呼気分析装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図11】呼気分析装置の別の例を示す模式的な断面図である。
図12】従来の呼気分析装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の呼気分析装置について、図面を参照しながら実施形態の一例を説明する。
【0016】
呼気分析装置1は、一端に呼気入口2aを有し、他端に呼気出口2bを有する呼気流路2と、呼気流路の途中に設けられた呼気導入孔3と、呼気導入孔に設置され呼気中の所定ガス成分を検出するガスセンサ4と、呼気流路2の途中であって呼気導入孔3よりも呼気出口2b側に設けられた換気孔5と、換気孔5に設置され、呼気入口2aへ向けて外気を送り、または換気孔5を通して呼気流路2内を負圧にするブロワ6とを備えている(図1参照)。
【0017】
呼気流路2は、たとえば円筒状であり、一端に呼気入口2aを有し、他端に呼気出口2bを有している。図1では、呼気は図の左側から右側に向かって流れる。呼気流路の直径は、たとえば2mm~10mmとすることができる。
【0018】
呼気流路2の途中には、呼気導入孔3がある。図1では、呼気流路2の軸方向と呼気導入孔3の軸方向とが直角に交わるよう、呼気導入孔3を設けている。呼気導入孔3の直径は、たとえば1mm~3mmとすることができる。直径がこれよりも大きいと、ガスセンサ4へ導入される呼気の流量が増え、センサ素子が急激に冷却されるため、正確な測定が困難になる。なお、図1では呼気導入孔3は1つであるが、複数あってもよい。たとえば、図2に示すように、ガスセンサのカバー41に形成された取込口41aの対向位置から外れたところに、複数の呼気導入孔3を設けるとよい。言い換えると、取込口41aの外周に向けて開口する位置に、複数の呼気導入孔3を設けるとよい。このようにすると、呼気が呼気導入孔3から取込口41aへと一気に通過することを防止することができる。つまり、センサ素子42が急冷され、正確な測定が困難になることを防ぐことができる。
【0019】
ガスセンサ4としては、たとえば半導体式ガスセンサを用いる(図2参照)。ガスセンサ4は、センサ素子42とカバー41とを備えている。センサ素子42は、金属酸化物半導体を含有した感ガス体と、感ガス体に埋設されたコイル状のヒータ兼用電極と、ヒータ兼用電極の内部を通る直線状電極と、ヒータ兼用電極の両端から延びヒータ兼用電極を加熱する2本のリード線と、直線状電極の端部から感ガス体の外に延びる1本のリード線とを備えている。センサ素子42の3本のリード線に、それぞれ3つの端子を接続し、ベース43と、センサ素子42を収容するカバー41とを設けることで、ガスセンサ4とすることができる。
【0020】
呼気流路2の途中には、呼気導入孔3のほかに換気孔5を設ける。ただし、呼気導入孔3よりも呼気出口2b側に設ける。仮に、換気孔5を呼気導入孔3よりも呼気入口2a側に設けると、呼気入口2aから吹き込まれた呼気は、呼気流路2の奥(呼気出口側)にある呼気導入孔3よりも、呼気流路2の手前(呼気入口側)にある換気孔5の方に多く流れてしまう。つまり、ガスセンサ4に流れる呼気の量が少なくなり、正確な測定が困難となる。また、ブロワから呼気入口へ向けて外気を送るため、呼気流路の手前側だけが結露の除去または防止できることになり、呼気流路の奥側の結露の除去または防止が困難となる。換気孔5の直径は、たとえば2mm~10mmとすることができる。呼気出口2bから換気孔5の中心までの距離は、たとえば1mm~10mmとすることができる。なお、換気孔5は、呼気導入孔3よりも呼気出口2b側に設ければよく、たとえば、図3に示すように図1とは反対側に換気孔5を設けてもよい。また、呼気流路2の軸方向(X軸方向)から見て、換気孔5の呼気導入孔3に対する位置も、特に限定されない(図4参照)。図4(a)は、図1をX軸方向から見た図である。呼気導入孔3に対して同じ位置に、換気孔5が設けられている。図4(b)は、図3をX軸方向から見た図である。呼気導入孔3に対して対向する位置に、換気孔5が設けられている。図4(c)では、呼気導入孔3の軸に対して換気孔5の軸が直角に交わる位置に、換気孔5が設けられている。なお、これら呼気導入孔3に対する換気孔5の位置は、呼気流路2が円以外の形状でも適用できる(図4(d)参照)。
【0021】
ブロワ6は換気孔5に設置する。ブロワ6は外気を呼気分析装置1内に取り込み、呼気入口2aへ向けて送り込むことができる。ブロワ6から呼気入口2aへ向けて送り込む外気の温度は、呼気分析装置1を使用する環境によって異なる。たとえば、0℃以上40℃以下とすることができる。この温度範囲の外気を呼気流路へ送り込むことで、呼気流路の内外の温度差を小さくでき、呼気流路内に結露が発生することを防止することができる。呼気流路内に結露が発生していたとしても、上記温度範囲にある外気によって、結露を気化することができる。または、送り込まれる外気の勢いによって、結露を呼気入口側へ向かって吹き飛ばすことができる。なお、呼気流路内に残留ガスがあったとしても、ブロワ6からの送風により、呼気流路外へ排出することができる。
【0022】
また、ブロワ6は換気孔5を通して呼気流路2内を負圧にすることができる。言い換えると、ブロワ6は呼気流路2内の気体を吸引し、呼気分析装置1の外へ排出することができる。吸引によって呼気流路内に気流が発生し、呼気流路内の湿度を下げることができる。したがって、呼気流路内の結露を防止することができる。呼気流路内に結露が発生したとしても、呼気流路内を負圧にすることで、結露を除去することができる。
【0023】
次に、呼気分析装置1の使用方法の一例を説明する。まず、ユーザは呼気入口2aから呼気を吹き込む。呼気流路2内に送り込まれた呼気は、その一部が呼気導入孔3からガスセンサ4へ導入され、センサ素子42と反応して電気抵抗値の変動が測定される。測定が終わると、ブロワ6が作動し、呼気流路内に外気が送り込まれる。または、呼気流路内の気体がブロワ6によって吸引され、排出される。ブロワが停止すると、次の測定が可能となる。つまり、呼気の測定ごとにブロワが作動し、呼気流路全体の結露を防止し、または除去することができる。
【0024】
従来の呼気分析装置において呼気流路内に結露が生じると、吹き込まれた呼気の一部が結露によって生じた水滴に吸収されてしまい、センサ素子に到達する呼気の量が測定のたびにばらついていた。つまり、センサ素子の電気抵抗値が測定のたびにばらついていた。しかし本発明では、呼気流路内の結露を防止し、または除去することができるため、電気抵抗値のばらつきを抑えることができる。
【0025】
(変形例1)
なお、呼気分析装置1は、呼気出口2bが呼気入口2aよりも狭くなっていてもよい。狭いというのは、呼気流路が円筒状であれば、呼気入口2aの直径よりも呼気出口2bの直径の方が小さいことをいう(図5参照)。また、呼気流路が、たとえば図4(d)のような多角形状であれば、呼気入口2aの開口面積よりも呼気出口2bの開口面積の方が小さいことをいう。このように構成すると、ブロワ6から呼気流路2へ送り込まれた外気は、呼気出口2bよりも呼気入口2aから排出されやすくなる。つまり、より効率的に、呼気流路全体の結露を防止でき、または除去することができる。ブロワ6によって呼気流路2内を負圧にする場合は、ブロワ6によって吸引される気体の量は、呼気出口2b側よりも呼気入口2a側の方が多くなる。つまり、より効率的に、呼気流路全体の結露を除去することができる。
【0026】
呼気出口が呼気入口よりも狭い他の形態としては、図6図8に示す形態を用いることができる。図6に示す呼気分析装置1は、円筒状の呼気流路2が2分割されている。第1呼気流路21は呼気入口2aと呼気導入孔3とを有し、第2呼気流路22は呼気出口2bと換気孔5とを有する。第1呼気流路の内周面21aに、第2呼気流路の外周面22bが接している。図7に示す呼気分析装置1は、呼気流路の途中に段差23を有している。段差23は、呼気導入孔3よりも呼気出口2b側に設ける。段差23が呼気導入孔3よりも奥(呼気出口側)に設けてあるため、吹き込まれた呼気は段差に当たって呼気導入孔3へ向けて流れやすくなる。図8に示す呼気分析装置1は、換気孔5に対向する位置における呼気流路の内周面24が、呼気出口2bにかけて斜めになっている。それにより、呼気出口2bが狭くなっている。言い換えると、呼気流路2のX軸に直交する断面積は、呼気出口2bに近づくにつれて徐々に小さくなっている。図8の形態では、ブロワ6から送られた外気は、斜めになっている内周面24に沿って流れやすくなる。したがって、より効率的に呼気入口2aへ向かって外気を送り込むことができる。
【0027】
(変形例2)
なお、呼気分析装置1は、呼気出口2bに開閉弁7を備えていてもよい(図9参照)。開閉弁7としては、たとえば、ばねを用いたもの、電磁バルブ、モーター駆動の開閉扉などを用いることができる。開閉弁7は、ブロワ6が作動しているとき、つまりブロワで外気を取り込んでいるとき、またはブロワで呼気流路内の気体を吸引しているときは呼気出口2bを塞ぐようにする。このように構成すると、ブロワ6から取り込んだ外気をより効率的に呼気入口2a側へ送り込むことができる。または、ブロワ6によって吸引した呼気流路2内の気体を、より効率的に排出することができる。なお、呼気入口2aから呼気を吹き込んでいるときは、開閉弁7は開いていてもよいし、閉じていてもよい。
【0028】
(変形例3)
なお、上記した実施形態、変形例1および変形例2で示した呼気分析装置1は、換気孔5が呼気流路2に対して鋭角に設けられていてもよい。換気孔が呼気流路に対して鋭角に設けられた形態として、たとえば、図10および図11のような形態が考えられる。2つの図において、呼気流路の軸と換気孔の軸とがなす角θは鋭角である。しかし、本発明の呼気分析装置1においては、ブロワ6から取り込んだ外気は呼気入口2aへと向けて送られる。このことを前提としているため、換気孔5は図10のように設ける。換気孔5を呼気流路2に対して鋭角に設けることにより、ブロワ6から送風するときはより効率的に、呼気入口2aへ向かって外気を送り込むことができる。また、ブロワ6で呼気流路内の気体を吸引するときは、呼気出口2b側から吸引される気体の量よりも呼気入口2a側から吸引される気体の量の方が多い。つまり、より効率的に呼気流路内の気体を排出することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 :呼気分析装置
2 :呼気流路
2a :呼気入口
2b :呼気出口
21 :第1呼気流路
21a:第1呼気流路の内周面
22 :第2呼気流路
22b:第2呼気流路の外周面
23 :段差
24 :呼気流路の内周面
3 :呼気導入孔
4 :ガスセンサ
41 :カバー
41a:取込口
42 :センサ素子
43 :ベース
5 :換気孔
6 :ブロワ
7 :開閉弁
10 :呼気分析装置
20 :呼気流路
20a:呼気入口
20b:呼気出口
30 :支流路
40 :ガスセンサ
40a:検知面
50 :外気取込孔
60 :ヒータ付ファン
70 :第1キャビティ
80 :第2キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12