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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01L19/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019136642
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2020030203
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018154478
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0209863(US,A1)
【文献】特表2009-505041(JP,A)
【文献】特開2008-70241(JP,A)
【文献】特開2006-3234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を検出するセンサ素子と、
前記センサ素子を収容するパッケージと、
前記センサ素子を前記パッケージ内で支持する支持構造とを備え、
前記支持構造は、
前記パッケージに外縁部が固定されたリング状の支持ダイアフラムと、
前記センサ素子を形成する材料と同一の材料、もしくは、前記センサ素子を形成する材料と熱膨張率が実質的に等しい材料によって形成され、前記支持ダイアフラムを前記センサ素子と協働して挟む台座部材とを有し、
前記センサ素子は、前記支持ダイアフラムの開口部を塞ぐ状態で前記支持ダイアフラムに接合され、
前記台座部材は、導圧部を有し、この導圧部が前記支持ダイアフラムの開口部と重なるように前記支持ダイアフラムに接合されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記支持ダイアフラムの開口部の内径と、前記台座部材の厚みとは、
前記センサ素子の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められ、
前記圧力感度に対する前記許容量の割合が下記式1で定めた以下となるような前記内径と前記厚みとであることを特徴とする、請求項1に記載の圧力センサ。
(式1):圧力感度に対する接合後の容量値変化の許容値(Cx―Crの変化量)の割合 =温度変化後(接合前後)の容量値(Cx-Crの変化量)/圧力感度×100%
【請求項3】
前記台座部材の前記導圧部の穴径と、前記台座部材の厚みと、前記支持ダイアフラムと前記センサ素子との間の距離とは、
前記センサ素子の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められ、
前記圧力感度に対する前記許容量の割合が下記式2で定めた以下となるような前記導圧部の前記穴径と前記厚みと前記距離とであることを特徴とする、請求項1に記載の圧力センサ。
(式2):圧力感度に対する接合後の容量値変化の許容値(Cx―Crの変化量)の割合 =温度変化後(接合前後)の容量値(Cx-Crの変化量)/圧力感度×100%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの熱による熱応力の影響を受けることなく、高精度の圧力検出を行う圧力センサに関する技術が開発されている。上記技術としては、例えば下記の特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4014006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術に係る圧力センサは、圧力を検出するセンサ素子と、当該センサ素子を支持する台座プレートと、当該台座プレートに接合され、当該台座プレートを支持する支持ダイアフラムとを有する。また、特許文献1に記載の技術に係る圧力センサは、支持ダイアフラムの一部がパッケージに接合され、当該支持ダイアフラムのみを介してセンサ素子、台座プレートがパッケージ内で支持される。そして、特許文献1に記載の技術に係る圧力センサでは、台座プレートが、同一材料からなる第1の台座プレートと第2の台座プレートとからなり、支持ダイアフラムが当該第1の台座プレートと第2の台座プレートとによって挟まれた状態で接合される。特許文献1に記載の技術が用いられる場合、上記のような支持構造によってセンサ素子がパッケージ内で支持されることにより、急激な熱的変化によって生じる熱応力を支持ダイアフラムの熱応力に対する柔軟性で緩和することができる。
【0005】
その一方で、特許文献1に記載の技術に係る圧力センサは、2つの支持用の台座プレートを使用するので、圧力センサの小型化を図る上で改良の余地がある。また、特許文献1に記載の技術に係る圧力センサは、台座プレートを使用する分だけ部品数や製造工程数が多くなる可能性があり、圧力センサの製造コストの低減を図る上で改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、小型化と製造コストの低減とを図ることが可能な、新規かつ改良された圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る圧力センサは、圧力を検出するセンサ素子と、前記センサ素子を収容するパッケージと、前記センサ素子を前記パッケージ内で支持する支持構造とを備え、前記支持構造は、前記パッケージに外縁部が固定されたリング状の支持ダイアフラムと、前記センサ素子を形成する材料と同一の材料、もしくは、前記センサ素子を形成する材料と熱膨張率が実質的に等しい材料によって形成され、前記支持ダイアフラムを前記センサ素子と協働して挟む台座部材とを有し、前記センサ素子は、前記支持ダイアフラムの開口部を塞ぐ状態で前記支持ダイアフラムに接合され、前記台座部材は、導圧部を有し、この導圧部が前記支持ダイアフラムの開口部と重なるように前記支持ダイアフラムに接合されているものである。
【0008】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記支持ダイアフラムの開口部の内径と、前記台座部材の厚みとは、前記センサ素子の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められ、前記圧力感度に対する前記許容量の割合が下記式1で定めた以下となるような前記内径と前記厚みとであてもよい。
(式1):圧力感度に対する接合後の容量値変化の許容値(Cx―Crの変化量)の割合 =温度変化後(接合前後)の容量値(Cx-Crの変化量)/圧力感度×100%
【0011】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記台座部材の前記導圧部の穴径と、前記台座部材の厚みと、前記支持ダイアフラムと前記センサ素子との間の距離とは、前記センサ素子の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められ、前記圧力感度に対する前記許容量の割合が下記式2で定めた以下となるような前記導圧部の前記穴径と前記厚みと前記距離とであってもよい。
(式2):圧力感度に対する接合後の容量値変化の許容値(Cx―Crの変化量)の割合 =温度変化後(接合前後)の容量値(Cx-Crの変化量)/圧力感度×100%
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化と製造コストの低減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る圧力センサの概略の構成を説明するための断面図である。
図2】第1の実施の形態によるセンサ素子およびセンサ素子の支持構造を拡大して示す断面図である。
図3】第1の実施の形態によるセンサ素子およびセンサ素子の支持構造の斜視図である。
図4】測定圧力レンジが0-10Torr(0-1333.2Pa)であるセンサ素子の出力値と台座部材の厚みおよび支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
図5】接合前のセンサ素子の概略の構成を示す断面図である。
図6】接合後のセンサ素子の概略の構成を示す断面図である。
図7】接合後のセンサ素子の概略の構成を示す断面図である。
図8】測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)である導圧部の穴径が相対的に大きい場合におけるセンサ素子の出力値と台座部材の厚みおよび支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
図9】第2の実施の形態によるセンサ素子およびセンサ素子の支持構造の斜視図である。
図10】測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)である導圧部の穴径が相対的に小さい場合におけるセンサ素子の出力値と支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
図11】接合後のセンサ素子の概略の構成を示す断面図である。
図12】第3の実施の形態によるセンサ素子およびセンサ素子の支持構造の斜視図である。
図13】支持ダイアフラムとセンサ素子との距離が相対的に短い場合と長い場合とにおけるセンサ素子の出力値と支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
図14】第4の実施の形態によるセンサ素子およびセンサ素子の支持構造の斜視図である。
図15】測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)である導圧部の穴径が相対的に小さい場合におけるセンサ素子の出力値と台座部材の厚みおよび支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
図16】台座部材の導圧部の変形例を示す平面図である。
図17】導圧部が1箇所である場合と複数箇所ある場合とにおける、センサ素子の出力値と支持ダイアフラムの内径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る圧力センサの一実施の形態を図1図7を参照して詳細に説明する。図3は支持ダイアフラムの中央部でセンサ素子および支持構造を破断した状態で描いてある。この実施の形態においては、本発明を静電容量型圧力センサに適用する場合の例について説明する。
図1に示す静電容量型圧力センサ1は、図1において最も外側に位置する加熱用ケース2と、この加熱用ケース2の中に収容されたセンサパッケージ3などを備えている。この実施の形態においては、このセンサパッケージ3が本発明でいう「パッケージ」に相当する。
【0015】
加熱用ケース2は、センサパッケージ3を囲む円柱状に形成されたケース本体4と、このケース本体4の外周面を覆う自己加熱用ヒータ5と、これらのケース本体4およびヒータ5を覆う断熱材6などによって構成されている。
センサパッケージ3は、複数の部材を互いに溶接して有底円筒状に形成されており、底部が図1において上に位置する状態で加熱用ケース2の中に収容されている。
センサパッケージ3を構成する複数の部材は、加熱用ケース2から図1において下方に突出する小径部11を有するロアパッケージ12と、このロアパッケージ12の大径部13に後述する支持ダイアフラム14を介して接続された円筒状のアッパパッケージ15と、このアッパパッケージ15の開口端を閉塞する円板状のカバー16である。これらのロアパッケージ12と、アッパパッケージ15は、耐食性を有する金属材料によって形成されている。
【0016】
支持ダイアフラム14は、耐食性を有する金属材料によって円環板状に形成されており、外縁部がロアパッケージ12とアッパパッケージ15とにそれぞれ溶接されてこれらの部材に支持されている。支持ダイアフラム14の開口部14aは、支持ダイアフラム14の厚み方向から見て円形に形成されており、支持ダイアフラム14に後述するセンサ素子21が接合された状態でセンサ素子21によって閉塞されている。このため、支持ダイアフラム14は、センサ素子21と協働してセンサパッケージ3内を導入部22と基準真空室23とに分けている。導入部22内にはバッフル24が設けられている。基準真空室23は、所定の真空度に保たれている。
【0017】
カバー16にはハーメチックシール25を介して複数の電極リード部26が埋め込まれている。電極リード部26は、電極リードピン27と金属製のシールド28とを備えている。電極リードピン27は、シールド28の中にハーメチックシール29を介して支持されている。電極リードピン27の一端は、センサパッケージ3の外に露出し、図示しない配線を介して外部の信号処理部に接続されている。電極リードピン27の他端は、導電性を有するコンタクトばね30を介して後述するセンサ素子21のコンタクトパッド31に接続されている。
【0018】
センサ素子21は、センサパッケージ3内の導入部22の圧力を静電容量に基づいて検出するもので、後述する支持構造32によってセンサパッケージ3内で支持されている。センサ素子21は、図2に示すように、センサダイアフラム33と、このセンサダイアフラム33に接合されたセンサ台座34とを備えている。このセンサ素子21は、拡散接合法によって上述した支持ダイアフラム14に接合されている。
センサダイアフラム33は、サファイアによって円板状に形成されている。支持ダイアフラム14の開口部14aは、このセンサダイアフラム33によって閉塞されている。
【0019】
センサ台座34は、サファイアによって箱蓋状に形成されている。センサ台座34の開口部は、センサダイアフラム33によって閉塞されている。センサ台座34には、センサ台座34の内部の容量室35とセンサ台座34の外の基準真空室23とを連通する連通孔36が穿設されている。容量室35と基準真空室23とは同一の真空度を保っている。
このセンサ台座34の内側底面34aと、センサダイアフラム33におけるセンサ台座34の内側底面34aと対向する面33aとには、それぞれ2種類の電極37~40が設けられている。
【0020】
センサダイアフラム33の中央部とセンサ台座34の内側底面34aの中央部とには、一対の感圧電極37,38が設けられている。センサダイアフラム33の外周部とセンサ台座34の内側底面34aの外周部とには、一対の参照電極が39,40が設けられている。中央部に設けられている感圧電極37,38は、静電容量がCxとなる感圧キャパシタを構成している。外周部に設けられている参照電極39,40は、静電容量がCrとなる参照キャパシタを構成している。感圧キャパシタと参照キャパシタは、電極面積を調整して容量値が等しくなるように形成されている。
【0021】
支持構造32は、図1に示すように、センサパッケージ3に外周部が固定されたリング状の支持ダイアフラム14と、この支持ダイアフラム14をセンサ素子21と協働して挟む台座部材41とを有している。
台座部材41は、熱膨脹率が所定の範囲内の材料によって形成されている。台座部材41を形成する熱膨張率が所定の範囲内の材料としては、例えば、"センサダイアフラム33やセンサ台座34などを形成する材料と同一の材料"と、"センサダイアフラム33やセンサ台座34などを形成する材料との熱膨張率の差が、実質的に等しいとみなせる程小さな材料"とが挙げられる。つまり、台座部材41を形成する熱膨張率が所定の範囲内の材料には、センサダイアフラム33やセンサ台座34などと同じ材料と、略同一の材料、すなわち、センサ素子21を形成する材料と熱膨張率が実質的に等しい材料とが含まれる。

【0022】
台座部材41は、1つまたは複数の貫通穴42を有する板状に形成されている。この実施の形態においては、1つの貫通穴42が台座部材41に形成されている例について説明する。台座部材41の厚み方向から見た形状は、センサ素子21と同一の四角形である。この実施の形態による台座部材41は、厚み方向から見た外形寸法がセンサ素子21と略等しくなるように形成されている。
【0023】
台座部材41の貫通穴42は、開口形状が円形で、台座部材41の中央部に形成されている。台座部材41は、この貫通穴42が支持ダイアフラム14の開口部14aと重なるように、支持ダイアフラム14に拡散接合法によってセンサ素子21とともに接合されている。なお、貫通穴42は、台座部材41の中央部に1つだけ設けられた穴に限定されることはない。貫通穴42は、台座部材41の複数の位置にそれぞれ設けてもよい。この実施の形態においては、この貫通穴42が本発明でいう「導圧部」に相当する。
図2に示すように、台座部材41の厚みTと、支持ダイアフラム14の開口部14aの内径Dは、センサ素子21に熱応力が生じたときに、センサ素子21が後述する図7に示す形状に反るように規定されている。
【0024】
台座部材41の厚みTと支持ダイアフラム14の開口部14aの内径Dを最適な値に調節することにより、支持ダイアフラム14との熱膨張率の違いによりセンサダイアフラム33とセンサ台座34の変形の向き、変形量が等しくなるようにセンサ素子21を反らすことが可能になる。図7に示すセンサ素子21は、センサダイアフラム33とセンサ台座34とが同じように反っているから、静電容量Cxと静電容量Crの容量値変化量が等しくなる。
支持ダイアフラム14の内径Dを最適な内径に調節することにより、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との接合面積が調整され、センサ素子21が熱応力によって図7に示すように反り易くなる。以下においては、台座部材41の厚みTを単に「厚みT」といい、支持ダイアフラム14の開口部14aの内径Dを単に「内径D」という。
【0025】
この実施の形態において厚みTと内径Dとを定めるにあたっては、厚みTと内径Dとが異なる複数種類の支持構造32について、それぞれ温度が変化したときのセンサ素子21の出力値を求めて行った。
センサ素子21の出力値は、センサダイアフラム33とセンサ台座34の変形の方向、変形量などによって決まり、感圧キャパシタの静電容量Cxから参照キャパシタの静電容量Crを減算することにより得られる。
【0026】
厚みTと内径Dとを最適な値とすることにより、センサ素子21に生じた熱応力でセンサダイアフラム33とセンサ台座34とが同じように反るようになり、接合後の容量値変化量を少なくすることが可能になる。
温度が変化したときのセンサ素子21の出力値は、図4に示すように変化することが判った。ここでいう「温度が変化したとき」とは、センサ素子21および台座部材41が支持ダイアフラム14に拡散接合法によって接合された後に室温に冷却されたときである。
図4は、測定圧力レンジが0-10Torr(0-1333.2Pa)のセンサ素子21を用いた場合を示す。
支持ダイアフラム14の厚みは、測定圧力レンジ毎に定められており、測定圧力レンジが変わると、測定圧力レンジの大きさに合わせて厚くなる。
【0027】
図4に示すように、Cx-Crが0になる厚みTと内径Dとが存在することが分かる。
実際に製造されるセンサ素子21の種類は、上記の測定圧力レンジのものだけではなく測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)~0-1000Torr(0-133320Pa)の範囲で複数種類あり、用途に応じても複数の種類がある。センサ素子21の電極サイズは、これらの種類毎に異なっている。このため、Cx-Crが0になる厚みTと内径Dも種類毎に異なる。
【0028】
ここで、センサ素子21の温度が変化したときのCx-Crの値を図5図7を参照して説明する。図5は、支持ダイアフラム14に接合される以前のセンサ素子21の概略断面図、図6および図7は、支持ダイアフラム14に接合された後のセンサ素子21の概略断面図である。図6および図7においては、支持ダイアフラム14と台座部材41の図示を省略している。
図5においては、接合前の各容量値をCx(bef)、Cr(bef)として示してある。図6および図7においては、接合後の各容量値をCx(aft)、Cr(aft)として示してある。
【0029】
接合前のCx(bef)-Cr(bef)=0となることが理想であるが、実際には部材の平面度、反りなどの影響を受けて0にはならないことが多い。理想は、Cx(bef)とCx(aft)とが接合前後で変わらず、Cr(aft)とCr(bef)が接合前後で変わらないことである。これらの条件を満たせば、
{Cx(aft)-Cr(aft)}-{Cx(bef)-Cr(bef)}=0
になる。
このように接合後にセンサ素子21の反り変化がないことが理想であるが、図7に示すように反れば容量値の変化量が少なくなるため、センサ素子21の特性は良好になる。一方、図6に示すように反ると、Cxの値が小さくなり、Cx-Crの値がマイナスとなってセンサ素子21の特性が悪化してしまう。
【0030】
センサ素子21の特性としては、圧力感度が挙げられる。この圧力感度とは、圧力印加に対する容量値の変化量で、各センサ素子によって異なる。例えば、0-10Torr((0-1333.2Pa)レンジ用のセンサ素子21に10Torr(1333.2Pa)の圧力が印加されたときの圧力感度は4pF程度である。
【0031】
圧力感度に対する、温度が変化した状態における容量値変化の許容値(目標値)の割合が予め定めた目標値以下となるような厚みTと内径Dであれば、温度変化後も特性が良好になる圧力センサ1が得られる。これを測定圧力レンジが0-10Torr(0-1333.2Pa)であるセンサ素子21を用いる場合について説明する。
このセンサ素子21に10Torr(1333.2Pa)の圧力が印加されたときの圧力感度(Cx-Crの変化量)を4pFとする。また、接合後の容量値変化の許容値を±0.8pFとする。
【0032】
この場合の「圧力感度に対する、接合後の容量値変化の許容値(Cx-Crの変化量)の割合」は、次の式で示すようになる。
温度変化後(接合前後)の容量値変化の許容値(Cx-Crの変化量)/圧力感度×100%=±0.8/4×100(%)=±20(%)
すなわち、圧力感度に対する、接合後の容量値変化の許容値の割合が20%以下になるような厚みTと内径Dであれば、接合後も特性が良好な圧力センサ1が得られる。
【0033】
上述したように構成された静電容量型圧力センサ1においては、センサ素子21が支持ダイアフラム14に接合されているから、特許文献1に記載されている従来の静電容量型圧力センサと較べて2枚の台座プレートが不要になり、部品数が削減される。また、センサ素子と台座プレートとの接合工程が不要になり、製造に必要な作業時間を削減することができる。このため、部品数の低減と作業時間の短縮とが図られるから、製造コストを低減することができる。
【0034】
しかも、台座プレートを有していない分だけセンサパッケージ3と加熱用ケース2とを小さく形成することができ、センサパッケージ3に接続される他の部品も小型化できるから、製造コストの低減のみならず静電容量型圧力センサ1を小型化することができる。したがって、この実施の形態によれば、静電容量型圧力センサの小型化と製造コストの低減とを図ることができる。
【0035】
この実施の形態による静電容量型圧力センサ1においては、センサパッケージ3のコンパクト化が図られるために熱容量が低減される。このため、センサパッケージ3を自己加熱用ヒータ5で所定の温度に加熱するときの自己加熱用ヒータ5の消費電力を少なく抑えることができる。
【0036】
センサ素子21が支持ダイアフラム14に接合されていることに起因してセンサ素子21に熱応力が生じると、前記センサ素子21の容量値が変化するおそれがある。この実施の形態によれば、支持ダイアフラム14の開口部14aの内径Dと、台座部材41の厚みTとを、容量値が予め定めた目標範囲内となるように設定することができる。このため、センサダイアフラム33とセンサ台座34の変形の向き、変形量を等しくすることにより容量値変化量を少なく抑えることができる。
【0037】
また、センサ素子21の圧力感度に対する、温度が変化した状態における容量値変化の許容量の割合が予め定めた目標値以下になるように内径Dと厚みTとを設定することにより、接合後も特性が良好な静電容量型圧力センサを提供することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態による圧力センサ1においては、測定圧力レンジが例えば0-0.1Torr(0-13.332Pa)となるように低い場合、すなわちセンサダイアフラム33が薄くなるセンサ素子21を使用する場合であっても、接合後の容量値変化を小さくすることが要請されている。第1の実施の形態による圧力センサ1に測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)のセンサ素子21を使用した場合は、接合後の容量値変化が図8に示すようになる。図8は、第1の実施の形態による圧力センサ1を有限要素法によって解析して得られたデータに基づくグラフである。図8は、貫通穴42の穴径dが相対的に大きくなる場合の、センサ素子21の接合後の出力値の変化を示している。図8の横軸は、支持ダイアフラム14の内径を示し、縦軸は、接合後のCx-Crの値を示している。この解析は、測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)のセンサ素子21を用いて行った。図8から判るように、第1の実施の形態に示す構成で接合後のCx-Cr変化量が少なくなる圧力センサ1を実現するためには、設計上の自由度が小さい。
【0039】
測定圧力レンジが低い場合であっても接合後のCx-Cr変化量を小さくするためには、拡散接合後のセンサ台座34の反り変形を抑えることが必要である。第2の実施の形態による圧力センサは、このようなセンサ台座34の反り変形を抑えるために、台座部材41を剛性が高くなるように形成してセンサ素子21との変形のバランスをとるようにしたものである。
【0040】
台座部材41の剛性を高くするためには、台座部材41の貫通穴42の穴径dを調整したり、台座部材41の厚みTを調整することにより実現可能である。第2の実施の形態によるセンサ素子21は、センサ素子21の反り変形を抑えるにあたって、台座部材41の貫通穴42の穴径dと、台座部材41の厚みTとが、それぞれ最適な値に調整されている。穴径dと、厚みTとは、センサ素子21の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、接合後の容量値変化の許容量とに基づいて定められている。最適な穴径dと、最適な厚みTとは、センサ素子21の圧力感度に対する、接合後の容量値変化の許容量の割合が予め定めた目標値以下となるような値である。これらの穴径dと厚みTとは、有限要素法によって解析して得られたデータに基づいて規定することができる。
【0041】
台座部材41の剛性を高くするにあたって貫通穴42の穴径dを小さくする場合のセンサ素子21は、図9に示すように構成される。図9に示す台座部材41は、貫通穴42の穴径dが第1の実施の形態による貫通穴42(図3参照)の穴径より小さく形成されている。貫通穴42の穴径dが相対的に小さい場合は、穴径dが相対的に大きい場合と較べると、図10に示す解析結果から明らかなように、接合後のCx-Cr変化量が少なくなる。図10は、センサ素子21の接合後の出力値の変化を示すグラフで、図10の横軸は、支持ダイアフラム14の内径を示し、縦軸は、接合後のCx-Crの値を示している。この解析は、測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)のセンサ素子21を用いて行った。このようにCx-Cr変化量が少なくなることは、図11に示すように、拡散接合後のセンサ素子21の反り変化量が低減されることを意味する。
【0042】
この実施の形態で示すように、台座部材41の剛性を高くするために台座部材41の貫通穴42の穴径dと、台座部材41の厚みTとを調整する構成を採る場合であっても、第1の実施の形態を採るときと同様に、接合後も特性が良好な静電容量型圧力センサを提供することができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
本発明に係る圧力センサは、図12に示すように構成することができる。図12において、図1図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0044】
測定圧力レンジが例えば0-0.1Torr(0-13.332Pa)となるように低いセンサ素子21、言い換えればセンサダイアフラム33が薄くなるセンサ素子21を使用するにあたって接合後の容量値変化量を少なくするためには、センサ素子21が受ける熱応力の影響を可及的小さくすることにより可能である。熱応力の影響を受け難くするためには、図12に示すように、支持ダイアフラム14とセンサ素子21(センサダイアフラム33)との距離Lを長くすることが有効である。この距離Lを長くするためには、センサダイアフラム33の、支持ダイアフラム14と接合される外縁部を厚く形成したり、図12に示すように、支持ダイアフラム14とセンサダイアフラム33との間にスペーサ51を挿入することによって実現できる。
【0045】
図12に示すセンサ素子21のセンサダイアフラム33は、スペーサ51を介して支持ダイアフラム14に接合されている。スペーサ51は、センサダイアフラム33やセンサ台座34などを形成する材料と同一の材料や、センサダイアフラム33やセンサ台座34などを形成する材料との熱膨張率の差が、実質的に等しいとみなせる程小さな材料によって形成されている。スペーサ51を厚み方向から見た形状は、センサダイアフラム33と重なる矩形の枠状である。スペーサ51の中空部は、厚み方向から見て、支持ダイアフラム14の開口部14aと略等しい径の円形に形成されている。
【0046】
支持ダイアフラム14とセンサ素子21との間の距離Lは、センサ素子21の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められる。最適な距離Lは、圧力感度に対する容量値変化の許容量の割合が予め定めた目標値以下となるような値である。このような距離Lは、有限要素法によって解析して得られたデータ(図13参照)に基づいて規定することができる。図13は、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との距離Lが長い場合と短い場合とにおける、センサ素子21の温度が変化したときの出力値の変化を示すグラフである。図13の横軸は、支持ダイアフラム14の内径を示し、縦軸は、接合後のCx-Crの値を示している。図13に示すデータを取得するにあたっては、第1の実施の形態の図3で示したセンサ素子21のデータを用いて行った。
【0047】
図13から判るように、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との距離Lが相対的に短い場合は、支持ダイアフラム14の内径Dが変化するとCx-Crの値が大きく変化する。しかし、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との距離Lが長い場合は、支持ダイアフラム14の内径Dが変化したときのCx-Crの変化量が少なくなる。このことは、圧力センサの設計の幅を拡げることができることを意味する。
【0048】
この実施の形態で示したように、熱応力の影響を受け難くするために支持ダイアフラム14とセンサ素子21との距離Lを長くする構成を採る場合であっても、第1の実施の形態を採るときと同様に、接合後の容量値変化量が少なくなる静電容量型圧力センサを提供することができる。
【0049】
(第4の実施の形態)
本発明に係る圧力センサは、図14に示すように構成することができる。図14において、図1図9および図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0050】
測定圧力レンジが例えば0-0.1Torr(0-13.332Pa)となるように低いセンサ素子21、言い換えればセンサダイアフラム33が薄くなるセンサ素子21を使用するにあたって接合後の容量値変化量を少なくするためには、台座部材41の剛性向上を図るとともに、センサ素子21が受ける熱応力の影響を可及的小さくすることにより可能である。台座部材41の剛性を高くするためには、図14に示すように、台座部材41の貫通穴42の穴径dを調整したり、台座部材41の厚みTを調整することにより実現可能である。熱応力の影響を受け難くするためには、支持ダイアフラム14とセンサ素子21(センサダイアフラム33)との距離Lを長くすることが有効である。この距離Lを長くするためには、センサダイアフラム33の、支持ダイアフラム14と接合される外縁部を厚く形成したり、図14に示すように、支持ダイアフラム14とセンサダイアフラム33との間にスペーサ51を挿入することによって実現できる。
【0051】
台座部材41の貫通穴42の穴径dと、台座部材41の厚みTと、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との間の距離Lとは、センサ素子21の圧力印加に対する容量値変化量からなる圧力感度と、温度が変化した状態における容量値変化の許容量とに基づいて定められる。最適な穴径dと、最適な厚みTと、最適な距離Lは、圧力感度に対する容量値変化の許容量の割合が予め定めた目標値以下となるような値である。
【0052】
台座部材41の貫通穴42の穴径dと、台座部材41の厚みTと、支持ダイアフラム14とセンサ素子21との間の距離Lとがそれぞれ最適な値となることにより、図15に示す解析結果から明らかなように、支持ダイアフラム14の内径Dが変化したときのCx-Crの変化量が少なくなる。図15は、センサ素子21の接合後の出力値の変化を示すグラフである。図15は、貫通穴42の穴径dが相対的に小さく、台座部材41の剛性が相対的に高くなる場合を示している。図15の横軸は、支持ダイアフラム14の内径を示し、縦軸は、接合後のCx-Crの値を示している。この解析は、測定圧力レンジが0-0.1Torr(0-13.332Pa)のセンサ素子21を用いて行った。図15に示すように、Cx-Crの値は、台座部材41の厚みTが厚くなるほど0に近付く。このため、拡散接合後のセンサ素子21の反り変化量が低減される。また、図15に示すように、支持ダイアフラム14の内径Dが変化したときのCx-Crの変化量が少なくなることにより、圧力センサの設計の幅を拡げることが可能になる。
したがって、この実施の形態を採る場合においても、第1の実施の形態を採るときと同様に、接合後の容量値変化量が少なくなる静電容量型圧力センサを提供することができる。
【0053】
(台座部材の変形例)
上述した各実施の形態においては、台座部材の貫通穴が1つである例を示した。しかし、図16に示すように、台座部材には複数の貫通穴を設けることができる。図16において、図1図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。図16に示す台座部材41は、4つの貫通穴42を有している。これらの貫通穴42は、矩形の板状に形成された台座部材41の4つの角部と対応する位置にそれぞれ形成されている。この実施の形態による貫通穴42の穴径は、第2の実施の形態で示した、穴径が相対的に小さい貫通穴42と同一である。
【0054】
貫通穴42が4つある場合と、貫通穴42が1つである場合とについて、拡散接合後のセンサ素子21のCx-Crの値を求めたところ、図17に示すような結果が得られた。図17に示すように、貫通穴42の数はCx-Crの値に殆ど影響を及ぼすことがないことが判った。すなわち、台座部材41の導圧部は、複数の小孔によって構成することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、様々な変形例に想到しうることは明らかであり、これらの変形例についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0056】
1…静電容量型圧力センサ、3…センサパッケージ(パッケージ)、14…支持ダイアフラム、14a…開口部、21…センサ素子、32…支持構造、41…台座部材、42…貫通穴、51…スペーサ、D…内径、T…厚み、L…距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17