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特許7384597装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法
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  • 特許-装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20231114BHJP
   A61F 2/72 20060101ALI20231114BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61F2/72
B25J11/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019159978
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037059
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】506310865
【氏名又は名称】CYBERDYNE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 大雅
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/039018(WO,A1)
【文献】特開2013-173190(JP,A)
【文献】特開2018-015023(JP,A)
【文献】福井 裕 他,スマートフォンによる作業中の個人向け腰痛アラームシステムの開発,モバイル学会誌,2013年08月01日,Vol. 3, No. 1,pp. 7-12
【文献】長谷川 勝男,三陸沿岸における養殖ワカメ刈取り作業の労働負担分析,日本水産工学会誌,2006年11月15日,Vol. 43, No. 2,pp. 179-184
【文献】佐伯 公康 他,漁港における漁獲物運搬時の腰部椎間板圧迫力の推定,日本水産工学会誌,2014年11月15日,Vol. 51, No. 2,pp. 133-137
【文献】土井 達也 他,ハンドクレーン型パワーアシスト装置のシミュレーション,日本フルードパワーシステム学会論文集,2008年03月31日,Vol. 39, No. 2,pp. 28-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の両大腿部と腹部および肩部のいずれか一方または両方とを固定して装着され、前記装着者の腰部の動作をアシストする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置において、
前記装着式動作補助装置に設けられ、前記装着者の腰部の傾斜角度を当該装着者の体幹角度として継続的に計測する体幹角度計測部と、
前記装着式動作補助装置に設けられ、前記装着者の左右の股関節における屈曲伸展時の動作角度をそれぞれ当該装着者の左右の股関節角度として継続的に計測する股関節角度計測部と、
外部から入力された前記装着者が把持する対象物の重量と前記装着者の身長および体重と、前記装着者の前記体幹角度と当該装着者の左右の前記股関節角度との組合せとに基づいて、前記装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定する椎間板圧迫力推定部と、
前記椎間板圧迫力推定部により推定された前記椎間板圧迫力を負荷レベルに応じて区分すると同時に、当該区分ごとに経過時間を時系列的に計測する区分経過時間計測部と、
前記対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における前記区分経過時間計測部の計測履歴に基づいて、前記装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する腰痛発生リスク予測部と
前記腰痛発生リスク予測部の予測結果に基づいて、前記重筋作業に関する前記装着者の腰部および内骨格系における負荷を軽減するための作業負荷を分析する作業負荷分析部と、
前記作業負荷分析部の分析結果に基づいて、前記装着式動作補助装置による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させるための制御データを生成する最適化制御データ生成部と
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項2】
前記腰痛発生リスク予測部は、前記椎間板圧迫力推定部の推定履歴に基づいて、前記作業時間内に前記椎間板圧迫力の最大値が所定の許容限界値の近傍である場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項に記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項3】
前記腰痛発生リスク予測部は、前記体幹角度計測部の計測履歴に基づいて、前記作業時間内に前記装着者の体幹角度が中腰姿勢となる所定範囲内を所定時間継続する場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項4】
前記腰痛発生リスク予測部は、前記作業時間内における前記椎間板圧迫力推定部および前記区分経過時間計測部の各計測履歴に基づいて、当該作業時間内に前記装着者の腰部にかかる負荷の平均値を算出し、当該平均値が所定の閾値以上になる場合に、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項5】
前記腰痛発生リスク予測部は、前記体幹角度計測部の計測履歴に基づいて、前記作業時間内における前記装着者の体幹角度の最大値と前記対象物の重量との関係性に応じた前記装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項6】
前記腰痛発生リスク予測部は、前記作業時間内における前記区分経過時間計測部の計測履歴に基づいて、当該作業時間内に前記椎間板圧迫力の負荷レベルが所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上の場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項7】
前記装着式動作補助装置は、
前記装着者の腰に装着されかつ左右両側で連結可能な腰フレームと、前記装着者の左右の大腿部に固定されかつ当該各大腿部の外側で連結可能な大腿固定部とをそれぞれ相対的に回転駆動するように駆動トルクを発生して、前記大腿固定部または前記腰フレームを駆動する駆動機構と、
前記駆動機構に設けられ、前記腰フレームと前記大腿固定部との間の回動角度をそれぞれ前記装着者の左右の股関節角度として検出する股関節角度計測部と、
前記股関節角度計測部による前記装着者の左右の前記股関節角度に基づいて、当該装着者の動作および姿勢を判定し、当該判定の結果に応じた駆動トルクを前記駆動機構に発生させる制御部と
を備えることを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項8】
前記装着者の左腿および右腿の動きに伴う大腿直筋および大殿筋の生体信号と、当該装着者の背中の広背筋の生体信号とを検出する生体信号検出部とをさらに備え、
前記制御部は、前記生体信号検出から出力された生体信号と、前記装着者の左右の前記股関節角度とに基づいて、当該装着者の動作および姿勢を判定し、当該判定の結果に応じた駆動トルクを前記駆動機構に発生させる
ことを特徴とする請求項に記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置。
【請求項9】
装着者の両大腿部と腹部および肩部のいずれか一方または両方とを固定して装着され、前記装着者の腰部の動作をアシストする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法において、
前記装着式動作補助装置を装着する前記装着者の腰部の傾斜角度を当該装着者の体幹角度として継続的に計測すると同時に、前記装着者の左右の股関節における屈曲伸展時の動作角度をそれぞれ当該装着者の左右の股関節角度として継続的に計測する第1ステップと、
外部から入力された前記装着者が把持する対象物の重量と前記装着者の身長および体重と、前記第1ステップにより計測される前記装着者の前記体幹角度と当該装着者の左右の前記股関節角度との組合せとに基づいて、前記装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定する第2ステップと、
前記第2ステップにより推定された前記椎間板圧迫力を負荷レベルに応じて区分すると同時に、当該区分ごとに経過時間を時系列的に計測する第3ステップと、
前記対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における前記第3ステップの計測履歴に基づいて、前記装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する第4ステップと、
前記第4ステップの予測結果に基づいて、前記重筋作業に関する前記装着者の腰部および内骨格系における負荷を軽減するための作業負荷を分析する第5ステップと、
前記第5ステップの分析結果に基づいて、前記装着式動作補助装置による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させるための制御データを生成する第6ステップと
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【請求項10】
前記第4ステップでは、
前記第3ステップの推定履歴に基づいて、前記作業時間内に前記椎間板圧迫力の最大値が所定の許容限界値の近傍である場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項に記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【請求項11】
前記第4ステップでは、前記第1ステップの計測履歴に基づいて、前記作業時間内に前記装着者の体幹角度が中腰姿勢となる所定範囲内を所定時間継続する場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【請求項12】
前記第4ステップでは、前記作業時間内における前記第2ステップおよび前記第3ステップの各計測履歴に基づいて、当該作業時間内に前記装着者の腰部にかかる負荷の平均値を算出し、当該平均値が所定の閾値以上になる場合に、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項9から11までのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【請求項13】
前記第4ステップでは、前記第1ステップの計測履歴に基づいて、前記作業時間内における前記装着者の体幹角度の最大値と前記対象物の重量との関係性に応じた前記装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する
ことを特徴とする請求項9から12までのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【請求項14】
前記第4ステップでは、前記作業時間内における前記第3ステップの計測履歴に基づいて、当該作業時間内に前記椎間板圧迫力の負荷レベルが所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上の場合には、前記装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する
ことを特徴とする請求項9から13までのいずれかに記載の装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法に関し、装着者の腰部に装着して重筋作業の動作をアシストする装着式動作補助装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
腰痛は、罹患率、再発率、慢性化率の高い疾患であり、人類の84%が一生に一度は経験すると言われている。従来から、職業性腰痛の発生に起因する作業・環境要因として、対象物の挙上動作、長時間の静的作業姿勢保持、頻回な捻転動作、反復同一動作等が挙げられている。
【0003】
特に職場の自動化や機械化が困難である保健衛生業や運輸・交通業等の従事者は、腰部にかかる身体的負荷の大きい重作業を強いられるため、腰痛の発症リスクが極めて高い。この腰痛の損傷部位である内骨格系における負荷の検証は、対象が人体であることから侵襲的な実験は倫理的観点から避けるべきであるが、非侵襲的に計測することは非常に困難である。
【0004】
従来から重筋作業による腰痛予防方法として、人体の体幹角度および足底荷重に基づいて腰部の負担値(腰椎の椎間板に発生する圧迫力)を算出するとともに、人の基本情報に基づいて腰部への障害発生可能性につながる腰部にかかる負担リスク値(椎間板圧迫力の許容値)を設定し、当該負担値および負担リスク値の比較結果に基づいて、リアルタイムで作業負荷の危険性を警告として発信する腰痛予防装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、使用者の腰部における表皮の曲率と上体における傾斜角度とから算出して得られる、当該使用者における複数の腰椎のそれぞれの位置および向きに基づいて、複数の腰椎のそれぞれにかかる負荷を算出する負荷算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、ユーザの腰と、ユーザが前屈姿勢をとることにより当該腰との高度差を生じる身体の部分との高度差に基づいて、腰痛の発生のおそれがある姿勢をとったユーザに対して警告を発生することができる警報システムが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-183291号公報
【文献】特開2015-134149号公報
【文献】特開2017-136313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、重筋作業のような重量物挙上動作は、作業者の腰部において重量物増加分の腰部モーメントが発生するため、腰部の筋骨格系に負荷がかかり、腰痛症や椎間板ヘルニア症等を患う危険性がある。そのため、負荷評価指標として椎間板への物理的負荷である椎間板圧迫力が利用されてきた。
【0009】
しかし、負荷評価のために椎間板圧迫力を直接測定することは、侵襲性が要求されるため一般的には採用されず、作業者の作業姿勢や重量物や発揮する筋力等から椎間板圧迫力を推定する方法が用いられている。上述した特許文献1~3においても、非侵襲による種々の計測方法を用いて重筋作業による腰痛予防方法を提案している。
【0010】
ところが、特許文献1においては、作業者が作業を実施した際に腰部にかかる負荷を椎間板圧迫力とその許容値とに基づいてリアルタイムで作業負荷の危険性を警告するようになされているが、作業対象となる重量物に対する腰部負担の程度を体幹角度と併せて瞬時的に判断しているにすぎない。
【0011】
また特許文献2においては、複数の腰椎にかかる負荷をそれぞれ測定して、当該各負荷に対応した異なる補助力を使用者に与えるとともに、予め定められた閾値超えをした負荷が所定時間継続する場合に警告を与えるようになされているが、当該閾値が単に予め定められた値であるため、中長期的に生じる慢性の腰痛のおそれに対しては予測することが困難である。
【0012】
さらに特許文献3においては、ユーザが対象物を持ち上げようとする際に、瞬時的に発生する腰の高度差に基づいて腰痛のおそれを判断するだけであるため、慢性的な腰部負担に伴う腰痛発症リスクを推定することが困難である。
【0013】
腰痛予防に対する有効性を示すためには、腰痛の損傷部位である椎間板等の内骨格系における負荷軽減を検証することが重要であるが、瞬時的な負荷のみならず繰返し負荷や継続的負荷も腰痛要因とされるため、力学式による椎間板圧迫力のみに基づく評価指標では、このような繰返し負荷や継続的負荷を正確に評価することが非常に困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、装着者の腰痛発症リスクを非常に高い精度で推定することができる装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するために本発明においては、装着者の両大腿部と腹部および肩部のいずれか一方または両方とを固定して装着され、装着者の腰部の動作をアシストする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置において、装着式動作補助装置を装着する装着者の腰部の傾斜角度を当該装着者の体幹角度として継続的に計測する体幹角度計測部と、外部から入力された装着者が把持する対象物の重量と装着者の身長および体重と、体幹角度計測部により計測される体幹角度とに基づいて、装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定する椎間板圧迫力推定部と、椎間板圧迫力推定部により推定された椎間板圧迫力を負荷レベルに応じて区分すると同時に、当該区分ごとに経過時間を時系列的に計測する区分経過時間計測部と、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における区分経過時間計測部の計測履歴に基づいて、装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する腰痛発生リスク予測部とを備えるようにした。
【0016】
このように装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、対象物の重量、装着者の身長および体重ならびに装着者の体幹角度に基づいて、装着者の椎間板圧迫力を継続的に推定し、当該椎間板圧迫力を負荷レベルに応じた区分ごとに経過時間を時系列的に計測しながら、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における装着者の腰痛症状の発生リスクを予測するようにした。この結果、装着者の腰部にかかる瞬間的負荷のみならず繰返し負荷や継続的負荷についても腰痛症状の発生リスクの予測指標を得ることができる。
【0017】
また本発明においては、装着式動作補助装置に設けられ、装着者の左右の股関節における屈曲伸展時の動作角度をそれぞれ当該装着者の左右の股関節角度として継続的に計測する股関節角度計測部をさらに備え、椎間板圧迫力推定部は、装着者の体幹角度と当該装着者の左右の股関節角度との組合せに基づいて、当該装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定するようにした。
【0018】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、装着者の体幹角度に加えて装着者の左右の股関節角度を組み合わせることにより、該装着者の椎間板圧迫力の推定精度を向上させることができる。
【0019】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部は、椎間板圧迫力推定部の推定履歴に基づいて、作業時間内に椎間板圧迫力の最大値が所定の許容限界値の近傍である場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断するようにした。
【0020】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、作業時間内にリアルタイムで椎間板圧迫力を計測しながら、その最大値が瞬間的に許容限界値の近傍に達した場合には、腰痛症状の発生リスクがあると判断することができる。
【0021】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部は、体幹角度計測部の計測履歴に基づいて、作業時間内に装着者の体幹角度が中腰姿勢となる所定範囲内を所定時間継続する場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断するようにした。
【0022】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、装着者が中腰姿勢を所定時間継続する場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0023】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部は、作業時間内における椎間板圧迫力推定部および区分経過時間計測部の各計測履歴に基づいて、当該作業時間内に装着者の腰部にかかる負荷の平均値を算出し、当該平均値が所定の閾値以上になる場合に、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断するようにした。
【0024】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、作業時間内における装着者の腰部にかかる負荷が瞬間的に高くなく、かつ中腰姿勢の時間的長さが比較的短くても、当該負荷が平均して所定の閾値以上になる場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0025】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部は、体幹角度計測部の計測履歴に基づいて、作業時間内における装着者の体幹角度の最大値と対象物の重量との関係性に応じた装着者の腰痛症状の発生リスクを予測するようにした。
【0026】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、作業時間内における装着者の中腰姿勢に対して対象物の重量が許容範囲よりも大きい場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0027】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部は、作業時間内における区分経過時間計測部の計測履歴に基づいて、当該作業時間内に椎間板圧迫力の負荷レベルが所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上の場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断するようにした。
【0028】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、作業時間内に椎間板圧迫力の負荷レベルが極端に大きくない状態が続いても、所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上になる場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0029】
さらに本発明においては、腰痛発生リスク予測部の予測結果に基づいて、重筋作業に関する装着者の腰部および内骨格系における負荷を軽減するための作業負荷を分析する作業負荷分析部と、作業負荷分析部の分析結果に基づいて、装着式動作補助装置による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させるための制御データを生成する最適化制御データ生成部とを備えるようにした。
【0030】
この結果、装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置では、装着式動作補助装置による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させることによって、重筋作業に関する装着者の腰部および内骨格系における作業負荷を軽減することができる。
【0031】
さらに本発明においては、装着者の両大腿部と腹部および肩部のいずれか一方または両方とを固定して装着され、装着者の腰部の動作をアシストする装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法において、装着式動作補助装置を装着する装着者の腰部の傾斜角度を当該装着者の体幹角度として継続的に計測する第1ステップと、外部から入力された装着者が把持する対象物の重量と装着者の身長および体重と、第1ステップにより計測される体幹角度とに基づいて、装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定する第2ステップと、第2ステップにより推定された椎間板圧迫力を負荷レベルに応じて区分すると同時に、当該区分ごとに経過時間を時系列的に計測する第3ステップと、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における第3ステップの計測履歴に基づいて、装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する第4ステップとを備えるようにした。
【0032】
このように装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価方法では、対象物の重量、装着者の身長および体重ならびに装着者の体幹角度に基づいて、装着者の椎間板圧迫力を継続的に推定し、当該椎間板圧迫力を負荷レベルに応じた区分ごとに経過時間を時系列的に計測しながら、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における装着者の腰痛症状の発生リスクを予測するようにした。この結果、装着者の腰部にかかる瞬間的負荷のみならず繰返し負荷や継続的負荷についても腰痛症状の発生リスクの予測指標を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、装着者の腰痛発症リスクを非常に高い精度で推定することができる装着式動作補助装置を用いた腰部負荷評価装置および腰部負荷評価方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る装着式動作補助装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】同発明の実施形態に係る装着式動作補助装置の主要構成を示す斜視図である。
図3】装着者が装着式動作補助装置を装着した状態を背面側から示す斜視図である。
図4】装着式動作補助装置を装着した装着者の動作状態を示す側面図である。
図5】装着式動作補助装置の可動範囲を示す側面図である。
図6】装着式動作補助装置の制御系を示すブロック図である。
図7】各腰椎における屈曲・伸展の可動域の割合の説明に供する略線図である。
図8】椎間板圧迫力の推定理論で用いる力学モデルの説明に供する略線図である。
図9】腰部負荷評価装置の構成を示すブロック図である。
図10】椎間板圧迫力を複数段階に区分した負荷レベルの説明に供するグラフおよび図表である。
図11】装着者の作業姿勢および把持する対象物の重量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0036】
(1)本実施の形態による装着式動作補助装置の構成
図1(A)および(B)は、本実施の形態による装着式動作補助装置1を示す。また図2(A)および(B)は、図1の装着式動作補助装置1のうち大腿カフやベルト等を除いた主要構成について示す。装着式動作補助装置1は、装着者の作業や動作を支援(アシスト)する装置であり、脳からの信号により筋力を発生させる際に生じる生体信号(表面筋電位)や当該装着者の股関節の動作角度を検出し、この検出信号に基づいて駆動機構からの駆動力を付与するように作動する。
【0037】
装着式動作補助装置1を装着した装着者は、自らの意思で比較的重い対象物を持ち上げて運搬動作を行う場合、その際に発生した広背筋または大殿筋(大臀筋)の生体信号や当該装着者の股関節の動作角度に応じた駆動トルクがアシスト力として装着式動作補助装置から付与される。従って、装着者は、自身の筋力と駆動機構(アクチュエータ)からの駆動トルクとの合力によって対象物を持ち上げて運搬することができる。
【0038】
また装着式動作補助装置1は、対象物を持ち上げて歩行する運搬作業以外にも、例えば、装着者が荷物を持ったまま階段を上り下りするといった昇降作業も補助することができる。
【0039】
装着式動作補助装置1では、装着者の腰の背面側において、左右方向にわたって腰フレーム2が装着されている。腰部フレーム2は、例えば、CFRP(carbon - fiber - reinforced plastic:炭素繊維強化プラスチック)製の中空部材であり、人体の腰部の背面および両側面の形状に合わせてラウンドした形状を有する。
【0040】
腰部フレーム2は、装着者の腰部の背面側において、左右にわたって装着される第1腰部フレーム2Aと、当該第1腰部フレーム2Aよりも上側で左右方向にわたって装着される第2腰部フレーム2Bとが支柱3を介して接続するように構成されている。
【0041】
第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2Bは、装着者の腹側にわたされる装着ベルト4、5よって、装着者の腰部に装着される。第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2Bは、装着された状態では、背面側よりも両端側が低くなるように、すなわち、長手方向の中央部(装着者の背面側に位置する部分)よりも両端が低い位置に位置するように、前傾姿勢で装着される。
【0042】
第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2Bの両端には、左側部フレーム10および右側部フレーム11が固定されている。
【0043】
また、装着式動作補助装置1の装着側とは反対側の外側において、第1腰部フレーム2Aの中央部には、バッテリ12が着脱自在に収納されるとともに、当該バッテリ12に接続される配線等が内部空間内に挿通されている。
【0044】
支柱3は、第1腰部フレーム2Aの長手方向の中央部と、第2腰部フレーム2Bの長手方向の中央部とを縦方向に接続する部材である。支柱3は、例えば、強化樹脂製の中空部材であり、内部には、センサの配線が挿通される。また、支柱3の内部には、装着式動作補助装置1の動作を制御する制御装置33(後述する図6)が設けられる。
【0045】
支柱3によって第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2Bを構成する各種部材が回転しないように保持されることによって、モノコック構造の強度が担保されている。また、支柱3には、第1腰部フレーム2Aに対応する装着ベルト4と第2腰部フレーム2Bに対応する装着ベルト5がそれぞれ取り付けられる。
【0046】
左側部フレーム10は、装着者の股関節の左側において、第1腰部フレーム2Aの左端と第2腰部フレーム2Bの左端とを接合して固定する。右側部フレーム11は、左側部フレーム10と略左右対称の構造を有し、第1腰部フレーム2Aの右端と第2腰部フレーム2Bの右端とを接合して固定する。
【0047】
左側部フレーム10には、アクチュエータおよびブレーキ機構(共に図示せず)が内蔵され、当該アクチュエータの駆動力を低下させるための入力用のマイナスボタン13が設けられている。このマイナスボタン12は、装着式動作補助装置の電源がオン状態のとき点灯する。
【0048】
右側部フレーム11には、アクチュエータおよびブレーキ機構(共に図示せず)が内蔵され、当該アクチュエータの駆動力を増大させるための入力用のプラスボタン14と、装着式動作補助装置1の電源をオン/オフを切り替えるための電源ボタン15とが設けられている。このプラスボタン14および電源ボタン15は、装着式動作補助装置1の電源がオン状態のとき点灯する。
【0049】
このように腰部フレーム(第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2B)、支柱3、側部フレーム(左側部フレーム10および右側部フレーム11)は、一体構成となるように組み立てることにより、フレーム自体に応力を受け持たせるモノコック構造を実現している。
【0050】
図1(A)および(B)において、大腿固定部20は、装着者の左側の大腿部を固定する左大腿固定部20Lと、装着者の右側の大腿部を固定する右大腿固定部20Rとからなる。
【0051】
左大腿固定部20Lは、左側部フレーム10内のアクチュエータに接続されたステー部21Lと、当該ステー部21Lに取り付けられたベルト部22Lとから構成され、左側部フレーム10に対して側面視で回動可能に設けられている。
【0052】
また右大腿固定部20Rは、右側部フレーム11内のアクチュエータに接続されたステー部21Rと、当該ステー部21Rに取り付けられたベルト部22Rとから構成され、右側部フレーム11に対して側面視で回動可能に設けられている。
【0053】
なお、左大腿固定部20Lおよび右大腿固定部20Rにおいて、ステー部21L、21Rは人体の大腿部の平均的長さを基準に最適長に設計され、ベルト部22L、22Rによって装着者の大腿部が固定される。
【0054】
装着ベルト4は、第1腰部フレーム2Aを装着者に取り付ける際に、腹側にわたされる装着ベルトであり、装着式動作補助装置1を人体の腰部に取り付けるためのメインとなる。
【0055】
装着ベルト5は、第2腰部フレーム2Bを装着者に取り付ける際に、腹側にわたされる装着ベルトである。装着ベルト5は、装着式動作補助装置1の装着者が膝を曲げた状態から比較的重い対象物を持ち上げる動作を行うときに、脚の動きに伴って生じる反力を装着者の腹部または腰部に効率的に伝達するために、装着ベルト5よりも上側で人体に装着式動作補助装置1を固定するために用いられる。
【0056】
バッテリ12は、装着式動作補助装置1の装着側とは反対側の外側において、第1腰部フレーム2Aの中央部の外側に設けられ、制御装置33(図6)、アクチュエータ、ブレーキ機構16(図6)、マイナスボタン13、プラスボタン14および電源ボタン15に電力を供給する。
【0057】
センサ23は、図1(B)に示すように、装着者の腰部の背面に装着され、装着者が体幹を起こそうとする際の筋活動あるいは体幹の角度を維持しようとする際の筋活動に伴う生体信号を検出する検出部である。
【0058】
センサ23は、支柱3に設けられた孔部から支柱の外側に伸延する配線の先端に接続されており、3つ設けられている。センサ23は、装着者の腰部の背面に貼り付けられることによって、装着者が体幹の筋肉を動かす際に発生する生体信号を検出する。
【0059】
センサ23で検出された生体信号は、制御装置33(図6)に入力される。なお、センサ23は、テープ等を用いて装着者の背中に貼り付けてもよいし、ゲル等を用いて貼り付けてもよい。3つのセンサ23のうちの1つは、基準信号を測定するために用いられ、残りの2つのセンサは、生体電位信号を測定するために用いられる。
【0060】
実際に、装着式動作補助装置1は、図3(A)に示すように、装着者の腰部に背面側から装着される。装着式動作補助装置1は、装着者が図4(A)に示すように屈んだ状態(中腰姿勢)から、図4(B)に示すように立ち上がる際に、腰部に対する大腿部の動きを補助するように補助力(アシスト力)を発生する装置である。このような装着者の動作は、例えば、中腰姿勢から立ち上がる動作、中腰姿勢から対象物を持ち上げる動作、移乗介助時の動作等である。
【0061】
図5は、装着式動作補助装置1の可動範囲を示す図(左側面図)である。左大腿固定部20Lは、左側部フレーム10を回転中心として、図5に示す基準位置から、時計回りに130°、反時計回りに30°回動可能である。このような動作により、装着式動作補助装置1は、装着者が図4(A)に示すように屈んだ状態から、図4(B)に示すように立ち上がる際に、腰部に対する大腿部の動きを補助するように補助力を発生する。なお、右大腿固定部20Rの動作範囲も同様である。
【0062】
(2)装着式動作補助装置における制御システムの構成
図6は装着式動作補助装置1の制御系システム30の構成を示すブロック図である。図6に示すように、装着式動作補助装置1の制御系システム30は、装着者に対してアシスト力を付与する駆動機構31と、装着者の股関節角度(物理現象)を検出する股関節角度計測部32と、システム全体を統括的に制御する制御装置33とを備えている。
【0063】
駆動機構31は、装着者の腰に装着されかつ左右両側で連結可能な腰フレーム2(第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2B)と、装着者の左右の大腿部に固定されかつ当該各大腿部の外側で連結可能な大腿固定部20(左大腿固定部20Lおよび右大腿固定部20R)とをそれぞれ相対的に回転駆動するように駆動トルクを発生して、大腿固定部20または腰フレーム2を駆動する。
【0064】
股関節角度計測部33は、駆動機構31に設けられ、腰フレーム2(第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2B)の左右両側と大腿固定部20(左大腿固定部20Lおよび右大腿固定部20R)との間の回動角度をそれぞれ装着者の左右の股関節角度として検出する。すなわち、股関節角度計測部32は、装着者の左右の股関節における屈曲伸展時の動作角度をそれぞれ当該装着者の左右の股関節角度として継続的に計測する。
【0065】
制御装置33は、股関節角度計測部32による装着者の左右の股関節角度に基づいて、当該装着者の動作および姿勢を判定し、当該判定の結果に応じた駆動トルクを駆動機構31に発生させる。
【0066】
また装着式動作補助装置1は、装着者の左腿および右腿の動きに伴う大腿直筋および大殿筋の生体信号と、当該装着者の背中の広背筋の生体信号とを検出する生体信号検出部34を有する。制御装置33は、生体信号検出部34から出力された生体信号と、装着者の左右の股関節角度とに基づいて、当該装着者の動作および姿勢を判定し、当該判定の結果に応じた駆動トルクを駆動機構31に発生させる。
【0067】
駆動機構31は、装着者が対象物を持ち上げる際は、腰フレーム2(第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム)に同時に駆動トルクを伝達して当該腰フレームを装着者の背中側に駆動する一方、装着者の歩行および階段の昇降時には、大腿固定部20(左大腿固定部20Lおよび右大腿固定部)に駆動トルクを伝達して左右の大腿固定部を交互に前後方向に駆動するようになされている。
【0068】
なお、駆動機構31は、アクチュエータ(駆動モータ)からなる。股関節角度計測部32は、関節回動角度を検出する角度センサからなる。生体信号検出部34は、生体信号検出センサからなる。
【0069】
また第1腰フレーム2Aには、後述する腰部負荷評価装置60(すなわち、制御装置33内の制御系構成要素)における体幹角度計測部61(図9)として、装着者の腰部の傾斜角度を計測する絶対角度センサが設けられている。
【0070】
また、データ格納部50には、基準パラメータデータベース51と、指令信号データベース52とが格納されている。
【0071】
制御装置33は、例えば、メモリを有するCPU(Central Processing Unit)チップで構成され、随意的制御部40と自律的制御部41とフェーズ特定部42とゲイン変更部43とを備えている。
【0072】
随意的制御部40は、生体信号検出部34の検出信号に応じた指令信号を電力増幅部44に供給する。随意的制御部40は、生体信号検出部34に所定の指令関数f(t)またはゲインGを適用して指令信号を生成する。このゲインGは予め設定された値又は関数でも良く、ゲイン変更部43を介して調整することができる。
【0073】
また、装着者の皮膚が汗で濡れることが予想される場合には、生体信号検出部34からの生体信号の入力が得られないときに、股関節角度計測部32により検出された各データ(角度センサにより検出された関節角度データ)に基づいて各アクチュエータ(駆動モータ)の駆動トルクを制御する方法を選択することも可能である。
【0074】
股関節角度計測部32によって検出された股関節角度は、基準パラメータデータベース51に入力される。フェーズ特定部42では、股関節角度計測部32により検出された関節角度を基準パラメータデータベース51に格納された基準パラメータの関節角度と比較することにより、装着者の動作のフェーズを特定する。
【0075】
そして、自律的制御部41では、フェーズ特定部42により特定されたフェーズの制御データを得ると、このフェーズの制御データに応じた指令信号を生成し、この動力を駆動機構31に発生させるための指令信号を電力増幅部44に供給する。
【0076】
データ格納部50は、各データを格納するメモリを有し、起立動作、歩行動作や着席動作など各動作パターン(タスク)毎に設定されたフェーズ単位の制御データが予め格納されたデータベース格納領域と、各アクチュエータを制御するための制御プログラムが格納された制御プログラム格納領域などが設けられている。データベース格納領域には、基準パラメータデータベース51と指令信号データベース52が格納されている。
【0077】
また制御装置33には、構成要素として、マイナスボタン13、プラスボタン14および電源ボタン15のボタン群と、アクチュエータの回転動作に対して制動力を発生させるブレーキ機構16とが接続されている。
【0078】
制御装置33は、電源ボタン15が押下されると電源オン状態にし、マイナスボタン13、プラスボタン14および電源ボタン15を点灯させるとともに、ブレーキ機構をオン状態にして、大腿固定部20が動かされると抵抗力を発生させる。
【0079】
そして、センサ23によって検出された生体信号が入力されると、マイナスボタン13またはプラスボタン14によって入力されるアクチュエータの駆動レベルに応じた駆動力をアクチュエータに発生させる。マイナスボタン13またはプラスボタン14は、制御装置33のトルクチューナを制御するためのボタンであり、トルクチューナは、アシスト力を5段階に設定することができる。
【0080】
例えば、トルクチューナを「1」に設定した場合には、20%のアシストトルクを上限とし、最大3Nmのアシストが受けられ、トルクチューナを「5」に設定した場合には、100%のアシストトルクを上限とし、最大15Nmのアシストが受けられる。また、トルクの上限を設定するためのトルクリミッタを設けてもよい。
【0081】
この際に、制御装置33は、センサから入力される生体信号の信号レベルに応じて、駆動力を制御する。アシストを行うために本装置にはサイバニック随意制御(CVC:Cybernic Voluntary Control)モードが搭載されている。
【0082】
CVCモードのとき本装置内部の制御系システム30において、以下(i)~(iii)の順序でアシストトルクを決定する。(i)腰部の生体電位信号から基準アシストトルクを計算する。(ii)トルクチューナの値に基づき基準アシストトルクを増幅する。(iii)姿勢や動作内容に応じてアシストトルクを調整する。
【0083】
また、制御装置33は、アクチュエータの回転動作時に、大腿固定部20と第1腰部フレーム2Aおよび第2腰部フレーム2Bとから入力される装着者の反力を検出し、反力が所定レベル以下になると、ブレーキ機構16の抵抗力を増大させて、アクチュエータの動作を停止させる。反力が所定レベル以下になる状態は、例えば、大腿固定部20の装着ベルト4、5が外れた状態で、安全性を確保するために動作を停止させる必要があるためである。
【0084】
実施の形態の装着式動作補助装置1によれば、装着者が図4(A)に示すように屈んだ状態から、図4(B)に示すように立ち上がる際に、腰部に対する大腿部の動きを補助するように補助力を発生することができる。
【0085】
このような補助力は、センサ23によって検出される、装着者が体幹を起こそうとする際の筋活動あるいは体幹の角度を維持しようとする際の筋活動に伴う生体信号に基づいてアクチュエータが駆動されることによって発生される。
【0086】
従って、装着者の意志に応じて必要な補助力を必要な方向に提供できる、利便性の高い装着式動作補助装置を提供することができる。また、装着者が自ら発生すべき動力(筋力)を可及的に抑えることができ、かつ、装着者の利便性を損なう事態を抑えることのできる装着式動作補助装置1を提供することができる。
【0087】
なお、制御装置33は、装着者の左右大腿の生体信号の信号レベルが左右均等でないと判断した場合は、装着者が歩行中であると判定する一方、当該信号レベルが左右均等であると判断した場合は、装着者が停止状態にあると判定するようになされている。
【0088】
また、制御装置33は、装着者が停止状態にあると判定した状態において、左右の股関節角度が共に所定の規定角度より大きいと判断した場合は、当該装着者が歩行中であると判定する一方、当該規定角度以下であると判断した場合、当該装着者が上体を前方に低くした姿勢であると判定するようになされている。
【0089】
(3)人間の内骨格構造に基づく腰痛要因
人間の骨格の中でも脊柱は、体幹を支える支持作用、脊髄を保護する保護作用等の重要な役割を担っている。脊柱は、前額面においては直線的かつ左右対称であり、矢状面においてはS字状に湾曲(生理的彎曲)している。
【0090】
脊柱は33個の椎骨で形成され、椎骨は上から順に7個を頸椎(Cervical vertebrae:C1~C7)、12個を胸椎(Thoracic vertebrae:T1~T12)、5個を腰椎(Lumbar vertebrae:L1~L5)、5個を仙椎(Sacrum:S1~S5)、4個を尾椎(Coccyx)と言われている。
【0091】
それぞれの椎骨は、前部は椎間板で後部は椎弓によって結合し連なっている。椎骨と椎骨の間に存在する椎間板は、中心に髄核があり、その回りを線維輪が取り巻き、前後の靱帯によって椎体間におさまり緩衝の役割を果たしている。
【0092】
椎骨は、前部にある円形状の椎体と後部にあるアーチ状の椎弓から成り、椎弓には上・下関節突起、棘突起、横突起がある。椎体と椎間板のことを前部脊柱と言い、脊柱の支持の役割を担っている。また、椎弓と関節突起のことを後部脊柱と言い、運動の調節機能を担っている。
【0093】
脊柱の運動に関して重要なのは、椎間関節と椎体間の連結であり、胸椎と腰椎の椎間関節面の違いを図7に示す。頸椎の椎間関節は、関節面は平面に近いため上位頸椎以外は屈曲、伸展、側屈をする。回旋運動はC1、C2で行われる。胸椎の椎間関節は外開きの斜位をとり、同時に胸郭も付随するため、回旋と側屈はできるが屈曲・伸展はできない。
【0094】
腰椎では関節面が縦になるため、回旋、側屈ができず屈曲・伸展のみ可能である。図7に示すように、腰椎の屈曲・伸展動作は第1、2腰椎間(L1-L2)、第2、3腰椎間(L2-L3)、第3、4腰椎間(L3-L4)で5~10%、第4、5腰椎間(L4-L5)で20%、第5腰椎仙椎間(L5-S1)で70~75%の割合で行われると言われている。
【0095】
腰痛には、身体的要因と心理的要因があり、身体的要因のほとんどは、筋肉、靱帯、骨、椎間板の損傷が原因である。椎間板損傷の代表例として椎間板ヘルニア症がある。ヘルニアとは、体内の臓器等が本来あるべき部位から脱出した状態を指し、椎間板ヘルニアは椎間板の一部が正常の椎間腔を超えて突出した状態である。
【0096】
腰椎の中でL5-S1に存在する椎間板は可動椎と不動椎の移行部に存在するため、体幹の屈曲に際してより大きな負荷がかかり、椎間板は損傷を受けやすい。そのため、椎間板ヘルニア症の95%は、L4-L5、L5-S1の椎間板で発症する。椎間板の周囲には知覚繊維が分布しており、椎間板内圧が高まる姿勢をとった場合、その神経が刺激され痛みが生じる。
【0097】
(4)椎間板圧迫力の推定理論と腰部負荷
以下において、作業姿勢や対象物や発揮する筋力等から椎間板への物理的負荷である椎間板圧迫力を負荷評価指標として推定する方法を述べる。
【0098】
図8(A)に示す力学モデルについて、2次元の静的作業におけるL5-S1の椎間板にかかる椎間板圧迫力の推定式について説明する。上半身の重量W[kg]は、装着者の体重をW[kg]とすると、次式(1)のように近似することができる。
【数1】
【0099】
L5-S1の椎間板から上半身の重心までの水平距離G[m]は、装着者の身長をL[m]、体幹角度(肩-大転子線と鉛直線のなす角度)をθ[deg]とすると、次式(2)のように近似することができる。
【数2】
【0100】
同様に対象物の重心までの水平距離G[m]は、装着者の椎間板から肩までの距離をL[m]とすると、次式(3)で与えられる。
【数3】
【0101】
装着者の体重と対象物の重量によって生じるL5-S1の椎間板周りの腰部モーメントM[Nm]は、次式(4)によって与えられる。ただし、g[Nm/s2]は重力加速度、W[kg]は把持対象物の重量である。
【数4】
【0102】
腰椎を安定させている筋には、脊柱起立筋群と腹直筋、内・外腹斜筋、腹横筋等の腹筋群がある。腹腔は液体と半ば流動体に近いものが詰まっており、密閉可能な体腔である。腹腔内圧の上昇は腹筋群および横隔膜の収縮で起こる。腹腔の空間が圧迫されると、それを保持する力が生じ、脊柱にかかる力を分散することになり圧迫力は減少する。しかし、強い前屈や中腰で体幹部が曲がると、腹壁がたるんでしまうため腹圧は減少してしまう。
【0103】
腹腔内圧による力F[N]はFisherの推定式から次式(5)で表すことができる。ただし、θ[deg]は股関節の関節角度、A[m2]は横隔膜面積であり、0.0465[m2]を用いる。
【数5】
【0104】
腹腔内圧のモーメントアームD[m]は、Morrisらの推定式より、股関節の関節角度θを用いて、次式(6)のように推定される。
【数6】
【0105】
脊柱起立筋による力F[N]は次式(7)で与えられる。ただし、D[m]は脊柱起立筋のモーメントアームであり0.05[m]を用いる。
【数7】
【0106】
L5-S1の椎間板は、図8(B)に示すように関節面が傾いているため、椎間板圧迫力と椎間板せん断力がかかり、それぞれの力の割合は関節面の傾斜角に依存する。L5-S1の椎間板の関節面は骨盤の回旋角で決まり、骨盤回旋は体幹が屈曲するほど増加するが、中腰で股関節と膝関節の屈曲が起こると減少する。
【0107】
L5-S1の椎間板の関節面の傾斜角θ[deg]はAndersonらの推定式より次式(8)で推定する。ただし、θ[deg]は膝関節の関節角度である。なお、膝関節の関節角度θは、計測される股関節の関節角度θと体幹角度θから推定することが可能である。
【数8】
【0108】
椎間板を損傷するのは、椎間板を垂直に圧迫する椎間板圧迫力であり、椎間板圧迫力F[Nm]は次式(9)により与えられる。
【数9】
【0109】
椎間板せん断力F[Nm]は、次式(10)により与えられる。
【数10】
【0110】
L5-S1の椎間板にかかる椎間板圧迫力の許容限界は、米国国立労働衛生研究所NIOSH(National Institute for Occupational Safety Health)により3,400[N]と定められており、これを超えると腰痛が生じるとされている。
【0111】
例えば、身長1.75[m]、体重65[kg]の人が体幹を60[deg]屈曲させた姿勢で、30[kg]の対象物を把持している条件で、上述の式(9)を計算すると約3,525[N]の椎間板圧迫力がL5-S1の椎間板にかかる。これはL5-S1の椎間板にかかる椎間板圧迫力の許容限界を超えている。
【0112】
(5)本実施の形態による腰部負荷評価装置の構成
本発明においては、上述した装着式動作補助装置1を用いた腰部負荷評価装置60により、装着者の腰痛発症リスクを非常に高い精度で推定するようになされている。
【0113】
この腰部負荷評価装置60は、上述した図6に示す装着式動作補助装置1内の制御装置33内に設けられた制御系構成要素であり、図9に示すように、体幹角度計測部61と椎間板圧迫力推定部62と区分経過時間計測部63と腰痛発生リスク予測部64とを備える。さらに後述するように、装着式動作補助装置1による動作支援ようの制御パフォーマンスを最適化させるための作業負荷分析部70および最適化データ生成部71も備えている。
【0114】
体幹角度計測部61は、腰フレーム2(特に第1腰フレーム2A)に取り付けられた絶対角度センサを用いて、装着者の腰部の傾斜角度を当該装着者の体幹角度として継続的に計測する。
【0115】
椎間板圧迫力推定部62は、外部から入力された装着者が把持する対象物の重量と装着者の身長および体重と、体幹角度計測部61により計測される体幹角度とに基づいて、装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定する。
【0116】
さらに装着者の椎間板圧迫力の推定精度を向上させるべく、椎間板圧迫力推定部62は、装着者の体幹角度と当該装着者の左右の股関節角度との組合せに基づいて、当該装着者の椎間板の椎体連結方向に加わる椎間板圧迫力を継続的に推定するようにしてもよい。
【0117】
なお、対象物の重量は、装着者の両足にそれぞれ床反力センサ(図示せず)を搭載しておき、当該対象物を把持した分の増加量として計量するようにしてもよい。また装着者の身長および体重は、装着式動作補助装置1に付随する所定の入力装置(図示せず)を用いて入力される。
【0118】
区分経過時間計測部63は、椎間板圧迫力推定部62により推定された椎間板圧迫力を負荷レベルに応じて区分すると同時に、当該区分ごとに経過時間を時系列的に計測する。
【0119】
図10(A)に把持する対象物の重量と椎間板圧力との関係に基づいて、図10(B)に示すように椎間板圧迫力を5段階の負荷レベルに区分する。具体的に椎間板圧迫力が1,800[N]未満を負荷レベル1、1,800[N]以上2,200[N]未満を負荷レベル2(低負荷)、2,200[N]以上2,600[N]未満を負荷レベル3(中負荷)、2,600[N]以上3,000[N]未満を負荷レベル4、3,000[N]以上を負荷レベル5(高負荷)と区分する。
【0120】
また図11に装着者の作業姿勢および把持する対象物の重量との関係を示す。例えば対象物の重量が10[kg]の場合、装着者の体幹角度が70[deg]では低負荷レベルの作業を行うことがわかる。
【0121】
腰痛発生リスク予測部64は、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における区分経過時間計測部63の計測履歴に基づいて、装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する。
【0122】
このように装着式動作補助装置1を用いた腰部負荷評価装置60では、対象物の重量、装着者の身長および体重ならびに装着者の体幹角度に基づいて、装着者の椎間板圧迫力を継続的に推定し、当該椎間板圧迫力を負荷レベルに応じた区分ごとに経過時間を時系列的に計測しながら、対象物を取り扱う重筋作業の作業時間内における装着者の腰痛症状の発生リスクを予測するようにした。この結果、装着者の腰部にかかる瞬間的負荷のみならず繰返し負荷や継続的負荷についても腰痛症状の発生リスクの予測指標を得ることができる。
【0123】
また腰部負荷評価装置60では、腰痛発生リスク予測部64は、椎間板圧迫力推定部62の推定履歴に基づいて、作業時間内に椎間板圧迫力の最大値が所定の許容限界値(3,400[N])の近傍である場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する。
【0124】
この結果、腰部負荷評価装置60では、作業時間内にリアルタイムで椎間板圧迫力を計測しながら、負荷レベルの区分に関係なく、その最大値が瞬間的に許容限界値の近傍に達した場合には、腰痛症状の発生リスクがあると判断することができる。
【0125】
さらに腰部負荷評価装置60では、腰痛発生リスク予測部64は、体幹角度計測部61の計測履歴に基づいて、作業時間内に装着者の体幹角度が中腰姿勢となる所定範囲内(例えば45±3[deg])を所定時間継続する場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する。この結果、腰部負荷評価装置60では、装着者が中腰姿勢を所定時間継続する場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0126】
さらに腰部負荷評価装置60では、腰痛発生リスク予測部64は、作業時間内における椎間板圧迫力推定部62および区分経過時間計測部63の各計測履歴に基づいて、当該作業時間内に装着者の腰部にかかる負荷の平均値を算出し、当該平均値が所定の閾値以上になる場合に、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する。
【0127】
この結果、腰部負荷評価装置60では、作業時間内における装着者の腰部にかかる負荷が瞬間的に高くなく、かつ中腰姿勢の時間的長さが比較的短くても、当該負荷が平均して所定の閾値以上になる場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0128】
さらに腰部負荷評価装置60では、腰痛発生リスク予測部64は、体幹角度計測部61の計測履歴に基づいて、作業時間内における装着者の体幹角度の最大値と対象物の重量との関係性に応じた装着者の腰痛症状の発生リスクを予測する。
【0129】
この結果、腰部負荷評価装置60では、作業時間内における装着者の中腰姿勢に対して対象物の重量が許容範囲よりも大きい場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0130】
さらに腰部負荷評価装置60では、腰痛発生リスク予測部64は、作業時間内における区分経過時間計測部63の計測履歴に基づいて、当該作業時間内に椎間板圧迫力の負荷レベルが所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上の場合には、装着者の腰痛症状の発生リスクが高いと判断する。
【0131】
この結果、腰部負荷評価装置60では、作業時間内に椎間板圧迫力の負荷レベルが極端に大きくない状態が続いても、所定レベル以上の区分に該当する累積時間が所定時間以上になる場合には、腰痛症状の発生リスクが高いと判断することができる。
【0132】
さらに腰部負荷評価装置60では、作業負荷分析部70は、腰痛発生リスク予測部64の予測結果に基づいて、重筋作業に関する装着者の腰部および内骨格系における負荷を軽減するための作業負荷を分析する。そして最適化制御データ生成部71は、作業負荷分析部70の分析結果に基づいて、装着式動作補助装置1による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させるための制御データを生成する。
【0133】
装着式動作補助装置1による動作支援用の制御パフォーマンスとしては、駆動機構(アクチュエータ)31の平均出力トルクや最大出力トルク、トルクチューナ設定等が挙げられる。
【0134】
この結果、装着式動作補助装置1を用いた腰部負荷評価装置60では、装着式動作補助装置1による動作支援用の制御パフォーマンスを最適化させることによって、重筋作業に関する装着者の腰部および内骨格系における作業負荷を軽減することができる。
【0135】
(6)他の実施の形態
なお本実施の形態においては、装着式動作補助装置として、装着者の両大腿部および腹部を固定して装着し、装着者の腰部の動作をアシストする構成のものを適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、装着者の腰部の動作をアシストすることができれば、装着者の両大腿部と腹部および肩部のいずれか一方または両方とを固定して装着する構成のものを適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…装着式動作補助装置、2…腰フレーム、2A…第1腰フレーム、2B…第2腰フレーム、3…支柱、4、5…装着ベルト、10…左側部フレーム、11…右側部フレーム、12…バッテリ、13…マイナスボタン、14…プラスボタン、15…電源ボタン、16…ブレーキ機構、20…大腿固定部、20L…左大腿固定部、20R…右大腿固定部、21L、21R…ステー部、22L、22R…ベルト部、30…制御系システム、31…駆動機構、32…股関節角度計測部、33…制御装置、34…生体信号検出部、40…随意的制御部、41…自律的制御部、42…フェーズ特定部、43…ゲイン変更部、44…電力増幅部、50…データ格納部、51…基準パラメータデータベース、52…指令信号データベース、60…腰部負荷評価装置、61…体幹角度計測部、62…椎間板圧迫力推定部、63…区分経過時間計測部、64…腰痛発生リスク予測部、70…作業負荷分析部、71…最適化制御データ生成部。
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