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  • 特許-ベンチレーションマット及び座席 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ベンチレーションマット及び座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20231114BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019175258
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049911
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】宮野 大助
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】山口 夢里
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221419(WO,A1)
【文献】特許第4999455(JP,B2)
【文献】特開2018-083494(JP,A)
【文献】特開2012-001134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A47C 7/74,27/00
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブがシート状に連結されたベンチレーションマット本体と、
ファン取付け孔が設けられた通風ガイドを有し、
前記ベンチレーションマット本体は、
前記複数のチューブの一方の側に前記複数のチューブに跨がるようにスリットが設けられ、前記複数のチューブのもう一方の側に前記チューブの素材で連結されるベンチレーション部を有し、
前記通風ガイドは、
通気性のある立体構造を備える基材と、
前記基材の周囲を覆う非通気性材と、を有し
前記複数のチューブと前記基材が空気循環可能なように連通されており、
前記ベンチレーションマット本体と前記通風ガイドの流路全体が略同幅であるベンチレーションマット。
【請求項2】
前記ベンチレーションマット本体が少なくとも第1のベンチレーションマット本体と第2のベンチレーションマット本体からなり、
接続マットを有し、
前記第1のベンチレーションマット本体と前記第2のベンチレーションマット本体が、上記接続マットを介して接続されており、
前記接続マットは、
通気性のある立体構造を備える基材と、
前記基材の周囲を覆う非通気性材と、を有し、
前記第1のベンチレーションマット本体のチューブと前記第2のベンチレーションマット本体のチューブと前記接続マットの基材が空気循環可能なように連通されており、
前記通風ガイド、前記第1のベンチレーションマット本体、上記接続マット及び前記第2のベンチレーションマット本体が一直線上に接続されているとともに、これらの流路全体が略同幅である請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項3】
シートクッション材と、表皮カバーと、請求項2記載のベンチレーションマットを有し、
前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、
前記シートクッション材と前記表皮カバーが固定される吊込部が形成されており、
前記吊込部に前記接続マットが位置するように、前記ベンチレーションマットが配置されている座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に設置される座席とそれに使用されるベンチレーションマットに係り、特に、送風効率が改善されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の座席に、特に周囲の温度や湿度が高い条件の下で長時間に渡って着座する場合、座席の表面と人体接触部に「蒸れ」や「べたつき感」が生じる。この「蒸れ」や「べたつき感」は着座者の快適感を損なう原因となることから、従来からこのような問題に対する対策が種々検討されている。
【0003】
このような検討の一つとして、例えば、当該特許出願人より特許文献1,2のような提案がなされている。特に特許文献1の図7図14などには、送風装置が組込まれた座席の概略断面図が示されており、送風機などの送風源より送られた風が、チューブ状の通風路を通過して、吹出口より着座者に吹き出す態様が開示されている。また逆に、送風機などの送風源により、チューブ状の通風路を介して、着座者周囲の空気を吸込口より吸い込ませる態様が開示されている。これらのような送風により着座者の「蒸れ」や「べたつき感」が解消されることとなる。又、関連する技術として、例えば特許文献3~8も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4999455号公報:クラベ
【文献】特許第5430085号公報:クラベ
【文献】特開2007-84039公報:ブリヂストン
【文献】特開2017-71368公報:ブリヂストン
【文献】特許第4107033号公報:松下電器産業
【文献】特許第4125721号公報:W.E.T.
【文献】国際公開WO2018/221422公報:クラベ
【文献】国際公開WO2018/221419公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に自動車業界においては、常に省エネの要求は高く、それは車両用座席の分野においても例外ではない。なるべく少ない電力で、なるべく多くの快適性を与えるため、送風効率について継続した改善が必要となっている。上記した特許文献の中にも既に実用化されている技術はあるが、まだまだ圧力損失などに起因する送風効率の低下の課題がある。例えば、特許文献1による通風装置では、ファンなどの送風源と通風路を接続するにあたって、送風源の近傍で通風路が急激に狭くなる構造である。これにより、流速変化や壁面との摩擦によって損失が生じ、風量が減少する問題があった。また、特許文献6による車両用シートの換気装置は、網状に形成されたフォームからなるインサートと、それを覆うフィルム状のバリア副次層からなり、バリア副次層に孔を形成して、この孔から風の吹き出しや吸引を行う構造である。これにより、バリア副次層の孔を介してインサートに出入りする気流に乱れが生じて損失が生じ、風量が減少する問題があった。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、送風効率を向上させたベンチレーションマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明によるベンチレーションマットは、複数のチューブがシート状に連結されたベンチレーションマット本体と、ファン取付け孔が設けられた通風ガイドを有し、前記ベンチレーションマット本体は、前記複数のチューブの一方の側に前記複数のチューブに跨がるようにスリットが設けられ、前記複数のチューブのもう一方の側に前記チューブの素材で連結されるベンチレーション部を有し、前記通風ガイドは、通気性のある立体構造を備える基材と、
前記基材の周囲を覆う非通気性材と、を有し、前記複数のチューブと前記基材が空気循環可能なように連通されており、前記ベンチレーションマット本体と前記通風ガイドが略同幅であるものである。
また、前記ベンチレーションマット本体が少なくとも第1のベンチレーションマット本体と第2のベンチレーションマット本体からなり、接続マットを有し、前記第1のベンチレーションマット本体と前記第2のベンチレーションマット本体が、上記接続マットを介して接続されており、前記接続マットは、通気性のある立体構造を備える基材と、前記基材の周囲を覆う非通気性材と、を有し、前記第1のベンチレーションマット本体のチューブと前記第2のベンチレーションマット本体のチューブと前記接続マットの基材が空気循環可能なように連通されており、前記通風ガイド、前記第1のベンチレーションマット本体、上記接続マット及び前記第2のベンチレーションマット本体が一直線上に接続されているとともに、これらが略同幅であることが考えられる。
また、本発明による座席は、シートクッション材と、表皮カバーと、前記のベンチレーションマットを有し、前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、前記シートクッション材と前記表皮カバーが固定される吊込部が形成されており、前記吊込部に前記接続マットが位置するように、前記ベンチレーションマットが配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるベンチレーションマットによれば、流速変化や壁面摩擦などによる損失が少なく、充分な風量のある送風効率に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で使用されるベンチレーションマットの一方の面を示す斜視図である。
図2】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略図である。
図3】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの吊込部の断面図である。
図4】風速測定の結果を示すグラフ及び表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下で説明するベンチレーションマットは、自動車用シートの座面と背もたれとの少なくとも一方または両方に設けられるものである。また、本発明にかかるベンチレーションマットは、自動車用シートのクッション材と、当該クッション材を覆う表皮カバーと、の間に挟み込むように設置される。また、ベンチレーションマットには、ファンが設けられ、このファンにより、ベンチレーションマットから空気を吸引する又はベンチレーションマットに空気が流し込まれる。
【0011】
以下の説明では、自動車用シートにベンチレーションマットを設置した状態で、表皮カバー側、つまり座面側に位置する面を表面、自動車用シートのクッション材側に位置する面を裏面と称す。
【0012】
図1に実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の概略図を示す。図1では、ベンチレーションマット1の斜視図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112を有している。また、これら第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112を接続する接続マット121を有している。また、第1のベンチレーションマット本体111には、通風ガイド30が接続されている。このようなベンチレーションマット1は、通風ガイド30が、一端にファン取り付け孔が設けられ、他端がベンチレーションマット本体111の側面に設けられた接続孔に接続されることで形成される。本実施の形態1では、接続マットを1つ使用しているが、勿論、接続マットは2つ以上であっても良い。また、ベンチレーションマット本体を2つ使用しているが、勿論、ベンチレーションマット本体は、3つ以上であっても良い。また、ベンチレーションマット本体が1つのみで、接続マットを使用しない形態も考えられる。
【0013】
第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112は、シート状に連結された複数のチューブ11により構成される構造を主構造体とする。このチューブ11は、例えばポリエチレンのような樹脂やオレフィン系可塑性エラストマー等により成形される。複数のチューブ11の連結方法として、シート状に複数のチューブ11が並ぶように一体成形する方法、所定の長さに切断された複数のチューブ11を接着する方法、所定の長さに切断された複数のチューブ11を不織布等の布に接着する方法などが考えられる。
【0014】
第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112には、ベンチレーション部13が設けられることが考えられる。ベンチレーション部13は、複数のチューブ11の表皮カバーに接する側にスリットが設けられる部分であって、複数のチューブ11のシートクッション材に接する側はチューブを形成する素材で連結される。このベンチレーション部13の一態様は、チューブ11の延在方向と直交する方向にチューブを削るようにして設けられた溝である。図1では、第1のベンチレーションマット本体111に2つ、第2のベンチレーションマット本体112に2つのベンチレーション部13が設けられている。
【0015】
また、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112には、気流混合部を形成しても良い。気流混合部は、ベンチレーション部13よりも通風ガイド30の接続部に近い部分に設けられ、複数のチューブ11の間を連通するように設けられる。例えば、気流混合部として、第1のベンチレーションマット本体111のシートクッション材側にスリットが設けられるように、チューブ11の延在方向と直交する方向にチューブを削るようにして設けられた溝とすることも考えられる。より具体的には、上記特許文献8を参照できるが、本実施の形態においては気流混合部を形成していない。
【0016】
また、図1では図示されていないが、第1のベンチレーションマット本体111や第2のベンチレーションマット本体112には、不織布が貼り付けられていてもよい。不織布は、第1のベンチレーションマット本体111や第2のベンチレーションマット本体112におけるベンチレーション部13を形成した面に貼り付けられていてもよいし、その裏面に貼り付けられていてもよい。
【0017】
以下の説明では、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の面のうち表皮カバーに面する側(つまり、ベンチレーション部13の開口部が設けられる側)を表面側と称し、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の面のうちシートクッション材に面する側を裏面側と称す。
【0018】
接続マット121は、通気性のある立体構造を備える基材と、基材の周囲を覆う非通気性材とを有している。この基材は、例えば、ダブルラッセルや3Dメッシュシートのような繊維を立体的に編んだ立体編物、繊維が三次元状に複雑に絡み合ってできた構造体、連続気泡を有するフォーム材(スポンジ)、ゴムチューブを並べたもの等を用いることができる。立体編物としては、例えば、旭化成社製のフュージョン(登録商標)、住江織物社製のスウィングネット(登録商標)、ミュラーテキスタイル社製の3mesh(登録商標)、ユニチカ社製のキュービックアイ(登録商標)等が挙げられる。繊維が三次元状に絡み合ってできた構造体としては、例えば、東洋紡社製のブレスエアー(登録商標)等が挙げられる。連続気泡を有するフォーム材やゴムチューブを構成する材料としては、例えば、ウレタン、EPDM、クロロプレン、イソプレン、シリコーン、各種熱可塑性エラストマー等の材料が使用される。これら基材は、通気しやすい方向と通気しにくい方向のような方向性を持つものも考えられる。例えば、立体編物のようなものだと、断続的に断面当たりの繊維の密度が高くなる(本数が多くなる)部分が形成されるような方向や、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向が形成されるようなものがある。この場合、繊維の密度が低い(本数が少ない)方が通気しやすいことになる。このような方向性を持つ基材を使用する場合は、実際に通気がなされる方向である空気流動方向が、基材における通気しやすい方向、例えば、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向と同じ方向であることが好ましい。また、非通気性材、空気を透過しない材質からなるフィルム状や布状のものからなる。例えば、不織布、スパンボンド不織布、織布、フィルム、ゴム引き布を用いることができる。ここで、不織布、スパンボンド不織布及び織布の素材は、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が考えられる。また、フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリビニル、ポリプロピレン、PET、各種熱可塑性エラストマー等が考えられる。ゴム引き布は、繊維に気密性を与える加工をしたものである。接続マット121と第1のベンチレーションマット本体111の接続、接続マット121と第2のベンチレーションマット本体112に際しては、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112との接続部分において、非通気性材が除去され、基材が露出されており、基材と複数のチューブ11が空気循環可能なように連通されている。これにより、第1のベンチレーションマット本体111、接続マット121及び第2のベンチレーションマット本体112の間で通気されるようになる。なお、接続マット121において、非通気性材を基材の長さより延長した寸法のチューブ形状のものとすることが考えられる。これにより、非通気性材の延長した部分の中に、それぞれ第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112を嵌入ことができる。
【0019】
接続マット121は、空気透過率が2%以上のものを使用する。空気透過率は、何も接続していない送風源による空気の流量に対する、送風源に直接接続マットを接続した状態での空気の流量の割合を示す。送風源に直接接続マットを接続した状態での空気の流量の測定については、より具体的には、接続マットにおけるバリアチューブが開口している一端に送風源を接続し、もう一端に流量計を接続し、送風源を作動したときの流量を測定する。特に、接続マット121の空気透過率が35%以上、更には、40%以上であることが好ましい。このような接続マット121とするため、基材の通気性は、2000cm/dm・min以上であることが好ましい。通気性が2000cm/dm・min以上の基材であれば、接続マット121の空気透過率も優れたものとすることができる。なお、通気性は、実際にベンチレーションマットとして設置した場合の通気方向について測定され、ISO9237に準拠し、試験時の圧力を2hPaとして測定される。接続マット121の空気透過率に優れていれば、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112との間の通気を十分にすることができる。
【0020】
また、基材における圧縮量を40%としたときの圧縮応力値(以下、40%圧縮応力値と記すことがある)は、2~30kPaである。40%圧縮応力値が2kPa未満であると、吊込部での表皮カバーを固定する際の張力によって基材が潰れてしまい、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112との間の通気が十分ではなくなる。40%圧縮応力値が30kPaを超えると、吊込部で表皮カバーを固定する際に、シートクッション材の形状に合わせて基材を曲げることが困難となり、作業性に問題が生ずることになる。また、着座者が接続マットを感じ取ってしまい違和感の原因となることもある。特に、基材における40%圧縮応力値が、10kPa以上であることが好ましく、また、20kPa以下であることが好ましい。なお、40%圧縮応力値は、ISO3386-1に準拠して測定される。
【0021】
立体編物からなる基材等において、通気経路に存在する繊維が多い場合、及び、通気経路に存在する繊維の径が太い場合、接続マットの空気透過率は低くなるが、基材の40%圧縮応力値は高くなる傾向にある。また、基材の繊維の材質によって基材の40%圧縮応力値を設計することもできる。接続マットの空気透過率は、接続マットの断面積及び長さによっても設計することができる。最適な接続マットの空気透過率及び基材の40%圧縮応力値を得るため、接続マットの寸法や、基材に使用される繊維について適切なものを使用する必要がある。
【0022】
接続マット121の両端は、それぞれ、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112に接続される。実施の形態1にかかるベンチレーションマット1では、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112に接続マット121を接続した状態で、両面テープ付き不織布12を巻き付けることにより、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112及び接続マット121が外れないように接続する。このときこれらの間をレーザー溶着等しておけば、より安定的に接続することができる。第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112及び接続マット121を接続する方法としては、接着、粘着、溶着、縫製等、従来公知のいずれの方法をとっても良い。
【0023】
通風ガイド30は、非通気性材からなるチューブであって、通気性のある立体構造を備える基材により内部に通風路が形成される。この基材は、例えば、繊維を立体的に編んだ3Dメッシュシートを用いることができ、接続マット121の基材と同様のものを用いることができる。また、非通気性材のチューブとしては、フィルムを袋状に成形したものであって、フィルム素材としてポリプロピレン等の樹脂や各種エラストマー等を利用することができ、接続マット121の非通気性材と同様のものを用いることができる。
【0024】
通風ガイド30の一端には、基材が露出するように開口部が設けられる。この開口部は、プラスチック素材で形成された型が嵌め込まれ、ファン取り付け孔31となる。通風ガイド30の他端も非通気性材が除去されて基材が露出しており、この部分で、第1のベンチレーションマット本体111に設けられた接続部に接続される。図1では、通風ガイド30と第1のベンチレーションマット本体111との接続する部分が不織布12により覆われる。実施の形態1にかかるベンチレーションマット1では、第1のベンチレーションマット本体111に通風ガイド30を接触させた状態で、両面テープ付き不織布12を巻き付けることにより、第1のベンチレーションマット本体111と通風ガイド30とが外れないように接続する。このとき通風ガイド30と第1のベンチレーションマット本体111とをレーザー溶着等しておけば、より安定的に接続することができる。通風ガイド30と第1ベンチレーションマット本体111を接続する方法としては、接着、粘着、溶着、縫製等、従来公知のいずれの方法をとっても良い。両面テープ付きの不織布を使用することにより、第1のベンチレーションマット本体111の通風ガイド側の端部の開口部を塞ぎ、そこからの気流の漏れや侵入を防止することができる。つまり、不織布12は、第1のベンチレーションマット本体111を構成する複数のチューブ11の通風ガイド側の端部の開口部を塞ぎ気流の漏れや侵入を防止する気流漏れ防止部として機能する。また、通風ガイド30において、非通気性材を基材の長さより延長した寸法のものとすることが考えられる。これにより、非通気性材の延長した部分の中に、第1のベンチレーションマット本体111を嵌入することができる。
【0025】
また、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112の表面側には、ベンチレーション部13が設けられる。このベンチレーション部13は、側面から見ると、表面側に開口したチューブ11に刻まれた溝であることがわかる。
【0026】
また、第1のベンチレーションマット本体111においては、中央部分に位置する一部のチューブ11について、ベンチレーション部13を形成していない。このベンチレーションマット本体111は、座席に組み込んだ際、着座者の太ももに位置することになる。これにより、ベンチレーションマット本体111の中央部分は着座者の脚の間となり、肉体がそこに存在しないので、空気の吹き出しまたは吸引をしないこととしてある。
【0027】
ベンチレーションマット1の構成としては、図1に示すように、ファンの側から、通風ガイド30、第1のベンチレーションマット本体111、接続マット121、第2のベンチレーションマット本体112の順で、一直線上に接続されている。また、これら、通風ガイド30、第1のベンチレーションマット本体111、接続マット121及び第2のベンチレーションマット本体112は、略同幅となっている。そのため、全体としての流路が急激に狭くなったり広くなったりしておらず、流速変化や壁面摩擦などによる損失が少なくなるため、充分な風量のある送風効率に優れたものとすることができる。なお、本実施の形態1において、ベンチレーションマットの幅は154mmとなっている。略同幅とは、最小幅と最大幅の差がおおむね10%以内であることが目安となる。また、厚さについても、通風ガイド30、第1のベンチレーションマット本体111、接続マット121及び第2のベンチレーションマット本体112は、略同厚さであることが好ましい。略同厚さとは、最小厚さと最大厚さの差がおおむね10%以内であることが目安となる。
【0028】
続いて、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の自動車用シートへの組み込み形態について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかるベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略図を示す。実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、実際には表皮カバーの下に設置されるため、表皮カバーに隠れた状態で自動車用シート60に搭載される。そこで、図3に示す概略図では、自動車用シート60において、ベンチレーションマット1が設置される部分が分かるように第1のベンチレーションマット本体111,第2のベンチレーションマット本体112を座面62上に図示した。なお、通風ガイド30については、ファン取り付け孔31が自動車用シート60の裏面側に回り込むように取り回しがなされる。
【0029】
図2に示すように、自動車用シート60は、背もたれ61及び座面62を有する。そして、背もたれ61と座面62には、それぞれ吊込部63が設けられる。この吊込部63は、表皮カバーが吊込部材によりクッション材と連結される部分である。そこで、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112が吊込部63を挟むように、且つ、接続マット121が吊込部63に位置するよう配置する。また、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、座面62にそれぞれ設けられる。勿論、背もたれ61にベンチレーションマットを設けても構わない。また、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、ベンチレーション部13が着座者側に位置するように設置される。また、図面は省略したが、座面62を構成するシートクッション材には、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112、接続マット121及び通風ガイド30を埋め込むために、これらの形状に対応した凹部が形成される。そして、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112、接続マット121及び通風ガイド30は、この凹部に嵌め込まれるように設置される。
【0030】
この吊込部63付近の構造について、さらに詳細に説明する。そこで、図3に、図2のIII-III線に沿った実施の形態1にかかるベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの吊込部の断面図を示す。
【0031】
図2に示すように、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112は、クッション材64と表皮カバー65とに挟まれる位置に設けられる。また、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112は、吊込部63を挟むように分離して配置される。また、接続マット121が吊込部63に位置するよう配置される。吊込部63には、吊込部材66が設けられ、この吊込部材66により、表皮カバー65がクッション材64に引っ張られるようにクッション材64と連結される。具体的には、クッション材64には、上記した表皮カバー65に吊込部材66取り付けられた箇所に対応して溝が形成される。そして、その溝の底部に固定部材67として金属ワイヤが埋め込まれている。このようなクッション材64と表皮カバー65ついて、表皮カバー65の吊込部材66をクッション材64の溝の底部に引き込み、ホグリング等の止め具68によって吊込部材66と固定部材67を固定することによって連結される。止め具68は、接続マット121を避けた箇所に配置されることが好ましい。この吊込部材66をクッション材64の溝の底部に引き込む張力により、表皮カバー65は張りのある状態となる。
【0032】
ここで、上記実施の形態1にかかるベンチレーションマット1について、送風源(流量32m/h、静圧420Paのブロワ)を接続し、車両用座席内に配置した。そして、空気を吸引するように送風源を13.5Vで作動し、座席表面の風量を測定した。風量の測定は、未着座(着座者がいない状態)と着座(身長172cm、体重67kgの着座者が着座した状態)の2つの状態において行った。また、比較の形態についても、実施の形態1と同様に風量を測定した。比較の形態は、第1のベンチレーションマット111及び特に第2のベンチレーションマット本体112について、接続マット121と同じ材料に置き換え、実施の形態1と同じ位置について非通気性材を除去してベンチレーション部13を形成して実施の形態1と同様の形状のベンチレーションマットとしたものである。これらの測定結果を表1に示す。また、未着座の状態で上記同様に送風源を駆動させ、座面における風速を測定した。風速の測定は、座面を50区画(左右方向5区画×前後方向10区画)に区分して、それぞれの区画で測定をした。測定結果を図4に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、実施の形態1によるベンチレーションマットは、比較の形態に比べて優れた風量を得ることができた。また、図4に示すとおり、実施の形態1では、最大値、最小値、平均値ともに比較の形態に比べて風速が大きく、座面の区画ごとの風速差も小さくバラツキが少なくなっていた。
【0035】
本発明によるベンチレーションマット1を自動車用シート60に組み込む際、例えば、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等を、クッション材64上に粘着テープ等で固定することが考えられる。このような態様のみでなく、例えば、クッション材64にベンチレーションマット1の形状に適合した溝を形成しておき、この溝にベンチレーションマット1をはめ込むことが考えられる。また、例えば、クッション材64を成形する際、予め第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等を成形型内に配置しておき、そこにクッション材の材料を流し込んだ後、クッション材の材料を発泡硬化させることも考えられる。この場合、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等とクッション材64が確実に固定されて位置ズレを防止することができる。このような工法は、カーシートヒータの技術分野では一般的なものであり、例えば、特許文献5等が参照できる。
【0036】
また、本発明によるベンチレーションマットと併せて、カーシートヒータを使用することもできる。カーシートヒータは、座席の表皮カバーとベンチレーションマットとの間に配置されることになる。この際、カーシートヒータから発せられる熱を効率的に着座者に伝熱させる必要があるが、ベンチレーションマットで使用されるチューブは、座席のクッション材より熱伝導率が高く、カーシートヒータの熱がチューブに奪われてしまう傾向にある。そのため、本発明のベンチレーションマットとカーシートヒータを併用する場合は、ベンチレーションマットの幅を狭くし、チューブに熱を奪われにくくすることが考えられる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳述したように本発明のベンチレーションマットによれば、充分な風量のあり送風効率に優れたものとすることができる。その用途としては、自動車の座席以外にも、例えば、自動二輪車や鉄道車両等の車両座席でも良いし、チャイルドシート、土木建築用重機の座席、船舶や航空機などの座席、遊園地の観覧車の座席、各種競技場の観覧席、劇場や映画館等の鑑賞用座席、駅やテーマパーク、屋外公園等に設置されたベンチ、家庭内やオフィスで使用されるソファーや座椅子、理髪店の椅子、各種医療機関で使用されている医療用の椅子などへの適用も考えられる。また、座席のみならず、例えば、ベッド、ベビーカー、じゅうたんなど、幅広く応用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ベンチレーションマット
11 チューブ
12 不織布
13 ベンチレーション部
30 通風ガイド
31 ファン取り付け孔
60 自動車用シート
61 背もたれ
62 座面
63 吊込部
64 クッション材
65 表皮カバー
66 吊込部材
67 固定部材
68 止め具
111 第1のベンチレーションマット本体
112 第2のベンチレーションマット本体
121 接続マット
図1
図2
図3
図4