IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ハウジング及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20231114BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20231114BHJP
   H01R 13/56 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/64
H01R13/56
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019182268
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2020126826
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019015746
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 貴士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 政祥
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251624(JP,A)
【文献】特開2007-005311(JP,A)
【文献】特開2015-046294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 13/64
H01R 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの端子収容室を区画形成する四方の全面に形成された隔壁のうち一つの前記隔壁に形成され、前記端子収容室に収容された端子に向かって突出する突起部と、
前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部と、
を備えることを特徴とするハウジング。
【請求項2】
端子収容室を区画形成するハウジングの隔壁に形成され、前記端子収容室に収容された端子に向かって突出する突起部と、
前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部と、
前記突起部が突設された前記隔壁とは異なる他の隔壁に形成され、前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する係止位置と非係止位置との間で変位可能な可撓係止アームと、
を備えることを特徴とするハウジング。
【請求項3】
前記突起部には、前記箱状電気接触部の係止部が端子挿入方向とは反対方向で当接して前記端子の後抜けを規制する係止面が形成され、
前記端子挿入方向と平行な前記隔壁に対して前記係止面が垂直よりも小さい角度で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハウジング。
【請求項4】
前記ハウジングの一側部には、前記薄壁部における前記突起部とは反対側の裏面が表出し、
前記一側部には、前記薄壁部を覆う外部樹脂壁が形成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のハウジング。
【請求項5】
前記突起部が形成された前記薄壁部の裏側における突起部裏面を除く前記隔壁の裏面と、前記外部樹脂壁とが、樹脂流動部で連結されていることを特徴とする請求項4に記載のハウジング。
【請求項6】
前記ハウジングの一側部には、前記薄壁部における前記突起部とは反対側の裏面が表出し、
前記一側部には、前記薄壁部の少なくとも一部を覆い前記ハウジングと嵌合する相手ハウジングとの誤嵌合を防止する誤嵌合防止リブが形成されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のハウジング。
【請求項7】
前記箱状電気接触部を挟んで前記突起部が突設された前記隔壁とは反対側の対向側隔壁面には、前記箱状電気接触部の接触部側面に当接するローリング防止リブが形成されていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のハウジング。
【請求項8】
前記ハウジングの後方には、端末に前記端子が取り付けられて前記端子収容室から引き出された電線を束ねて固定する結束バンドを装着するためのバンド装着部が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のハウジング。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のハウジングと、
前記突起部に係止されることにより端子の後抜けを規制する係止部が箱状電気接触部に設けられた端子と、
を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項10】
請求項2に記載のハウジングと、
前記可撓係止アームに係止されることにより端子の後抜けを規制する他の係止部が箱状電気接触部に設けられた端子と、
を備えることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタにおける樹脂製のハウジングは、例えばハウジングのキャビティ(端子収容室)内にランス(可撓係止アーム)を一体的に備えている(特許文献1等参照)。このランスは、全体としては前端側にかけて次第にキャビティ内に張り出すよう、勾配をなす傾斜状に形成されており、キャビティ内への張出部分が、挿入される雌端子金具により押圧されることで突出基端を支点として雌端子金具の挿抜方向と交差する方向へ撓み変形可能とされている。この撓み時にランスは、キャビティ内、若しくはキャビティ外に確保された撓み空間内に退避するようになっている。ランスは、雌端子金具がキャビティ内の所定位置に挿入されると、弾性復帰して雌端子金具を係止することで、雌端子金具の挿入方向と反対方向の離脱(後抜け)を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-55233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコネクタにおけるハウジングは、ランス形状が複雑なため、金型作製が困難で金型作製費が高くなる問題があった。また、金型メンテナンス費用も高くなる問題があった。
また、従来のコネクタにおけるハウジングは、端子金具とランスの掛かり代を確保するため、ランス形成のための空間をキャビティに大きく確保しなければならない。そこで、ハウジングの小型化に不利となり構造が複雑となるという問題があった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ランスを廃止することができ、構造を簡素にできるハウジング及びコネクタを提供することにある。
また、他の目的は、ランスを小型化することができ、構造を簡素にできるハウジング及びコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ハウジングの端子収容室を区画形成する四方の全面に形成された隔壁のうち一つの前記隔壁に形成され、前記端子収容室に収容された端子に向かって突出する突起部と、
前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部と、
を備えることを特徴とするハウジング。
【0007】
上記(1)の構成のハウジングによれば、ハウジングの端子収容室は、四方の隔壁により区画形成され、例えば挿入方向に長い直方体形状とされた端子の箱状電気接触部と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。端子収容室に挿入された端子は、箱状電気接触部の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する四方の隔壁に近接する。四方の隔壁のうち一つの隔壁には、端子に向かって突出する突起部が一体成形により突設されている。突起部には、端子の挿入方向に向かって徐々に隔壁から離間する方向に高くなる押圧傾斜面が形成される。突起部は、押圧傾斜面が挿入される端子の箱状電気接触部により押圧されることで、突起部が突設された隔壁に形成された薄壁部を撓ませ、端子収容室の外側へ変位が可能となっている。即ち、隔壁は、薄壁部が設けられることにより、突起部が端子の箱状電気接触部に対して接近位置と離反位置との間で変位することを可能としている。端子は、箱状電気接触部に設けられた係止部が薄壁部に設けられた突起部に係止されることにより、端子の後抜けが規制される。
従って、本構成のハウジングでは、従来の複雑な形状のランスを端子収容室に成形せずに、端子収容室からの端子の後抜けを規制することができる。つまり、本構成のハウジングでは、ランスを廃止できる。ランスに代わる構成は、突起部と、突起部が設けられる隔壁に形成された薄壁部のみとなる。突起部は、隔壁から突出する単純な凸形状とすることができる。薄壁部は、例えば突起部が突設された隔壁の肉厚を他の部分よりも薄くした成形容易な肉薄部として形成することができる。その結果、ハウジングは、ランスの形成スペース、ランスの退避空間を端子収容室に確保する必要がなくなり、ランスを設ける場合に比べ、端子収容室の構造を大幅に簡素化することができる。特に、多数の端子収容室が縦横に並設されるハウジングでは、縦横寸法を大幅に小さく形成することができる。そして、ランスの廃止は、金型の簡素化に繋がる。これにより、本構成のハウジングによれば、ランスを備える従来のハウジングに比べ、金型作製費用、金型メンテナンス費用を削減することができる。
【0008】
(2) 端子収容室を区画形成するハウジングの隔壁に形成され、前記端子収容室に収容された端子に向かって突出する突起部と、前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部と、前記突起部が突設された前記隔壁とは異なる他の隔壁に形成され、前記端子の箱状電気接触部を係止して前記端子の後抜けを規制する係止位置と非係止位置との間で変位可能な可撓係止アームと、を備えることを特徴とするハウジング。
【0009】
上記(2)の構成のハウジングによれば、ハウジングの端子収容室は、四方の隔壁により区画形成され、例えば挿入方向に長い直方体形状とされた端子の箱状電気接触部と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。端子収容室に挿入された端子は、箱状電気接触部の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する四方の隔壁に近接する。
四方の隔壁のうち一つの隔壁には、端子に向かって突出する突起部が一体成形により突設されている。突起部には、端子の挿入方向に向かって徐々に隔壁から離間する方向に高くなる押圧傾斜面が形成される。突起部は、押圧傾斜面が挿入される端子の箱状電気接触部により押圧されることで、突起部が突設された隔壁に形成された薄壁部を撓ませ、端子収容室の外側へ変位が可能となっている。即ち、隔壁は、薄壁部が設けられることにより、突起部が端子の箱状電気接触部に対して接近位置と離反位置との間で変位することを可能としている。更に、四方の隔壁のうち突起部が突設された隔壁とは異なる他の隔壁には、端子を係止する可撓係止アームが形成されている。そこで、端子は、箱状電気接触部に設けられた係止部が薄壁部に設けられた突起部に係止されると共に、箱状電気接触部に設けられた他の係止部が可撓係止アームに係止されることにより、端子の後抜けが規制される。
従って、本構成のハウジングでは、従来の大型のランスを端子収容室に成形せずに、端子収容室からの端子の後抜けを規制することができる。つまり、本構成のハウジングでは、可撓係止アームを小型化できる。その結果、ハウジングは、可撓係止アームの形成スペース及び退避空間を小さくすることができ、大型のランスを設ける場合に比べ、端子収容室の構造を大幅に簡素化してハウジングを小型化することができる。
【0010】
(3) 前記突起部には、前記箱状電気接触部の係止部が端子挿入方向とは反対方向で当接して前記端子の後抜けを規制する係止面が形成され、前記端子挿入方向と平行な前記隔壁に対して前記係止面が垂直よりも小さい角度で形成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のハウジング。
【0011】
上記(3)の構成のハウジングによれば、係止面が、端子挿入方向と平行な隔壁に対して垂直よりも小さい角度θ(θ<90°)で形成される。即ち、係止面は、隔壁からの端子収容室内への張り出し方向先端が、張り出し方向基端よりも挿入方向側へ傾斜した面となる。なお、係止面は、隔壁に対して垂直よりも大きい角度で形成された場合、張り出し方向先端が、張り出し方向基端よりも端子挿入方向とは反対側へ傾斜した面となる。この場合、端子は、後抜け方向の力が加わると、箱状電気接触部の係止部が係止面から外れる方向に滑りやすくなる。つまり、保持力が低下する。
これに対し、本構成のハウジングによれば、係止面の張り出し方向先端が、端子挿入方向側に傾斜しているので、後抜け方向の力が加わると、箱状電気接触部の係止部がより係止面を係止する方向に滑る。その結果、端子の保持力が低下することがない。
【0012】
(4) 前記ハウジングの一側部には、前記薄壁部における前記突起部とは反対側の裏面が表出し、前記一側部には、前記薄壁部を覆う外部樹脂壁が形成されていることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか一つに記載に記載のハウジング。
【0013】
上記(4)の構成のハウジングによれば、端子収容室が形成されたハウジングの一側部に、薄壁部における突起部とは反対側の裏面が表出する。ハウジングの一側部には、この薄壁部の裏面を覆う外部樹脂壁が形成される。これにより、ハウジングは、薄厚で形成することにより強度の低下した薄壁部が外部樹脂壁に覆われ、他部材の接触による薄壁部の破損が抑制される。
【0014】
(5) 前記突起部が形成された前記薄壁部の裏側における突起部裏面を除く前記隔壁の裏面と、前記外部樹脂壁とが、樹脂流動部で連結されていることを特徴とする上記(4)に記載のハウジング。
【0015】
上記(5)の構成のハウジングによれば、隔壁の裏面と外部樹脂壁とが、樹脂流動部で連結される。樹脂流動部が連結される裏面は、突起部が形成された薄壁部の裏側である突起部裏面を除く裏面となる。これは、樹脂流動部が突起部裏面に連結されることにより、薄壁部の変形が規制され、突起部が変位しなくなることを回避するためである。
ハウジングの射出成形時には、例えば外部樹脂壁の外面が射出樹脂のゲートとなる。この場合、樹脂流動部が存在しないハウジングの射出成形では、ゲート近くの薄壁部に溶融樹脂が回りにくくなる(ショートショットなどの成形不良が生じやすくなる)。そこで、外部樹脂壁の成形空間を短距離で薄壁部の成形空間へ直結する樹脂流動部が、ハウジングに設けられることにより、ハウジングの射出成形時における薄壁部への樹脂流動性が向上し、薄壁部の成形不良を抑制することができる。
これに加え、樹脂流動部が設けられたハウジングは、この樹脂流動部を境に、金型を端子挿入方向の前後で二分割することができる。二分割された金型では、端子挿入方向に延在する薄壁成形部が二分割されない金型に比べ短尺となる。これにより、二分割された金型の薄壁成形部は、剛性を高めることができる。その結果、樹脂流動部を設けたハウジングによれば、二分割されない長尺の薄壁成形部で生じやすい射出圧力による薄壁成形部の撓みや傾きによる肉厚変動等の成形不良を抑制することができる。
【0016】
(6) 前記ハウジングの一側部には、前記薄壁部における前記突起部とは反対側の裏面が表出し、前記一側部には、前記薄壁部の少なくとも一部を覆い前記ハウジングと嵌合する相手ハウジングとの誤嵌合を防止する誤嵌合防止リブが形成されていることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか一つに記載のハウジング。
【0017】
上記(6)の構成のハウジングによれば、端子収容室が形成されたハウジングの一側部に、薄壁部における突起部とは反対側の裏面が表出する。ハウジングの一側部には、この薄壁部における裏面の少なくとも一部を覆う誤嵌合防止リブが形成される。これにより、ハウジングは、薄厚で形成することにより強度の低下した薄壁部の少なくとも一部が誤嵌合防止リブに覆われ、他部材の接触による薄壁部の破損が抑制される。
また、ハウジングは、誤嵌合防止リブにより、ハウジングと嵌合する相手ハウジングとの誤嵌合が防止される。
従って、誤嵌合防止リブにより薄壁部を覆うハウジングによれば、相手ハウジングとの誤嵌合を防止しながら、専用部位を形成せずに、薄壁部の破損を抑制する効果が得られる。これにより、金型構造を簡易化することができる。
【0018】
(7) 前記箱状電気接触部を挟んで前記突起部が突設された前記隔壁とは反対側の対向側隔壁面には、前記箱状電気接触部の接触部側面に当接するローリング防止リブが形成されていることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれか一つに記載のハウジング。
【0019】
上記(7)の構成のハウジングによれば、箱状電気接触部を挟んで前記突起部が突設された隔壁とは反対側の対向側隔壁面に、ローリング防止リブが形成される。ローリング防止リブは、端子収容室に装着された端子における突起部に対向する接触部側面とは反対側の接触部側面に当接する。端子収容室は、接触部収容空間が、端子の箱状電気接触部の外形よりも若干大きく形成されている。このため、箱状電気接触部は、接触部収容空間内において、僅かではあるが移動する。そこで、端子の箱状電気接触部に形成された係止部は、箱状電気接触部が、端子挿入方向の中心軸回りに回転(ローリング)すると、突起部の係止面から外れる方向に移動する。端子は、このローリングにより、突起部の係止面と係止部との係止面積(係り代)が小さくなり、端子保持力の低下が懸念される。
そこで、本構成に係るハウジングでは、突起部が設けられた隔壁とは反対側の対向側隔壁面に、ローリング防止リブが形成されることにより、箱状電気接触部の中心軸回りのローリングが規制されている。端子は、箱状電気接触部のローリングが規制されることにより、係止部と突起部との適正な係止面積が常に確保されるようになる。その結果、本構成のハウジングにおいて、端子の保持信頼性を向上させることができる。
【0020】
(8) 前記ハウジングの後方には、端末に前記端子が取り付けられて前記端子収容室から引き出された電線を束ねて固定する結束バンドを装着するためのバンド装着部が設けられていることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれか一つに記載のハウジング。
【0021】
上記(8)の構成のハウジングによれば、端子収容室から引き出された電線は、バンド装着部に装着された結束バンドにより束ねて固定される。そこで、電線が後方に引っ張られた際には、引っ張り力が端末に取り付けられた端子に掛かることを防ぎ、端子の後抜けを規制できる。特に、複数の電線が結束バンドにより束ねて固定されることで、電線の取り回し時に電線1本へ引っ張り力が掛かることを防ぎ、隔壁の突起部に係止された端子の端子抜けを確実に防止することができる。
なお、電線が載置されるバンド装着部は、複数の端子収容室が並設されたハウジングの幅よりも狭い幅の載置面に、結束バンドの結束方向に沿って中央部が凹んだ湾曲支持面が形成されることが望ましい。即ち、ハウジングの幅よりも狭い幅の載置面に湾曲支持面が形成されることで、載置面に載置されて結束バンドで結束された電線束(複数の電線)には、結束バンドにより外周側から均等に締め付け力が作用し、電線束を確実に固定することができる。
【0022】
(9) 上記(1)~(8)のいずれか一つに記載のハウジングと、前記突起部に係止されることにより端子の後抜けを規制する係止部が箱状電気接触部に設けられた端子と、を備えることを特徴とするコネクタ。
【0023】
上記(9)の構成のコネクタによれば、ハウジングの端子収容室に収容された端子は、例えば挿入方向に長い直方体形状とされた箱状電気接触部の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する端子収容室の四方の隔壁に近接する。四方の隔壁のうち一つの隔壁に一体成形により突設された突起部は、端子の箱状電気接触部により押圧されることで、突起部が突設された隔壁に形成された薄壁部を撓ませ、端子収容室の外側へ変位が可能となっている。端子は、箱状電気接触部の係止部が薄壁部に設けられた突起部に係止されることにより、後抜けが規制される。従って、本構成のコネクタでは、従来の複雑な形状のランスをハウジングの端子収容室に成形せずに、端子収容室からの端子の後抜けが規制される。
【0024】
(10) 上記(2)に記載のハウジングと、前記可撓係止アームに係止されることにより端子の後抜けを規制する他の係止部が箱状電気接触部に設けられた端子と、を備えることを特徴とするコネクタ。
【0025】
上記(10)の構成のコネクタによれば、ハウジングの端子収容室に収容された端子は、例えば挿入方向に長い直方体形状とされた箱状電気接触部の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する端子収容室の四方の隔壁に近接する。四方の隔壁のうち一つの隔壁に一体成形により突設された突起部は、端子の箱状電気接触部により押圧されることで、突起部が突設された隔壁に形成された薄壁部を撓ませ、端子収容室の外側へ変位が可能となっている。更に、四方の隔壁のうち突起部が突設された隔壁とは異なる他の隔壁に形成された可撓係止アームは、端子の箱状電気接触部により押圧されることで、非係止位置へ変位が可能となっている。端子は、箱状電気接触部の係止部が薄壁部に設けられた突起部に係止されると共に、箱状電気接触部に設けられた他の係止部が可撓係止アームに係止されることにより、端子の後抜けが規制される。従って、本構成のコネクタでは、従来の大型のランスを端子収容室に成形せずに、端子収容室からの端子の後抜けを規制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るハウジング及びコネクタによれば、ランスを廃止することができ、構造を簡素にできる。
また、本発明に係るハウジング及びコネクタによれば、ランスを小型化することができ、構造を簡素にできる。
【0027】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図2】(a)は図1に示したハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)におけるA部拡大図、(c)は(b)における端子装着状態の図である。
図3】(a)は図1に示したハウジングを端子挿入側から見た背面図、(b)は(a)におけるB部拡大図である。
図4図1に示したハウジングにおける端子挿入途中の水平断面図である。
図5図1に示したハウジングの上段の端子収容室に端子が収容された状態の縦断面図である。
図6】(a)は端子が装着された端子収容室の要部水平断面図、(b)は端子の起立片が係止面に係止された突起部の要部拡大水平断面図である。
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係るコネクタのハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)に示した外部樹脂壁近傍の要部拡大背面図である。
図8】(a)は図7に示したハウジングを端子挿入側から見た背面図、(b)は(a)におけるC-C断面図である。
図9】(a)は本発明の第3実施形態に係るコネクタのハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)の側面図である。
図10】(a)は図9におけるD-D断面図、(b)は図9におけるE-E断面図である。
図11】(a)は図9に示したハウジングの変形例1に係るハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)に示したハウジングの水平断面図である。
図12】(a)は図9に示したハウジングの変形例2に係るハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)に示したハウジングを端子挿入側から見た背面図である。
図13】(a)は図9に示したハウジングの変形例3に係るハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)に示したハウジングを端子挿入側から見た背面図である。
図14図13におけるF-F断面図である。
図15】(a)は本発明の第4実施形態に係るコネクタのハウジングを端子挿入側から見た斜視図、(b)は(a)に示した端子収容室の要部拡大図である。
図16】(a)は図15に示した端子収容室に端子が装着された状態の拡大背面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
図17】本発明の第5実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図18】斜め上前方より見た端子を(a)、斜め上後方より見た端子を(b)に示した斜視図である。
図19図17に示したハウジングを端子挿入側から見た斜視図及び要部拡大図である。
図20図17に示したハウジングに端子を装着した状態を端子挿入側から見た背面図及び要部拡大図である。
図21図17示したハウジングにおける端子挿入途中の水平断面図である。
図22図17に示したハウジングの上段の端子収容室に端子が収容された状態の縦断面図である。
図23】(a)は本発明の第6実施形態に係るコネクタの斜視図、(b)は(a)に示したハウジングの斜視図である
図24】(a)は図23の(a)におけるG-G断面図、(b)は図23の(a)に示したハウジングを端子挿入側から見た背面図である。
図25図23の(a)に示したコネクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るコネクタ11の分解斜視図である。
本第1実施形態に係るコネクタ11は、ハウジング23の隔壁21に形成された突起部13(図2参照)及び薄壁部15と、端子31の箱状電気接触部33に設けられた係止部である起立片17と、を主要な構成として有する。
【0030】
突起部13は、端子収容室19を区画形成するハウジング23の隔壁21に形成される。ハウジング23は、絶縁性樹脂により一体成形される。本第1実施形態において、ハウジング23は、複数の端子収容室19を縦横に配列して有する。図示例のコネクタ11のハウジング23には、上下二段、左右に11個の合計22個の端子収容室19が形成されている。なお、コネクタ11は、端子収容室19が1個または任意の複数個であってもよい。
【0031】
ハウジング23は、外形が扁平な略直方体形状で形成される。ハウジング23の上面25には、相手ハウジング(図示略)のロック爪が係止するロック係止面27を有するロック突起29が突設されている。
【0032】
なお、本明細書においては説明の都合上、図1のロック突起29が設けられる側を上側、その反対側を下側とし、ロック係止面27が設けられている側を後側、その反対側を前側とする。ハウジング23に装着される端子31の端子挿入方向(矢印a方向)は、ハウジング23の後側から前側となる。従って、本明細書中において、前後上下左右の方向は図1に示す矢印の通りとなる。
【0033】
それぞれの端子収容室19には、端子31が装着される。端子31は、例えば箱状電気接触部33を挿入方向先端に有した雌端子金具である。なお、端子31は、雌端子金具に限定されず、雄端子金具であってもよい。箱状電気接触部33は、外観が挿入方向に長い直方体形状とされる。箱状電気接触部33の内部には、相手ハウジングに収容される雄端子金具のタブ端子部と導通接触する板ばね片35(図5参照)が設けられている。端子31は、箱状電気接触部33の後方に、導体37を圧着する導体圧着部39、電線41を固定する被覆圧着部43が連設される。更に、端子31は、箱状電気接触部33の一方の側部の後端に、係止部である起立片17が形成(図1では垂設)される。
【0034】
図2の(a)は図1に示したハウジング23を端子挿入側から見た斜視図、図2の(b)は図2の(a)におけるA部拡大図、図2の(c)は図2の(b)における端子装着状態の図である。
ハウジング23は、例えば左側の外壁部45に、誤嵌合防止リブ47が形成される。誤嵌合防止リブ47は、ハウジング23が、正規の嵌合姿勢とは上下反転した不正な姿勢で相手ハウジングと嵌合したときに、嵌合挿入動作を規制する。
【0035】
ハウジング23に形成されるそれぞれの端子収容室19は、四方の隔壁により区画形成される。端子収容室19には、端子31の箱状電気接触部33と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。突起部13は、これら四方の隔壁のうち、左右方向の一方の隔壁21に、端子収容室19に突出して形成される。即ち、突起部13は、端子収容室19に収容された端子31に向かって突出する。本第1実施形態において、突起部13は、図2に示したそれぞれの端子収容室19における右側の隔壁21に配置される。なお、突起部13は、左側の隔壁に配置されてもよい。但し、突起部13は、右側または左側いずれか一方の隔壁21に全てが配置され、左右混在して配置されることはない。
【0036】
突起部13には、端子31の挿入方向に向かって徐々に隔壁21から離間する方向に高くなる(端子収容室19内に張り出す)押圧傾斜面49が形成される。突起部13は、押圧傾斜面49とは反対側の面(前側の面)が、端子31の起立片17を係止する係止面51(図6参照)となる。
【0037】
突起部13が突設された隔壁21には、薄壁部15が形成される。本第1実施形態において、薄壁部15は、突起部13が設けられた隔壁21のほぼ端子収容室19の全高に亘って形成されている。なお、薄壁部15は、これよりも狭い範囲で突起部13の近傍周囲のみに形成されていてもよい。薄壁部15は、隔壁21が薄厚となることにより可撓性を有し、突起部13を端子31に対して接近離反方向に変位可能とする。即ち、隔壁21は、可撓性を有する薄壁部15が設けられることにより、突起部13が端子31の箱状電気接触部33に対して接近位置と離反位置に変位することを可能としている。突起部13は、押圧傾斜面49が挿入される端子31の起立片17により押圧されることで、突起部13が突設された隔壁21に形成された薄壁部15を撓ませ、接近位置から端子収容室19の外側(隣接する右側の端子収容室19側)である離反位置へ変位が可能となっている。
【0038】
図3の(a)は図1に示したハウジング23を端子挿入側から見た背面図、図3の(b)は図3の(a)におけるB部拡大図である。
端子31は、箱状電気接触部33の後部に、起立片17が設けられる。起立片17は、
板金加工により箱状電気接触部33を形成する際に、展開形状の一部分として設けておくことができる。本第1実施形態においては、この起立片17として従前のスタビライザが利用される。スタビライザは、端子31が正規の挿入姿勢とは異なる不正な姿勢で端子収容室19に挿入されたとき、挿入動作を規制する。係止部である起立片17は、薄壁部15に設けられた突起部13に係止されることにより、端子31の後抜けを規制する。起立片17は、突起部13の係止面51に対する接触面積を大きくするため、また端子31の保持強度を確保するために、図3に示すようにU字形状に折り曲げられて形成されることが望ましい。
【0039】
なお、本第1実施形態に係るコネクタ11では、ハウジング23の突起部13に係止されることにより端子31の後抜けを規制する係止部が、箱状電気接触部33の後部に設けた起立片17とされているが、本発明はこれに限定されるものではない。箱状電気接触部33の係止部は、突起部13に係止されることにより端子31の後抜けを規制することができるものであれば、例えば箱状電気接触部33の後端縁や、箱状電気接触部33に穿設した係止孔の開口縁など種々の形態を採り得る。
【0040】
図4図1に示したハウジング23における端子挿入途中の水平断面図である。
端子31は、突起部13が突設された右側の隔壁21に形成された薄壁部15を、右側の端子収容室19側へ突出するように弾性変形させて装着される。従って、端子31が挿入される端子収容室19の右側の端子収容室19には、端子31が装着されていないことが要件となる。このため、左右方向に複数の端子収容室19が並設された本第1実施形態のハウジング23では、端子31は左側の端子収容室19から右側の端子収容室19に順に装着が行われる。左側の端子収容室19に装着された端子31は、隣接する右側の端子収容室19に端子31が装着されると、薄壁部15が右側の端子31の箱状電気接触部33に接触して撓まなくなる。これにより、全ての端子31が装着されたコネクタ11では、それぞれの突起部13の変位が規制されることになり、端子31の抜けが二重に規制されることになる。但し、薄壁部15の裏面がハウジング23の一側部59に表出している最右端の端子収容室19に装着された端子31は除く。
【0041】
図5図1に示したハウジング23の上段の端子収容室19に端子31が収容された状態の縦断面図である。
端子31の起立片17は、ハウジング23の上下方向に沿う方向で形成されている。起立片17は、突起部13の係止面51に、後端面が接触する。突起部13の係止面51は、箱状電気接触部33から下方に突出した起立片17の後端面を係止することができる。このため、突起部13は、上下段の端子収容室19を区画形成する上下方向の隔壁53よりも端子収容室19の上下方向中央側に形成される。即ち、突起部13は、上下方向の隔壁53から離間して配置される。突起部13は、上下方向の隔壁53から離間して配置されることで、上下方向の隔壁53に接近して配置される場合よりも、薄壁部15のより大きな撓み変形を利用できる。即ち、端子挿入時における突起部13の変位を容易にして、端子31の挿入作業性を高めることができる。
【0042】
図6の(a)は端子31が装着された端子収容室19の要部水平断面図、図6の(b)は端子31の起立片17が係止面51に係止された突起部13の要部拡大水平断面図である。
本第1実施形態に係るコネクタ11のハウジング23では、突起部13に、係止面51が形成される。係止面51は、端子31の起立片17が端子挿入方向aとは反対方向で当接して端子31の後抜けを規制する。この係止面51は、図6に示す水平断面において、端子挿入方向aと平行な隔壁21(本第1実施形態では薄壁部15)に対して垂直よりも小さい角度θの挟角を成して形成される(θ<90°)。
【0043】
次に、上記した本第1実施形態に係るハウジング23及びコネクタ11の作用を説明する。
本第1実施形態に係るコネクタ11では、複数の端子収容室19が、ハウジング23に形成される。端子収容室19には、端子31が装着される。端子31は、挿入方向先端に箱状電気接触部33を有する雌端子金具となる。箱状電気接触部33は、外観が挿入方向に長い直方体形状となる。このため、箱状電気接触部33を収容する端子収容室19には、四方の隔壁により区画形成され、箱状電気接触部33と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。
【0044】
ハウジング23の端子収容室19に挿入された端子31は、箱状電気接触部33の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する四方の隔壁(左右方向の隔壁21及び上下方向の隔壁53等)に近接する。端子収容室19は、四方の隔壁のうち一つの隔壁21には、端子収容室19に収容された端子31に向かって突出する突起部13が一体成形により突設されている。つまり、四方の隔壁は、そのうちの一つの隔壁21が、突起部付隔壁となっている。
【0045】
突起部13は、端子31の挿入方向に向かって徐々に隔壁21から離間する方向に高くなる(端子収容室19内に張り出す)押圧傾斜面49が形成される。突起部13は、押圧傾斜面49が挿入される端子31の起立片17により押圧されることで、突起部13が突設された隔壁21に形成された薄壁部15を撓ませ、端子収容室19の外側へ変位が可能となっている。
【0046】
即ち、隔壁21は、薄壁部15が設けられることにより、突起部13が端子31の箱状電気接触部33を係止して端子の後抜けを規制する接近位置と、突起部13が端子31の箱状電気接触部33に対して離反する離反位置との間で変位することを可能としている。この薄壁部15の変位は、弾性限度内の変形であることが望ましい。突起部13は、端子31の係止手段として機能する。このため、薄壁部15の変位を弾性限度内とすることは、薄壁部15が塑性変形し、端子31との掛かり代が減少することを回避できる。
【0047】
端子31の箱状電気接触部33には、起立片17が設けられる。起立片17は、薄壁部15に設けられた突起部13に係止されることにより、端子31の後抜けを規制する。
即ち、端子31は、箱状電気接触部33が接触部収容空間に達すると、突起部13に起立片17が当接する。端子31は、更に挿入されると、起立片17が突起部13の押圧傾斜面49を押圧する。突起部13は、端子31の起立片17に押圧されることにより、薄壁部15を端子収容室19の外側へ変位させ、箱状電気接触部33の進行経路の外側へ押し退けられる。この押し退けは、箱状電気接触部33の後方に連設された起立片17が、突起部13を通過するまで行われる。端子31は、箱状電気接触部33が接触部収容空間の正規位置まで進入すると、起立片17が突起部13を通過する。突起部13は、起立片17が通過することにより、起立片17からの押圧力が解除される。押圧力の解除された突起部13は、薄壁部15の弾性復元力により、再び端子収容室19の内方へ突出することで、起立片17の後端面を係止する。これにより、端子31は、起立片17が突起部13の係止面51に係止されて後抜けが規制され、端子収容室19への装着が完了する。
【0048】
突起部13に係止された端子31は、突起部若しくは隔壁21の破壊以外には、端子収容室19から容易に離脱しない。端子31は、端子収容室19に造りつけされたのと同様に、取り外しが不能となる。つまり、端子31は、端子収容室19に嵌め殺し状態で固定される。
【0049】
従って、本第1実施形態に係るハウジング23及びコネクタ11では、従来の複雑な形状のランスを端子収容室19に成形せずに、端子収容室19からの端子31の後抜けを規制することができる。つまり、本第1実施形態のハウジング23及びコネクタ11では、ランスを廃止できる。ランスに代わる構成は、突起部13と、突起部13が設けられる隔壁21に形成された薄壁部15のみとなる。突起部13は、隔壁21から突出する単純な凸形状とすることができる。薄壁部15は、突起部13が突設された隔壁21の肉厚を他の部分よりも薄くした成形容易な肉薄部として形成することができる。
【0050】
その結果、ランスの形成スペース、ランスの退避空間を端子収容室19に確保する必要がなくなり、ランスを設ける場合に比べ、端子収容室19の構造を大幅に簡素化することができる。特に、多数の端子収容室19が縦横に並設されるコネクタ11では、ハウジング23の縦横寸法を大幅に小さく形成することができる。
【0051】
そして、ランスの廃止は、金型の簡素化に繋がる。これにより、本第1実施形態のハウジング23及びコネクタ11では、ランスを備える従来のハウジング及びコネクタに比べ、金型作製費用、金型メンテナンス費用を削減することができる。
【0052】
また、本第1実施形態のハウジング23及びコネクタ11では、係止面51が、端子挿入方向と平行な隔壁21に対して垂直よりも小さい角度θ(θ<90°)で形成される。即ち、係止面51は、隔壁21からの端子収容室19内への張り出し方向先端が、張り出し方向基端よりも挿入方向側へ傾斜した面となる。なお、係止面51は、隔壁21に対して垂直よりも大きい角度で形成された場合、張り出し方向先端が、張り出し方向基端よりも端子挿入方向とは反対側へ傾斜した面となる。この場合、端子31は、後抜け方向の力が加わると、起立片17が係止面51から外れる方向に滑りやすくなる。つまり、保持力が低下する。
【0053】
これに対し、本第1実施形態のハウジング23及びコネクタ11では、係止面51の張り出し方向先端が、端子挿入方向側に傾斜しているので、後抜け方向の力が加わると、起立片17がより係止面51に係止する方向に滑る。その結果、端子31の保持力が低下することがない。
【0054】
図7の(a)は本発明の第2実施形態に係るコネクタのハウジング55を端子挿入側から見た斜視図、図7の(b)は図7の(a)に示した外部樹脂壁57近傍の要部拡大背面図である。なお、上記第1実施形態に係るハウジング23及びコネクタ11と同様の構成については、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
本第2実施形態に係るコネクタは、図7に示すように、端子収容室19が設けられる樹脂製のハウジング55に、外部樹脂壁57が形成されている。図1に示したハウジング23では、一側部59に、薄壁部15の裏面が表出している。これに対し、本第2実施形態に係るハウジング55は、外部樹脂壁57が一側部59に形成され、薄壁部15の裏面が外部樹脂壁57により覆われている。
【0056】
また、本第2実施形態に係るコネクタのハウジング55では、隔壁21と外部樹脂壁57との間に、樹脂流動部61が形成される。樹脂流動部61は、突起部13が形成された薄壁部15の裏側における突起部裏面を除く隔壁21の裏面と、外部樹脂壁57とを、連結する。
【0057】
図8の(a)は図7に示したハウジング55を端子挿入側から見た背面図、図8の(b)は図8の(a)におけるC-C断面図である。
樹脂流動部61は、図8に示すように、端子収容室19における前後方向の略中央に配置される。また、樹脂流動部61は、突起部13に対して後方にずれて配置される。ハウジング55における樹脂流動部61の後方側には、成形時のボイドやひけ等による成形不良を抑制するための肉抜き部63が形成されている。
【0058】
本第2実施形態のハウジング55では、端子収容室19が形成されたハウジング55の一側部59に、薄壁部15における突起部13とは反対側の裏面が表出する。ハウジング55には、この薄壁部15の裏面を覆う外部樹脂壁57が、一側部59に形成される。これにより、ハウジング55は、薄厚で形成することにより強度の低下した薄壁部15が外部樹脂壁57に覆われ、他部材の接触による薄壁部15の破損が抑制される。
【0059】
また、本第2実施形態のハウジング55では、隔壁21の裏面と外部樹脂壁57とが、樹脂流動部61で連結される。樹脂流動部61が連結される裏面は、突起部13が形成された薄壁部15の裏側である突起部裏面を除く裏面となる。これは、樹脂流動部61が突起部裏面に連結されることにより、薄壁部15の変形が規制され、突起部13が変位しなくなることを回避するためである。
【0060】
ハウジング55の射出成形時には、例えば図8の(b)に示した外部樹脂壁57の外面が射出樹脂のゲート65となる。この場合、樹脂流動部61が存在しないハウジングの射出成形では、ゲート65近くの薄壁部15に溶融樹脂が回りにくくなる(ショートショットなどの成形不良が生じやすくなる)。そこで、ハウジング55では、外部樹脂壁57の成形空間を短距離で薄壁部15の成形空間へ直結する樹脂流動部61が、ハウジング55に設けられることにより、ハウジング55の射出成形時における薄壁部15への樹脂流動性が向上し、薄壁部15の成形不良を抑制することができる。
【0061】
これに加え、樹脂流動部61が設けられたハウジング55は、この樹脂流動部61を境に、金型を端子挿入方向の前後で二分割することができる。二分割された金型では、端子挿入方向に延在する薄壁成形部が二分割されない金型に比べ短尺となる。これにより、二分割された金型の薄壁成形部は、剛性を高めることができる。その結果、樹脂流動部61を設けたハウジング55では、二分割されない長尺の薄壁成形部で生じやすい射出圧力による薄壁成形部の撓みや傾きによる肉厚変動等の成形不良を抑制することができる。
【0062】
図9の(a)は本発明の第3実施形態に係るコネクタのハウジング67を端子挿入側から見た斜視図、図9の(b)は図9の(a)の側面図である。
本第3実施形態に係るコネクタは、図9に示すように、端子収容室19が設けられる樹脂製のハウジング67に、誤嵌合防止リブ47が形成されている。図1に示した第1実施形態に係るハウジング23では、一側部59に、薄壁部15における突起部13とは反対側の裏面が表出する。これに対し、本第3実施形態に係るハウジング67は、薄壁部15の少なくとも一部を覆う誤嵌合防止リブ47が一側部59に形成され、薄壁部15における裏面の一部が誤嵌合防止リブ47により覆われている。
【0063】
図10の(a)は図9におけるD-D断面図、図10の(b)は図9におけるE-E断面図である。図11の(a)は図9に示したハウジング67の変形例1に係るハウジング69を端子挿入側から見た斜視図、図11の(b)は図11の(a)に示したハウジング69の水平断面図である。
【0064】
本第3実施形態に係る誤嵌合防止リブ47は、図10に示すように、一側部59の下段前側の薄壁部15を覆っている。一側部59におけるその他の薄壁部15は、表出している。本第3実施形態では、特に一側部59の下段前側の薄壁部15に他部材が干渉する確率の高いコネクタの使用形態において、小さい誤嵌合防止リブ47(少ない射出樹脂材)で効果的に薄壁部15を保護することができる。これにより、他部材の接触による薄壁部15の破損が抑制される。
【0065】
従って、誤嵌合防止リブ47により薄壁部15を覆う本第3実施形態のハウジング67では、相手ハウジングとの誤嵌合を防止しながら、専用部位を形成せずに、薄壁部15の破損を抑制する効果が得られる。このため、金型構造を簡易化することができる。
【0066】
本第3実施形態に係るコネクタの変形例1に係るハウジング69は、図11に示すように、薄壁部15の少なくとも一部を覆う誤嵌合防止リブ47が一側部59に形成され、薄壁部15における裏面の一部が誤嵌合防止リブ47により覆われている。この変形例1に係る誤嵌合防止リブ47は、一側部59の上下段前側の薄壁部15を覆っている。一側部59におけるその他の薄壁部15は、表出している。この変形例1では、特に一側部59の上下段前側の薄壁部15に他部材が干渉する確率の高いコネクタの使用形態において、小さい誤嵌合防止リブ47(少ない射出樹脂材)で効果的に薄壁部15を保護することができる。
【0067】
図12の(a)は図9に示したコネクタの変形例2に係るハウジング71を端子挿入側から見た斜視図、図12の(b)は図12の(a)に示したハウジング71を端子挿入側から見た背面図である。
この変形例2に係るハウジング71は、図12に示すように、薄壁部15の少なくとも一部を覆う誤嵌合防止リブ47が一側部59に形成され、薄壁部15における裏面の一部が誤嵌合防止リブ47により覆われている。この変形例2に係る誤嵌合防止リブ47は、一側部59の下段の薄壁部15を覆っている。一側部59におけるその他の薄壁部15は、表出している。この変形例2では、特に一側部59の下段の薄壁部15に他部材が干渉する確率の高いコネクタの使用形態において、小さい誤嵌合防止リブ47(少ない射出樹脂材)で効果的に薄壁部15を保護することができる。
【0068】
図13の(a)は図9に示したコネクタの変形例3に係るハウジング73を端子挿入側から見た斜視図、図13の(b)は図13の(a)に示したハウジング73を端子挿入側から見た背面図である。図14図13におけるF-F断面図である。
この変形例3に係るハウジング73は、図13及び図14に示すように、薄壁部15の全てを覆う誤嵌合防止リブ47が一側部59に形成され、薄壁部15における裏面の全てが誤嵌合防止リブ47により覆われている。この変形例3に係る誤嵌合防止リブ47は、一側部59の上下段前後の全ての薄壁部15を覆っている。一側部59では、その他に薄壁部15は、表出していない。この変形例3では、特に一側部59の全体における薄壁部15に他部材が干渉する確率の高いコネクタの使用形態において、薄壁部15を確実に保護することができる。
【0069】
図15の(a)は本発明の第4実施形態に係るコネクタのハウジング75を端子挿入側から見た斜視図、図15の(b)は図15の(a)に示した端子収容室19の要部拡大図である。図16の(a)は図15に示した端子収容室19に端子31が装着された状態の拡大背面図、図16の(b)は図16の(a)の要部拡大図である。
【0070】
本第4実施形態に係るコネクタのハウジング75は、箱状電気接触部33を挟んで突起部13が突設された隔壁21とは反対側の対向側隔壁面77に、箱状電気接触部33の接触部側面80(図16参照)に当接するローリング防止リブ81が形成される。ローリング防止リブ81は、端子挿入方向に延在する上下一対の突条リブを平行に形成することができる。
【0071】
本第4実施形態に係るコネクタのハウジング75では、上下一対のローリング防止リブ81が、端子収容室19に装着された端子31における突起部13に対向する接触部側面79とは反対側の接触部側面80に当接する。端子収容室19は、接触部収容空間が、端子31の箱状電気接触部33の外形よりも若干大きく形成されている。このため、箱状電気接触部33は、接触部収容空間内において、僅かではあるが移動する。そこで、端子31の箱状電気接触部33に形成された起立片17は、箱状電気接触部33が、端子挿入方向の中心軸回りに回転(ローリング)すると、突起部13の係止面51から外れる方向に移動する。端子31は、このローリングにより、突起部13の係止面51と起立片17との係止面積(係り代)が小さくなり、端子保持力の低下が懸念される。
【0072】
そこで、本第4実施形態に係るコネクタのハウジング75では、突起部13が設けられた隔壁21とは反対側の対向側隔壁面77に、上下一対のローリング防止リブ81が形成されることにより、箱状電気接触部33の中心軸回りのローリングが規制されている。端子31は、箱状電気接触部33のローリングが規制されることにより、起立片17と突起部13との適正な係止面積が常に確保されるようになる。その結果、本第4実施形態に係るコネクタにおいて、端子31の保持信頼性を向上させることができる。
【0073】
また、ローリング防止リブ81は、端子31のがた詰め効果も有する。ローリング防止リブ81は、延在方向に直交する断面が十分小さく設定されていることにより、端子挿入時の箱状電気接触部33から受ける力によりある程度の塑性変形が可能となる。これにより、寸法公差により生じている対向側隔壁面77と箱状電気接触部33とのクリアランスを、それぞれのコネクタに応じて、がた詰めすることができる。これにより、端子31の保持構造の信頼性を向上させることができる。
【0074】
また、本第4実施形態に係るコネクタのハウジング75は、端子31がローリング防止リブ81によりがた詰めされることにより、各端子収容室19の薄壁部15が突起部13の係止解除方向に変位しにくくなる。これによっても本第4実施形態に係るコネクタのハウジング75は、全ての端子31の保持信頼性を向上させることができる。
【0075】
従って、本第4実施形態に係るハウジング75及びコネクタ11によれば、ランスを廃止することができ、構造を簡素にできる。
【0076】
図17は本発明の第5実施形態に係るコネクタ11Aの分解斜視図である。図18は斜め上前方より見た端子31を(a)、斜め上後方より見た端子31を(b)に示した斜視図である。図19図17に示したハウジング91を端子挿入側から見た斜視図及び要部拡大図である。図20図17に示したハウジング91に端子31を装着した状態(電線41を図示省略)を端子挿入側から見た背面図及び要部拡大図である。
なお、上記第1実施形態に係るコネクタ11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
本第5実施形態に係るコネクタ11Aは、ハウジング91の隔壁21に形成された突起部13(図19参照)及び薄壁部15と、突起部13が突設された隔壁21とは異なる他の隔壁53に形成された可撓係止アーム16と、端子31の箱状電気接触部33に設けられた係止部である起立片17と、端子31の箱状電気接触部33に設けられた他の係止部である係止突起18と、を主要な構成として有する。
【0078】
ハウジング91は、図17に示すように、外形が扁平な略直方体形状で形成され、複数の端子収容室19を縦横に配列して有する。図示例のコネクタ11Aのハウジング91には、上下二段、左右に11個の合計22個の端子収容室19が形成されている。ハウジング91の上面25の左右には、相手コネクタとの嵌合をガイドする前後方向に延在して起立するガイド突起48が突設される。
【0079】
それぞれの端子収容室19には、端子31が装着される。端子31は、例えば箱状電気接触部33を挿入方向先端に有した雌端子金具である。箱状電気接触部33は、図18に示すように、外観が挿入方向に長い直方体形状とされる。箱状電気接触部33の内部には、相手ハウジングに収容される雄端子金具のタブ端子部と導通接触する板ばね片35が設けられている。端子31は、箱状電気接触部33の後方に、導体37を圧着する導体圧着部39、電線41を固定する被覆圧着部43が連設される。更に、端子31は、箱状電気接触部33の一方の側部の後端に、係止部である起立片17が形成されると共に、箱状電気接触部33の一方の側部の前方に、他の係止部である係止突起18が形成される。
【0080】
ハウジング91に形成されるそれぞれの端子収容室19は、四方の隔壁により区画形成される。端子収容室19には、端子31の箱状電気接触部33と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。突起部13は、これら四方の隔壁のうち、左右方向の一方の隔壁21に、端子収容室19に突出して形成される。即ち、突起部13は、端子収容室19に収容された端子31に向かって突出する。また、これら四方の隔壁のうち上下方向の一方の隔壁53には、前端側にかけて次第に端子収容室19内に張り出すように傾斜する片持ち梁状の可撓係止アーム16が形成される。本第5実施形態において、可撓係止アーム16は、図19に示したそれぞれの端子収容室19における下側の隔壁53に配置される。なお、可撓係止アーム16は、上側の隔壁に配置されてもよい。但し、可撓係止アーム16は、上側または下側いずれか一方の隔壁53に全てが配置され、左右混在して配置されることはない。
【0081】
可撓係止アーム16は、端子31の箱状電気接触部33に対して係止位置と非係止位置に変位することを可能としている。可撓係止アーム16は、自由端が挿入される端子31の係止突起18により押圧されることで、可撓係止アーム16を撓ませ、係止位置から端子収容室19の下側である非係止位置へ変位が可能となっている。
【0082】
端子31は、箱状電気接触部33の前方に、係止突起18が設けられる。係止突起18は、板金加工により箱状電気接触部33を形成する際に、天壁にプレス加工して設けておくことができる。他の係止部である係止突起18は、隔壁53に設けられた可撓係止アーム16に係止されることにより、端子31の後抜けを規制する。
【0083】
なお、本第5実施形態に係るコネクタ11Aでは、ハウジング91の可撓係止アーム16に係止されることにより端子31の後抜けを規制する他の係止部が、箱状電気接触部33の前方に設けた係止突起18とされているが、本発明はこれに限定されるものではない。箱状電気接触部33の他の係止部は、可撓係止アーム16に係止されることにより端子31の後抜けを規制することができるものであれば、例えば箱状電気接触部33に穿設した係止孔の開口縁など種々の形態を採り得る。
【0084】
図21図17示したハウジング91における端子挿入途中の水平断面図である。図22図17に示したハウジング91の上段の端子収容室19に端子31が収容された状態の縦断面図である。
端子31は、突起部13が突設された右側の隔壁21に形成された薄壁部15を、右側の端子収容室19側へ突出するように弾性変形させると共に、隔壁53に設けられた可撓係止アーム16を、端子収容室19の下側へ撓ませて装着される。従って、端子31が挿入される端子収容室19の右側の端子収容室19には、端子31が装着されていないことが要件となる。このため、左右方向に複数の端子収容室19が並設された本第5実施形態のハウジング91においても、上記第1実施形態のハウジング23と同様に、端子31は左側の端子収容室19から右側の端子収容室19に順に装着が行われる。
【0085】
次に、上記した本第5実施形態に係るハウジング91及びコネクタ11Aの作用を説明する。
本第5実施形態に係るコネクタ11Aでは、ハウジング91の端子収容室19は、四方の隔壁により区画形成され、挿入方向に長い直方体形状とされた端子31の箱状電気接触部33と略相似形の接触部収容空間が、少なくとも一部分に形成される。
【0086】
ハウジング91の端子収容室19に挿入された端子31は、箱状電気接触部33の上下左右の面が、接触部収容空間を区画形成する四方の隔壁(左右方向の隔壁21及び上下方向の隔壁53等)に近接する。端子収容室19は、四方の隔壁のうち一つの隔壁21には、端子31に向かって突出する突起部13が一体成形により突設されている。
突起部13には、端子31の挿入方向aに向かって徐々に隔壁21から離間する方向に高くなる押圧傾斜面49が形成される。突起部13は、押圧傾斜面49が挿入される端子31の起立片17により押圧されることで、突起部13が突設された隔壁21に形成された薄壁部15を撓ませ、端子収容室19の外側へ変位が可能となっている。
【0087】
即ち、隔壁21は、薄壁部15が設けられることにより、突起部13が端子31の箱状電気接触部33を係止して端子の抜けを規制する接近位置と、突起部13が端子31の箱状電気接触部33に対して離反する離反位置との間で変位することを可能としている。
更に、四方の隔壁のうち突起部13が突設された隔壁21とは異なる他の隔壁53には、端子31を係止する可撓係止アーム16が形成されている。そこで、端子31は、箱状電気接触部33に設けられた起立片17が薄壁部15に設けられた突起部13に係止されると共に、箱状電気接触部33に設けられた係止突起18が可撓係止アーム16に係止されることにより、端子31の後抜けが規制される。
【0088】
従って、本構成のハウジング91では、従来の大型のランスを端子収容室19に成形せずに、端子収容室19からの端子の後抜けを規制することができる。つまり、本構成のハウジング91では、可撓係止アーム16を小型化できる。その結果、ハウジング91は、可撓係止アーム16の形成スペース及び退避空間を小さくすることができ、大型のランスを設ける場合に比べ、端子収容室19の構造を大幅に簡素化してハウジング91を小型化することができる。
【0089】
図23の(a)は本発明の第6実施形態に係るコネクタ11Bの斜視図、図23の(b)は図23の(a)に示したハウジング95の斜視図である。図24の(a)は図23の(a)におけるG-G断面図、図24の(b)は図23の(a)に示したハウジング95を端子挿入側から見た背面図である。図25図23の(a)に示したコネクタ11Bの縦断面図である。
なお、上記第1実施形態に係るコネクタ11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0090】
本第6実施形態に係るコネクタ11Bは、ハウジング95の隔壁21に形成された突起部13(図24参照)及び薄壁部15と、ハウジング95の後方に設けられたバンド装着部と、端子31の箱状電気接触部33に設けられた係止部である起立片17と、を主要な構成として有する。
【0091】
ハウジング95は、図23の(a),(b)に示すように、外形が扁平な略直方体形状で形成され、複数の端子収容室19を縦横に配列して有する。更に、ハウジング95における下方向の隔壁53の後方には、端末に端子31が取り付けられて端子収容室19から引き出された電線41を束ねて固定する結束バンド100を装着するためのバンド装着部97が一体形成されている。
【0092】
ハウジング95に形成されるそれぞれの端子収容室19は、四方の隔壁により区画形成される。突起部13は、これら四方の隔壁のうち、左右方向の一方の隔壁21に、端子収容室19に突出して形成されている。
ハウジング95の下方向の隔壁53から後方に延出されたバンド装着部97は、複数の端子収容室19が並設されたハウジング95と同じ幅を有する幅広の基部から先端部に向かって徐々に幅が狭くなる略台形の板状に形成されている。そして、複数の端子収容室19が並設されたハウジング95の幅よりも狭い幅の載置面98には、図24の(a)に示すように、結束バンド100の結束方向(端子収容室19から引き出された電線41と直交する方向)に沿って中央部が凹んだ湾曲支持面が形成されている。
【0093】
そして、複数の端子収容室19から引き出された複数の電線41は、バンド装着部97の載置面98に載置された後、バンド装着部97に装着された結束バンド100により束ねて固定される。
図24の(b)に示すように、ハウジング95の幅よりも狭い幅の載置面98に湾曲支持面が形成されることで、載置面98に載置されて結束バンド100で結束された電線束(複数の電線41)には、結束バンド100により外周側から均等に締め付け力が作用し、電線束を確実に固定することができる。
【0094】
次に、上記した本第6実施形態に係るハウジング95の作用を説明する。
本第6実施形態に係るハウジング95によれば、端子収容室19から引き出された複数の電線41は、バンド装着部97に装着された結束バンド100により束ねて固定される。そこで、電線41が後方に引っ張られた際には、引っ張り力が端末に取り付けられた端子31に掛かることを防ぎ、端子の後抜けを規制できる。特に、複数の電線41が結束バンド100により束ねて固定されることで、電線41の取り回し時に電線1本へ引っ張り力が掛かることを防ぎ、隔壁21の突起部13に係止された端子31の端子抜けを確実に防止することができる。
【0095】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0096】
ここで、上述した本発明に係るハウジング及びコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[10]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 端子収容室(19)を区画形成するハウジング(23,55,67,69,71,75,91,95)の隔壁(21)に形成され、前記端子収容室に収容された端子(31)に向かって突出する突起部(13)と、
前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部(33)を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部(15)と、
を備えることを特徴とするハウジング(23,55,67,69,71,75,91,95)。
[2] 端子収容室(19)を区画形成するハウジング(91)の隔壁(21)に形成され、前記端子収容室に収容された端子(31)に向かって突出する突起部(13)と、
前記突起部が突設された前記隔壁に形成され、前記突起部が前記端子の箱状電気接触部(33)を係止して前記端子の後抜けを規制する接近位置と離反位置との間で変位可能とする可撓性を有した薄壁部(15)と、
前記突起部が突設された前記隔壁(21)とは異なる他の隔壁(53)に形成され、前記端子の箱状電気接触部(33)を係止して前記端子の後抜けを規制する係止位置と非係止位置との間で変位可能な可撓係止アーム(16)と、
を備えることを特徴とするハウジング(91)。
[3] 前記突起部(13)には、前記箱状電気接触部(33)の係止部(起立片17)が端子挿入方向(a)とは反対方向で当接して前記端子(31)の後抜けを規制する係止面(51)が形成され、
前記端子挿入方向と平行な前記隔壁(21)に対して前記係止面が垂直よりも小さい角度で形成される
ことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のハウジング(23,55,67,69,71,75,91,95)。
[4] 前記ハウジング(55)の一側部(59)には、前記薄壁部(15)における前記突起部(13)とは反対側の裏面が表出し、
前記一側部には、前記薄壁部を覆う外部樹脂壁(57)が形成されている
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のハウジング(55)。
[5] 前記突起部(13)が形成された前記薄壁部(15)の裏側における突起部裏面を除く前記隔壁(21)の裏面と、前記外部樹脂壁(57)とが、樹脂流動部(61)で連結されている
ことを特徴とする上記[4]に記載のハウジング(55)。
[6] 前記ハウジング(67,69,71,75)の一側部(59)には、前記薄壁部(15)における前記突起部(13)とは反対側の裏面が表出し、
前記一側部には、前記薄壁部の少なくとも一部を覆い前記ハウジングと嵌合する相手ハウジングとの誤嵌合を防止する誤嵌合防止リブ(47)が形成されている
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のハウジング(67,69,71,75)。
[7] 前記箱状電気接触部(33)を挟んで前記突起部(13)が突設された前記隔壁(21)とは反対側の対向側隔壁面(77)には、前記箱状電気接触部の接触部側面(79)に当接するローリング防止リブ(81)が形成されている
ことを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のハウジング(75)。
[8] 前記ハウジング(95)の後方には、端末に前記端子(31)が取り付けられて前記端子収容室(19)から引き出された電線(41)を束ねて固定する結束バンド(100)を装着するためのバンド装着部(97)が設けられていることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のハウジング(95)。
[9] 上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のハウジング(23,55,67,69,71,75,91,95)と、
前記突起部(13)に係止されることにより端子の後抜けを規制する係止部(起立片17)が箱状電気接触部(33)に設けられた端子(31)と、を備えることを特徴とするコネクタ(11,11A,11B)。
[10] 上記[2]に記載のハウジング(91)と、
前記可撓係止アーム(16)に係止されることにより端子の後抜けを規制する他の係止部(係止突起18)が箱状電気接触部(33)に設けられた端子(31)と、を備えることを特徴とするコネクタ(11A)。
【符号の説明】
【0097】
11…コネクタ
13…突起部
15…薄壁部
17…起立片(係止部)
19…端子収容室
21…隔壁
23…ハウジング
31…端子
33…箱状電気接触部
47…誤嵌合防止リブ
51…係止面
a…端子挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25