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特許7384622乱横断誘発道路領域の推定方法、推定された乱横断誘発道路領域を備えた地図データの作成方法、それらの装置及びコンピュータ用のプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】乱横断誘発道路領域の推定方法、推定された乱横断誘発道路領域を備えた地図データの作成方法、それらの装置及びコンピュータ用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231114BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20231114BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231114BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G01C21/26 A
G08G1/09 F
G08G1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019196744
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021071813
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】濱地 直美
(72)【発明者】
【氏名】若杉 友太
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
(72)【発明者】
【氏名】大崎 新太郎
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102437(JP,A)
【文献】特開2019-056952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01C 21/26
G08G 1/09
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱横断誘発道路領域の推定方法であって、
プローブデータ保存部に保存されているプローブカーの走行履歴をスキャニングして、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定のしきい値以上の長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出する第1の抽出ステップと、
該第1の抽出ステップで抽出された道路領域について、前記プローブカーの走行履歴をスキャニングして、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定する交通量特定ステップと、
特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出し、抽出された前記道路領域を第1の乱横断誘発道路領域とする第2の抽出ステップと、
を備える乱横断誘発道路領域の推定方法。
【請求項2】
前記交通量特定ステップにおいて、前記車列を単位長さ幅に区切り、該単位長さ幅毎に前記交通量を特定し
前記第2の抽出ステップにおいて、特定された交通量が所定値以下となる前記単位長さ幅を前記第1の乱横断誘発道路領域とする、請求項1に記載の乱横断誘発道路領域の推定方法。
【請求項3】
前記推定された第1の乱横断誘発道路領域とこれに続く連続道路領域との間に下記の少なくとも1つの関係があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第2の乱横断誘発道路領域と推定する、請求項1又は2に記載の推定方法、
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がある、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある
【請求項4】
前記推定された第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変更があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第3の乱横断誘発道路領域と推定する、請求項1又は2に記載の推定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の推定方法で推定された乱横断誘発道路領域をデータ化し、ナビゲーション装置で利用する地図データのリンクデータに関連付けて保存する、地図データの作成方法。
【請求項6】
プローブデータ保存部に保存されているプローブカーの走行履歴をスキャニングして、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定のしきい値以上の長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出する第1の抽出部と、
該第1の抽出部で抽出された道路領域について、前記プローブカーの走行履歴をスキャニングして、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定する交通量特定部と、
特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出し、抽出された前記道路領域を第1の乱横断誘発道路領域とする第2の抽出部と、
を備える乱横断誘発道路領域推定装置。
【請求項7】
第1の抽出部、交通量特定部及び第2の抽出部を備えてなる乱横断誘発道路推定装置を制御するコンピュータ用のプログラムであって、
前記第1の抽出部に、プローブデータ保存部に保存されているプローブカーの走行履歴をスキャニングして、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出させ、
前記交通量特定部に、該第1の抽出部で抽出された道路領域について、前記プローブカーの走行履歴をスキャニングして、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定させ、
前記第2の抽出部に、特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出させ、抽出された前記道路領域を第1の乱横断誘発道路領域とする、
乱横断誘発道路推定装置を制御するコンピュータ用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乱横断誘発道路領域の推定方法、推定された乱横断誘発道路領域を備えた地図データの作成方法、それらの装置及びコンピュータ用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故を未然に防止するため、事故発生確率の高い領域を地図データに予め指定しておいて、ナビゲーション装置を介して運転者にその旨を知らせるシステムが知られている(特許文献1、特許文献2参照)
かかる事故防止システムにおいて、最も求められるのが人身事故、すなわち車両と人との直接接触を防止することである。人体に与える影響が大きいからである。
本願発明に関連する技術を開示する特許文献3~5も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-185111号公報
【文献】特開2011-28415号公報
【文献】特開2010-170390号公報
【文献】特開2008-282097号公報
【文献】特快2013-998315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人身事故の高い発生原因として乱横断がある。ここに、乱横断とは歩行者が横断歩道以外の道路を横断することを指す。
乱横断を原因とする事故の中でも、車両の間からの乱横断時に発生する事故が重篤な人身事故を引き起こしやすい。運転手からみて車両の間の人を視認することは、路肩や歩道の人を視認することより困難だからである。特に、ワンボックスカーなど車高の高い車両の比率が高くなった昨今において、その陰にかくれた人が乱横断を始めたときには、それに気づくことが遅れがちになる。
他方、渋滞などで長い停止車両の車列が発生したとき、停止中の車両から横断歩道まで遠くなることがある。かかる車両の乗員が、何らかの理由で道路の反対側へ移動する必要を感じたとき、当該乗員は遠くの横断歩道を利用せずに直接道路を横断する、いわゆる乱横断を行う衝動に駆られやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このように、停止車両の車列があるとき特に危険な乱横断が発生する可能性が高くなることに気づき、本発明に想到した。
本発明の第1の局面は次のように規定される。
即ち、乱横断誘発道路領域の推定方法であって、
プローブデータ保存部に保存されているプローブデータを参照し、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出する第1の抽出ステップと、
該第1の抽出ステップで抽出された道路領域について、前記プローブデータを参照して、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定する交通量特定ステップと、
特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出し、これを第1の乱横断誘発道路領域とする第2の抽出ステップと、
を備える乱横断誘発道路領域の推定方法。
【0006】
道路の一方の車線に停止車両の車列が存在したとき、停止中の車両の乗員がそこから乱横断の衝動に駆られるおそれがあることは既述の通りであるが、その前提として、他の車線の交通量が少ないことがある。他の車線の交通量が多ければ危険を感じて乱横断を躊躇するからである。従って、上記第1の局面で規定するように、一方の車線に所定長さの停止車両の車列が存在するとともに、他方の車線の交通量が少ないときに、乱横断発生の確率が高まるとして、かかる条件に合致する道路領域を第1の乱横断誘発道路領域と推定する。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面に規定の乱横断誘発道路領域の推定方法において、
前記交通量特定ステップにおいて、前記車列を単位長さ幅に区切り、該単位長さ幅毎に前記交通量を特定し
前記第2の抽出ステップにおいて、特定された交通量が所定値以下となる前記単位長さ幅を前記第1の乱横断誘発道路領域とする。
【0008】
レジャー施設などの駐車場待ちにおいては停止車両の車列が数百mに及ぶことがある。他方、信号待ちにより発生する車列の長さは数十mに満たない場合もある。ここに、交通量をある時刻若しくは単位時間に存在する走行車両の数の範囲を車列毎に判断すると、車列の長さの如何により交通量が変化する。そこで、第2の局面で規定するように車列を単位長さ幅に区切り、この単位長さ幅毎の交通量の多寡を判断することとした。これにより、第1の乱横断誘発道路領域を推定する際に用いるパラメータが固定されて、推定の精度が安定する。
【0009】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、第1又は第2の局面に規定の推定方法において、前記推定された第1の乱横断誘発道路領域とこれに続く連続道路領域との間に下記の少なくとも1つの関係があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第2の乱横断誘発道路領域と推定する、請求項1又は2に記載の推定方法、
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がある、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある。
【0010】
このように規定される第3の局面に規定の乱横断誘発道路領域の推定方法によれば、(1)~(3)のいずれかの条件に該当すると、第1の乱横断誘発道路領域に連続する連続道路領域を走行する車両からみたとき、第1の乱横断誘発道路領域の全域の状態の視認が困難になる。例えば(1)の条件であれば、特に第1の乱横断誘発道路領域が右カーブしていると、連続道路領域を走行する車両からカーブの先が見えなくなるおそれがある。(2)の条件であれば、特に第1の乱横断誘発道路領域が連続道路領域より高い位置にあると、連続道路領域を走行する車両から第1の乱横断誘発道路領域の全域を見渡すことが困難になる。(3)の条件であれば、特に第1の乱横断誘発道路領域が連続道路領域より暗いときに、連続道路領域を走行する車両から第1の乱横断誘発道路領域の状況を把握しがたくなる。
かかる条件に該当する第1の乱横断誘発道路領域については、その悪視認性により、乱横断に対する事故の発生確率が高くなるものとしてこれを第2の乱横断誘発道路領域とし、もって、運転者に対するより高い注意喚起を可能とする。
【0011】
運転者が日常通過する道路に第1の乱横断誘発道路領域が存在したとき、通常の運転者であれば当該領域を走行するときには注意をして運転する。運転者によれば注意すべきポイントを決めているかもしれない。しかしながら、第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変更があると(例えばバス停の位置が変更になると)、変更前とは異なる態様の乱横断が発生する。この場合、注意すべきポイントを決めていた運転者(日常的に通過する運転者)こそ、当該変化した乱横断に対する対応が遅れるおそれがある。
そこで、この発明の第4の局面は次のように規定される。
即ち、第1又は第2の推定方法において、前記推定された第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変更があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を乱横断誘発道路領域と推定する。
これにより、運転者に対するより高い注意喚起を提供可能となる。
【0012】
この発明の第5の局面は次のように規定される。
即ち、第1~第4の局面のいずれかに記載の推定方法で推定された乱横断誘発道路領域をデータ化し、ナビゲーション装置で利用する地図データのリンクデータに関連付けて保存する、地図データの作成方法。
かかる地図データをナビゲーション装置に組み込むことにより、第1の乱横断誘発道路領域や第2の乱横断誘発道路領域の存在を運転者に伝えることができる。
【0013】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
プローブデータ保存部に保存されているプローブデータを参照し、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出する第1の抽出部と、
該第1の抽出部で抽出された道路領域について、前記プローブデータを参照して、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定する交通量特定部と、
特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出し、これを第1の乱横断誘発道路領域とする第2の抽出部と、
を備える乱横断誘発道路領域推定装置。
このように規定される第6の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第1の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0014】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第6の局面に規定の乱横断誘発道路推定装置において、前記交通量特定部は、前記車列を単位長さ幅に区切り、該単位長さ幅毎に前記交通量を特定し
前記第2の抽出部は、特定された交通量が所定値以下となる前記単位長さ幅を前記第1の乱横断誘発道路領域とする。
このように規定される第7の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第2の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0015】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第6又は第7の局面に規定の乱横断誘発道路推定装置において、前記推定された第1の乱横断誘発道路領域とこれに続く連続道路領域との間に下記の少なくとも1つの関係があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第2の乱横断誘発道路領域とする比較部が更に備えられる、請求項6又は7に記載の装置、
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がある、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある。
このように規定される第8の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第3の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0016】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第6又は第7の局面に規定の乱横断誘発道路推定装置において、前記推定された第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変更があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第3の乱横断誘発道路領域とする、道路施設監視部が更に備えられる。
このように規定される第9の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第4の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0017】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第6又は第7の局面に規定の乱横断誘発道路推定装置より推定された第1の乱横断誘発道路領域に関するデータを備えた地図データ保存部を備えるカーナビゲーション装置
【0018】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第1の抽出部、交通量特定部及び第2の抽出部を備えてなる乱横断誘発道路推定装置を制御するコンピュータ用のプログラムであって、
前記第1の抽出部に、プローブデータ保存部に保存されているプローブデータを参照し、複数の車線のある道路において、一方の車線に所定長さの停止車両の車列がある道路領域を抽出させ、
前記交通量特定部に、該第1の抽出部で抽出された道路領域について、前記プローブデータを参照して、前記停止車両の車列が存在したときの他の車線の交通量を特定させ、
前記第2の抽出部に、特定された交通量が所定値以下となる前記道路領域を抽出させ、これを第1の乱横断誘発道路領域とする、
乱横断誘発道路推定装置を制御するコンピュータ用のプログラム。
このように規定される第11の局面のプログラムによれば、この発明の第1の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0019】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第11の局面に規定のプラグラムにおいて、前記交通量特定部に、前記車列を単位長さ幅に区切り、該単位長さ幅毎に前記交通量を特定させ、
前記第2の抽出部に、特定された交通量が所定値以下となる前記単位長さ幅を前記第1の乱横断誘発道路領域とさせる。
このように規定される第12の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の2の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0020】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第11又は12の局面に規定のプラグラムにおいて、前記乱横断誘発道路推定装置は比較部を更に備え、
該比較部に、前記推定された第1の乱横断誘発道路領域とこれに続く連続道路領域との間に下記の少なくとも1つの関係があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第2の乱横断誘発道路領域とさせる、請求項11又は12に記載のプログラム、
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がある、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある。
このように規定される第13の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第3の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【0021】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第11又は12の局面に規定のプラグラムにおいて、前記乱横断誘発道路推定装置は道路施設監視部を更に備え、
該道路施設監視部に、記推定された第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変更があったとき、前記第1の乱横断誘発道路領域を第3の乱横断誘発道路領域とする。
このように規定される第14の局面の乱横断誘発道路推定装置によれば、この発明の第3の局面と同様の作用ないし効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は他の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は他の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置の主要部の構成を示すブロックである。
図4図4は他の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図5図5図1に示した乱横断誘発道路領域推定装置の動作を示すフローチャートである。
図6図6図2に示した乱横断誘発道路領域推定装置の動作を示すフローチャートである。
図7図7図3図4で示した乱横断誘発道路領域推定装置の動作を示すフローチャートである。
図8図8は実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置のハード構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1はこの発明の乱横断誘発道路推定装置1を示す。
この乱横断誘発道路推定装置1はプローブデータ保存部3、第1抽出部5、交通量特定部7及び第2抽出部9を備えてなる。
プローブデータ保存部に3は、プローブカーの走行履歴(座標、時刻、速度、方向、勾配など)が保存されている。更には、走行時の外部環境(照度等)も保存されている。外部のデータサーバに保存されているプローブデータを利用することもできる。
第1抽出部5は、プローブデータ保存部3に保存されているデータをスキャニングして、複数の車線のある道路において一方の車線に停止車両の車列が存在する道路領域を抽出する。異なるIDのプローブカーであって、同時刻に同一の道路の同一車線に車速が実質ゼロのものが複数存在したとき、そこに停止車両の車列が発生したものと推定する。
【0024】
車列の前端及び後端は車両の密度から定めることができるが、その他、施設駐車場の入り口や信号機を車列の前端としたり、ウインカーを動作させた箇所を前端としたりすることができる。また、ハザードランプが消灯した箇所を後端とすることもできる。かかる停止車両の車列の範囲は変化するので、任意に指定された時刻における車列の状態(範囲)を特定することとなる。複数の時刻において特定された車列の状態の平均をとって、車列の範囲を定義することもできる。
このようにして抽出された停止車両の車列が存在する領域を道路領域とする。
この道路領域には停止車両の車列が存在する車線(一方の車線)の他にも車線が存在するものとする。かかる他の車線としては、片側一車線の道路では対向車線が該当する。また、片側複数車線の道路では、一方の車線の隣りの車線(通常は中央側、1車線以上)が該当する。
【0025】
第1抽出部5で抽出された道路領域において他の車線の交通量が交通量特定部7により特定される。この例では、交通量特定部7は、第1抽出部5が道路領域を抽出したときの時刻において当該道路領域に対向する他の車線を走行する車両の数をもって交通量とする。抽出時刻の前及び/後に時間幅(1~10秒)を与えて、当該時間幅において他の車線を走行する車両の数をもって交通量とすることもできる。
【0026】
第2抽出部9は、第1抽出部5で抽出された道路領域において他の車線の交通量が所定値(例えば1台)以下のものを抽出し、当該道路領域を第1の乱横断誘発道路領域と推定する。
このようにして推定された第1の乱横断誘発道路領域は地図データ保存部21の道路特性データ保存部213に書き込まれる。
かかる推定を常に実行すると、日ごと/週ごと/月ごと/年ごとに定まったタイミングで発生する第1の乱横断誘発道路領域を特定することができる。このように特定された乱横断誘発道路領域にはこれが発生する時間的条件を付しておいて、当該時間要件を満足したときに、ナビゲーション装置において利用者に注意喚起をするようにできる。
【0027】
地図データ保存部21はナビゲーション装置20を構成する要素の一部であり、道路要素データ保存部211と道路特性データ保存部213とを備える。道路要素データ保存部211には道路地図を描くのに必要なデータが保存される。かかるデータとして、リンクデータ、ノードデータ、高度データ、車線データなどがある。道路特性データ保存部213には規制情報(制限速度等)、施設情報、その他ナビゲーション装置の案内に必要な道路の情報が保存されている。
第2抽出部9で抽出された第1の乱横断誘発道路領域はこの道路特性データ保存部213に書き込まれて、ナビゲーション装置の案内に供せられる。
図1の例の地図データ保存部21はマスターデータであり、サーバが一旦保存する。そして、所望のタイミングで各車両へ提供され、そのナビゲーション装置の地図データ保存部の内容を更新する。
【0028】
図2は他の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置11の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
図2の乱横断誘発道路推定装置11では交通量特定部17が区切り部171と交通量演算部173とを備える。この区切り部171は、第1抽出部5で抽出された道路領域が所定の長さ以上のとき、これを所定の長さ(単位長さ幅)に分割する。
分割した単位長さ幅毎に交通量演算部173は交通量を演算する。即ち、この交通量演算部173は、区切り部171で区切られた単位長さ幅毎に道路領域毎に交通量を特定する。
【0029】
図3は他の実施形態の乱横断誘発道路領域推定装置の主要部の構成を示すブロックである。
この装置では、第2抽出部9で抽出された第1の乱横断誘発道路領域について、比較部21により、更に運転者の注意を喚起すべき領域を推定する。
運転者に注意を喚起すべき一つの態様として、運転者から見て当該道路領域の視認が物理的に困難な場合がある。従って、第1の乱横断下記の3つの条件の少なくとも一つに該当するとき、当該第1の乱横断誘発道路領域には特に高い注意力を要する
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がある、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある。
かかる条件に合致した第1の乱横断誘発道路領域は、他のそれらと仕訳けられ、第2の乱横断誘発道路領域として道路特性データ保存部213に保存される。
【0030】
運転者の注意を喚起すべき他の態様として、第1の乱横断誘発道路領域において環境変化があった場合がある。即ち、運転者が日常的に第1の乱横断誘発道路領域を通過しているとそれに対する注意力がいわゆるマンネリ化する。かかる第1の乱横断誘発道路領域に面する施設に変化があったとき、施設の変更を知らなかった運転者からみれば、予想外、想定外の乱横断が発生するおそれがある。
そこで、図4に示すように、道路施設監視部31を設ける。この道路施設監視部31は道路特性データ保存部213に保存されている施設の情報を常に監視して、第1の乱横断誘発道路領域施設に何らかの変更が生じたとき、これが更に高い注意を必要とすべきものとなったとして、第3の乱横断抑制道路領域として道路特性データ保存部213に保存される。
【0031】
図5のフローチャートに基づきながら、図1の乱横断誘発道路推定装置1の動作について説明する。
ステップ1において、第1抽出部5はプローブデータ保存部3のプローブデータをスキャニングして、停止車両の車列を抽出する。より具体的には、任意に又は所定のルールに従って特定される時刻において、速度ゼロの車両が連続する座標を特定する。
ステップ2において、第1抽出部5は、ステップ1で抽出した停止車両の車列が複数車線からなる道路の一方の車線に存在するものか否かを検証する。駐車場における停止車両の車列を排除するためである。このとき、道路特性データ保存部のデータを参照して、中央分離帯の存在が認められるときにも、排除することが好ましい。中央分離帯を越えての乱横断は殆ど発生しないからである。
【0032】
ステップ3では、第1抽出部5は一方の車線に存在する停止車両の車列が所定のしきい値長さ(例えば100m)以上であるか否かを検証し、車列が当該しきい値長さ以上であったとき、ステップ5に進む。車列が短いときは、車列の前後の横断歩道まで迂回することに大きな負担がかからないので、車列の間からあえて乱横断を敢行ことは少ないと考えられるからである。
ステップ2及びステップ3の条件を満足した車列の存在する領域を道路領域として、以下に続くステップの処理対象とする。
【0033】
ステップ5では、上記のように抽出された道路領域において、交通量特定部7が車列のある車線(一方の車線)以外の車線(他方の車線)の交通量を特定する。具体的には、交通量特定部7はプローブデータ保存部に保存されているプローブデータをスキャニングして、車列を抽出した時刻において、道路領域の他の車線、即ち停止車両の車列に対向する他の車線に存在する走行車両の数をカウントする。ここに、走行車両とは例えば時速30km以上の速度で走行している車両を指し、走行の方向や走行する車線(他の車線が複数あるとき)は問わない。
ステップ7において、第2抽出部9は、ステップ3において特定された道路領域の中から、他方の車線を走行する車両の数が所定のしきい値数(例えば1台)以下のものを抽出し、第1の乱横断誘発道路領域とする(ステップ9)。
このようにして推定された第1の乱横断誘発道路領域は地図データ保存部21の道路特性データ保存部213に保存される。
【0034】
図6のフローチャートに基づき、図2の乱横断誘発道路推定装置11の動作について説明する。なお、図5と同一の動作を行うステップには同一の符号を付してその説明を省略する。
ステップ15では、区切り部171は車列を例えばその前端から単位長さ幅(例えば100m)毎に区切る。なお、後端側の端数はその前の単位に合体させる。
ステップ16では、交通量演算部173が区切られた単位長さ幅毎に他方の車線の交通量を特定する。特定の方法はステップ5と同じである。
ステップ17において、第2抽出部19は、ステップ16で区切られた単位長さ幅毎の中から、他方の車線を走行する車両の数が所定のしきい値数(例えば1台)以下のものを抽出し、第1の乱横断誘発道路領域とする(ステップ19)。
【0035】
図7のフローチャートに基づき、図3図4の乱横断誘発道路推定装置11の動作について説明する。なお、図5、6と同一の動作を行うステップには同一の符号を付してその説明を省略する。
ステップ31において、比較部21は、ステップ9又は19で推定された第1の乱横断誘発道路が、下記条件(1)~(3)の少なくとも一つの条件に合致する場合、第2の乱横断誘発道路として道路特性データ保存部213に書き込む。
(1)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域の少なくとも一方がカーブしている、
(2)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに高低差がる、
(3)第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域とに明るさに差がある。
【0036】
なお、連続道路領域は、第1の乱横断誘発道路領域の両端に設けられるものとし、例えば、一つのリンクで定義される道路の領域を連続道路領域とすることができる。第1の乱横断誘発道路がカーブしているか否かは道路要素データ保存部に保存されているリンク情報に基づき判断する。例えば、第1の乱横断誘発道路領域に半径が所定値以下のカーブが含まれていたとき(1)の条件に相当するものとする。また、第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域との高低差があるか否かも道路要素データ保存部に保存されているリンクの高度情報に基づき判断される。例えば、連続道路領域より第1の乱横断誘発道路領域の少なくとも一部が所定高さより高いとき(2)の条件に相当するものとする。第1の乱横断誘発道路領域と連続道路領域との明るさに差があるか否かはプローブデータ保存部3に保存されている照度のデータに基づき判断される。即ち、停止車両の車列を抽出した時刻において、停止車両に含まれるプローブカーが観測した外部環境の照度とその時刻に連続道路領域に存在したプローブカーが観測した外部環境の照度とに所定の差があるとき(3)の条件に相当するものとする。
【0037】
ステップ32では、道路施設監視部31が第1の乱横断誘発道路領域に面する施設の変化を観察し、変化があったとき、第1の乱横断誘発道路領域を第3の乱横断誘発道路領域として道路特定データ保存部213に書込む。
なお、この道路施設監視部31の観察により、一定期間(例えば1年)以上にわたり施設の変更がなかったときは、第3の乱横断誘発道路領域を道路特性データ保存部213から削除してもよい。
【0038】
図8に乱横断誘発道路領域推定装置のハード構成を示す。
演算部200はCPU201、ROM203及びRAM205を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、第1抽出部、交通量特定部、第2抽出部、比較部、道路施設監視部として機能する。ROM203は、演算部200を制御する制御プログラム等が格納された不揮発性メモリである。RAM205は、キーボード等の入力装置280を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPU201に対してワーキングエリアを提供したりする。演算部200を制御する制御プログラムはROM203に限らずRAM205や第1、第2記憶装置240及び250に格納されていてもよい。
【0039】
第1記憶装置240はプローブデータ保存部3を備える。
第2記憶装置250は乱横断誘発条件保存部251を備える。この乱横断誘発条件保存部251には第2の乱横断誘発道路領域を定義するときに用いる条件(1)~(3)のデータが保存される。
第1、第2記憶装置はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
【0040】
データを一時的に保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
出力装置270はディスプレイや音声出力装置であり、入力装置280は音声入力部や、ディスプレイに重ねて配置されるタッチパネル式のキーボートやマウスなどが該当する。
通信インターフェース230を介して、ナビゲーション装置20と通信可能となる。なお、図1図4に示したブロック図において、地図データ保存部21がナビゲーション装置のセンター(サーバ)を構成するものであり、かつそのセンター(サーバ)が乱横断誘発道路領域推定装置の機能も備えていたととき、第2記憶装置250が当該地図データ保存装置の機能も奏するものとする。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス240で連結されている。
【0041】
本発明は、上記実施形態、実施例、変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1、11 乱横断誘発道路領域推定装置
3 プローブデータ保存部
5 第1抽出部
7、17 交通量特定部
9 第2抽出部
21 地図データ保存部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8