(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】流体センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/04 20060101AFI20231114BHJP
G01K 1/16 20060101ALI20231114BHJP
G01K 13/02 20210101ALI20231114BHJP
【FI】
G01L19/04
G01K1/16
G01K13/02
(21)【出願番号】P 2019199669
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村本 大地
(72)【発明者】
【氏名】松永 和之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎平
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-253223(JP,A)
【文献】特開平11-153466(JP,A)
【文献】特開2003-130747(JP,A)
【文献】特開2009-109266(JP,A)
【文献】特開2011-033531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178487(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00350612(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/02
G01F 15/00 - 15/18
G01K 1/00 - 19/00
G01L 7/00 - 23/32
G01L 27/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が内部に入る筐体と、
熱伝導率の高い材料で構成され、一方の側にある第1の面が前記筐体内に入ってきた被測定流体に触れるように前記筐体内に設けられており、前記第1の面から入った熱を他方の側にある第2の面に向かって熱伝導により伝達する熱伝達材と、
熱伝導率の低い材料で構成され、前記熱伝達材の第2の面側で前記熱伝達材に係合することで前記熱伝達材を支持し、前記筐体内に設置されている熱伝達材支持体と、
熱伝導率の高い材料で構成され、前記熱伝達材支持体に設けられ、前記熱伝達材支持体の一方の側にある第1の面から前記熱伝達材支持体の他方の側にある第2の面に向かう方向で、熱伝導によって熱伝達をする熱伝導部位と、
前記熱伝導部位を伝わってきた熱の温度を測定することで被測定流体の温度を測定する温度測定部と、
を有
し、
前記熱伝達材支持体には、前記熱伝達材支持体の第1の面から前記熱伝達材支持体の第2の面まで貫通している貫通孔が設けられており、前記熱伝導部位は、前記貫通孔に充填されている流体センサ。
【請求項2】
前記熱伝導部位は、
熱伝導ポッティング剤で構成されており、
前記温度測定部は、前記熱伝導ポッティング剤に入り込んでいる温度測定素子を備えて構成されている請求項1に記載の流体センサ。
【請求項3】
前記筐体内に入ってきた被測定流体の圧力を測定する圧力測定部が設けられており、
前記圧力測定部は、圧力センサ素子と、前記被測定流体の温度に応じて前記圧力センサ素子の出力を補償する演算回路とを備えて構成されており、
前記演算回路は、前記温度測定部が測定した被測定流体の温度に応じて前記補償をするように構成されている請求項1または請求項2に記載の流体センサ。
【請求項4】
前記筐体内に入ってきた被測定流体の圧力を測定する圧力測定部が設けられており、
前記圧力測定部は、圧力センサ素子と、前記圧力センサ素子の出力を補償する演算回路とを備えて構成されており、
前記演算回路は、
前記流体センサが設置されている箇所の外気温度に応じて前記補償をするように構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体センサ。
【請求項5】
前記熱伝達材は、所定の厚さの平板状部位を備えて構成されており、前記熱伝達材の第1の面は、前記平板状部位の厚さ方向の一方の面であり、前記熱伝達材の第2の面は、前記平板状部位の厚さ方向の他方の面であり、
前記筐体内に入ってくる被測定流体が流れる方向が、前記熱伝達材の第1の面に対して直交しているかもしくは直角に近い角度になっており、
前記筐体内に入ってきた被測定流体が前記熱伝達材の第1の面にぶつかることで前記筐体内に入ってきた被測定流体が流れる方向が変わるように構成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエアコン装置の冷媒回路で使用する流動媒体の圧力および温度を測定する差込みセンサが知られている。差込みセンサは、センサ軸を備えるセンサ本体と、このセンサ本体に実質的に同心に配置された圧力センサとを備えている。
【0003】
さらにセンサ本体には、圧力センサを流動媒体と接続するための貫通孔部と、温度センサをその中に収容する温度センサ孔部が設けられている。温度センサ孔部は温度センサ孔軸を有し、この温度センサ孔軸は、流動媒体に向いた側のセンサ軸の端部に向かって傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のセンサでは、金属で構成されているセンサ本体(筐体)に斜めに細長い穴をあけて、この穴内にリードタイプのサーミスタを設置している。したがって、金属で構成されている筐体の薄肉部を伝わってきた熱を測定する際の応答性は良くなっている。しかし、金属筐体への穴加工がし難く、加工された穴内へのサーミスタの設置作業が煩わしくなり、製造工程が煩雑になる。
【0006】
本発明は、被測定流体の温度を測定する際の応答性が良く、しかも、製造が容易である流体センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る流体センサは、被測定流体が内部に入る筐体と、熱伝導率の高い材料で構成され、一方の側にある第1の面が前記筐体内に入ってきた被測定流体に触れるように前記筐体内に設けられており、前記第1の面から入った熱を他方の側にある第2の面に向かって熱伝導により伝達する熱伝達材と、熱伝導率の低い材料で構成され、前記熱伝達材の第2の面側で前記熱伝達材に係合することで前記熱伝達材を支持し、前記筐体内に設置されている熱伝達材支持体と、熱伝導率の高い材料で構成され、前記熱伝達材支持体に設けられ、前記熱伝達材支持体の一方の側にある第1の面から前記熱伝達材支持体の他方の側にある第2の面に向かう方向で、熱伝導によって熱伝達をする熱伝導部位と、前記熱伝導部位を伝わってきた熱の温度を測定することで被測定流体の温度を測定する温度測定部とを有する。
【0008】
また、本発明の態様に係る流体センサでは、前記熱伝達材支持体に、前記熱伝達材支持体の第1の面から前記熱伝達材支持体の第2の面まで貫通している貫通孔が設けられており、前記熱伝導部位が、前記熱伝達材支持体に設けられている貫通孔に充填されている熱伝導ポッティング剤で構成されており、前記温度測定部が、前記熱伝導ポッティング剤に入り込んでいる温度測定素子を備えて構成されている。
【0009】
また、本発明の態様に係る流体センサでは、前記筐体内に入ってきた被測定流体の圧力を測定する圧力測定部が設けられており、前記圧力測定部が、圧力センサ素子と、前記被測定流体の温度に応じて前記圧力センサ素子の出力を補償する演算回路とを備えて構成されており、前記演算回路が、前記温度測定部が測定した被測定流体の温度に応じて前記補償をするように構成されている。
【0010】
また、本発明の態様に係る流体センサは、前記筐体内に入ってきた被測定流体の圧力を測定する圧力測定部が設けられており、前記圧力測定部は、圧力センサ素子と、前記圧力センサ素子の出力を補償する演算回路とを備えて構成されており、前記演算回路は、環境温度に応じて前記補償をするように構成されている。
【0011】
また、本発明の態様に係る流体センサでは、前記熱伝達材が、所定の厚さの平板状部位を備えて構成されており、前記熱伝達材の第1の面が、前記平板状部位の厚さ方向の一方の面になっており、前記熱伝達材の第2の面が、前記平板状部位の厚さ方向の他方の面になっており、前記筐体内に入ってくる被測定流体が流れる方向が、前記熱伝達材の第1の面に対して直交しているかもしくは直角に近い角度になっており、前記筐体内に入ってきた被測定流体が前記熱伝達材の第1の面にぶつかることで前記筐体内に入ってきた被測定流体が流れる方向が変わるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定流体の温度を測定する際の応答性が良く、しかも、製造が容易である流体センサを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体センサの外観を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流体センサの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る流体センサの熱伝達材と熱伝達材支持体との斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る流体センサ1は、たとえば、オイルの温度を測定するオイルセンサとして使用されるものであり、さらに具体的には、車載用オイルセンサとして使用されるものである。
【0015】
車載用オイルセンサ1は、
図1~
図4で示すように、筐体3と熱伝達材5と熱伝達材支持体7と熱伝導部位9と温度測定部11とを備えて構成されている。筐体3の内部には、被測定流体(オイル)が入るようになっている。
【0016】
ここで、説明の便宜のために、車載用オイルセンサ1における所定の一方向をX方向とし、X方向に対して直交する所定の一方向をY方向とし、X方向とY方向とに対して直交する方向をZ方向とする。
【0017】
熱伝達材5は、金属等の熱伝導率の高い材料で構成されており、筐体3内で熱伝達材支持体7を介して筐体3に一体的に設けられている。熱伝達材5の一方の側にある第1の面13は、筐体3内に入ってきたオイルに触れるようになっている。
【0018】
熱伝達材5は、第1の面13から入った熱を他方の側にある第2の面15に向かって熱伝導により伝達するようになっている。なお、第1の面は、Z方向の下側に位置しており、第2の面15は第1の面13とは反対側であるZ方向の上側に位置している。第2の面は、オイルには接しないようになっている。
【0019】
熱伝達材支持体7は、熱伝達材5よりも熱伝導率が低く型を用いた成形が容易である合成樹脂等の材料で構成されている。熱伝達材支持体7は、熱伝達材5の第2の面15側であるZ方向上側で熱伝達材5に係合することで熱伝達材5を一体的に支持している。
【0020】
たとえば、熱伝達材支持体7は、一方の側であるZ方向下側にある第1の面17が熱伝達材の第2の面15に接して熱伝達材5を一体的に支持している。また、熱伝達材支持体7は、筐体3内で筐体3に一体的に設置されている。
【0021】
熱伝導部位9は、熱伝達材支持体7よりも熱伝導率の高い熱伝導ポッティング剤25の材料で構成されており、熱伝達材支持体7に設けられている。熱伝導部位9は、熱伝達材支持体7の第1の面17から熱伝達材支持体7の他方の側にある第2の面19に向かう方向で、熱伝達材5を伝わってきた熱を熱伝導によって伝達をするようになっている。熱伝達材支持体7の第2の面19は、熱伝達材支持体7の第1の面17とは反対側であるZ方向上側に位置している。
【0022】
温度測定部11はサーミスタ等の温度測定素子21を備えて構成されている。サーミスタ21は、熱伝導部位9を伝わってきた熱の温度を測定することで筐体3内に入ってきたオイルの温度を測定するようになっている。
【0023】
熱伝達材支持体7には、熱伝達材支持体7の第1の面17から熱伝達材支持体7の第2の面19まで貫通している貫通孔23が設けられている。熱伝導部位9は、熱伝達材支持体7に設けられている貫通孔23に充填されている熱伝導ポッティング剤(たとえば、エポキシ系ポッティング剤、もしくは、シリコーン系ポッティング剤)25で構成されている。なお、貫通孔23は、空隙が存在しないようにして熱伝導ポッティング剤25で充填されている。
【0024】
温度測定部11を構成しているサーミスタ21は、熱伝導ポッティング剤25内に入り込んでいる。すなわち、サーミスタ21の少なくとも一部は、熱伝導ポッティング剤25内に埋め込まれており、熱伝導ポッティング剤25と接触している。
【0025】
なお、熱伝達材支持体7に貫通孔23を設けることに代えて、熱伝達材支持体7の一部に凹部を設けることで、熱伝達材支持体7の一部で熱伝達材支持体7の厚さを薄くしてもよい。そして、上記凹部に熱伝導ポッティング剤25を充填し、熱伝導ポッティング剤25にサーミスタ21を入れ込んでもよい。熱伝達材支持体7の凹部の厚さ寸法は、熱伝達材支持体7の第1の面17から熱伝達材支持体7の第2の面19に向かう方向であるZ方向における寸法である。
【0026】
さらに、サーミスタ21が熱伝達材5に直接するようにして、サーミスタ21を貫通孔23内に設置してもよい。また、熱伝導ポッティング剤25を設けることなく、サーミスタ21が熱伝達材5に直接するようにして、サーミスタ21を貫通孔23内に設置してもよい。
【0027】
熱伝達材支持体7は、所定の厚さの平板状部位27を備えて構成されている。この場合、熱伝達材支持体7の第1の面17は、平板状部位27の厚さ方向の一方の面で形成されており、熱伝達材支持体7の第2の面19は、平板状部位の厚さ方向の他方の面で形成されている。
【0028】
熱伝達材支持体7の平板状部位27の上側にある第2の面19には、平板状の回路基板29が設けられている。熱伝達材支持体7の平板状部位27の厚さ方向と、回路基板29の厚さ方向とはZ方向になっておりお互いが一致している。
【0029】
サーミスタ21は、回路基板29の厚さ方向の一方の面であるZ方向下側の面に直接設けられている。これにより、高価なリードタイプのサーミスタ21を採用することなくオイルの温度を測定することができる。なお、回路基板29の厚さ方向の一方の面は、すでに理解されるように、Z方向下側の面であり、熱伝達材支持体7の平板状部位27側の面である。
【0030】
また、車載用オイルセンサ1には、筐体3内に入ってきたオイル圧力を測定する圧力測定部31が設けられている。圧力測定部31は、圧力センサ素子33と演算回路35とを備えて構成されている。
【0031】
圧力センサ素子33は、温度特性をもっている。すなわち、圧力センサ素子33は、周囲の温度変化によって出力値が変動してしまう。演算回路35は、たとえばICを備えて構成されており、温度測定部11が測定したオイルの温度に応じて圧力センサ素子33の出力(アナログ出力)を補償するように構成されている。
【0032】
熱伝達材5も、所定の厚さの平板状部位37を備えて構成されている。熱伝達材5の第1の面13は、平板状部位37の厚さ方向の一方の面でありZ方向下側の面である。熱伝達材5の第2の面15は、平板状部位37の厚さ方向の他方の面でありZ方向上側の面である。
【0033】
熱伝達材5の第1の面13、熱伝達材5の第2の面15、熱伝達材支持体7の第1の面17、および、熱伝達材支持体7の第2の面19は、Z方向に対して直交している。
【0034】
車載用オイルセンサ1では、
図3に矢印A1で示すように、筐体3内に入ってくるオイルが流れる方向がZ方向で下から上に向かう方向になっており、熱伝達材5の第1の面13に対して直交している。なお、筐体3内に入ってくるオイルが流れる方向が、熱伝達材5の第1の面13に対して直角に近い角度になっていてもよい。すなわち、筐体3内に入ってくるオイルが流れる方向と、熱伝達材5の第1の面13との交差角度が70°~110°程度の角度になっていてもよい。
【0035】
車載用オイルセンサ1では、筐体3内に入ってきたオイルが熱伝達材5の第1の面13にぶつかることで筐体3内に入ってきたオイルが流れる方向が、たとえば逆方向になって変わるように構成されている。すなわち、筐体3内から筐体3の外に出ていくオイルの流れる方向が、熱伝達材5の第1の面13に対して直交し上側から下側に向かう方向になっている。
【0036】
なお、筐体3内から筐体3の外に出ていくオイルの流れる方向が、熱伝達材5の第1の面13に対して直角に近い角度になっていてもよい。すなわち、筐体3から出ていくオイルが流れる方向と、熱伝達材5の第1の面13との交差角度が70°~110°程度の角度になっていてもよい。
【0037】
ここで、車載用オイルセンサ1についてさらに詳しく説明する。
【0038】
筐体3はたとえば金属で構成されており、円筒状の大径部39と円筒状の小径部41とを備えて構成されている。大径部39の中心軸と小径部41の中心軸とはお互いが一致しておりZ方向に延びている。大径部39は小径部41の上側に位置している。小径部41の外周には、車載用オイルセンサ1を車両のエンジンのシリンダブロック等に取り付けるための管用ネジが形成されている。
【0039】
筐体3の内側には、円柱状の第1の内部空間43と円柱状の第2の内部空間45と円柱状の第3の内部空間47と円柱状の第4の内部空間49とが形成されている。第1の内部空間43の中心軸と第2の内部空間45の中心軸と第3の内部空間47の中心軸と第4の内部空間49の中心軸とはお互いが一致しておりZ方向に延びている。
【0040】
第2の内部空間45の内径は、第1の内部空間43の内径よりも小さくなっており、第3の内部空間47の内径は、第2の内部空間45の内径よりも小さくなっており、第4の内部空間49の内径は、第3の内部空間47の内径よりも小さくなっている。第1の内部空間43、第2の内部空間45、第3の内部空間47、第4の内部空間49はZ方向で上から下に向かってこの順にならんでいる。
【0041】
また、第1の内部空間43と第2の内部空間45と第3の内部空間47とは、大径部39の内側に位置しており、第4の内部空間49は小径部41の内側に位置している。
【0042】
熱伝達材5は、円筒状部位51と円板状部位53とを備えて構成されている。円筒状部位51の中心軸は、各内部空間43、45、47、49の中心軸と一致している。円板状部位53は、円筒状部位51の上端の開口部を塞ぐようにして、円筒状部位51に設けられている。なお、円板状部位53は、上述した平板状部位37を構成している。また、円筒状部位51と円板状部位53とによって、Z方向下側に開口している円柱状の熱伝達材内部空間55が形成されている。
【0043】
熱伝達材支持体7は、概ね円板状に形成されている。熱伝達材支持体7の円板が上述した平板状部位27を構成している。熱伝達材支持体7は、たとえばインサート成形によって熱伝達材5に一体的に設けられている。熱伝達材支持体7は、少なくとも、熱伝達材5の熱伝達材内部空間55と円筒状部位51の下端部とが露出するようにして、熱伝達材5の上側部位を覆っている。
【0044】
熱伝達材支持体7には、サーミスタ21および熱伝導ポッティング剤25を設置するための貫通孔23と、圧力センサ素子33等を設置するための貫通孔57とが設けられている。貫通孔57も、貫通孔23と同様に、熱伝達材支持体7をZ方向で貫通している。
【0045】
回路基板29の下側の面にはサーミスタ21が僅かに突出して設けられており、回路基板29が熱伝達材支持体7に設置されている状態では、サーミスタ21が貫通孔23内に位置している。さらに、貫通孔23内には、熱伝導ポッティング剤25が充填されており、サーミスタ21は、熱伝導ポッティング剤25内に埋まっている。演算回路35は、熱伝達材支持体7上面の所定の箇所に設けられている。
【0046】
熱伝達材5は、概ね第2の内部空間45内に位置しており、熱伝達材支持体7は、概ね第3の内部空間47内に位置している。熱伝達材支持体7の下面の外周部は、第2の内部空間45の下端の段差部59に接している。
【0047】
また、車載用オイルセンサ1には、端子部61とオイル流路形成体69とが設けられている。端子部61は、金属製の端子63とたとえば合成樹脂で構成された端子支持部65とを備えて構成されている。端子部61の下側の部位は、第1の内部空間43内に位置している。
【0048】
端子支持部65の下端の外周部は、熱伝達材支持体7の上端の外周部にたとえば付勢力をもって接している。また、筐体3の上端部をカシメたことで、端子部61と熱伝達材支持体7と熱伝達材5とが筐体3とが一体化している。なお、
図2等に参照符号67で示すものは、シール材としての機能を有するOリングである。
【0049】
オイル流路形成体69は、たとえば合成樹脂で一体成形されて得られたものであり、円筒状部位71と仕切り壁73とオイルガイド壁部75とを備えて構成されている。仕切り壁73は平板状に形成されており、円筒状部位71の内側の円柱状の空間を少なくとも2つに仕切っている。
【0050】
また、オイルガイド壁部75は、円筒状部位71よりも下側に突出している。この突出している部位の一方の側がオイルの入口77になっており、他方の側がオイルの出口79になっている。仕切り壁73は円板状に形成されており、厚さ方向がZ方向になるようにして仕切り壁73の下端に設けられている。
【0051】
オイル流路形成体69は、筐体3の第4の内部空間49に嵌まり込んでいる。これによってオイル流路形成体69が筐体3に一体的に設けられている。
【0052】
なお、車載用オイルセンサ1において、演算回路35が、オイルの温度に応じて圧力センサ素子33の出力を補償することに加えてもしくは代えて環境温度に応じて圧力センサ素子33の出力を補償するように構成されていてもよい。
【0053】
環境温度とは車載用オイルセンサ1が設置されている環境における温度である。たとえば、車載用オイルセンサ1がエンジンのシリンダブロック等に設置されて使用されているときにおける外気、シリンダブロック等の温度である。
【0054】
さらに説明すると、車載用オイルセンサ1がエンジンのシリンダブロックに設置されて使用されているときに、外気、シリンダブロック等から、端子(バスバー)63、金属筐体3を介して圧力センサ素子33に熱が伝わってしまう。そして、圧力センサ素子33の温度が上昇し圧力センサ素子33の出力値が変動してしまう。そこで、演算回路35が環境温度に応じて圧力センサ素子33の出力を補償するのである。
【0055】
なお、環境温度も温度測定部(第1の温度測定部)11によって測定されるが、第2の温度測定部(図示せず)を別途設け、この第2の温度測定部によって環境温度を測定するように構成してもよい。第2の温度測定部は、たとえば、圧力センサ素子33のところ、もしくは、圧力センサ素子33の近傍に設けられ、圧力センサ素子33の温度を測定するようになっている。なお、第2の温度測定部によって、筐体3の温度、端子63の温度、外気の温度を測定するようになっていてもよい。
【0056】
次に、車載用オイルセンサ1の動作について説明する。
【0057】
図3で示すように、車両のエンジンのシリンダブロックに車載用オイルセンサ1が設置されており、オイル流路81をX方向左から右に向かってオイルが流れているものとする。
【0058】
図3で示す状態では、矢印A1で示すように、一部のオイルがオイルの入口77から入ってZ方向上向きに流れて、円筒状部位51の下端と熱伝達材5の平板状部位37の下面とにぶつかる。平板状部位37にぶつかったオイルはZ方向下向きに流れ、オイルの出口79から出ていく。オイルの出口79から出たオイルは、オイル流路81をX方向左から右に向かって流れる。
【0059】
筐体3内に入ったオイルが熱伝達材5の平板状部位37にぶつかることで、オイルの熱が平板状部位37と熱伝導ポッティング剤25とを介してサーミスタ21に伝わり、オイルの温度が測定される。また、平板状部位37まで流れてきたオイルの圧力が、圧力測定部31によって検出される。
【0060】
車載用オイルセンサ1では、熱伝達材支持体7に設けられている熱伝導部位9を伝わってきた熱の温度をサーミスタ21が測定し、また、熱伝導部位9が熱伝導率の高い材料で構成されている熱伝達材5に接している。これにより、オイルの温度を測定する際の応答性が良くなっている。
【0061】
また、車載用オイルセンサ1では、サーミスタ21が熱伝導部位9を伝わってきた熱の温度を測定することでオイルの温度を測定するように構成されている。これにより、金属製の筐体3への細長い穴の加工が不要になっており、車載用オイルセンサ1の製造が容易になっている。
【0062】
図6で示す比較例に係るセンサ301では、温度センサ303をその中に収容する細長い温度センサ孔部305が設けられている。温度センサ孔部305は温度センサ孔軸307を有し、この温度センサ孔軸307は、流動媒体に向いた側のセンサ軸309に向かって傾斜している。
【0063】
したがって、比較例に係るセンサ301では、細長い温度センサ孔部305の加工がし難く、加工された細長い温度センサ孔部305内へのサーミスタの設置作業が煩わしくなり、製造工程が煩雑になっている。
【0064】
これに対して、車載用オイルセンサ1では、サーミスタ21を設置するための細長い穴が設けられておらず、細長い穴内へのサーミスタ21の設置作業が無くなるので、製造が容易になる。
【0065】
また、車載用オイルセンサ1では、熱伝達材支持体7に貫通孔23が設けられており、熱伝導部位9が貫通孔23に充填されている熱伝導ポッティング剤25で構成されており、サーミスタ21が、熱伝導ポッティング剤25に入り込んでいる。これにより、熱伝達材5と熱伝導ポッティング剤25とを介して、オイルからサーミスタ21への熱伝導が効率良くされる。そして、応答性の良い状態でサーミスタ21がオイルの温度を測定することができる。
【0066】
また、車載用オイルセンサ1では、温度測定部11が測定したオイルの温度に応じて演算回路35が圧力センサ素子33の出力を補償するように構成されている。これにより、温度特性を持っている圧力センサ素子33を用いて温度が変化するオイルの圧力を正確に測定することができる。
【0067】
また、車載用オイルセンサ1では、筐体3内に入ってくるオイルが流れる方向が熱伝達材5の第1の面13に対して直交しており、筐体3内に入ってきたオイルが熱伝達材5の第1の面13にぶつかるように構成されている。これにより、オイルの熱が熱伝達材5に勢いよくぶつかり、オイルの熱が一層効率良く熱伝達材5に伝わるようになっている。
【0068】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 流体センサ(車載用オイルセンサ)
3 筐体
5 熱伝達材
7 熱伝達材支持体
9 熱伝導部位
11 温度測定部
13 第1の面(熱伝達材の下側の面)
15 第2の面(熱伝達材の上側の面)
17 第1の面(熱伝達材支持体の下側の面)
19 第2の面(熱伝達材支持体の上側の面)
21 温度測定素子
23 貫通孔(熱伝導部位の貫通孔)
25 熱伝導ポッティング剤
31 圧力測定部
33 圧力センサ素子
35 演算回路
37 平板状部位(熱伝達材の平板状部位)