(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】通気構造部、防水部材、及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231114BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20231114BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231114BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20231114BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G15/02
H01B7/00 301
H01B7/00 306
H01B7/18 G
B60R16/02 610B
B60R16/02 610C
(21)【出願番号】P 2019204638
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】浦島 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】古屋 宏恭
(72)【発明者】
【氏名】徳山 静明
(72)【発明者】
【氏名】花見 紀亜
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-230984(JP,A)
【文献】特開2018-121442(JP,A)
【文献】特開2016-152327(JP,A)
【文献】特開2006-135250(JP,A)
【文献】特開2019-126147(JP,A)
【文献】特開2018-78739(JP,A)
【文献】特開2018-117498(JP,A)
【文献】特開2004-266211(JP,A)
【文献】特開平10-85536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 15/02
H01B 7/00
H01B 7/18
H05K 5/02
H05K 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するゴム又はエラストマー製の壁と、
該壁に隔てられて生じた一方の空間側から前記貫通孔の位置で前記壁に組み付けられる第一部品と、
前記壁に隔てられて生じた他方の空間側から前記壁及び前記第一部品に組み付けられる第二部品と、
防水性及び通気性を有する防水性通気膜を用いた通気部材とを備え、
前記第一部品及び前記第二部品のいずれか一方は、前記貫通孔に挿通される挿通部を有し、且つ、いずれか他方は、前記挿通により前記貫通孔から突出した前記挿通部の被係止部分を係止する係止部を有し、
該係止部は、前記被係止部分と前記貫通孔の開口周縁との間に挟み込まれて前記壁に対し密着する第一密着部を有
し、
前記挿通部は、前記貫通孔に対し圧入となり密着する第二密着部を有する
ことを特徴とする通気構造部。
【請求項2】
請求項
1に記載の通気構造部において、
前記いずれか一方は、前記壁を挟んで前記第一密着部の反対側となる位置に、前記壁に対し密着する第三密着部を有する
ことを特徴とする通気構造部。
【請求項3】
請求項
2に記載の通気構造部において、
前記第三密着部及び/又は前記第一密着部は、前記壁を押圧する部分としてのリブを有する
ことを特徴とする通気構造部。
【請求項4】
筒状の本体部の壁に、請求項1、2
又は
3に記載の通気構造部を有する
ことを特徴とする防水部材。
【請求項5】
請求項
4に記載の防水部材と、該防水部材に覆われるコネクタ及び/又は電線束とを備える
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側の空間と内側の空間との圧力差をなくすための部分として備えられる通気構造に関する。また、この通気構造部を有する防水部材やワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
外側の空間と内側の空間との圧力差をなくすために、防水性及び通気性を有する防水性通気膜を用いた通気部材が防水カバーに設けられる(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、防水性通気膜を設けた通気部材が、先ず防水カバーの本体とは別体になる通気用樹脂筒に取り付けられる。この取り付けの際には、通気部材と通気用樹脂筒との間に防水手段が施される。次に、通気部材を取り付けた状態の通気用樹脂筒は、防水カバーの取付筒部に取り付けられる。この取り付けの際にも、通気用樹脂筒と取付筒部との間に防水手段が施される。従来技術にあっては、取り付け箇所それぞれに対し防水性能の確立が必要であることが分かる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、防水性能の確立箇所を削減して作業性の向上を図ることが可能な通気構造部、及び、この通気構造部を採用した防水部材やワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の通気構造部は、貫通孔を有するゴム又はエラストマー製の壁と、該壁に隔てられて生じた一方の空間側から前記貫通孔の位置で前記壁に組み付けられる第一部品と、前記壁に隔てられて生じた他方の空間側から前記壁及び前記第一部品に組み付けられる第二部品と、防水性及び通気性を有する防水性通気膜を用いた通気部材とを備え、前記第一部品及び前記第二部品のいずれか一方は、前記貫通孔に挿通される挿通部を有し、且つ、いずれか他方は、前記挿通により前記貫通孔から突出した前記挿通部の被係止部分を係止する係止部を有し、該係止部は、前記被係止部分と前記貫通孔の開口周縁との間に挟み込まれて前記壁に対し密着する第一密着部を有し、前記挿通部は、前記貫通孔に対し圧入となり密着する第二密着部を有することを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、壁の貫通孔の位置で壁を挟み込むようにして第一部品と第二部品とを組み付け、この組み付けの際には、壁に対し第一密着部が密着するようになることから、第一密着部の密着にて水分の浸入を阻止することができる。本発明によれば、壁の貫通孔の位置で防水性能を確立することができる。これにより防水性能の確立箇所を従来よりも削減して作業性の向上を図ることができる。この他、本発明によれば、通気部材を備える通気構造部であることから、通気性を当然に確保することができ、以て一方の空間と他方の空間との圧力差をなくすことができる。
【0009】
更に、請求項1の特徴を有する本発明によれば、第一密着部の他に第二密着部も密着することから、これら二箇所の密着にて水分の浸入を阻止することができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の通気構造部において、前記いずれか一方は、前記壁を挟んで前記第一密着部の反対側となる位置に、前記壁に対し密着する第三密着部を有することを特徴とする。
【0011】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、第一密着部及び第二密着部の他に第三密着部も密着することから、これら三箇所の密着にて水分の浸入を阻止することができる。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の通気構造部において、前記第三密着部及び/又は前記第一密着部は、前記壁を押圧する部分としてのリブを有することを特徴とする。
【0013】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、壁にリブを押圧して密着することから、壁とのズレを防止しつつ水分の浸入を阻止することができる。尚、壁とのズレ防止は、密着状態(シール状態)の維持に寄与するのは勿論である。
【0014】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4に記載の本発明の防水部材は、筒状の本体部の壁に、請求項1、2又は3に記載の通気構造部を有することを特徴とする。
【0015】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、請求項1、2又は3に記載の通気構造部を有することから、より良い防水部材を提供することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項4に記載の防水部材と、該防水部材に覆われるコネクタ及び/又は電線束とを備えることを特徴とする。
【0017】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、請求項4に記載の防水部材を備えることから、より良いワイヤハーネスを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の通気構造部によれば、防水性能の確立箇所を従来例に比べ削減して作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。また、本発明の防水部材やワイヤハーネスによれば、請求項1、2、3又は4に記載の通気構造部を有することから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の通気構造部の一実施形態を示す防水カバーの底面図である(実施例1)。
【
図2】防水カバーの側面図(断面図を含む)及び通気構造部の断面図である。
【
図5】第一密着部~第三密着部の拡大断面図である。
【
図6】第一密着部及び/又は第三密着部にリブを形成した状態の拡大断面図である。
【
図7】本発明の通気構造部の他の実施形態を示す断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
防水カバー等の防水部材に設けられる通気構造部は、貫通孔を有する壁と、一方の空間側から壁に組み付けられる第一部品と、他方の空間側から壁及び第一部品に組み付けられる第二部品と、防水性及び通気性を有する通気部材とを備えて構成される。第一部品及び第二部品のいずれか一方は、貫通孔に挿通される挿通部を有し、且つ、いずれか他方は、挿通により貫通孔から突出した挿通部の被係止部分を係止する係止部を有する。この係止部は、挿通部の被係止部分と貫通孔の開口周縁との間に挟み込まれて壁に対し密着する第一密着部を有する。この他、壁に対し密着する部分として、第二密着部や第三密着部を有する。
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明の通気構造部の一実施形態を示す防水カバーの底面図である。また、
図2は防水カバーの側面図(断面図を含む)及び通気構造部の断面図、
図3は通気構造部の拡大断面図、
図4は通気構造部の構成を分解状態で示す断面図、
図5は第一密着部~第三密着部の拡大断面図、
図6は第一密着部及び/又は第三密着部にリブを形成した状態の拡大断面図である。
【0022】
<防水カバー1(防水部材)について>
図1において、引用符号1は防水カバー(防水部材)を示す。防水カバー1は、例えば自動車に配索されるワイヤハーネス2に設けられる。防水カバー1は、防水性を確保する必要がある部分に組み付けられる。防水カバー1は、一対の電線挿通部3と、カバー本体部4(本体部)とを有して、例えば図示形状に形成される。
【0023】
尚、本実施例において、防水部材として防水カバー1を挙げるが、これに限らないものとする。すなわち、グロメットやゴムチューブ等の密閉可能な構造の防水部材が一例として挙げられるものとする。この他、防水カバー1をコネクタブーツと呼んでもよいものとする。以上のような防水部材は、ゴム又はエラストマー製の弾性体であって、自動車部品において一般的な材料が採用されるものとする。本実施例では自動車部品としての防水部材であるが、自動車部品に限らないものとする。
【0024】
<一対の電線挿通部3について>
図1及び
図2において、一対の電線挿通部3は、共に筒状で且つ同じ形状に形成される。一対の電線挿通部3は、所定の間隔をあけて並んで配置される。尚、本実施例の電線挿通部3は二本であるが、一本や三本等であってもよいものとする。同じ形状であることから、以下、片方の電線挿通部3について説明をする。電線挿通部3は、略円筒形状に形成される。電線挿通部3の一端は、カバー本体部4に連続するような本体連成部5として形成される。本体連成部5は、円錐台の側壁となるような形状に形成される。一方、電線挿通部3の他端は、自由端部6として形成される。自由端部6は、後述する蛇腹筒部9よりも若干径の大きな円筒形状に形成される。自由端部6の外面には、図示しない結束バンドに対するバンド組み付け部7が形成される。バンド組み付け部7は、結束バンドの幅に合わせて配置される一対の環状の凸部8を有する。本体連成部5と自由端部6との間には、蛇腹筒部9が配置形成される。この蛇腹筒部9は、環状の蛇腹凸部10と、環状の蛇腹凹部11とが交互に並ぶ形状に形成される。蛇腹筒部9は、所謂コルケートチューブ形状に形成される。蛇腹筒部9は、この蛇腹筒部9の軸回り360度方向に曲げ可能となる形状に形成される。以上のような電線挿通部3には、ワイヤハーネス2の電線束12が挿通される。電線束12は、カバー本体部4から引き出されるように挿通される。
【0025】
<カバー本体部4について>
図1及び
図2において、カバー本体部4は、筒連成壁13と、側壁14(壁)と、バンド組み付け部15とを有して図示形状に形成される。尚、カバー本体部4の外側の空間は、特許請求の範囲に記載された「一方の空間(16)」を示すものとする。また、カバー本体部4の内側の空間は、特許請求の範囲に記載された「他方の空間(17)」を示すものとする。一方の空間16と他方の空間17は、カバー本体部4の底面側の側壁14に設けられた通気構造部18により通気が可能になるものとする。
【0026】
カバー本体部4における筒連成壁13は、略長円形状の壁に形成される。このような筒連成壁13には、所定の間隔をあけて一対の電線挿通部3が並んだ状態に連成される。筒連成壁13は、他方の空間17と電線挿通部3の内部空間とが連通するように形成される。側壁14は、筒連成壁13の略長円形の周縁を一周するような壁に形成される。側壁14は、筒連成壁13と共に他方の空間17を区画するような壁に形成される。側壁14は、図示しないコネクタの外側を囲むような部分に形成される。側壁14の所定位置には、通気構造部18が設けられる(通気構造部18については後述するものとする)。バンド組み付け部15は、図示しない結束バンドで締め付けられるような環状の凹部19を有する形状に形成される。以上のようなカバー本体部4は、図示しないコネクタを覆う部分に形成される(一例であるものとする。例えば機器の筒部に対し外装されるような部分として形成されてもよいものとする。また、パネル部材に対する組み付け部分として形成されてもよいものとする)。
【0027】
<通気構造部18について>
図1ないし
図4において、通気構造部18は、一方の空間16と他方の空間17との圧力差をなくすために設けられる。通気構造部18は、通気性及び防水性のある部分に形成される。通気構造部18は、側壁14(壁)に設けられることから、側壁14を含んで構成される。通気構造部18は、側壁14と、第一部品20と、第二部品21と、通気部材22とを備えて構成される。
【0028】
<側壁14(壁)について>
図1ないし
図4において、側壁14は、一方の空間16と他方の空間17とを隔てる壁状の部分に形成される。別な言い方をすれば、防水カバー1の内外を隔てる壁状の部分に形成される。通気構造部18が設けられる位置の側壁14は、
図1ないし
図4に示す如く、肉厚が一定となるように形成される(一例であるものとする)。このような側壁14には、貫通孔23が形成される。貫通孔23は、側壁14のうち下壁にあたる位置で、且つ、カバー本体部4の中心線に合わせた位置に配置形成される。貫通孔23は、円形に貫通形成される。貫通孔23は、後述する挿通部27が若干の圧入状態になるような大きさに形成される。貫通孔23の開口周縁は、内側外側とも第一部品20及び第二部品21が密着する面(密着面、シール面)として形成される。また、開口周縁は、弾性変形により若干潰れるような部分に形成される。
【0029】
<第一部品20について>
図1ないし
図4において、第一部品20は、一方の空間16側(外側)から側壁14に組み付けられる樹脂成形品であって、壁組み付け部材24と、キャップ部材25とを備えて構成される。このような第一部品20には、通気部材22が設けられる。壁組み付け部材24は、通気部材収容部26と、挿通部27とを有する。
【0030】
<キャップ部材25について>
図3及び
図4において、キャップ部材25は、樹脂成形品であって、覆い壁28と、周壁29と、被係止爪30とを有する。覆い壁28は、円形状の壁に形成される。覆い壁28は、通気部材収容部26を覆う大きさに形成される。周壁29は、覆い壁28の周縁に連続する壁に形成される。この周壁29の端部には、被係止爪30が形成される。被係止爪30は、通気部材収容部26に嵌合する部分(係止される部分)に形成される。尚、キャップ部材25が通気部材収容部26に嵌合し易くなるように、例えば周壁29にはスリットが形成されるものとする(一例であるものとする)。キャップ部材25は、通気部材収容部26を密閉しない形状に形成される。別な言い方をすれば、キャップ部材25は、一方の空間16から通気部材収容部26へ、また、通気部材収容部26から一方の空間16への通気性を確保することができる部分に形成される。
【0031】
<通気部材収容部26及び挿通部27について>
図3及び
図4において、通気部材収容部26は、壁組み付け部材24における一方の空間16側に配置される部分であって、収容部31と、爪係止部32とを有する。収容部31は、円形で浅底に形成される。収容部31の開口縁には、爪係止部32が連成される。爪係止部32は、キャップ部材25の被係止爪30を引っ掛けることができるように円形のフランジ形状に形成される。収容部31の底壁中央には、挿通部27が連成される。また、収容部31の底壁には、第三密着部33が形成される(第一密着部43、第二密着部37については後述するものとする)。第三密着部33は、側壁14の貫通孔23の外側の開口周縁に対し密着するような部分(面)に形成される。また、第三密着部33は、開口周縁を押圧するような部分(面)にも形成される。
【0032】
挿通部27は、壁組み付け部材24の一部であって、側壁14の貫通孔23に挿通される略円筒状の部分に形成される。挿通部27は、被係止部34(被係止部分)と、スリット35と、通気孔36と、第二密着部37とを有して図示形状に形成される。挿通部27は、収容部31から被係止部34までの長さが貫通孔22の孔深さ(側壁14の厚み)よりも長くなるように形成される。具体的には、側壁14と被係止部34との間に第二部品21の後述する係止部39を挟み込むことができる長さに挿通部27は形成される。被係止部34は、爪形状の部分であって、第二部品21により係止される。スリット35は、挿通部27を貫通孔22に挿通し易くするために形成される。また、スリット35は、第二部品21による上記係止をし易くするために形成される。さらに、スリット35は、挿通部27を撓み易くするために形成される。通気孔36は、収容部31の底壁中央に開口する貫通孔状の部分に形成される。第二密着部37は、貫通孔23に対し圧入となって密着するような部分(面)に形成される。
【0033】
<通気部材22について>
図3及び
図4において、通気部材22は、空気を通すが水分は通さないという特性の膜(防水性通気膜)であって、フッ素樹脂やポリオレフィン樹脂等からなる多孔質のものが採用される。また、通気部材22は、十分な防水性を確保するため、平均孔径が0.01~10μmのものが採用される(一例であるものとする)。尚、撥水処理や撥油処理が別途施されてもよいものとする。上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましいものとする。通気部材22は、特に限定するものでないが、1μm~5mmの厚みに形成される。通気部材22は、本実施例において円形状に形成される(一例であるものとする)。通気部材22は、インサート成形や適宜固定手段にて通気部材収容部26における収容部31の底壁中央に配設される。通気部材22は、通気孔36を隙間なく覆うように配設される。
【0034】
<第二部品21について>
図3及び
図4において、第二部品21は、他方の空間17側から側壁14及び第一部品20(挿通部27の被係止部34)に組み付けられる樹脂成形品であって、第二部品本体38と、係止部39とを有して図示の箱形状(又はキャップ形状)に形成される。
【0035】
<第二部品本体38及び係止部39について>
図3及び
図4において、第二部品本体38は、覆い壁40と、周壁41とを有する。覆い壁40は、円形状の壁に形成される。覆い壁40には、挿通部27の位置に合わせて通気孔42が貫通形成される。通気孔42は、本実施例において、通気部材22を臨むことができる位置に配置形成される(一例であるものとする)。周壁41は、覆い壁40の周縁に連続する壁に形成される。この周壁41の端部には、係止部39が形成される。係止部39は、側壁14の貫通孔22から突出した第一部品20の被係止部34(被係止部分)を係止する部分として形成される。係止部39は、挿通部27の被係止部34と貫通孔22の開口周縁との間に挟み込まれる形状に形成される。また、係止部39は、上記挟み込みにより、貫通孔22の内側の開口周縁に対し面で密着する形状にも形成される。この面で密着する部分は、第一密着部43として形成される。第一密着部43は、開口周縁を押圧するような部分(面)に形成される。尚、側壁14を挟んで第一密着部43の反対側となる位置に第三密着部33が配置されるものとする。
【0036】
<通気構造部18の組み付けについて>
図4において、側壁14の貫通孔22の位置で、一方の空間16の側に、通気部材22を設けた第一部品20を配置するとともに、他方の空間17の側に第二部品21を配置し、この後に第一部品20の挿通部27を貫通孔22に挿通しつつ第二部品21で挿通部27の被係止部34を係止すると、側壁14を第一部品20と第二部品21とで挟み込むような状態になり、
図3に示す如く通気構造部18が形成される。通気構造部18が形成されると、
図5に示す如く、第二部品21における係止部39の第一密着部43が側壁14に密着し、また、第一部品20における壁組み付け部材24の第三密着部33も側壁14に密着し、さらには、第一部品20における壁組み付け部材24の第二密着部37も貫通孔22に密着する。従って、貫通孔22の位置のみで防水性能が確立される。
【0037】
<通気構造部18の作用効果について>
以上、
図1ないし
図5を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態である通気構造部18によれば、側壁14の貫通孔22の位置で側壁14を挟み込むようにして第一部品20と第二部品21とを組み付け、この組み付けの際には、側壁14に対して第一密着部43、第二密着部37、及び第三密着部33が密着することから、これらの箇所での密着にて水分の浸入を阻止することができる(少なくとも第一密着部43があれば水分の浸入を阻止することができ、第二密着部37や第三密着部33があると、より確実に水分の浸入を阻止することができる)。
【0038】
従って、本発明の一実施形態である通気構造部18によれば、側壁14の貫通孔22の位置で防水性能を確立することができるという効果を奏する。これにより防水性能の確立箇所を従来例よりも削減して作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。この他、通気構造部18によれば、通気部材22を備えることから通気性を当然に確保することができ、以て一方の空間16と他方の空間17との圧力差(カバー内外の圧力差)をなくすことができるという効果も奏する。
【0039】
<変形例について>
以下、変形例について説明をする。
図6において、第一密着部43及び/又は第三密着部33には、リブ44が形成される。リブ44は、側壁14の貫通孔22の開口周縁を押圧する部分として形成される。リブ44は、連続して貫通孔22を囲むような、又は、間欠的に囲むような環状の部分に形成される。リブ44は、比較的低く突出して側壁14に恰も喰い込むような部分に形成される。以上のようなリブ44を形成することにより、側壁14とのズレを防止しつつ水分の浸入を阻止することができるという効果を奏する。尚、側壁14とのズレ防止は、密着状態(シール状態)の維持に寄与できるのは勿論である。
【実施例2】
【0040】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図7は本発明の通気構造部の他の実施形態を示す断面図である。
【0041】
<通気構造部18について>
図7において、実施例2の通気構造部18も一方の空間16と他方の空間17との圧力差をなくすために設けられる。通気構造部18は、通気性及び防水性のある部分に形成される。通気構造部18は、側壁14(壁)に設けられることから、側壁14を含んで構成される。通気構造部18は、側壁14と、第一部品45と、第二部品46と、通気部材47とを備えて構成される。
【0042】
<第一部品45について>
図7において、第一部品45は、一方の空間16側(外側)から側壁14に組み付けられる。第一部品45は、壁組み付け部材48と、キャップ部材49とを備えて構成される。第一部品45には、通気部材47が設けられる。壁組み付け部材48は、通気部材収容部50と、周壁51と、係止部52とを有して図示形状に形成される。通気部材収容部50は、通気部材47を収容配置する部分に形成される。係止部52は、実施例1の係止部39(
図3及び
図4参照)と同様の機能部分に形成される。係止部52には、第一密着部53が形成される。第一密着部53は、実施例1の第一密着部43(
図3及び
図4参照)と同様の機能部分に形成される。キャップ部材49は、覆い壁54と、周壁55と、被係止爪56とを有して図示形状に形成される。
【0043】
<第二部品46について>
図7において、第二部品46は、他方の空間17側から側壁14及び第一部品45に組み付けられる。第二部品46は、第二部品本体57と、挿通部58とを有して図示形状に形成される。第二部品本体57は、円形の板形状に形成される。このような第二部品本体57の中央には、通気孔59が貫通形成される。通気孔59の周囲には、挿通部58が一体に形成される。第二部品本体57には、挿通部58を囲むようにして第三密着部60が形成される。第三密着部60は、実施例1の第三密着部33(
図3及び
図4参照)と同様の機能部分に形成される。挿通部58は、被係止部61(被係止部分)と、スリット62と、通気孔63と、第二密着部64とを有して図示形状に形成される。被係止部61は、実施例1の被係止部34(
図3及び
図4参照)と同様の機能部分に形成される。また、第二密着部64も実施例1の第二密着部37(
図3及び
図4参照)と同様の機能部分に形成される。
【0044】
<通気部材47について>
図7において、通気部材47は、空気を通すが水分は通さないという特性の膜(防水性通気膜)であって、フッ素樹脂やポリオレフィン樹脂等からなる多孔質のものが採用される。通気部材47は、実施例1の通気部材22(
図3及び
図4参照)と同様の機能部材に形成される。
【0045】
<実施例2の通気構造部18の組み付けについて>
図7において、側壁14の貫通孔22の位置で、一方の空間16の側に、通気部材47を設けた第一部品45を配置するとともに、他方の空間17の側に第二部品46を配置し、この後に第二部品46の挿通部58を内から外に向けて貫通孔22に挿通しつつ第一部品45で挿通部58の被係止部61を係止すると、側壁14を第一部品45と第二部品46とで挟み込むような状態になり、通気構造部18が形成される。通気構造部18が形成されると、図示の如く第一密着部53、第二密着部64、及び第三密着部60が側壁14に密着する。従って、貫通孔22の位置のみで防水性能が確立される。
【0046】
<通気構造部18の作用効果について>
以上、
図7を参照しながら説明してきたように、本発明の他の実施形態である実施例2の通気構造部18によれば、側壁14の貫通孔22の位置で側壁14を挟み込むようにして第一部品45と第二部品46とを組み付け、この組み付けの際には、側壁14に対して第一密着部53、第二密着部64、及び第三密着部60が密着することから、これらの箇所での密着にて水分の浸入を阻止することができる(少なくとも第一密着部53があれば水分の浸入を阻止することができ、第二密着部64や第三密着部60があると、より確実に水分の浸入を阻止することができる)。
【0047】
従って、実施例2の通気構造部18によれば、側壁14の貫通孔22の位置で防水性能を確立することができるという効果を奏する。これにより防水性能の確立箇所を従来例に比べ削減して作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。この他、実施例2の通気構造部18によれば、通気部材47を備えることから通気性を確保することができ、以て一方の空間16と他方の空間17との圧力差(カバー内外の圧力差)をなくすことができるという効果も奏する。
【0048】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1…防水カバー(防水部材)、 2…ワイヤハーネス、 3…電線挿通部、 4…カバー本体部(本体部)、 5…本体連成部、 6…自由端部、 7…バンド組み付け部、 8…凸部、 9…蛇腹筒部、 10…蛇腹凸部、 11…蛇腹凹部、 12…電線束、 13…筒連成壁、 14…側壁(壁)、 15…バンド組み付け部、 16…一方の空間、 17…他方の空間、 18…通気構造部、 19…凹部、 20…第一部品、 21…第二部品、 22…通気部材、 23…貫通孔、 24…壁組み付け部材、 25…キャップ部材、 26…通気部材収容部、 27…挿通部、 28…覆い壁、 29…周壁、 30…被係止爪、 31…収容部、 32…爪係止部、 33…第三密着部、 34…被係止部(被係止部分)、 35…スリット、 36…通気孔、 37…第二密着部、 38…第二部品本体、 39…係止部、 40…覆い壁、 41…周壁、 42…通気孔、 43…第一密着部、 44…リブ、 45…第一部品、 46…第二部品、 47…通気部材、 48…壁組み付け部材、 49…キャップ部材、 50…通気部材収容部、 51…周壁、 52…係止部、 53…第一密着部、 54…覆い壁、 55…周壁、 56…被係止爪、 57…第二部品本体、 58…挿通部、 59…通気孔、 60…第三密着部、 61…被係止部、 62…スリット、 63…通気孔、 64…第二密着部