IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マンダムの特許一覧

特許7384640多剤式酸化染毛剤用の第1剤及び多剤式酸化染毛剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】多剤式酸化染毛剤用の第1剤及び多剤式酸化染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20231114BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20231114BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/19
A61K8/22
A61Q5/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019208398
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021080201
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 研
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105921(US,A1)
【文献】特開平07-267835(JP,A)
【文献】Permanent Hair Colour, Sante Verte, 2015年3月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.07.19], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:3045563
【文献】Cream Hair Colour, Generik, 2012年11月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.07.19], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:1912393
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に用いられる第1剤であって、
下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含み、
前記成分Aの含有量の、前記成分Bの含有量に対する質量比が、1.0以上、100.0以下であり、
前記成分Aの含有量の、前記成分Cの含有量に対する質量比が、7.5以上、100.0以下であり、
レゾルシンを含まないか又は0.01質量%以下で含む、多剤式酸化染毛剤用の第1剤。
成分A:硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール
成分B:パラメチルアミノフェノール及び/又はその塩
成分C:メタアミノフェノール、及び5-アミノオルトクレゾールからなる群より選ばれるカップラー
【請求項2】
請求項に記載の多剤式酸化染毛剤用の第1剤と、
酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える、多剤式酸化染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に用いられる第1剤に関する。また、本発明は、上記第1剤と、上記第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色するために、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを備える多剤式酸化染毛剤が広く用いられている。多剤式酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを混合し、得られた混合剤を毛髪に塗布して用いられる。
【0003】
酸化染毛剤では、酸化染料が毛髪中に浸透し、かつ酸化剤による酸化重合が起こることによって、高分子の色素が毛皮質内に沈着し、毛髪が染色される。上記酸化染料は、自身の酸化重合により発色する「染料前駆体」と、染料前駆体との反応により種々の色に発色させる「カップラー」とに分類される。
【0004】
毛髪を青色に染色することができる染料前駆体として、硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノールが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-197508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノールを含む酸化染毛剤を用いて毛髪を染色した場合には、染色された毛髪が経時的に退色(色落ち)しやすい。
【0007】
本発明の目的は、硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノールを用いているにもかかわらず、染色された毛髪の退色耐性を高めることができる多剤式酸化染毛剤用の第1剤を提供することである。また、本発明の目的は、上記第1剤を備える多剤式酸化染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に用いられる第1剤であって、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含み、レゾルシンを含まないか又は0.01質量%以下で含む、多剤式酸化染毛剤用の第1剤を提供する。
【0009】
成分(A):硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール
成分(B):パラメチルアミノフェノール及び/又はその塩
成分(C):メタアミノフェノール、及び5-アミノオルトクレゾールからなる群より選ばれるカップラー
【0010】
本発明の多剤式酸化染毛剤用の第1剤では、前記成分(A)の含有量の、前記成分(B)の含有量に対する質量比が、1.0以上、100.0以下であり、前記成分(A)の含有量の、前記成分(C)の含有量に対する質量比が、1.0以上、100.0以下であることが好ましい。
【0011】
本発明は、上述した多剤式酸化染毛剤用の第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える、多剤式酸化染毛剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多剤式酸化染毛剤用の第1剤は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に用いられる第1剤であって、特定の成分(A)と、特定の成分(B)と、特定の成分(C)とを含み、レゾルシンを含まないか又は0.01質量%以下で含む。本発明の多剤式酸化染毛剤用の第1剤では、上記の構成が備えられているので、硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール(成分(A))を用いているにもかかわらず、染色された毛髪の退色耐性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の多剤式酸化染毛剤用の第1剤(以下、「第1剤」と略記することがある)は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える多剤式酸化染毛剤に用いられる第1剤である。本発明の第1剤は、硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノールと、パラメチルアミノフェノール及び/又はその塩と、メタアミノフェノール、及び5-アミノオルトクレゾールからなる群より選ばれるカップラーとを含む。本発明の第1剤は、レゾルシンを含まないか又は0.01質量%以下で含む。
【0015】
本明細書においては、上記「硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0016】
本明細書においては、上記「パラメチルアミノフェノール及び/又はその塩」を「成分(B)」と称する場合がある。
【0017】
本明細書においては、上記「メタアミノフェノール、及び5-アミノオルトクレゾールからなる群より選ばれるカップラー」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0018】
成分(A)、成分(B)及び成分(C)はそれぞれ、酸化染料である。成分(A)及び成分(B)は、染料前駆体である。
【0019】
本発明の第1剤では、上記の構成が備えられているので、成分(A)を用いているにもかかわらず、染色された毛髪の退色耐性を高めることができる。
【0020】
上記第1剤と上記第2剤とは混合して、又は、上記第1剤と上記第2剤とその他の組成物(例えば第3剤等)とは混合して、混合液を作製した後、得られる混合液を毛髪に塗布して用いられる。本明細書においては、上記混合液を「混合剤」と称する場合がある。上記混合剤は、毛髪に塗布される塗布液である。
【0021】
本発明の第1剤では、上記混合剤を用いて毛髪を良好に染色することができ、かつ染色された毛髪の経時的な退色(色落ち)を抑えることができる。
【0022】
本発明の第1剤は、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを少なくとも含む。本発明の第1剤は、成分(A)~(C)以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
上記の成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)や他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0024】
以下、本発明の第1剤、並びに、第2剤に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0025】
[第1剤(第1剤組成物)]
(成分(A))
成分(A)は、硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノールである。成分(A)は、毛髪を青色に染色することできる染料前駆体である。
【0026】
本発明の第1剤100質量%中、成分(A)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下である。成分(A)の含有量が上記下限以上であると、染毛力をより一層高めることができる。
【0027】
成分(A)の含有量の、成分(B)の含有量に対する質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは5.0以上、好ましくは100.0以下、より好ましくは50.0以下である。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が上記下限以上であると、成分(A)が発揮する青色の染毛効果を良好に維持することができる。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が上記上限以下であると、染色された毛髪の退色耐性をより一層高めることができる。なお、上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は、より具体的には、本発明の第1剤中の成分(A)の含有量と本発明の第1剤中の成分(B)の含有量との質量比である。
【0028】
成分(A)の含有量の、成分(C)の含有量に対する質量比(成分(A)の含有量/成分(C)の含有量)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは5.0以上、好ましくは100.0以下、より好ましくは50.0以下である。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(C)の含有量)が上記下限以上であると、成分(C)により色調を良好に変化させることができる。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(C)の含有量)が上記上限以下であると、染色された毛髪の退色耐性をより一層高めることができる。なお、上記質量比(成分(A)の含有量/成分(C)の含有量)は、より具体的には、本発明の第1剤中の成分(A)の含有量と本発明の第1剤中の成分(C)の含有量との質量比である。
【0029】
(成分(B))
成分(B)は、パラメチルアミノフェノール及び/又はその塩である。成分(B)は、パラメチルアミノフェノールであってもよく、パラメチルアミノフェノールの塩であってもよく、パラメチルアミノフェノールとパラメチルアミノフェノールの塩との双方であってもよい。パラメチルアミノフェノールの塩としては、パラメチルアミノフェノールの硫酸塩である硫酸パラメチルアミノフェノールが挙げられる。成分(B)は、染料前駆体である。
【0030】
本発明の第1剤100質量%中、成分(B)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。成分(B)の含有量が上記下限以上であると、毛髪をより一層良好に染色することができ、また、染色された毛髪の退色耐性をより一層高めることができる。
【0031】
(成分(C))
成分(C)は、メタアミノフェノール、及び5-アミノオルトクレゾールからなる群より選ばれるカップラー(少なくとも1のカップラー)である。成分(C)は、メタアミノフェノールであってもよく、5-アミノオルトクレゾールであってもよく、メタアミノフェノールと5-アミノオルトクレゾールとの双方であてもよい。
【0032】
本発明の第1剤100質量%中、成分(C)の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.06質量%以上、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。成分(C)の含有量が上記下限以上であると、毛髪をより一層良好に染色することができ、また、染色された毛髪の退色耐性をより一層高めることができる。
【0033】
(成分(A)及び成分(B)の双方とは異なる染料前駆体)
本発明の第1剤は、成分(A)及び成分(B)の双方とは異なる染料前駆体(以下、「染料前駆体X」と記載することがある)を含んでいてもよい。上記染料前駆体Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0034】
上記染料前駆体Xとしては、フェニレンジアミン化合物、アミノフェノール化合物及びジアミノピリジン化合物、並びにこれらの塩類等が挙げられる。該塩類としては、塩酸塩及び硫酸塩等が挙げられる。
【0035】
上記フェニレンジアミン化合物としては、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、トルエン-3,4-ジアミン、2,5-ジアミノアニソール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、6-メトキシ-3-メチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチル-2-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-N-(ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、2-クロル-6-メチル-p-フェニレンジアミン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2,6-ジクロル-p-フェニレンジアミン、及び2-クロル-6-ブロム-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
上記アミノフェノール化合物としては、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、5-アミノサリチル酸、2-メチル-4-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2,6-ジメチル-4-アミノフェノール、3,5-ジメチル-4-アミノフェノール、2,3-ジメチル-4-アミノフェノール、2,5-ジメチル-4-アミノフェノール、2-クロロ-4-アミノフェノール、及び3-クロロ-4-アミノフェノール等が挙げられる。
【0037】
上記ジアミノピリジン化合物としては、2,5-ジアミノピリジン等が挙げられる。
【0038】
本発明の第1剤100質量%中の上記染料前駆体Xの含有量は特に限定されない。本発明の第1剤100質量%中、上記染料前駆体Xの含有量は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、5.0質量%以下であってもよく、3.0質量%以下であってもよい。
【0039】
(成分(C)及びレゾルシンの双方とは異なるカップラー)
本発明の第1剤は、成分(C)及びレゾルシンの双方とは異なるカップラー(以下、「カップラーX」と記載することがある)を含んでいてもよい。上記カップラーXは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0040】
上記カップラーXとしては、m-アミノフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、5-アミノ-o-クレゾール、2-メチル-5-ヒドロキシエチルアミノフェノール、2,6-ジアミノピリジン、カテコール、ピロガロール、α-ナフトール、没食子酸、及びタンニン酸、並びにこれらの塩類等が挙げられる。
【0041】
本発明の第1剤100質量%中の上記カップラーXの含有量は特に限定されない。本発明の第1剤100質量%中、上記カップラーXの含有量は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、5.0質量%以下であってもよく、3.0質量%以下であってもよい。
【0042】
(レゾルシン)
レゾルシンは、カップラーである。
【0043】
本発明の第1剤は、レゾルシンを含まないか又は0.01質量%以下で含む。本発明の第1剤がレゾルシンを含む場合に、本発明の第1剤100質量%中、レゾルシンの含有量は、0.01質量%以下であり、好ましくは0.001質量%以下であり、最も好ましくは0質量%(未含有)である。したがって、本発明の第1剤はレゾルシンを含まないことが最も好ましい。上記レゾルシンの含有量が0.01質量%を超えると、染色された毛髪の退色耐性が低下しやすい。
【0044】
(アルカリ剤)
本発明の第1剤は、アルカリ剤を含む。上記アルカリ剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0045】
上記アルカリ剤としては、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0046】
本発明の第1剤100質量%中、アルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは25.0質量%以下である。上記アルカリ剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、混合剤のpHを好適な範囲内に調整しやすくなり、混合剤の粘度を好適な範囲とすることができ、毛髪への付着性及び塗布性をより一層高めることができる。
【0047】
(還元剤)
本発明の第1剤は、還元剤を含むことが好ましい。第1剤が還元剤を含むことにより、第1剤が大気暴露された際に、酸化染料の発色が効果的に抑えられる。上記還元剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0048】
上記還元剤としては、N-アセチル-L-システイン、L-アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、及びチオグリコール酸等が挙げられる。これらの塩を用いてもよい。
【0049】
本発明の第1剤100質量%中、上記還元剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。上記還元剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、第1剤が大気暴露された際の酸化染料の発色をより一層効果的に抑えることができる。
【0050】
(水)
本発明の第1剤は、水を含むことが好ましい。上記水は、精製水であることが好ましい。
【0051】
本発明の第1剤中の水の含有量は、第1剤を収容する容器の種類や目的とする第1剤の性状により適宜調整することができる。本発明の第1剤100質量%中、水の含有量は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上、好ましくは98.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下である。水の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、べたつきを効果的に低減できる。
【0052】
本発明の第1剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化染料、アルカリ剤、及び還元剤以外に、後述する他の成分を含んでいてもよい。
【0053】
[第2剤(第2剤組成物)]
(酸化剤)
上記第2剤は、酸化剤を含む。上記酸化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0054】
上記酸化剤としては、過酸化水素等が挙げられる。
【0055】
上記第2剤100質量%中、上記酸化剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは12.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。上記酸化剤の含有量が上記下限以上であると、染毛力がより一層高くなる。上記酸化剤の含有量が上記上限以下であると、皮膚刺激が少なくなる。
【0056】
(3級アミン型カチオン性界面活性剤)
上記第2剤は、3級アミン型カチオン性界面活性剤を含むことが好ましい。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤を用いることにより、第1剤と第2剤とを良好に混合することができ、かつ得られる混合剤の毛髪への付着性を高めることができる。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤は、比較的低いpH(例えばpHが4以下)の場合には粘度が低く、pHが高くなるにつれて増粘する性質を有する。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤を用いることにより、第1剤と第2剤との混合中には低粘度の状態が維持され、第1剤と第2剤とを良好に混合することができ、混合後は第1剤に含まれるアルカリ剤の作用により混合剤のpHが高くなるため、混合剤の粘度が高くなり、毛髪への付着性を高めることができる。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0057】
3級アミン型カチオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ラウリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ヤシ油脂肪酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミン、ベヘニン酸ジメチルアミン、パルミチン酸ジメチルアミン、ミリスチン酸ジメチルアミン、ラウリン酸ジメチルアミン、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、及びステアロキシプロピルジメチルアミン等が挙げられる。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤は、上記化合物の塩類であってもよく、上記化合物の塩類の形態で第2剤中に配合されてもよい。
【0058】
上記第2剤100質量%中、3級アミン型カチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは8.0質量%以下である。上記3級アミン型カチオン性界面活性剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、混合剤の粘度を好適な範囲とすることができるので、毛髪への付着性をより一層高めることができる。
【0059】
(水)
上記第2剤は、水を含むことが好ましい。上記水は、精製水であることが好ましい。
【0060】
上記第2剤中の水の含有量は、第2剤を収容する容器の種類や目的とする第2剤の性状により適宜調整することができる。上記第2剤100質量%中、水の含有量は、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上、更に好ましくは50.0質量%以上、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下、更に好ましくは70.0質量%以下である。
【0061】
上記第2剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化剤及び3級アミン型カチオン性界面活性剤以外に、後述する他の成分を含んでいてもよい。
【0062】
(第1剤及び第2剤の他の詳細)
第1剤及び第2剤は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、エタノール等の炭素数2~5の低級アルコール;グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等の多価アルコール;ソルビトール、マルチトール及びトレハロース等の糖アルコール;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数12~18の高級アルコール;パルミチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸ポリグリセリル等のエステル油;流動パラフィン、ワセリン、スクワレン、スクワラン等の炭化水素油;オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油等の油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ;シリコーン油;3級アミン型カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤;エデト酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、及びリン酸等の安定剤;金属イオン封鎖剤;酸化防止剤;植物抽出エキス;染料;顔料;pH調整剤;香料;防腐剤;溶剤等が挙げられる。
【0063】
第1剤及び第2剤の性状は、特に限定されない。第1剤及び第2剤の性状は、液状、ジェル状、及びクリーム状のいずれであってもよい。本発明の第1剤の性状は、液状、ジェル状又はクリーム状であることが好ましく、クリーム状であることがより好ましい。上記第2剤の性状は、液状、ジェル状又はクリーム状であることが好ましく、クリーム状であることがより好ましい。
【0064】
本発明の第1剤の25℃における粘度は、第1剤を収容する容器の種類や目的とする第1剤の性状により適宜調整することができるが、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは8000mPa・s以上、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは30000mPa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、第1剤と第2剤とをより一層良好に混合することができる。
【0065】
上記第2剤の25℃における粘度は、第2剤を収容する容器の種類や目的とする第2剤の性状により適宜調整することができるが、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは8000mPa・s以上、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは20000mPa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、第1剤と第2剤とをより一層良好に混合することができる。
【0066】
上記粘度は、粘度計を用いて、No.4ローターを使用して回転速度12rpm、回転時間1分間の条件で測定される。上記粘度計としては、東機産業社製、TV-25型粘度計を使用可能である。
【0067】
第1剤及び第2剤の製造方法として、公知の第1剤及び第2剤の製造方法を採用することができる。第1剤及び第2剤の製造方法としては、例えば、各成分をパドルミキサー等で撹拌して均一化する方法等が挙げられる。
【0068】
(多剤式酸化染毛剤)
本発明の多剤式酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備える。すなわち、本発明の多剤式酸化染毛剤は、上述した多剤式酸化染毛剤用の第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを少なくとも備える。本発明の多剤式酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備える酸化染毛剤キットである。
【0069】
本発明の多剤式酸化染毛剤は、第1剤及び第2剤に加えて、第3剤(第3剤組成物)をさらに備えていてもよい。上記第3剤としては、ヘアリンス剤、ヘアトリートメント剤及びヘアコンディショニング剤等が挙げられる。
【0070】
操作性に優れることから、本発明の多剤式酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを備える2剤式酸化染毛剤であることが好ましい。
【0071】
第1剤及び第2剤は、容器に収容された形態で保存したり、用いたりできる。上記容器としては、例えば、ポリ容器、アルミチューブ容器、パウチ容器、及びエアゾール容器等が挙げられる。利便性を高める観点からは、上記容器は、エアゾール容器であることが好ましい。
【0072】
本発明の多剤式酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを混合して、又は、上記第1剤と上記第2剤とその他の成分(例えば第3剤等)とを混合して、混合剤を作製した後、得られる混合剤を毛髪に塗布して用いられる。本発明の多剤式酸化染毛剤は、混合されて混合剤として用いられる。
【0073】
上記混合剤の性状は、特に限定されず、液状、ジェル状、及びクリーム状のいずれであってもよい。混合剤の毛髪への付着性を効果的に高める観点からは、上記混合剤の性状は、ジェル状又はクリーム状であることが好ましい。
【0074】
上記混合剤の25℃における粘度は、混合剤の混合方法や性状により適宜調整することができるが、好ましくは13000mPa・s以上、より好ましくは15000mPa・s以上、好ましくは40000mPa・s以下、より好ましくは35000mPa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪への付着性及び塗布性を高めることができる。
【0075】
上記粘度は、粘度計を用いて、No.4ローターを使用して回転速度12rpm、回転時間1分間の条件で測定される。上記粘度計としては、東機産業社製、TV-25型粘度計を使用可能である。
【0076】
上記混合剤のpHは、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。上記pHが上記下限以上であると、混合剤の25℃における粘度を上記の好適な範囲内に調整しやすくなり、毛髪への付着性及び塗布性を高めることができる。上記pHが上記上限以下であると、皮膚刺激が少なくなる。
【0077】
第1剤と第2剤とを混合する際の混合比は、特に限定されない。第1剤と第2剤とを良好に混合する観点からは、第1剤1gに対して第2剤を、好ましくは0.5g以上、より好ましくは1g以上、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下で混合することが好ましい。
【0078】
(多剤式酸化染毛剤を用いた毛髪の染色方法)
本発明の多剤式酸化染毛剤を用いて、毛髪を染色することができる。
【0079】
上記多剤式酸化染毛剤を用いた毛髪の染色方法は、上記多剤式酸化染毛剤を混合して混合剤を得る第1の工程と、該混合剤を毛髪に塗布する第2の工程とを備えることが好ましい。上記多剤式酸化染毛剤を用いた毛髪の染色方法は、上記第1剤と上記第2剤とを混合して混合剤を得る第1の工程と、該混合剤を毛髪に塗布する第2の工程とを備えることが好ましい。
【0080】
上記第2の工程における塗布の方法は特に限定されない。塗布の方法としては、保護手袋を着用した手で塗布する方法、並びに、櫛及びブラシ等の塗布器具を用いる方法等が挙げられる。
【0081】
染毛効果を高める観点から、上記毛髪の染色方法は、上記混合剤が毛髪に塗布された状態で放置する第3の工程を備えることが好ましい。染毛効果をより一層高める観点から、上記放置する時間は、好ましくは5分以上、好ましくは40分以下である。
【実施例
【0082】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0083】
実施例及び比較例において、第2剤の調製には下記の成分を用いた。
【0084】
[第2剤]
(酸化剤)
過酸化水素
【0085】
(3級アミン型カチオン性界面活性剤)
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド
【0086】
(他の成分)
セタノール
ポリオキシエチレンセチルエーテル:(青木油脂工業社製、商品名「ブラウノン CH-305」)
流動パラフィン:Sonneborn社製、商品名「CARNATION」
プロピレングリコール
リン酸
【0087】
(水)
精製水
【0088】
下記の表1に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、第2剤を調製した。表中の配合量(第2剤100質量%中の配合量)は、純分の配合量(単位:質量%)で示した。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例及び比較例において、第1剤の調製には下記の成分を用いた。
【0091】
[第1剤]
(染料前駆体)
成分(A):
硫酸2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール
成分(B):
硫酸パラメチルアミノフェノール
【0092】
(カップラー)
レゾルシン
成分(C):
メタアミノフェノール
5-アミノオルトクレゾール
カップラーX:
塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール
【0093】
(アルカリ剤)
モノエタノールアミン含有液(佐々木化学社製、商品名「80%モノエタノールアミン液」、モノエタノールアミン80質量%と精製水20質量%とを含む)
炭酸水素アンモニウム
【0094】
(還元剤)
無水亜硫酸ナトリウム
L-アスコルビン酸ナトリウム
【0095】
(他の成分)
セタノール
セトステアリルアルコール
ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸
流動パラフィン:Sonneborn社製、商品名「CARNATION」
濃グリセリン
キサンタンガム
エデト酸二ナトリウム
【0096】
(水)
精製水
【0097】
(実施例1~7及び比較例1~9)
第1剤の調製:
下記の表2,3に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、第1剤を調製した。表中の配合量(第1剤100質量%中の配合量)は、モノエタノールアミン含有液を除いて、純分の配合量(単位:質量%)で示した。なお、表中のモノエタノールアミン含有液は、該モノエタノールアミン含有液の配合量で示した。
【0098】
混合剤の調製:
得られた第1剤1gに対して、得られた第2剤を1gで混合し、専用のはけを用いて第1剤と第2剤とが完全に混ざるまで撹拌し、混合剤を得た。
【0099】
(評価)
(試験例1:染色性)
試験毛束として、スタッフス社製「ヤク毛 1g10cm毛束」を用いた。得られた混合剤2gを、専用のはけを用いて、試験毛束全体に約1分かけて充分になじませた。次いで、試験毛束を30℃及び70%RHの恒温恒湿槽内で15分間静置した。試験毛束を恒温恒湿槽から取り出した後、35℃の水道水で約30秒間洗浄した。市販のシャンプー適量を、洗浄後の試験毛束全体に30秒程度なじませた後、水道水で洗い流した。次いで、市販のコンディショナー適量を、試験毛束全体に10秒程度なじませた後、水道水で洗い流した。次いで、試験毛束を風乾し、染色後の試験毛束を得た。
【0100】
染色後の試験毛束のL値(明度)を、分光測色計(コニカミノルタセンシング社製「CM-3610d型」)を用いて測定した。染色性を下記の基準により評価した。なお、L値が小さいほど、試験毛束がより染色されていることを意味する。また、染色前の試験毛束のL値は約75であった。
【0101】
<染色性の評価基準>
○:L値が50未満
×:L値が50以上
【0102】
(試験例2:退色耐性)
試験例1の評価の後、染色された試験毛束を、2.5質量%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液中に40℃で1時間浸漬した。浸漬後の試験毛束を風乾し、試験例1と同様にして、L値(明度)を測定した。試験例1で測定された染色後の試験毛束のL値と、浸漬処理後の試験毛束のL値との差の絶対値(△L値)を算出した。退色耐性を下記の基準により評価した。なお、△L値が小さいほど、退色耐性に優れることを意味する。
【0103】
<退色耐性の評価基準>
○○:△L値が6未満
○:△L値が6以上、7未満
×:△L値が7以上
【0104】
第1剤の組成及び結果を下記の表2,3に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】