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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/129 20060101AFI20231114BHJP
   F16D 13/64 20060101ALI20231114BHJP
   F16F 15/123 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F16F15/129 D
F16D13/64 B
F16D13/64 G
F16F15/123 A
F16F15/123 B
F16F15/129 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019222075
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021092244
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】今中 秀幸
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-177820(JP,A)
【文献】米国特許第06083107(US,A)
【文献】特開2015-175440(JP,A)
【文献】特表2004-504571(JP,A)
【文献】特開2012-237457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16D 11/00- 23/14
F16C 17/00- 17/26
F16C 33/00- 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたトルクを出力側に伝達するとともに、トルク変動を減衰するダンパ装置であって、
トルクが入力される入力側回転部材と、
前記入力側回転部材に対して相対回転自在に配置され、環状の凸状当接面と、複数の係合凸部と、を有し、前記凸状当接面は、外周面に径方向に延びる凸状の曲面であり、前記複数の係合凸部は、前記凸状当接面の外周部において径方向に突出するように形成され円周方向に並べて配置されている、出力側回転部材と、
前記入力側回転部材と前記出力側回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記出力側回転部材と軸方向に隣接して配置され、摩擦面と、環状の凹状当接面と、複数の係合部と、を有するブッシュと、
を備え、
前記摩擦面は、第1側面に形成され、前記入力側回転部材と摩擦接触してヒステリシストルクを発生するものであり、
前記凹状当接面は、前記第1側面と逆側の第2側面に形成され、径方向に延びる凹状の曲面であり、前記凸状当接面に当接し前記凸状当接面と協働して前記出力側回転部材の回転中心に対するミスアライメントを吸収するものであり、内周端部及び外周端部の少なくとも一方が前記凸状当接面から離れる形状であり、
前記複数の係合部は、前記第2側面において前記凹状当接面の外周部に円周方向に並べて軸方向に突出して形成され、前記複数の係合凸部の円周方向間に挿入されて回転不能に係合する、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記凸状当接面と前記凹状当接面とは、径方向の中央部が当接するとともに、内周端部及び外周端部が離れる形状である、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記凸状当接面は凸状の球面の一部であり、
前記凹状当接面は、前記凸状当接面の半径よりも大きい凹状の球面の一部である、
請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記入力側回転部材は、軸方向に所定の隙間を介して対向して配置されたそれぞれ環状のクラッチプレート及びリティニングプレートを有し、
前記出力側回転部材は、少なくとも前記クラッチプレートの内周側を軸方向に貫通する筒状部を含むハブを有し、
前記ブッシュは、前記クラッチプレートの内周端部において前記ハブの筒状部の外周面に配置されている、
請求項1からのいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記ブッシュの摩擦面は、平坦面であり、前記クラッチプレートの内周端部の側面に摩擦接触する、
請求項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置、特に、入力されたトルクを出力側に伝達するとともに、トルク変動を減衰するダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌におけるアイドリング時及び走行時には、例えばエンジンから伝達されるトルク変動に起因する振動及び異音が発生する場合がある。この問題を解決するために、特許文献1に示されるようなダンパ装置が設けられている。このダンパ装置は、入力側プレートと、フランジ及びハブを有する出力ユニットと、高剛性ダンパユニットと、第1及び第2低剛性ダンパユニットと、を備えている。
【0003】
また、特許文献1のダンパ装置は、低捩り角度領域でヒステリシストルクを発生する機構を備えている。このヒステリシストルク発生機構は、クラッチプレートとハブとの間に配置された樹脂製のブッシュを有している。ブッシュは、ヒステリシストルクを発生する機能と併せて、ハブのミスアライメントを吸収する機能、及び各部材の径方向の位置決め機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-175440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のブッシュは、クラッチプレートと接触する第1当接面と、ハブと接触する第2当接面と、を有しており、これらの当接面でヒステリシストルクを発生する。ここで、ブッシュの第1当接面は、ハブのミスアライメントを吸収する機能を実現するために、球面の一部で形成されている。このため、第1当接面によって安定したヒステリシストルクを得ることは困難である。
【0006】
そこで、ブッシュの各当接面の機能を別々にすることが考えられる。具体的には、ブッシュの第1当接面を、ヒステリシストルク発生用の摩擦接触面とし、第2当接面を、ミスアライメント吸収用の当接面とすることが考えられる。このような構成では、ハブ側の面を凸状の曲面で形成し、ブッシュ側の当接面を凹状の曲面で形成し、これらの面を当接させることによってミスアライメントが吸収される。
【0007】
しかし、このような構成では、互いの当接面(曲面)の両端部(内周端部と外周端部)のみが当接する場合がある。この場合、当接面に強い押圧力が作用すると、ブッシュの凹状の当接面を押し広げる力が強く作用し、ブッシュが破損するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、ミスアライメントを吸収する機能を有するブッシュが設けられたダンパ装置において、ブッシュの耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るダンパ装置は、入力されたトルクを出力側に伝達するとともに、トルク変動を減衰するダンパ装置である。このダンパ装置は、入力側回転部材と、出力側回転部材と、複数の弾性部材と、ブッシュと、を備えている。入力側回転部材はトルクが入力される。出力側回転部材は、入力側回転部材に対して相対回転自在に配置され、径方向に延び凸状の曲面である環状の凸状当接面を有する。複数の弾性部材は、入力側回転部材と出力側回転部材とを回転方向に弾性的に連結する。ブッシュは、出力側回転部材と軸方向に隣接して配置され、径方向に延び凹状の曲面である環状の凹状当接面を有している。そして、凸状当接面と凹状当接面とは、互いに当接し、協働して出力側回転部材の回転中心に対するミスアライメントを吸収するとともに、内周端部及び外周端部の少なくとも一方が離れる形状である。
【0010】
ここでは、凸状当接面及び凹状当接面でミスアライメントを吸収させているので、出力側回転部材の不安定な作動を抑えることができ、出力側回転部材の摩耗を抑えることができる。このとき、凸状当接面と凹状当接面とは互いに当接するが、内周端部及び外周端部の少なくとも一方は離れている。このため、凸状当接面と凹状当接面とが強い力で当接しても、凹状当接面が押し広げられる力は小さくなり、ブッシュの破損等を抑えることができる。
【0011】
(2)好ましくは、凸状当接面と凹状当接面とは、径方向の中央部が当接するとともに、内周端部及び外周端部が離れる形状である。
【0012】
ここでは、凸状当接面と凹状当接面とは、径方向の中央部のみが当接する。このため、前記同様に、凸状当接面と凹状当接面とが強い力で当接しても、凹状当接面が押し広げられる力は小さくなり、ブッシュの破損等を抑えることができる。
【0013】
(3)好ましくは、凸状当接面は凸状の球面の一部である。また、凹状当接面は、凸状当接面の半径よりも大きい凹状の球面の一部である。
【0014】
このような構成により、凸状当接面と凹状当接面とを、径方向の中央部のみで当接させることができる。
【0015】
(4)好ましくは、ブッシュは、摩擦面と、係合部と、を有する。摩擦面は、入力側回転部材と摩擦接触してヒステリシストルクを発生する。係合部は、出力側回転部材に回転不能に係合する。
【0016】
ここでは、ブッシュは、ヒステリシストルクを発生すための摩擦面と、この摩擦面とは別のミスアライメントを吸収するための凹状当接面と、を有している。このため、摩擦面を、球面ではなく、平坦面にすることができ、安定したヒステリシストルクを発生させることができる。
【0017】
また、ブッシュは係合部によって出力側回転部材と回転不能である。すなわち、ブッシュと出力側回転部材との間では、ヒステリシストルクは発生しない。このため、出力側回転部材のブッシュとの当接面を、例えば複数の歯によって形成しても、不安定なヒステリシストルクが発生することはない。
【0018】
(5)好ましくは、入力側回転部材は、軸方向に所定の隙間を介して対向して配置されたそれぞれ環状のクラッチプレート及びリティニングプレートを有している。また、出力側回転部材は、少なくともクラッチプレートの内周側を軸方向に貫通する筒状部を含むハブを有している。そして、ブッシュは、クラッチプレートの内周端部においてハブの筒状部の外周面に配置されている。
【0019】
(6)好ましくは、ブッシュの摩擦面は、平坦面であり、クラッチプレートの内周端部の側面に摩擦接触する。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明では、ミスアライメントを吸収する機能を有するブッシュが設けられたダンパ装置において、ブッシュの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としてのクラッチディスク組立体の縦断面概略図。
図2】クラッチディスク組立体の正面部分図。
図3】クラッチディスク組立体の捩り特性線図。
図4図1の拡大部分図。
図5図2の拡大部分図。
図6図1の拡大部分図。
図7】主に低剛性ダンパの分解斜視図。
図8】スプラインハブの外観斜視図。
図9】第1摩擦ワッシャの外観斜視図。
図10】ミスアライメント吸収用当接面の模式図。
図11】本発明の一実施形態によるミスアライメント吸収用当接面の模式図。
図12図7の一部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明一実施形態によるダンパ装置を有するクラッチディスク組立体の断面図である。図1のO-O線は、クラッチディスク組立体1の回転軸線である。このクラッチディスク組立体1は、図1の左側に配置されるエンジン及びフライホイールからのトルクを、図1の右側に配置されるトランスミッションに伝達し、かつトルク変動を減衰する。また、図2はクラッチディスク組立体1の正面部分図である。
【0023】
[全体構成]
クラッチディスク組立体1は、摩擦係合によりフライホイールからトルクが入力されるクラッチディスク2(入力側回転部材)と、クラッチディスク2から入力されるトルク変動を減衰及び吸収するダンパ機構3(ダンパ装置)と、スプラインハブ4(出力側回転部材)と、を有している。
【0024】
[クラッチディスク2]
クラッチディスク2は、図示しないプレッシャプレートによってフライホイールに押し付けられる。クラッチディスク2は、クッショニングプレート6と、クッショニングプレート6の両面にリベット7によって固定される1対の摩擦フェーシング8と、を有している。クッショニングプレート6はダンパ機構3の外周部に固定されている。
【0025】
[ダンパ機構3]
ダンパ機構3は、エンジンから伝達されるトルク変動を効果的に減衰及び吸収するために、図3に示すように、正側(駆動側の回転方向)及び負側において4段の捩り特性を有している。
【0026】
ダンパ機構3は、低剛性ダンパ11と、高剛性ダンパ12と、全領域ヒステリシストルク発生機構(以下、「L-Hヒス発生機構」と記す)13と、低捩り角度領域ヒステリシストルク発生機構(以下、「Lヒス発生機構」と記す)14と、中捩り角度領域ヒステリシストルク発生機構(以下、「L2ヒス発生機構」と記す)15と、高捩り角度領域ヒステリシストルク発生機構(以下、「Hヒス発生機構」と記す)16と、ストッパ機構17と、を有している。
【0027】
低剛性ダンパ11は、低捩り角度領域(L1+L2)で作動する。高剛性ダンパ12は、低捩り角度領域よりも捩り角度の大きい高捩り角度領域(H3+H4)で作動する。また、高剛性ダンパ12は低剛性ダンパ11よりも高い捩り剛性を有する。
【0028】
L-Hヒス発生機構13は、低捩り角度領域(L1+L2)及び高捩り角度領域(H3+H4)の全捩り角度領域においてヒステリシストルクを発生する。Lヒス発生機構14は、低捩り角度領域の全領域(L1+L2)でのみヒステリシストルクを発生する。L2ヒス発生機構15は、2段目の第2捩り角度領域(L2)でのみヒステリシストルクを発生する。Hヒス発生機構16は、高捩り角度領域(H3+H4)でのみヒステリシストルクを発生する。
【0029】
ストッパ機構17は、入力側の部材であるクラッチディスク2と、出力側の部材であるスプラインハブ4と、の捩り角度(相対回転角度)が所定の角度になると、それ以上の両部材の相対回転角度を禁止する。
【0030】
<高剛性ダンパ12>
高剛性ダンパ12は、図4に示すように、入力側回転部材20と、ハブフランジ21と、複数の高剛性スプリング22と、を有している。
【0031】
-入力側回転部材20-
入力側回転部材20には、クラッチディスク2を介してエンジンからトルクが入力される。入力側回転部材20は、クラッチプレート24及びリティニングプレート25を有している。
【0032】
クラッチプレート24及びリティニングプレート25は、実質的に環状に形成され、軸方向に間隔を隔てて配置されている。クラッチプレート24はエンジン側に配置され、リティニングプレート25はトランスミッション側に配置されている。クラッチプレート24及びリティニングプレート25は、外周部がストップピン26によって連結されており、一体で回転する。
【0033】
クラッチプレート24及びリティニングプレート25には、図2に示すように、それぞれ4個の第1保持部24a,25a及び第2保持部24b,25bが円周方向に間隔を隔てて形成されている。第1保持部24a,25aと第2保持部24b,25bとは円周方向に交互に配置されている。また、リティニングプレート25には、複数の係合孔25cが形成されている。
【0034】
なお、図2では、リティニングプレート25を示しているが、各保持部24a,24b,25a,25bに関しては、逆側に配置されたクラッチプレート24も同様の構成である。また、図2では、リティニングプレート25の一部を破断して示している。
【0035】
-ハブフランジ21-
ハブフランジ21は、略円板状の部材であり(図5参照)、スプラインハブ4の外周に配置されている。ハブフランジ21は、クラッチプレート24とリティニングプレート25との軸方向間に配置され、これらの両プレート24,25と所定の角度範囲内で相対回転可能である。図5に示すように、ハブフランジ21とスプラインハブ4とは、互いの内周部及び外周部に形成された複数の歯21c,4cによって噛み合っている。なお、互いの歯21c,4cの間には所定の隙間G1が設定されている。すなわち、ハブフランジ21とスプラインハブ4とは、歯21c,4cの隙間G1の角度分(低捩り角度領域(L1+L2)に相当)だけ相対回転が可能である。
【0036】
ハブフランジ21には、図5に示すように、クラッチプレート24及びリティニングプレート25の第1保持部24a,25a及び第2保持部24b,25bと対向する位置に、それぞれ第1窓孔21a及び第2窓孔21bが形成されている。そして、第1窓孔21aに第1高剛性スプリング22aが収容され、この第1高剛性スプリング22aがクラッチプレート24及びリティニングプレート25の第1保持部24a,25aによって軸方向及び径方向に保持されている。また、第2窓孔21bに第2高剛性スプリング22bが収容され、この第2高剛性スプリング22bがクラッチプレート24及びリティニングプレート25の第2保持部24b,25bによって軸方向及び径方向に保持されている。
【0037】
なお、クラッチプレート24及びリティニングプレート25の第1保持部24a,25a及び第2保持部24b,25bの円周方向の両端は、各高剛性スプリング22a,22bの端面に係合可能である。
【0038】
ここで、ハブフランジ21の第1窓孔21aには第1高剛性スプリング22aが、第2窓孔21bには第2高剛性スプリング22bが、それぞれ円周方向に隙間なく配置されている。一方、クラッチプレート24及びリティニングプレート25の第1保持部24a,25aには第1高剛性スプリング22aが円周方向に隙間なく配置されているが、両プレート24,25の第2保持部24b,25bには、第2高剛性スプリング22bが円周方向に隙間G2(図2及び図5参照)を介して配置されている。この隙間G2が3段目の捩り角度分(角度領域H3)に相当している。
【0039】
なお、ハブフランジ21の第2窓孔21bのそれぞれの内周側には、軸方向に貫通する係合孔21eが形成されている。
【0040】
以上の構成により、詳細は後述するが、高捩り角度領域H3,H4では、まず第1高剛性スプリング22aのみが圧縮され(H3領域)、その後、第1高剛性スプリング22aに加えて第2高剛性スプリング22bが圧縮される(H4領域)ことになる。
【0041】
<ストッパ機構17>
ストッパ機構17は、図5に示すように、ハブフランジ21の外周部に形成された複数のストッパ用切欠21dと、前述のストップピン26と、から構成されている。ストッパ用切欠21dは、所定の角度範囲にわたって形成されており、径方向外方に開いている。そして、このストッパ用切欠21dをストップピン26が軸方向に貫通している。
【0042】
また、切欠21dは、円周方向の両端部が内周側に向かって深く形成され、中央部分が浅く形成されている。この浅い部分の内周側に、第2窓孔21bが形成されている。
【0043】
<低剛性ダンパ11>
低剛性ダンパ11は、図6及び図7に示すように、サブプレート34及びスプリングホルダ35と、ドライブプレート36と、複数の低剛性スプリング37と、を有している。
【0044】
-サブプレート34-
サブプレート34は、クラッチプレート24とハブフランジ21との軸方向間に配置されている。サブプレート34は、図7に示すように、中央部に円形の開口を有しており、それぞれ2個の第1保持部34a及び第2保持部34bと、4個の第1係合突起34cと、第1係合突起34cより突起長さが短い4個の第2係合突起34dと、環状溝34eと、を有している。
【0045】
第1保持部34a及び第2保持部34bは、各係合突起34c,34dの内周側に形成されている。環状溝34eは第1保持部34a及び第2保持部34bの内周側で、開口部の縁に形成されている。
【0046】
-スプリングホルダ35-
スプリングホルダ35は、サブプレート34とハブフランジ21との軸方向間で、サブプレート34と間隔をあけて対向して配置されている。スプリングホルダ35はサブプレート34とほぼ同様の形状である。スプリングホルダ35は、中央部に円形の開口を有しており、それぞれ2個の第1保持部35a及び第2保持部35bと、4個のボス部35cと、4個の切欠35dと、を有している。各ボス部35cには切欠35eが形成されている。また、第2保持部35bの円周方向両端には、円周方向に延びる円弧状溝35fが形成されている。
【0047】
第1保持部35a及び第2保持部35bは、それぞれサブプレート34の第1保持部34a及び第2保持部34bと対向する位置に形成されている。4個のボス部35cの切欠35eにサブプレート34の第1係合突起34cが係合し、さらにボス部35cがハブフランジ21の係合孔21eに係合している。切欠35dは、サブプレート34の第2係合突起34dに対応して形成されており、この切欠35dに第2係合突起34dが係合している。
【0048】
以上のように、サブプレート34とスプリングホルダ35とが、第1係合突起34cと切欠35eとの係合、及び第2係合突起34dと切欠35dとの係合、によって一体化されている。そして、スプリングホルダ35とハブフランジ21とが、第1係合突起34c及びボス部35cと係合孔21eとの係合によって一体化されている。したがって、サブプレート34及びスプリングホルダ35はハブフランジ21と一体に回転する。
【0049】
-ドライブプレート36-
ドライブプレート36は、サブプレート34とスプリングホルダ35との軸方向間に配置され、サブプレート34及びスプリングホルダ35と所定の角度範囲内で相対回転可能である。ドライブプレート36は、中央部に開口を有しており、それぞれ2個の第1窓孔36a及び第2窓孔36bと、ドライブプレート36の内周面に形成された複数の係合凹部36cと、を有している。
【0050】
また、第1窓孔36aの内周端部の両側には、それぞれ円周方向に延びる第1係合溝36dが形成されている。第2窓孔36bの内周端部の一方側には、円周方向に延びる第2係合溝36eが形成されている。
【0051】
第1窓孔36a及び第2窓孔36bは、それぞれサブプレート34及びスプリングホルダ35の第1保持部34a,35a及び第2保持部34b,35bと対向する位置に形成されている。そして、第1窓孔36aに第1低剛性スプリング37aが収容され、この第1低剛性スプリング37aがサブプレート34及びスプリングホルダ35の第1保持部34a,35aによって軸方向及び径方向に保持されている。また、第2窓孔36bに第2低剛性スプリング37bが収容され、この第2低剛性スプリング37bがサブプレート34及びスプリングホルダ35の第2保持部34b,35bによって軸方向及び径方向に保持されている。
【0052】
なお、サブプレート34及びスプリングホルダ35の第1保持部34a,35a及び第2保持部34b,35bの円周方向の両端は、各低剛性スプリング37a,37bの端面に係合可能である。
【0053】
ここで、ドライブプレート36の第1窓孔36aには第1低剛性スプリング37aが、第2窓孔36bには第2低剛性スプリング37bが、それぞれ円周方向に隙間なく配置されている。一方、サブプレート34及びスプリングホルダ35の第1保持部34a,35aには第1低剛性スプリング37aが円周方向に隙間なく配置されているが、両部材34,35の第2保持部34b,35bには、第2低剛性スプリング37bが円周方向に隙間を介して配置されている。この隙間が1段目の捩り角度分(低捩り角度領域L1)に相当している。
【0054】
低剛性スプリング37のバネ定数は、高剛性スプリング22のバネ定数に比べて大幅に小さく設定されている。すなわち、高剛性スプリング22は低剛性スプリング37よりもはるかに剛性が高い。このため、1段目領域(L1)及び2段目領域(L2)では、高剛性スプリング22は圧縮されず、低剛性スプリング37のみが圧縮される。
【0055】
[スプラインハブ4]
スプラインハブ4は、クラッチプレート24及びリティニングプレート25の内周側に配置されている。スプラインハブ4は、図4図6、及び図8に示すように、軸方向に延びる筒状のボス41a,41b(筒状部の一例)と、ボス41a,41bから径方向外側に延びるフランジ42と、を有している。
【0056】
ボス41a,41bは、クラッチプレート24の内周部及びリティニングプレート25の内周部を軸方向に貫通して延びている。エンジン側のボス41aの外周面とクラッチプレート24の内周面との隙間は、従来の構造に比較して狭くなっている。すなわち、ボス41aの外周面とクラッチプレート24の内周面との隙間を小さくすることによって、クラッチプレート24はスプラインハブ4に対して径方向に位置決めされている(センタリング機能)。また、ボス41a,41bの内周部には、トランスミッションの入力シャフト(図示せず)に係合するスプライン孔4aが形成されている。
【0057】
エンジン側のボス41aの外周面には複数の係合凸部4dが形成されている。係合凸部4dのエンジン側の側面4eは、径方向に延び、外側に膨らむ凸状の球面の一部からなる環状の凸状当接面である。係合凸部4dはドライブプレート36の係合凹部36cに、実質的に隙間なく係合している。また、フランジ42の外周面には、歯4cが形成されている。図5で説明したように、この歯4cが、ハブフランジ21の歯21cと噛合可能であり、両歯4c,21cの円周方向間には隙間G1が存在する。
【0058】
<L-Hヒス発生機構13>
L-Hヒス発生機構13は、捩り角度領域の全領域(L1+L2+H3+H4)においてヒステリシストルクHを発生する。
【0059】
L-Hヒス発生機構13は、図6に示すように、第1摩擦ワッシャ51(ブッシュの一例)と、第2摩擦ワッシャ52と、第1コーンスプリング54と、を有している。
【0060】
第1摩擦ワッシャ51は、樹脂製であり、スプラインハブ4のボス41aの外周において、係合凸部4dの側面とクラッチプレート24の内周端部との間に配置されている。
【0061】
第1摩擦ワッシャ51は、図9に示すように、樹脂製の環状の部材であり、摩擦面51aと、凹状当接面51bと、複数の係合部51cと、を有している。
【0062】
摩擦面51aは、環状で平坦面であり、クラッチプレート24の内周部の側面に当接している。すなわち、この摩擦面51aとクラッチプレート24の側面とが当接し、摩擦接触することによって、ヒステリシストルクが発生する。
【0063】
凹状当接面51bは、径方向に延び、内側に凹む球面の一部であり、環状に形成されている。凹状当接面51bは、ボス41aの係合凸部4dの凸状当接面4eに当接している。このため、凹状当接面51bと凸状当接面4eとが当接することにより、スプラインハブ4の回転軸線に対するミスアライメントが吸収される。
【0064】
凹状当接面51bの半径Rは、凸状当接面4eの半径rより大きい(R>r)。ここで、図10に模式的に示すように、凹状当接面51b’の半径が凸状当接面4e’の半径よりも小さい場合、凸状当接面4e’と凹状当接面51b’とは両端部のみが当接し、中央部には隙間が生じる。この場合、当接面に強い力が作用すると、凹状当接面51b’を押し広げる力Fも強くなる。そして、凹状当接面51b’が形成された第1摩擦ワッシャ(ブッシュ)51’が破損するおそれがある。
【0065】
一方、図11に示す本実施形態のように、凹状当接面51bの半径の方が凸状当接面4eの半径より大きい場合、凸状当接面4eは、その中央部のみが凹状当接面51bに当接し、両端部(実際には、内周端部及び外周端部)は凹状当接面51bから離れる。したがって、両当接面4e,51bが強い力で接触しても、凹状当接面51bを押し広げる力Fは小さくなる。このため、第1摩擦ワッシャ51の破損を抑えることができる。
【0066】
係合部51cは、係合凸部4d側に突出して形成されている。そして、この係合部51cが、隣接する係合凸部4dの間に挿入されている。すなわち、それぞれ複数の係合部51cと係合凸部4dとは噛み合っている。このため、第1摩擦ワッシャ51はスプラインハブ4に対して相対回転不能である。
【0067】
また、第1摩擦ワッシャ51の内周面と、スプラインハブ4のボス41の外周面と、の径方向隙間は、クラッチプレート24の内周面とボス41の外周面との径方向隙間よりも大きく設定されている。したがって、第1摩擦ワッシャ51の内周面がボス41の外周面と接触して発熱するのを抑えることができる。
【0068】
さらに、第1摩擦ワッシャ51の外周面とサブプレート34の内周面との径方向隙間は、クラッチプレート24の内周面とボス41の外周面との径方向隙間よりも大きく設定されている。したがって、第1摩擦ワッシャ51の外周面がサブプレート34の内周面と接触して発熱するのを抑えることができる。
【0069】
第2摩擦ワッシャ52は、樹脂製の環状部材であり、スプラインハブ4のフランジ42とリティニングプレート25の内周端部との軸方向間に配置されている。第2摩擦ワッシャ52の外周部には、後述する第3摩擦ワッシャ53に係合する係合部(図示せず)を有しており、両部材は一体回転する。
【0070】
また、第1コーンスプリング54は、第2摩擦ワッシャ52とリティニングプレート25の内周端部との軸方向間に配置され、第2摩擦ワッシャ52とリティニングプレート25とが互いに離れるように、両部材25,52を付勢している。
【0071】
以上から、クラッチプレート24及びリティニングプレート25と、スプラインハブ4と、が相対回転する全捩り角度領域において、第1摩擦ワッシャ51の摩擦面51aとクラッチプレート24との間に摩擦抵抗が発生するとともに、第2摩擦ワッシャ52とスプラインハブ4との間に摩擦抵抗が発生する。これらの摩擦抵抗によって、全捩り角度領域においてヒステリシストルクHが発生する。
【0072】
<Lヒス発生機構14>
Lヒス発生機構14は、1段目領域及び2段目領域である低捩り角度領域の全領域(L1+L2)でのみヒステリシストルクhLを発生する。
【0073】
Lヒス発生機構14は、図7に示すように、サブプレート34の環状溝34eに装着された付勢部材としての波線56を有している。波線56は、一部に欠落部を有する環状の線材で形成されている。波線56は、円周方向に所定の間隔で複数の押圧部56aを有している。押圧部56aはドライブプレート36側に突出して形成されており、弾性変形が可能である。また、押圧部56aの先端部は、ドライブプレート36の各窓孔36a,36bに形成された第1及び第2係合溝36d,36eに係合可能である。このように、波線56は、ドライブプレート36に対して相対回転不能であり、かつ環状溝34e内で円周方向に移動可能である。そして、波線56の弾性変形によって、ドライブプレート36がスプリングホルダ35側に付勢されている。
【0074】
ここで、前述のように、サブプレート34及びスプリングホルダ35はハブフランジ21と一体回転する。また、ドライブプレート36はスプラインハブ4と一体回転する。そして、ハブフランジ21とスプラインハブ4とは、前述のように、隙間G1の角度分だけ相対回転可能である。言い換えれば、ハブフランジ21(スプリングホルダ35と一体回転)とスプラインハブ4(ドライブプレート36と一体回転)とは、捩り特性の1段目領域と2段目領域の低捩り角度領域の全領域(L1+L2)においてのみ相対回転可能である。
【0075】
そして、スプリングホルダ35とドライブプレート36とは、波線56によって互いに押圧されているので、スプリングホルダ35とドライブプレート36とは低捩り角度の全領域(L1+L2)においてのみ相対回転して摩擦抵抗が生じる。また、波線56とサブプレート34の環状溝の底部との間にも摩擦抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗によって、ヒステリシストルクhLが発生する。
【0076】
<L2ヒス発生機構15>
L2ヒス発生機構15は、2段目の捩り角度領域(L2)でのみヒステリシストルクhL2を発生する。
【0077】
L2ヒス発生機構15はウェーブスプリング60を有している。ウェーブスプリング60は、軸方向に弾性変形可能な環状の弾性体であり、軸方向に圧縮された状態でスプラインハブ4のフランジ42とスプリングホルダ35との間に配置されている。ウェーブスプリング60は、ハブフランジ21及びスプリングホルダ35に当接しており、ハブフランジ21に対して回転すると摩擦抵抗を発生する。
【0078】
図12に、ウェーブスプリング60及びその周辺の部材を抽出して示している。ウェーブスプリング60は、環状の本体部60aと、本体部60aから径方向外側へ延びる2対の爪部60bと、を有している。爪部60bの先端部は、軸方向に折り曲げられており、スプリングホルダ35に形成された円弧状溝35fを通過して第2低剛性スプリング37bの両端部に当接している。2つの爪部60b間の円周方向の距離は、第2低剛性スプリング37bの自由長とほぼ一致している。これにより、第2低剛性スプリング37bによりウェーブスプリング60の円周(回転)方向の位置決めが行われるとともに、第2低剛性スプリング37b及びウェーブスプリング60は一体で回転可能となっている。なお、溝35fの円周方向の距離は、2つの爪部60b間の円周方向の距離より長い。
【0079】
また、本体部60aの内周部には、複数の係合凹部60cが形成されている。係合凹部60cは、スプラインハブ4の係合凸部4dに所定の隙間を介して係合している。この隙間が、1段目の捩り角度領域(L1)の角度分に相当している。したがって、1段目領域ではウェーブスプリング60によるヒステリシストルクは発生しないが、2段目領域(L2)でのみウェーブスプリング60によるヒステリシストルクhL2が得られる。
【0080】
<Hヒス発生機構16>
Hヒス発生機構16は、3段目領域及び4段目領域である高捩り角度領域(H3+H4)でのみヒステリシストルクhHを発生する。
【0081】
Hヒス発生機構16は、図4及び図6に示すように、サブプレート34に装着された環状の第1摩擦材61と、環状の第2摩擦材62を有する第3摩擦ワッシャ53と、第2コーンスプリング64と、を有している。
【0082】
第1摩擦材61は、サブプレート34のエンジン側の側面に固定されており、クラッチプレート24の内周部の側面に当接可能である。第1摩擦材61はサブプレート34とともにハブフランジ21と一体回転する。
【0083】
第3摩擦ワッシャ53は、ハブフランジ21内周部とリティニングプレート25内周部との間に配置されており、リティニングプレート25側に突出する複数の係合突起53aを有している。この係合突起53aがリティニングプレート25の係合孔25cに係合している。したがって、第3摩擦ワッシャ53はリティニングプレート25と一体回転する。第2摩擦材62は、第3摩擦ワッシャ53のハブフランジ21側の側面に固定され、ハブフランジ21の内周部の側面に当接可能である。
【0084】
第2コーンスプリング64は、第3摩擦ワッシャ53とリティニングプレート25との間に配置されている。第2コーンスプリング64は、第3摩擦ワッシャ53とリティニングプレート25とを、両者が軸方向に互いに離れる方向に付勢している。したがって、第2コーンスプリング64により、第1摩擦材61とクラッチプレート24とが互いに押圧され、第2摩擦材62とハブフランジ21とが互いに押圧される。
【0085】
以上から、クラッチプレート24及びリティニングプレート25と、ハブフランジ21と、が相対回転する高捩り角度領域の全領域(H3+H4)において、第1摩擦材61とクラッチプレート24との間、及び第2摩擦材62とハブフランジ21との間において摩擦抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗によって、ヒステリシストルクhHが発生する。
【0086】
以上をまとめると、図3に示すように、各角度領域では以下のようなヒステリシストルクが発生する。
【0087】
1段目領域(L1):H(L-Hヒス発生機構13)+hL(Lヒス発生機構14)
2段目領域(L2):H+hL+hL2(L2ヒス発生機構15)
3段目領域及び4段目領域(H3+H4):H+hH(Hヒス発生機構16)
【0088】
[動作]
本実施形態のクラッチディスク組立体1の捩り特性は、角度範囲の大きさは異なるが基本的に正側と負側とで対称である。したがって、ここでは正側のみの動作を説明し、負側の動作についての説明は省略する。
【0089】
<1段目>
伝達トルク及びトルク変動が小さい場合は、本装置は捩り特性の1段目(L1)で作動する。この1段目では、剛性の低い第1及び第2低剛性スプリング37a,37bのうち、自由長が長い第1低剛性スプリング37aのみが圧縮される。このため、サブプレート34及びスプリングホルダ35と、ドライブプレート36と、が相対回転する。一方で、第1及び第2高剛性スプリング22a,22bは剛性が高いためにほとんど圧縮されない。したがって、入力側回転部材20(クラッチプレート24及びリティニングプレート25)とハブフランジ21とは一体回転する。
【0090】
以上から、捩り特性の1段目では、{入力側回転体2+ハブフランジ21+サブプレート34+スプリングホルダ35}が一体回転し、これらの部材に対して{ドライブプレート36+スプラインハブ4}が回転する。
【0091】
この場合は、L-Hヒス発生機構13によるヒステリシストルクHと、Lヒス発生機構14によるヒステリシストルクhLとが発生する。具体的には、第1摩擦ワッシャ51の摩擦面51aとクラッチプレート24との間、及び第2摩擦ワッシャ52とスプラインハブ4との間、において摩擦抵抗が発生する。また、同時に、波線56とサブプレート34との間、及びドライブプレート36とスプリングホルダ35との間においても摩擦抵抗が発生する。
【0092】
なお、ウェーブスプリング60は爪部60bが第2低剛性スプリング37bに係合しているので、この1段目ではウェーブスプリング60は自由に回転し得る状態であり、ウェーブスプリング60とハブフランジ21との間には摩擦抵抗は発生しない。
【0093】
<2段目>
伝達トルク又はトルク変動がより大きくなると、第1低剛性スプリング37aが圧縮されつつ、さらに自由長の短い第2低剛性スプリング37bも圧縮され始める。第1低剛性スプリング37aと第2低剛性スプリング37bとは並列に配置されているので、第2低剛性スプリング37bが圧縮され始めると、第1低剛性スプリング37aのみが圧縮されている場合(1段目)に比較して捩り剛性は高くなる。すなわち、捩り特性の2段目に移行する。
【0094】
この2段目においては、1段目と同様のヒステリシストルク発生機構13,14に加えて、L2ヒス発生機構15が作動する。
【0095】
すなわち、1段目と同様の部材間に摩擦抵抗が発生するとともに、ウェーブスプリング60とハブフランジ21との間においても摩擦抵抗が発生する。具体的には、第2低剛性スプリング37bが圧縮されると、第2低剛性スプリング37bが圧縮された分だけウェーブスプリング60がハブフランジ21に対して回転し、両部材60,21間に摩擦抵抗が発生する。したがって、2段目においては、1段目と同様のヒステリシストルクH+hLに加えて、ウェーブスプリング60とハブフランジ21との間の摩擦抵抗によるヒステリシストルクhL2が発生する。
【0096】
<3段目>
伝達トルク又はトルク変動がさらに大きくなると、第1及び第2低剛性スプリング37a,37bがさらに圧縮され、スプラインハブ4に対して入力側回転部材20がさらに回転する。すると、ハブフランジ21の歯21cとスプラインハブ4の歯4cとが当接し、ハブフランジ21とスプラインハブ4とは一体に回転することになる。この状態では、第1及び第2低剛性スプリング37a,37bは先の状態以上に圧縮されることはなく、高剛性スプリング22のうちの自由長の長い第1高剛性スプリング22aの圧縮が開始される。第1高剛性スプリング22aは第1及び第2低剛性スプリング37a,37bよりも剛性が高いので、2段目よりもさらに高い3段目の捩り剛性が得られる。
【0097】
3段目においては、第1高剛性スプリング22aが圧縮されるので、入力側回転部材20とハブフランジ21(及びスプラインハブ4)との間で相対回転が発生する。一方で、リティニングプレート25と第3摩擦ワッシャ53とは一体回転し、ハブフランジ21とサブプレート34とは一体回転する。したがって、この3段目では、L-Hヒス発生機構13及びHヒス発生機構16が作動する。
【0098】
すなわち、Hヒス発生機構16では、第3摩擦ワッシャ53に固定された第2摩擦材62とハブフランジ21との間で摩擦抵抗が発生する。また、サブプレート34に固定された第1摩擦材61とクラッチプレート24との間で摩擦抵抗が発生する。これらの摩擦抵抗によって、ヒステリシストルクhHが発生する。また、ここでは、L-Hヒス発生機構13によってヒステリシストルクが発生するので、合計でヒステリシストルクH+hHが発生する。
【0099】
ここで、この3段目では、サブプレート34及びスプリングホルダ35と、ドライブプレート36と、は相対回転せず、これらの部材の間では摩擦抵抗は発生しない。すなわち、Lヒス発生機構14及びL2ヒス発生機構15は作動しない。
【0100】
<4段目>
伝達トルク又はトルク変動がさらに大きくなると、第1高剛性スプリング22aが圧縮されつつ、さらに自由長の短い第2高剛性スプリング22bも圧縮され始める。第1高剛性スプリング22aと第2高剛性スプリング22bとは並列に配置されているので、第2高剛性スプリング22bが圧縮され始めると、第1高剛性スプリング22aのみが圧縮されている場合(3段目)に比較して捩り剛性は高くなる。すなわち、捩り特性の4段目に移行する。
【0101】
この4段目において、相対回転する部材は3段目と同様であり、L-Hヒス発生機構13及びHヒス発生機構16が作動し、ヒステリシストルクH+hHが得られる。
【0102】
<ストッパ機構17の作動>
そして、さらに伝達トルク又はトルク変動が大きくなると、クラッチプレート24及びリティニングプレート25とハブフランジ21との相対回転角度が大きくなる。すると、ストップピン26がストッパ用切欠21dの側面に当接し、クラッチプレート24及びリティニングプレート25とハブフランジ21との相対回転が停止する。
【0103】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0104】
(a)前記実施形態では、凸状当接面と凹状当接面とが径方向の中央部で接触し、内周端部及び外周端部で離れるようにしたが、内周端部及び外周端部のうちの一方のみが離れるようにしてもよい。
【0105】
(b)前記実施形態では、各当接面を球面の一部によって形成したが、ミスアライメントが吸収できれば、他の曲面であってもよい。
【0106】
(c)前記実施形態では、4段の捩り特性を有するクラッチディスク組立体に本発明を適用したが、捩じり特性の段数は限定されない。ダンパ装置を有するすべての動力伝達装置に本発明を同様に適用することができる。
【0107】
(d)各ヒステリシストルク発生機構で発生するヒステリシストルクの大きさは限定されない。求められる捩じり特性に応じてヒステリシストルクの大きさを適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 クラッチディスク組立体
3 ダンパ機構
4 スプラインハブ(出力側回転部材)
4d 係合凸部
4e 凸状当接面
22 高剛性スプリング
24 クラッチプレート(入力側回転部材)
25 リティニングプレート(入力側回転部材)
51 第1摩擦ワッシャ(ブッシュ)
51a 摩擦面
51b 凹状当接面
51c 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12