IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディアドラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

<>
  • 特許-靴用ミッドソール 図1
  • 特許-靴用ミッドソール 図2
  • 特許-靴用ミッドソール 図3
  • 特許-靴用ミッドソール 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】靴用ミッドソール
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20231114BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A43B13/14 B
A43B13/12 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019523169
(86)(22)【出願日】2017-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2017066736
(87)【国際公開番号】W WO2018011030
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】102016000073012
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519012655
【氏名又は名称】ディアドラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】DIADORA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・マゾン
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ・ポレガート・モレッティ
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】五十嵐 康弘
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特表平5-503451(JP,A)
【文献】特表2009-537185(JP,A)
【文献】特表平8-506610(JP,A)
【文献】米国特許第4521979(US,A)
【文献】国際公開第2015/097015(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201039775(CN,Y)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0045439(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B13/14
A43B13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴用ミッドソール(10)であって、
本体(11)を備え、この本体には、トレッドに接合するための下部(12)と、インソールを支持するための上部(13)とがあり、
上記上部(13)は、この上部(13)の底面(15)から上記本体(11)の外側へ向かって突出する複数の弾性圧縮可能な突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)を含み、
各突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)は、段付き錐台状の隆起部分(18)で構成され、
各突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)は、他の突起部の他の端面(17)と共に、解剖学的形状を有するインソールを載置するための外面(20)を画定するように、平坦な端面(17)を有し、
各突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)は、ミッドソール(10)の全領域に設けられており、各突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)の高さはミッドソール(10)の全領域内で、ミッドソール(10)の底面(15)の解剖学的形状従って、踵領域、くびれ領域、中足骨領域で変化している
ことを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項2】
請求項1に記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記弾性圧縮可能な突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)のそれぞれは、上記本体(11)の外側に向かって開いているブラインドキャビティ(16)を有することを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記本体(11)は足の裏を囲む輪郭をしていることを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項4】
請求項2に記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記ブラインドキャビティ(16)は、このブラインドキャビティが形成されている上記突起部(14、14a、14b、14c、14d、14e)の錐台状の輪郭と同軸であることを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記底面(15)は足底形状であることを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記ミッドソールは、インソールを収容するための外周縁部(21)によって囲まれていることを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記ミッドソールは単一片で提供されていることを特徴とする靴用ミッドソール。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の靴用ミッドソールにおいて、
上記ミッドソールは、靴の使用中に元の形状に戻るのを容易にするために、弾性特性を有する材料を有する単一片で提供され、(0.15~1.20)g/cmの間に含まれる密度、および(15~60)ショアAの間に含まれる硬度を有し、上記材料は、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴム、天然ゴム(NR)、ゴムおよびエチレンビニルアセテート(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、並びに、ポリオール-イソシアネートの二成分発泡ポリウレタン(EP)からなるグループから選択されていることを特徴とする靴用ミッドソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴用ミッドソールに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、通常は厚さが厚く、弾性的で柔軟な材料で作られている靴用のミッドソールを提供することが知られている。それは、歩行中または走行中に想定される形状の関数として解剖学的に足に一致するため、そしてまた衝撃吸収材として作用するためである。
【0003】
実際、ミッドソールは、地面に対する足の衝撃領域の過剰な負荷を適切に減らすことができ、かつ、通常の踵-つま先(heel-toe)ストライドの間に受けたエネルギの一部を弾性的に戻すことができなければならず、同時に、筋肉骨格装置の損傷に対する筋肉のストレスと負荷を減らすことができなければならない。
【0004】
今日では、そのようなニーズを満たすために、ミッドソールが使用されている。ミッドソールの主な機能は、通常の踵-つま先ストライド時の衝撃の吸収、踵からつま先へ荷重を伝達するための弾性降伏、およびスラスト相に対する柔軟性である。
【0005】
したがって、発泡ポリウレタン(EP)またはエチレンビニルアセテート(EVA)で作られた靴のミッドソールを提供することが知られている。それは、ミッドソールの約90%を占め、踵からつま先までのミッドソールの全長にわたる単一の剛性レベルによって特徴づけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用された既知の技術に見いだされる欠点は、EVAまたはEPから作られたミッドソールがユーザの足の裏の形状にゆっくりと順応し、したがって、使用中に、適切な解剖学的順応を保証することができず、靴をかなり不快にすることにある。
【0007】
この欠点は、過剰な回内(overpronation)または過度の回外(excessive supination)を患っているユーザにとっては、もっと感じられる。
【0008】
回内はランニングの通常の部分であり、衝撃を吸収するために、歩行中またはランニング中に足が内向きに回転するという自然な傾向からなる。或る人々は、足が地面にぶつかった後も続く過度の回転(過剰な回内)、または、足の不十分な回転(過度の回外)を有する。どちらもランニングの仕方に影響を及ぼし、怪我のリスクを高め、足と膝の両方に腱炎、足底筋膜炎、その他の筋肉の炎症を起こす。
【0009】
これらの欠点を克服することを模索するために、例えばミッドソールの内側壁で土踏まず(plantar arch)のところに、より厚いまたはより薄い厚さの鉛直壁の形態にある剛性支持要素を挿入することが知られている。
【0010】
そのような剛性要素は不快で不便である。その理由は、それらは足にフィットするように三次元的かつ解剖学的に形成されていないので、それらは足の裏の形状に順応しないからである。
【0011】
従来のミッドソールは、しばしば、付加的な材料(その機能はミッドソールを軽くし、緩衝することである。)を使用することによって、くびれ部で補強されている。空気またはゲルまたは同様の材料を含む、踵領域に配置されたパッドの使用が知られている。それは、衝撃吸収を高め、地面との衝突エネルギを弾性的に吸収しながら、変形するようになっている。
【0012】
そのような従来の解決法の欠点は、使用中に繰り返し圧縮が行われた結果、やがてミッドソールは衝撃吸収特性とスラスト相の弾性復帰を失うという事実のせいで、衝撃吸収の損失と、その結果としての弾性の損失からなる。これは、それが作られる主要材料の特性と、スポーツ活動中に生じる繰り返しの圧縮を受けると容易に収縮して破断し得るパッドの使用との両方に起因し得る。
【0013】
そこで、この発明の目的は、従来のミッドソールの上述の欠点を克服することができる
靴用ミッドソールを提供することにある。
【0014】
特に、本発明の目的は、従来のミッドソールと比較して緩衝性およびスラスト性について改善された特性を提供するミッドソールを開発することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、緩衝能力とスラスト能力とが経時的に維持されることを確実にするミッドソールを得ることにある。
【0016】
本発明の他の目的は、過剰な回内または過度の回外の問題を抱える人のためを含んで、適切なレベルの解剖学的順応が達成されることを確実にするミッドソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的、および、以下により明確になるであろう他の目的は、請求項1に記載の靴用ミッドソールによって達成される。
すなわち、本発明の靴用ミッドソールは、
本体を備え、この本体には、トレッドに接合するための下部と、インソールを支持するための上部とがあり、
上記上部は、この上部の底面から上記本体の外側へ向かって突出する複数の弾性圧縮可能な突起部を含み、
各突起部は、段付き錐台状の隆起部分で構成され、
各突起部は、他の突起部の他の端面と共に、解剖学的形状を有するインソールを載置するための外面を画定するように、平坦な端面を有し、
各突起部は、ミッドソールの全領域に設けられており、各突起部の高さはミッドソールの全領域内で、ミッドソールの底面の解剖学的形状従って、踵領域、くびれ領域、中足骨領域で変化している
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面において非限定的な例として示されている、本発明の特定の、しかし排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
図1】本発明によるミッドソールを上方から見た図である。
図2図1の線II-IIに沿った側断面図の一部を示す図である。
図3図1の線II-IIに沿った側断面図の他の部分を示す図である。
図4図3の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照すると、本発明による靴のミッドソールは全体として参照番号10で示されている。
【0020】
ミッドソール10は本体11を備え、この本体11には、トレッド(靴底)に接合するための下部12と、インソール(中敷)を支持するための上部13とがある。
【0021】
本発明によるミッドソール10の特徴は、上部13が、上部13の底面15から本体11の外側に向かって突出している、複数の弾性的に圧縮可能な突起部14、14a、14b、14c、14d、14eを含むという事実にある。
【0022】
この例示的な実施形態では、弾性的に圧縮可能な突起部14、14a、14b、14c、14d、14eのそれぞれは、本体11の外側に向かって開いているブラインドキャビティ16を有する。
【0023】
したがって、そのような弾性的に圧縮可能な突起部は、中実に、すなわちブラインドキャビティ無しに、提供され得ることが理解されるべきである。
【0024】
本体11は足の裏を囲む輪郭をしている。
【0025】
各突起部14、14a、14b、14c、14dおよび14eは、この例示的な実施形態では、段付き錐台状の隆起部分18によって構成されている。図4の詳細に明らかに見られるように、そのような段の数は、それらが突出する底面15に対する突起部14、14a、14b、14c、14d、14eの高さと共に変化する。
【0026】
突起部14、14、14a、14b、14c、14d、14eは、例えば円筒形などの他の形状を有することもできることが理解されるべきである。
【0027】
突起部14、14、14a、14b、14c、14d、14eは、それらが配置される領域に従って、突起ごとに異なる形状を有することができることが理解されるべきである。
【0028】
ブラインドキャビティ16という用語は、外側の開口に関して他端が閉じている非貫通キャビティを意味する。
【0029】
ブラインドキャビティ16は、このブラインドキャビティが形成されている突起部14、14a、14b、14c、14d、14eの錐台状の輪郭と同軸である。
【0030】
ブラインドキャビティ16は、例えば円筒形である。
【0031】
底面15は足底形状である。
【0032】
各突起部は、他の突起部の他の端面17と共に、インソールを載置するための外面(図2および図3に点線で示され、参照番号20で示されている。解剖学的形状をしている。)を画定するように平坦な端面17を有する。
【0033】
各突起部14、14a、14b、14c、14d、14eの高さは、ミッドソール10(突起部がその一部である)の全領域内で、底面15の解剖学的形状従って変化している。


【0034】
例えば、踵領域の突起部14a、14b、14cは、くびれ領域の突起部14dよりも高い。
【0035】
同様に、中足骨領域の突起部14eは、くびれ領域の突起部14dよりも高いが、踵領域の突起部14a、14bおよび14cよりも低い。
【0036】
より低いくびれ領域の突起部14dは、例えば円筒形であり得る。
【0037】
ミッドソール10は、インソールを収容するための外周縁部21によって囲まれている。
【0038】
靴の使用中に元の形状に戻るのを容易にするために、ミッドソール10は、弾性特性を有する材料を使用して単一片で提供され、好ましくは(0.15~1.20)g/cmの間に含まれる密度、および好ましくは(15~60)ショアAの間に含まれる硬度を有する。例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)ゴム、NRゴム(天然ゴム)、ゴムおよびEVA(エチレンビニルアセテート)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)および二成分(ポリオール-イソシアネート)発泡ポリウレタンEPなどである。
【0039】
突起部14、14a、14b、14c、14d、14eの特有の段付き錐台状は、段部が最も外側の段部から始まって対応するブラインドキャビティ16内へ次第に潰れることを可能にし、したがって衝撃を緩和する。これとともに、段付き形状は、突起部が元の形状構造(衝撃/緩衝および弾性降伏/推進の別のサイクルに備えた)に戻されるまで、推進エネルギを戻すことによって、弾性降伏を提供することを可能にしている。
【0040】
軸方向のキャビティ16は、ミッドソール10の軽量化に寄与するという利点も有する。
【0041】
突起部14、14a、14b、14c、14d、14eのそれぞれの配置およびサイズ、ならびに底面15へのそれらの集中は、所望の緩衝機能、弾性降伏および所望の推進力の関数として定義される。これは、使用者の足の解剖学的形状構造および使用者によって行われる活動の種類と相関している。
【0042】
図面において、本発明によるミッドソール10は、本発明の一部ではないと理解されるべきであるトレッド25を備えているように示されている。
【0043】
かくして、本発明は、意図された狙いおよび目的である、ユーザの動き及び足の形状構造に迅速に順応でき、同時に優れた緩衝性とスラスト性を有する靴用ミッドソールを完全に達成するということが、判明した。
【0044】
さらに、本発明では、緩衝能力とスラスト能力とが経時的に維持されること、また、過剰な回内または過度の回外の問題を抱えているユーザにとっても、適切なレベルの解剖学的順応が達成されることを確実にするミッドソールが、考え出された。
【0045】
本発明の個々の構成要素の、使用される材料ならびに寸法は、特定の要求に従ってより適切であり得る。
【0046】
有利、便利などとして上記に示された特徴は、欠落しているか、または、同等の特性に置き換えられてもよい。
【0047】
本出願が優先権を主張するイタリア国特許出願第102016000073012号(UA2016A005146)における開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
請求項に記載されている技術的特徴の後に参照符号が続く場合、それらの参照符号は、請求項の了解度を高める目的のみのために含まれており、したがって、そのような参照符号は、例としてそのような参照符号によって識別された各要素の解釈において、いかなる限定的な影響も及ぼさない。
図1
図2
図3
図4