(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】印字装置及び印字設備
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231114BHJP
B41J 3/413 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J3/413
(21)【出願番号】P 2020004322
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000185374
【氏名又は名称】小池酸素工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕行
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】大木 繁
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195891(JP,A)
【文献】特開2007-302000(JP,A)
【文献】特開2000-343458(JP,A)
【文献】特開2019-198865(JP,A)
【文献】特開2006-263971(JP,A)
【文献】特開2011-183763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 3/413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアによって搬送されている金属加工に用いられる板状の被印字材の下面に印字するための印字装置であって、
搬送方向に離隔させた離隔部を有するコンベアと、
前記コンベアの離隔部に該コンベアの搬送面よりも下方に且つ該コンベアを横断する方向に設置されたガーターと、
分割可能に構成された複数の横行部材を連結して構成され前記ガーターに搭載され
て前記コンベアを横断する方向に横行可能に構成された横行キャリッジと、
前記横行キャリッジ
を構成する複数の横行部材の夫々に搭載され前記コンベアによる搬送方向に移動可能に構成された走行キャッリッジと、
前記走行キャリッジに搭載されると共に昇降可能に構成され前記コンベアによって搬送される被印字材の下面に対して印字する
一又は複数の印字ヘッドと、
を有することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
金属加工に用いられる板状の被印字材を搬送すると共に搬送方向に離隔させた離隔部を有するコンベアと、
前記コンベアの離隔部に該コンベアの搬送面よりも下方に且つ該コンベアを横断する方向に設置されたガーターと、
分割可能に構成された複数の横行部材を連結して構成され前記ガーターに搭載され
て前記コンベアを横断する方向に横行可能に構成された横行キャリッジと、前記横行キャリッジ
を構成する複数の横行部材の夫々に搭載され前記コンベアによる搬送方向に移動可能に構成された走行キャッリッジと、前記走行キャリッジに搭載されると共に昇降可能に構成され前記コンベアによって搬送される被印字材の下面に対して印字する
一又は複数の印字ヘッドと、を有する印字装置と、
前記印字装置よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置されて
コンベアによって搬送される被印字材の表面と接触して該被印字材の移動に伴って回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出する搬送速度検出装置と、
予め印字すべき被印字材の板厚を含む被印字材データ及び該被印字材に対する印字データを記憶し、前記記憶した印字データに基づいて前記印字装置を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする印字設備。
【請求項3】
前記印字装置よりもコンベアによる搬送方向上流側に、被印字材の長さ方向の端部を検出する長さ方向端部検出部材と、該長さ方向端部検出部材よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部を検出する幅方向端部検出部材と、を有し、前記長さ方向端部検出部材による被印字材の長さ方向の端部の検出と前記幅方向端部検出部材による被印字材の幅方向の端部の検出を同期させることで被印字材の傾きを検出する傾き検出部が配置されており、該傾き検出部によって検出した被印字材の傾きに応じて
前記制御装置では記憶した印字データの座標を変換して前記印字装置を制御するように構成したことを特徴とする請求項2に記載した印字設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアによって搬送されている金属加工に用いられる板状の被印字材の下面に対し文字や数字或いは記号又は線を含む図形等を印字するための印字装置と、この印字装置を用いた印字設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
造船業や鉄構業或いはシヤリング業では、鋼板の表面に切断や溶接に関する情報となる文字や数字或いは線などを印字(又はマーキング)することが行われている。鋼板に印字する場合、該鋼板を作業領域に停止させておき、印字ヘッドを二次元的に移動させつつ、予め設定された文字や数字或いは線などを印字するのが一般的である。このような印字を行うための印字装置は、鋼板を載置する定盤と、定盤に沿って走行する台車と、台車に搭載され定盤を横断する方向に横行するキャリッジと、キャリッジに搭載された印字ヘッドを有して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、特許文献2に記載された発明は、搬送装置によって搬送されている板材に対してマーキングを行えるようにした罫書装置に関するものである。この罫書装置は、搬送装置によって搬送される板材を検出する、板厚検出センサ、板耳検出センサと板面高さ検出センサ、及び板材にマーキングするドットマーキングヘッドを有して構成されている。ドットマーキングヘッドは、移動中の板材の全幅にわたって同時にマーキングができるように、マーキング装置の下面の全面に搬送装置を横断する方向に配置されている。
【0004】
そして、板厚検出センサによって検出した板厚に対応させてドットマーキングヘッドを昇降させて最適な高さを保持し、板耳検出センサによって検出した板耳の位置に対応させてドットマーキングヘッドを搬送装置を横断する方向に移動させ、この状態で板材に対するマーキングを実行している。特に、板面高さ検出センサはドットマーキングヘッドと同様にマーキング装置の下面に配置されており、板材に対するマーキングの直前で該板材の局部的変化を検出してこの変化に対応させるようにマーキング装置を追従させている。
【0005】
特許文献2には、搬送装置の上流側には、ショッププライマー塗装乾燥機が配置された構成が記載されている。このため、板材に対するショッププライマーの塗装、乾燥、及び乾燥後のマーキングを一連の作業として行うことが可能となる。従って、マーキングのための特別な作業スペースや板材の運搬設備などが不要となり、合理的な作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4574110号公報
【文献】特許第2736604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
板材が構造部材であるような場合、この板材の両面に他の部材が溶接を含む固定手段で取り付けられるのが一般的である。このため、最近では板材の上面と下面に異なる文字や数字或いは線などを印字するこが要求されるようになってきている。
【0008】
特許文献1に記載された発明は、鋼板の上面に印字することを目的としており、鋼板の下面に印字し得るように構成されたものではない、また、特許文献2に記載された発明も板材の上面にマーキングすることを目的としており、板材の下面にマーキングし得るように構成されたものではない。このため、特許文献1、2に記載された装置によって上下両面に印字するには板材を反転させる必要があり、大掛かりな反転装置が必要になるという問題がある。
【0009】
コンベアによって搬送されている板材の下面に印字する場合、下から上に向けてインク等の印字塗料を噴射しつつ板材と同期して搬送方向に移動する必要があるため、印字装置を設置する部位にはコンベアに充分な隙間を設けておくことが必要となる。そして、この隙間を被印字材が円滑に通過するためには、例えば被印字材が隙間を通過する間この被印字材を保持する設備のような補助設備を設けることも必要となり、大掛かりとなる。
【0010】
このため、隙間の小さい既存のコンベアであっても、大掛かりな設備を設置することなく被印字材の下面に印字することができる印字装置の開発が要求されている。
【0011】
本発明の目的は、狭い隙間であっても被印字材の下面に印字するのに適した印字装置と、この印字装置を用いた印字設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る印字装置は、コンベアによって搬送されている金属加工に用いられる板状の被印字材の下面に印字するための印字装置であって、搬送方向に離隔させた離隔部を有するコンベアと、前記コンベアの離隔部に該コンベアの搬送面よりも下方に且つ該コンベアを横断する方向に設置されたガーターと、前記ガーターに搭載されて前記コンベアを横断する方向に横行可能に構成された横行キャリッジと、前記横行キャリッジを構成する複数の横行部材の夫々に搭載され前記コンベアによる搬送方向に移動可能に構成された走行キャッリッジと、前記走行キャリッジに搭載されると共に昇降可能に構成され前記コンベアによって搬送される被印字材の下面に対して印字する一又は複数の印字ヘッドと、を有するものである。
【0013】
上記印字装置に於いて、前記横行キャリッジは分割可能に構成された複数の横行部材を連結して構成されると共に、夫々の横行部材には一又は複数の印字ヘッドが搭載されている。
【0014】
また、本発明に係る印字設備は、金属加工に用いられる板状の被印字材を搬送すると共に搬送方向に離隔させた離隔部を有するコンベアと、前記コンベアの離隔部に該コンベアの搬送面よりも下方に且つ該コンベアを横断する方向に設置されたガーターと、分割可能に構成された複数の横行部材を連結して構成され前記ガーターに搭載されて前記コンベアを横断する方向に横行可能に構成された横行キャリッジと、前記横行キャリッジを構成する複数の横行部材の夫々に搭載され前記コンベアによる搬送方向に移動可能に構成された走行キャッリッジと、前記走行キャリッジに搭載されると共に昇降可能に構成され前記コンベアによって搬送される被印字材の下面に対して印字する一又は複数の印字ヘッドと、を有する印字装置と、
前記印字装置よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置されて 被印字材の搬送速度を検出する搬送速度検出装置と、
予め印字すべき被印字材の板厚を含む被印字材データ及び該被印字材に対する印字データを記憶し、前記記憶した印字データに基づいて前記印字装置を制御する制御装置と、
を有するものである。
【0015】
上記印字設備に於いて、印字装置よりもコンベアによる搬送方向上流側に、被印字材の長さ方向の端部を検出する長さ方向端部検出部材と、該長さ方向端部検出部材よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部を検出する幅方向端部検出部材と、を有し、前記長さ方向端部検出部材による被印字材の長さ方向の端部の検出と前記幅方向端部検出部材による被印字材の幅方向の端部の検出を同期させることで被印字材の傾きを検出する傾き検出部が配置されており、該傾き検出部によって検出した被印字材の傾きに応じて前記制御装置では記憶した印字データの座標を変換して前記印字装置を制御するように構成することが好ましい。
【0016】
特に、搬送速度検出装置は、コンベアによって搬送される被印字材の表面と接触して該被印字材の移動に伴って回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出している。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る印字装置では、搬送方向に離隔させた離隔部が狭い隙間である既存のコンベアであっても、該コンベアによって搬送されている金属加工に用いられる板状の被印字材(例えば鋼板や銅板、アルミニウム板等)の下面に文字や数字或いは記号又は線を含む図形などを正確に印字することができる。
【0018】
即ち、コンベアを横断する方向に横行可能に構成された横行キャリッジに、搬送方向に移動可能に構成されると共に昇降可能に構成された複数の印字ヘッドを搭載したので、個々の印字ヘッドの搬送方向への移動距離を小さくすることができる。このため、コンベアに於ける離隔部(隙間)の寸法が小さくとも、コンベアによって搬送される被印字材の下面に対して印字することができる。
【0019】
また、横行キャリッジが分割可能に構成された複数の横行部材を連結して構成されると共に、夫々の横行部材には一又は複数の印字ヘッドが搭載されている。このため、個々の印字ヘッドが印字すべきコンベアを横断する方向の寸法(横行寸法)を小さくすることができる。従って、コンベアの搬送速度、被印字材の幅寸法などの条件に対応させて印字ヘッドの数を設定することで、コンベアの隙間が小さくとも確実に印字することができる。また、印字ヘッドのメンテナンスを行う際には、横行キャリッジを分割してコンベアの両側に退避させることができ、コンベアに対する進入及び退避に要する移動時間を短くすることができる。
【0020】
また、本発明に係る印字設備では、印字ヘッドが、横行キャリッジに搭載されてコンベアによる搬送方向と交差する方向に横行すると共に、搬送方向に移動可能に且つ昇降可能に構成されている。このため、被印字材に対する印字を実行する過程で、検出された被印字材の両端部分の高さや厚さ方向の歪に追従することができる。
【0021】
また、傾き検出部が、長さ方向端部検出部材による被印字材の下流側の端部を検出するのと同期して幅方向の端部を検出するので、確実に被印字材の傾きを検出することができる。
【0022】
また、搬送速度検出装置が、被印字材の表面と接触して該被印字材の移動に伴って回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出するので、検出した搬送速度に応じて印字ヘッドの移動速度を制御して印字を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例に係る印字装置の構成を説明する模式正面図である。
【
図2】本実施例に係る印字装置の構成を説明する模式側面図である。
【
図3】本実施例に係る印字設備の構成を説明する模式平面図である。
【
図5】厚さ検出部の構成を説明する模式正面図である。
【
図6】両端側高さ検出部の構成を説明する模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る印字装置は、コンベアによって搬送されている金属加工に用いられる板状の被印字材、例えば鋼板や銅板、アルミニウム板(以下単に、「被印字材」又は「鋼板」という)の下面に文字や数字或いは記号又は線を含む図形などを印字するための装置である。
【0025】
特に、印字装置は、既に設置されているローラコンベアに於けるローラ間、上流側ベルトコンベアと下流側ベルトコンベアの間のように、隣接するローラやコンベアベルトの離隔部分の隙間を利用して印字し得るように構成されている。そして、稼働中の除錆ラインや塗装ラインに対し、大規模な改造を必要とせずに組み込むことを実現したものである。
【0026】
本発明に於いて、コンベアは被印字材を搬送するものである。このため、コンベアとしては、被印字材を載置して搬送する機能を有するものであれば構造を限定するものではない。このようなコンベアとしては、ローラコンベアやスラットコンベア或いはベルトコンベアなどがあるが、被印字材の重量や反りなどを考慮するとローラコンベアであることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る印字設備は、上記印字装置を用い、被印字材の搬送方向に対する傾き、面外方向への反りや歪などを検出し、検出した傾き、反りや歪に対応させて印字ヘッドを作動させ、或いは印字することなく通過させるようにしたものである。
【0028】
先ず、本実施例に係る印字装置について
図1~
図3を用いて説明する。本実施例では、コンベアとして多数のローラを並列させると共に各ローラを駆動するローラコンベアを用い、被印字材として鋼板を用いている。
【0029】
図に示す印字装置Aは、コンベア11に於ける隣接するローラ11aの間に構成された離隔部12に配置されている。そして、コンベア11によって矢印X方向(以下「下流方向」又は「搬送方向」ともいう)に搬送されている鋼板13の下面の予め設定された位置に、予め設定された文字や数字或いは記号又は線を含む図形等を印字し得るように構成されている。
【0030】
離隔部12に於けるローラ11aの間隔、即ち離隔部12の搬送方向の寸法は限定するものではない。しかし、本発明に係る印字装置Aは既存のコンベア11に適用することを目的としているため、既存のコンベア11の幅寸法(特に印字すべき鋼板13の最大幅寸法)、搬送速度、印字装置Aに於ける印字速度などを含む諸条件に対応させて、印字ヘッドの数を適宜設定している。
【0031】
また、鋼板13の表面の状態を限定するものではなく、黒皮の状態や除錆した状態或いは塗装した状態であっても良い。本実施例では、鋼板13として表面に防錆塗装が施されたものを対象としている。即ち、コンベア11の搬送方向上流側にショットブラスト装置と塗装装置が設置されており、鋼板13がこれらの装置を通過する過程で表面が除錆され、除錆された表面に防錆塗料が塗装されている。このため、鋼板13はショットブラスト処理、塗装処理に適した速度で搬送されている。
【0032】
印字装置Aは、移動可能に構成された複数の印字ヘッド1(本実施例では4台)を有している。そして、これらの印字ヘッド1をコンベア11を横断する方向及び搬送方向に移動させつつ駆動することで、搬送されている鋼板13の下面の予め設定された位置に予め設定された文字や数字或いは記号又は線を含む図形など(以下「図形等」という)を印字することが可能である。
【0033】
印字装置Aは、コンベア11に構成された離隔部12の下方であって、該コンベア11を横断する方向に設置されたガーター2を有している。このガーター2には、コンベア11による搬送方向(矢印X方向)と交差する方向(Y方向)に横行可能に構成された横行キャリッジ3が搭載されている。また、ガーター2にはY方向に直線ガイド2aが配置されており、横行キャリッジ3は該直線ガイド2aに沿ってY方向に直線往復し得るように構成されている。
【0034】
本実施例に於いて、印字ヘッド1は表面に多数のノズルが形成されており、これらのノズルから選択的にインクを噴射することで鋼板13に対して印字を実行する。このため、ノズルにインクが詰まることがあり、特に印字ヘッド1が動作していないときにインクが詰まり易くなり、これを防止するために、継続的な清掃が必須となる。この清掃を行う場合、すべての印字ヘッド1をY方向に移動させてコンベア11から退避させる必要があり、コンベア11の側方に横行キャリッジ3を退避させるための領域が必要となる。
【0035】
横行キャリッジ3の長さ(Y方向の寸法)は、鋼板13の幅寸法に対応している。このため、鋼板13の幅寸法が小さい場合、横行キャリッジ3を退避させるのに必要な領域の長さは小さい。しかし、鋼板13の幅寸法が大きくなると、横行キャリッジ3の長さも大きくなり、コンベア11の側方に必要な退避領域の長さが大きくなり、工場のレイアウトに悪影響を及ぼす虞が生じる。この場合、横行キャリッジ3を二つに分割してコンベア11の両側に退避させることで、退避領域の長さを小さくすることが可能となる。
【0036】
また、鋼板13の幅寸法が小さい(たとえば印字許容幅寸法の半分以下)のときには、横行キャリッジ3を二つに分割した場合に、たとえば第1横行キャリッジ3aを稼働させて印字動作させて、第2横行キャリッジ3bをコンベア11から退避させることにより、横行キャリッジ3での無駄な動作を省くことが可能となる。
【0037】
上記の如く、横行キャリッジ3は、印字すべき鋼板13の幅寸法及びコンベア11が設置されている周辺環境に対応させて単体で構成するか、複数に分割して構成するか、を選択することが好ましい。本実施例では、横行キャリッジ3は第1横行キャリッジ3aと第2横行キャリッジ3bの2台に分割して構成されている。
【0038】
横行キャリッジ3を第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bによって構成した場合、鋼板13に対する印字を実行する際には、2台の横行キャリッジを連結し、この状態で第1横行モータ3cによってYa方向に横行させつつ、印字ヘッドを駆動する。また、印字ヘッド1の清掃を行う場合、第1横行キャリッジ3aと第2横行キャリッジ3bの連結を解除し、第1横行モータ3c、第2横行モータ3dによって夫々のキャリッジをYb方向、Ya方向に移動させてコンベア11の側方に退避させる。
【0039】
第1横行キャリッジ3aと第2横行キャリッジ3bを連結する構造は特に限定するものではなく、一般的に利用されるクランプ機構やねじ機構などであって良い。
【0040】
横行キャリッジ3にはX方向に移動可能に構成された複数(4台)の印字ヘッド1が搭載されている。複数の印字ヘッド1は、第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bが連結された横行キャリッジ3に対し、等しい間隔(ピッチ)を保持して配置されている。
【0041】
従って、印字ヘッド1の数は、鋼板13の最大幅、コンベア11による搬送速度、印字ヘッド1による印字速度、コンベア11に於ける離隔部12の寸法、などの数値から設定されている。そして、本実施例では、第1横行キャリッジ3aと第2横行キャリッジ3bに夫々2台の印字ヘッド1が搭載されている。
【0042】
横行キャリッジ3に対する複数の印字ヘッド1の配置位置は特に限定するものではない。しかし、鋼板13に対して印字を開始する際にY方向に余分な動きをしないことが好ましい。このため、複数の印字ヘッド1のうち、Y方向の何れかの端部に配置される印字ヘッド1を予め設定された最大幅の印字すべき鋼板13の幅方向の端部に対応する位置であって、搬送中に許容されるY方向のズレ寸法を考慮した位置に配置している。従って、横行キャリッジ3をY方向に対し印字ヘッド1の間隔分横行させることで、複数の印字ヘッド1によって鋼板13の下面を横断することが可能である。
【0043】
各第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bには、第1走行キャリッジ4a、第2走行キャリッジ4bが搭載されている。また、第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bにはX方向に直線ガイド3eが配置されており、夫々の直線ガイド3eに第1走行キャリッジ4a、第2走行キャリッジ4bが配置されている。そして、第1走行キャリッジ4aは走行モータ4cによって、第2走行キャリッジ4bは走行モータ4dによって駆動されて矢印Xa方向、Xb方向に往復走行し得るように構成されている。
【0044】
印字ヘッド1のX方向への移動方式は特に限定するものではなく、各印字ヘッド1が夫々自走し得るように構成されていても良い。本実施例では、第1走行キャリッジ4a、第2走行キャリッジ4bに夫々2台の印字ヘッド1を搭載している。
【0045】
各印字ヘッド1は、コンベア11の垂直方向(矢印Z方向、以下単に「垂直方向」ともいう)に昇降可能に構成されている。印字ヘッド1を昇降させる構造は特に限定するものではなく、各走行キャリッジ4a、4bにエアシリンダー、ねじ機構などを介して駆動されて昇降する昇降ブラケットを設け、この昇降ブラケットに印字ヘッド1を配置することが可能である。
【0046】
本実施例では、各走行キャリッジ4a、4bに配置した印字ヘッド1に対応する位置にエアシリンダーなどからなる昇降部材5を取り付けておき、この昇降部材5によって個々の印字ヘッド1を昇降させるように構成している。
【0047】
上記の如く構成された印字装置Aによる鋼板13の下面に対する印字動作について説明する。先ず、横行キャリッジ3を
図3に示すYb方向の初期位置に、各走行キャリッジ4a、4bを同図のXb方向の初期位置に、昇降部材5を印字ヘッド1を降下させた初期位置に夫々設定する。
【0048】
コンベア11によって搬送されている鋼板13が、該コンベア11の離隔部12に到達すると、昇降部材5によって印字ヘッド1を鋼板13の下面から距離(以下、便宜的に「高さ」という)が予め設定された寸法となるまで上昇させる。次いで、各走行キャリッジ4a、4b及び印字ヘッド1を横行キャリッジ3によって矢印Ya方向(以下「コンベア11の幅方向」ともいう)に横行させつつ、各走行キャリッジ4a、4bによって鋼板13の搬送速度に対応させて矢印Xa方向に移動させる。
【0049】
この結果、
図3に示すYb方向の端部に配置された印字ヘッド1は、初期位置6aから終点位置6bまで移動することとなる。従って、この移動過程で、予め設定された印字情報に従って印字ヘッド1を作動させることで、鋼板13に対する印字を行うことが可能である。
【0050】
次に本実施例に係る印字設備Bの構成について説明する。本実施例に係る印字設備Bは、前述の印字装置Aを用い、該印字装置Aの上流側に、鋼板13の傾きを検出する傾き検出部Cと、鋼板13の下流側端部13aの近傍で且つ幅方向両端部近傍13b1、13b2の高さを検出する両端側高さ検出部Dと、鋼板13の厚さ方向の歪、例えば反りなどを検出する歪検出部Eと、鋼板13の搬送速度を検出する搬送速度検出部Fと、を有して構成されている。
【0051】
傾き検出部Cは印字装置Aよりもコンベア11による搬送方向上流側に配置されており、搬送されている鋼板13の傾きを該鋼板13が印字装置Aに到達する以前に検出するものである。このため、傾き検出部Cは、鋼板13の長さ方向の下流側の端部13aを検出する長さ方向端部検出部材18と、該長さ方向端部検出部材18よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部となる幅方向の端面13cを検出する一対の幅方向端面検出部材19a、19bとを有している。
【0052】
長さ方向端部検出部材18、幅方向端面検出部材19a、19bによる鋼板13の検出機構は限定するものではなく、接触式センサや非接触式センサであっても良い。本実施例では、各検出部材として夫々非接触式のレーザセンサを用いている。
【0053】
長さ方向端部検出部材18はコンベア11の上方であってコンベア11により搬送されている鋼板13の上面に対して垂直に検出可能な位置に配置されている。また、一対の幅方向端面検出部材19a、19bはコンベア1の幅方向一方側であってコンベア11の搬送面よりも上方に且つ予め設定された距離離隔して該コンベア11の中央方向に向けて平行に配置されている。そして、長さ方向端部検出部材18による鋼板13の長さ方向の端部13aの検出と幅方向端面検出部材19a、19bによる鋼板13の幅方向の端面13cの検出を同期させることで、鋼板13の搬送方向に対する傾きを検出することが可能である。
【0054】
傾き検出部Cで検出した鋼板13の傾きに応じて、後述する制御部35では、予め記憶している鋼板13に対する印字データの座標を変換し、変換された印字データによって印字ヘッド1を駆動制御することが可能となる。
【0055】
印字装置Aよりもコンベア11による搬送方向上流側に、厚さ検出部材20が配置されており、コンベア11によって搬送されている鋼板13の厚さを該鋼板13が印字装置Aに到達する以前に検出し得るように構成されている。この厚さ検出部材20はレーザセンサによって構成されており、コンベア11の幅方向の略中央に垂直方向に配置されている。
【0056】
厚さ検出部材20で検出した鋼板13の厚さtに応じて、後述する制御部35では、予め記憶している鋼板13の厚さと検出した厚さtを比較する。そして、記憶している厚さと検出した厚さtが等しい場合、印字ヘッド1を鋼板13の下面からの距離が印字を実行するのに最適な高さとなるように上昇させる。また、検出した鋼板13の厚さtが予め記憶している厚さと異なるような場合、印字対象の鋼板ではないと判断して印字装置Aでは鋼板13に対して印字することなく搬送のみを行って通過させるように制御する。
【0057】
厚さ検出部材20による鋼板13の厚さtの検出タイミングは特に限定するものではないが、前述した傾き検出部Cに於ける長さ方向端部検出部材18による鋼板13の長さ方向の端部13aの検出と同期させることが好ましい。
【0058】
鋼板13に対して印字を実行する際に、鋼板13が幅、長さ方向にわたって平坦であれば、円滑な印字を実行することが可能である。しかし、鋼板13が全面にわたって平坦であることの保証はない。そして、鋼板13に幅方向の反りが生じているような場合、反り上がった鋼板13の端部では印字ヘッド1からの距離が大きくなり、良好な印字を実行し得なくなる虞が生じる。このため、両端側高さ検出部Dによって鋼板13の幅方向両端部近傍の高さを検出することで、該鋼板13の反りを検出し得るように構成されている。
【0059】
両端側高さ検出部Dは、印字装置Aよりもコンベア11による搬送方向上流側に配置され、搬送されている鋼板13の下流側の幅方向の両端部近傍の高さを該鋼板13が印字装置Aに到達する以前に検出するものである。そして、検出した鋼板13の幅方向の両端部近傍の高さhb1、hb2と、厚さ検出部材20で検出した鋼板13の厚さtとの差によって反り寸法を計算し、計算した反りの寸法に対応させて印字ヘッド1の高さを補正して印字を実行し得るように構成されている。
【0060】
両端側高さ検出部Dはコンベア11を横断する方向に移動可能に構成された一対の距離検出部材23a、23bを有しており、該一対の距離検出部材23a、23bによって鋼板13の幅方向両端部近傍13b1、13b2の表面との距離を検出することでこれらの高さを検出し得るように構成されている。鋼板13の幅方向の端部近傍とは、長さ方向の端部13aからの寸法及び幅方向の端面13cからの寸法を厳密に限定するものではなく、略端部の近傍であれば良い。
【0061】
このため、一対の距離検出部材23a、23bは、コンベア11によって搬送される鋼板13の幅方向の端部近傍に対向する位置まで移動し得るように構成されている。即ち、コンベア11の搬送方向に沿った両側であって且つ対向する位置に夫々スタンド24が設置されており、これらのスタンド24には、駆動モータ26a、26bによって駆動されてコンベア11を横断する方向に移動するアーム25a、25bが配置されている。そして夫々のアーム25a、25bの先端に距離検出部材23a、23bが取り付けられている。
【0062】
夫々の距離検出部材23a、23bは、厚さ検出部材20と同様にレーザセンサによって構成されており、コンベア11の垂直方向に該コンベア11による搬送面から予め設定された高さHに配置されている。そして、予め設定された高さHと鋼板13の幅方向の両端部近傍の表面を検出したときの距離との差から該近傍の高さhb1、hb2を検出し得るように構成されている。
【0063】
両端側高さ検出部Dは、単に鋼板13の幅方向の端部近傍のみの高さを検出するのみに限定するものではなく、アーム25a又はアーム25bをコンベア11を横断する方向に繰り出して鋼板13の幅方向に位置を変えて高さを検出し得るように構成することが好ましい。特に、鋼板13に対する印字の進行に伴う印字ヘッド1の横行位置と、鋼板13の搬送速度に関連つけて先行して鋼板13の高さを検出しておくことで、検出した高さに対応させて印字ヘッド1の高さを補正することが可能となる。
【0064】
歪検出部Eは印字装置Aよりも搬送方向上流側に配置され、鋼板13の幅方向の凹凸を検出することで厚さ方向の歪を検出するものである。即ち、前述したように鋼板13が全面にわたって平坦であることの保証はなく、幅方向及び、又は長さ方向に波打つような歪が生じていることがある。鋼板13に大きな歪が生じているような場合、この歪に対して印字ヘッド1が追従し得なくなる虞が生じたり、形成された印字の品質が低下してしまう虞が生じる。このため、鋼板13に大きな歪が生じていることを検出した場合、この鋼板13に対して、印字を中止して印字装置Aを通過させることが好ましい。
【0065】
歪検出部Eは、コンベア11を横断して設置されたフレーム28に予め設定された間隔を持って複数の距離検出部材29を配置して構成されている。距離検出部材29はレーザセンサを利用しており、コンベア11の垂直方向に互いに同じ高さHに設定されてフレーム28に取り付けられている。隣接する距離検出部材29どうしの間隔は特に限定するものではなく、予め設定された鋼板13の最大幅寸法や想定した歪に応じて適宜設定することが好ましい。
【0066】
鋼板13は予め設定された速度で駆動されるコンベア11によって搬送されている。しかし、鋼板13とコンベア11との間に滑りが生じる虞があり、コンベア11の駆動速度と鋼板13が実際に搬送されている速度とが一致しないことがある。この場合、鋼板13に対して実行された印字が目的の位置からずれることとなる。このため、鋼板13の実際の搬送速度を検出して、それに対応させて印字ヘッド1を作動させることが必要となる。
【0067】
搬送速度検出部Fは鋼板13の実際の搬送速度を検出するものであり、印字装置Aよりもコンベア11による搬送方向上流側であってコンベア11により搬送されている鋼板13を検出可能な位置に配置されている。搬送速度検出部Fは、搬送されている鋼板13の表面に接触して該鋼板13の搬送に伴って回転する回転体31と、フレーム28に支持されて該回転体31を鋼板13の表面に対して押圧する押圧部材32を有している。
【0068】
そして、回転体31の回転を図示しないロータリーエンコーダによって検出することで鋼板13の搬送速度を検出し得るように構成されている。特に、回転体31は押圧部材32によって略一定の力で鋼板13の表面に押圧されている。このため、回転体31と鋼板13の表面との間で滑りが生じる虞がなく、且つ鋼板13の長手方向に凹凸が生じているような場合でもこの凹凸に追従することが可能であり、鋼板13の実際の搬送速度を検出することが可能となる。
【0069】
本実施例では、回転体31は鋼板13の上面に接触することで、該鋼板13の搬送に伴って回転するように構成されている。しかし、回転体31が接触する表面は鋼板13の上面にのみ限定するものではなく、下面であっても側面であっても良い。
【0070】
また、本実施例では、搬送速度検出部Fは、印字装置Aよりもコンベア11による搬送方向上流側にのみに配置されているが、より着実で正確な実際の搬送速度を検出するのに、搬送速度検出部Fを当該搬送方向下流側にも追加して配置してもよい。
【0071】
制御部35は入力装置36から入力された印字データを記憶する印字データ記憶部35aと、印字設備Bを構成する印字装置A、傾き検出部C、厚さ検出部D、両端側高さ検出部E、歪検出部F、搬送速度検出Gの動作プログラムを記憶するプログラム記憶部35bと、比較判別演算部35cを有して構成されている。
【0072】
印字データ記憶部35aには、予め入力装置36から目的の鋼板13の板厚や幅寸法、長さ寸法などの仕様情報や印字すべき印字情報が入力され、仕様データ、印字データとして記憶されている。また、プログラム記憶部35bにはコンベア11の上流側から供給された鋼板13に対する印字装置A及び各部C~Fの動作プログラムが予め記憶されている。
【0073】
次に、上記の如く構成された印字設備Bにより鋼板13に対する印字の進行について説明する。
【0074】
コンベア11の上流側から鋼板13が供給され、該鋼板13の仕様情報がコンベア11の上流側に配置された例えばショットブラスト装置から制御部35に伝達され、或いは入力されると、鋼板13に設定された仕様データや印字データが記憶される。
【0075】
コンベア11によって搬送された鋼板13の長手方向下流側の端部13aが傾き検出部Cの長さ方向端部検出部材18によって検出されると、同時に、幅方向端面検出部材19a、19bによって鋼板13の幅方向の端面13cまでの距離が検出されて制御部35に送られる。制御部35では、夫々の幅方向端面検出部材19a、19bによって検出した端面13cまでの距離の差に基づいて鋼板13の傾きを算出し、この算出結果に基づいて記憶した印字データの座標を変換する。
【0076】
長さ方向端部検出部材18による鋼板13の長手方向の端部13aの検出と同時に、厚さ検出部材20によって鋼板13の表面までの距離を検出し、検出した距離hが制御部35に送られる。制御部35では、コンベア11から厚さ検出部材20の高さHと検出した距離hとから得た鋼板13の厚さtを予め記憶した鋼板13の仕様データと比較し、両者の差が許容範囲にあれば目的の鋼板であると判断する。
【0077】
供給された鋼板13が印字対象となる目的の鋼板であると判断した場合、搬送方向下流側に後続する両端側高さ検出部D、歪検出部E、搬送速度検出部F及び印字装置Aを夫々予め設定された動作プログラムに従って制御する。このとき、印字装置Aの昇降部材5には、印字ヘッド1を鋼板13の下面から離隔させるべき高さが指定される。
【0078】
また、鋼板13の厚さtが予め記憶した仕様データから逸脱している場合、供給された鋼板13は目的の鋼板ではないと判断し、印字対象ではないとして搬送方向下流側に後続する両端側高さ検出部D、歪検出部E、搬送速度検出部F及び印字装置Aを通過させる。
【0079】
コンベア11によって搬送されている鋼板13が印字対象である場合、制御部35からの指令に基づいて両端側高さ検出部Eの駆動モータ26a、26bが回転してアーム25a、25bを夫々コンベア11を横断する方向に繰り出す。アーム25a、25bの繰り出しによって、距離検出部材23a、23bを鋼板13の幅方向の端部13b1、13b2の近傍に対向させる。
【0080】
そして、各距離検出部材23a、23bによって鋼板13の幅方向の両端近傍の高さhb1、hb2を検出して制御部35に送る。制御部35では、距離検出部材23a、23bによって検出した鋼板13の幅方向の両端近傍の高さhb1、hb2と、厚さ検出部材20で検出した鋼板13の厚さtとを比較する。
【0081】
両者に差が生じている場合、この差が許容範囲内であれば、この差に基づいて印字装置Aの昇降部材5に対し印字ヘッド1の鋼板13の下面からの高さを補正する。また、両者の差が許容範囲を逸脱しているような場合、鋼板13に対して、印字を実行することが不可能と判断して後続する搬送速度検出部F及び印字装置Aを通過させる。
【0082】
コンベア11によって搬送されている印字対象となる鋼板13が歪検出部Eに到達すると、該歪検出部Eに配置された複数の距離検出部材29によって同時に鋼板13の表面までの距離が検出されて制御部35に送られる。制御部35では送られた各距離検出部材29からの距離どうしを比較することで、鋼板13の幅方向に於ける鋼板表面の歪、即ち鋼板13の凹凸の具合を検出する。そして、歪の具合が許容範囲内であれば、この歪に基づいて印字装置Aの昇降部材5に対し印字ヘッド1の鋼板13の表面からの高さの値を補正する。また、両者の差が許容範囲を逸脱しているような場合、鋼板13に対して、印字を実行することが不可能と判断して後続する搬送速度検出部F及び印字装置Aを通過させる。
【0083】
コンベア11によって搬送されている印字対象となる鋼板13が搬送速度検出部Fに到達すると、押圧部材32によって回転体31が鋼板13の表面に押圧され、該回転体31は鋼板13の搬送に伴って回転する。回転体31の回転は該回転体31に内蔵又は接続されたロータリーエンコーダによって検出されて制御部35に送られ、該制御部35で鋼板13の実際の搬送速度が検出される。そして、検出された実際の鋼板13の搬送速度に基づいて、印字装置Aの横行キャリッジ3の駆動モータ3c、各走行キャリッジ4a、4bの駆動モータ4c、4dの駆動が制御される。
【0084】
コンベア11による鋼板13の更なる搬送に伴って、該鋼板13の下流側の端部13aが印字装置Aが配置された離隔部12に到達すると、制御部35では、厚さ検出部材20で検出された鋼板13の厚さtに基づいて印字ヘッド1の鋼板13の下面からの高さを設定し、傾き検出部Cで検出した鋼板13の傾きに対応させて印字データの座標を変換し、更に、搬送速度検出部Fで検出された鋼板13の実際の搬送速度に基づいて横行キャリッジ3、各走行キャリッジ4a、4bを夫々駆動することで、鋼板13の下面に対して目的の印字を実行することが可能である。そして、両端側高さ検出部D、歪検出部Eで検出された高さの違いに基づいて印字ヘッド1の高さを補正することで、明瞭な印字を実行することが可能である。
【0085】
一連の印字作業が終了し、印字ヘッド1に対する清掃を行う場合、先ず、横行キャリッジ3を構成する第1横行キャリッジ3aと第2横行キャリッジ3bの連結を解除する。そして、第1横行モータ3c、第2横行モータ3dを駆動して、第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bを夫々コンベア11の側方に退避させる。
【0086】
第1横行キャリッジ3a、第2横行キャリッジ3bの退避により、各走行キャリッジ4a、4bに搭載された印字ヘッド1はコンベア11の側方に移動するため、この状態で各印字ヘッド1に対する清掃を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る印字装置及び印字設備はコンベアによって搬送される板状の被印字材の下面に対して印字する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0088】
A 印字装置
B 印字設備
C 傾き検出部
D 両端側高さ検出部
E 歪検出部
F 搬送速度検出部
1 印字ヘッド
2 ガーター
2a 直線ガイド
3 横行キャリッジ
3a 第1横行キャリッジ
3b 第2横行キャリッジ
3c 第1横行モータ
3d 第2横行モータ
3e 直線ガイド
4a 第1走行キャリッジ
4b 第2走行キャリッジ
4c、4d 走行モータ
5 昇降部材
11 コンベア
11a ローラ
12 離隔部
13 鋼板
13a 下流側端部
13c 端面
18 長さ方向端部検出部材
19a、19b 幅方向端面検出部材
20 厚さ検出部材
23a、23b 距離検出部材
24 スタンド
25a、25b アーム
26a、26b 駆動モータ
28 フレーム
29 距離検出部材
31 回転体
32 押圧部材
35 制御部
35a 印字データ記憶部
35b プログラム記憶部
35c 比較判別演算部
36 入力装置