(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ペン先、及び、該ペン先を備える液体塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 1/12 20060101AFI20231114BHJP
B43K 5/18 20060101ALI20231114BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20231114BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20231114BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B43K1/12 B
B43K5/18 100
B43K8/02 100
A45D34/04 530
A45D34/04 510D
A45D34/04 525A
B05C17/00
(21)【出願番号】P 2020010206
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000109440
【氏名又は名称】テイボー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】石塚 直子
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122566(JP,A)
【文献】特開2011-020443(JP,A)
【文献】特開2017-094526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/12
B43K 5/18
B43K 8/02
A45D 34/04
B05C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を長手方向に集束して樹脂バインダで接着後、所望の形状に成形したペン先、又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間の熱溶融により結着したペン先であって、
前記ペン先の横断面は、ペン先第1領域及びペン先第2領域を有し、前記ペン先第1領域の数と前記ペン先第2領域の数の合計は3以上であり、
前記ペン先第1領域の各外郭の少なくとも一部は、前記ペン先第2領域と接触かつ隣接して配置され、又は、前記ペン先第2領域の各外郭の少なくとも一部は、前記ペン先第1領域と接触かつ隣接して配置され、
前記ペン先第1領域の、液体が通過する繊維間の流路幅は、前記ペン先第2領域の、液体が通過する繊維間の流路幅より小さい、ペン先。
【請求項2】
前記ペン先第1領域の横断面の面積は、前記ペン先第2領域の横断面の面積に対し、1/9~9倍である、請求項1に記載のペン先。
【請求項3】
前記ペン先第1領域の繊維の単糸は、1.1dtx~7.7dtxであり、前記ペン先第2領域の繊維の単糸は、5.5dtx~22dtxである、請求項1に記載のペン先。
【請求項4】
前記繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、又は、アクリル繊維である、請求項1に記載のペン先。
【請求項5】
前記樹脂バインダはポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、又は、メラミン樹脂であり、前記液体は粒子を含む、請求項1に記載のペン先。
【請求項6】
請求項1~
5いずれか一項に記載のペン
先を備える、液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具や化粧用具等の液体塗布具に用いられるペン先、中継芯、及び、該ペン先又は中継芯を備える液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具や化粧用具の液体塗布具に使用される繊維製のペン先又は中継芯は、繊維を長手方向に集束して樹脂バインダで接着後、研削等で先端及び後端を所望の形状に成形したものである。又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間の熱溶融により結着したものである。
ここで、本発明のペン先は、後端部分から供給される液体を、先端部にて紙や皮膚等の被塗布物に筆記、塗布するものである。
また、中継芯は、収容された液体に該中継芯の後端部分を浸漬し、中継芯の毛細管力により該液体を塗布用ペン先に一定量供給するものである。
【0003】
繊維製のペン先や中継芯の従来品は、径が略同一の繊維からなり、液体が通過する繊維間の流路幅は、ペン先全体又は中継芯全体で略同一であった。
しかしながら、繊維の径が小さく液体が通過する繊維間の流路幅が小さいと、毛細管力や液体保持力は高まるものの、液体の組成によってはペン先内又は中継芯内において目詰まりを生じやすいという課題があった。特に、液体塗布具の液体にラメやパールの顔料等の粒子が含まれる場合、粒子は濾過効果によりペン先内又は中継芯内において目詰まりが顕著となり、かかる目詰まりにより粒子以外の液体の通過性も著しく低下するという課題があった。
一方、液体の通過性を向上させるために、繊維の径を大きくして液体が通過する繊維間の流路幅を大きくすると、毛細管力や液体保持力が弱められ、液体塗布具を上向きにすると液体や液体に含まれる粒子が液体収容部に戻る現象(ドレインバック)が発生し、液体塗布具を下向きにすると液漏れ(インキ落ち現象)が発生し、安定した塗布や保管ができないという課題があった。
【0004】
近年、顔料を用いたインキを円滑に塗布面に供給でき、かつ塗布具の倒立の際にインキ落ち現象の少ない、筆記体が開示された(特許文献1)。解決手段としては、筆記体を、その中央部に位置する繊維を外周部に位置する繊維の径より大きい径の繊維で構成する、というものである。
しかしながら、特許文献1で開示された筆記体の構成の場合、塗布初期においては顔料を用いたインキの流出は良好であるが、ペン先を上向きにして一定時間経過すると、繊維の径が小さく液体が通過する繊維間の流路幅が小さい外周部には顔料を含むインキが保持されているものの、繊維の径が大きく液体が通過する繊維間の流路幅が大きい中心部では顔料を含むインキが液体収容部に戻る現象(ドレインバック)が発生することが、発明者らの試験において確認されている。すなわち、通常の筆記部分である筆記体の先端部の中心部分では、ラメやパールの顔料等の粒子や液体がスムーズに流出せず、ラメやパールの顔料等の粒子や液体の一部が保持された外周部に筆記角度を傾斜させて筆記しなければならないという課題があった。
さらには、ペン先においては、通常の塗布(筆記)時に被塗布物の面と接触する中心部が太い繊維で構成されているため、筆記時には筆記抵抗が大きくなり、ガサガサ感が発生する。このため、筆感が悪く、紙面や皮膚面を傷つけやすく、被塗布物が皮膚の場合は痛みが発生するという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、液体の通過性と、毛細管力(液体保持力)の両方を備えることにより、塗布(筆記)時に被塗布物の面と接触するペン先の先端部の中心部分でドレインバックの現象を抑えることができる、安定した塗布(筆記)が可能なペン先又は中継芯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のペン先は、繊維を長手方向に集束して樹脂バインダで接着後、所望の形状に成形したペン先、又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間の熱溶融により結着したペン先であって、前記ペン先の横断面は、ペン先第1領域及びペン先第2領域を有し、前記ペン先第1領域の数と前記ペン先第2領域の数の合計は3以上であり、前記ペン先第1領域の各外郭の少なくとも一部は、前記ペン先第2領域と接触かつ隣接して配置され、又は、前記ペン先第2領域の各外郭の少なくとも一部は、前記ペン先第1領域と接触かつ隣接して配置され、前記ペン先第1領域の、液体が通過する繊維間の流路幅は、前記ペン先第2領域の、液体が通過する繊維間の流路幅より小さいことを特徴とする。
【0008】
前記ペン先第1領域の横断面の面積は、前記ペン先第2領域の横断面の面積に対し、1/9~9倍であることが望ましい。
【0009】
前記ペン先第1領域の繊維の単糸は、1.1dtx~7.7dtxであり、前記ペン先第2領域の繊維の単糸は、5.5dtx~22dtxであることが望ましい。
【0010】
前記繊維は、ポリアミド繊維又はポリエステル繊維又はアクリル繊維であることが望ましい。
【0011】
前記樹脂バインダはポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、又は、メラミン樹脂であることが好ましく、前記液体は粒子を含んでもよい。
【0012】
本発明の中継芯は、繊維を長手方向に集束して樹脂バインダで接着後、所望の形状に成形した中継芯、又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間の熱溶融により結着した中継芯であって、前記中継芯の横断面は、中継芯第1領域及び中継芯第2領域を有し、前記中継芯第1領域の数と前記中継芯第2領域の数の合計は3以上であり、前記中継芯第1領域の各外郭の少なくとも一部は、前記中継芯第2領域と接触かつ隣接して配置され、又は、前記中継芯第2領域の各外郭の少なくとも一部は、前記中継芯第1領域と接触かつ隣接して配置され、前記中継芯第1領域の、液体が通過する繊維間の流路幅は、前記中継芯第2領域の、液体が通過する繊維間の流路幅より小さいことを特徴とする。
【0013】
前記中継芯第1領域の横断面の面積は、前記中継芯第2領域の横断面の面積に対し、1/9~9倍であることが望ましい。
【0014】
前記中継芯第1領域の繊維の単糸は、1.1dtx~7.7dtxであり、前記中継芯第2領域の繊維の単糸は、5.5dtx~22dtxであることが望ましい。
【0015】
前記繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、又は、アクリル繊維であることが望ましい。
【0016】
前記樹脂バインダはポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、又は、メラミン樹脂が好ましく、前記液体は粒子を含んでもよい。
【0017】
本発明の液体塗布具は、前記ペン先又は前記中継芯を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明のペン先によれば、液体の通過性と、毛細管力(液体保持力)の両方を備え、上向きにした際、塗布時に被塗布物の面と接触するペン先の先端部の中心部分での液体のドレインバックの現象を抑えることができる。すなわち、塗布(筆記)時には液体を必要量流出させることができるため、安定した塗布(筆記)が可能となる。
本発明の中継芯によれば、液体の通過性と、毛細管力(液体保持力)の両方を備え、上向きにした際、塗布用ペン先の先端部の中心部分へ供給されるべき液体が中継芯を通して液体収容部にドレインバックする現象を抑えることができる。すなわち、塗布(筆記)時には液体を必要量流出させることができるため、安定した塗布(筆記)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(a)に、ペン先第1領域とペン先第2領域を集束させる前のペン先の横断面の状態の例を示す。
図1(b)に、ペン先第1領域とペン先第2領域を集束し樹脂バインダで接着した後のペン先の横断面の例を示す。
【
図2】
図2(a)に、中継芯第1領域と中継芯第2領域を集束させる前の中継芯の横断面の状態の例を示す。
図2(b)に、中継芯第1領域と中継芯第2領域を集束し樹脂バインダで接着した後の中継芯の横断面の例を示す。
【
図3】ペン先を備えた液体塗布具の縦断面の例を示す。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)に、中継芯を備えた液体塗布具の縦断面の例を示す。
【
図5】
図5(a)にペン先の横断面のSEM画像を、
図5(b)に
図5(a)の拡大SEM画像を示す。
【
図6】
図6(a)にペン先を下向きにした場合の液体中の粒子の動きの概念図を、
図6(b)にペン先を上向きにした場合の液体中の粒子の動きの概念図を示す。
【
図7】
図7(a)に中継芯を下向きにした場合の液体中の粒子の動きの概念図を、
図7(b)に中継芯を上向きにした場合の液体中の粒子の動きの概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~
図8を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
(ペン先)
図3に示すように、本発明のペン先2は、該ペン先2の後端部分から供給される液体4を、ペン先2の先端部にて紙や皮膚等の被塗布物に筆記、塗布する。
ペン先2は、繊維を長手方向に集束して成形金型に通して熱加工し、樹脂バインダを含浸乾燥させて接着した後、研削等により所望の長さ、形状にしたものである。又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間に連続気孔を有する状態での繊維間の熱溶融により結着したものである。かかる結着とは、融点の異なる繊維を各融点の間の温度で熱溶融した場合、該温度より低い融点を有する繊維は溶融し、高い融点を有する繊維は溶融しないため、低い融点を有する繊維の外周部の一部に高い融点を有する繊維が接着するものである。
【0022】
(液体の構成)
ペン先2に供給される液体4は、紙や皮膚等の被塗布物に塗布されるものであり、目的や用途によって適宜配合される。液体4の粘度は、3cps~60cpsが例示される。
液体4には、ラメやパールの顔料等の粒子4aが含まれてもよい。該粒子4aの材料や大きさは、目的や用途によって適宜選択される。粒子のサイズは、1μm~500μm、好ましくは5μm~300μm、より好ましくは10μm~200μmの範囲が例示される。
【0023】
(ペン先の繊維の材料)
ペン先2の繊維には、合成繊維等が用いられる。合成繊維としては、ポリアミド繊維のナイロン(登録商標)等、ポリエステル繊維のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、アクリル繊維等が例示される。
【0024】
(ペン先の構造)
図1(b)に示すように、ペン先2の横断面は、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bを有する。また、ペン先2の横断面において、ペン先第1領域2aの数とペン先第2領域2bの数の合計は3以上であり、10以上、あるいは50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
ペン先第1領域2aの各外郭の少なくとも一部は、ペン先第2領域2bと接触かつ隣接して配置される、又は、ペン先第2領域2bの各外郭の少なくとも一部は、ペン先第1領域2aと接触かつ隣接して配置される。
ペン先第1領域2aの、液体が通過する繊維間の流路幅は、ペン先第2領域2bの、液体が通過する繊維間の流路幅より小さく調整される。
ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの形状やサイズは、略同一であっても異なってもよい。また、ペン先第1領域2aの数も、ペン先第2領域2bの数と同一であっても異なってもよい。
横断面にペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bを有するペン先構造を形成する方法は適宜選択されるが、
図1(a)に示すように、ペン先第1領域2aの繊維間の流路幅を有する繊維集束体と、ペン先第2領域2bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体を均一に又はランダムに集束し、樹脂バインダで接着し、あるいは樹脂バインダを用いずに熱溶着により結着して
図1(b)のようなペン先構造を形成する方法が例示される。この他、ペン先第2領域2bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体複数を、ペン先第1領域2aの繊維間の流路幅を有する繊維で覆うようにして形成させてもよく、逆に、ペン先第2領域2bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体複数を、ペン先第1領域2aの繊維間の流路幅を有する繊維で覆うようにして形成させてもよい。いずれにおいても、ペン先第1領域2aとペン先第2領域2bの両方が、ペン先2の横断面の中心部近辺(ペン先-被塗布物接触部分2c)に配置される。
【0025】
繊維間の流路幅は、繊維の径(太さ)で調整される。
ペン先第1領域2aの繊維の径(太さ)は、1.1dtex~7.7dtexの範囲が例示され、2.2dtex~5.5dtexの範囲がより好ましい。
図6(b)に示すように、ペン先2を上向きにしたとき、一旦ペン先2の先端部分(ペン先-被塗布物接触部分2c)に供給された液体4や液体4に含まれる粒子4aが、液体収容部5にドレインバックしないようにするため、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの繊維の材料や面積比、ペン先の径、液体4や粒子4aの材料等によるが、ペン先第1領域2aの繊維の径は7.7dtex以下に調整されることが望ましい。
また、液体4の通過性を確保するため、ペン先第1領域2aの繊維の径は1.1dtex以上に調整されることが望ましい。
【0026】
一方、ペン先第2領域2bの繊維の径(太さ)は、5.5dtex~22dtex、好ましくは8.8dtex~22dtex、より好ましくは9.9dtex~16.5dtexの範囲が例示される。
図6(a)に示すように、ペン先2を下向きにしたとき、液体4(特に粘度が高い場合)や液体4に含まれる粒子4aが、ペン先第2領域2bの広い流路を使ってペン先2の先端部分(ペン先-被塗布物接触部分2c)に流出、浸透するように、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの繊維の材料や面積比、ペン先の径、液体4や粒子4aの材料等によるが、ペン先第2領域2bの繊維の径は5.5dtex以上に調整されることが望ましい。
また、ペン先2を下向きにしたとき、液体4が落ちて液漏れ現象が発生しないように、ペン先第2領域2bの繊維の径は22dtex以下に調整されることが望ましい。
なお、ペン先第1領域2aの、液体が通過する繊維間の流路幅を、ペン先第2領域2bの、液体が通過する繊維間の流路幅より小さくするため、ペン先第1領域2aの繊維の径(太さ)は、ペン先第2領域2bの繊維の径(太さ)より小さく設定される。
【0027】
(ペン先第1領域及びペン先第2領域)
図1、
図5に示すように、ペン先2の横断面は、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bを有する。
上述したように、本発明の実施形態のペン先2が、ペン先第1領域2aの繊維集束体と、ペン先第2領域2bの繊維集束体を合計3以上、均一に又はランダムに集束し、樹脂バインダで接着して、あるいは熱溶着により結着して形成される場合は、樹脂バインダ接着前の集束状態や樹脂バインダによる接着あるいは熱溶着による結着の工程により、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの横断面は様々な形状を有する。
また、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの横断面の面積は、繊維の径とその本数で適宜調整することができる。ペン先第1領域2aの数とペン先第2領域2bの数の合計が50~200程度の場合、ペン先第1領域2aの繊維集束体は、単糸を20本~500本集束させたものが例示され、ペン先第2領域2bの繊維集束体は、単糸を5本~200本集束させたものが例示される。
【0028】
図6(a)に示すように、ペン先2を下向きにしたとき、ペン先第1領域2aの繊維間の流路幅より、ペン先第2領域2bの繊維間の流路幅のほうが大きいため、ペン先2の後端部分から供給される液体4(特に粘度が高い場合)や液体4に含まれる粒子4aは、ペン先第1領域2aよりペン先第2領域2bの流路を使って流れやすい。ここで、ペン先第2領域2bはペン先第1領域2aに接触、隣接して配置されているため、液体4や液体4に含まれる粒子4aが液体収容部5からペン先2の先端部分2cに流れる間に、特に粒子4aの一部がペン先第1領域2aにも移行し、ペン先2の先端部の中心部分(ペン先-被塗布物接触部分2c)に液体4や液体4に含まれる粒子4aが到達し、到達した液体4や液体4に含まれる粒子4aは筆記や塗布に用いられる。このとき、ペン先第2領域2bを通って先端部分に流れてきた液体4や粒子4aは、ペン先第1領域2aの毛細管力により保持されるため、ペン先からの液漏れの発生を抑制できる。
また、
図6(b)に示すように、ペン先2を上向きにしたとき、液体4や粒子4aの一部はペン先第2領域2bの流路を流れて、液体収容部5に向かってドレインバックする。このとき、ペン先第1領域2aに移行している液体4や粒子4aは、毛細管力により、ペン先2の先端部の中心部分(ペン先-被塗布物接触部分2cの近辺)にそのまま保持される。
再び、ペン先2を下向きにして筆記や塗布を開始すると、ドレインバックされずにペン先第1領域2aの毛細管力によりペン先2の先端部分(ペン先-被塗布物接触部分2c近辺)に保持されていた液体4や粒子4aを直ぐに筆記や塗布に使用できる。このため、液体収容部5から液体4や粒子4aがペン先2に供給されるのを待つ必要なく、スムーズな液体塗布が可能となる。
【0029】
以上のような液体4や粒子4aの流れ、領域間の移行、ペン先第2領域2bでのドレインバック、ペン先第1領域2aでの毛細管力による保持、液漏れ抑制等のメカニズムが適切に働くように、ペン先第1領域2aとペン先第2領域2bの数、形状、サイズ、及び、ペン先第1領域2aの横断面の面積と、ペン先第2領域2bの横断面の面積の比は適宜調整される。
図1(b)及び
図5に示すように、ペン先第1領域2aの横断面の面積とペン先第2領域2bの横断面の面積がほぼ同じ(面積比約1倍)場合は、ほぼ同じ断面積を有するペン先第1領域2aの繊維集束体とペン先第2領域2bの繊維集束体を、ほぼ同じ本数集束し、樹脂バインダで接着する、あるいは熱溶着により結着することが例示される。
ペン先第2領域2bの横断面の面積に対する、ペン先第1領域2aの横断面の面積の比(2aの横断面の面積/2bの横断面の面積)は、1/9~9倍、好ましくは1/8~8倍、より好ましくは1/7から7倍、あるいは1/6~6倍、1/5~5倍、1/4~4倍の範囲に設定されることが望ましい。面積比が1/9より小さくなると、ペン先2を上向きにしたときにドレインバックする液体4や粒子4aの量が多くなり、ペン先2を下向きにしたときにペン先第1領域2aの毛細管力による液体保持量が少なくなってしまう。また、面積比が9を超えると、ペン先第2領域2bを中心とした液体4や粒子4aの流量に対してペン先第2領域2bの流路が不足するため、隣接する毛細管力の大きなペン先第1領域2aに移行して流れようとした液体4や粒子4aにより、目詰まりを起こしやすくなってしまう。
なお、最適な面積比の範囲は、ペン先第1領域2a及びペン先第2領域2bの繊維の径、繊維の種類、液体4の種類や粘度、粒子4aの種類やサイズ等により異なるため、適宜調整される。
【0030】
(樹脂バインダ)
ペン先2の樹脂バインダには、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が用いられる。
【0031】
(中継芯)
図4に示すように、本発明の中継芯3は、収容された液体40に該中継芯3の後端部分を浸漬し、中継芯3の毛細管力により該液体40を塗布用ペン先20に一定量供給するものである。
中継芯3は、繊維を長手方向に集束して成形金型に通して熱加工し、樹脂バインダを含浸乾燥させて接着した後、研削等により所望の長さ、形状にしたものである。又は、融点の異なる二種類以上の繊維を、多数混合し長手方向に揃えて束ね圧縮し、繊維間に連続気孔を有する状態での繊維間の熱溶融により結着したものである。かかる結着とは、融点の異なる繊維を各融点の間の温度で熱溶融した場合、該温度より低い融点を有する繊維は溶融し、高い融点を有する繊維は溶融しないため、低い融点を有する繊維の外周部の一部に高い融点を有する繊維が接着するものである。
【0032】
(塗布用ペン先)
塗布用ペン先20は、中継芯3の先端部分から供給された液体40や液体40に含まれる粒子40aを、紙や皮膚等の被塗布面に塗布するものである。中継芯3の先端部分を塗布用ペン先20の後端部分から内側に挿入する等で接触させて連結し、中継芯3の先端部から流出されてくる液体40や液体40に含まれる粒子40aを塗布用ペン先20で塗布する。
塗布用ペン先20は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の合成樹脂材からなる糸材を束ねたもの、アクリル繊維やポリエステル繊維、ナイロン繊維等の合成繊維束をウレタン樹脂等を用いて固めたもの、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製テーパーフィラメントやナイロン製テーパーフィラメント等の先端部分がテーパー加工されたもの等の他、相互に連通状の連続気孔を有する立体網目構造で、かつ、保形性と適度な可撓性を備えた、ポリオレフィン系フォーム等の熱可塑性生成物からなるもの、熱可塑性樹脂製の各粒状粒子が互いに部分的に融着し、かつ、各粒状粒子間に相互に連通状の連続気孔を形成している焼結法で成形されるもの、熱可塑性樹脂を溶融押出成形により所要の断面形状・寸法に成形される多孔質体等が例示される。
塗布用ペン先20の形状は、目的や用途により適宜選択され、油性マーカー、水性マーカー、ボードマーカー、ラインマーカー、ぺイントマーカー、修正ペン、医療用マーカーの筆記用液体塗布具、薬液塗布具、アイライナー、アイシャドウ、アイブロー、リップライナー、リップグロス、コンシーラー、ネイルケア製品、まつ毛ケア製品、マニュキア用ブラシ等の化粧用液体塗布具等に使用される形状が例示される。
【0033】
(液体の構成)
中継芯3から塗布用ペン先20に供給される液体40は、紙や皮膚等の被塗布物に塗布されるものであり、目的や用途によって適宜配合される。液体40の粘度は、3cps~60cpsが例示される。
液体40には、ラメやパールの顔料等の粒子40aが含まれてもよい。該粒子40aの材料や大きさは、目的や用途によって適宜選択される。ラメの粒子のサイズは、1μm~500μm、好ましくは5μm~300μm、より好ましくは10μm~200μmの範囲が例示される。
【0034】
(中継芯の繊維の材料)
中継芯3の繊維には、合成繊維等が用いられる。合成繊維としては、ポリアミド繊維のナイロン(登録商標)等、ポリエステル繊維のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、アクリル繊維等が例示される。
【0035】
(中継芯の構造)
図2(b)に示すように、中継芯3の横断面は、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bを有する。また、中継芯3の横断面において、中継芯第1領域3aの数と中継芯第2領域3bの数の合計は3以上であり、10以上、あるいは50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
中継芯第1領域3aの各外郭の少なくとも一部は、中継芯第2領域3bと接触かつ隣接して配置される、又は、中継芯第2領域3bの各外郭の少なくとも一部は、中継芯第1領域3aと接触かつ隣接して配置される。
中継芯第1領域3aの、液体が通過する繊維間の流路幅は、中継芯第2領域3bの、液体が通過する繊維間の流路幅より小さく調整される。
中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの形状やサイズは、略同一であっても異なってもよい。また、中継芯第1領域3aの数も、中継芯第2領域3bの数と同一であっても異なってもよい。
横断面に中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bを有する中継芯構造を形成する方法は適宜選択されるが、
図2(a)に示すように、中継芯第1領域3aの繊維間の流路幅を有する繊維集束体と、中継芯第2領域3bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体を均一に又はランダムに集束し、樹脂バインダで接着し、あるいは樹脂バインダを用いずに熱溶着により結着して
図2(b)のような中継芯構造を形成する方法が例示される。この他、中継芯第2領域3bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体複数を、中継芯第1領域3aの繊維間の流路幅を有する繊維で覆うようにして形成させてもよく、逆に、中継芯第2領域3bの繊維間の流路幅を有する繊維集束体複数を、中継芯第1領域3aの繊維間の流路幅を有する繊維で覆うようにして形成させてもよい。いずれにおいても、中継芯第1領域3aと中継芯第2領域3bの両方が、中継芯3の横断面の中心部近辺(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c)に配置される。
【0036】
繊維間の流路幅は、繊維の径(太さ)で調整される。
中継芯3の中継芯第1領域3aの繊維の径(太さ)は、1.1dtex~7.7dtexの範囲が例示され、2.2dtex~5.5dtexの範囲がより好ましい。
図7(b)に示すように、中継芯3を上向きにしたとき、一旦中継芯3の先端部分(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c)に供給された液体40や液体40に含まれる粒子40aが、液体収容部5にドレインバックしないようにするため、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの繊維の材料や面積比、中継芯3の径、液体40や粒子40aの材料等によるが、中継芯第1領域3aの繊維の径は7.7dtex以下に調整されることが望ましい。
また、中液体40の通過性を確保するため、中継芯第1領域3aの繊維の径は1.1dtex以上に調整されることが望ましい。
【0037】
一方、中継芯3の中継芯第2領域3bの繊維の径(太さ)は、5.5dtex~22dtex、好ましくは8.8dtex~22dtex、より好ましくは9.9dtex~16.5dtexの範囲が例示される。
図7(a)に示すように、中継芯3を下向きにしたとき、液体40(特に粘度が高い場合)や液体40に含まれる粒子40aが、中継芯第2領域3bの広い流路を使って中継芯3の先端部分(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c)に流出、浸透されるように、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの繊維の材料や面積比、中継芯3の径、液体40や粒子40aの材料等によるが、中継芯第2領域3bの繊維の径は5.5dtex以上に調整されることが望ましい。
また、中継芯3を下向きにしたとき、液体40が落ちて塗布用ペン先20から液漏れ現象が発生しないように、中継芯第2領域2bの繊維の径は22dtex以下に調整されることが望ましい。
なお、中継芯第1領域3aの、液体が通過する繊維間の流路幅を、中継芯第2領域3bの、液体が通過する繊維間の流路幅より小さくするため、中継芯第1領域3aの繊維の径(太さ)は、中継芯第2領域2bの繊維の径(太さ)より小さく設定される。
【0038】
(中継芯第1領域及び中継芯第2領域)
図2に示すように、中継芯3の横断面は、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bを有する。
上述したように、本発明の実施形態の中継芯3が、中継芯第1領域3aの繊維集束体と、中継芯第2領域2bの繊維集束体を合計3以上、均一に又はランダムに集束し、樹脂バインダで接着して、あるいは熱溶着により結着して形成される場合は、樹脂バインダ接着前の集束状態や樹脂バインダによる接着あるいは熱溶着による結着の工程により、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの横断面は様々な形状を有する。
また、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの横断面の面積は、繊維の径とその本数で適宜調整することができる。中継芯第1領域3aの数と中継芯第2領域2bの数の合計が50~200程度の場合、中継芯第1領域3aの繊維集束体は、単糸を20本~500本集束させたものが例示され、中継芯第2領域3bの繊維集束体は、単糸を5本~200本集束させたものが例示される。
【0039】
図7(a)に示すように、中継芯3を下向きにしたとき、中継芯第1領域3aの繊維間の流路幅より、中継芯第2領域3bの繊維間の流路幅のほうが大きいため、中継芯3の後端部分から供給される液体40(特に粘度が高い場合)や液体40に含まれる粒子40aは、中継芯第1領域3aより中継芯第2領域3bの流路を使って流れやすい。ここで、中継芯第2領域3bは中継芯第1領域3aに接触、隣接して配置されているため、液体40や液体40に含まれる粒子40aが液体収容部5から中継芯3の先端部分(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c)に向かって流れる間に、特に粒子40aの一部が中継芯第1領域3aにも移行し、中継芯3の先端部の中心部分に液体40や液体40に含まれる粒子40aが到達し、到達した液体40や液体40に含まれる粒子40aは塗布用ペン先20に供給され、筆記や塗布に用いられる。このとき、中継芯第2領域3bを通って先端部分に流れてきた液体40や粒子40aは、中継芯第1領域3aの毛細管力により保持されるため、中継芯3から液体40や粒子40aが落ちることによる塗布用ペン先20からの液漏れの発生を抑制できる。
また、
図7(b)に示すように、中継芯3を上向きにしたとき、液体40や粒子40aの一部は中継芯第2領域3bの流路を流れて、液体収容部5に向かってドレインバックする。このとき、中継芯第1領域3aに移行している液体40や粒子40aは、毛細管力により、中継芯3の先端部の中心部分(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c)にそのまま保持される。
再び、中継芯3を下向きにして筆記や塗布を開始すると、ドレインバックされずに中継芯第1領域3aの毛細管力により中継芯3の先端部分(中継芯-塗布用ペン先接触部分3c近辺)に保持されていた液体40や粒子40aを直ぐに塗布用ペン先20に供給して筆記や塗布に使用できる。このため、液体収容部5から液体40や粒子40aが中継芯3を通して塗布用ペン先20に供給されるのを待つ必要なく、スムーズな液体塗布が可能となる。
【0040】
以上のような液体4や粒子4aの流れ、領域間の移行、中継芯第2領域3bでのドレインバック、中継芯第1領域3aでの毛細管力による保持、液漏れ抑制等のメカニズムが適切に働くように、中継芯第1領域3aと中継芯第2領域3bの数、形状、サイズ、及び、中継芯第1領域3aの横断面の面積と、中継芯第2領域3bの横断面の面積の比は適宜調整される。
図2(b)に示すように、中継芯第1領域3aの横断面の面積と中継芯第2領域3bの横断面の面積がほぼ同じ(面積比約1倍)場合は、ほぼ同じ断面積を有する中継芯第1領域3aの繊維集束体と中継芯第2領域3bの繊維集束体を、ほぼ同じ本数集束し、樹脂バインダで接着する、あるいは熱溶着により結着することが例示される。
中継芯第2領域3bの横断面の面積に対する、中継芯第1領域3aの横断面の面積の比(3aの横断面の面積/3bの横断面の面積)は、1/9~9倍、好ましくは1/8~8倍、より好ましくは1/7~7倍、あるいは1/6~6倍、1/5~5倍、1/4~4倍の範囲に設定されることが望ましい。面積比が1/9より小さくなると、ペン先2を上向きにしたときにドレインバックする液体4や粒子4aの量が多くなり、ペン先2を下向きにしたときに中継芯第1領域3aの毛細管力による液体保持量が少なくなってしまう。また、面積比が9を超えると、中継芯第2領域3bを中心とした液体4や粒子4aの流量に対して中継芯第2領域3bの流路が不足するため、隣接する毛細管力の大きな中継芯第1領域3aに移行して流れようとした液体4や粒子4aにより、目詰まりを起こしやすくなってしまう。
なお、最適な面積比の範囲は、中継芯第1領域3a及び中継芯第2領域3bの繊維の径、繊維の種類、液体4の種類や粘度、粒子4aの種類やサイズ等により異なるため、適宜調整される。
【0041】
(樹脂バインダ)
中継芯3の樹脂バインダには、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が用いられる。
【0042】
(液体塗布具)
本発明のペン先は、筆記具や化粧用具等の液体塗布具に適用可能である。さらに本発明の中継芯は、筆記具や化粧用具等の液体塗布具に適用可能である。
【0043】
液体塗布具は、油性マーカー、水性マーカー、ボードマーカー、ラインマーカー、ぺイントマーカー、修正ペン、医療用マーカーの筆記用液体塗布具、薬液塗布具、アイライナー、アイシャドウ、アイブロー、リップライナー、リップグロス、コンシーラー、ネイルケア製品、まつ毛ケア製品、マニュキア用ブラシ等の化粧用液体塗布具等が例示される。
【0044】
―ペン先の評価(粒子通過テスト)―
ペン先の評価を行うため、表1に記載された試料を用意した。試料1は本発明の実施形態の一つであるペン先であり、試料2は従来の細い単一繊維芯、試料3は従来の太い単一繊維芯、試料4は評価試験に使用したラメ粒子入り液体である。
【0045】
【0046】
試料4の、評価試験に使用した液体中の粒子の粒度分布を基準としたとき、各試料のペン先を通過した粒子の粒度分布がどのようになっているかを評価した。
評価には、
図8に示したように、試料4の粒子入り液体が満たされた容器の底部に備えられた差込用チューブに評価用ペン先を挿入し、ペン先を通過してきた液体をそれぞれ採取した。採取された液体の粒度分布を測定し、最大粒度と平均粒度を得た。表2に粒子通過テストの結果を示す。
【0047】
【0048】
基準となる試料4の粒度分布に対し、本発明の実施形態の一つである試料1と、従来の太い単一繊維芯である試料3においては、基準とほぼ同様な粒度分布を有していることが分かった。一方、従来の細い単一繊維芯である試料2においては、粒度の大きい粒子が評価用ペン先内部に残留し、通過性が低いことが分かった。
【0049】
―ペン先の評価(筆記テスト)―
評価用ペン先を液体塗布具に組み込み、紙面上で筆記テストを行った。
まず、評価用ペン先を組み込んで半日後に、紙面に筆記し、筆記初期の液体及び液体に含まれるラメ粒子の筆記状況を拡大しつつ確認した。筆記テストは、普通紙を置き、荷重100gfにて2cm幅のジグザグ筆記20往復することで行った。
次に、初期の筆記が終わり、ペン先を上向きにしてキャップを閉めて1週間保管し、再び紙面に筆記し、液体及び液体に含まれるラメ粒子の筆記状況を拡大しつつ確認した。表3に筆記テストの結果を示す。
【0050】
【0051】
筆記初期では、本発明の実施形態の一つである試料1と、従来の太い単一繊維芯である試料3において、筆跡にほぼ同等の液体と粒子が観察され、評価用ペン先を十分に通過していることが分かった。一方、従来の細い単一繊維芯である試料2においては、試料1や試料3に比べ、筆跡に観察された粒子の数は少なく、評価用ペン先を十分に通過できないことが分かった。
【0052】
ペン先を上向きにしてキャップを閉め、1週間保管した時点では、本発明の実施形態の一つである試料1において、筆記初期の筆跡に比べてほぼ同等~やや少なめ程度の液体と粒子が観察された。この結果は、ペン先-被塗布物接触部分に液体や粒子が保持されていたことを示している。
一方、粒子通過テストや筆記初期での筆記テストでは良好な結果であった、従来の太い単一繊維芯である試料3は、1週間保管した時点において筆記が不可能なほど液体が流出しない状態となっていた。この結果は、ペン先内の液体や粒子が液体収容部にドレインバックしてしまったことを示している。
さらに、従来の細い単一繊維芯である試料2においては、筆記初期と同じ程度に筆跡に観察された粒子の数は少なく、評価用ペン先を十分に通過できないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のペン先又は中継芯を収納した液体塗布具は、安定した塗布(筆記)が可能であり、また、液体塗布具に収容された液体やラメやパールの顔料等の粒子を、従来より無駄なく塗布できる筆記具及び化粧用具として、広く応用されることが期待される。
【符号の説明】
【0054】
1 液体塗布具
2 ペン先
2a ペン先第1領域
2b ペン先第2領域
2c ペン先-被塗布物接触部分
20 塗布用ペン先
3 中継芯
3a 中継芯第1領域
3b 中継芯第2領域
3c 中継芯-塗布用ペン先接触部分
4、40 液体
4a、40a 粒子
5、50 液体収容部