(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】法面水抜き孔の土砂流出防止構造
(51)【国際特許分類】
A01M 29/30 20110101AFI20231114BHJP
A01M 21/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A01M29/30
A01M21/00 A
(21)【出願番号】P 2020014245
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇美彦
(72)【発明者】
【氏名】南澤 拓弥
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-125051(JP,U)
【文献】登録実用新案第3148088(JP,U)
【文献】実開昭57-070832(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261769(US,A1)
【文献】特開平11-124869(JP,A)
【文献】実開昭57-060918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/30
A01M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンクリートブロックによる法面防護層に設けられ、地面からの水を法面表面に排出可能な水抜き孔
の土砂流出防止構造であって、
前記水抜き孔の開口を塞ぐように設けられた
、金網又は合成樹脂製網による格子体と、
前記水抜き孔の開口を塞ぐように設けられた、通水性を有し、雑草の光合成を抑えることができる遮光性を有する防草シート
とを備えており、
前記防草シート及び前記格子体は、前記水抜き孔が設けられた前記コンクリートブロックの接地面において、前記水抜き孔の開口を塞ぐようにして前記水抜き孔の周辺にのみ設けられており、
前記防草シートは、第1防草シート層を備え、
前記格子体は、第1格子体層と、第2格子体層とを備え、
前記コンクリートブロックの接地面から地面に向かって、第1格子体層、第1防草シート層、第2格子体層の順に配置されており、
前記第1防草シート層は、前記コンクリートブロックの接地面との間で、前記第1格子体層を挟むように接着剤で前記接地面に固定されることを特徴とする法面水抜き孔の土砂流出防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の法面水抜き孔の土砂流出防止構造であって、
前記防草シートは、第1防草シート層と、第2防草シート層とを備え、
前記格子体は、第1格子体層と、第2格子体層とを備え、
前記水抜き孔の地面側の端縁から地面に向かって、第1格子体層、第1防草シート層、第2格子体層、第2防草シート層、の順に配置されていることを特徴とする法面水抜き孔の土砂流出防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面防護用コンクリートに設けられた水抜き孔の土砂流出防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面防護用コンクリートに水抜き孔を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水抜き孔からの土砂の流出を防止すべく、コンクリートと地面との間に土砂流出防止シート(例えば、株式会社アルファオブジャパン製の吸出し防止シート(化繊繊維ESSタイプESS-10))を配置することが考えられる。
【0005】
しかしながら、水抜き孔から草が生えて、法面の美観を保つべく草を抜くときに、土砂流出防止シートが破れてしまうという雑草被害が発生する虞がある。
【0006】
また、水抜き孔から土砂流出防止シートをカラスが突っついたり、地面側からモグラが土砂流出シートを破ったりする鳥獣被害が発生する虞もある。
【0007】
これらの雑草被害や鳥獣被害により土砂流出シートが破れた場合、再度、土砂流出防止シートをコンクリートと地面との間に配置しなければならなくなり、面倒である。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、雑草被害や鳥獣被害を防止することができる法面水抜き孔の土砂流出防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため、本発明の法面水抜き孔の土砂流出防止構造は、
法面防護層に設けられ、地面からの水を法面表面に排出可能な水抜き孔と、
前記水抜き孔の開口を塞ぐように設けられた格子体と、
前記水抜き孔の開口を塞ぐように設けられた、通水性を有し、雑草の光合成を抑えることができる遮光性を有する防草シートと、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、防草シートにより水抜き孔からの土砂流出を防ぎつつ雑草被害を防ぐことができ、また、格子体によって鳥獣被害を防止することができる。
【0011】
[2]また、本発明においては、前記防草シート及び前記格子体は、前記水抜き孔の周辺にのみ設けられ、法面全体には設けられていないことが好ましい。本発明によれば、防草シート及び格子体の量を抑えることができ、コストを抑えることができる。
【0012】
[3]また、本発明においては、
前記防草シートは、第1防草シート層と、第2防草シート層とを備え、
前記格子体は、第1格子体層と、第2格子体層とを備え、
前記水抜き孔の地面側の端縁から地面に向かって、第1格子体層、第1防草シート層、第2格子体層、第2防草シート層、の順に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、第1防草シート層が第1格子体層と第2格子体層との間に挟まれるため、水抜き孔からのカラスの突きや、地面からのモグラの引っ掻きなどによる第1防草シート層の鳥獣被害を、第1格子体層と第2格子体層が守ってくれる。
【0014】
[4]また、本発明においては、
前記法面防護層は、複数のコンクリートブロックで構成され、
複数のコンクリートブロックの一部には、前記水抜き孔が設けられ、
水抜き孔が設けられたコンクリートブロックの接地面には、水抜き孔の開口を塞ぐように前記防草シートと前記格子体とが設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、コンクリートブロックの接地面に設けられた防草シートにより水抜き孔からの土砂流出を防ぎつつ雑草被害を防ぐことができ、また、格子体によって鳥獣被害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の法面防護層を模式的に示す説明図。
【
図2】本実施形態の法面防護層の断面を模式的に示す説明図。
【
図3】本実施形態のコンクリートブロックを模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照して、本発明の実施形態の法面防護層に設けられた法面水抜き孔の土砂流出防止構造を説明する。
【0018】
図1の法面防護層1の模式図を参照して、法面防護層1は、斜面に複数のコンクリートブロック2を敷き詰めて構成されている。複数の三角形状のコンクリートブロック2のうちの一部には、水抜き孔3が設けられている。なお、コンクリートブロック2は三角形状に限らず、他の形状、例えば、四角形や五角形、六角形等であってもよい。
【0019】
図2の法面防護層1の断面図を参照して、法面を構成する土4の地面には、接地面2aが接触するようにコンクリートブロック2が配置されている。コンクリートブロック2に設けられた水抜き孔3は、接地面2aから表面2bへ貫通して設けられている。
【0020】
コンクリートブロック2の接地面2aには、水抜き孔3の開口を塞ぐように、通水性を有する第1防草シート層5a、通水性を有する第2防草シート層5b、第1格子体層6a、第2格子体層6bが、水抜き孔3の端縁側である接地面2aから土4の地面に向かって、第1格子体層6a、第1防草シート層5a、第2格子体層6b、第2防草シート層5b、の順に設けられている。
【0021】
図3の分解図を参照して、第1防草シート層5aと第2防草シート層5bとで、本実施形態における通水性を有する防草シート5を構成し、第1格子体層6aと第2格子体層6bとで、本実施形態における格子体6を構成している。
【0022】
防草シート5としては、雑草の光合成を抑えるべく遮光性が高いものが用いられており、例えば、東京インキ株式会社製のトレップ(登録商標)TT-130(厚さ0.5mm)を用いることができる。また、防草シート5としては、除草剤を備えたシートを用いてもよい。
【0023】
格子体6としては、スリットを備えるものや、金網、合成樹脂製網などを採用することができ、例えば、ステンレス製防虫網を用いることができる。なお、格子体6としては、防虫機能は必ずしも備えていなくてもよい。
【0024】
第1防草シート層5aは、コンクリートブロック2の接地面2aとの間で、第1格子体層6aを挟むように接着剤で接地面2aに固定される。接着剤は、第1格子体層6aの隙間を介して接地面2aに第1防草シート層5aをしっかりと固定する。第2防草シート層5bは、第1防草シート層5aとの間で、第2格子体層6bを挟むように接薬剤で第1防草シート層5aに固定される。接着剤は、第2格子体層6bの隙間を介して第1防草シート層5aに第2防草シート層5bをしっかりと固定する。接着剤は、水抜き孔3を塞ぐことのないように接地面2aに付けられる。
【0025】
本実施形態の法面水抜き孔の土砂流出防止構造によれば、防草シートにより水抜き孔からの土砂流出を防ぎつつ雑草被害を防ぐことができ、また、格子体によって鳥獣被害を防止することができる。
【0026】
また、防草シート5及び格子体6は、水抜き孔3の周辺にのみ設けられ、法面全体には設けられていない。このため、防草シート5及び格子体6の使用量を抑えることができ、法面防護層の設置コストを抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、第1防草シート層5aが第1格子体層6aと第2格子体層6bとの間に挟まれるため、水抜き孔3からのカラスの突きや、土4の地面からのモグラの引っ掻きなどによる第1防草シート層5aの鳥獣被害を、第1格子体層6aと第2格子体層6bが守ってくれる。
【0028】
なお、本実施形態においては、第2格子体層6bの固定方法として、第1防草シート層5aと第2防草シート層5bとの間で接着剤を用いて固定することにより、法面防護層の構成種別の増加を抑えたものを説明した。しかしながら、本発明の第2格子体層6bの固定方法はこれに限らず、例えば、第2防草シート層5bに代えて、第2格子体層6bを第1防草シート層5aに固定するための固定具を別途用意してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 法面防護層
2 コンクリートブロック
2a 接地面
2b 表面
3 水抜き孔
4 土
5 防草シート
5a 第1防草シート層
5b 第2防草シート層
6 格子体
6a 第1格子体層
6b 第2格子体層