(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20231114BHJP
B61G 1/32 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B61G1/32
(21)【出願番号】P 2020014349
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】安住 真一
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-267746(JP,A)
【文献】特開2011-102072(JP,A)
【文献】特開平01-248209(JP,A)
【文献】中国実用新案第209796498(CN,U)
【文献】米国特許第05388657(US,A)
【文献】特開2018-024415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪を備える台車の下部の収容部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置であって、
前記走行装置の側面部は、前記台車の進行方向の前後に配置される2つの前記走行車輪の間隔よりも長く形成されており、
前記走行装置の側面部に、前記走行装置が前記収容部に収容された場合の前記走行車輪の可動範囲に対応する凹部が設けられて
おり、
前記凹部は、前記走行車輪の旋回移動に応じて前記走行車輪が前記凹部内に進退可能に形成されている、走行装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記走行装置を上方から見て、コの字状、傾斜状、又は円弧状に形成されている、
請求項
1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記凹部を開閉可能な蓋部をさらに備える、
請求項
1又は請求項
2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記蓋部を前記凹部の内側から外側に向けて付勢する付勢部をさらに備える、
請求項
3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記蓋部を前記凹部の内側の位置と外側の位置とに移動させる移動部をさらに備える、
請求項
3に記載の走行装置。
【請求項6】
前記走行装置の駆動車輪は、前記走行装置の進行方向の前側に設けられる2つの前記凹部を結んだ前方領域と、前記走行装置の進行方向の後側に設けられる2つの前記凹部を結んだ後方領域との間の領域に配置されている、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記側面部の下側に設けられており、
前記側面部の上側には、前記走行装置が前記収容部に収容される際に前記台車に接触可能なガイドローラーが設けられている、
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項8】
前記凹部の高さは、前記走行車輪の半径より大きく、かつ前記走行車輪の直径より小さい、
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車を牽引可能な自立走行型の走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動部及び車輪を有する走行装置と、走行装置に連結される台車とを備え、走行装置が台車を牽引しながら自立走行する自立走行型ロボット(搬送システム)が知られている(例えば特許文献1参照)。前記搬送システムでは、走行装置が台車の下に潜り込むように収容されて台車に接続されて、走行装置が台車を牽引しながら移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送システムでは、走行装置と台車とを接続した場合に、走行装置と台車とが近接するため、例えば走行装置が旋回する場合に台車の車輪が走行装置に接触する問題が生じる。台車の車輪が走行装置に接触すると、走行装置が損傷する恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、走行装置が旋回する際に台車の車輪が走行装置に接触して走行装置が損傷することを防止することが可能な走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る走行装置は、走行車輪を備える台車の下部の収容部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置であって、前記走行装置の側面部は、前記台車の進行方向の前後に配置される2つの前記走行車輪の間隔よりも長く形成されており、前記走行装置の側面部に、前記走行装置が前記収容部に収容された場合の前記走行車輪の可動範囲に対応する凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行装置が旋回する際に台車の車輪が走行装置に接触して走行装置が損傷することを防止することが可能な走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る台車の全体構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部の一例を示す側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る走行装置の凹部を開閉するリンク機構の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0010】
[搬送システム10]
図1は、本発明の実施形態に係る搬送システム10の全体構成を示す斜視図である。
図2は、搬送システム10の全体構成を示す側面図である。
図3は、搬送システム10の全体構成を示す断面図である。
図4は、搬送システム10の全体構成を示す正面図である。
【0011】
搬送システム10は、走行装置100、台車200、走行装置100の駆動を制御する制御部(不図示)、各種制御プログラム及びデータを記憶する記憶部(不図示)などを備えている。搬送システム10は、例えば、無人走行可能な搬送車(Automatic Guided Vehicle)である。走行装置100は、走行車輪201を備える台車200の下部の収容部250(
図6参照)に挿入されて台車200に接続される。そして、走行装置100は、駆動車輪101を駆動させることにより、台車200を牽引しながら目的の場所に自律的に移動する。搬送システム10は、搬送する荷物の場所、数量、重量等を管理したり、運行管理を行ったりする機能を備えてもよい。前記機能は、搬送システム10を管理する管理装置(不図示)、又は、搬送システム10を遠隔操作可能な操作端末(不図示)が備えてもよい。
【0012】
また搬送システム10は、作業者が操作可能な操作表示部(不図示)を備えてもよい。前記操作表示部は、搬送システム10を操作する操作部と、各種設定画面等を表示する表示部とを含むタッチパネルで構成される。前記操作表示部は、作業者から各種操作を受け付ける。例えば、前記操作表示部は、自動走行を開始させる操作、走行速度及び走行方向(進行方向)を指定して搬送システム10を手動で走行させる操作、バッテリーの充電を指示する操作、走行ルートを設定(予約、編集など)する操作などを受け付ける。また前記操作表示部は、前記操作を受け付ける操作画面、搬送システム10の走行状況を示す走行表示画面、走行ルートなどを設定する設定画面などの各種画面を表示する。
【0013】
[走行装置100]
図5は、走行装置100の具体的な構成を示す斜視図である。走行装置100は、装置本体の底部に設けられた駆動車輪101、装置本体の底部に回転自在に設けられた従動車輪(付図示)、搬送システム10の周囲の障害物を検出する距離測定装置110、装置本体に電源を供給するバッテリー(不図示)などを備える。
【0014】
ここで、前記記憶部は、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などを含む不揮発性の記憶部である。例えば前記記憶部には、前記制御部に走行処理を実行させるためのプログラムなどの制御プログラムが記憶されている。
【0015】
また前記記憶部には、ピッキング情報が記憶される。前記ピッキング情報は、搬送すべき各荷物が、どの保管棚のどの位置に置かれており、それらの荷物のうちどの荷物を何個、何処へ搬送すべきかを表す情報である。また前記記憶部には、荷物に関する荷物情報が記憶される。前記荷物情報は、保管棚に保管されている各荷物の数量、各荷物の重量、体積等を表す情報である。
【0016】
また前記記憶部には、搬送システム10の走行に必要な情報が記憶される。例えば前記記憶部には、搬送システム10が走行する走行ルートを表すルート情報が記憶される。前記走行ルートは、例えば、搬送システム10が走行する床面に磁気テープが貼られたルート、又は、作業者により設定(予約)されたルートに対応する。
【0017】
前記制御プログラムは、USB、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、搬送システム10が備えるUSBドライブ、CDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて前記記憶部に記憶される。また、前記制御プログラムは、外部機器から通信網を介してダウンロードされて前記記憶部に記憶されてもよい。
【0018】
また前記制御部は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、前記制御部は、前記ROM又は記憶部に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより搬送システム10を制御する。
【0019】
具体的には、前記制御部は、作業者が前記操作表示部に対して行った操作に対応する操作情報を取得する。また前記制御部は、前記操作情報に基づいて、搬送システム10の走行モードを切り替える。具体的には、作業者が前記操作表示部において自動走行を開始させる操作を行った場合に、前記制御部は、搬送システム10の走行モードを自動走行モードに設定する。また作業者が前記操作表示部において自動走行を終了させる操作又は手動走行を開始させる操作を行った場合に、前記制御部は、搬送システム10の走行モードを手動走行モードに設定する。
【0020】
また前記制御部は、前記走行モードに基づいて、搬送システム10の走行動作を制御する。例えば、前記走行モードが前記自動走行モードに設定された場合に、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたルート情報に対応する走行ルートに従って搬送システム10を走行させる。具体的には、前記制御部は、前記走行ルートに応じた走行指示を走行装置100に送信する。
【0021】
また前記走行モードが前記手動走行モードに設定された場合に、前記制御部は、操作表示部又は操作端末(不図示)に対する作業者の操作に基づいて搬送システム10を走行させる。例えば、前記制御部は、前記操作端末に対する作業者の操作に応じた走行指示を走行装置100に送信する。
【0022】
また前記制御部は、搬送システム10の走行状況などの現在の状況を表す情報を前記操作表示部などに通知する。例えば、前記制御部は、搬送システム10の現在の走行プラン、走行位置(現在走行位置)を表す情報を前記操作表示部に表示する。
【0023】
また前記制御部は、距離測定装置110において測定された距離の情報に基づいて、搬送システム10の進行方向を制御する。例えば、距離測定装置110により、搬送システム10の進行方向に障害物が検出された場合に、前記制御部は、搬送システム10を、障害物を回避するように進行方向を変更する。
【0024】
距離測定装置110は、探査光を水平方向に所定角度に渡って照射し、その反射光を検出することにより障害物(対象物)の有無及び障害物までの距離を測定する。前記探査光は、例えばレーザー光である。距離測定装置110は、例えば、搬送システム10の進行方向側(前方)の端部と、進行方向とは反対側(後方)の端部とに2個設置される。また各距離測定装置110は、走行装置100を正面から見て(
図3参照)、幅方向の中心位置に配置される。なお、距離測定装置110の数は限定されず、少なくとも1つ設置されていればよい。本実施形態では、前方の距離測定装置110と後方の距離測定装置110(
図2参照)とがそれぞれ270度の範囲に探査光を照射して照射範囲の障害物を検出する。このように、本実施形態では、2個の距離測定装置110により、搬送システム10の周囲の所定の範囲に存在する障害物を検出することが可能となっている。
【0025】
なお、2個の距離測定装置110は、走行装置100を上方から見て、走行装置100の角部及び中心を通る対角線上に配置されてもよいし、
図5に示す位置より互いの距離が近づくように中心側に配置されてもよい。また、距離測定装置110は、走行装置100の上面に配置されてもよいし、走行装置100の底面から上面の間の領域に配置されてもよい。
【0026】
また、走行装置100は、走行装置100の角部及び側面部の少なくとも何れか一方に、走行装置100が台車200の下部の収容部250に挿入される際に台車200に接触可能なガイドローラー120cを備えている。
図5に示す例では、ガイドローラー120cは、走行装置100の四隅の角部に設けられている。ガイドローラー120cは、床面に対して垂直方向に延伸するローラー軸が走行装置100の筐体に支持されることにより水平方向に回転可能な自由車輪で構成されている。またガイドローラー120cの外周部は、ゴムなどの弾性部材で覆われており、ガイドローラー120cが接触する接触対象物(例えば台車200)の損傷を防止することが可能となっている。
【0027】
また、走行装置100は、台車200と接続するための接続部140を備えている。接続部140は、例えば、走行装置100の上面に昇降可能に設けられている。接続部140は、例えば作業者の操作に基づいて、前記制御部の命令に応じて係合ピン140aを上昇させて台車200の底部に設けられた受容部240に挿入(係合)させる。これにより、走行装置100及び台車200が互いに接続される。その後、走行装置100を駆動させることにより、台車200は、走行装置100に牽引されて目的の場所に移動する。
【0028】
走行装置100及び台車200の接続方法は、これに限定されず、周知の方法を採用することができる。例えば、走行装置100が制御部からの指示に従って自律的に移動し、台車200の収容部250に進入して、台車200に接続されてもよい。
【0029】
また、走行装置100は、側面部に凹部102を備えている。凹部102は、台車200の走行車輪201に対応する位置に設けられている。凹部102は、本発明の凹部の一例である。ここで、走行装置100の側面部は、台車200の進行方向の前後に配置される2つの走行車輪201の間隔よりも長く形成されている。そして、走行装置100の側面部に、走行装置100が収容部250に収容された場合の走行車輪201の可動範囲に対応する凹部102が設けられている。
【0030】
また、凹部102は、走行車輪201の旋回移動に応じて走行車輪201が凹部102内に進退可能に形成されている。
【0031】
具体的には、
図6に示すように、凹部102は、走行装置100と台車200とが接続された場合に走行車輪201の近傍に配置されるように、側面部に設けられている。凹部102の形状は限定されず、例えば
図6に示すように、コの字状に形成されている。また、凹部102は、走行車輪201の旋回領域R2(
図6参照)に重ならないように形成されている。これにより、走行車輪201が旋回移動した場合に走行車輪201が走行装置100に接触することを防止することが可能となる。
【0032】
ここで、走行装置100の駆動車輪101は、
図6に示すように、走行装置100の進行方向の前側に設けられる2つの凹部102を結んだ前方領域と、走行装置100の進行方向の後側に設けられる2つの凹部102を結んだ後方領域との間の領域(中間領域R1)に配置されている。また、中間領域R1には、バッテリー、基板、モーターなどの部品103が配置されている。
【0033】
また、凹部102の高さH1(
図5参照)は、走行車輪201の半径より大きく、かつ走行車輪201の直径より小さい。
【0034】
また、凹部102は、
図5に示すように、走行装置100の側面部の下側(高さH1の範囲)に設けられており、走行装置100の側面部の上側(高さH1の上方)には、走行装置100が収容部250に収容される際に台車200に接触可能なガイドローラー120c(本発明のガイドローラーの一例)が設けられている。
【0035】
なお、走行装置100は、台車200に対して双方向から挿入可能となっている。すなわち、
図5において、走行装置100の左側から台車200を移動させて台車200の下部に走行装置100を収容してもよいし、走行装置100の右側から台車200を移動させて台車200の下部に走行装置100を収容してもよい。走行装置100が台車200の下部に挿入された場合に接続部140の係合ピン140aが上方に移動して台車200に係合することにより、走行装置100と台車200とが互いに接続される。
【0036】
[台車200]
図7は、台車200の具体的な構成を示す斜視図である。台車200は、荷物などを載せる棚(ワゴン車)であり、台車200の四隅の底面に回転自在に取り付けられた走行車輪201を備えている。台車200は、4個の走行車輪201により自立可能であり、作業者が手動で移動させることが可能に構成されている。
【0037】
台車200は、走行装置100が台車200の下部の収容部250に挿入される挿入方向に対して横方向に位置する2つの側面部220を備えている。各側面部220の上方には、荷物などを出し入れする開口部が形成されており、各側面部220の下方には、距離測定装置110の探査光を通過させる凹部221aが形成されている。各側面部220には、進行方向A側の凹部221aと、進行方向Aとは反対側の凹部221aと、2つの凹部221aの間に配置される接続部222とが形成されている。このように、各側面部220は、凹部221aの上側の収納部(棚部)と、凹部221aの下側の脚部と、凹部221aに隣接し、前記収納部と前記脚部とを接続する接続部222とで構成されている。また凹部221aは、側面部220において、前記探査光が照射される高さに設けられている。また凹部221aは、側面部220の端部から切り欠かれた形状を有する。
【0038】
また、側面部220における凹部221a及び接続部222の下方(脚部)には、ガイドローラー210cが設けられている。具体的には、ガイドローラー210cは、走行装置100が挿入される台車200の脚部の内側面230に、走行装置100に接触可能に設けられている。例えば、ガイドローラー210cは、走行装置100が挿入される挿入口の角部に配置されている。台車200に対して一方向から走行装置100が挿入される構成である場合、ガイドローラー210cは、一方の挿入口の2つの角部に配置される。また台車200に対して双方向(前後)から走行装置100が挿入可能な構成である場合、ガイドローラー210cは、双方(前後)の挿入口の4つの角部に配置される。
【0039】
各側面部220の底面の角部には、走行車輪201が設けられている。4つの走行車輪201の全てが旋回可能な車輪(旋回キャスター)で構成されてもよいし、2つの走行車輪201が旋回キャスターで構成され、かつ2つの走行車輪201が旋回不可能な車輪(固定キャスター)で構成されてもよい。
【0040】
また台車200の下部には、走行装置100を挿入可能な所定の空間である収容部250が形成されている。収容部250は、前記脚部と前記収容部とで覆われた空間である。例えば、作業者は、台車200を手で押しながら移動させて、床面で停止中の走行装置100を台車200の収容部250に収容する。そして、走行装置100の上面に設けられた接続部140が台車200に係合することにより、走行装置100と台車200とが接続される。その後、走行装置100を駆動させることにより、台車200は、走行装置100に牽引されて目的の場所に移動する。
【0041】
なお、
図7に示す構成は、台車200に対して走行装置100を双方向から挿入可能な構成を示している。すなわち、台車200を左方向に移動させて走行装置100を台車200の収容部250に収容することが可能であり、かつ、台車200を右方向に移動させて走行装置100を台車200の収容部250に収容することが可能である。
【0042】
[接続方法]
走行装置100及び台車200を互いに接続する場合、作業者は、台車200を手で押して移動させて走行装置100を台車200の収容部250に収容する。
【0043】
具体的には、作業者は、台車200の筐体を把持して走行装置100側に移動させて、台車200の収容部250の挿入口に、停止中の走行装置100の先端を挿入させる。走行装置100の先端が台車200の収容部250に挿入される際に、台車200のガイドローラー210cが走行装置100の筐体(側面部)に接触し、走行装置100のガイドローラー120cが台車200の筐体(側面部)に接触する。これにより、ガイドローラー120c及びガイドローラー210cが回転し、走行装置100の先端が台車200の収容部250に導入される。
【0044】
続けて作業者が台車200を押し込むと、作業者が押す力に応じてガイドローラー120c及びガイドローラー210cが回転することにより、走行装置100が台車200の収容部250の奥に導入される。すなわち、台車200は、作業者が押す力に応じて、ガイドローラー210cが走行装置100に接触して回転しながら、かつガイドローラー120cが台車200に接触して回転しながら移動することにより、走行装置100を収容部250の奥に導く。
【0045】
続けて作業者が台車200を押し込むと、さらに台車200が、走行装置100に対して所定の位置(例えば中心位置)に移動して、走行装置100が台車200の収容部250に挿入される。台車200が走行装置100に対して所定の位置に配置されると、ガイドローラー210cは走行装置100の側面部に接触可能な状態となり、ガイドローラー120cは、台車200の外側に配置される。また台車200が走行装置100に対して所定の位置に配置されると、走行装置100の接続部140が台車200に係合することにより走行装置100及び台車200が互いに接続される。これにより、搬送システム10は、自律走行可能な状態となる。また、走行装置100及び台車200が互いに接続されると、台車200のガイドローラー210cが走行装置100の側面部に接触することにより、台車200のがたつきが抑制される。また、前記ガイドローラーの回転により走行装置100が台車200にスムーズに挿入及び収容される。このため、走行装置100及び台車200を損傷させることなく互いに接続させることが可能となる。また
図4に示すように、台車200の幅を走行装置100の幅に合わせてスリム化することができる。すなわち、小型の搬送システム10を実現することができる。
【0046】
さらに、走行装置100及び台車200が互いに接続された状態では、台車200の走行車輪201が、走行装置100の凹部102の位置に配置される(
図1等参照)。これにより、走行車輪201が旋回移動した場合に走行車輪201が走行装置100に接触することを防止することが可能となる。
【0047】
次に、凹部102の具体例について以下に説明する。例えば、凹部102は、走行装置100を上方から見て、コの字状、傾斜状、又は円弧状に形成されている。
【0048】
図8に示すように、凹部102は、コの字に形成されてもよい。
図8に示すように、凹部102は、走行装置100の外周の側面部よりも内側に凹んだ内側面102aで構成されており、内側面102aは、走行装置100の進行方向に平行な面及び垂直な面によりコの字状に形成される。凹部102の深さD1は、走行車輪201の旋回領域R2に応じて設定される。
【0049】
また
図9に示すように、凹部102は、傾斜状に形成されてもよい。
図9に示すように、凹部102は、走行装置100の外周の側面部よりも内側に凹んだ傾斜面102bで構成されており、傾斜面102bは、走行装置100の進行方向に平行な面及び傾斜面により形成される。凹部102の深さD2は、走行車輪201の旋回領域R2に応じて設定される。
【0050】
また
図10に示すように、凹部102は、円弧状に形成されてもよい。
図10に示すように、凹部102は、走行装置100の外周の側面部よりも内側に凹んだ円弧面102cで構成されており、円弧面102cは、例えば走行車輪201の回転軌跡の外周円に対応する形状に形成される。凹部102の深さD3は、走行車輪201の旋回領域R2に応じて設定される。
【0051】
また
図11に示すように、走行装置100は、凹部102を開閉可能な蓋部104をさらに備えてもよい。蓋部104は、例えば平板で形成され、蓋部104の内側には、凹部102の内側から外側に向けて付勢するバネ102s(本発明の付勢部の一例)が設けられている。蓋部104は、凹部102を塞ぐように設けられる。また蓋部104に外側から力が加わらない通常の状態では、蓋部104は、走行装置100の側面部と同一面に配置されるように設けられる。蓋部104に走行車輪201が接触した場合、蓋部104は、バネ102sの付勢力を受けながら付勢力に抗する方向(凹部102の内側)に移動する。これにより、凹部102が開放されて走行車輪201を受け入れる。
【0052】
蓋部104は、バネ102sによらず、モーター等により開閉駆動してもよい。例えば、
図12に示すように、走行装置100は、蓋部104を凹部102の内側の位置と外側の位置とに移動させる移動部(本発明の移動部の一例)をさらに備える。前記移動部は、例えば駆動モーター、シリンダ105、ピストン106などにより構成される。ピストン106の先端には蓋部104が設けられ、ピストン106の進退動作に応じて蓋部104が凹部102を開閉する。例えば、蓋部104に走行車輪201が接触した場合、シリンダ105はピストン106を内部に収納することにより蓋部104を内側に移動させる。これにより、凹部102が開放されて走行車輪201を受け入れる。走行車輪201が蓋部104に接触しなくなると、シリンダ105はピストン106を押し出すことにより蓋部104を外側に移動させる。これにより、凹部102が閉鎖される。
【0053】
なお、蓋部104を備える構成では、凹部102はコの字状に形成されていることが好ましい。蓋部104は、本発明の蓋部の一例である。
【0054】
また、蓋部104は、機械式の機構により開閉駆動してもよい。例えば、
図13及び
図14に示すように、走行装置100は、蓋部104を凹部102の内側の位置と外側の位置とに移動させるリンク機構107(本発明の移動部の一例)をさらに備える。
図13は、走行装置100及び台車200を側面方向(横方向)から見た側面図を示している。なお、
図13では、台車200の脚部を省略した一部を示している。台車200の底部には、突起202が設けられている。
図14は、走行装置100を上方から見た場合のリンク機構107の平面図を示している。
図14に示すように、リンク機構107は、走行装置100の外側面に接続される左右のヒンジ107aと、ヒンジ107aに接続される左右のリンク107eと、リンク107eにヒンジを介して接続される左右のリンク107dと、左右のリンク107dを連結するリンク107cと、リンク107cに接続される回転突起107bとを備える。蓋部104は、リンク107eに接続される。
【0055】
例えば作業者が台車200を
図13に示すB方向に押して走行装置100に接続させると、回転突起107bが台車200の突起202に接触して矢印方向に回転する。これにより、
図14に示すように、リンク機構107の各リンクが矢印方向に移動し、蓋部104が、ヒンジ107aを支点にして凹部102の内側に移動する。これにより、凹部102が開放されて走行車輪201を受け入れることが可能になる。台車200が走行装置100から切り離されると、回転突起107bが逆方向に回転してリンク機構107の移動動作により蓋部104が外側に移動する。これにより、凹部102が閉鎖される。
図13に示す構成によれば、走行装置100に台車200が連結されていない場合には凹部102が閉鎖されるため、蓋部104により凹部102内に異物が混入することを防ぐことができる。また、外観上の見た目の良さを向上させることができる。さらに、蓋部104を電動により開閉させる方式と比較してコストを削減することができる。
【0056】
本発明に係る走行装置は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 :搬送システム
100 :走行装置
101 :駆動車輪
102 :凹部
104 :蓋部
140 :接続部
200 :台車
201 :走行車輪