IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特許-無線通信装置 図1
  • 特許-無線通信装置 図2
  • 特許-無線通信装置 図3
  • 特許-無線通信装置 図4
  • 特許-無線通信装置 図5
  • 特許-無線通信装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/72457 20210101AFI20231114BHJP
   H04W 16/02 20090101ALI20231114BHJP
【FI】
H04M1/72457
H04W16/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020014498
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121088
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕之
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-164680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04W 72/0453
H04W 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線周波数のいずれかで無線通信を実行する無線通信装置において、
利用者の選択に応じて、複数の生体情報のうちいずれかを読み取る生体情報読み取り手
段と、
複数の生体情報のそれぞれを、当該生体情報に割り当てられ前記無線通信装置を利用するための利用状況に対応する無線周波数に関連付けて記憶する記憶手段と、
読み取られた前記生体情報に対応する利用状況に関連付けられた無線周波数を特定する周波数特定手段と、
特定された前記無線周波数により、無線通信を実行する無線手段と、を有し、
前記利用状況として、前記無線通信装置の使用エリアを用い、
前記記憶手段は、記憶された前記複数の生体情報それぞれを前記使用エリアに対応付けた第1のテーブルおよび前記使用エリアに前記複数の無線周波数を対応付けた第2のテーブルを有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項に記載の無線通信装置において、
前記利用状況は、前記無線通信装置による、転倒発報、非常通報および一斉通報の少なくとも1つを含む通報機能であることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項に記載の無線通信装置において、
前記記憶手段は、前記通報機能に、無線周波数に関連付けて記憶する通報機能テーブルをさらに有することを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信に用いられる無線周波数を切り替え可能な無線通信技術に関する。その中でも特に、構内無線通信システムや構内無線通信システムの無線機子局(以下、無線通信装置)の操作に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、無線通信装置では、利用目的などに応じて、使用する周波数を切り換えることが可能である。例えば、いわゆる構内無線においては、基地局配下の無線通信装置それぞれに対し、無線機基地局の配下のエリアに対応した周波数を割り当てて運用している場合が多い。周波数の設定は無線通信装置の内部の不揮発性メモリに保存されており、設定変更のための治具を使用し、無線周波数や各種パラメータを変更し運用している。
【0003】
このような無線通信装置を用いた構内無線システムの従来技術として、特許文献1および2が存在する。特許文献1では、構内無線システムにおける非常時、例えば、転倒警報や非常発報を行う技術が開示されている。具体的には、転倒警報先や非常発報先として、複数の端末を登録しておき、電話システム内の端末から転倒警報や非常発報が為された場合は、前記登録していた複数の端末のうちの第1の端末に対して、転倒警報や非常発報を行い、該第1の端末と通報元の端末の間の通話接続ができなかった場合は、前記登録していた複数の端末のうちの第2の端末に対して、転倒警報や非常発報を行う、ことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、各通信エリア別に無線基地局と無線端末局の接続状態を監視でき、監視効率を向上することができる構内無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-29812号公報
【文献】特開2010-98464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年では無線通信装置は方式の進化にともない、ユーザインターフェースも多様な進化を遂げている。一方、構内無線においては従来方式であるアナログの無線通信装置も今だ多くの工場等で使用されており、これらの機種の多くのユーザインターフェースは単純なものが多い。その一例を、図6に示す無線通信装置で説明する。例えば、通話時はプレストークボタン(送信ボタン)140により、ボタンを押すだけで通話を開始する事が可能である。その他の機能も単純なものが多く、周波数設定用のチャネルボタン141、電源ボタン142、音量ボタン143などの数個のボタンでの操作を実現している。
【0007】
このような単純な操作が長所であるが、主となる機能以外の操作においては、利便性を犠牲にしていることが多い。例えば、無線通信装置の使用者が別なエリアで端末を使用するため、無線通信装置に設定されている周波数の変更を行う場合、ボタンによる無線通信装置の周波数変更手順操作を知っている必要がある。つまり、図6に示すチャネルボタン141をどのように操作すれば、状況に応じた、あるいは、所望の周波数に変更できるかを把握する必要がある。
【0008】
そこで、本発明では、より簡便な操作で状況に応じた周波数に変更する無線通信装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、生体情報を利用して、無線周波数を変更するものである。つまり、複数の生体情報を、無線通信装置の利用状況に応じた送受信周波数に対応付けておき、入力された生体情報に応じた無線周波数に切り替えるものである。
【0010】
本発明には、以下のより具体的な態様も含まれる。
【0011】
複数の無線周波数のいずれかで無線通信を実行する無線通信装置において、利用者の選択に応じて、複数の生体情報のうちいずれかを読み取る生体情報読み取り手段と、複数の生体情報のそれぞれを、当該生体情報に割り当てられ前記無線通信装置を利用するための利用状況に対応する無線周波数に関連付けて記憶する記憶手段と、読み取られた前記生体情報に対応する利用状況に関連付けられた無線周波数を特定する周波数特定手段と、特定された前記無線周波数により、無線通信を実行する無線手段と、を有し、前記利用状況として、前記無線通信装置の使用エリアを用い、前記記憶手段は、記憶された前記複数の生体情報それぞれを前記使用エリアに対応付けた第1のテーブルおよび前記使用エリアに前記複数の無線周波数を対応付けた第2のテーブルを有する無線通信装置である。
【0012】
なお、利用状況には、無線通信装置を使用する使用エリア、各種通報機能が含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体情報を利用することで、無線通信装置の利便性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例における無線通信装置のブロック図。
図2】本発明の一実施例における無線通信装置のフローチャート。
図3】本発明の一実施例で用いられる各種テーブルを示す図。
図4】本発明の一実施例の概要を説明するための従来例を示す図。
図5】本発明の一実施例の概要を示す図。
図6】無線通信装置の外観を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例について、図面を用いて説明する。まず、本実施例の概要を、従来との相違を中心に、図4および図5を用いて説明する。
【0016】
図4に、従来の構内無線通信システムにおける無線通信装置の使用例を示す。図4は、比較的広い敷地を持つ工場内で、構内無線基地局を二つのエリア(A、B)に設置した例である。エリアAには無線基地局Aを設置し、無線通信装置(1)からの送受信用に無線周波数チャネルA(周波数A)を割当てているものとする。同様にエリアBには無線基地局Bを設置し、無線通信装置(2)からの送受信用に無線周波数チャネルB(周波数B)を割当てているものとする。
【0017】
これらのエリアで無線通信装置(1)(2)を使用するには、使用するエリアに対応した無線周波数を無線通信装置(1)(2)に設定しなければならない。通常は、あらかじめ無線通信装置をエリアごとに用意し、エリアA用の無線通信装置(1)には周波数チャネルAを、エリアB用の無線通信装置(2)には周波数チャネルBを設定する。作業エリアには決められた作業員、つまり、無線通信装置(1)(2)の利用者が配置されている。
【0018】
エリアAの作業員は作業エリアに赴く際には、エリアA用に設定された無線通信装置(1)を選ぶ必要がある。もし間違えてエリアB用の無線通信装置(2)を選んだ場合、エリアAで使用できない。
【0019】
ここで、無線通信装置(1)(2)にはチャネルを選択する機能を備えている場合が多い。このような場合、作業するエリアにより作業者が、各無線通信装置のチャネルを選択することで、無線通信装置を選択しなくも対応できる。
【0020】
但し、この場合、作業員が作業エリアに対応したチャネルを知っている事と、無線通信装置のチャネル変更手順を知っていることが前提となってくるため、必ずしも作業員が無線周波数を変更する事が出来るとは限らない。特に、作業手順に関しては、図6に示す無線通信装置のようにボタンのみで操作する場合、直感的にチャネル変更することが困難である。
【0021】
このため、図4に示す従来例では、無線通信装置の取違いやチャネル変更ミス、チャネル変更漏れによる、が発生していると推測される。したがって、この無線周波数誤りによる作業時間の多少のロスが発生しているものと考えられる。つまり、従来の使用例では、図4に示すように、無線通信装置(1)はエリアAに、無線通信装置(2)はエリアBに特化され、他のエリアでの利用は困難になる。
【0022】
この課題を解決する本実施例の概要を、図5に示す。利用先は、図4と同様に、複数のエリアを有する工場であり、無線機基地局の配置も図4と同様である。また、無線通信装置(3)(4)は、それぞれ指紋読取り機能を備えている。さらに、無線通信装置(3)(4)は、作業員が作業するエリアごとに登録された指紋データを保持している。このため、作業員は作業予定のエリアに対応した指紋を、無線通信装置(3)(4)のいずれに読み込ませることで、無線周波数を変更する手間を省くことができる。したがって、作業員は、無線通信装置(3)(4)をエリアに縛られず柔軟に使用することが可能になる。
【0023】
以下、本実施例の詳細について、説明する。
【0024】
図1に、本実施例における無線通信装置100の機能ブロック図および他の装置との接続関係を示す。無線通信装置100は、ネットワーク400を介してサーバ200と接続される。サーバ200には、指紋読み取り装置300が接続されている。また、無線通信装置100は、基地局500と無線通信が可能となっている。なお、ネットワーク400は、無線、有線を問わず、また、無線通信装置100とサーバ200の接続は、ネットワークを介さず、直接接続されてもよい。なお、無線通信装置100と基地局500の通信は、ネットワーク400であってもよいし、他の無線通信であってもよい。
【0025】
まず、無線通信装置100の構成について、説明する。110はCPUであり、無線機能部120、不揮発性メモリ130、プレストークボタン140、指紋読み取り部150を制御する。無線機能部120内の121は発振機であり、同じく無線機能部120内のPLLシンセサイザ122の動作に必要な回路である。具体的には、PLLシンセサイザ122は、当該無線通信装置100で通信(送受信)のための無線周波数を発生させる回路である。不揮発性メモリ130は、当該無線通信装置100の使用する無線周波数(チャネル)を記録する無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133を格納する。不揮発性メモリ130は、さらに、その他の機能の挙動を決めるパラメータや、無線通信装置100の調整データなどを格納する。さらに、不揮発性メモリ130は、指紋データを記録する指紋登録テーブル131も格納している。なお、指紋登録テーブル131や無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133については、図3を用いて後述する。また、不揮発性メモリ130は、情報が格納されればよく、媒体の種類は限定されない。
【0026】
図1の140は、プレストークボタン(送信ボタン)である。プレストークボタン140は、利用者である作業員からの操作によるON状態をCPU110で検出し、無線機能部120での機能により無線送信を実現する。150は、作業員の指紋を読み取る指紋読み取り部である。なお、無線通信装置100の処理の詳細は、図2および図3を用いて、後述する。また、本発明は図1に示す構成に限定されるわけでなく、他の構成要件が追加されたり、その一部を省略ないし外付けとしてもよい。
【0027】
次に、無線通信装置100における処理の前処理となる、サーバ200を利用した指紋登録処理について、説明する。サーバ200は、いわゆるコンピュータで実現される。そして、サーバ200は、図示しないプログラムに従って自身が有するCPUにより以下に説明する各種演算等を実行する。
【0028】
指紋を登録する作業員は、サーバ200に接続された指紋読み取り装置300を利用する。つまり、指紋読み取り装置300から作業員の指ごとに、各指紋を読み取る。そして、サーバ200では、作業員自身ないし管理者等の入力に従って、読み取られた各指紋と、その利用状況を対応付ける。例えば、無線通信装置100の使用エリアを「1」に対し、右手の人差し指を、「2」に対し左手の親指を割り当てることが可能になる。また、通報機能の「転倒発報」を、右手の薬指に割り当てることができる。このように、利用状況として、使用エリアや通報機能を用いることができる。
【0029】
この処理により、図3に示す指紋登録テーブル131が作成される。サーバ200は、無線通信装置100へ、作成された指紋登録テーブル131を送信する。無線通信装置100は、送信された指紋登録テーブル131を受信し、不揮発性メモリ130に格納する。なお、サーバ200は、複数の無線通信装置100のそれぞれに指紋登録テーブル131を送信してもよいし、当該作業員が利用する無線通信装置100(1台以上)に限定的に送信してもよい。また、指紋登録テーブル131に記録される各指紋データは、指紋の画像そのものでもよいし、指紋の画像を変換したデータ(例えば、特徴量)を用いてもよい。
【0030】
以上で、指紋登録処理の説明を終了し、無線通信装置100を利用する際の処理について、説明する。図2に、無線通信装置100の処理内容を示すフローチャート示す。本処理は、上述のように、CPU110の制御により実行される。
【0031】
まず、CPU110が、電源のONにより、無線通信装置100の起動(処理スタート)を行う。この際、CPU110は、無線通信装置100の各構成要件を初期化し、CPU110で制御可能な状態とする。
【0032】
そして、ステップS10において、指紋読み取り部150を介して作業員の指紋の入力を受け付け、その指紋の画像を撮像する。
【0033】
次に、ステップS20において、CPU110は、撮像された指紋について認証処理を実行する。このために、まず、CPU110は、指紋の撮像が正常に行われたかを判定する。この判定は、指紋登録テーブル131の指紋データとの比較が可能かを判定するもので、比較のために十分な画像が読み取れているかを判定することを含む。その他、外光の量などで判定してもよい。
【0034】
この判定の結果、読み取れていない場合、指紋認証が失敗として、ステップS30に進み、CPU110の制御により、エラーを出力する。これは、図1に図示しないスピーカによる音(音声を含む)の出力、バイブレーションの発生、受信ランプの点滅などで実現可能である。
【0035】
また、判定の結果、読み取りができていれば、読み取った指紋と指紋登録テーブル131に記録される各指紋データの照合を行う。この照合は、画像マッチング等既知の技術で実行可能である。この結果、読み取った指紋に対応する指紋データを検索し、指紋データが検索されない場合、指紋認証が失敗として、ステップS20でエラー出力を行う。この内容は、上述のとおりである。対応する指紋データが検索された場合、指紋認証が成功として、ステップS40に進む。
【0036】
次に、ステップS40では、CPU110は、不揮発性メモリ130に格納された指紋登録テーブル131で、検索された指紋データに対応する利用状況を特定する。図3に示す例では、指紋データ01が検索された場合、利用状況「10」が特定される。
【0037】
次に、ステップS50では、CPU110は、特定された利用状況に対応する使用エリアないし通報機能を、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133から特定する。上述の例である利用状況が「10」である場合、無線周波数テーブル(通常)132の使用エリアが「10」であるチャネル「19」が特定される。そして、CPU110は、無線周波数テーブル(通常)132からこのチャネル「19」に対応する無線周波数「413.8125KHz」を特定する。なお、本ステップS50では、無線周波数テーブル(通常)132を用い、無線周波数テーブル(非常時等)133の利用は省略し、後述するステップS90で限定的に利用してもよい。これは、運用として、作業開始の際には無線通信装置100を起動させておき、再度指紋認証を実行させることで、非常通報の乱発を防止できる。
【0038】
また、ここで用いられる指紋登録テーブル131、無線周波数テーブル(通常)132や無線周波数テーブル(非常時等)133の詳細等は、図2の説明の後に説明する。
【0039】
次に、ステップS60では、特定された無線周波数を用いた送信を行う。これは、作業者からのプレストークボタン140の押下をトリガに、CPU110が、無線機能部120の発信機121およびPLLシンセサイザ122を用いて実行する。そして、CPU110は、その送信により、対応する基地局500との通信が可能かを判定する。これは、該当の使用エリアの無線周波数とは別の無線種は数を利用することや基地局500の故障、不具合で通信できないことがあるので、これを判定する。前者の場合、作業者により入力される指紋(指)間違いに起因することもある。本判定は、既存の技術で実現可能であるため、その内容の説明は省略する。この結果、通信が不可能(No)であれば、ステップS70に進み、エラー出力を行う。この出力は、ステップS30やS50と同様に実行できる。
【0040】
一方、通信が可能(Yes)であれば、ステップS80に進む。ステップS80では、プレストークボタン140が押下されている間、CPU110が、無線機能部120の発信機121およびPLLシンセサイザ122を用いて、通信を実行(継続)する。
【0041】
次に、ステップS90において、CPU110が、指紋読み取り部150に対して、指紋が入力されたかを判定する。これは、ステップS80のプレストークボタン140が押下の有無には無関係に実行してもよいし、通信中に限定して実行してもよい。この結果、指紋入力を受け付けていない(No)と判定した場合、ステップS100に進む。ステップS100では、CPU110が通信中であれば通信を継続する。通信中でない(プレストークボタン140が押下されていない)場合は、そのまま処理を終了する。つまり、プレストークボタン140が押下された場合に通信を再開する。
【0042】
一方、ステップS90において、CPU110が、指紋読み取り部150に対して、指紋が入力されたと判定すると(Yes)、ステップS110に進む。ステップS110では、ステップS90で入力された指紋認証を行う。この処理は、ステップS20と同様の処理を実行する。この結果、失敗であればステップS120に進み、ステップS30と同じ処理を実行する。成功であれば、ステップS130へ進む。
【0043】
次に、ステップS130では、ステップS20と同じように、指紋登録テーブル131から利用状況を特定する。
【0044】
そして、ステップS140を実行する。この内容は、ステップS50と同様であるが、本実施例のステップS130~S150で非常時通信を行う場合を例に説明する。この場合、CPU110は、無線通信装置100の電源がOFFとされていない場合、再度指紋が入力された場合、非常時通信を実行すると判断する。このため、以降のステップでは、無線周波数テーブル(非常時等)133を用いる。S140では、CPU110は、ステップS130で特定された利用状況に対応する通報機能を、無線周波数テーブル(非常時等)133から特定する。そして、CPU110は、特定された通報機能の無線周波数を特定する。なお、本発明は、本態様に限定されるわけではなく、再度入力があった場合、無線周波数テーブル(通常)132も用いてもよい。
【0045】
そして、ステップS150において、CPU110は、無線機能部120の発信機121およびPLLシンセサイザ122を用いて、特定された無線周波数での通信を実行する。この際、本通信は、非常時通信のため、CPU110が以下の少なくとも1つを実行するように制御することがより望ましい。
(1)プレストークボタン140の押下に関係なく通信
(2)他の処理よりも優先的に実行
(3)通報機能の内容を示す情報を通信
なお、ステップS90以降の非常時通信に関しては、特許文献1の技術を代わりに適用してもよい。この場合、無線周波数テーブル(非常時等)133の利用ないし作成を省略できる。
【0046】
以上で図2の説明を終了する。以下、図3に示す指紋登録テーブル131、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133と、その利用方法について説明する。指紋登録テーブル131、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133は、それぞれ、不揮発性メモリ130に格納されている。そして、指紋登録テーブル131は、上述のとおり、指紋認証の基準となる指紋データと利用状況が対応付けられている。また、無線周波数テーブル(通常)132は、無線通信装置100の使用エリアとチャネル、無線周波数が対応付けられ記憶されている。ここで、使用エリアは、指紋登録テーブル131の利用状況と対応している。つまり、同じデータを用いることで、指紋登録テーブル131と無線周波数テーブル(通常)132の各レコードが関連付けられている。このため、指紋登録テーブル131で利用状況を特定すると、無線周波数テーブル(通常)132のレコード、つまり、その無線周波数が特定される。図3の例では、指紋データ01が利用状況「10」に、指紋データ02が利用状況「1」に、指紋データ03が利用状況「5」にそれぞれ対応付けられている。そして、利用状況「10」「1」「5」のそれぞれは、無線周波数テーブル(通常)132の使用エリア「10」「1」「5」に対応している(図3の一点鎖線矢印)。これは、同じデータを記録してもよいし、リンクを張って実現してもよい。このことで、指紋データ01、02、03から、チャネル「19」「10」「14」をそれぞれ特定することになる。つまり、各指(の指紋)からその使用エリアのチャネル(無線周波数)を特定することになる。このようにして、特定された無線周波数により、CPU110の制御により無線通信装置100が通信を行うことになる(この内容は、ステップS60以降で後述)。
【0047】
また、指紋登録テーブル131には、1つの指紋データに対して、複数の利用状況(使用エリア)を登録することが可能である。例えば、図3に示すように、指紋データ10に対して全使用エリア「1~20」を登録することで、一斉通報を行うことが可能になる。なお、この場合、「1~20」の代わりに「一斉通報」との機能を登録してもよい。この場合の指紋登録テーブル131と、無線周波数テーブル(通常)132および無線周波数テーブル(非常時等)133の対応関係を、図3の破線矢印で示す。なお、図3では、一斉通報の場合、無線周波数テーブル(非常時等)133とも対応させている(破線矢印)が、無線周波数テーブル(通常)132との対応に限定してもよい。
【0048】
ここで、無線周波数テーブル(通常)132は、その名の通り通常の利用の際に用いるものであるが、無線通信装置100は、非常通報等が必要になることがある。このために、本実施例では、無線周波数テーブル(非常時等)133をさらに有する。これは作業者が転倒の際の転倒発報や火災などの際の非常通報を行うために用いられる。無線周波数テーブル(非常時等)133の構造自体は、無線周波数テーブル(通常)132と同様である。このため、指紋登録テーブル131の利用状況として「転倒発報」「非常通報」を記録し、無線周波数テーブル(非常時等)133と対応付けがなされる。その例は、図3の実線矢印のとおりである。つまり、指紋データ08が「転倒発報」に、指紋データ09が「非常通報」に対応する。なお、「転倒発報」に関しては、無線通信装置100が内蔵する(図示せず)加速度センサの検知結果と併用してもよい。つまり、加速度センサで転倒を検知し、指紋データ08が用いられた場合、「転倒発報」機能を実行する。なお、本機能は、加速度センサの検知結果のみを用いてもよい。
このように、無線周波数テーブル(非常時等)133は、通報機能毎に設ける。また、非常時への対応のため、用いられる無線周波数を、無線周波数テーブル(通常)132よりも優位な無線周波数を設定することが望ましい。
【0049】
なお、本実施例では、指紋登録テーブル131、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133をそれぞれ別テーブルで構成した。このことで、作業者の入れ替わりがあっても、サーバ200での指紋登録を行うことで、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133をそのまま利用できる利点がある。但し、これらについては、1つのテーブルで構成してもよい。つまり、1つのテーブルに、指紋データ、利用状況(使用エリア、通報機能)、チャネル、無線周波数を設ける。さらに、指紋登録テーブル131の利用状況の代わりに、チャネルを用いてもよい。この場合、無線周波数テーブル(通常)132、無線周波数テーブル(非常時等)133の使用エリアやチャネルを省略できる。この省略は、各テーブルを1つで実現する場合も同様である。
【0050】
以上で、図3の説明を終了する。
【0051】
このような本実施例により指紋登録を行っていない作業者に対しては、無線通信装置100は無線周波数の設定ないしこれを用いた通信を行わない為、盗聴などの不正使用を防ぐことができる。
【0052】
なお、本実施例では、指紋に代わって、疑似指紋付き手袋を利用することも可能である。この場合、ウレタンなどの疑似指紋を、作業員が用いる手袋に設ける。そして、この手袋を嵌めて作業員が無線通信装置100を操作する。このことで、作業員は手袋を外さず作業および操作することが可能になる。この場合、使用エリア毎ないし無線通信装置100毎に、手袋を用意することが望ましい。
【0053】
また、本実施例では、指紋データを用いるが、他の生体情報を用いてもよい。例えば、静脈データ(指、手のひら等)、虹彩データなど、1人から複数個の取得の可能性が高い情報が含まれる。これら生体情報では、各生体情報に利用状況、エリアを割り当てることが可能になる。
【0054】
さらに、複数の種類の生体情報(例えば、指紋データと虹彩データ)を併用してもよい。この場合、無線通信装置100には、各生体情報を読み取る機能を設ける。そして、各生体情報ないしその種別を利用状況、エリアに割り当てることが可能である。また、複数の種類の生体情報を用いる場合、1人から複数個の取得ができなくともよい(1人からの1つの生体情報)。この場合、生体情報の種別ごとに利用状況を割り当てることで対応可能である。
【0055】
その上、本実施例に、特許文献2で開示される接続状況の監視技術を適用してもよい。
【0056】
以上のとおり、本実施例では、無線通信装置100の利用者(作業者)が周波数変更方法を知らなくても、自動的に使用する周波数や、他のパラメータを選択する事が可能である。また指紋読取り結果を各機能に割り当て、指紋読み取り時に機能を動作させることが可能である。これらにより操作性、利便性が向上する。
【0057】
また、無線通信装置100の利用者の無線周波数の設定誤り等の誤動作も無くなり、通話不良による事故も防止できる。また、指紋読取りにより指紋登録者以外の使用ができなくなるため、不正使用を防止でき、セキュリティの向上も図れる。
【符号の説明】
【0058】
100…無線通信装置
110…CPU
120…無線機能部
121…発信機
122…PLLシンセサイザ
130…不揮発性メモリ
140…プレストークボタン
150…指紋読み取り部
200…サーバ
300…指紋読み取り装置
400…ネットワーク
500…基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6