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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ドア構造
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20231114BHJP
   E05F 11/48 20060101ALI20231114BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20231114BHJP
   B60J 5/04 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
E05F11/38 E
E05F11/48 D
B60J1/17 C
B60J5/04 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020021498
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021127579
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 明次
(72)【発明者】
【氏名】小部 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小池 敬行
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-48517(JP,A)
【文献】特開2017-48527(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064266(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0294951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38
E05F 11/48
B60J 1/17
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウインドウと、
前記サイドウインドウを昇降移動させる昇降装置と、
前記サイドウインドウの縁部を移動方向に摺動自在に案内するサッシュとを備えるドア構造であって、
前記昇降装置は、
駆動部と、前記駆動部の駆動によって前記サイドウインドウを昇降移動させるキャリアプレートとを備え、
前記サイドウインドウは、前記キャリアプレートが前記サッシュに沿った移動をする位置に前記キャリアプレートが取り付けられ、
前記キャリアプレートは、
前記サイドウインドウを支持するキャリアプレート本体と、前記サイドウインドウから伝わる水分を排水する排水路とを有し、
前記キャリアプレート本体は、前記サイドウインドウの下端に対応した上端部を有し、
前記サッシュと前記キャリアプレートとは、前記上端部を介して前記排水路に至った水分が前記サッシュに伝わるように配置された、
ドア構造。
【請求項2】
前記キャリアプレートは、前記サイドウインドウの下端において前記サッシュによって案内される縁部側に設けられ、
前記排水路は、前記キャリアプレート本体における少なくとも前記サイドウインドウの表面側及び裏面側の何れか一方側に設けられた、
請求項1に記載のドア構造。
【請求項3】
前記キャリアプレートは、
前記キャリアプレート本体における厚み方向及び移動方向との直交方向の一方側の端部を、前記サッシュ側に向けて配置され、
前記排水路は、
前記キャリアプレート本体における厚み方向及び移動方向との直交方向の他方側の端部から、前記サッシュ側に向かって下方に傾斜する第一底面を有する、
請求項1または2に記載のドア構造。
【請求項4】
前記排水路は、
前記キャリアプレート本体における厚み方向及び移動方向との直交方向の他方側において、前記サッシュ側との反対側に突出し、且つ前記第一底面と繋がる第二底面を有し、
前記キャリアプレートは、
前記キャリアプレート本体における厚み方向及び移動方向との直交方向の中央において、
前記キャリアプレート本体の上端から前記排水路の第一底面に向かって延びるリブ部をさらに有する、
請求項3に記載のドア構造。
【請求項5】
前記排水路は、
前記第一底面における前記キャリアプレート本体側との反対側の端部において、
上方に突出し、且つ前記第一底面に沿って前記サッシュ側に向って延びる突起部をさらに有する、
請求項3または請求項4に記載のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドア構造として、サッシュによって昇降移動可能に案内されるサイドウインドウと、サイドウインドウの下端をキャリアプレートによって支持し、ケーブルを介して駆動部による駆動力をキャリアプレートに伝達することにより、キャリアプレートとともにサイドウインドウを昇降させる昇降装置とが備えられたものが知られている。
このようなドア構造においては一般的に、昇降装置はサイドウインドウの下方に配置され、車両のドアを構成するインナー側ドアパネル及びアウター側ドアパネルによって囲まれた空間部内に収容されている。
【0003】
ここで、例えばトラックなどのキャブオーバ型の車両には、運転席から見た車体側方の視界をより広く確保するために、少なくとも助手席側のドアにおけるサイドウインドウの下方において、当該ドアのインナー側ドアパネル及びアウター側ドアパネルの双方に、側方視界ウインドウが設けられているものがある。
このような車両においては、インナー側ドアパネル及びアウター側ドアパネルによって囲まれた空間部におけるスペース上の制約等から、例えば、昇降装置は、側方視界ウインドウの上方から下部に亘る領域において、側方視界ウインドウの端部(例えば、側方視界ウインドウの厚み方向、及びキャリアプレートの移動方向との直交方向の端部)に隣接してキャリアプレートが昇降移動するように配置され、また、サッシュは、キャリアプレートの側方視界ウインドウ側とは反対側において、上下方向に延びるようにして配置されている。
このため、例えば、サイドウインドウに付着した水滴が、サイドウインドウと、インナー側ドアパネルまたはアウター側ドアパネルとの隙間などを介してドア内部に侵入すると、侵入した水滴は、サイドウインドウの下端を伝ってキャリアプレートに到達し、その後、キャリアプレートから落下することによって側方視界ウインドウに付着して当該側方視界ウインドウを曇らせ、運転席から見た車体側方の視界を妨げる要因となり得る虞があった。
【0004】
そこで、このようなキャリアプレートから落下する水滴が側方視界ウインドウに付着するのを防止するための技術として、例えば特許文献1においては、キャリアプレートの少なくとも一方のプレート表面(表側及び/または裏側のプレート表面)に、キャリアプレートの前側の下端角部に向かって傾斜する複数本の横リブを設けたキャリアプレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-48527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1におけるキャリアプレートによれば、サイドウインドウの下端を伝ってキャリアプレートに到達した水滴は、横リブを伝ってキャリアプレートの前側の下端角部に一旦集められ、その後、当該下端角部から側方視界ウインドウを避けて落下し排水されることとなり、キャリアプレートの下端からランダムに水滴が落下して側方視界ウインドウに付着することを抑制することができる。
しかしながら、キャリアプレートの上記下端角部から落下する水滴が、常に側方視界ウインドウを避けて落下するとは限らず、例えば車両の発進や停止による衝撃によって、不意に任意の方向に落下して側方視界ウインドウに付着する場合がある。
【0007】
本発明の目的は、例えばサイドウインドウの下方に側方視界ウインドウが設けられていても、サイドウインドウに付着した水滴が側方視界ウインドウに付着することなく、確実に下方に排水することができるドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係るドア構造は、サイドウインドウと、前記サイドウインドウを昇降移動させる昇降装置と、前記サイドウインドウの縁部を移動方向に摺動自在に案内するサッシュとを備えるドア構造であって、前記昇降装置は、駆動部と、前記駆動部の駆動によって前記サイドウインドウを昇降移動させるキャリアプレートとを備え、前記サイドウインドウは、前記キャリアプレートが前記サッシュに沿った移動をする位置に前記キャリアプレートが取り付けられ、前記キャリアプレートは、前記サイドウインドウを支持するキャリアプレート本体と、前記サイドウインドウから伝わる水分を排水する排水路とを有し、前記キャリアプレート本体は、前記サイドウインドウの下端に対応した上端部を有し、前記サッシュと前記キャリアプレートとは、前記上端部を介して前記排水路に至った水分が前記サッシュに伝わるように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明のドア構造によれば、例えばサイドウインドウの下方に側方視界ウインドウが設けられていても、サイドウインドウに付着した水滴が側方視界ウインドウに付着するのを抑制し、視界を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るドア構造の全体的な構成を示した図である。
図2図1のドア構造に設けられる第一キャリアプレートの構成を示した図であって、左斜め後上方から見た図である。
図3図1のドア構造に設けられる第一キャリアプレートの構成を示した図であって、左斜め上方から見た図である。
図4図1のドア構造に設けられる第一キャリアプレートの構成を示した図であって、左方から見た図である。
図5】本発明の一実施形態に係るドア構造において昇降装置の動作を示した図であって、(a)はサイドウインドウが上端拘束位置に到達した状態を示した図であり、(b)はサイドウインドウが下端拘束位置に到達した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態に係るドア構造100の構成について、図1図5を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1及び図5中に示した矢印の方向によって、ドア構造100の上下方向、前後方向、及び左右方向を規定して記述する。また、図2図3、及び図4中に示した矢印の方向によって、第一キャリアプレート20Aの上下方向、前後方向、及び左右方向を規定して記述する。
【0013】
[ドア構造100の全体構成]
先ず、ドア構造100の全体構成について、図1及び図5を用いて説明する。
図1において、本実施形態におけるドア構造100は、開閉可能な窓ガラス(ウインドウ)を備えるドア構造であって、例えば、車両のドア等に適用されるものである。
このようなドア構造100の一例として、例えば後述するように、トラックなどのキャブオーバ型の車両に設けられるサイドドア101(図5を参照)が挙げられる。
【0014】
なお、ドア構造100の適用例については、本実施形態に示されるような、キャブオーバ型トラックのサイドドア101に限定されることはなく、例えば、乗用車等の車両に設けられるフロントドアやリアドア、或いはバックドアであってもよく、また住設分野における自動開閉窓を備えたドア等であってもよい。
【0015】
ドア構造100は、インナー側ドアパネル及びアウター側ドアパネル等からなるサイドドア101、サイドドア101の開口部102(図5を参照)を開閉可能なサイドウインドウW、サイドウインドウWを昇降移動させる昇降装置1、並びにガイド機構部5などを備える。
【0016】
ここで、ガイド機構部5は、昇降装置1における後述するキャリアプレート20(第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20B)の移動を案内するものであり、例えば本実施形態においては、第一キャリアプレート20Aの移動を案内するサッシュ51、及び第二キャリアプレート20Bの移動を案内するガイドレール52により構成される。
【0017】
サッシュ51は、サイドウインドウWの縁部(本実施形態においては、前端側の縁部)を移動方向(本実施形態においては、上下方向)に摺動自在に案内するとともに、第一キャリアプレート20Aの移動方向(上下方向)を案内する機能も併せ持つ。
サッシュ51は、例えばサイドウインドウWの前端側の縁部に沿って、上下方向に延びるようにして配置され、サイドウインドウWとともに第一キャリアプレート20Aを、自身(サッシュ51)の軸回り方向に回転不能に保持しつつ、上記移動方向(上下方向)に摺動可能に支持する。
【0018】
一方、ガイドレール52は、第二キャリアプレート20Bの移動方向(上下方向)のみを単独で案内するものである。
ガイドレール52は、例えばサイドウインドウWの下端における後端側の近傍おいて、第二キャリアプレート20Bの移動方向(上下方向)に延びるようにして配置され、第二キャリアプレート20Bを、自身(ガイドレール52)の軸回り方向に回転不能に保持しつつ、上記移動方向(上下方向)に摺動可能に支持する。
【0019】
そして、これらのサッシュ51及びガイドレール52は、例えば、図示せぬブラケット等を介して、サイドドア101を構成するインナー側ドアパネル、またはアウター側ドアパネル(図示せず)に直接取付けられている。
【0020】
なお、ガイド機構部5の構成については、キャリアプレート20の移動を案内する限りにおいて特に限定されることはなく、サッシュ51及びガイドレール52の延長する方向や長さについては、適宜変更可能である。
また、サッシュ51と同様に、ガイドレール52が、サイドウインドウWの後端側の縁部を移動方向(上下方向)に摺動自在に案内する機能を、併せ持つ構成としてもよい。
【0021】
昇降装置1は、索条体を介して駆動源による駆動力を移動対象物に伝達し、当該移動対象物を移動させる対象物移動装置である。
昇降装置1は、ウインドウレギュレータとしてサイドドア101に設けられ、サイドウインドウWを移動対象物として、索条体であるケーブル40を介してサイドウインドウWを上下方向に移動させる。
【0022】
昇降装置1は、キャリアプレート20を移動させることにより、キャリアプレート20に接続されたサイドウインドウWを移動(昇降)させて、サイドドア101の開口部102を開閉する。
昇降装置1の適用例がウインドウレギュレータの場合、キャリアプレート20の移動方向は、移動対象物であるサイドウインドウWの昇降方向を基準として規定される方向である。
【0023】
ここで、本実施形態においては、サイドウインドウWの厚み方向における一方側(本実施形態においては、左側)が車両の外側となり、且つサイドウインドウWの厚み方向における他方側(本実施形態においては、右側)が車両の内側、即ち運転室側となるように昇降装置1が配置されている。
但し、これに限定されることはなく、サイドウインドウWの厚み方向における一方側(左側)及び他方側(右側)が、それぞれ車両の内側(運転室側)及び外側となるように昇降装置1が配置されていてもよい。
なお、以下の説明においては便宜上、サイドウインドウWにおける車両の外側(即ち、サイドウインドウWの厚み方向の一方側(左側))に面する板面を表面と規定し、また車両の内側(即ち、サイドウインドウWの厚み方向の他方側(右側))に面する板面を裏面と規定して記述する。
【0024】
また、本実施形態においては、略垂直方向にキャリアプレート20が昇降するように構成されているが、これに限定されることはなく、キャリアプレート20は、上下方向に対して斜め方向に昇降するように構成されていてもよい。
但し、キャリアプレート20の移動方向は、上述したサッシュ51及びガイドレール52の延出方向によって規定される。
【0025】
さらに、本実施形態において、昇降装置1は、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bからなる一対のキャリアプレート20によってサイドウインドウWを支持して昇降させるダブルリフト式のウインドウレギュレータに適用しているが、これに限定されるものではない。
即ち、少なくとも後述する構成からなる第一キャリアプレート20Aを有する限りにおいて、昇降装置1は、1つのキャリアプレートによってサイドウインドウWを支持して昇降させるシングルリフト式のウインドウレギュレータ、或いはデルタタイプのウインドウレギュレータなどに適用してもよい。
つまり、本実施形態のように、昇降装置1の適用例がウインドウレギュレータである場合、その方式やタイプについては、特定のものに限定されることはない。
【0026】
昇降装置1は、主に、駆動部10、キャリアプレート20、方向転換部材30、及びケーブル40等を備える。
【0027】
駆動部10は、昇降装置1の駆動源として設けられるものであり、ケーブル40を介してキャリアプレート20に駆動力を伝達し、キャリアプレート20を昇降移動させる。
駆動部10は、例えば本実施形態においては、ドラム11、ドラム11を収納するドラムハウジング12、及び電気的に駆動する電動モータ13等を有する。
【0028】
そして、電動モータ13の出力軸は、駆動力を物理的に供給可能な図示せぬ動力伝達機構を介して、ドラム11と接続されている。
また、電動モータ13は、図示せぬ電源に接続されており、当該電源より送電された電力によって駆動される。
【0029】
ドラム11は、外周面に螺旋状の溝部が形成された円筒形状の部材からなり、ドラムハウジング12に設けられるドラム軸12aの軸周り方向に回転可能な状態で、ドラムハウジング12に収納されている。
また、ドラム11には、ケーブル40(具体的には、後述する上昇用ケーブル42、及び下降用ケーブル43)の一端が接続されており、上記溝部に沿って、これらの上昇用ケーブル42及び下降用ケーブル43は、互いに逆向きとなるようにしてドラム11に巻き取られている。
【0030】
一方、ドラムハウジング12は、取付用ブラケット12bを介して所定箇所(本実施形態においては、ガイドレール52の下端)に取付けられ、ドラム軸12aを介して回転可能にドラム11を貫通させて支持するとともに、ドラム11に接続された上昇用ケーブル42及び下降用ケーブル43の一端を、ドラム11に向かって各々案内する。
また、ドラムハウジング12は、取付用ブラケット12bを介して、電動モータ13、及び上記動力伝達機構(図示せず)等を支持する。
【0031】
なお、ドラムハウジング12が取付けられる所定箇所については、本実施形態に限定されることはなく、例えば、ガイドレール52の上端や上下方向中央等であってもよいし、サッシュ51の上端、下端、或いは上下方向中央等であってもよいし、サイドドア101を構成するインナー側ドアパネル、またはアウター側ドアパネル(図示せず)に直接取付けられていてもよい。
【0032】
そして、電動モータ13からの駆動力によって、ドラム11がドラム軸12aを中心に回転駆動されることにより、ドラム11にケーブル40が巻き取られ、或いはドラム11に巻き取られたケーブル40が繰り出され、キャリアプレート20が昇降される。
【0033】
具体的には、例えば、ドラム軸12aを中心にして正転方向(図1中の矢印Aの方向)にドラム11が回転されることにより、上昇用ケーブル42はドラム11に巻き取られ、且つ下降用ケーブル43はドラム11から繰り出されることとなり、キャリアプレート20は、ケーブル40に牽引されて上方に移動(上昇)する。
また、例えば、ドラム軸12aを中心にして逆転方向(図1中の矢印Bの方向)にドラム11が回転されることにより、上昇用ケーブル42はドラム11から繰り出され、且つ下降用ケーブル43はドラム11に巻き取られることとなり、キャリアプレート20は、ケーブル40に牽引されて下方に移動(下降)する。
【0034】
キャリアプレート20は、駆動部10の駆動によって、取り付けられた移動対象物(本実施形態においては、サイドウインドウW)を、所定の移動方向(本実施形態においては、上下方向)に移動(昇降移動)させる部材である。
【0035】
キャリアプレート20は、複数の位置を往復移動する部材であり、例えば本実施形態においては、第一位置である上端拘束位置P1(図5(a)を参照)と、第二位置である下端拘束位置P2(図5(b)を参照)との間を移動する。
【0036】
ここで、上端拘束位置P1は、キャリアプレート20の移動方向の一方側(本実施形態においては、上側)に設定された任意の位置である。
また、下端拘束位置P2は、キャリアプレート20の移動方向の他方側(本実施形態においては、下側)に設定された任意の位置である。
【0037】
そして、キャリアプレート20は、ケーブル40によって駆動力が伝達されることにより、サッシュ51及びガイドレール52に沿って、上端拘束位置P1と下端拘束位置P2との間を往復移動する。
【0038】
キャリアプレート20は、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bにより構成され、これらの第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bは、サイドウインドウWの下端における互いに離間した二箇所に配置される。
例えば本実施形態においては、サイドウインドウWの下端における一端側(本実施形態においては、前端側)に、第一キャリアプレート20Aが配置され、また上記下端における他端側(本実施形態においては、後端側)の近傍に第二キャリアプレート20Bが配置される。
【0039】
そして、第一キャリアプレート20Aは、サイドウインドウWに取り付けられ、当該サイドウインドウWの前端側の縁部とともに、サッシュ51に沿って移動(昇降)可能にサイドウインドウWを保持する。
換言すると、サイドウインドウWは、第一キャリアプレート20Aがサッシュ51に沿った移動をする位置に、第一キャリアプレート20Aが取り付けられている。
【0040】
また、第二キャリアプレート20Bは、サイドウインドウWに取り付けられ、ガイドレール52に沿って移動(昇降)可能にサイドウインドウWを保持する。
換言すると、サイドウインドウWは、第二キャリアプレート20Bがガイドレール52に沿った移動をする位置に、第二キャリアプレート20Bが取り付けられている。
【0041】
第一キャリアプレート20Aの上端には、後述する連結ケーブル41の一端41aが挿入して係止されており、連結ケーブル41の一端41aは、第一キャリアプレート20Aの上端から上方に向かって延出されている。
また、第一キャリアプレート20Aの下端には、下降用ケーブル43の他端43aが挿入して係止されており、下降用ケーブル43の他端43aは、第一キャリアプレート20Aの下端から下方に向かって延出されている。
【0042】
一方、第二キャリアプレート20Bの上端には、上昇用ケーブル42の他端42aが挿入して係止されており、上昇用ケーブル42の他端42aは、第二キャリアプレート20Bの上端から上方に向かって延出されている。
また、第二キャリアプレート20Bの下端には、連結ケーブル41の他端41bが挿入して係止されており、連結ケーブル41の他端41bは、第二キャリアプレート20Bの下端から下方に向かって延出されている。
【0043】
そして、第一キャリアプレート20Aは、サッシュ51に嵌合された状態で摺動し、サッシュ51によって移動方向を案内されつつ昇降する。
また、第二キャリアプレート20Bは、ガイドレール52に嵌合された状態で摺動し、ガイドレール52によって移動方向を案内されつつ昇降する。
【0044】
ところで、上述したように、キャリアプレート20の構成については、本実施形態のように、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bからなる一対のキャリアプレートからなる構成に限定されるものではなく、第一キャリアプレート20Aに相当する1個のキャリアプレートによって構成されていてもよい。
なお、第一キャリアプレート20Aの構成についての詳細は、後述する。
【0045】
方向転換部材30は、ケーブル40の延びる方向を転換する部材である。
方向転換部材30は、第一キャリアプレート20Aの上方及び下方にそれぞれ設けられる第一方向転換部材31及び第二方向転換部材32、並びに第二キャリアプレート20Bの上方及び下方にそれぞれ設けられる第三方向転換部材33及び第四方向転換部材34により構成される。
【0046】
これらの第一方向転換部材31~第四方向転換部材34は、例えば本実施形態においては、樹脂製のプーリによって構成されている。
そして、第一方向転換部材31及び第二方向転換部材32は、サッシュ51の上端及び下端において、各々軸心を中心にして回転可能に支持される。また第三方向転換部材33及び第四方向転換部材34は、ガイドレール52の上端及び下端において、各々軸心を中心にして回転可能に支持される。
つまり、第一方向転換部材31及び第二方向転換部材32は、第一キャリアプレート20Aの移動方向に互いに離間して配置され、また、第三方向転換部材33及び第四方向転換部材34は、第二キャリアプレート20Bの移動方向に互いに離間して配置されている。
【0047】
そして、後述するように、第一方向転換部材31は、第一キャリアプレート20Aの上端に係止された連結ケーブル41の延びる方向を、上方に延びる方向から第四方向転換部材34に向かって延びる方向に転換する。
また、第二方向転換部材32は、第一キャリアプレート20Aの下端に係止された下降用ケーブル43の延びる方向を、下方に延びる方向からドラム11に向かって延びる方向に転換する。
また、第三方向転換部材33は、第二キャリアプレート20Bの上端に係止された上昇用ケーブル42の延びる方向を、上方に延びる方向からドラム11に向かって延びる方向に転換する。
さらに、第四方向転換部材34は、第一方向転換部材31を経由して導かれた連結ケーブル41の延びる方向を、第二キャリアプレート20Bの下端に向かって上方に延びる方向に転換する。
【0048】
なお、方向転換部材30の構成については、本実施形態のように、樹脂製のプーリに限定されるものではなく、例えば、円弧状のガイド面を有し、サッシュ51またはガイドレール52に対して、回転不能に固定される樹脂製の部材などであってもよい。
【0049】
ケーブル40は、駆動部10の駆動によって、キャリアプレート20を所定の移動方向(上下方向)に移動させる部材である。
具体的には、ケーブル40は、駆動部10の駆動力を牽引力に変換し、キャリアプレート20を所定の移動方向(上下方向)に牽引して移動させる。
【0050】
ケーブル40は、駆動部10とキャリアプレート20とを接続する長尺の部材であり、駆動部10で発生する駆動力をキャリアプレート20に伝達する。
ここで、ケーブル40については、例えば、金属素線及び樹脂繊維素線のうちの少なくとも一方を複数用いて撚り合わせたワイヤを用いることができる。
【0051】
そして、ケーブル40は、その延びる方向が、方向転換部材30によって転換可能な、可撓性を有する。
なお、本実施形態において、ケーブル40は、第一方向転換部材31~第四方向転換部材34に架設されている。
【0052】
ケーブル40は、インナーケーブルである連結ケーブル41、上昇用ケーブル42、及び下降用ケーブル43などにより構成される。
そして、連結ケーブル41は、連結用アウターケーシング44内に摺動可能に配置され、連結用アウターケーシング44によって、外周を覆われるとともに配索経路が規制されている。
また、上昇用ケーブル42は、上昇用アウターケーシング45内に摺動可能に配置され、上昇用アウターケーシング45によって、外周を覆われるとともに配索経路が規制されている。
さらに、下降用ケーブル43は、下降用アウターケーシング46内に摺動可能に配置され、下降用アウターケーシング46によって、外周を覆われるとともに配索経路が規制されている。
【0053】
連結ケーブル41、上昇用ケーブル42、及び下降用ケーブル43は、それぞれ上述したように、第一方向転換部材31~第四方向転換部材34に掛けまわされることによって配索方向が転換され、サッシュ51及びガイドレール52の間で交差するように配索されている。
また、連結ケーブル41、上昇用ケーブル42、及び下降用ケーブル43は、駆動部10と、これらの第一方向転換部材31~第四方向転換部材34との間の領域において、それぞれ張力を付与された状態で配置されている。
【0054】
連結ケーブル41は、第一キャリアプレート20Aを上方に牽引するものである。
連結ケーブル41は、その一端41aが第一キャリアプレート20Aの上端に接続され、第一キャリアプレート20Aからサッシュ51の上方に沿って延在し、サッシュ51の上端に位置する第一方向転換部材31に巻き掛けられて配索方向が転換されている。
また、第一方向転換部材31によって配索方向が転換された連結ケーブル41は、ガイドレール52の下端に位置する第四方向転換部材34に巻き掛けられて、配索方向をガイドレール52の上方に転換され、その他端41bが第二キャリアプレート20Bの下端に接続されている。
【0055】
そして、連結ケーブル41は、第一キャリアプレート20Aと第一方向転換部材31との間、第一方向転換部材31と第四方向転換部材34との間、及び第四方向転換部材34と第二キャリアプレート20Bとの間において、張力を付与された状態で配置されている。
【0056】
上昇用ケーブル42は、第二キャリアプレート20Bを上方に牽引するものである。
上昇用ケーブル42は、その一端が駆動部10のドラム11に接続され、ガイドレール52の上端に位置する第三方向転換部材33に巻き掛けられることにより、配索方向がガイドレール52の下方に転換され、その他端42aが第二キャリアプレート20Bの上端に接続されている。
【0057】
そして、上昇用ケーブル42は、駆動部10の駆動力によって、ドラム11に巻き取られ、または繰り出される。
なお、駆動部10と第三方向転換部材33との間の領域において、上昇用ケーブル42は、上昇用アウターケーシング45によって外周を覆われている。
また、上昇用ケーブル42は、第二キャリアプレート20Bと第三方向転換部材33との間、及び第三方向転換部材33と駆動部10との間とにおいて、張力を付与された状態で配置される。
【0058】
下降用ケーブル43は、第一キャリアプレート20A及び駆動部10を介して、連結ケーブル41と上昇用ケーブル42とを連結し、駆動部10の駆動力を、連結ケーブル41及び上昇用ケーブル42にそれぞれ伝達する。
また、下降用ケーブル43は、駆動部10の駆動力によって、上昇用ケーブル42がドラム11に巻き取られる際にはドラム11から繰り出され、上昇用ケーブル42がドラム11から繰り出される際にはドラム11に巻き取られる。
【0059】
下降用ケーブル43は、その一端が駆動部10のドラム11に接続され、サッシュ51の下端に位置する第二方向転換部材32に巻き掛けられることにより、配索方向がサッシュ51の上方に転換され、その他端43aが第一キャリアプレート20Aの下端に接続されている。
また、下降用ケーブル43は、駆動部10と第二方向転換部材32との間、及び第一キャリアプレート20Aと第二方向転換部材32との間において、張力を付与された状態で配置されている。
【0060】
そして、下降用ケーブル43は、上昇用ケーブル42が駆動部10のドラム11に巻き取られると、ドラム11から第二方向転換部材32側に繰り出され、第一キャリアプレート20Aの上昇に追従して移動する。
また、下降用ケーブル43は、上昇用ケーブル42が駆動部10のドラム11から繰り出されると、ドラム11に巻き取られ、第二方向転換部材32側から駆動部10側に移動し、第一キャリアプレート20Aを下方に向かって牽引する。
【0061】
このように、ケーブル40は、駆動部10のドラム11によって上昇用ケーブル42が巻き取られ、或いは繰り出されることにより、上昇用ケーブル42の配索方向への移動に追従しつつ、下降用ケーブル43を介して連結ケーブル41も移動する。
そして、連結ケーブル41、上昇用ケーブル42、及び下降用ケーブル43の移動によって、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bが、互いに同調しつつ昇降する。
【0062】
以上のような構成からなるドア構造100において、移動対象物であるサイドウインドウWは、下端における前端側に第一キャリアプレート20Aが接続され、且つ下端における後端側の近傍に第二キャリアプレート20Bが接続され、これらの第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bとともに移動する。
【0063】
そして、図5に示すように、ドア構造100は、昇降装置1によってサイドウインドウWを所定の移動方向(上下方向)に移動させることにより、サイドウインドウWが配置されるサイドドア101の開口部102を、遮蔽状態(図5(a)に示す状態)と開放状態(図5(b)に示す状態)とを切り替えるなど、目的に応じた移動対象物の機能を発揮させることができる。
【0064】
具体的には、サイドウインドウWは、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bを介して、サッシュ51及びガイドレール52によって各々案内されつつ、上下方向に移動可能に設けられている。
そして、図5(a)に示すように、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bが互いに同調しつつ上昇し、上端拘束位置P1にそれぞれ到達することにより、サイドウインドウWは、サイドドア101の開口部102に沿って設けられる、開口側サッシュ103の上端と当接し、開口部102の状態を遮蔽状態にする。
また、図5(b)に示すように、第一キャリアプレート20A及び第二キャリアプレート20Bが互いに同調しつつ下降し、下端拘束位置P2にそれぞれ到達することにより、サイドウインドウWは、サイドドア101の下部に設けられた収納部104に収納され、開口部102の状態を開放状態にする。
【0065】
なお、開放状態におけるドア構造100においては、本実施形態のように、サイドウインドウWの板面全体が、サイドドア101の収納部104内に、完全に収納されていてもよく、また、サイドウインドウWの板面の一部が収納部104内に収納され、且つ残りの一部が開口部102に残された状態であってもよい。
【0066】
ところで、本実施形態におけるサイドドア101は、例えば、トラックなどのキャブオーバ型の車両に設けられるサイドドアであって、開口部102の下方には、運転席から見た車体側方の視界をより広く確保するために、側方視界ウインドウWaが設けられている。
また、サイドドア101内の空間部(即ち、サイドドア101を構成するインナー側ドアパネル及びアウター側ドアパネルによって囲まれた空間部)を確保するために、サイドウインドウWの下端は、後端側から前端側に向かって下方に傾斜する傾斜部W1を有する。
【0067】
ここで、本実施形態においては、サイドドア101内の空間部におけるスペース上の制約等から、例えば、側方視界ウインドウWaの一端側の縁部(本実施形態においては、前端側の縁部)に沿ってサッシュ51が配置されている。
このような場合、第一キャリアプレート20Aは、側方視界ウインドウWaの前端側の縁部に隣接して昇降移動することとなる。
【0068】
その結果、例えば、サイドウインドウWに付着した水滴がサイドドア101内に侵入すると、侵入した水滴は、サイドウインドウWの下端における傾斜部W1を伝って前端側に移動し、その後、第一キャリアプレート20Aに到達した水滴は、第一キャリアプレート20Aの下端からランダムに落下して、側方視界ウインドウWaの板面に付着し、側方視界ウインドウWaを曇らせる要因となり得る。
【0069】
本実施形態においては、後述するように、サイドウインドウWの下端を伝って第一キャリアプレート20Aに到達した水滴は、第一キャリアプレート20Aの所定側、即ちサッシュ51側に確実に導かれて排水される構成となっており、排水された水滴は、その後、サッシュ51を伝って下方に移動することから、このような側方視界ウインドウWaの板面に水滴が付着するのを抑制し、側方視界ウインドウWaを曇らせる要因を排除することができる。
【0070】
[第一キャリアプレート20Aの構成]
次に、第一キャリアプレート20Aの構成について、図2乃至図4を用いて詳述する。
なお、以下の説明については、前述したように、サイドウインドウWにおける厚み方向の一方側(左側)を表面側と規定し、また厚み方向の他方側(右側)を裏面側と規定して記述する。
【0071】
第一キャリアプレート20Aは、本発明に係るドア構造に設けられるキャリアプレートを具現化したものであり、サイドウインドウWから伝わる水分を、第一キャリアプレート20Aの下端からランダムに落下させることなく、確実にサッシュ51へと導き、排水することを特徴とするものである。
第一キャリアプレート20Aは、図2に示すように、主にキャリアプレート本体21、排水路22、ホルダ規制部23及びリブ部24等を有する。
【0072】
キャリアプレート本体21は、第一キャリアプレート20Aの基体となる部位である。
キャリアプレート本体21は、略板状に形成され、第一キャリアプレート20Aの移動方向との直交方向(本実施形態においては、左右方向)に厚み方向を向けた状態で配置される。
【0073】
キャリアプレート本体21は、サイドウインドウWの下端に対応した上端部を有し、当該上端部を介してサイドウインドウWを支持する。
具体的には、キャリアプレート本体21の上端部は、例えば上記移動方向及び厚み方向との直交方向(本実施形態においては、前後方向)の両側において上方に突出して設けられ、サイドウインドウWの厚みと略同程度の厚みを有し、且つサイドウインドウWの下端に即した端面を有する一対のウインドウ載せ部21aによって構成されている。
【0074】
そして、キャリアプレート本体21は、サイドウインドウWの下端に沿って、これらのウインドウ載せ部21aを突き合せた状態で配置され、サイドウインドウWを支持する。
【0075】
キャリアプレート本体21の平面中央には、貫通孔21bが設けられている。
また、図4に示すように、キャリアプレート本体21の一方側(例えば、サイドウインドウWの表面側であって、本実施形態においては左側)の板面において、貫通孔21bの下方には、上方に向かって開口する略V字状に湾曲形成された支え面Tが設けられている。
なお、支え面Tは、後述するホルダ規制部23及びリブ部24によって構成される。
【0076】
一方、サイドウインドウWの下端における前端部には、ガラスホルダ6が固定されている。
ガラスホルダ6は、下方に向かって突出する板状の突設片61を有し、突設片61の突設端部61aは、上記支え面Tに即した略V字状に湾曲形成されている。
また、突設片61の平面中央には、キャリアプレート本体21に設けられる貫通孔21bと、略同形状の貫通孔61bが形成されている。
【0077】
そして、サイドウインドウWの下端における前端部に第一キャリアプレート20Aを配置させた状態において、ガラスホルダ6は、キャリアプレート本体21における前後方向の中央に位置することとなり、突設片61の突設端部61aは、キャリアプレート本体21の支え面Tに当接される。
その結果、ガラスホルダ6は、支え面Tによって前後方向への位置ずれを規制されることとなり、サイドウインドウWは、ガラスホルダ6を介して第一キャリアプレート20Aに対する前後方向への相対移動を規制される。
【0078】
また、上記支え面Tによってガラスホルダ6の位置ずれを規制された状態において、ガラスホルダ6は、突設片61の貫通孔61bが、キャリアプレート本体21の貫通孔21bと同軸上に位置することとなり、これらの貫通孔21b・61bを介して、ボルト等の締結部材によって締結することにより、第一キャリアプレート20Aは、ガラスホルダ6を介してサイドウインドウWと接続される。
【0079】
キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の一方側の端部(本実施形態においては、前端部)には、ガイド面部21cが設けられている。
ガイド面部21cは、例えば、サイドウインドウWの厚みと略同程度の厚みを有する平板状に形成されており、その上端は、上述したウインドウ載せ部21aと連続するように設定されている。
【0080】
そして、サイドウインドウWの下端に第一キャリアプレート20Aが接続された状態において、ガイド面部21cは、サイドウインドウWの下端に沿って上端を突き合せた状態となり、第一キャリアプレート20Aは、サイドウインドウWの下端においてサッシュ51によって案内される縁部側(本実施形態においては、前方の縁部側)に設けられることとなる。
また、第一キャリアプレート20Aは、キャリアプレート本体21の前端部に設けられるガイド面部21cを、サッシュ51側(本実施形態においては、前側)に向けて配置され、サイドウインドウWとともに、サッシュ51によって上下方向に摺動可能に支持される。
【0081】
具体的には、サッシュ51は、延長方向(上下方向)に見て、第一キャリアプレート20A側(本実施形態においては、後側)に開口する略コ字状の断面形状を有した部材からなり、サッシュ51の内周部には、弾性部材からなるリップ部(図示せず)が、サッシュ51の形状に即して設けられている。
そして、ガイド面部21cは、サイドウインドウWとともに、上記リップ部を介してサッシュ51に摺動可能に挟持される。これにより、第一キャリアプレート20Aは、サイドウインドウWとともに、ガイド面部21cを介してサッシュ51によって上下方向に摺動可能に支持される。
【0082】
排水路22は、サイドウインドウWから第一キャリアプレート20Aに伝わる水分を、サッシュ51に向けて排水するための部位である。
排水路22は、キャリアプレート本体21における、少なくともサイドウインドウWの表面側(キャリアプレート本体21の左面側)及び裏面側(キャリアプレート本体21の右面側)の何れか一方側に設けられ、例えば本実施形態においては、上記表面側に設けられている。
【0083】
なお、本実施形態においては、キャリアプレート本体21における排水路22側との反対側、即ち上記裏面側に、排水路22と連通する水滴受け部25を別途設け、第一キャリアプレート20Aの裏面側に伝わる水分を、水滴受け部25にて一旦受け止めた後に排水路22に導く構成としているが、これに限定されることはない。
例えば、キャリアプレート本体21における上記裏面側において、水滴受け部25を設けることなく、排水路22と略同形状の裏側排水路を別途設け、当該裏側排水路によって、第一キャリアプレート20Aの裏面側に伝わる水分を、サッシュ51に向けて直接排水する構成としてもよい。
【0084】
図2に示すように、排水路22は、第一底面22a、第二底面22b、及び突起部22c等を有する。
第一底面22aは、キャリアプレート本体21に沿って前後方向に延び、且つキャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の他方側の端部(本実施形態においては、後端部)から、サッシュ51側(前側)に向かって下方に傾斜するように設けられる。
【0085】
第一底面22aの後端は、後述するように第二底面22bと繋がり、第二底面22bを介して水滴受け部25と連通されている。
また、第一底面22aの前端は、キャリアプレート本体21のガイド面部21c側(即ち、キャリアプレート本体21の前端側)に向かって延び、サッシュ51の近傍にて開放された状態となっている。
【0086】
そして、サイドウインドウWの下端を伝って第一キャリアプレート20Aの左面側に到達した水滴は、その後、第一底面22aの傾斜を伝ってサッシュ51へと確実に導かれ、排水されるようになっている。
また、サイドウインドウWの下端を伝って第一キャリアプレート20Aの右面側に到達した水滴は、一旦水滴受け部25によって受け止められた後、第二底面22bを通って第一底面22aの後端に到達し、その後、第一底面22aの傾斜を伝ってサッシュ51へと確実に導かれ、排水されるようになっている。
つまり、サッシュ51と第一キャリアプレート20Aとは、キャリアプレート本体21の上端部(ウインドウ載せ部21aを含む上端部)を介して排水路22に至った水分が、サッシュ51に確実に伝わるように配置されている。
【0087】
第二底面22bは、キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の他方側(本実施形態においては、後方側)において、サッシュ51側との反対側(即ち、後方側)に突出し、且つ第一底面22aの後端と繋がるように設けられる。
【0088】
そして、上述したように、水滴受け部25に一旦受け止められた水滴は、第二底面22bを介して、排水路22の第一底面22aへと流し出されるようになっている。
また、例えば、サイドウインドウWの下端を伝ってキャリアプレート本体21に到達した水滴が、キャリアプレート本体21の後端を伝って滴る場合には、第二底面22bによって確実に受け止め、第一底面22aへと導くようになっている(図4中の矢印Z1を参照)。
【0089】
突起部22cは、少なくとも第一底面22aにおけるキャリアプレート本体21側(本実施形態においては、左側)との反対側の端部(即ち、右側端部)において、上方に突出し、且つ第一底面22aに沿って、第二底面22b側(即ち、後方側)からサッシュ51側(即ち、前方側)に向って延びるように設けられており、第一底面22aを伝って流れる水滴が、サッシュ51に伝わる前に、ランダムな位置から零れ落ちるのを抑制する。
【0090】
なお、図3に示すように、本実施形態においては、第二底面22bにおける左側端部に至るまで、突起部22cが後方に向かって延長して設けられており、第二底面22bを介して第一底面22aへと流し出される水滴が、第一底面22aを伝って流れる前に、第二底面22bから零れ落ちるのを抑制するようになっている。
【0091】
ホルダ規制部23は、後述するリブ部24とともに支え面Tを構成し、第一キャリアプレート20Aに対するガラスホルダ6の前方向への相対移動を規制する部位である。
ホルダ規制部23は、キャリアプレート本体21における前後方向の中央において、貫通孔21bに対してサッシュ51側(前方側)に設けられ、排水路22の第一底面22aから、キャリアプレート本体21の板面(本実施形態においては、キャリアプレート本体21の左面)に沿って、上方に突出するように形成されている。
また、図4に示すように、ホルダ規制部23は、その上端において、後方に向かって下方に傾斜し、且つ突設片61の突設端部61aに沿って、略円弧状に形成される第一突出端面23aを有する。
【0092】
そして、ホルダ規制部23は、第一突出端面23aを介して支え面Tを構成し、サイドウインドウWの下端に第一キャリアプレート20Aが接続された状態において、突設片61の突設端部61aの一部(本実施形態においては、前端部)が第一突出端面23aと当接することにより、第一キャリアプレート20Aに対するガラスホルダ6の前方向への相対移動を規制する。
【0093】
リブ部24は、ホルダ規制部23とともに支え面Tを構成し、第一キャリアプレート20Aに対するガラスホルダ6の後方向への相対移動を規制する部位である。
リブ部24は、キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の中央において、貫通孔21bに対してサッシュ51側との反対側(後方側)に設けられ、キャリアプレート本体21の上端から排水路22の第一底面22aに向かって延びるように形成されている。
【0094】
具体的には、リブ部24は、キャリアプレート本体21におけるウインドウ載せ部21aの上端面から、貫通孔21b側(本実施形態においては、前方側)に向かって下方に傾斜し、排水路22の第一底面22aと繋がるように形成されている。
また、リブ部24は、その下端において、突設片61の突設端部61aに沿って、略円弧状に形成される第二突出端面24aを有する。
【0095】
そして、リブ部24は、第二突出端面24aを介して支え面Tを構成し、サイドウインドウWの下端に第一キャリアプレート20Aが接続された状態において、突設片61の突設端部61aの一部(本実施形態においては、後端部)が第二突出端面24aと当接することにより、第一キャリアプレート20Aに対するガラスホルダ6の後方向への相対移動を規制する。
【0096】
ところで、ホルダ規制部23の第一突出端面23a、及びリブ部24の第二突出端面24aは、互いに前後方向に離間して設けられており、これらの第一突出端面23a及び第二突出端面24aによって構成される支え面Tの中央には、排水路22の第一底面22aへと繋がる開口部Taが設けられた状態となっている。
【0097】
そして、サイドウインドウWの下端から、ガラスホルダ6の前側部を伝って第一キャリアプレート20Aに到達した水滴は、突設片61の前側部を伝ってホルダ規制部23の第一突出端面23aに到達し、その後開口部Taを通過して、ホルダ規制部23の後側部を伝いながら排水路22の第一底面22aへと導かれる(図4中の矢印Z2を参照)。
また、サイドウインドウWの下端から、ガラスホルダ6の後側部を伝って第一キャリアプレート20Aに到達した水滴は、突設片61の後側部を伝ってリブ部24の第二突出端面24aに到達し、その後開口部Taを通過して、上記第二突出端面24aを伝いながら排水路22の第一底面22aへと導かれる(図4中の矢印Z3を参照)。
さらに、サイドウインドウWの下端から、ガラスホルダ6の後側部を伝って第一キャリアプレート20Aに到達した水滴は、たとえ突設片61の後側部を伝うことなくランダムに落下しても、リブ部24の傾斜面に受け止められ、その後当該傾斜面を伝って、排水路22の第一底面22aへと導かれる(図4中の矢印Z4を参照)。
【0098】
[効果]
以上のように、本実施形態におけるドア構造100は、サイドウインドウWと、サイドウインドウWを昇降移動させる昇降装置1と、サイドウインドウWの縁部(本実施形態においては、前端側の縁部)を移動方向に摺動自在に案内するサッシュ51とを備えるドア構造であって、昇降装置1は、駆動部10と、駆動部10の駆動によってサイドウインドウWを昇降移動させるキャリアプレート20(より具体的には、第一キャリアプレート20A)とを備える。
ここで、サイドウインドウWは、第一キャリアプレート20Aがサッシュ51に沿った移動をする位置に第一キャリアプレート20Aが取り付けられる。
また、第一キャリアプレート20Aは、サイドウインドウWを支持するキャリアプレート本体21と、サイドウインドウWから伝わる水分を排水する排水路22とを有する。
さらに、キャリアプレート本体21は、サイドウインドウWの下端に対応した上端部(ウインドウ載せ部21aを含む上端部)を有する。
そして、サッシュ51と第一キャリアプレート20Aとは、当該上端部を介して排水路22に至った水分がサッシュ51に伝わるように配置されている。
【0099】
このような構成を有することにより、本実施形態におけるドア構造100によれば、たとえサイドウインドウWに付着した水滴が、サイドウインドウWの下端を伝って第一キャリアプレート20Aに到達しても、第一キャリアプレート20Aの下端からランダムに落下することなく、排水路22を伝わせて確実にサッシュ51へと導き排水することができる。
従って、サッシュ51に導かれた水滴は、その後、側方視界ウインドウWaを迂回しつつ、サッシュ51を伝って下方に流れ落ちることから、側方視界ウインドウWaに水滴が付着して曇り、運転席から見た車体側方の視界を妨げるのを防止することができる。
【0100】
また、本実施形態において、第一キャリアプレート20Aは、サイドウインドウWの下端においてサッシュ51によって案内される縁部側(本実施形態においては、前方の縁部側)に設けられ、排水路22は、キャリアプレート本体21における少なくともサイドウインドウWの表面側及び裏面側の何れか一方側(本実施形態においては、表面側)に設けられている。
【0101】
第一キャリアプレート20Aと排水路22とがこのような構成に設けられることにより、サッシュ51への雨水の排水が容易になる。
【0102】
また、本実施形態において、第一キャリアプレート20Aは、キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の一方側の端部(本実施形態においては、前端部)を、サッシュ51側に向けて配置され、排水路22は、キャリアプレート本体21における厚み方向及び移動方向との直交方向の他方側の端部(本実施形態においては、後端部)から、サッシュ51側に向かって下方に傾斜する第一底面22aを有している。
【0103】
このような構成を有することにより、本実施形態におけるドア構造100によれば、キャリアプレート本体21の上端における、上記一方側の端部から上記他方側の端部の間の何れの位置からキャリアプレート本体21を伝って流れ落ちる水滴であっても、排水路22によって受け止めた後、底面の傾斜を利用して確実にサッシュ51へと導くことができる。
【0104】
また、本実施形態において、排水路22は、キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の他方側(本実施形態においては、後方側)において、サッシュ51側との反対側(即ち、後方側)に突出し、且つ第一底面22aと繋がる第二底面22bを有する。
また、第一キャリアプレート20Aは、キャリアプレート本体21における厚み方向(左右方向)及び移動方向(上下方向)との直交方向(前後方向)の中央において、キャリアプレート本体21の上端から排水路22の第一底面に向かって延びるリブ部24をさらに有している。
【0105】
このような構成を有することにより、本実施形態におけるドア構造100によれば、サイドウインドウWの下端を伝ってキャリアプレート本体21における上記他方側の端部に到達した水滴であっても、第二底面22bを介して排水路22によって確実に受け止め、確実にサッシュ51へと導くことができる。
また、例えば、キャリアプレート本体21における厚み方向及び移動方向との直交方向の中央において、サイドウインドウWの下端に突出して設けられるガラスホルダ6と連結される場合には、ガラスホルダ6を伝って第一キャリアプレート20Aへと流れる水滴を、リブ部24によって一旦受け止めた後、当該リブ部24を伝わせて排水路22へと流し、確実にサッシュへと導くことができる。
【0106】
また、本実施形態において、排水路22は、第一底面22aにおけるキャリアプレート本体21側(本実施形態においては、右側)との反対側の端部(即ち、左側端部)において、上方に突出し、且つ第一底面22aに沿ってサッシュ51側(即ち、前方側)に向って延びる突起部22cをさらに有している。
【0107】
このような構成を有することにより、本実施形態におけるドア構造100によれば、一旦排水路22に受け止められた水滴が、例えば車両の発進や停止による衝撃によって、排水路22のランダムな位置から零れ落ちるのを突起部22cによって抑制することができ、排水路22によってより確実にサッシュ51へと導くことができる。
【符号の説明】
【0108】
1 昇降装置
5 ガイド機構部
6 ガラスホルダ
10 駆動部
11 ドラム
12 ドラムハウジング
12a ドラム軸
12b 取付用ブラケット
13 電動モータ
20 キャリアプレート
20A 第一キャリアプレート
20B 第二キャリアプレート
21 キャリアプレート本体
21a ウインドウ載せ部
21b 貫通孔
21c ガイド面部
22 排水路
22a 第一底面
22b 第二底面
22c 突起部
23 ホルダ規制部
23a 第一突出端面
24 リブ部
24a 第二突出端面
25 水滴受け部
30 方向転換部材
31 第一方向転換部材
32 第二方向転換部材
33 第三方向転換部材
34 第四方向転換部材
40 ケーブル
41 連結ケーブル
41a 一端
41b 他端
42 上昇用ケーブル
42a 他端
43 下降用ケーブル
43a 他端
44 連結用アウターケーシング
45 上昇用アウターケーシング
46 下降用アウターケーシング
51 サッシュ
52 ガイドレール
61 突設片
61a 突設端部
61b 貫通孔
100 ドア構造
101 サイドドア
102 開口部
103 開口側サッシュ
104 収納部
P1 上端拘束位置
P2 下端拘束位置
T 支え面
W サイドウインドウ
Wa 側方視界ウインドウ
W1 傾斜部
Ta 開口部
図1
図2
図3
図4
図5