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特許7384695フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/00 20120101AFI20231114BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20231114BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G03F1/00 Z
G03F1/54
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020025067
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2020140207
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019033681
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】李 錫薫
(72)【発明者】
【氏名】柳 敏相
(72)【発明者】
【氏名】薛 宰勳
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235037(JP,A)
【文献】特開2016-004174(JP,A)
【文献】特開2017-016164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを被転写体上に形成するために、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンをもつ、表示装置製造用のフォトマスクにおいて、
前記透光部は、透明基板が露出してなり、
前記遮光部は、
前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成された完全遮光部と、
前記完全遮光部の外縁に接して形成され、前記透明基板上に半透光性のリム形成膜が形成されてなる幅γのリム部とを有し、
前記半透光部は、前記遮光部に挟まれ、前記透明基板が、所定幅αで露出してなり、
前記幅αは、前記半透光部の露光光透過率が、前記透光部の露光光透過率よりも小さくなるように設定され、
前記リム形成膜は、露光光の代表波長の光に対する透過率Trが5~60(%)、かつ前記代表波長の光に対する位相シフト量が90度以下であり、
前記遮光膜は、前記露光光の代表波長の光に対する光学濃度ODが2以上である、フォトマスク。
【請求項2】
前記リム部の幅γは、0.1μm≦γ<1.0μmである、請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記転写用パターンが、表示装置製造用の露光装置によって、被転写体上にパターン幅1~4μmの抜きパターンを形成するためのものである、請求項1又は2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記転写用パターンが、表示装置製造用の露光装置により、300~500nmの範囲内のブロード波長光源によって露光されるためのものである、請求項1又は2に記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記転写用パターンは、薄膜トランジスタ製造用パターンであり、
前記半透光部は、薄膜トランジスタのチャネル部に対応する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項6】
露光により、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを被転写体上に形成するために、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンをもつ、フォトマスクの製造方法において、
透明基板上に、リム形成膜と遮光膜がこの順に積層するフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記遮光膜上に形成したレジストパターンをエッチングマスクとして用い、遮光膜用のエッチング剤を使用して前記遮光膜をパターニングする、第1パターニング工程と、
前記リム形成膜用のエッチング剤を使用し、前記リム形成膜をパターニングする第2パターニング工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして用い、遮光膜用のエッチング剤を使用して、前記遮光膜をサイドエッチングする、第3パターニング工程と、
前記レジストパターンを剥離する剥離工程と、
を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のフォトマスクを製造するフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
表示装置の製造方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のフォトマスクを用意する工程と、
表示装置製造用の露光装置を用いて、前記フォトマスクを露光することにより、前記転写用パターンを被転写体上に転写する工程と
を有する、表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記表示装置が、薄膜トランジスタを含む、請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスを製造するためのフォトマスクであって、特に表示装置製造用に好適なフォトマスク、及び、その製造方法に関する。本発明はまた、上記フォトマスクを用いた、表示装置の製造方法に関する。ここで、表示装置は、最終的な表示装置製品を構成するためのデバイスを含む。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、露光光を遮光する遮光領域と、露光光を透過する透光領域と、露光光の一部を透過する半透光領域とを持つ多階調フォトマスクが記載されている。このような多階調フォトマスクを用いて被転写体上のレジスト膜(ポジ型フォトレジスト)に所望のパターンを転写する場合、半透光領域を介して照射される光量は、透光領域を介して照射される光量よりも少ない。このため、レジスト膜を現像すると、照射された光量に応じてレジスト膜の残膜値(残膜の厚さ)が異なるレジストパターンが形成される。すなわち、多階調フォトマスクの半透光領域を介して光が照射された領域のレジスト残膜値は、遮光領域を介して光が照射された領域のレジスト残膜値よりも薄くなる。
【0003】
このように、領域によってレジスト残膜値が異なるレジストパターンを形成可能な、多階調フォトマスクを用いると、表示装置の製造において、使用するフォトマスクの枚数を減少させることができ、生産効率を上げ、コストを下げることができる。
【0004】
上記の多階調フォトマスクは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置に適用される、薄膜トランジスタ(TFT)の製造に用いられている。この場合、TFTのソース・ドレイン(S/D)電極とその間にあるチャネル領域を、一つのフォトマスクによって、一回のフォトリソグラフィ工程によって、形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-197800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、表示装置においては、画素密度の増加に伴ない、高精細化の動向が顕著である。また、携帯端末においては、特に、明るさ、省電力の性能が要求される。そして、これらを実現するため、製造工程に用いられるフォトマスクのパターンも、微細化が強く求められている。
【0007】
ところで、表示装置に比べて、集積度が高く、パターンの微細化が顕著に進んだ半導体装置(LSI)製造用フォトマスクの分野では、高い解像性を得るために、露光装置には高い開口数NA(例えば0.2を越えるNA)の光学系を適用し、露光光の短波長化がすすめられてきた経緯がある。その結果、この分野では、KrFやArFのエキシマレーザー(それぞれ、248nm、193nmの単一波長)が多用されるようになった。
【0008】
その一方、表示装置製造用のリソグラフィ分野では、解像性向上のために、上記の手法が適用される動向にはならなかった。例えばこの分野で用いられる露光装置がもつ光学系のNA(開口数)は、0.08~0.15程度である。また、露光光源もi線、h線、又はg線が主として用いられ、主にこれらを含む波長域をもつ光源を使用することで、大面積(例えば、主表面の一辺が300~2000mmの四角形)を照射するための光量を得て、生産効率やコストを重視する傾向が強い。
【0009】
生産効率向上の有効な手段として、特許文献1に記載された多階調フォトマスクは非常に有用である。例えば、表示装置の駆動を制御するTFT、すなわちS/D(ソース・ドレイン)及びチャネルを形成する工程は、表示装置の生産工程の中でも肝要な部分であるが、多階調フォトマスクを使用することができる。一方、携帯端末の画質や動作速度、省電力などへの強いニーズに伴い、パターンの微細化ニーズが顕著である。例えば、上記TFTにおけるチャネル幅(Channel length)の設計寸法は、益々微細化される傾向にある。
【0010】
従って、こうした難度の高いパターンを、確実に、効率よく転写できるフォトマスクが強く望まれている。
【0011】
そこで、表示装置製造用として用いられる露光装置の性能を活かしつつ、フォトマスクに新たな機能を搭載することによって、従来以上に微細なパターンを、被転写体上に確実に安定して転写し、良好なプロファイルをもつレジストパターンを形成し得る手段について、本発明者は検討し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
露光により、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを被転写体上に形成するために、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンをもつ、表示装置製造用のフォトマスクにおいて、
前記透光部は、透明基板が露出してなり、
前記遮光部は、
前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成された完全遮光部と、
前記完全遮光部の外縁に接して形成され、前記透明基板上に半透光性のリム形成膜が形成されてなる幅γのリム部とを有し、
前記半透光部は、前記遮光部に挟まれ、前記透明基板が、所定幅αで露出してなり、
前記幅αは、前記半透光部の露光光透過率が、前記透光部の露光光透過率よりも小さくなるように設定され、
前記リム形成膜は、露光光の代表波長の光に対する透過率Trが5~60(%)、かつ前記代表波長の光に対する位相シフト量が90度以下である、フォトマスクである。
【0013】
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記リム部の幅γは、0.1μm≦γ<1.0μmである、上記第1の態様に記載のフォトマスクである。
【0014】
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記転写用パターンが、表示装置製造用の露光装置によって、被転写体上にパターン幅1~4μmの抜きパターンを形成するためのものである、上記第1又は第2の態様に記載のフォトマスクである。
【0015】
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記転写用パターンが、表示装置製造用の露光装置により、300~500nmの範囲内のブロード波長光源によって露光されるためのものである、上記第1又は第2の態様に記載のフォトマスクである。
【0016】
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記転写用パターンは、薄膜トランジスタ製造用パターンであり、
前記半透光部は、薄膜トランジスタのチャネル部に対応する、
上記第1~第4のいずれか1態様に記載のフォトマスクである。
【0017】
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
露光により、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを被転写体上に形成するために、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンをもつ、フォトマスクの製造方法において、
透明基板上に、リム形成膜と遮光膜がこの順に積層するフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記遮光膜上に形成したレジストパターンをエッチングマスクとして用い、遮光膜用のエッチング剤を使用して前記遮光膜をパターニングする、第1パターニング工程と、
前記リム形成膜用のエッチング剤を使用し、前記リム形成膜をパターニングする第2パターニング工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして用い、遮光膜用のエッチング剤を使用して、前記遮光膜をサイドエッチングする、第3パターニング工程と、
前記レジストパターンを剥離する剥離工程と、
を有する、上記第1~第5のいずれか1態様に記載のフォトマスクを製造するフォトマスクの製造方法である。
【0018】
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
表示装置の製造方法であって、上記第1~第5のいずれか1態様に記載のフォトマスクを用意する工程と、
表示装置製造用の露光装置を用いて、前記フォトマスクを露光することにより、前記転写用パターンを被転写体上に転写する工程と
を有する、表示装置の製造方法である。
【0019】
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記表示装置が、薄膜トランジスタを含む、上記第7の態様に記載の表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フォトマスクのもつ転写用パターンを、被転写体上に転写したとき、優れたプロファイルをもつ光学像を安定して形成することができ、表示装置の性能向上や歩留向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るフォトマスクの要部を例示する説明図であり、(a)は転写用パターンの例を示す図、(b)はその転写用パターンの部分拡大図である。
図2】転写用パターンの例を示す説明図であり、(a)は比較例1のフォトマスクのパターン例を示す図、(b)は参考例1のフォトマスクのパターン例を示す図、(c)は実施例1のフォトマスクのパターン例を示す図である。
図3】本発明の実施例1のフォトマスクの転写性能を評価するためのシミュレーション結果を示す説明図であり、(d-1)および(d-2)は比較例1についてのシミュレーション結果を示す図、(d-3)および(d-4)は参考例1および実施例1についてのシミュレーション結果を示す図である。
図4】被転写体上に形成されるレジストパターンを例示する側断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るフォトマスクの製造方法の手順を示す説明図であり、(a)はフォトマスクブランクの例を示す図、(b)はパターン描画の例を示す図、(c)は第1および第2エッチングの例を示す図、(d)は第3エッチングの例を示す図、(e)はレジストパターン剥離の例を示す図である。
図6】従来のフォトマスクに形成された転写用パターン(チャネル幅5.0μm)を例示する説明図であり、(a)は転写用パターンの例を示す図、(b)はその転写用パターンによって被転写体上に形成される光学像(転写像)の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るフォトマスク、その製造方法、および表示装置の製造方法の実施の形態について説明する。
【0023】
図6(a)には、上記の特許文献1に記載された、TFTのチャネル・S/Dレイヤ(以下、単に「S/Dレイヤ」ともいう。)を製造するためのフォトマスクに形成された転写用パターン(チャネル幅5.0μm)を例示する。このフォトマスクは、遮光部120、半透光部130、及び透光部110を備えた多階調フォトマスクであり、半透光部130には、膜透過率(Tr)が40%の半透光膜が用いられている。また、これを露光装置(NA=0.08、コヒレンスファクタσ=0.8、i線:h線:g線=1:1:1)で露光したときに、被転写体上に形成される光学像(転写像)が、図6(b)である。到達する光量が多い部分が明るい色(白~灰色)、少ない部分が暗い色(黒色)で示されている。
【0024】
但し、発明者の検討によると、このようにチャネル領域の透明基板に半透光膜を形成したのみの多階調フォトマスクを露光して、その転写用パターンを被転写体上に転写しようとすると、該被転写体上に形成されるレジストパターンの形状に課題が生じた。すなわち、該フォトマスクでは、チャネル領域の幅に等しい幅をもつ半透光膜が遮光部120に挟まれて形成されているため、レジストパターンのチャネル領域に対応する部分の端部において、レジストパターンの側面に顕著な傾斜(slope)が生じた。そして、このレジストパターンをエッチングマスクとして、表示パネル基板などの表面に形成された膜(加工対象の薄膜)の加工を行なえば、その膜に微細で精緻なCD(Critical Dimension、パターン幅)を形成することは容易ではない。このため、微細寸法のチャネル部を安定して形成することは困難であることがわかった。
【0025】
そこで、本発明者は、チャネル部分を形成するフォトマスクが有する、転写用パターンの形状によって、被転写体上に、如何なる光学像(光強度分布)が形成されるかについて検討した。例えば、側面形状がより垂直に近い(後述の傾斜角θが大きく、90度に近い)レジストパターンを形成し得るフォトマスクを得られれば、微細幅をもつパターン(例えば、より幅の小さいチャネル部)を、より安定して確実に形成できることとなる。更に、レジストパターンの側面の傾斜角θを90度以下の所望の値に微調整することができれば、微細なパターンを精度よく形成できるとともに、CDの微調整が可能なレジストパターンを形成することができる。
【0026】
図1には、本発明の一実施形態に係るフォトマスクの要部を例示する。
このフォトマスクは、露光装置を用いて、露光することにより、被転写体上に、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを形成する、いわゆる多階調フォトマスク(階調フォトマスク、グレートーンマスクなどともいわれる)である。
また、ここでは、例えば、表示装置(液晶表示装置や有機EL表示装置など)に利用される、TFTのS/Dレイヤを一回のフォトリソグラフィ工程によって形成するためのパターンデザインを例として示す。
【0027】
このフォトマスクが有する転写用パターンは、透明基板上に形成され、透光部10、遮光部20、および半透光部30を有する。すなわち、3階調以上の階調をもつフォトマスクである。
【0028】
本発明のフォトマスクは、被転写体(表示パネル基板など)上の、上記転写用パターンの位置に、幅1~4μm程度の抜きパターンを形成することができる。例えば、この寸法のチャネル幅(Cp(μm))を形成するフォトマスクとして適用できる。本実施形態では、3μmを下回る微細なチャネル幅を形成するものを想定して説明する。例えば、1≦Cp<3、より具体的には、1.5≦Cp<3となるTFTの製造に適用することができる。
【0029】
透光部10は、透明基板表面が露出して形成される。この部分は露光装置の解像性能に対して十分に広い寸法を有する部分である。例えば、5μmを超える寸法、より具体的には10μmを超える寸法を有する。
【0030】
遮光部20は、透明基板上に遮光膜が形成された所定幅β(μm)の完全遮光部21と、該完全遮光部21の外縁に接して形成され、前記透明基板上にリム形成膜が形成されてなる、所定幅γ(μm)のリム部22を有している。
【0031】
このうち、完全遮光部21は、透明基板上に、少なくとも遮光膜が形成されてなる。遮光膜の光学濃度ODは2以上、より好ましくは3以上である。完全遮光部21は、遮光膜と他の膜が積層していてもよい。例えば、遮光膜の下層側又は上層側に、リム形成膜(後述)が積層していてもよい。好ましくは、リム形成膜と遮光膜がこの順に積層している。
完全遮光部21の幅βは、1.5μm以上であることが好ましい。幅βが狭すぎると、完全遮光部21として機能しにくくなる。より好ましくは、2μm以上である。例えば、1.5~4μm、より具体的には、2.0~3.5μmとすることができる。
【0032】
遮光部20のうち、リム部22は、露光光を一部透過する、半透光性のリム形成膜が透明基板上に形成されてなる。リム部22は、完全遮光部21の外縁に沿って所定幅(以下、リム幅)γで形成される。
リム幅γは、0.1≦γ<1.0(μm)とすることができる。より好ましくは、0.1≦γ<0.5(μm)とすることができる。
リム幅γが広すぎると、後述する傾斜角θの改善効果が小さくなる上、より微細なチャネルを形成することが難しくなり、又は被転写体上に形成されるレジストパターンの膜厚の損失につながりやすい傾向がある。リム幅γが小さすぎると、転写の際、後述のDOF(Depth of Focus)の向上効果が不十分になる。
更に好ましくは、0.2≦γ<0.4(μm)とすることができる。
【0033】
図1では、完全遮光部21の全ての外縁に接してリム部22が形成されている。但し、少なくとも、遮光部20が半透光部10に隣接する領域においてリム部22が形成されていれば、それ以外の外縁には、必ずしもリム部22が形成されていなくてもよい。つまり、完全遮光部21の外縁のうち、TFTのチャネル部に対応する側に、リム部22が形成されていることが好ましい。より好ましくは、リム部22は、上記の幅を有し、フォトマスク面内における完全遮光部21のすべての外縁に接し、均一の幅で形成されている。
【0034】
リム部22を形成するためのリム形成膜の露光光透過率Tr(%)としては、5≦Tr≦60(%)が適用できる。これは、透明基板を基準(100%)とした透過率であり、露光光に含まれる光の代表波長に対するものである。
好ましくは、5≦Tr<40(%)、より好ましくは、5≦Tr<30(%)である。
透過率Trの値が小さすぎると、所望のチャネル幅を得るためのEop(必要露光量)が大きくなる不都合が生じる。また、透過率Trの値が大きすぎると、被転写体上に微細なチャネル幅を形成しにくくなる。
但し、透過率Trが上記範囲においてある程度大きい(例えば、20≦Tr≦40(%))場合には、被転写体上に形成されるレジストパターンの断面傾斜が緩くなり、後述する傾斜角θを微調整したい場合にはメリットがある。
【0035】
ここで、露光光としては、300~500nmの範囲内の波長をもつ光が適用され、具体的にはi線、h線、g線のいずれかを含むものが好ましい。より具体的には、複数の波長を含む光源(ブロード波長光源ともいう)を使用することができ、例えば、i線、h線、およびg線のうち、2波長、又は3波長のすべてを含む波長域に亘る光源を用いる場合がある。この場合、表示装置の生産効率上好ましい。このうち、代表波長は、露光光に含まれる波長域のいずれかの波長とすることができ、たとえばi線とすることができる。
【0036】
また、リム部22を形成するためのリム形成膜は、露光光に対する位相シフト量が、90度以下であり、3~60度であることがより好ましい。本発明に係るフォトマスクは、透光部10とリム部22の透過光が互いの干渉により相殺する現象が抑えられ、露光のために必要な照射量(Dose)を増加させる不都合が生じない。
【0037】
半透光部30は、透明基板が所定幅で露出してなる。図1で示すように、半透光部30は、遮光部20に挟まれ、より具体的には遮光部20が有するリム部22に、対向する2方向から挟まれて形成されている。
【0038】
半透光部30の幅α(μm)は、フォトマスクを、表示装置製造用の露光装置によって露光したときに、半透光部30の露光光透過率が、上記透光部10より小さくなるように設定されている。すなわち、構成上は、透光部10と同様に基板表面が露出してなるが、その透過光が被転写体上に形成する光強度分布のピークは、透光部10による光強度よりも低いため、半透光部30として機能する。そこで、十分な広さのある透光部10の透過率を100%とし、半透光部30に対応する位置の被転写体上に形成される透過率分布のピークをTa(%)とするとき、Taは、30~70%とすることができ、40~60%であることがより好ましい。
【0039】
半透光部30の幅αは、例えば、0.8≦α<3.0(μm)、より具体的には、1.0≦α<2.0(μm)とすることができる。
このような幅は、露光時に、半透光部30として機能するために有効である。そして、このような半透光部30によって、狭幅のパターン(ここでは、被転写体上に形成されるチャネル部の幅)を安定して形成することができる。
また、必要に応じて、リム幅γとリム形成膜の透過率Trを微調整することで、被転写体上に形成されるレジストパターンの断面傾斜角度(後述の傾斜角θ)を、所望の値に調整し、得ようとする微細なCDが容易に得られるようにすることができる。
【0040】
このような半透光部30を有する本発明のフォトマスクによって、被転写体上に上記のチャネル幅CpをもつTFTを形成することができる。
【0041】
尚、本願の図面は、理解を容易にするための模式図であり、パターンの寸法等は実際のスケールとは必ずしも一致しない。
【0042】
本発明のフォトマスクの用途には特に制限は無い。例えば、LCDや有機ELディスプレイ用の薄膜トランジスタ(TFT)製造用であって、特に、S/Dレイヤ及び半導体層を1回のフォトリソグラフィ工程によって加工する際に用いる多階調フォトマスクに、有利に適用できる。
【0043】
以下、上記のようなリム部22を有するフォトマスクが、どのような転写性能を有するかについて、実施例に示す。尚、比較のため、合わせて比較例および参考例についても示す。
【0044】
(実施例)
本発明のフォトマスクの作用効果を確認するために、図2に記載のフォトマスクについて、以下の光学シミュレーションを行なった。図2(a)~(c)に示す3つのフォトマスクは、それぞれ、遮光部、透光部、半透光部を有するもので、TFT用のS/D・チャネル部を形成するためのデザインをもつ。遮光部は、光学濃度OD(Optical Density)3以上であり、透光部は、透明基板が露出してなり、その寸法は、露光機の解像限界に対して十分に広い。半透光部の構成は、それぞれ以下のように構成されている。
【0045】
図2(a)は、比較例1のフォトマスクを示す。このフォトマスクは、特許文献1と同様の構成、すなわち、透明基板上に遮光膜を形成した遮光部120、透明基板が露出した透光部110、及び、透明基板上に半透光膜を形成してなる半透光部130を有する。このフォトマスクで用いた半透光膜の膜透過率Trは55%であり、半透光部130の幅d1は4.5μmである。また、半透光膜の位相シフト量は0度とした。
【0046】
図2(b)は、参考例1のフォトマスクを示す。このフォトマスクは、比較例1と同様な遮光部220、透光部210を有する一方、透明基板が露出した半透光部230を有し、その幅d2は、半透光部230の露光光透過率が、透光部210より低くなるように、2.15μmに設定されている。
【0047】
図2(c)は、本発明の実施例1のフォトマスクを示す。このフォトマスクは、既述のように、透明基板上に遮光部20、透光部10及び半透光部30を有しており、遮光部20が完全遮光部21とリム部22とを有して構成されている。
ここで、半透光部30の幅αは2.00μmで、透明基板が露出して形成される。
また、遮光部20が有するリム部については、リム幅γは0.2μmであり、リム形成には、透過率Tr10%の半透光膜(すなわちリム形成膜)を用いた。リム形成膜の位相シフト量は、ゼロとした。
【0048】
シミュレーションの条件、及び評価項目は以下のとおりとした(図3参照)。
【0049】
(シミュレーション条件)
・露光光学系: NA=0.085、σ=0.9(表示装置製造用の等倍プロジェクション露光装置を想定)
・露光波長の強度: i線:h線:g線=1:0.8:0.95
【0050】
(評価項目)
(1)Panel CD(μm)
被転写体上に形成されるレジストパターン(図4参照)は、チャネル部に対応する「谷」の断面形状をもつ。ここで、未露光部の初期設定レジスト厚を24000Åとし、半透光部の中央(チャネル部に対応する領域の幅の中心に相当、図4でMと表示)位置の目標レジスト残膜値(図4のZ)を6800Åとする。
また、該レジストパターンの厚みが12000Å(つまり、未露光部の厚さに対して1/2)の部分が、谷の両側に2箇所存在するが、これらをつないだ直線の長さを、被転写体上に得るチャネル幅Cpに対応するものとして、その寸法を求め、Panel CD(μm)とした。
すなわち、フォトマスクユーザが、本実施形態のフォトマスクを用いてチャネル部を形成する際、被転写体上に形成されたレジストパターンを1/2の厚みまで減膜することを想定したものである。
【0051】
(2)上記レジストパターンの、残膜値12000Å(未露光部の厚さに対して1/2)の部分における、レジストパターン断面の傾斜角θを求めた。
【0052】
(3)DOF(焦点深度、μm)
被転写体上に、目標寸法に対して、±10%の範囲で転写されるための、デフォーカスの範囲を求めた。
【0053】
(4)EL(Exposure Latitude、露光余裕度)
被転写体上に、目標寸法に対して、±10%の範囲で転写されるための、露光エネルギーの変化量を求めた。
【0054】
(評価結果)
図3(d-1)~(d-4)に、シミュレーションの結果を示す。
【0055】
先ず、図2(a)に示す、比較例1のフォトマスクを転写すると、被転写体上に形成されるパターンはPanel CDが3.39μmを超えており、より微細なCD部分(例えば、TFTチャネル)を形成することが難しいことがわかった。また、被転写体上に形成されるレジストパターンの傾斜角θが小さく、断面の傾斜が顕著であることが関係すると考えられる(図3(d-1),(d-2)参照)。
【0056】
図2(b)には、比較例1において半透光部130の領域全体に形成されていた半透光膜の代わりに、透明基板を、微細な所定幅で露出させて半透光部230を形成した参考例1を示す。このフォトマスクを転写すると、Panel CDの数値を比較例1に比べて大幅に小さくすることができ、微細なCDが達成できることがわかった。また、レジストパターンの断面傾斜も抑制されることがわかった(図3(d-3),(d-4)参照)。
但し、参考例1では、DOFの値が低く、露光装置のデフォーカスに対する裕度が狭いことがわかった(図3(d-4)参照)。
【0057】
DOFは、CDの許容範囲を満たすデフォーカスの許容範囲であり、フォトマスクや、被転写体基板のフラットネスに関係する。特に表示装置製造においては、フォトマスクのサイズが大きい(例えば、主表面の一辺が300~2000mmの四角形)上、被転写体となるパネル基板等も、更に大きい(例えば主表面の一辺が1000~3400mmの四角形)ことから、これを理想的な平面に加工するのは困難であり、フラットネスにばらつき生じやすい。換言すれば、優れたフラットネスの基板を得るためには、大きな工数とコストがかかるからである。従って、デフォーカスに対する裕度を確保することは極めて重要である。
【0058】
次に、実施例1(図2(c)参照)に示す本発明のフォトマスクを用いて、参考例1と同様に、2.4μm程度のPanel CDを得る場合についてシミュレーションを行なった。このフォトマスクは、OD3以上の光学濃度をもつ完全遮光部21の外縁に接して、半透光性のリム部22が形成されている(図3(d-3)参照)。
【0059】
実施例1のフォトマスクによる転写像では、参考例1と同様に2.4μm程度の極めて微細なTFTチャネルが形成できるとともに、レジストパターン断面の角度θが比較例1に比べて十分に大きい(垂直に近づく)ことから、CDのばらつきが小さく、面内におけるCD分布を小さくすることができる(図3(d-4)参照)。
【0060】
また、実施例1のフォトマスクのDOFの値は、48μmを越え、露光時のデフォーカスに対する十分な裕度を備えている(図3(d-4)参照)。
【0061】
その上、ELの数値が、比較例1や参考例1に比べて、顕著に向上している(図3(d-4)参照)。
ELは、露光光によるエネルギーのばらつきに対する裕度であるところ、この数値が大きいことにより、よりCD精度の高い転写性能を得ることができ、歩留が高く維持できることがわかる。特に表示装置製造用の露光装置においては、大面積を均一の光量で照射することは容易でないことから、ELの大きなフォトマスクの意義は大きい。
【0062】
つまり、本発明のフォトマスクを用いると、Panel CDが2.5μmを下回る微細なCDをもつパターンを被転写体上に形成できる上、その際の露光光量やフォーカスの裕度が大きく、生産安定性や歩留に寄与することがわかった。このことは、本発明のフォトマスクのもつ転写用パターンを、被転写体上に転写したとき、優れたプロファイルをもつ光学像を安定して形成することができ、表示装置の性能向上や歩留向上に寄与することを意味する。換言すると、本発明のフォトマスクによれば、表示装置製造用として用いられる露光装置の性能を活かしつつ、フォトマスクに新たな機能を搭載することによって、従来以上に微細なパターンを、被転写体上に確実に安定して転写し、良好なプロファイルをもつレジストパターンを形成することができる。
【0063】
本発明のフォトマスクは、以下の製法によって製造することができる。かかる製造方法の手順を、図5を参照しながら説明する。
【0064】
1.フォトマスクブランクを用意する。
具体的には、フォトマスクの製造にあたり、先ず、図5(a)に示すようなフォトマスクブランク50を用意する。上記フォトマスクブランク50は、ガラス等からなる透明基板51上に、リム形成膜52と遮光膜53とがこの順に形成されており、更に第1フォトレジスト膜(ここではポジ型)54が塗布されたものとすることができる。
【0065】
リム形成膜52は、露光光の代表波長の光に対して、上記Trに関して述べたとおりの透過率をもつ。位相シフト量は、90度以下、より好ましくは、3~60度である。
リム形成膜52は、ウェットエッチング可能な材料からなることが好ましく、また、遮光膜材料との間でエッチング選択性をもつものが好ましい。
例えば、Cr化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物)であっても良く、又は、Siの上記化合物としてもよい。Mo、W、Ta、Ti、Zrのいずれかの金属のシリサイド、又は、該シリサイドの上記化合物であっても良い。成膜方法としては、スパッタ法等公知の方法を適用することができる。
【0066】
フォトマスクブランク50のリム形成膜52上には、遮光膜53が形成される。成膜方法としては、同様に、スパッタ法等公知の手段が適用できる。
遮光膜53の材料は、Cr又はその化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物)であっても良く、又は、Mo、W、Ta、Tiを含む金属のシリサイド、又は、該シリサイドの上記化合物であっても良い。
但し、遮光膜53の材料は、リム形成膜52と同様にウェットエッチングが可能であり、かつ、リム形成膜52の材料に対してエッチング選択性をもつ材料が好ましい。すなわち、リム形成膜52のエッチング剤に対して遮光膜53は耐性をもち、また、遮光膜53のエッチング剤に対して、リム形成膜52は耐性をもつことが望ましい。
【0067】
2.描画装置により、所定のパターンデータによる描画を行なう。
具体的には、図5(b)に示すように、フォトマスクブランク50の第1フォトレジスト膜54に対するパターン描画を行う。パターン描画は、レーザ描画を適用することができる。
【0068】
3.第1フォトレジスト膜54の現像、並びに、遮光膜53およびリム形成膜52のエッチングを行なう。
具体的には、図5(c)に示すように、第1フォトレジスト膜54を現像し、透光部10と半透光部30に対応する位置に開口をもつレジストパターン55を形成する。そして、レジストパターン55をエッチングマスクとして、遮光膜用エッチング剤を使用して遮光膜53をエッチング(第1エッチング)し、遮光膜パターンを形成する(第1パターニング工程)。更に、パターニングされた上記遮光膜パターンをエッチングマスクとして、リム形成膜用エッチング剤を使用してリム形成膜52をエッチング(第2エッチング)し、リム形成膜パターンを形成する(第2パターニング工程)。遮光膜53とリム形成膜52のそれぞれのエッチングには、材料に応じて公知のエッチング剤を用いる。このとき、ウェットエッチングを適用することが好ましい。これによって、透光部10と半透光部30に対応する部分に、透明基板51が露出する。
【0069】
4.遮光膜53(遮光膜パターン)のサイドエッチングを行なう。
具体的には、図5(d)に示すように、再度、遮光膜材料用のエッチング剤を適用して、上記レジストパターン55をエッチングマスクとして用い、遮光膜53(遮光膜パターン)のサイドエッチング(第3エッチング)を行なう(第3パターニング工程)。これによってリム部22を形成する。
【0070】
5.レジストパターン55を剥離する。
具体的には、図5(e)に示すように、レジストパターン55を剥離除去する。これにより、透明基板51上に透光部10、遮光部20、および半透光部30を有し、このうちの遮光部20が完全遮光部21とリム部22とを有して構成されるフォトマスクが完成する。更に詳しくは、遮光部20は、少なくとも遮光膜53が形成された完全遮光部21と、リム形成膜52によって形成されるリム部22とを有して構成され、かつ、半透光部30は、遮光部20に挟まれ透明基板51が露出してなり、露光光透過率が透光部10よりも小さく設定された構成のフォトマスクが完成する。
【0071】
上記のように、本発明のフォトマスクは、描画工程を1回のみとして製造することが好ましい。また、この製法によると、遮光膜53とリム形成膜52という2膜をそれぞれパターニングする必要があるにも関わらず、複数回の描画によるアライメントずれが生じないため、微細幅のリム部22が、フォトマスク面内にわたり均一に形成できる。
【0072】
本発明は、上記フォトマスクを用いて露光装置によって露光し、転写用パターンを被転写体上に転写することを含む、表示装置の製造方法を含む。なお、ここでいう表示装置の製造方法とは、表示装置の一部を構成するモジュールや部品の製造方法を含む。
【0073】
本発明のフォトマスクを露光装置によって露光し、現像することにより、被転写体上には、残膜値の異なる部分を有する、立体形状のレジストパターンが形成される。例えば、ポジ型レジストを使用すれば、透光部に対応する位置においては、レジスト残膜が形成されず、遮光部に対応する位置においては、所定の厚みH1をもつレジスト残膜が形成され、半透光部に対応する位置には、H1より小さ厚みH2を有するレジスト残膜が形成される。
【0074】
本製造方法に用いる露光装置としては、NAが0.08~0.2、σ(コヒレンスファクタ)が0.5~0.9の等倍プロジェクション露光方式のものを利用することができる。光源は、i線、h線、g線のいずれかを含む光源を用い、又はこれらの複数を併せて用い、更にはi線、h線、g線のすべてを含むブロード波長光源を用いても良い。
【0075】
また、使用する露光装置の光源は、変形照明(ここでは、フォトマスクに対して垂直に入射する光成分を遮蔽した光源をいい、輪帯照明などの斜入射光源を含む)を使用しても良いが、非変形照明(垂直に入射する成分を遮蔽しない、通常照明)によって、発明の優れた効果が得られる。
【0076】
本発明を適用するフォトマスクの用途に特に制限は無い。本発明のフォトマスクは、液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置の製造の際に、好ましく用いることができる、透過型のフォトマスクとすることができる。そして、S/Dレイヤとチャネルを、一回のフォトリソグラフィ工程で加工する工程に用いられる、多階調フォトマスクとして有用である。
【0077】
本発明のフォトマスクによれば、モバイル携帯端末を始めとする、高精細の表示装置(いわゆるフラットパネルディスプレイ)の生産に際して、パターンの微細化の実現とともに、工程におけるマージンの確保という、極めて重要な要素を両立することができる。
【0078】
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0079】
すなわち、本発明のフォトマスクの用途、構成や製法については、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、上記に例示したものに限定されない。
【0080】
本発明の効果を損ねない範囲で、本発明を適用するフォトマスクには付加的な光学膜や機能膜を使用しても良い。例えば、遮光膜のもつ光透過率が、検査やフォトマスクの位置検知に支障を与える不都合を防ぐために、転写用パターン以外の領域に遮光膜が形成される構成としても良い。また、半透光膜(リム形成膜)や、遮光膜の表面に描画光や露光光の反射を低減させるための反射防止層を設けても良い。半透光膜(リム形成膜)の裏面に反射防止層を設けてもよい。
【0081】
また、例えば、上記では、リム形成膜と遮光膜とは、互いにエッチング選択性のある材料を用いた。しかしながら、両者ともに同一のエッチング剤によってエッチングされる材料を用いても良い。その場合には、両膜間にエッチングストッパ膜として、上記両膜の材料に対するエッチング選択性をもつものを介在させることができる。例えば、遮光膜とリム形成膜とをともに、Cr系(含有する金属中、Crが最も大きい含有量をもつ)膜とし、エッチングストッパ膜として、Si系(Si化合物、又は、金属シリサイド化合物を含む)膜をとすることができる。
【符号の説明】
【0082】
10…透光部、20…遮光部、21…完全遮光部、22…リム部、30…半透光部、50…フォトマスクブランク、51…透明基板、52…リム形成膜、53…遮光膜、54…第1フォトレジスト膜、55…レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6