(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】定型作業抽出装置、定型作業抽出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20231114BHJP
G06F 3/0487 20130101ALI20231114BHJP
【FI】
G06Q10/10
G06F3/0487
(21)【出願番号】P 2020037781
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 将志
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-73428(JP,A)
【文献】特開2011-253309(JP,A)
【文献】特開2002-7020(JP,A)
【文献】特開2004-185612(JP,A)
【文献】特開2018-147198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 3/0487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して接続される複数の端末からそれぞれ収集した複数の操作履歴情報を取得する取得手段と、
操作内容の粒度によって操作の階層を定義した操作階層情報を参照して、前記複数の操作履歴情報のそれぞれから所定の階層の複数の操作系列を特定する特定手段と、
前記複数の操作系列の中で、所定の頻度以上出現する操作パターンを定型作業として抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする定型作業抽出装置。
【請求項2】
前記階層は、前記粒度が細かいほど値が低く、前記粒度が粗いほど値が高くなり、
前記特定手段は、
低階層から順に前記所定の階層となるまで、階層毎に前記階層の操作の系列を特定することで、前記所定の階層の操作系列を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の定型作業抽出装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、
前記操作パターンに類似する操作パターンも同一とみなして、前記所定の頻度以上出現する操作パターンを定型作業として抽出する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定型作業抽出装置。
【請求項4】
通信ネットワークを介して接続される複数の端末からそれぞれ収集した操作履歴情報を取得する取得手段と、
操作の階層を定義した操作階層情報を参照して、前記操作履歴情報から所定の階層の複数の操作系列を特定する特定手段と、
前記複数の操作系列の中で、所定の頻度以上出現する操作パターンを定型作業として抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする定型作業抽出装置。
【請求項5】
通信ネットワークを介して接続される複数の端末からそれぞれ収集した複数の操作履歴情報を取得する取得手順と、
操作内容の粒度によって操作の階層を定義した操作階層情報を参照して、前記複数の操作履歴情報のそれぞれから所定の階層の複数の操作系列を特定する特定手順と、
前記複数の操作系列の中で、所定の頻度以上出現する操作パターンを定型作業として抽出する抽出手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする定型作業抽出方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の定型作業抽出装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定型作業抽出装置、定型作業抽出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスにおける様々な業務が電子化されており、PC(パーソナルコンピュータ)等の端末を人が操作することで業務が行なわれることが多い。これらの業務の中には、事務作業等の定型的な間接作業も存在し、その効率化が求められている。これに対して、事務作業等の定型的な業務を自動的に実行する自動操作スクリプトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動操作スクリプトを利用するためには、その前に定型的な作業を定義する必要がある。しかしながら、人が行っている業務プロセスの中から定型的な作業を抽出することには多くの労力を要し、容易ではない。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、定型作業を抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る定型作業抽出装置は、通信ネットワークを介して接続される複数の端末からそれぞれ収集した複数の操作履歴情報を取得する取得手段と、操作内容の粒度によって操作の階層を定義した操作階層情報を参照して、前記複数の操作履歴情報のそれぞれから所定の階層の複数の操作系列を特定する特定手段と、前記複数の操作系列の中で、所定の頻度以上出現する操作パターンを定型作業として抽出する抽出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
定型作業を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る定型作業抽出装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る定型作業抽出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】階層毎に操作を特定する場合の一例を説明するための図である。
【
図5】階層毎に操作を特定する場合の具体例を説明するための図である。
【
図6】操作パターンを特定する場合の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、業務に用いられるPC等の操作履歴から定型作業を抽出することが可能な定型作業抽出装置10について説明する。なお、定型作業抽出装置10は、例えば、一般的なコンピュータ又はコンピュータシステムで実現される。
【0010】
<機能構成>
まず、本実施形態に係る定型作業抽出装置10の機能構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る定型作業抽出装置10の機能構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る定型作業抽出装置10は、操作履歴管理部101と、操作履歴解析部102と、定型作業抽出部103とを有する。これら各部は、例えば、定型作業抽出装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサに実行させる処理により実現される。
【0012】
また、本実施形態に係る定型作業抽出装置10は、操作履歴記憶部110と、操作階層記憶部120と、定型作業記憶部130とを有する。これら各部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置により実現される。
【0013】
操作履歴管理部101は、定型作業抽出装置10と通信ネットワークを介して接続される端末20から操作履歴情報を受信し、操作履歴記憶部110に保存する。ここで、操作履歴情報とは、端末20でユーザ等によって行われた各種操作の履歴を示す情報のことである。操作履歴情報には、例えば、端末20を識別する情報(端末ID)と、操作対象のアプリケーションを識別する情報(アプリケーションID)と、操作を示す情報(操作ID)と、操作が行なわれた日時とが少なくとも含まれる。なお、これら以外にも、操作履歴情報には、例えば、端末20を操作したユーザのユーザID等が含まれていてもよい。
【0014】
なお、端末20には操作履歴情報を作成するプログラムがインストールされており、所定のタイミング(例えば、所定の時間毎)に当該操作履歴情報を定型作業抽出装置10に送信する。このような端末20として、本実施形態ではPCを想定するが、これに限られず、例えば、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブルデバイス等であってもよい。
【0015】
操作履歴解析部102は、操作階層記憶部120に記憶されている操作階層情報を用いて、操作履歴記憶部110に記憶されている操作履歴情報を解析し、階層毎に操作を特定する。ここで、階層とは操作の粒度のことであり、本実施形態では階層が低いほど粒度が細かい操作であり、階層が高いほど粒度が粗い操作であるものとする。すなわち、n階層目の操作はn-1階層目の1つ以上の操作で実現されるものとする。また、操作履歴情報は、最も粒度が細かい操作(つまり、1階層目の操作)の履歴であるものとする。
【0016】
具体例を挙げると、1階層目の操作には、例えば、「キーボードのキーの押下操作」、「マウスカーソルの移動操作」、「マウスの右クリック操作」、「マウスの左クリック操作」等が挙げられる。また、2階層目の操作には、例えば、「ファイル選択ボタンの押下操作」、「ファイル選択操作」、「ファイルアップロードボタンの押下操作」等が挙げられる。また、3階層目の操作には、「アップロード操作」、「ダウンロード操作」、「ファイル保存操作」等が挙げられる。
【0017】
なお、上述したように、例えば、2階層目の操作「ファイル選択ボタンの押下操作」は、1階層目の「マウスカーソルの移動操作」と「マウスの左クリック操作」とで実現される。ただし、この実現方法は1通りではなく、例えば、2階層目の操作「ファイル選択ボタンの押下操作」は、1階層目の「キーボードのキーの押下操作」により実現されてもよい。このように、n階層目の操作は、n-1階層目の1つ以上の操作で実現される。
【0018】
ただし、キーボード操作やマウス操作を1階層目の操作にするのではなく、アプリケーションの操作(例えば、「ファイル選択ボタンの押下操作」等)を1階層目の操作としてもよい。この場合、各アプリケーションの操作を予め登録しておくことで操作を検出することとしてもよい。
【0019】
定型作業抽出部103は、所定の階層の操作の履歴から定型作業を抽出する。例えば、定型作業抽出部103は、或る特定の階層で頻出する操作パターンを定型作業として抽出する。定型作業抽出部103により抽出された定型作業を示す情報は定型作業記憶部130に保存される。
【0020】
ここで、操作階層記憶部120に記憶されている操作階層情報について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、操作階層情報の一例を示す図である。
【0021】
図2に示すように、操作階層情報は、アプリケーションIDと、操作IDと、階層と、操作名とが対応付けられた情報である。すなわち、操作階層情報は、アプリケーション毎に、各種操作の階層を定義する情報である。このような操作階層情報は、例えば、定型作業抽出装置10のユーザ等により予め作成される。
【0022】
後述するように、操作階層情報を用いることで、n=1,・・・,Mとして、n-1階層目の1つ以上の操作からn階層目の操作を特定することが可能となる。これにより、操作履歴中に現れるM階層目の操作のパターンを定型作業として抽出することができる。なお、このように抽出された定型作業は、例えば、自動操作スクリプトで実行される定型業務やRPA(Robotic Process Automation)に実行させる定型作業として利用される。これにより、業務効率化等を図ることが可能となる。
【0023】
<定型作業抽出処理>
次に、本実施形態に係る定型作業抽出処理について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る定型作業抽出処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降では、操作履歴記憶部110には、各端末20から受信した所定の期間(例えば、1週間や1ヶ月等)の操作履歴情報が保存されているものとする。
【0024】
まず、操作履歴解析部102は、操作履歴記憶部110に記憶されている操作履歴情報を取得する(ステップS101)。このとき、操作履歴解析部102は、端末ID(又はユーザID)毎に所定の期間の操作履歴情報を取得する。例えば、端末IDとして「T001」と「T002」と「T003」とが存在する場合、操作履歴解析部102は、端末ID「T001」の所定の期間の操作履歴情報と、端末ID「T002」の所定の期間の操作履歴情報と、端末ID「T003」の所定の期間の操作履歴情報とを操作履歴記憶部110から取得する。
【0025】
次に、操作履歴解析部102は、操作階層記憶部120に記憶されている操作階層情報を用いて、上記のステップS101で取得した操作履歴情報を解析し、階層毎に操作を特定する(ステップS102)。
【0026】
例えば、
図4に示すように、或る端末IDの操作履歴情報が「・・・,操作11,操作12,操作14,操作16,操作15,操作13,操作17,・・・」であったとする。これは、操作11,操作12,操作14,操作16,操作15,操作13,操作17の順に操作が行なわれたことを意味する。また、これらの操作は1階層目の操作である。
【0027】
この場合、操作履歴解析部102は、操作階層記憶部120に記憶されている操作階層情報を用いて、操作履歴情報に含まれる各操作から2階層目の操作を特定する。例えば、
図4に示すように、1階層目の操作「操作11」及び「操作12」で2階層目の操作「操作21」で実現される場合、操作履歴解析部102は、この2階層目の操作「操作21」を特定する。同様に、1階層目の操作「操作16」及び「操作15」で2階層目の操作「操作26」で実現される場合、操作履歴解析部102は、この2階層目の操作「操作26」を特定する。
【0028】
以降も同様に、操作履歴解析部102は、n=2からn=Mまで、n-1階層目の1以上の操作からn階層目の操作を順に特定する。すなわち、操作履歴解析部102は、階層毎に、当該階層の1つ以上の操作から次の階層の操作を特定する。なお、Mは予め決められた2以上の整数である。
【0029】
具体例を
図5に示す。
図5(a)では1階層目の操作S0101~S0123から2階層目の操作S1101~S1103及びS0122~S0123が特定され、これらの2階層目の操作から3階層目の操作S2101及びS0123が特定された場合を示している。
図5(a)に示す例では、操作S2101として定型作業「ファイル名変更」が特定されている。
【0030】
また、
図5(b)では1階層目の操作S0201~S0215から2階層目の操作S1201~S1203並びにS0205、S0214及びS0215が特定され、これらの2階層目の操作から3階層目の操作S3201及びS0215が特定された場合を示している。
図5(b)に示す例では、操作S3201として定型作業「ファイルアップロード」が特定されている。
【0031】
また、
図5(c)では3階層目の操作S3101、S3201、S0301及びS3303から4階層目の操作S4001が特定された場合を示している。
図5(c)に示す例では、操作S4001として定型作業「作業報告」が特定されている。なお、どの定型作業を抽出するかは自動操作スクリプトやRPA等を利用する業務内容に依るが、例えば、定型作業「作業報告」を自動操作スクリプトやRPAに自動実行させる定型作業として抽出することが考えられる。
【0032】
ここで、n-1階層目の1つ以上の操作からn階層目の操作を特定する際に、操作履歴解析部102は、操作内容の類似度により、n-1階層目の1以上の操作とn階層目の操作とが同一の操作内容であるか否かを判定する。そして、同一の操作内容であると判定した場合(つまり、類似度が所定の閾値以上であると判定した場合)に、操作履歴解析部102は、n-1階層目の当該1以上の操作からn階層目の当該操作を特定する。
【0033】
操作内容の類似度とは、n-1階層目の1以上の操作によって実現される機能と、n階層の操作によって実現される機能とが類似(同一も含む)する度合いを表す値である。このような類似度は、各階層の各操作又は操作の組み合わせに対して予め設定されていてもよいし、任意の方法で算出されてもよい。又は、例えば、各階層で各操作又は操作の組み合わせが実現する機能毎に当該操作又は操作の組み合わせを分類した上で、機能毎に類似度が設定されてもよい。
【0034】
なお、上記では、操作履歴解析部102が類似度を算出する場合について説明したが、これに限られず、例えば、n-1階層目の1以上の操作とn階層目の操作とをユーザに提示して操作内容が類似するか否かを当該ユーザが判断してもよい。
【0035】
以上により、上記のステップS101から取得された各端末IDの操作履歴情報の各々からM階層目の操作の履歴がそれぞれ得られる。
【0036】
続いて、定型作業抽出部103は、上記のステップS102で得られたM階層目の操作の履歴から定型作業を抽出する(ステップS103)。例えば、定型作業抽出部103は、端末ID毎のM階層目の操作の履歴の中で、頻出する操作パターンを定型作業として抽出する。このとき、定型作業抽出部103は、同一の操作パターンだけでなく、互いに類似する操作パターンも同一とみなして、頻出する操作パターンを特定してもよい。また、同一のパターンが最も多く出現する操作パターンを基準として、この操作パターンに類似する操作パターンを特定することで、頻出する操作パターンを特定してもよい。なお、互いに類似するとは、例えば、操作パターン(つまり、M階層目の操作の時系列)をベクトル表現した場合に、ベクトル間の距離(例えば、ユークリッド距離等)が所定の閾値以下となる操作パターン同士のことである。
【0037】
具体例を
図6に示す。
図6に示す例では、同一のパターンが最も多く出現する操作パターンをパターン1として、このパターン1を基準とする。この場合、例えば、異なる操作がN=2個以下である操作パターン同士を互いに類似する操作パターンであるものとすれば、パターン1と類似する操作パターンは、パターン3及びパターン4となる。したがって、パターン2及びパターン5は、パターン1とは異なる操作パターンであると判定される。なお、
図6に示す例では、パターン2は、パターン1、パターン3及びパターン4と同じ作業の操作パターンであるが、類似しない操作パターンと判定されている。ここで、上記のNは互いに類似する操作パターンを特定するための閾値であるが、このNは操作の個数に限られず、例えば、操作パターン同士で異なる操作の割合であってもよい。また、当該閾値は、例えば、端末20のユーザが属する組織(プロジェクト、部門(経理、開発等))に応じて変動させてもよいし、期間毎(例えば、週毎、月毎、4半期毎、年毎)に変動させてもよいし、端末20のユーザの作業日時(例えば、月曜、月末、朝、端末20の起動直後、夕方等)に応じて変動させてもよい。
【0038】
以上により、本実施形態に係る定型作業抽出装置10は、複数の端末20から収集した操作履歴から或る特定の粒度の操作履歴を作成した上で、この特定の粒度の操作履歴から定型作業を抽出する。これにより、容易に、かつ、高い精度で定型的な作業を抽出することが可能となる。なお、上記のステップS103で抽出された定型作業(つまり、M階層目の操作の履歴)はユーザ等に提示されてもよい。
【0039】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 定型作業抽出装置
20 端末
101 操作履歴管理部
102 操作履歴解析部
103 定型作業抽出部
110 操作履歴記憶部
120 操作階層記憶部
130 定型作業記憶部