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特許7384709電動パワーステアリング装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20231114BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20231114BHJP
   H02K 15/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K5/22
H02K15/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038102
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021141727
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】砥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】安田 武史
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 雅之
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106376(JP,A)
【文献】特開2020-005480(JP,A)
【文献】特開2019-047700(JP,A)
【文献】特開2017-189033(JP,A)
【文献】特開2016-144382(JP,A)
【文献】特開2017-189034(JP,A)
【文献】特開2015-180157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
B62D 5/04
H02K 5/22
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の操舵機構を駆動する電動モータを収容するモータハウジングと、前記電動モータの出力軸とは反対側に配置される制御ユニットとを備える電動パワーステアリング装置において、
前記モータハウジングは、前記電動モータと電気的に接続され、前記制御ユニットの方へ延在するモータ接続端子を備え、
前記制御ユニットは、
前記電動モータから最も遠い位置に配置され、外部からのケーブルと接続するための複数のコネクタが形成されたコネクタアッシーと、
前記コネクタアッシーを搭載し、前記モータハウジングに固定されるヒートシンクカバーと、
前記電動モータを駆動するための駆動電子部品を搭載し、前記駆動電子部品を搭載する面と反対側の面を前記ヒートシンクカバー側に向けて配置される駆動基板と、
前記駆動基板に対する電源を生成するための電源電子部品を搭載し、前記電源電子部品を搭載する面を前記駆動基板側に向けて、前記出力軸方向において前記駆動基板より前記電動モータ側に配置される電源基板と、
前記駆動電子部品および前記電源電子部品を受け入れる受容部と前記駆動基板と前記電源基板を所定の距離で保持する保持部を有し、前記駆動基板と前記電源基板の間に配置される基板保持部材と、
前記出力軸の回転を検出するための回転センサと前記駆動電子部品を制御するための制御部を搭載し、前記回転センサを搭載する面を前記電動モータ側に向けて、前記出力軸方向において前記電源基板より前記電動モータ側に配置される制御基板と、
を備える電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記基板保持部材は、前記モータ接続端子と接続される保持部材接続端子を有し、
前記制御ユニットと前記モータハウジングを組み立てるために前記モータ接続端子を前記保持部材接続端子に押し込む際に、前記駆動基板と前記電源基板を所定の距離に維持する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記駆動基板は、前記電源基板を電気的に接続する電源駆動間端子を有し、
前記基板保持部材は、前記電源基板と前記駆動基板を組み立てる際に前記電源駆動間端子をガイドする機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記保持部の一端は、前記電源基板の前記電源電子部品を搭載する面に固定され、
前記保持部の他端は、前記駆動基板の前記駆動電子部品を搭載する面に固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記コネクタアッシーは、前記コネクタアッシーに接続される電源ケーブルと前記電源基板を接続する電源用端子と、前記コネクタアッシーに接続される制御ケーブルと前記制御基板を接続する制御用端子を備え、
前記制御用端子は、前記電源用端子より前記出力軸の径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記基板保持部材は、前記保持部より前記出力軸の径方向外側に前記制御基板を固定するための保持部材固定部を備え、
前記制御基板は、前記保持部材固定部に固定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ヒートシンクカバーは、前記保持部より前記出力軸の径方向外側に前記制御基板を固定するためのカバー固定部を備え、
前記制御基板は、前記カバー固定部に固定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記電動モータは、冗長系として機能する2つの巻線を有し、
前記コネクタアッシーの複数のコネクタ、前記制御基板、前記駆動基板、および前記電源基板は、前記電動モータの冗長系に対応する冗長系を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
車両用の操舵機構を駆動する電動モータを備える電動パワーステアリング装置において、前記電動モータの出力軸とは反対側に配置される制御ユニットを製造する製造方法であって、
前記制御ユニットは、
前記電動モータを収容するモータハウジングに固定されるヒートシンクカバーと、
前記電動モータを駆動するための駆動電子部品を搭載し、前記駆動電子部品を搭載する面と反対側の面を前記ヒートシンクカバー側に向けて配置される駆動基板と、
前記駆動基板に対する電源を生成するための電源電子部品を搭載し、前記電源電子部品を搭載する面を前記駆動基板側に向けて、前記出力軸方向において前記駆動基板より前記電動モータ側に配置される電源基板と、
前記駆動電子部品および前記電源電子部品を受け入れる受容部と前記駆動基板と前記電源基板を所定の距離で保持する保持部を有し、前記駆動基板と前記電源基板の間に配置される基板保持部材と、
前記出力軸の回転を検出するための回転センサと前記駆動電子部品を制御するための制御部を搭載し、前記回転センサを搭載する面を前記電動モータ側に向けて、前記出力軸方向において前記電源基板より前記電動モータ側に配置される制御基板と、
を備え、
前記駆動電子部品を前記受容部に嵌合し、前記駆動基板と前記基板保持部材を固定し、
前記基板保持部材を固定した面と反対側の面で前記駆動基板を前記ヒートシンクカバーに固定し、
前記電源電子部品を前記受容部に嵌合し、前記基板保持部材の前記駆動基板を固定した面と反対側の面に前記電源基板を固定し、
固定した前記電源基板側から前記制御基板を前記ヒートシンクカバーに固定する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の操舵機構を駆動する電動モータとその電動モータを制御するための回路とを一体にして提供される電動パワーステアリング装置に関する技術が知られている。例えば、特許文献1は、電子制御装置が収納されているハウジングが半径方向に大型化するのを抑制し、できるだけ中継コネクタ等の部品を少なくすると共に、簡単な放熱構造を備える新規な電動パワーステアリング装置を開示する。この電動パワーステアリング装置は、金属基板に実装された電源回路部と、金属基板に実装された電力変換回路部と、樹脂基板に実装された制御回路部とを備える。電源回路部から電力変換回路部及び制御回路部へ電力を供給する電力供給コネクタ配線部と、制御回路部への入出力信号を伝送する信号伝送コネクタ配線部とを合成樹脂よりなるコネクタ端子組立体に埋設して金属基板の外周側に配置すると共に、コネクタ端子組立体から露出した電源供給コネクタ配線部、及び信号伝送コネクタ配線部のコネクタ端子を対応する電源回路部、電力変換回路部及び制御回路部のコネクタに直接的に接続した。
【0003】
また、特許文献2は、複数の基板を有する構成において、配線スペースを抑制可能な電動パワーステアリング装置を開示する。この電動パワーステアリング装置では、コネクタは、第1基板または第2基板と接続される端子を有し、基板を挟んでモータ部と反対側に設けられる。第1基板において、モータ部の軸方向に投影したとき、第2基板と重複しない非重複領域が2つ以上ある。非重複領域のうちの少なくとも1つは、コネクタ端子と接続されるコネクタ接続領域であり、コネクタ接続領域以外の非重複領域のうちの少なくとも1つは、巻線組と相毎に接続されるモータ線と接続されるモータ線接続領域である。これにより、配線スペースは抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-144382号公報
【文献】特開2017-189034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、電動パワーステアリング装置に対しては、車両のエンジンルーム内に設けられるためできるだけ小型化することが求められている。一方、電動パワーステアリング装置は、非常に発熱量の大きい電子部品を内部に収容することため高い放熱性が求められると共に、製造時の組み立て性を良くして製造コストを低減することも求められている。しかし、上述した従来技術では、ヒートシンクが装置の中間に位置しているため放熱性が良いと言えず、また、制御ユニット内の複数の基板や制御ユニットと電動モータを組み立てる場合の工夫は特になされていない。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、良好な放熱性とモジュール化による良好な組み立て性を有する電動パワーステアリング装置とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、車両用の操舵機構を駆動する電動モータを収容するモータハウジングと、電動モータの出力軸とは反対側に配置される制御ユニットとを備える電動パワーステアリング装置において、モータハウジングは、電動モータと電気的に接続され、制御ユニットの方へ延在するモータ接続端子を備え、制御ユニットは、電動モータから最も遠い位置に配置され、外部からのケーブルと接続するための複数のコネクタが形成されたコネクタアッシーと、コネクタアッシーを搭載し、モータハウジングに固定されるヒートシンクカバーと、電動モータを駆動するための駆動電子部品を搭載し、駆動電子部品を搭載する面と反対側の面をヒートシンクカバー側に向けて配置される駆動基板と、駆動基板に対する電源を生成するための電源電子部品を搭載し、電源電子部品を搭載する面を駆動基板側に向けて、出力軸方向において駆動基板より電動モータ側に配置される電源基板と、駆動電子部品および電源電子部品を受け入れる受容部と駆動基板と電源基板を所定の距離で保持する保持部を有し、駆動基板と電源基板の間に配置される基板保持部材と、出力軸の回転を検出するための回転センサと駆動電子部品を制御するための制御部を搭載し、回転センサを搭載する面を電動モータ側に向けて、出力軸方向において電源基板より電動モータ側に配置される制御基板と、を備える電動パワーステアリング装置が提供される。
これによれば、発熱量の多い駆動基板の近くであって装置の端部にヒートシンクを設け、ヒートシンクは直接外気と接触するように配置すると共に、制御ユニット内の基板間に基板保持部材を設けることで、良好な放熱性とモジュール化による良好な組み立て性を有する電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0008】
さらに、基板保持部材は、モータ接続端子と接続される保持部材接続端子を有し、制御ユニットとモータハウジングを組み立てるためにモータ接続端子を保持部材接続端子に押し込む際に、駆動基板と電源基板を所定の距離に維持する機能を有することを特徴としてもよい。
これによれば、制御ユニットと電動モータを組み立てるために端子を押し込む際に駆動基板と電源基板を所定の距離に維持する機能を有することで、組み立て性を良くすることができる。
【0009】
さらに、駆動基板は、電源基板を電気的に接続する電源駆動間端子を有し、基板保持部材は、電源基板と駆動基板を組み立てる際に電源駆動間端子をガイドする機能を有することを特徴としてもよい。
これによれば、制御ユニット内の複数の基板を組み立てる際に基板を電気的に接続する端子をガイドする機能を有することで、組み立て性を良くすることができる。
【0010】
さらに、保持部の一端は、電源基板の電源電子部品を搭載する面に固定され、保持部の他端は、駆動基板の駆動電子部品を搭載する面に固定されることを特徴としてもよい。
これによれば、かかる基板保持部材により、電源基板を固定するための支柱がヒートシンクカバーに設ける必要がなく、また駆動基板の面積を大きくすることができる。
【0011】
さらに、コネクタアッシーは、コネクタアッシーに接続される電源ケーブルと電源基板を接続する電源用端子と、コネクタアッシーに接続される制御ケーブルと制御基板を接続する制御用端子を備え、制御用端子は、電源用端子より出力軸の径方向外側に配置されることを特徴としてもよい。
これによれば、かかる配置にすることにより、電源基板に制御用端子との干渉を避けるための開口部を設ける必要がなく、また電源基板においてパターン配線の引き回しが容易になる。
【0012】
さらに、基板保持部材は、保持部より出力軸の径方向外側に制御基板を固定するための保持部材固定部を備え、制御基板は、保持部材固定部に固定されることを特徴としてもよい。
これによれば、制御基板を基板保持部材に固定することで、モジュール化によるより良好な組み立て性が得られる。
【0013】
さらに、ヒートシンクカバーは、保持部より出力軸の径方向外側に制御基板を固定するためのカバー固定部を備え、制御基板は、カバー固定部に固定されることを特徴としてもよい。
これによれば、制御基板をヒートシンクカバーに固定することで、出力軸の回転を検出するセンサと出力軸の中心軸との位置ずれを最小化できる。
【0014】
さらに、電動モータは、冗長系として機能する2つの巻線を有し、コネクタアッシーの複数のコネクタ、制御基板、駆動基板、および電源基板は、電動モータの冗長系に対応する冗長系を有することを特徴としてもよい。
これによれば、冗長系を有し部品点数が多い場合であっても小型の電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、車両用の操舵機構を駆動する電動モータを備える電動パワーステアリング装置において、電動モータの出力軸とは反対側に配置される制御ユニットを製造する製造方法であって、制御ユニットは、電動モータを収容するモータハウジングに固定されるヒートシンクカバーと、電動モータを駆動するための駆動電子部品を搭載し、駆動電子部品を搭載する面と反対側の面をヒートシンクカバー側に向けて配置される駆動基板と、駆動基板に対する電源を生成するための電源電子部品を搭載し、電源電子部品を搭載する面を駆動基板側に向けて、出力軸方向において駆動基板より電動モータ側に配置される電源基板と、駆動電子部品および電源電子部品を受け入れる受容部と駆動基板と電源基板を所定の距離で保持する保持部を有し、駆動基板と電源基板の間に配置される基板保持部材と、出力軸の回転を検出するための回転センサと駆動電子部品を制御するための制御部を搭載し、回転センサを搭載する面を電動モータ側に向けて、出力軸方向において電源基板より電動モータ側に配置される制御基板と、を備え、駆動電子部品を受容部に嵌合し、駆動基板と基板保持部材を固定し、基板保持部材を固定した面と反対側の面で駆動基板をヒートシンクカバーに固定し、電源電子部品を受容部に嵌合し、基板保持部材の駆動基板を固定した面と反対側の面に電源基板を固定し、固定した電源基板側から制御基板をヒートシンクカバーに固定する製造方法が提供される。
これによれば、発熱量の多い駆動基板の近くであって装置の端部にヒートシンクを設け、ヒートシンクは直接外気と接触するように配置すると共に、制御ユニット内の基板間に基板保持部材を設けることで、良好な放熱性とモジュール化による良好な組み立て性を有する電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、良好な放熱性と組み立て性を有する電動パワーステアリング装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図、(E)下方からの斜視図。
図2】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)平面図、(B)(A)におけるB-B断面における断面図、(C)(A)におけるA-A断面における断面図。
図3】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)上方からの展開斜視図、(B)下方からの展開斜視図。
図4】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の駆動基板の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図。
図5】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の基板保持部材の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)底面図、(E)上方からの斜視図。
図6】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の電源基板の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)底面図、(E)上方からの斜視図。
図7】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の制御基板の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)底面図、(E)上方からの斜視図。
図8】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置において、駆動基板と基板保持部材が固定された場合の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)底面図、(E)上方からの斜視図。
図9】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置において、ヒートシンクカバーから電源基板まで固定された場合の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図。
図10】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置において、ヒートシンクカバーから制御基板まで固定された場合の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図。
図11】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置において、ヒートシンクカバーから制御基板まで固定された場合の、(A)平面図、(B)(A)におけるE-E断面における断面図、(C)(A)におけるF-F断面における断面図。
図12】本発明に係る第一実施例の変形例の電動パワーステアリング装置において、駆動基板から電源基板まで固定された場合の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図。
図13】本発明に係る第一実施例の変形例の電動パワーステアリング装置における、基板保持部材と他の基板の関係を示す模式図。
図14】本発明に係る実施例の電動パワーステアリング装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至図14を参照し、本実施例における電動パワーステアリング装置1を説明する。電動パワーステアリング装置1は、車両用の操舵機構を駆動する電動モータMTを収容するモータハウジング200と、電動モータMTのロータである出力軸RTとは反対側に配置される制御ユニット100とを備える。電動モータMTは、車両の運転者がステアリングを回動操作する際のトルクを支援するため、操舵機構に対して支援操舵トルクを発生させる。制御ユニット100は、支援操舵トルクを発生させる電動モータMTを制御するための制御装置である。
【0019】
本実施例における電動パワーステアリング装置1においては、図14に示すように、電動モータMTは第1電動モータMTAと第2電動モータMTBから、制御ユニット100は第1制御システム100Aと第2制御システム100Bから構成される。電動パワーステアリング装置1は、全体として、第1電動モータMTAと第1制御システム100Aから構成される第1システム10Aと、第2電動モータMTBと第2制御システム100Bから構成される第2システム10Bからなる。このように、それぞれ2系統に冗長化されているため、いずれかの系統において異常が生じても、電動パワーステアリング装置1としての制御を継続できる。なお、本実施例では、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBは、巻線が第1巻線組と第2巻線組から構成されているので冗長系を有し、ロータを共有している。しかし、これに限定されず、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBは、2つの別個の電動モータであってもよい。
【0020】
第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、図1図14に示すように、車両のバッテリから電源ケーブルと電源コネクタ1111を介して電源基板150上の電源部を構成する電源電子部品151に電力を供給する。電源コネクタ1111は、コネクタアッシー110の基板側に形成された電源用端子112に接続されている。また、第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、制御ケーブルを経由してCAN(Car Area Network、図示せず)と接続されるCANコネクタ1112を介して制御基板160上の制御部を構成するマイクロコンピュータ162に車速信号を供給する。また、第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、車両の各所の情報を検出するセンサと接続されるセンサコネクタ1113を介してマイクロコンピュータ162に操舵トルク信号や操舵角信号などを供給する。
【0021】
センサコネクタ1113は、コネクタアッシー110の基板側に形成された制御用端子113に接続されている。制御用端子113は、電源用端子112より出力軸RTの径方向外側に配置される。このように、遠い位置に配置される制御基板160に接続される制御用端子113を、近い位置に配置される電源基板150に接続される電源用端子112より径方向の外側に配置することにより、電源基板150に制御用端子113との干渉を避けるための開口部を設ける必要がなく、また電源基板150においてパターン配線の引き回しが容易になる。
【0022】
駆動基板130上の駆動電子部品131であるドライバICは、制御基板160上のマイクロコンピュータ162から制御信号を、電源基板150上の電源部から駆動電力の供給を受け、それぞれのモータ接続端子210を介して第1電動モータMTA/第2電動モータMTBを駆動する。第1電動モータMTA/第2電動モータMTBのロータの回転位置を検出するMRセンサ161(Magnetic Resistanceセンサ)は、制御基板160上に設けられ、検出したモータ回転角信号をマイクロコンピュータ162に入力する。このように、電源コネクタ1111やCANコネクタ1112などのコネクタ111、制御基板160、駆動基板130、および電源基板150は、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBにそれぞれ対応する冗長系を有する。図1(A)に示すように、制御ユニット100は、センサコネクタ1113の中心と電動モータMTの回転軸を結ぶ中心線CTの上下で、第1制御システム100Aと第2制御システム100Bに分かれて配置されている。冗長系を有し部品点数が多い場合であってもこのように配置することで小型の電動パワーステアリング装置1を提供することができる。
【0023】
モータハウジング200は、電動モータMTと電気的に接続されるモータ接続端子210を備える。モータ接続端子210は、制御ユニット100の方へ延在して、基板と電気的に接続され、電動モータMTを駆動するための駆動電流を伝達する。なお、モータ接続端子210は、電動モータMTが3相なので3つの端子で一組をなし、図2(B)に示すように、第1制御システム100Aと第2制御システム100Bにそれぞれ対応する2組から構成される。
【0024】
制御ユニット100は、図3に示すように、電動モータMTを収容するモータハウジング200から遠い順に、コネクタアッシー110、ヒートシンクカバー120、駆動基板130、基板保持部材140、電源基板150、制御基板160を備える。コネクタアッシー110は、電動モータMTを収容するモータハウジング200から最も遠い位置に配置され、バッテリ、CAN、センサなどの外部からのケーブルと接続するための複数のコネクタ111が形成されている。コネクタ111には、外部からのケーブルに対応して、電源コネクタ1111、CANコネクタ1112、センサコネクタ1113がある。ヒートシンクカバー120は、上面の2/3程度の領域でコネクタアッシー110を搭載し、モータハウジング200に固定され、残りの上面や側面において複数の基板が発生させる熱を放熱する。特に発熱量の大きい駆動基板130は、ヒートシンクカバー120に接触して配置される。なお、ヒートシンクカバー120は、モータハウジング200から離しているので、電動モータMT自身の発熱の影響を受けにくい。
【0025】
駆動基板130は、電動モータMTを駆動するため、マイクロコンピュータ162の制御信号からPWM信号を生成するプリドライバ、PWM信号により3相の電動モータMTの第1巻線組/第2巻線組を駆動するスイッチング素子から構成されるブリッジ回路、ブリッジ回路の各相の電流を検出するシャント抵抗などを含む駆動電子部品131を搭載する。なお、駆動電子部品131はドライバICとして複数の機能や回路を1つの部品として集積してもよいし、個別の部品や回路として駆動基板130に搭載してもよい。また、駆動基板130は、図4に示すように、電源基板150と電気的に接続する電源駆動間端子132を有する。電源駆動間端子132の一部は、電源基板150からの駆動電流を伝達し、他の一部は、電源基板150を介して制御基板160からの制御信号を伝達する。駆動基板130は、これらの駆動電子部品131を搭載する面を電源基板150(基板保持部材140)側に向けて、この面と反対側の面をヒートシンクカバー120側に向けて配置される。駆動基板130の基板は、ヒートシンクカバー120に熱を伝導し易くするため金属製(特にアルミ製)であることが好ましい。
【0026】
電源基板150は、図6に示すように、駆動基板130に対する電源を生成するための電源電子部品151を搭載する。電源電子部品151は、電源コネクタ1111を介して得たバッテリからの電源を、電動モータMTや、制御基板160上のマイクロコンピュータ162に適する電源にするための電源部を構成する。また、電源基板150は、電源電子部品151を搭載する面の反対側の面に制御基板160と電気的に接続する電源制御間端子152を有する。電源制御間端子152の一部は、電源基板150を介して駆動基板130からの制御信号を制御基板160に伝達したり、制御基板160からの信号を駆動基板130に伝達する。また、電源基板150は、電源用端子112と接続される電源用端子接続孔153を端部に有する。電源基板150は、電源電子部品151を搭載する面を駆動基板130側に向けて、出力軸RTの軸方向において駆動基板130より電動モータMT側に配置される。
【0027】
基板保持部材140は、図5に示すように、一方の面には駆動基板130から突出する駆動電子部品131を受け入れるための受容部1421、他方の面には電源基板150から突出する電源電子部品151を受け入れるための受容部1422を有する。基板保持部材140は、駆動電子部品131を受け入れるための受容部1421を駆動基板130側(ヒートシンクカバー120側)に向けて、電源電子部品151を受け入れるための受容部1422を電源基板150側(モータハウジング200側)に向けて駆動基板130と電源基板150の間に配置される。受容部1421と受容部1422は、平面視で互いにずれた位置に配置されているので、駆動電子部品131と電源電子部品151の面からの高さを吸収でき、回転軸方向の距離を短くすることができる。
【0028】
基板保持部材140は、矩形部の4隅で駆動基板130と電源基板150を所定の距離で保持する保持部141を有する。所定の距離とは、駆動電子部品131と電源電子部品151の中で最も高さの高い部品が対向する基板に接触しない程度の距離である。保持部141の一端は、電源基板150の電源電子部品151を搭載する面に固定され、その他端は、駆動基板130の駆動電子部品131を搭載する面に固定される。これによれば、かかる基板保持部材140により、電源基板150を固定するための支柱がヒートシンクカバー120に設ける必要がなく、また駆動基板130の面積を大きくすることができる。
【0029】
また、基板保持部材140は、モータ接続端子210と接続される保持部材接続端子143を有する。基板保持部材140が制御ユニット100とモータハウジング200を組み立てるためにモータ接続端子210が接続される保持部材接続端子143を備えることで、モータ接続端子210を保持部材接続端子143に押し込む際に、駆動基板130と電源基板150を所定の距離に維持できる。このように、制御ユニット100と電動モータMTを組み立てるためにモータ接続端子210を押し込む際に駆動基板130と電源基板150を所定の距離に維持する機能を有することで、組み立て済み部分に荷重を掛けずに組み立て性を良くすることができる。
【0030】
基板保持部材140は、電源基板150と駆動基板130を組み立てる際に電源駆動間端子132をガイドするガイド孔145を有する。ガイド孔145の径は、駆動基板130側の面で大きく、電源基板150側の面で小さいので、組み立てる際に駆動基板130に設けられた電源駆動間端子132をガイドする機能を有する。このように、制御ユニット100内の複数の基板を組み立てる際に基板を電気的に接続する端子をガイドする機能を有することで、組み立て性を良くすることができる。また、基板保持部材140は、モータ接続端子210を保持部材接続端子143に押し込む際に、保持部材接続端子143を保護すると共にモータ接続端子210をガイドするためのプレスインカバー146を備える。
【0031】
制御基板160は、一方の面に電動モータMTの回転軸の回転を検出するための回転センサ161(MRセンサ161)を、他方の面に駆動電子部品131を制御するためのマイクロコンピュータ162(図7では図示せず)を搭載する。制御基板160は、回転センサ161を搭載する面を電動モータMT側に向けて、出力軸RTの軸方向において電源基板150より電動モータMT側に配置される。制御基板160は、電源制御間端子152を接続するための制御基板接続端子孔163を有する。また、制御基板160は、制御用端子113と接続される制御用端子接続孔164を端部に有する。
【0032】
上述したように、電動パワーステアリング装置1の制御ユニット100は、電動モータMTから最も遠い位置に配置されたコネクタアッシー110を搭載し、モータハウジング200に固定されるヒートシンクカバー120と、駆動電子部品131を搭載する面と反対側の面をヒートシンクカバー120側に向けて配置される駆動基板130と、電源電子部品151を搭載する面を駆動基板130側に向けて駆動基板130より電動モータMT側に配置される電源基板150と、駆動電子部品131などを受け入れる受容部1421/1422と駆動基板130と電源基板150を所定の距離で保持する保持部141を有し、駆動基板130と電源基板150の間に配置される基板保持部材140と、駆動電子部品131を制御するための制御部162を搭載し、電源基板150より電動モータMT側に配置される制御基板160と、を備える。これによれば、発熱量の多い駆動基板130の近くであって装置の端部にヒートシンクを設け、ヒートシンクは直接外気と接触するように配置すると共に、制御ユニット100内の基板間に基板保持部材140を設けることで、良好な放熱性とモジュール化による良好な組み立て性を有する電動パワーステアリング装置1を提供することができる。
【0033】
上述した制御ユニット100は、以下のように組み立てることが好ましい。まず、図8に示すように、駆動基板130と基板保持部材140を組み立てる。すなわち、駆動基板130の電源駆動間端子132を基板保持部材140のガイド孔145にガイドさせながら差し込み、駆動電子部品131を受け入れる受容部1421に嵌合させる。そして、駆動基板130と基板保持部材140を保持部141の一端で固定する。
【0034】
次に、駆動基板130と基板保持部材140が一体となったものを、基板保持部材140を固定した面と反対側の面で駆動基板130をヒートシンクカバー120に固定する。なお、駆動基板130は、固定孔133を有し、この固定孔133を介してヒートシンクカバー120に設けられたボスに螺子で取り付けられる。なお、基板保持部材140は、固定孔133に対応する位置に螺子除け部148を有し、螺子での取り付けが容易になっている。
【0035】
次に、図9に示すように、ヒートシンクカバー120から基板保持部材140までが一体になったものに、電源基板150を取り付ける。すなわち、電源基板150の電源電子部品151を基板保持部材140の受容部1422に嵌合し、基板保持部材140の駆動基板130を固定した面と反対側の面に、保持部141の他端で電源基板150を固定する。そうすると、本図に示すように、電源基板150の電源制御間端子152と、ヒートシンクカバー120に設けられたカバー固定部121と、制御用端子113が制御ユニット100の上面から突出する。
【0036】
次に、図10に示すように、固定した電源基板150側から、制御基板160の制御基板接続端子孔163および制御用端子接続孔164と、電源制御間端子152および制御用端子113とを嵌め合わせ、制御基板160をヒートシンクカバー120のカバー固定部121に固定する。このように、制御基板160をヒートシンクカバー120に固定することで、電動モータMTの回転軸の回転を検出する回転センサ161と回転軸の中心との位置ずれを最小化できる。なお、制御基板160の取り付け方はこれに限定されず、たとえば、図12に示すように、基板保持部材140は、保持部141より出力軸RTの径方向外側に制御基板160を固定するための保持部材固定部144を備え、制御基板160は、保持部材固定部144に固定されてもよい。このように、制御基板160を基板保持部材140に固定することで、モジュール化によるより良好な組み立て性が得られる。
【0037】
図10および図11に示すように、電動モータMTの回転軸の先端に対応する位置に回転センサ161が配置される。また、この次に取り付けられるモータハウジング200から延在するモータ接続端子210が接続される保持部材接続端子143が電動モータMT側から目視でき、制御ユニット100とモータハウジング200を取り付けられる状態である。このように、ヒートシンクカバー120から制御基板160まで組み立てられたものに、モータ接続端子210と保持部材接続端子143が適合するようにモータハウジング200を取り付けることにより、電動パワーステアリング装置1が完成する。これによれば、発熱量の多い駆動基板130の近くであって装置の端部にヒートシンクを設け、ヒートシンクは直接外気と接触するように配置すると共に、制御ユニット内の基板間に基板保持部材140を設けることで、良好な放熱性とモジュール化による良好な組み立て性を有する電動パワーステアリング装置1の製造方法を提供することができる。
【0038】
なお、駆動基板130をヒートシンクカバー120に固定するタイミングは、駆動基板130と基板保持部材140を組み立てた状態にした時であるとして上述したが、これに限定されず、図12に示すような、駆動基板130と基板保持部材140と電源基板150を組み立てた状態にしたときでもよい。ある態様においては、駆動基板130と基板保持部材140と電源基板150と制御基板160を組み立てた状態にしたときでもよい。
【0039】
また、上記では、制御基板160をヒートシンクカバー120のカバー固定部121に固定する例を説明したが、これに限定されず、制御基板160は基板保持部材140に固定されてもよい。たとえば、図13に示すように、基板保持部材140は、保持部141より出力軸RTの径方向外側に制御基板160を固定するための保持部材固定部144を備え、制御基板160は、保持部材固定部144に固定されてもよい。このように、制御基板160を基板保持部材140に固定することで、モジュール化によるより良好な組み立て性が得られる。
【0040】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0041】
たとえば、上記実施例の電動パワーステアリング装置1では、電動モータおよび制御ユニットはそれぞれ2系統に冗長化されていたが、冗長化されていなくともよいし、冗長化の数は3系統以上であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 電動パワーステアリング制御装置
10A/B 第1システム/第2システム
100(100A/B) 制御ユニット(第1制御システム/第2制御システム)
110 コネクタアッシー
111 コネクタ
112 電源用端子
113 制御用端子
120 ヒートシンクカバー
121 カバー固定部
130 駆動基板
131 駆動電子部品
132 電源駆動間端子
133 固定孔
140 基板保持部材
141 保持部
1421/1422 受容部
143 保持部材接続端子
144 保持部材固定部
145 ガイド孔
146 プレスインカバー
148 螺子除け部
150 電源基板
151 電源電子部品
152 電源制御間端子
153 電源用端子接続孔
160 制御基板
161 回転センサ(MRセンサ)
162 制御部(マイクロコンピュータ)
163 制御基板接続端子孔
164 制御用端子接続孔
200 モータハウジング
210 モータ接続端子
MTA 第1電動モータ
MTB 第2電動モータ
RT 電動モータの出力軸
図1
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