IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地中空間開発株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-カッターの異常判定システム 図1
  • 特許-カッターの異常判定システム 図2
  • 特許-カッターの異常判定システム 図3
  • 特許-カッターの異常判定システム 図4
  • 特許-カッターの異常判定システム 図5
  • 特許-カッターの異常判定システム 図6
  • 特許-カッターの異常判定システム 図7
  • 特許-カッターの異常判定システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】カッターの異常判定システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20231114BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20231114BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
E21D9/087 A
E21D9/06 301Z
E02F9/24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020048608
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147866
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521478094
【氏名又は名称】地中空間開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重村 誠一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】高原 健
(72)【発明者】
【氏名】國富 武
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-328993(JP,A)
【文献】特開2017-172162(JP,A)
【文献】特開2004-27702(JP,A)
【文献】特開平9-49253(JP,A)
【文献】特開平9-170398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E02F 9/00-9/18
E02F 9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機のカッターヘッドに設けられた複数のカッターの異常を判定するシステムであって、
前記カッターヘッドの回転軸を中心とする周方向に分布するように前記カッターヘッドと対向するバルクヘッドに設けられた、前記バルクヘッドの振動を計測する少なくとも4つの振動計と、
前記カッターヘッドの回転角を検出する回転角検出器と、
前記少なくとも4つの振動計のそれぞれの計測結果である振動波形に所定値よりも大きなピーク値が有るか否かを判定し、前記ピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計が、前記少なくとも4つの振動計の間で、前記回転角検出器で検出される回転角と連動して変化する場合、前記複数のカッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定する判定装置と、
を備える、カッターの異常判定システム。
【請求項2】
前記少なくとも4つの振動計は、前記カッターヘッドの回転軸を中心とする径方向にも分布するように前記バルクヘッドに設けられている、請求項1に記載のカッターの異常判定システム。
【請求項3】
前記判定装置は、前記ピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計が、前記カッターヘッドが少なくとも一回転する間、前記少なくとも4つの振動計のうちの1つに集中する場合、前記カッターヘッドが障害物と接触したと判定する、請求項1または2に記載のカッターの異常判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機のカッターヘッドに設けられた複数のカッターの異常を判定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カッターヘッドに複数のカッターが設けられたトンネル掘削機が知られている。このようなトンネル掘削機では、カッターの摩耗などの異常を検出したいという要望がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、トンネル掘削機の異常を診断する診断装置が開示されている。この診断装置では、カッターヘッドと対向するバルクヘッドに設けられた、音または振動を検出する音波センサが用いられている。引用文献1の図3には、2つの音波センサが、カッターヘッドの回転軸を中心とする径方向に並んで設けられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-49253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された診断装置のように、カッターヘッドの回転軸を中心とする径方向に並んで設けられた音波センサを用いた場合には、大きな振動が発生したとしても、その振動がカッターの異常に起因するものなのかその他の異常に起因するものなのかを判定することが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、カッターの異常を判定することができるカッターの異常判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のカッターの異常判定システムは、トンネル掘削機のカッターヘッドに設けられた複数のカッターの異常を判定するシステムであって、前記カッターヘッドの回転軸を中心とする周方向に分布するように前記カッターヘッドと対向するバルクヘッドに設けられた、前記バルクヘッドの振動を計測する少なくとも4つの振動計と、前記カッターヘッドの回転角を検出する回転角検出器と、前記少なくとも4つの振動計のそれぞれの計測結果である振動波形に所定値よりも大きなピーク値が有るか否かを判定し、前記ピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計が、前記少なくとも4つの振動計の間で、前記回転角検出器で検出される回転角と連動して変化する場合、前記複数のカッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定する判定装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
カッターに摩耗などの異常が有る場合は、カッターヘッドが地山を掘削する際にそのカッターが存する位置でのカッターヘッドの振動が大きくなり、その大きな振動がバルクヘッドへ伝わる。さらに、そのカッターはカッターヘッドと共に回転するので、バルクヘッドにおける大きな振動の発生位置もカッターヘッドの回転と連動して移動する。従って、上記の構成のように、ピーク値を計測する振動計が、少なくとも4つの振動計の間でカッターヘッドの回転角に連動して変化すれば、カッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定することができる。しかも、カッターヘッドの回転軸を中心とする周方向において、その異常と判定したカッターの位置も特定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カッターの異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るカッターの異常判定システムが組み込まれたトンネル掘削機を概略的に示した斜視図である。
図2】バルクヘッドの正面図である。
図3】振動計の配置バターンの変形例を示す図である。
図4】異常判定システムの概略構成図である。
図5】(a)~(d)は、カッターに異常が無い場合における第1~第4振動計の計測結果である振動波形を示す図である。
図6】(a)~(d)は、カッターに異常が有る場合における第1~第4振動計の計測結果である振動波形を示す図である。
図7】カッターヘッドが障害物と衝突した状態を示す斜視図である。
図8】(a)~(d)は、カッターヘッドが障害物に衝突した場合における第1~第4振動計の計測結果である振動波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係るカッターの異常判定システム5(図4参照)が組み込まれたトンネル掘削機1を示す。トンネル掘削機1は、地山を掘削するカッターヘッド11と、カッターヘッド11を回転可能に支持する掘削機本体14を含む。
【0012】
本実施形態では、トンネル掘削機1の断面形状が円形状である。ただし、トンネル掘削機1の断面形状は、矩形状などのその他の形状であってもよい。
【0013】
掘削機本体14は、筒状の胴体12と、胴体12の前側開口を閉塞するバルクヘッド13を含む。バルクヘッド13はカッターヘッド11と対向しており、バルクヘッド13とカッターヘッド11との間にはカッターチャンバーが形成されている。カッターヘッド11の中央部とバルクヘッド13の中央部とは、図略のロータリージョイントにより接続されている。
【0014】
なお、図示は省略するが、バルクヘッド13を貫通するように環状のカッタードラムが設けられ、このカッタードラムとカッターヘッド11とが複数の支柱により連結されることもある。
【0015】
図示は省略するが、カッターヘッド11には、複数のカッターが設けられている。カッターは、カッタービットであってもよいし、ローラーカッターであってもよい。あるいは、カッターは、カッタービットとローラーカッターの双方を含んでもよい。
【0016】
カッターヘッド11は、掘削機本体14内に設けられた図略の旋回モータにより回転される。例えば、カッターヘッド11の回転速度は、0.5~10rpmである。
【0017】
異常判定システム5は、カッターヘッド11に設けられた複数のカッターの異常を判定するものである。図4に示すように、異常判定システム5は、判定装置2と、この判定装置2と電気的に接続された回転角検出器4および複数の振動計3を含む。
【0018】
図1に示すように、振動計3は、カッターヘッド11の回転軸を中心とする周方向に分布するようにバルクヘッド13に設けられている。各振動計3は、バルクヘッド13の振動を計測する。
【0019】
本実施形態では、4つの振動計3(第1~第4振動計31~34)が90度間隔で配置されている。ただし、振動計3の数は、少なくとも4つである限り、特に限定されるものではない。
【0020】
回転角検出器4は、カッターヘッド11の回転角θ(回転位置ともいう)を検出する。回転角θは、カッターヘッド11の特定位置が基準位置から何度回転したかを示すものである(0~360度)。例えば、回転角検出器4は、上述した図略のロータリージョイントに設けられる。
【0021】
判定装置2は、例えば、ROMやRAMなどのメモリと、HDDやSSDなどのストレージと、CPUを有するコンピュータであり、ROMまたはストレージに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0022】
判定装置2は、第1~第4振動計31~34のそれぞれの計測結果である振動波形に所定値Vよりも大きなピーク値が有るか否かを判定する。所定値Vは、カッターの異常の有無を区別するための指標であり、カッターに異常がない場合の振動値に基づいて決定可能である。
【0023】
例えば、図5(a)~(d)に、カッターに異常が無い場合における第1~第4振動計31~34の計測結果である振動波形を示す。なお、図5(a)~(d)に示す振動波形は、双方の片振幅を絶対値で示すものである(後述する図6(a)~(d)および図8(a)~(d)も同様)。これらの振動波形は、例えば、トンネル掘削機1が特定区間を掘削する場合のものである。所定値Vは、カッターに異常が無い場合の振動波形の最大値よりも僅かに大きな値に設定される。
【0024】
判定装置2は、いずれかの振動波形に所定値Vよりも大きなピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計3が、第1~第4振動計31~34の間で、回転角検出器4で検出される回転角θと連動して変化するか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定的である場合、判定装置2は、複数のカッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定する。
【0025】
例えば、図6(a)~(d)に、カッターに異常が有る場合における第1~第4振動計31~34の計測結果である振動波形を示す。カッターに摩耗などの異常が有る場合は、カッターヘッド11が地山を掘削する際にそのカッターが存する位置でのカッターヘッド11の振動が大きくなり、その大きな振動がバルクヘッド13へ伝わる。さらに、そのカッターはカッターヘッド11と共に回転するので、図6(a)~(d)に示すように、バルクヘッド13における大きな振動の発生位置もカッターヘッド11の回転と連動して移動する。
【0026】
本実施形態では、第1~第4振動計31~34が90度間隔で配置されているので、第1振動計31がピーク値を計測した後にカッターヘッド11が90度回転すると、第1振動計31で計測される振動は小さくなる代わりに、第2振動計32でピーク値が計測される。その後も、カッターヘッド11が90度回転する度に、ピーク値を計測する振動計3が、第2振動計32から第3振動計33へ、さらに第3振動計33から第4振動計34へと変化する。すなわち、各振動計3では、カッターヘッド11が一回転する度にピーク値が計測される。
【0027】
このように、ピーク値を計測する振動計3が、第1~第4振動計31~34の間でカッターヘッド11の回転角θに連動して変化すれば、カッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定することができる。これにより、カッターを適時に交換することができる。しかも、カッターヘッド11の回転軸を中心とする周方向において、その異常と判定したカッターの位置も特定することができる。
【0028】
ところで、図7に示すように地山中に障害物6があり、カッターヘッド11が障害物6と接触した場合には、第1~第4振動計31~34のうちで障害物6に近い位置の振動計3でピーク値が頻繁に計測されるようになる。例えば、図8(a)~(d)に、カッターヘッド11が第1振動計31の近傍で障害物6に衝突した場合における第1~第4振動計の計測結果である振動波形を示す。
【0029】
そこで、判定装置2は、いずれかの振動波形に所定値Vよりも大きなピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計3が、カッターヘッド11が少なくとも一回転する間、第1~第4振動計31~34のうちの1つに集中するか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定的である場合、判定装置2は、カッターヘッド11が障害物6と接触したと判定する。
【0030】
ピーク値を計測する振動計3が、カッターヘッド11が少なくとも一回転する間、第1~第4振動計31~34のうちの1つに集中すれば、大きな振動の発生位置が固定位置であると推定されるため、カッターヘッド11が障害物6と接触したと判定することができる。これにより、トンネル掘削機1の重大な故障を防止するために掘削速度を調整するなどの対策を行うことが可能となる。
【0031】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0032】
例えば、図3に示すように、振動計3は、カッターヘッド11の回転軸を中心とする周方向だけでなく径方向にも分布するようにバルクヘッド13に設けられてもよい。この構成であれば、異常と判定したカッターの位置を、カッターヘッド11の回転軸を中心とする径方向においても特定することができる。
【0033】
(まとめ)
本発明のカッターの異常判定システムは、トンネル掘削機のカッターヘッドに設けられた複数のカッターの異常を判定するシステムであって、前記カッターヘッドの回転軸を中心とする周方向に分布するように前記カッターヘッドと対向するバルクヘッドに設けられた、前記バルクヘッドの振動を計測する少なくとも4つの振動計と、前記カッターヘッドの回転角を検出する回転角検出器と、前記少なくとも4つの振動計のそれぞれの計測結果である振動波形に所定値よりも大きなピーク値が有るか否かを判定し、前記ピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計が、前記少なくとも4つの振動計の間で、前記回転角検出器で検出される回転角と連動して変化する場合、前記複数のカッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定する判定装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0034】
カッターに摩耗などの異常が有る場合は、カッターヘッドが地山を掘削する際にそのカッターが存する位置でのカッターヘッドの振動が大きくなり、その大きな振動がバルクヘッドへ伝わる。さらに、そのカッターはカッターヘッドと共に回転するので、バルクヘッドにおける大きな振動の発生位置もカッターヘッドの回転と連動して移動する。従って、上記の構成のように、ピーク値を計測する振動計が、少なくとも4つの振動計の間でカッターヘッドの回転角に連動して変化すれば、カッターのうちの少なくとも1つに異常が発生したと判定することができる。しかも、カッターヘッドの回転軸を中心とする周方向において、その異常と判定したカッターの位置も特定することができる。
【0035】
前記少なくとも4つの振動計は、前記カッターヘッドの回転軸を中心とする径方向にも分布するように前記バルクヘッドに設けられてもよい。この構成によれば、異常と判定したカッターの位置を、カッターヘッドの回転軸を中心とする径方向においても特定することができる。
【0036】
前記判定装置は、前記ピーク値が有るとき、そのピーク値を計測する振動計が、前記カッターヘッドが少なくとも一回転する間、前記少なくとも4つの振動計のうちの1つに集中する場合、前記カッターヘッドが障害物と接触したと判定してもよい。この構成によれば、大きな振動の発生位置が固定位置であると推定されるため、カッターヘッドが障害物と接触したと判定することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 トンネル掘削機
11 カッターヘッド
13 バルクヘッド
2 判定装置
3 振動計
4 回転角検出器
5 異常判定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8