IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社奥村組の特許一覧

<>
  • 特許-構造物の補修・補強箇所の管理方法 図1
  • 特許-構造物の補修・補強箇所の管理方法 図2
  • 特許-構造物の補修・補強箇所の管理方法 図3
  • 特許-構造物の補修・補強箇所の管理方法 図4
  • 特許-構造物の補修・補強箇所の管理方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】構造物の補修・補強箇所の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20231114BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20231114BHJP
   E04G 23/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/20
E04G23/00 ESW
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020053448
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152819
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】松澤 好洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵美
(72)【発明者】
【氏名】劉 ルイ嵐
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084130(JP,A)
【文献】特開2010-196444(JP,A)
【文献】特開2020-002587(JP,A)
【文献】特開2016-037793(JP,A)
【文献】特開2016-065443(JP,A)
【文献】特開2003-276811(JP,A)
【文献】特開2016-062518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E04G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の補修・補強工事に用いる補修材料の履歴から、構造物の補修・補強箇所の品質を管理するための、トレーサビリティシステムによる構造物の補修・補強箇所の管理方法であって、
前記トレーサビリティシステムは、データベースサーバと、補修材料のパッケージ毎に取り付けられる、各々のパッケージを識別可能な情報を含む識別情報ラベルと、補修・補強工事現場における補修材料保管領域に配設される、前記識別情報ラベルの情報を読取り可能な読取り手段を備える保管領域情報端末と、補修・補強工事現場における補修・補強工事の施工領域に配設される、前記識別情報ラベルの情報を読取り可能な読取り手段を備える施工領域情報端末とを含んで構成されており、
前記データベースサーバは、前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた、補修・補強箇所を特定する欄を含む帳票を記憶する帳票記憶部を備えており、
前記データベースサーバは、前記補修材料保管領域において、補修材料のパッケージ毎に取り付けられた前記識別情報ラベルの情報が前記保管領域情報端末の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた帳票の搬入・保管時記入欄に、各々のパッケージに関する搬入時及び保管時における管理項目のデータを、管理者によって前記保管領域情報端末から入力可能とすると共に、前記施工領域において、補修材料のパッケージ毎に取り付けられた前記識別情報ラベルの情報が前記施工領域情報端末の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた帳票の施工時記入欄に、各々のパッケージに関する施工時における管理項目のデータを、管理者によって前記施工領域情報端末から入力可能とし、
且つ前記データベースサーバは、管理者が情報端末から補修・補強箇所を指定する情報を前記トレーサビリティシステムに入力した際に、帳票に記入された補修・補強箇所を特定するデータから、当該補修・補強箇所に使用した補修材料のパッケージを抽出し、抽出したパッケージに関する帳票を管理者が閲覧可能とすることで、指定した補修・補強箇所において用いた補修材料の履歴から、各々の補修・補強箇所の品質を管理できるようにする構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項2】
一つの補修材料のパッケージが、複数の前記施工領域において使用される場合に、当該一つのパッケージに関する前記帳票には、複数の前記施工時記入欄が設定される請求項1記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項3】
前記帳票の前記施工時記入欄には、作業の開始時刻や終了時刻の記入項目が設けられており、これらの記入項目の記入欄には、前記施工領域において時刻入力用識別情報ラベルを前記施工領域情報端末の読取り手段によって読み取ることで、作業の開始時刻や終了時刻のデータが自動的に入力されるようになっている請求項1又は2記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項4】
前記補修材料保管領域に同時に搬入された、同種類の複数の補修材料のパッケージに取り付けられる識別情報ラベルは、連続番号の情報を含んでおり、作業員が数量を指定して、識別情報ラベルの情報を前記保管領域情報端末の読取り手段によって読み取ることで、後続する指定された数量の連続番号の情報を含む識別情報ラベルと紐付けされた各々の帳票の搬入・保管時記入欄にも、各々のパッケージに関する搬入時及び保管時における管理項目のデータを、同時に入力可能とする請求項1~3のいずれか1項記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項5】
前記識別情報ラベルが、二次元コードによる情報を含むラベルである請求項1~4のいずれか1項記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項6】
補修材料のパッケージが、補修用の材料を収容した袋体、缶体、ボトル体、又は補修用のシート材料を巻回したロール体である請求項1~5のいずれか1項記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項7】
補修・補強工事が行なわれる構造物が、コンクリート構造物であり、前記補修材料が、セメント系硬化材料を含む補修材料である請求項1~6のいずれか1項記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【請求項8】
補修・補強工事が行なわれる構造物が、鋼構造物であり、前記補修材料が、塗料を含む補修材料である請求項1~6のいずれか1項記載の構造物の補修・補強箇所の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の補修・補強箇所の管理方法に関し、特に、構造物の補修・補強工事に用いる補修材料の履歴から、構造物の補修・補強箇所の品質を管理するための、トレーサビリティシステムによる構造物の補修・補強箇所の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高度経済成長時代に築造されたインフラ構造物の多くが耐用年数50年を迎えるなか、点検、調査・診断、補修・補強の適切な維持管理サイクルの実施によって、構造物をリニューアルすることで、各種の構造物の長寿命化を図ることが可能になる。また特に、補修・補強工事を実施する際に用いる補修材料の履歴を記録して、把握しておくことは、補修・補強工事の品質や、補修・補強工事を行った後の各種の構造物の耐久性の証明等に役立つだけでなく、その後の構造物の維持管理を行うためデータとして有効に用いることが可能なことから、詳細かつ適切な情報の集約と記録の保管が求められると共に、これらの情報を、必要な時にいつでも容易に活用できるようにする体制が求められる。
【0003】
このような各種の構造物をリニューアルするための補修・補強工事に用いる補修材料は、好ましくは袋体、缶体、ボトル体、ロール体等として、梱包されてパッケージ化された状態で、補修・補強工事の工事現場に多種・多量に搬入されるようになっており、搬入された補修材料は、構造物の補修・補強箇所の種別や部位に応じて、1種又は2種以上の補修材料が適宜選択され、混練りされたり組み合わされたりすることで、例えば多数の補修・補強箇所毎に、各々、必要な所定の数量が使用されることになる。このため、これらの多数の補修・補強箇所毎に使用される補修材料を各々管理するための情報は、データが膨大に且つ複雑になることで、情報集約のための負担が大きくなると共に、各々の補修・補強箇所における施工時の環境や条件等を考慮して、補修材料の履歴から構造物の補修・補強箇所の品質を適切に管理できるようにすることは困難である。
【0004】
一方、建設材料などの運搬物の流通過程を管理するためのトレーサビリティシステム(例えば、特許文献1参照)や、製品メーカが、製品の出荷後に製品に不具合や事故が発生した場合に備えて、製品の位置情報を管理するためのトレーサビリティサポートシステム(例えば、特許文献2参照)が開発されている。特許文献1のトレーサビリティシステムでは、建設材料等の運搬物に直接ICタグ等を付するのではなく、運搬物の受け渡しをする設備間で運搬物に関する管理情報の受け渡しを行なうことで、運搬物の流通履歴を管理するようになっている。特許文献2のトレーサビリティサポートシステムでは、製品の納品後に、製品の所有者が携帯端末によって製品に貼付されたバーコードを読み込んで、携帯端末から所有者情報を、携帯端末の位置情報と共にトレーサビリティサポート装置に送信することで、製品毎に製品の保証期間、所有者情報、位置情報を管理するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5324357号公報
【文献】特開2018-63473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来のトレーサビリティシステムは、補修・補強工事の工事現場で多種・多量に搬入された補修材料を用いて補修・補強された、構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を、適切に管理することは困難であることから、このような構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を適切に管理できるようにすると共に、補修・補強された構造物をさらに補修・補強するための情報を、必要な時にいつでも容易に取り出して活用できるようにする技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、各々の補修・補強箇所で用いる補修材料の履歴を記録し、把握しておくことで、構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を、適切に管理できるようにすると共に、補修・補強される構造物をさらに補修・補強するための情報を、必要な時にいつでも容易に取り出して活用することを可能にする、トレーサビリティシステムによる構造物の補修・補強箇所の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、構造物の補修・補強工事に用いる補修材料の履歴から、構造物の補修・補強箇所の品質を管理するための、トレーサビリティシステムによる構造物の補修・補強箇所の管理方法であって、前記トレーサビリティシステムは、データベースサーバと、補修材料のパッケージ毎に取り付けられる、各々のパッケージを識別可能な情報を含む識別情報ラベルと、補修・補強工事現場における補修材料保管領域に配設される、前記識別情報ラベルの情報を読取り可能な読取り手段を備える保管領域情報端末と、補修・補強工事現場における補修・補強工事の施工領域に配設される、前記識別情報ラベルの情報を読取り可能な読取り手段を備える施工領域情報端末とを含んで構成されており、前記データベースサーバは、前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた、補修・補強箇所を特定する欄を含む帳票を記憶する帳票記憶部を備えており、前記データベースサーバは、前記補修材料保管領域において、補修材料のパッケージ毎に取り付けられた前記識別情報ラベルの情報が前記保管領域情報端末の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた帳票の搬入・保管時記入欄に、各々のパッケージに関する搬入時及び保管時における管理項目のデータを、管理者によって前記保管領域情報端末から入力可能とすると共に、前記施工領域において、補修材料のパッケージ毎に付された前記識別情報ラベルの情報が前記施工領域情報端末の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた前記識別情報ラベルの情報と紐付けされた帳票の施工時記入欄に、各々のパッケージに関する施工時における管理項目のデータを、管理者によって前記施工領域情報端末から入力可能とし、且つ前記データベースサーバは、管理者が情報端末から補修・補強箇所を指定する情報を前記トレーサビリティシステムに入力した際に、帳票に記入された補修・補強箇所を特定するデータから、当該補修・補強箇所に使用した補修材料のパッケージを抽出し、抽出したパッケージに関する帳票を管理者が閲覧可能とすることで、指定した補修・補強箇所において用いた補修材料の履歴から、各々の補修・補強箇所の品質を管理できるようにする構造物の補修・補強箇所の管理方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、一つの補修材料のパッケージが、複数の前記施工領域において使用される場合に、当該一つのパッケージに関する前記帳票には、複数の前記施工時記入欄が設定されるようになっていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、前記帳票の前記施工時記入欄には、作業の開始時刻や終了時刻の記入項目が設けられており、これらの記入項目の記入欄には、前記施工領域において時刻入力用識別情報ラベルを前記施工領域情報端末の読取り手段によって読み取ることで、作業の開始時刻や終了時刻のデータが自動的に入力されるようになっていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、前記補修材料保管領域に同時に搬入された、同種類の複数の補修材料のパッケージに取り付けられる識別情報ラベルが、連続番号の情報を含んでおり、作業員が数量を指定して、識別情報ラベルの情報を前記保管領域情報端末の読取り手段によって読み取ることで、後続する指定された数量の連続番号の情報を含む識別情報ラベルと紐付けされた各々の帳票の搬入・保管時記入欄にも、各々のパッケージに関する搬入時及び保管時における管理項目のデータを、同時に入力可能とすることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、二次元コードによる情報を含むラベルであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、補修材料のパッケージが、補修用の材料を収容した袋体、缶体、ボトル体、又は補修用のシート材料を巻回したロール体であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、補修・補強工事が行なわれる構造物が、コンクリート構造物であり、前記補修材料が、セメント系硬化材料を含む補修材料であることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、補修・補強工事が行なわれる構造物が、鋼構造物であり、前記補修材料が、塗料を含む補修材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構造物の補修・補強箇所の管理方法によれば、各々の補修・補強箇所で用いる補修材料の履歴を記録し、把握しておくことで、構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を、適切に管理することができると共に、補修・補強される構造物をさらに補修・補強するための情報を、必要な時にいつでも容易に取り出して活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る構造物の補修・補強箇所の管理方法が実施されるトレーサビリティシステムのシステム構成を説明する模式図である。
図2図2(a)~(d)は、データベースサーバの帳票記憶部に記憶される帳票を例示する説明図である。
図3図3は、補修材料保管領域における作業手順を例示するフローチャートである。
図4図4は、施工領域における作業手順を例示するフローチャートである。
図5図5は、補修・補強箇所を指定する情報を入力することで抽出された、当該補修・補強箇所において用いた複数の補修材料の履歴を説明する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る構造物の補修・補強箇所の管理方法は、例えば高度経済成長時代に築造されたインフラ構造物として、例えばコンクリート構造物である、ボックスカルバート形の道路トンネルの覆工構造物や地下鉄トンネルの覆工構造物、或いは高架橋構造物等に生じたひび割れ等による損傷箇所や、地下水や塩害等による劣化箇所などを、補修・補強する補修・補強箇所の品質を、図1に示す構成のトレーサビリティシステム10を使用して、当該補修・補強箇所に用いる各種の補修材料の履歴を記録し、把握しておくことによって、適切に管理できるようにするための方法として採用されたものである。
【0019】
すなわち、例えばボックスカルバート型の道路トンネルの覆工構造物や地下鉄トンネルの覆工構造物、或いは高架橋構造物等に生じた損傷箇所や劣化箇所を、補修したり補強したりする補修・補強工事の工事現場(補修・補強工事現場)は、施工延長が長くなり、また補修や補強が必要とされる補修・補強箇所が多数生じていると共に、補修・補強箇所の状況も、例えばセメント系や樹脂系の補修材料を用いて、補修・補強箇所に補修材料を充填して補修・補強すべきものであったり、補修・補強箇所に補修材料を吹き付けて補修・補強すべきものであったり、補修・補強箇所に補強用のシートを巻き付けた後にセメント系や樹脂系の硬化材料で被覆して補修・補強すべきものであったりするなど、様々な形態が考えられることから、多種・多量の補修材料を、好ましくは袋体、缶体、ボトル体、ロール体等として梱包して、パッケージ化した状態で工事現場に搬入して保管しておく必要がある。
【0020】
また、補修・補強工事現場では、搬入されて保管された多種・多量の補修材料は、構造物の多数の補修・補強箇所の種別や部位に応じて、1種又は2種以上の補修材料が適宜選択され、混練りされたり組み合わされたりすることで、例えば多数の補修・補強箇所毎に、各々、必要とされる限られた所定の数量の補修材料のみが使用されることになる。このため、これらの多数の補修・補強箇所毎に使用される補修材料を各々管理するための情報は、例えば補修材料が所定の数量に分けして使用されることから、データ量が膨大に且つ複雑になることで、情報集約のための負担が大きくなる。
【0021】
本実施形態の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、このような多種・多量の補修材料を用いて、構造物の多数の補修・補強箇所を各々補修・補強する工事に特有の技術的課題を解決せんとする意図の下、各々の補修・補強箇所に用いる各種の補修材料の履歴を記録し、把握しておくことが可能な図1に示す構成のトレーサビリティシステム10を用いることで、多数の補修・補強箇所毎に所定の限られた数量に分けて使用される補修材料のデータを、適切に効率良く管理できるようにして、情報集約のための負担を軽減すると共に、構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を適切に管理できるようにし、且つ補修・補強される構造物をさらに補修・補強するための情報を、必要な時にいつでも容易に取り出して活用できるようにするものである。
【0022】
そして、本実施形態の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、例えばボックスカルバート型の道路トンネルの覆工構造物や地下鉄トンネルの覆工構造物、或いは高架橋構造物等(図示せず)の、好ましくはコンクリート製の構造物の補修・補強工事に用いる補修材料の履歴から、これらの構造物の補修・補強箇所の品質を管理するための、トレーサビリティシステム10による管理方法であって、トレーサビリティシステム10は、図1に示すように、データベースサーバ11と、補修材料のパッケージ12a、12b、12c毎に取り付けられる、各々のパッケージ12a、12b、12cを識別可能な情報を含む識別情報ラベル13と、補修・補強工事現場における補修材料保管領域に配設される、識別情報ラベル13の情報を読取り可能な読取り手段を備える保管領域情報端末14と、補修・補強工事現場における補修・補強工事の施工領域に配設される、識別情報ラベル13の情報を読取り可能な読取り手段を備える施工領域情報端末15とを含んで構成されている。データベースサーバ11は、識別情報ラベル13の情報と紐付けされた、補修・補強箇所を特定する欄16aを含む帳票16(図2(a)~(d)参照)を記憶する帳票記憶部11a(図1参照)を備えている。
【0023】
データベースサーバ11は、補修材料保管領域において、補修材料のパッケージ12a、12b、12c毎に取り付けられた識別情報ラベル13の情報が保管領域情報端末14の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた識別情報ラベル13の情報と紐付けされた帳票16の搬入・保管時記入欄16bに、各々のパッケージ12a、12b、12cに関する搬入時及び保管時における管理項目のデータを、管理者によって保管領域情報端末14から入力可能とすると共に、一又は複数の補修・補強箇所を含む各々の施工領域において、補修材料のパッケージ12a、12b、12c毎に付された識別情報ラベル13の情報が施工領域情報端末15の読取り手段によって読み取られることで、読み取られた識別情報ラベル13の情報と紐付けされた帳票16の施工時記入欄16cに、各々のパッケージ12a、12b、12cに関する施工時における管理項目のデータを、管理者によって施工領域情報端末15から入力可能としている。且つデータベースサーバ11は、管理者が例えば現場事務所や支社に設置された情報端末17(図1参照)から補修・補強箇所を指定する情報をトレーサビリティシステム10に入力した際に、帳票16の補修・補強箇所を特定する欄16aに記入された補修・補強箇所を特定するデータから、当該補修・補強箇所に使用した補修材料のパッケージ12a、12b、12cを抽出し、抽出したパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16(図5参照)を管理者が閲覧可能とすることで、指定した補修・補強箇所において用いた補修材料の履歴から、各々の補修・補強箇所の品質を管理できるようにする。
【0024】
本実施形態では、トレーサビリティシステム10を構成するデータベースサーバ11は、コンピュータからなり、データベースサーバ11であるコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、HDD(Hard Disk Drive)、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。CPUは、ROMに組み込まれた各種のプログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、各種の処理を制御できるようになっている。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、各種の情報をディスプレイに表示させたり、プリンタから出力させたりすることができるようになっている。
【0025】
また、本実実施形態では、データベースサーバ11であるコンピュータには、帳票16を作成する公知の帳票作成プログラム(ソフトワェア)として、例えばペーパレス「現場帳票」記録・報告・閲覧システムとして知られる公知の電子帳票ソリューション用のアプリケーションソフトウェアである、好ましくは「i-Reporter」(株式会社シムトップス)が組み込まれており、これによってデータベースサーバ11は、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末と接続可能になっていると共に、オフライン作業によって、帳票16を作成できるようになっている。またこれによって、集計作業の自動化を図ることができるようになっていると共に、帳票データをCSV形式、BIツール形式、エクセル形式、PDF形式等として、出力したり編集したりできるようになっており、さらに、例えば本社内や支社内のシステムのコンピュータと連携できるようになっている。またこれによって、データベースサーバ11は、識別情報ラベル13の情報と紐付けされた、補修・補強箇所を特定する欄16aを含む帳票16(図2(a)~(d)参照)を作成できるようになっている。作成された複数の帳票16は、帳票記憶部11aに保存されるようになっており、また帳票記憶部11aに記憶された帳票16は、適宜取り出され、例えばRAMにおいて、搬入・保管時記入欄16bや施工時記入欄16cに追加の情報が記入されて更新されるようになっており、また追加の情報が記入された更新された帳票16は、帳票記憶部11aに保存し直すことができるようなっている。
【0026】
トレーサビリティシステム10を構成する識別情報ラベル13は、個々の補修材料のパッケージ12a、12b、12cを識別する管理番号等の情報を取得することが可能な、公知の識別ラベルとして、例えばバーコードによる情報を含むラベルや、二次元コードによる情報を含むラベルや、RFIDタグによる情報を含むラベルを用いることができる。情報(保持)量の点では、二次元コードによる情報を含むラベルや、RFIDタグによる情報を含むラベルを用いることが好ましく、汎用性や使用性、及び価格の点から、二次元コードによる情報を含むラベルを用いることが特に好ましい。
【0027】
トレーサビリティシステム10を構成する、補修材料保管領域に配設される保管領域情報端末14や施工領域に配設される施工領域情報端末15は、識別情報ラベル13の情報を読取り可能な読取り手段としての機能を備える端末として、例えば、スマートフォン、タブレット、ハンディターミナル等の携帯情報端末を用いることができる。これらの携帯情報端末15は、補修材料保管領域や施工領域における実際の使用時の作業環境によって、例えば画面に複数のバーコードや二次元コードが映り込んでしまうことで読み込みたいバーコードや二次元コードが読み難くなるといった課題がある場合には、例えば近距離無線通信機器と接続するコードリーダを併用することで、改善策とすることができる。
【0028】
上述の構成を備えるトレーサビリティシステム10によって、本実施形態の構造物の補修・補強箇所の管理方法を実施するには、図3に示すように、例えば補修・補強工事現場の現場事務所に配設された、当該トレーサビリティシステム10と接続するパーソナルコンピュータ等による情報端末17(図1参照)から、データベースサーバ11にログインした後に、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる事前登録画面において、入力データの選択項目、二次元コード番号等を事前登録(マスタへ登録)する。しかる後に、システム全体の管理を担うマスタ機能を備える当該データベースサーバ11に、事前登録の完了処理を行って、データ送信することで、識別情報ラベル13として、好ましくは二次元コードによる情報を含むラベルを作成する準備をする。事前登録されたデータは、データベースサーバ11に送られて、多数の二次元コードと各々紐付けされた多数の帳票16の搬入・保管時記入欄16bや施工時記入欄16cにおける、該当箇所に各々記入される。データベースサーバ11の帳票記憶部11aに記憶された多数の帳票16の、例えば搬入・保管時記入欄16bの二次元コード番号と各々紐付けされた、二次元コードによる情報を含むラベルによる多数の識別情報ラベル13は、例えば現場事務所において作成されてプリントアウトされ、好ましくは補修材料の各々のパッケージ12a、12b、12cに貼り付け可能な状態で、補修材料保管領域に持ち込むことができる。
【0029】
補修材料保管領域では、例えば補修材料の各々の搬入日に、好ましくは保管領域情報端末14からデータベースサーバ11にログインして、搬入情報画面において、当該搬入日における搬入データとして、例えば工事名、搬入日、搬入時刻、搬入場所、管理番号等を登録する。これらの各々の搬入日における搬入データの登録は、例えばデータベースサーバ11の帳票記憶部11aに記憶された複数の帳票16の二次元コード番号を指定することにより一括して行って、各々の帳票16に記入することができる。搬入データを登録したら、データベースサーバ11に登録の完了処理を行って、データ送信する。登録された搬入データは、データベースサーバ11に送られて、多数の二次元コードと各々紐付けされた多数の帳票16の搬入・保管時記入欄16bにおける、該当箇所に各々記入される。
【0030】
また、補修材料保管領域では、搬入日に搬入された補修材料の複数のパッケージ12a、12b、12cの各々に、例えば現場事務所から持ち込まれた、好ましくは二次元コードによる情報を含む識別情報ラベル13を、例えば作業員による手作業によって順次貼り付けることにより取り付ける。二次元コードによる情報を含む識別情報ラベル13は、破損しているか否かを確認し、破損している場合には識別情報ラベル13を再発行して、補修材料のパッケージ12a、12b、12cに取り付ける。
【0031】
補修材料保管領域において、補修材料の複数のパッケージ12a、12b、12cの各々に、識別情報ラベル13を取り付けたら、保管領域情報端末14を起動すると共にデータベースサーバ11にログインして、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる搬入実績画面において、好ましくは補修材料の製造工場から送られた資料に基づいて、識別情報ラベル13が各々取り付けられた補修材料のパッケージ12a、12b、12c毎に、搬入実績データとして、例えば材料名、材料種別名、出荷日、Lot.No.、製造日、使用期限日等を、例えば管理者が入力することで登録する。
【0032】
これらの搬入実績データの入力は、各々のパッケージ12a、12b、12cに取り付けられた識別情報ラベル13の二次元コードを、保管領域情報端末14の読取り手段によって個別に読み込んで、各々のパッケージ12a、12b、12c毎に表示された搬入実績画面に対して、個別に行うことができる。入力されて登録された搬入実績データは、データベースサーバ11に登録の完了処理を行って、データ送信することにより、データベースサーバ11に送られて、各々の二次元コードと紐付けされた帳票16の各々の搬入・保管時記入欄16bにおける、該当箇所に記入されることになる。
【0033】
また、搬入実績データの入力は、好ましくは、補修材料保管領域に同時に搬入された、同種類の複数の補修材料のパッケージ12aに取り付けられる識別情報ラベル13が、連続番号の情報を含んでいるので、作業員が、搬入実績データを登録すべきパッケージ12aの数量を指定して、パッケージ12aに取り付けられた先頭の番号を含む識別情報ラベル13の二次元コードの情報を保管領域情報端末14の読取り手段によって読み取って、搬入実績画面に対して行うことで、後続する指定された数量の連続番号の情報を含む二次元コードの識別情報ラベル13が取り付けられたパッケージ12aに関しても、搬入実績データを、一括して同時に入力することを可能にして、同時に登録することができる。入力されて同時に登録された搬入実績データは、データベースサーバ11に登録の完了処理を行って、データ送信することにより、データベースサーバ11に送られて、指定された数量の連続番号の情報を含む各々の二次元コードと各々紐付けされた、帳票16の搬入・保管時記入欄16bにおける、各々の該当箇所に同時に入力されて記入されることになる。
【0034】
登録された搬入データや搬入実績データが、データベースサーバ11に送られて、これらの搬入データや搬入実績データが記入された、各々の補修材料のパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16は、例えば補修・補強工事現場の現場事務所に配設された、当該トレーサビリティシステム10と接続するパーソナルコンピュータ等による情報端末17(図1参照)から、これらの登録情報を確認することができる。帳票16に記入された登録情報に不備がある場合には、例えばデータベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる修正画面において、搬入日を追記したりLot.No.を追記したりして、登録情報を適宜修正することができる。
【0035】
そして、本実施形態では、補修材料保管領域に搬入されて保管された多種・多量の補修材料のパッケージ12a、12b、12cは、施工延長の長い補修・補強工事現場における、補修・補強が必要とされる一又は複数の補修・補強箇所を含む補修・補強工事の複数の施工領域に、必要な種類及び数量のパッケージ12a、12b、12cが各々運搬され、各々の施工箇所における補修・補強箇所の状況に応じて、例えば混練りされる補修材料の配合割合を調整したり、補修材料の組み合わせを換えたりしながら、補修・補強箇所毎に、各々、必要とされる限られた所定の数量の補修材料が使用されることになる。
【0036】
本実施形態では、コンクリート製の構造物(コンクリート構造物)である、例えばボックスカルバート形の道路トンネルの覆工構造物や地下鉄トンネルの覆工構造物等の補修・補強工事として、好ましくはセメント系硬化材料を含む補修材料を他の材料と共に混練りすると共に、混練後の補修材料を施工領域の各々の補修・補強箇所に対して充填したり吹き付けたりして、補修・補強するものとなっている。本実施形態の構造物の補修・補強箇所の管理方法は、補修材料保管領域における図3に示す作業手順の後に、補修・補強工事の各々の施工領域において、図4に示す以下の作業手順にしたがって、引き続き実施されることになる。
【0037】
すなわち、上述のようにして、例えば補修・補強工事現場の現場事務所に配設された情報端末17において、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる事前登録画面から、入力データの選択項目、二次元コード番号等の事前登録(マスタへ登録)が行われていること、及び各々の補修材料のパッケージ12a、12b、12cの帳票16における搬入・保管時記入欄16bに、搬入データや搬入実績データが記入されていることを前提として、補修・補強工事の施工領域においては、補修材料保管領域から当該施工領域における例えば練り場まで運搬されてきた、所定数の補修材料のパッケージ12a、12b、12cについて、例えば現場事務所でプリントアウトされた各々のパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16を使用して、使用期限内のものであるか否かを確認する。補修材料のパッケージ12a、12b、12cが使用期限を超えるものである場合には、当該使用期限を超えたパッケージ12a、12b、12cは廃棄される。また補修材料のパッケージ12a、12b、12cが、使用期限内のものである場合でも、作業員が補修材料の外観や性状を確認して、これらの外観や性状が不適と判断された補修材料は、パッケージ12a、12b、12cごと廃棄される。
【0038】
しかる後に、補修・補強工事の施工領域では、好ましくは施工領域情報端末15からデータベースサーバ11にログインして、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる施工実績画面において、廃棄されなかった使用に適する補修材料のパッケージ12a、12b、12cに関する各々の帳票16に、例えば工事名、施工日、材料、種別、細別、温度、湿度、施工場所の区分等の施工時データを記入する。これらの施工時データの帳票16への記入は、例えばプリントアウトされた帳票16に記載された、補修材料のパッケージ12a、12b、12cの各々の二次元コード番号を指定することにより、補修材料の種類毎に一括して行なうことができる。施工時データが帳票16に記入されたパッケージ12a、12b、12cに収容された補修材料は、これらのパッケージ12a、12b、12cから取り出されて、練り場で攪拌されて混練りされた後に、各々の施工領域における一又は複数の補修・補強箇所まで運搬されて、各々の補修・補強箇所における補修・補強する作業に用いられる。
【0039】
ここで、各々のパッケージ12a、12b、12cから取り出されて攪拌される補修材料のデータは、当該攪拌される補修材料のパッケージ12a、12b、12cに取り付けられた識別情報ラベル13の二次元コードの情報を、施工領域情報端末15の読取り手段で読み取ることによって、入力することが可能になる。すなわち、攪拌される補修材料のデータは、読み取られた識別情報ラベル13の情報と紐付けされた帳票16の施工時記入欄16cに、当該攪拌される補修材料に関する施工時における管理項目として、例えば攪拌開始時刻のデータが、管理者によって、施工領域情報端末15から、帳票16の施工時記入欄16cに設けられた作業の開始時刻の記入項目である攪拌開始時刻の欄に、入力されるようになっている。
【0040】
また、施工領域において、各々の補修材料のパッケージ12a、12b、12cに取り付けられた識別情報ラベル13の二次元コードの情報を読み込む際に、二次元コードの読み取りの可否を判定して、読み取りが不可能な場合には、ダミーの二次元コードを含む識別情報ラベル13を貼り付け直して、読み取り可能とすることができる。
【0041】
さらに、好ましくは二次元コードやバーコード等による時刻入力用識別情報ラベル(図示せず)を、例えば施工領域情報端末15の裏面等に貼り付けておき、施工領域において、時刻入力用識別情報ラベルの二次元コードやバーコード等による情報を、施工領域情報端末15の読取り手段や、これに付属するコードリーダ等によって読み取ることで、記入項目である攪拌開始時刻のデータが、帳票16の施工時記入欄16cの攪拌開始時刻(記入項目)の欄に自動的に入力されるようにすることもできる。
【0042】
これによって、例えば作業員でもある管理者が、補修材料の攪拌のための作業を行っている最中に、施工領域情報端末15の画面をタッチしてデータを入力することが困難な場合でも、好ましくはコードリーダによって時刻入力用識別情報ラベルの情報を読み込むだけの簡単な操作によって、攪拌開始時刻のデータを入力することを可能にして、作業員による入力の手間を低減することが可能になる。
【0043】
また、例えば施工領域情報端末15の画面にタッチパネル部としての機能を付与しておくことで、施工領域において、作業員が画面のタッチパネル部をタッチすることで、記入項目である攪拌開始時刻のデータが、帳票16の施工時記入欄16cの攪拌開始時刻(記入項目)の欄に自動的に入力されるようにすることもできる。
【0044】
本実施形態では、各々の施工領域の練り場で攪拌されて混練りされた、混練り後の補修材料は、練り場から当該施工領域における一又は複数の補修・補強箇所まで、例えば台車によって運搬され、各々の補修・補強箇所において、混練り後の補修材料を充填したり吹き付けたりすることによって、補修・補強工事が施工される。
【0045】
また、本実施形態では、例えば施工領域の練り場で混練りした補修材料が、台車によって各々の補修・補強箇所に運搬される時刻を、当該補修材料の施工開始時刻として、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる施工実績画面において、当該施工開始時刻のデータが、補修材料の各々のパッケージ12a、12b、12cに関する施工時における管理項目として、管理者によって、施工領域情報端末15から帳票16の施工時記入欄16cに設けられた作業の開始時刻の記入項目である施工開始時刻の欄に、入力されるようになっている。
【0046】
施工開始時刻のデータの入力は、攪拌開始時刻のデータと同様に、好ましくは施工領域情報端末15の裏面等に貼り付けられた時刻入力用識別情報ラベルの二次元コードやバーコード等による情報を、施工領域情報端末15の読取り手段や、これに付属するコードリーダ等によって読み取ったり、画面のタッチパネル部をタッチしたりすることで、記入項目である施工開始時刻のデータが、帳票16の施工時記入欄16cの施工開始時刻(記入項目)の欄には自動的に入力されるようにすることもできる。これによって、作業員でもある管理者による入力の手間を低減することが可能になる。
【0047】
さらに、本実施形態では、例えば各々の補修・補強箇所で補修・補強を行った作業員により作業の終了が報告された時刻を、当該補修材料の施工終了時刻として、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる施工実績画面において、当該施工終了時刻のデータが、補修材料の各々のパッケージ12a、12b、12cに関する施工時における管理項目として、管理者によって、施工領域情報端末15から帳票16の施工時記入欄16cに設けられた作業の終了時刻の記入項目である施工終了時刻の欄に、入力されるようになっている。施工終了時刻のデータの入力もまた、好ましくは施工領域情報端末15の裏面等に貼り付けられた時刻入力用識別情報ラベルの二次元コードやバーコード等による情報を、施工領域情報端末15の読取り手段や、これに付属するコードリーダ等によって読み取ったり、画面のタッチパネル部をタッチしたりすることで、容易に行うことができる。
【0048】
各々の施工領域において、例えば1回の攪拌作業によって混練りされた補修材料の量では、当該施工領域における全ての補修・補強箇所を補修できない場合には、引き続いて、当該施工領域に運搬された残りのパッケージ12a、12b、12cを用いて、同様の補修・補強の作業手順を繰り返す。これによって、各々の施工領域において、当該施工領域における全ての補修・補強箇所を補修・補強する作業を行うことができる。
【0049】
当該施工領域において全ての補修・補強箇所を補修・補強する作業が終了したら、データベースサーバ11に登録の完了処理を行って、データ送信する。データベースサーバ11に送信された当該施工領域における施工データは、補修材料のパッケージ12a、12b、12cに取り付けられた各々の二次元コードと各々紐付けされた、帳票16の施工時記入欄16cにおける各々の該当箇所に、同時に入力されて記入されることになる。
【0050】
また、当該施工領域において全ての補修・補強箇所を補修・補強する作業が終了して、データベースサーバ11に当該施工領域における施工データを送信したら、当該施工領域に運搬されてきた補修材料のパッケージ12a、12b、12cの残量の有無を確認する。補修材料のパッケージ12a、12b、12cの残量の有無を確認して、残ったパッケージ12a、12b、12cに全量の補修材料は収容されている場合には、これらのパッケージ12a、12b、12cを次の施工領域に運搬して、使用することができる。残ったパッケージ12a、12b、12cに全量の補修材料は収容されておらず、例えば半分の量や1/4の量が使用されないままの状態となっている場合には、これらの補修材料が全量収容されていないパッケージ12a、12b、12cについても、次の施工領域に運搬して使用することができる。
【0051】
例えば半分の量や1/4の量が使用されないままの状態となっていて、補修材料が全量収容されていないパッケージ12a、12b、12cの場合、一つの補修材料のパッケージ12a、12b、12cが、当該施工領域と以後の施工領域との、複数の施工領域において使用されることから、当該一つのパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16には、図2(d)に示すように、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによって、複数の施工時記入欄16cを設定することができるようになっている。これによって、複数の施工領域において使用されたパッケージ12a、12b、12cに収容された補修材料の履歴を、より適正に管理することが可能になる。
【0052】
各々のパッケージ12a、12b、12cについて補修材料の残量の有無を確認して、残量が無い場合には、パッケージ12a、12b、12cが空か否かを、例えば空のパッケージ12a、12b、12cに取り付けられた識別情報ラベル13の二次元コードの情報を読み込んで検収すると共に、好ましくは空のパッケージ12a、12b、12cに関する報告書を作成可能とした後に、検収された空のパッケージ12a、12b、12cを廃棄して、各々の施工領域における作業を終了する。
【0053】
データベースサーバ11に登録の完了処理を行って、データベースサーバ11に施工データが送信されることで、各々のパッケージ12a、12b、12cに関する施工時記入欄16cに、送信された施工データが記入された帳票16は、例えば補修・補強工事現場の現場事務所に配設された、当該トレーサビリティシステム10と接続するパーソナルコンピュータ等による情報端末17(図1参照)から、これらの施工データの登録情報を確認することができる。施工データの登録情報を確認して、帳票16に記入された登録情報に不備がある場合には、例えばデータベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによる修正画面において、例えば読取不可の二次元コードを変更したり、施工時の温度を変更したりして、登録情報を適宜修正することができる。
【0054】
そして、本実施形態では、データベースサーバ11は、管理者が例えば現場事務所や支社に設置された情報端末17(図1参照)から、補修・補強箇所を指定する情報をトレーサビリティシステム10に入力した際に、データベースサーバ11に組み込まれた帳票作成プログラムによって、帳票16の補修・補強箇所を特定する欄16a(図2参照)に記入された、補修・補強箇所を特定するデータから、当該補修・補強箇所に使用した補修材料のパッケージ12a、12b、12cを抽出し、図5に示すように、抽出したパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16を、情報端末17の画面に表示させることができるようになっている。管理者は、画面に表示された抽出したパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16を閲覧することで、指定した補修・補強箇所において用いた補修材料の履歴から、各々の補修・補強箇所の品質を管理することが可能になる。
【0055】
すなわち、管理者が、例えば現場事務所や支社に設置された情報端末17から、帳票16の施工時記入欄16cにおける補修・補強箇所を特定する欄16aである「施工場所 区分名1~10」の欄に、例えば施工時や施工直後において、「○○○環状線、外回り、左車線、○○○トンネル、北側、天井、1層目」等と入力すると、情報端末17の画面には、特定された補修・補強箇所に用いた好ましくは全ての補修材料のパッケージ12a、12b、12cの帳票16が表示されるので、これらの抽出したパッケージ12a、12b、12cに関する帳票16を閲覧することで、管理者は、これらの補修材料の履歴から、例えば設計量との過不足、補修材料の適切な期限、使用方法等を確認して、適切に管理することが可能になる。
【0056】
また施工後、短期間又は長期間が経過した後においても、管理者が、同様に帳票16の施工時記入欄16cにおける補修・補強箇所を特定する欄16aに、所定の項目を入力することによって、情報端末17の画面に、特定された補修・補強箇所に用いた好ましくは全ての補修材料のパッケージ12a、12b、12cの帳票16を表示させることで、例えば施工後に補修・補強箇所に不備が生じた場合に、その不備があった補修・補強箇所における、使用材料、施工条件、施工時期等のデータを容易に確認して、管理することが可能になる。
【0057】
したがって、本実施形態の構造物の補修・補強箇所の管理方法によれば、各々の補修・補強箇所で用いる補修材料の履歴を記録し、把握しておくことで、構造物の種別や部位に応じた複数の補修・補強箇所の品質を、適切に管理することが可能になると共に、補修・補強される構造物をさらに補修・補強するための情報を、必要な時にいつでも容易に取り出して活用することが可能になる。
【0058】
また、補修・補強工事の各々の施工領域において、例えば複数の添加材を練り混ぜた時点で品質が変化するため厳密な時間管理が必要は場合や、施工領域の環境によって品質管理値が変化する場合でも、補修・補強箇所の品質を適切に管理することが可能になると共に、オフライン作業を可能にする帳票作成プログラム(ソフトワェア)がデータベースサーバに組み込まれていることで、非通信環境下で情報端末にデータをストックしておき、通信環境下でストックしたデータをまとめてデータベースサーバに送信して、帳票を更新することも可能になる。
【0059】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の補修・補強箇所の管理方法によって管理される構造物は、コンクリート構造物である必要は必ずしもなく、鋼製の構造物等の、その他のコンクリート製以外の種々の構造物であっもて良い。補修材料のパッケージは、好ましくはパッケージ化された袋体、缶体、ボトル体、ロール体である必要は必ずしもなく、その他の形態でパッケージ化されたものであっても良い。補修材料は、セメント系硬化材料を含む補修材料である必要は必ずしもなく、樹脂系の材料や、塗料や、鋼製材料等であっても良い。補修・補強工事が行なわれる構造物が、鋼構造物である場合、補修材料は、好ましくは、ジンクリッチ系、エポキシ系、変性エポキシ系、ふっ素系、ポリウレタン系、フタル系、メッキ用エポキシ系、塩化ゴム系等の塗料を含む補修材料であることが好ましい。識別情報ラベルは、二次元コードによる情報を含むラベルである必要は必ずしもなく、各々のパッケージの帳票と紐付け可能な、バーコードやRFIDタグによる情報を含むその他の種々のラベルであっても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 トレーサビリティシステム
11 データベースサーバ
11a 帳票記憶部
12a、12b、12c 補修材料のパッケージ
13 識別情報ラベル
14 保管領域情報端末
15 施工領域情報端末
16 帳票
16a 補修・補強箇所を特定する欄
16b 搬入・保管時記入欄
16c 施工時記入欄
17 情報端末
図1
図2
図3
図4
図5