(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】水路用蓋
(51)【国際特許分類】
E02B 13/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
E02B13/00 301
(21)【出願番号】P 2020065370
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌記
(72)【発明者】
【氏名】木村 栄昭
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-114933(JP,A)
【文献】特開平07-229160(JP,A)
【文献】実開平01-167487(JP,U)
【文献】実公昭48-045204(JP,Y1)
【文献】実開昭56-100587(JP,U)
【文献】特開平08-060736(JP,A)
【文献】実開昭51-002058(JP,U)
【文献】実開昭52-042569(JP,U)
【文献】特開2000-297465(JP,A)
【文献】実開昭61-121212(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00
13/00
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波付き板から構成される水路の側壁上に前記水路を跨いで固定することによって前記水路の開口部を閉塞する水路用蓋
を備えた水路構造において、
前記水路用蓋は、前記波付き板の波高さよりも大きな波高さを有するプランク材からなり、
前記プランク材は、その波方向が前記水路の延設方向に平行に延びるように複数配置され、上流側の前記プランク材が下流側の前記プランク材の上に重なるように重ね合わされていると共に、前記水路内を
作業者が点検可能な点検手段を有することを特徴とする水路
構造。
【請求項2】
請求項1に記載の水路
構造において、
前記点検手段は、前記プランク材の平面に形成された点検窓からなることを特徴とする水路
構造。
【請求項3】
請求項2に記載の水路
構造において、
前記点検窓は、点検蓋材によって閉塞されており、当該点検蓋材が前記点検窓に対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする水路
構造。
【請求項4】
請求項1に記載の水路
構造において、
前記点検手段は、任意の前記プランク材のうち、隣り合う上流側の前記プランク材及び下流側の前記プランク材の上から重なるように重ね合わせ方向が異なっていることを特徴とする水路
構造。
【請求項5】
請求項1に記載の水路
構造において、
前記点検手段は、前記プランク材を幅方向にスライド可能であることを特徴とする水路
構造。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の水路
構造において、
前記プランク材は、前記水路の側壁に取り付けられた腹起し材に取り付けられることを特徴とする水路
構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の開口を閉塞する水路用蓋に関し、特に従来用いられていた切梁材を削減しても十分な強度を有し、設置後の水路内の点検や清掃などを行うことができる水路用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄肉鋼板を波付けしたセクションで構成された灌漑用水路や地滑り地区の集排水路などに使用される水路構造物が知られている。
【0003】
このような水路構造物は、種々の形態が知られており、例えば、特許文献1に記載されたように、波付き鋼板であるコルゲートフリュームを断面略U字状に構成し、該コルゲートフリュームの上縁部に腹起し材を取り付け、当該腹起し材にアングル材を切梁として接合した構造が知られている。このように構成することで、コルゲートフリュームの上方開口部を切梁で補強している。
【0004】
また、コルゲートフリュームの断面は上述したようにU字状に形成されており、上方が開口した構造となっていることから、積雪地域などでコルゲートフリューム内の水の流量を確保したまま使用したい場合には、開口部に蓋をする必要が生じる。
【0005】
このような蓋構造は種々の構造が知られており、例えば、特許文献2に記載されているように、波付き方向と直交する方向に半円筒形状に曲げ加工された複数毎の波形鋼板からなり、波形鋼板は、水路に沿って互いに重ね合わせて接合して水路の側壁上に固定される水路用蓋が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平1-167487号公報
【文献】特開平10-114933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水路用蓋の構造は、水路がコルゲートフリュームで構成される場合には、水路を補強する切梁材を避けるように設置する必要があり、その結果、水路と蓋との間に隙間が生じる可能性があるという問題があった。
【0008】
また、従来の水路用蓋は、複数枚の波形鋼板を水路に沿って互いに重ね合わせて接合して水路の側壁上に固定されているので、容易に取り外すことは難しく、水路内の点検や清掃を行うことができないという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、水路と蓋との間に隙間が生じることなく、容易に水路の点検及び清掃を行うことができる水路用蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水路構造は、波付き板から構成される水路の側壁上に前記水路を跨いで固定することによって前記水路の開口部を閉塞する水路用蓋を備えた水路構造において、前記水路用蓋は、前記波付き板の波高さよりも大きな波高さを有するプランク材からなり、前記プランク材は、その波方向が前記水路の延設方向に平行に延びるように複数配置され、上流側の前記プランク材が下流側の前記プランク材の上に重なるように重ね合わされていると共に、前記水路内を作業者が点検可能な点検手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る水路構造において、前記点検手段は、前記プランク材の平面に形成された点検窓からなると好適である。
【0012】
また、本発明に係る水路構造において、前記点検窓は、点検蓋材によって閉塞されており、当該点検蓋材が前記点検窓に対して着脱自在に取り付けられていると好適である。
【0013】
また、本発明に係る水路構造において、前記点検手段は、任意の前記プランク材のうち、隣り合う上流側の前記プランク材及び下流側の前記プランク材の上から重なるように重ね合わせ方向が異なっていると好適である。
【0014】
また、本発明に係る水路構造において、前記点検手段は、前記プランク材を幅方向にスライド可能であると好適である。
【0015】
また、本発明に係る水路構造において、前記プランク材は、前記水路の側壁に取り付けられた腹起し材に取り付けられると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る水路用蓋によれば、蓋材として波付き板の波高さよりも大きな波高さを有するプランク材を用いているので、蓋材自体が断面性能が高くなることで、従来の切梁材を削減することができ、その結果、切梁材を避ける必要がなくなることから、水路と蓋材との間の隙間が生じることなく、蓋材を取り付けることができる。また、プランク材に点検手段を設けているので、容易に水路の点検及び清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋を示す平面図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋及び当該水路用蓋が取り付けられる水路の断面図。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋の側面図。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋を構成するプランク材の側面図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の構成を示す側面図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の変形例を示す側面図。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の変形例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋を示す平面図であり、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋及び当該水路用蓋が取り付けられる水路の断面図であり、
図3は、
図2におけるA部拡大図であり、
図4は、本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋の側面図であり、
図5は、
図4におけるB部拡大図であり、
図6は、本発明の第1の実施形態に係る水路用蓋を構成するプランク材の側面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る水路用蓋20は、波付き板から構成される水路10の側壁11上に水路10を跨いで固定されている。
図2に示すように、水路10は、所定の波高さを有する波付き板の下端を湾曲させた一対の側壁11と、側壁11の下端同士を連結する底板12とから構成され、断面略U字状に形成されている。なお、水路10は、一対の側壁11及び底板12の3枚の波付き板からなる場合について説明を行ったが、これに限らず、例えば、2枚構成や1枚構成とすることもできる。
【0022】
図3に示すように、側壁11の上端には、腹起し材13が水路10の外方に突出するように取り付けられている。腹起し材13は、L形鋼やアングル材などが好適に用いられ、一方のフランジ13aを側壁11にボルト接合するとともに、水路10の外方に突出した他方のフランジ13bに水路用蓋20を取り付けている。
【0023】
また、
図1及び
図4に示すように、水路用蓋20は、側壁11の波付き板の波高さよりも大きな波高さを有するプランク材21,22を複数枚、水路の延設方向に沿って配置して構成されている。プランク材21,22の波方向は、水路10の延設方向に対して平行に延びるように配置されている。なお、プランク材21,22の波高さは、側壁11の波高さの2倍以上に構成されると好適である。さらに、水路用蓋20は、水勾配として、片勾配又は山形勾配を設けても構わない。
【0024】
また、プランク材21,22は、上流側のプランク材22が下流側のプランク材21の上に重なるように重ね合わされてボルト接合されている。
図6に示すように、プランク材21,22の波方向の端部23,24は、上方又は下方に曲げ加工がなされており、例えば、一端側の端部23は、上方に曲げられると共に、他端側の端部24は、下方に曲げられていると好適である。
【0025】
このように、プランク材21,22に曲げ加工を施すことで、
図5に示すように、下流側のプランク材21に上流側のプランク材22を重ね合わせたときに、端部23,24が互いに対向する方向に曲げられてボルト接合されることで、ボルトの軸方向に反力を生じさせて、プランク材21,22同士に密着性を向上させることができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る水路用蓋20は、側壁11よりも波高さの高いプランク材21,22によって構成されているので、断面性能が高く、従来の切梁材を用いることなく、水路10の剛性を確保することができる。また、側壁11のそれぞれに取り付けた腹起し材13に水路用蓋20を取り付けることで、水路10の開口を閉塞することができ、積雪地域等で水路10内部の水の流量を確保したまま使用することが可能となる。
【0027】
また、
図1に示すように、本実施形態に係る水路用蓋20は、水路用蓋20を水路10に取り付けた状態で水路10内を点検及び清掃することができる点検手段30を備えている。
【0028】
点検手段30は、水路用蓋20を構成する任意のプランク材に開口して形成された点検窓32と、該点検窓32を閉塞する点検蓋材31とを有しており、点検及び清掃の際には、点検蓋材31を取り外し、点検窓32から水路10内の点検及び清掃を行うことができる。点検蓋材31は、点検窓32を閉塞するとともに、通常時には、容易に外れないように固定されており、従来周知の固定方法を採用することができるが、例えば、ボルトやクリップなどで着脱自在に取り付けられていると好適である。なお、点検蓋材31は、水路用蓋20と同様のプランク材で構成されると好適であるが、プランク材と同様の波形状を有する透明な合成樹脂材で構成しても構わないし、波形状と同様の強度を有する平板を適用しても構わない。このように、点検蓋材31を透明な合成樹脂材で構成することで、点検蓋材31の開閉を行うことなく、水路10内を観察することができる。
【0029】
また、点検窓32は、水路10の延設方向に沿って所定の間隔で配置されると好適であり、その配置間隔や開口の大きさなどは、用いられる水路10の環境等に応じて適宜変更することが可能である。
【0030】
[第2の実施形態]
以上説明した第1の実施形態に係る水路用蓋20では、点検手段30の構成として、プランク材21,22に形成した点検窓32と、当該点検窓32に着脱自在に取り付けた点検蓋材31とで構成した場合について説明をおこなった。次に説明する第2の実施形態の水路用蓋20aは、第1の実施形態とは異なる形態を有する点検手段の実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の構成を示す側面図であり、
図8は、本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の変形例を示す側面図であり、
図9は、本発明の第2の実施形態に係る水路用蓋の変形例の平面図である。
【0032】
図7に示すように、本実施形態に係る水路用蓋20aは、上述した第1の実施形態に係る水路用蓋と同様に、プランク材21,22を複数枚、水路の延設方向に沿って配置して構成されている。プランク材21,22は、上流側のプランク材22が下流側のプランク材21の上に重なるように重ね合わされてボルト接合されている。また、プランク材21,22の波方向の両端23,24は、上方又は下方に曲げ加工がなされており、例えば、一端側23は、上方に曲げられると共に、他端側24は、下方に曲げられていると好適である。
【0033】
また、本実施形態に係る水路用蓋20aは、所定の間隔で下流側のプランク材21と上流側のプランク材22の間に開口33を形成するように互いに離間して配置されている。この開口33は、点検手段として機能し、開口33から水路内の点検や清掃を行うことができる。
【0034】
また、開口33は、点検用プランク材25によって閉塞されており、
図7に示すように、下流側のプランク材21の端部24及び上流側のプランク材22の端部23と重畳するように上方から取り付けられる。なお、点検用プランク材25は、プランク材21,22と同様の波高さを有する波付き鋼板を用いると好適である。また、点検用プランク材25の固定は、種々の固定手段を採用することができ、例えばボルト接合やクランプによる接合を採用することができる。
【0035】
なお、本実施形態に係る水路用蓋の点検手段は、点検用プランク材25を上方から取り付ける形態のほか、
図8から
図9に示すように、スライド構造とすることができる。
図8に示すように、本実施形態に係る水路用蓋20bは、所定の間隔で下流側のプランク材21と上流側のプランク材22の間に開口33を形成するように互いに離間して配置されている。この開口33は、点検用プランク材25によって閉塞されている。
【0036】
点検用プランク材25は、下流側のプランク材21の端部24並びに、上流側のプランク材22の端部23と点検用プランク材25の端部23,24との間に案内装置34を介して取り付けられており、
図9に示すように、点検用プランク材25は、水路の幅方向にスライド可能とされている。また、例えば、点検用プランク材25のうち、少なくとも1枚を透明な合成樹脂によって構成すれば、点検用プランク材25をスライドすることなく水路10内を観察することができる。
【0037】
案内装置34は、点検用プランク材25の幅方向への直線運動を案内することができれば、種々の要素部品を用いることができるが、例えば、長尺のレールに沿って移動するブロックを有する案内装置を用いても構わないし、互いに摺動可能に組み合わされたスライド部材を有するスライドレールを用いても構わない。
【0038】
以上、説明した第1及び第2の実施形態に係る水路用蓋20,20a,20bによれば、蓋材として波付き板の波高さよりも大きな波高さを有するプランク材21,22を用いているので、蓋材自体が断面性能が高くなることで、従来の切梁材を削減することができ、その結果、切梁材を避ける必要がなくなることから、水路10と蓋材との間の隙間が生じることなく、水路用蓋20,20a,20bを取り付けることができる。また、プランク材21,22に点検手段30を設けているので、容易に水路の点検及び清掃を行うことができる。
【0039】
なお、以上の実施の形態では、点検手段として、点検窓32及び開口33をそれぞれ点検蓋材31及び点検用プランク材25で閉塞した場合について説明を行ったが、点検手段の構成はこれらに限定されず、水路内の点検及び清掃を行うことができれば、種々の変更が可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
10 水路, 11 側壁, 12 底板, 13 腹起し材, 20 水路用蓋, 21 下流側のプランク材, 22 上流側のプランク材, 23,24 端部, 25 点検用プランク材, 30 点検手段, 31 点検蓋材, 32 点検窓, 33 開口, 34 案内部材。