(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】果実収穫装置及び果実収穫ロボット
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20231114BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A01D46/30
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2020079750
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】517261338
【氏名又は名称】株式会社スマートロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【氏名又は名称】山田 龍也
(72)【発明者】
【氏名】川越 清政
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187714(WO,A1)
【文献】特開2013-240299(JP,A)
【文献】特開平04-088916(JP,A)
【文献】特開昭59-106221(JP,A)
【文献】実開昭61-012338(JP,U)
【文献】米国特許第04975016(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/00-46/30
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の吸引機に後端が接続され、前端に果実を吸着するためのパイプ状部材と、
前記パイプ状部材に沿って前後に移動自在なスライダと、
前記スライダの前後移動を駆動するスライダ駆動機構と、
前記スライダに対して前方に延設される、柔軟性を有するアームと、
前記アームの内部を通って、前記アームの先端に一端が固定されるワイヤと、
前記ワイヤの他端に係合し、前記ワイヤの送り出し、引き戻しを駆動するワイヤ駆動機構と、
前記アームの先端の前記ワイヤが出入りする位置と前記ワイヤの一端が固定される位置とを結ぶ線に平行であって、前記ワイヤの直径よりも長い間隔を隔てて前記アームの先端に設けられる一対のカッターと、を具備し、
前記ワイヤ駆動機構により前記ワイヤが送り出されることにより、前記アームの先端から前方に送り出されたワイヤ部分はループ状をなし、前記スライダが第1位置に配置されたとき、前記ループ状をなすワイヤ部分が前記パイプ状部材に挿入され、
前記スライダが前記第1位置よりも前方の第2位置に配置されたとき、前記ループ状をなすワイヤ部分は前記パイプ状部材から外れ、前記ワイヤ駆動機構により前記ワイヤが引き戻されることにより、前記ループ状をなすワイヤ部分が収縮され、前記吸着された果実の果柄又は枝に前記一対のカッターが引き寄せられ、前記一対のカッターにより前記吸着された果実の果柄又は枝が切断される、果実収穫装置。
【請求項2】
前記ワイヤが挿通され、一端が前記ワイヤとともに前記アームの先端に固定されるコイルバネをさらに備える、請求項1記載の果実収穫装置。
【請求項3】
前記果実が接触する前記パイプ状部材の先端縁には緩衝材が装着される、請求項1記載の果実収穫装置。
【請求項4】
前記アームの先端は、前記パイプ状部材から離れる方向に付勢される、請求項1記載の果実収穫装置。
【請求項5】
前記アームは互いの端部箇所において屈曲自在に連結された複数のアームブロックを有し、前記アームの先端を前記パイプ状部材から離れる方向に付勢するために、前記アームブロックの連結箇所にはコイルバネが設けられる、請求項4記載の果実収穫装置。
【請求項6】
前記スライダ駆動機構と前記ワイヤ駆動機構を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記パイプ状部材の先端に前記果実が吸着されたとき、前記スライダ駆動機構を制御して前記スライダを前記第1位置から前記第2位置に移動させるとともに、前記ワイヤ駆動機構を制御して前記ワイヤを送り出し、前記吸着された果実を前記ループ状をなすワイヤ部分を通過させ、
前記ループ状をなすワイヤ部分が前記吸着された果実を通過されたとき、前記ワイヤ駆動機構を制御して前記ワイヤを引き戻し、前記吸着された果実の果柄又は枝に向かって前記一対のカッターを接近させて、前記吸着された果実の果柄又は枝を前記一対のカッターで切断させ、
前記吸着された果実の果柄又は枝が前記一対のカッターにより切断されたとき、前記ワイヤ駆動機構を制御して前記ワイヤを送り出し、前記ワイヤのループ状をなす部分を回復させ、前記スライダ駆動機構を制御して前記スライダを前記第2位置から前記第1位置に移動させて前記ワイヤのループ状をなす部分を前記パイプ状部材に挿入させ、
前記パイプ状部材に前記ワイヤのループ状をなす部分が挿入されたとき、前記ワイヤ駆動機構を制御して前記ワイヤを引き戻し、前記ワイヤのループ状をなす部分を前記パイプ状部材に引っ掛け、前記一対のカッターを前記パイプ状部材に引き寄せる、請求項1記載の果実収穫装置。
【請求項7】
外部の吸引機に後端が接続され、前端に果実を吸着するためのパイプ状部材と、
前記パイプ状部材に沿って前後に移動自在なスライダと、
前記スライダに対して前方に延設されるアームと、
前記アームの先端に設けられる切断部と、
前記パイプ状部材に吸着された果実の果柄又は枝に前記切断部を引き寄せる、又は前記パイプ状部材に吸着された果実の果柄又は枝を前記切断部に引き寄せるためのワイヤと、
前記ワイヤの送り出し、引き戻しを駆動するワイヤ駆動機構と、を具備し、
前記ワイヤ駆動機構により前記ワイヤが送り出されることにより、前記アームの先端から前方に送り出されたワイヤ部分はループ状をなし、前記スライダが第1位置に配置されたとき、前記ループ状をなすワイヤ部分が前記パイプ状部材に挿入され、
前記スライダが前記第1位置よりも前方の第2位置に配置されたとき、前記ループ状をなすワイヤ部分は前記パイプ状部材から外れ、前記ワイヤ駆動機構により前記ワイヤが引き戻されることにより、前記ループ状をなすワイヤ部分が収縮され、前記吸着された果実の果柄又は枝に前記切断部が引き寄せられ、又は前記吸着された果実の果柄又は枝が前記切断部に引き寄せられ、前記切断部により前記吸着された果実の果柄又は枝が切断される、果実収穫装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の果実収穫装置を装備するロボットアーム機構が台車に載置される、果実収穫ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は果実収穫装置及び果実収穫ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農業分野において、農業従事者の不足、高齢化は深刻な問題となっている。これらの問題を解決する1つの方法として、農業分野へのロボットの活用がある。ロボットは、各種センサと組み合わせることで、農作物への水やり、農作物の収穫、収穫した農作物の箱詰め、収穫した農作物の加工など、様々な作業を行うことができる。例えば、農作物の収穫においては、カメラで収穫対象物を認識し、認識した収穫対象物に向かってロボットハンドを近づけ、ロボットハンドに所定の動作を実行させることによって、収穫対象物を収穫することができる。しかしながら、特に、ミニトマト、イチゴなどのような密集して実り、且つ傷みやすい農作物を収穫しようとした場合、以下のような課題が生じる。すなわち、収穫対象の農作物にロボットハンドを近づける段階で、ロボットハンドを構成する刃や他の構造物が収穫対象ではない他の農作物に接触して傷つけてしまう可能性がある。また、収穫対象の農作物を収穫する動作中に、ロボットハンドで収穫対象の農作物を傷つけてしまう可能性や他の農作物に接触して傷つけてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、農作物にアプローチする装置前方部分をコンパクトにするとともに、収穫動作の小さい果実収穫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る果実収穫装置は、外部の吸引機に後端が接続され、前端に果実を吸着するためのパイプ状部材と、パイプ状部材に沿って前後に移動自在なスライダと、スライダの前後移動を駆動するスライダ機構と、スライダに対して前方に延設される、柔軟性を有するアームと、アームの先端に一端が固定され、アームの内部に挿通されるワイヤと、ワイヤの他端に係合し、ワイヤの送り出し、引き戻しを駆動するワイヤ駆動機構と、アームの先端のワイヤが出入りする位置とワイヤの一端が固定される位置とを結ぶ線に平行であって、ワイヤの直径よりも長い間隔を隔ててアームの先端に設けられる一対のカッターと、を具備する。ワイヤ駆動機構によりワイヤが送り出されることにより、アームの先端から前方に送り出されたワイヤ部分はループ状をなし、スライダが第1位置に配置されたとき、ループ状をなすワイヤ部分がパイプ状部材に挿入される。スライダが第1位置よりも前方の第2位置に配置されたとき、ループ状をなすワイヤ部分はパイプ状部材から外れ、ワイヤ駆動機構によりワイヤが引き戻されることにより、ループ状をなすワイヤ部分が収縮され、吸着された果実の果柄又は枝に一対のカッターが引き寄せられ、一対のカッターにより吸着された果実の果柄又は枝が切断される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る果実収穫装置を有する収穫ロボットの側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る果実収穫装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の果実収穫装置のスライダが前方に移動した状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図2の果実収穫装置のワイヤを送り出した状態を示すアームの部分拡大図である。
【
図6】
図6は、
図2の果実収穫装置のワイヤを引き戻した状態を示すアームの部分拡大図である。
【
図7】
図7は、
図5のワイヤの配線構造を示すためのアームの平面図である。
【
図8】
図8は、
図6のワイヤの配線構造を示すためのアームの平面図である。
【
図9】
図9は、
図2の果実収穫装置の切断動作の手順を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本実施形態に係る果実収穫装置を説明する。
【0008】
(収穫ロボット1)
図1は、本実施形態に係る果実収穫装置10を備えた収穫ロボット1を示している。収穫ロボット1は台車30を有する。台車30にはロボットアーム機構40、吸引機50、制御装置60、及び収穫籠70が設置される。ロボットアーム機構40には、エンドエフェクタとして、本実施形態に係る果実収穫装置10が取り付けられている。果実収穫装置10には、吸引機50から延びる吸引ホース51が接続される。制御装置60は、ロボットアーム機構40または果実収穫装置10に取り付けられたカメラ(図示しない)により撮影された画像に対して所定の画像処理を実行することによって収穫対象のミニトマトMの位置を特定し、特定したミニトマトMの位置に基づいて、台車30、ロボットアーム機構40、果実収穫装置10及び吸引機50を制御する。
【0009】
なお、本実施形態では、収穫する果実としてミニトマトMを例に説明するが、収穫対象の果実はこれに限定されることはなく、果柄(果梗)や比較的柔らかい枝に実る農作物(果実)が収穫対象となりえる。このような農作物としては、例えばトマト、イチゴ、キウイ、柿、さくらんぼ、ナス、ピーマンなどがあげられる。
【0010】
(果実収穫装置10)
本実施形態に係る果実収穫装置10の1つの特徴は、収穫対象の1つのミニトマトMを吸着し、ミニトマトMを吸着した状態で果柄を切断し、収穫することにある。この特徴により、ミニトマトMを1つずつ収穫することができる。また、ミニトマトMの状態に応じて吸着力を調整することで、ミニトマトMを傷めずに1つずつ収穫することも可能である。
【0011】
本実施形態に係る果実収穫装置10の他の特徴は、装置先端側がコンパクトに設計されていることにある。この特徴により、複数のミニトマトMが密集して実っているような場合でも、収穫対象のミニトマトM以外の周辺の複数のミニトマトに果実収穫装置10が接触する可能性を低減することができ、それにより周辺のミニトマトを傷めるリスクを低減することができる。
【0012】
本実施形態に係る果実収穫装置10の他の特徴は、吸着したミニトマトの果柄の切断動作時に、ミニトマトの果柄に切断部を引き寄せ、または、切断部にミニトマトの果柄を引き寄せ、それにより吸着したミニトマトの果柄を切断することにある。この特徴により、切断動作を小さくすることができ、収穫対象のミニトマトM以外の周辺の複数のミニトマトが収穫動作中の果実収穫装置10に接触する可能性を低減することができ、それにより周辺のミニトマトを傷めるリスクを低減することができる。
【0013】
上記のような特徴を有する果実収穫装置10は以下のように構成される。
図2、
図3に示すように、果実収穫装置10は、後述のスライダ駆動機構、ワイヤ駆動機構、及びこれらの駆動機構を制御する制御基板が収容されるハウジング11を有する。典型的には、ハウジング11は、先細りの略円錐台形状に構成される。ハウジング11の後端面には、ロボットアーム機構40の手首部に接続するためのアダプタ20が設けられる。このハウジング11には、前方部分がハウジング11の先端から前方に突出するようにパイプ状部材12が固定されている。
【0014】
(パイプ状部材12)
パイプ状部材12は、その先端においてミニトマトMを吸着するために、典型的には、収穫対象のミニトマトMの直径よりも小さい内径を有する細長い円筒体に構成される。パイプ状部材12の先端縁には、吸着による傷果の発生を抑制するために緩衝材として、Oリング13が装着されている。パイプ状部材12の後端には吸引機50から延びる吸引ホース51が接続される。吸引機50が駆動されることで、パイプ状部材12の内部に負圧が発生し、パイプ状部材12の先端にミニトマトが引き寄せられ、吸着される。
【0015】
(スライダ14)
果実収穫装置10はパイプ状部材12に沿って前後に移動自在なスライダ14を有する。典型的には、スライダ14は、パイプ状部材12の外径よりも大きい内径を有する短い円筒体に構成され、その中空部分にパイプ状部材12が挿入され、パイプ状部材12に対して前後に移動自在に支持される。スライダ14は、モータ、減速機等からなるスライダ駆動機構により駆動され、パイプ状部材12に沿って前後に移動される。具体的には、
図3に示すように、果実収穫装置10の待機中、または吸着動作中において、スライダ14は待機位置(第1位置)に配置されている。果実収穫装置10による収穫動作が開始されると、スライダ駆動機構によりスライダ14は待機位置から、
図4に示すように、待機位置よりも前方の収穫位置(第2位置)に移動される。果実収穫装置10による復帰動作が開始されると、スライダ駆動機構によりスライダ14は収穫位置から待機位置に戻される。
【0016】
(アーム15)
スライダ14には、スライダ14の先端から前方に延びる柔軟性を有するアーム15が取り付けられる。なお、果実収穫装置10によるミニトマトの収穫動作は、アーム15がパイプ状部材12の上方に位置する姿勢で行われる。そのため、パイプ状部材12の中心線に対するアーム15の取付位置を上向きとして、果実収穫装置10の上下の向きを定義する。以下の説明では、パイプ状部材12の中心線に対して、アーム15が取り付けられた方向を上方向、その反対方向を下方向(重力方向)として、適宜使用する。
【0017】
図5、
図6に示すように、典型的には、アーム15は、互いの端部箇所において屈曲可能に連結された板状の複数のアームブロック151により構成される。複数のアームブロック151は、下方への屈曲が許可され、上方への屈曲が制限されている。また、外力が加わっていない初期状態において、先頭のアームブロック151がパイプ状部材12から上方に離れた位置でパイプ状部材12と平行な姿勢で配置されるように、最後尾のアームブロック151はスライダ14に対して斜め上方の向きに取り付けられ、他のアームブロック151は、その後方のアームブロック151に対する取付角度が決められている。また、アーム15の先端が下方または前方に引っ張られ、アーム15の全体が変形しても、その引っ張りが解除されたときに、アーム15を初期状態に復帰させるために、アーム15の先端はパイプ状部材12から離れる方向に付勢されている。この付勢手段として、アームブロック151同士はコイルバネ153で接続されている。
【0018】
なお、柔軟性を有するのであれば、アーム15の構成は上記に限定されない。例えば、アーム15は、シリコンゴムなどの弾性樹脂材で形成されたものであってもよい。また、アーム15の先端をパイプ状部材12から離れる方向に付勢手段としては、アーム15の先端部分の下方に位置するパイプ状部材12の外周面に板ばねなどの弾性部材を取り付けてもよいし、アーム15の先端を後方からゴム製の紐材で引っ張るようにしてもよい。
【0019】
(切断部16)
アーム15の先端にはミニトマトMの果柄を切断するための切断部16が設けられる。典型的には、
図5、
図6に示すように、切断部16は一対のカッター16(平刃)により構成される。一対のカッター16はアームブロック151の厚み中央に対して上下に分散して、互いに平行に配置される。例えば、先頭のアームブロック151は縦断面コ字形状の前方が開放した溝枠体に構成され、一対のカッター16は、溝枠体を構成する一対の側板の先端縁にそれぞれ設けられる。一対のカッター16の間隙は、後述のワイヤ17の直径よりも広く、好適にはワイヤ17の直径よりもわずかに広い。この一対のカッター16の間隙は、後述のワイヤループの出入り口に相当する。
【0020】
(ワイヤ17)
果実収穫装置10は、アーム15の先端に設けられた一対のカッター16をパイプ状部材12に吸着されたミニトマトMの果柄に引き寄せる、またはパイプ状部材12に吸着されたミニトマトMの果柄を一対のカッター16に引き寄せるためのワイヤ17を有する。ワイヤ17は、典型的には樹脂製である。ワイヤ17は、ハウジング11の内部に収容されたワイヤ駆動機構により駆動される。ワイヤ駆動機構は、ワイヤ17を巻き付けるリール141(
図2、
図3参照)、リール141を回転させるためのモータ、モータの回転を減速する減速機等から構成され、スライダ14とともに前後に移動自在にハウジング11内に設けられる。リール141から引き出されたワイヤ17の一端は、ハウジング11の内部、アーム15の内部を通って、アーム15の先端まで配線され、アーム15の先端に固定される。
【0021】
典型的には、
図7、
図8に示すように、先頭のアームブロック151の底板にはワイヤ17をガイドするガイド孔152があけられている。ガイド孔152は、アームブロック151の幅中央から幅方向にオフセットした位置に設けられている。ガイド孔152の後端にはワイヤチューブ19の一端が接続されている。ガイド孔152の内部とワイヤチューブ19の内部とは連通している。ワイヤチューブ19の他端はリール141の近傍に固定されている。ワイヤ17の一端は、ワイヤチューブ19の内部を通って、先頭のアームブロック151のガイド孔152の先端開口から引き出され、アームブロック151の幅中央を挟んでガイド孔152が設けられた位置と反対側の位置において底板に固定される。既に説明した一対のカッター16はガイド孔152の先端開口の位置とワイヤ17の一端が固定された位置との間を結ぶ線に平行になるように配置されている。
【0022】
上記のようにワイヤ17が配線され、固定されていることで、ワイヤ駆動機構によりワイヤ17が送り出されると、ガイド孔152とワイヤ17の固定端との間のワイヤ部分は先頭のアームブロック151の内部で行き場をなくし、
図5に示すように、開放された先頭のアームブロック151の前方、つまりアーム15の先端から前方に送り出される。アーム15の先端から前方に送り出されたワイヤ部分は、送り出されたワイヤ17の長さに応じた大きさのループ状をなす。ループ状をなすワイヤ部分をワイヤループと称する。
図5に示す状態から、ワイヤ駆動機構によりワイヤ17が引き戻されたとき、
図6に示すように、ワイヤループは、引き戻されたワイヤ17の長さに応じて徐々に縮まりながら、一対のカッター16の間隙からアーム15の内部に収容される。
【0023】
ワイヤ17は一対のカッター16の間隙を出入りするため、ワイヤ17が一対のカッター16に接触して損傷しないように、また、一対のカッター16がワイヤ17により損傷しないように、
図7、
図8に示すように、アーム15の先端から前方に送り出されるワイヤ部分はコイルバネ18に挿通され、保護されている。コイルバネ18の一端は、ワイヤ17の一端とともにアーム15の先端に固定されている。コイルバネ18の他端は自由端であり、ワイヤチューブ19に挿通されている。コイルバネ18の長さは、収穫動作時において送り出されるワイヤ17の長さよりも長い。アーム15の先端から前方に送り出されるワイヤ部分をコイルバネ18で覆われているため、ワイヤループがミニトマトに接触するとき、その接触面積を、ワイヤ単体のときに比べて大きくすることができる。それにより、ワイヤループが接触することによってミニトマトに傷が付くリスクを低減することができる。このようにコイルバネ18は、ワイヤ17の保護、一対のカッター16の保護、及びミニトマトの保護に寄与する。
【0024】
なお、上記のように、一対のカッター16による損傷のリスクを低減することができるのであれば、ワイヤ17は他の保護材により保護されてもよい。例えば、コイルバネ18に代わって柔軟性を有するチューブを使用することができる。また、コイルバネ18を使用せずに、潤滑樹脂材などの滑りやすい素材で製造されたワイヤを使用するようにしてもよい。
【0025】
果実収穫装置10は、ワイヤループの引き戻し動作を利用して、パイプ状部材12に吸着したミニトマトの果柄を切断する。具体的には、ミニトマトMの果柄をワイヤループのループ面に交差するように配置させることで、収縮する過程でワイヤループをミニトマトMの果柄に引っ掛けることができる。ミニトマトMの位置、向きが固定されていれば、ミニトマトMの果柄に多少の柔軟性があっても、ワイヤループがミニトマトMの果柄に引っ掛かった状態で、ワイヤループを収縮させることで、ミニトマトMの果柄に向かってアーム15の先端の一対のカッター16を引き寄せることができる。ワイヤループが一対のカッター16の間隙からアーム15の内部に収容されるときに、ミニトマトMの果柄はワイヤループにより一対のカッター16に押し付けられ、切断される。
【0026】
(果実収穫動作)
上記のように構成された果実収穫装置10によるミニトマトMの収穫動作は、以下の手順で実行される。果実収穫装置10によるミニトマトの収穫工程には、パイプ状部材12にミニトマトMを吸着する工程、パイプ状部材12に吸着されたミニトマトMの果柄を切断する工程、果実収穫装置10を吸着姿勢に復帰させる工程が含まれる。
【0027】
(吸着工程)
吸着動作が開始されると、ロボットアーム機構40により、果実収穫装置10のパイプ状部材12の先端が収穫対象のミニトマトMに接近され、吸引機50による吸引動作が開始される。それにより、パイプ状部材12の先端に収穫対象のミニトマトMが吸着される。果実収穫装置10には、パイプ状部材12にミニトマトを吸着するときの吸着姿勢が設定されている。吸着姿勢では、スライダ14は待機位置に配置され、ワイヤループはパイプ状部材12に通され、パイプ状部材12の外周面に巻き付けられている。このとき、ワイヤループの直径はパイプ状部材12の外径と等価または外径よりも若干大きくなるようにワイヤ駆動機構によりワイヤ17の長さが調整されている。それにより、アーム15の先端はパイプ状部材12に引き寄せられ、アーム15の先端に設けられた一対のカッター16は斜め下方を向く。一対のカッター16をパイプ状部材12に向けることで、収穫対象のミニトマトMを吸着するとき、密集して実っているミニトマト群にパイプ状部材12を差し入れても、他のミニトマトが一対のカッター16に接触して傷ついてしまう可能性を低減するとともに、葉や枝などがアーム15に引っかかる可能性を低減することができる。
【0028】
(切断工程)
以下、
図9を参照してパイプ状部材12の先端に吸着されたミニトマトMの果柄の切断動作を説明する。
図9(a)は、ミニトマトMを吸着した状態の果実収穫装置10を示している。
【0029】
切断動作が開始されると、スライダ駆動機構によりスライダ14が待機位置から前方の収穫位置まで移動されるとともに、ワイヤループの径がミニトマトMよりも大きくなるようにワイヤ駆動機構によりワイヤ17が送り出される。この過程において、
図9(b)に示すように、まず、ワイヤループ(ループ状をなすワイヤ部分)がパイプ状部材12の先端から外れる。次に、
図9(c)に示すように、ワイヤループがミニトマトMを通過される。
【0030】
ワイヤループがミニトマトMを通過された後、ループを縮めるためにワイヤ駆動機構によりワイヤ17が引き戻される。この過程において、
図9(d)に示すように、ワイヤループは徐々に収縮しながら、パイプ状部材12に吸着されたミニトマトMに沿って上方に誘導され、
図9(e)に示すように、パイプ状部材12に吸着されたミニトマトMの果柄に引っ掛かる。ミニトマトMがパイプ状部材12にしっかり吸着されていれば、
図9(f)に示すように、ワイヤループがミニトマトMの果柄に引っ掛かった状態でその位置が固定され、ワイヤループによりアーム15の先端の一対のカッター16がミニトマトMの果柄に引き寄せられ、ワイヤループが一対のカッター16の間隙からアーム15の内部に収容されるときに、ミニトマトMの果柄は一対のカッター16に押し付けられ、切断される。パイプ状部材12に吸着されたミニトマトMの果柄が切断された後、ロボットアーム機構40により、パイプ状部材12の先端が収穫籠70の上方に配置され、吸引機50による吸引動作が停止される。それにより、パイプ状部材12の先端に吸着されたミニトマトMは収穫籠70にリリースされる。
【0031】
(復帰工程)
以下、
図10を参照してミニトマトMを収穫した後の果実収穫装置10の吸着姿勢への復帰動作を説明する。
図10(a)は、ミニトマトMを収穫籠70にリリースした直後の果実収穫装置10を示している。
【0032】
復帰動作が開始されると、ワイヤループをパイプ状部材12の外径よりも大きくなるように、ワイヤ駆動機構によりワイヤ17が送り出される。それにより、
図10(b)に示すように、アーム15先端からパイプ状部材12の外径よりも大きい直径を有するワイヤループが垂れ下がる。次に、スライダ駆動機構によりスライダ14が収穫位置からその後方の待機位置まで移動される。それにより、
図10(c)に示すように、ワイヤループにパイプ状部材12が挿入される。最後に、ワイヤループの直径がパイプ状部材12の外径と等価または外径よりも若干大きくなるようにワイヤ駆動機構によりワイヤ17が引き戻される。それにより、
図10(d)に示すように、果実収穫装置10は、ワイヤループがパイプ状部材12に通され、巻き付いた状態の吸着姿勢に復帰される。
【0033】
以上説明した本実施形態に係る果実収穫装置10によれば、以下の効果を奏する。
果実収穫装置10は先細りの略円錐台形状のハウジング11の先端からミニトマトの直径よりも小さい内径を有する細長いパイプ状部材12を突出させて構成したものであり、密集して実るミニトマト群に挿し込まれる果実収穫装置10の先端部分は非常にコンパクトである。そのため、収穫動作中に収穫対象ではないミニトマトが果実収穫装置10に対して接触する頻度を少なくすることができる。
【0034】
また、密集して実るミニトマト群にパイプ状部材12を挿し入れるときやパイプ状部材12にミニトマトを吸着するときなどの、果柄の切断動作中以外のときには、一対のカッター16を保持するアーム15は後方に配置され、アーム15の先端はパイプ状部材12に引き寄せられているため、ミニトマトがこれらの構造物に接触する可能性を低減できるだけではなく、一対のカッター16やアーム15が枝、葉などに不要に接触することを抑え、それにより果実収穫装置10が枝や葉などに引っ掛かってしまい動作が継続できなくなる事態の発生を抑えられる。
【0035】
果柄の切断動作が開始され、アーム15が前方に移動されても、アーム15の先端はパイプ状部材12から最低限の距離しか離れていないため、アーム15にミニトマトなどが接触するリスクは依然として低い。
【0036】
また、パイプ状部材12の先端に吸着されたミニトマトの果柄を切断する際には、アーム15の先端から前方に送り出されているワイヤループを果柄に引っ掛けた状態でワイヤを引き戻し、ワイヤループを徐々に収縮させて果柄と一対のカッター16との間の距離を徐々に縮め、ワイヤループがアーム15の内部に収容されるときに、一対のカッター16により果柄が切断されるように構成しているため、ミニトマトの果柄を無理やり一対のカッター16に引き寄せるのではなく、果柄があまり動かないような場合であれば、その果柄に向かって一対のカッター16を引き寄せることができるため、不要に強い力で果柄が枝ごと引っ張られることはなく、果柄を切断した時の反動により、ミニトマトが実っていた枝が大きく揺れてしまうのを抑えられる。それにより、他のミニトマトが果実収穫装置10に衝突する事態や、他のミニトマトが枝から落下する事態を抑えられる。
【0037】
なお、上記のような果柄の切断動作ができるのであれば、果実収穫装置10の構成は本実施形態に限定されない。例えば、アーム15は、スライダレール機構などの伸縮機構を有する構成としてもよい。また、アーム15とともにスライダ14がワイヤループにより前方に引っ張られるように構成することもできる。この場合、アーム15は柔軟性を有さなくてもよい。
【0038】
また、ワイヤループをアーム15の先端の一対のカッター16の間隙から前方に送り出し、引き戻すことができるのであれば、ワイヤ17の配線構造は本実施形態に限定されない。例えば、ワイヤ17の一端がアーム15の先端に固定されるとしたが、ワイヤ17の一端はアーム15の先端以外の部分に固定されていてもよい。さらに、ワイヤ17を一端をアーム15などに固定するのではなく、ワイヤ17の両端が2つのリールにそれぞれ係合して構成することもできる。
【0039】
さらに、パイプ状部材12にミニトマトを吸着することができるのであれば、パイプ状部材12の構造は本実施形態に限定されない。例えば、パイプ状部材12はミニトマトの直径よりも大きい内径を有するものであってもよい。この場合、パイプ状部材12の内部には、パイプ状部材12の内部に吸引されたミニトマトを保持するための保持部として、例えば、通気用の複数の小孔を有する緩衝材で構成された通気板が設けられる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…果実収穫装置、11…ハウジング、12…パイプ状部材、13…Oリング、14…スライダ14…アーム、16…カッター、17…ワイヤ、141…リール。