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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/06 20060101AFI20231114BHJP
   D03D 51/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
D03D51/06
D03D51/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020097695
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188216
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-156551(JP,A)
【文献】特開2004-107838(JP,A)
【文献】実開昭56-028086(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1245707(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1600542(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/06
D03D 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の主軸が連結される駆動軸であって筬を揺動駆動するための揺動軸が揺動機構を介して連結される駆動軸と、該駆動軸が駆動伝達機構を介して連結されて前記駆動軸を回転駆動する原動モータと、該原動モータにより駆動される開口装置と、前記主軸に制動を掛けるブレーキ装置と、前記駆動軸及び前記揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで前記駆動軸及び前記揺動軸を収容するサイドフレームとを備えた織機において、
前記駆動伝達機構は、前記サイドフレームの空間内で前記駆動軸と平行に延在すると共に前記サイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって前記原動モータに連結されると共に前記開口装置が連結される駆動伝達軸と、該駆動伝達軸と前記駆動軸とを連結する伝達機構とを含み、
前記ブレーキ装置は、前記駆動伝達軸に対し連結されている
ことを特徴とする織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の主軸が連結される駆動軸であって筬を揺動駆動するための揺動軸が揺動機構を介して連結される駆動軸と、該駆動軸が駆動伝達機構を介して連結されて駆動軸を回転駆動する原動モータと、該原動モータにより駆動される開口装置と、主軸に制動を掛けるブレーキ装置と、駆動軸及び揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで駆動軸及び揺動軸を収容するサイドフレームとを備えた織機に関する。
【背景技術】
【0002】
織機は、その一端部に主軸が連結されると共に、原動モータにより回転駆動される軸(駆動軸)を有している。そして、その駆動軸は、一般的な織機では、織機のフレームにおける一対のサイドフレームの一方に収容されている。その上で、その駆動軸が原動モータによって回転駆動されることで、その駆動軸に連結された主軸が回転駆動される。また、その駆動軸の回転は、筬を揺動駆動するためのものともなっている。具体的には、前記一方のサイドフレーム内には筬を揺動駆動するための揺動軸も収容されており、その揺動軸がカム機構、クランク機構といった揺動機構を介して駆動軸と連結されている。そして、前記のように駆動軸が回転駆動されるのに伴い、揺動軸が揺動駆動され、それによって筬が揺動駆動されるように織機が構成されている。
【0003】
なお、前記のように原動モータにより駆動軸を回転駆動するために駆動軸と原動モータとを連結する構成(駆動伝達機構)としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された構成(以下、「従来構成」と言う。)では、揺動機構が連結される駆動軸と原動モータとの間に、プーリ及びタイミングベルトによって原動モータに連結された中間の軸(中間軸)が設けられている。その上で、その中間軸と駆動軸とが、歯車列によって連結されている。
【0004】
また、織機は、経糸に開口運動を与えるべく綜絖枠を上下方向に変位させる開口装置を備えている。そして、開口装置は、専用モータで駆動される形式のものを除いては、原動モータを駆動源とすべく、駆動軸と連結されるかたちで設けられている。したがって、そのような織機では、駆動軸に対し原動モータ及び開口装置が連結されている。但し、前記の従来構成では、開口装置は、前記のようなかたちで原動モータに連結された中間軸に連結されている。すなわち、その従来構成では、原動モータ及び開口装置は、中間軸及び歯車列を介して駆動軸に連結されている。
【0005】
さらに、織機は、主軸に制動を掛けるためのブレーキ装置を備えている。その上で、従来構成では、そのブレーキ装置は、駆動軸の他端部に連結されており、駆動軸に制動を掛けることで主軸に制動を掛けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-156551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、そのように駆動軸の端部にブレーキ装置が連結される従来構成において、主軸に対し制動を掛けるべく駆動軸に制動を掛けると、中間軸に対しては、歯車列を介し、回転を停止させようとする制動力が作用することとなる。そして、そのように中間軸に対し制動が掛けられると、中間軸に連結されている原動モータ及び開口装置にも制動が掛けられることとなる。それにより、中間軸に対しては、原動モータ及び開口装置の制動に伴う慣性力が作用することとなる。したがって、制動が掛けられる駆動軸とそのように慣性力が作用することによって制動力に抗して回転しようとする中間軸とを連結する歯車列においては、駆動軸側の歯車と中間軸側の歯車との噛み合い部分に対し前記慣性力に応じた負荷が掛かることとなる。そして、その結果として、その歯車列の破損等が生じる虞がある。
【0008】
なお、広幅の織機のように綜絖枠の幅寸法が大きい場合や、織機に搭載される或いは製織に使用される綜絖枠の枚数が多い場合等では、その開口装置の制動に伴う慣性力はより大きなものとなる。また、その開口装置を駆動する原動モータの駆動力もより大きなものとなるため、原動モータの制動に伴う慣性力もより大きなものとなる。したがって、そのような場合では、ブレーキ装置による制動時において前記のように歯車列に掛かる負荷がより大きなものとなるため、前記破損等がより生じやすい。
【0009】
また、駆動軸と中間軸とを連結する連結構成としては、歯車列の他に、プーリとタイミングベルトとの組み合わせによるものが考えられる。しかし、その構成の場合であっても、制動される駆動軸に対して中間軸が前記慣性力によって回転しようとすることとなるため、駆動軸と中間軸とを連結するタイミングベルトに対し前記慣性力に応じた負荷が掛かることとなる。そして、その結果として、タイミングベルトの破断等が生じる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、ブレーキ装置による制動時において、前記した連結構成が破損するのを可及的に防止することができる織機の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような織機において、駆動伝達機構が、サイドフレームの空間内で駆動軸と平行に延在すると共にサイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって原動モータに連結されると共に開口装置が連結される駆動伝達軸と、その駆動伝達軸と駆動軸とを連結する伝達機構とを含んでおり、前記したブレーキ装置が、その駆動伝達軸に対し連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による織機によれば、その構成により、ブレーキ装置による制動時において、駆動軸と駆動伝達軸とを連結する連結構成に掛かる負荷が小さいものとなる。より詳しくは、前記制動時においては、駆動軸及び駆動伝達軸に対し制動が掛けられることになる。また、それに伴い、駆動軸及び駆動伝達軸のそれぞれに対しては、連結された構成要素の制動に伴う慣性力が作用することとなる。なお、駆動伝達軸には、前記したように原動モータ及び開口装置が前記構成要素として連結されている。また、駆動軸には、主軸や筬打ち装置等が前記構成要素として連結されている。
【0013】
ところで、従来構成や本発明による構成のように、それぞれに1以上の構成要素が連結されると共に連結構成によって互いに連結された2つの軸の一方に対しブレーキ装置が連結されている構成の場合には、その一方の軸(制動軸)に対しブレーキ装置により直接的に制動が掛けられることに伴い、他方の軸(被制動軸)は、連結構成を介してその制動力を受けることとなる。すなわち、その連結構成が、制動軸による制動力を被制動軸に作用させる部分となっている。
【0014】
そして、そのように各軸に制動が掛けられることに伴って各軸に作用する前記構成要素による慣性力は、当然ながら軸の回転方向に作用する。したがって、制動軸側においては、その慣性力は、ブレーキ装置による制動力を弱める方向に作用する。それにより、制動軸が前記連結構成に作用させる制動力は、ブレーキ装置が制動軸に作用させようとする制動力が制動軸側に作用する慣性力分だけ弱められた力となる。一方で、被制動軸に作用する慣性力は、被制動軸が前記連結構成から受ける制動力(制動軸が前記連結構成に作用させる制動力)に抗する力となる。そのため、制動軸に作用する慣性力が大きいほど(制動軸が前記連結構成に作用させる制動力が小さいほど)前記連結構成に掛かる負荷は小さくなり、また、被制動軸に作用する慣性力が大きいほど(前記連結構成から受ける制動力に抗する力が大きいほど)前記連結構成に掛かる負荷は大きくなる。
【0015】
その上で、織機においては、前記制動時において、原動モータや開口装置により軸(駆動伝達軸)に作用する慣性力の方が主軸や筬打ち装置等により軸(駆動軸)に作用する慣性力よりも大きいのが一般的である。したがって、駆動軸を制動軸とする従来構成と比べ、駆動伝達軸を制動軸とする本発明による構成の方が、前記制動時において前記連結構成に掛かる負荷が小さくなる。それにより、本発明によれば、前記連結構成の破損が可及的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る一実施形態における織機1の正面断面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、図1及び図2に基づき、本発明が適用された織機の一実施形態(実施例)について説明する。
【0018】
織機1において、フレーム10は、筐体形状を成す一対のサイドフレーム12、12を含み、そのサイドフレーム12が複数の梁材で連結された構成となっている。また、織機1は、原動モータ20を備えており、その原動モータ20により織機1の主軸5を駆動するように構成されている。そして、その原動モータ20は、一対のサイドフレーム12、12のうちの一方のサイドフレーム(以下、「駆動側フレーム」と言う。)12の側に設けられている。
【0019】
そして、駆動側フレーム12は、主体的な部分であるフレーム本体14と、フレーム本体14に取り付けられるフレームカバ16とで構成されている。具体的には、フレーム本体14は、内部に空間を有する筐体形状に形成されているが、織機1の幅方向において外側となる側壁(外壁部)14aにおける一部分(幅方向に見て後述する揺動機構60等に対応する部分)が開放された形状となっている。また、フレームカバ16は、板状に形成された部材であり、フレーム本体14の開放された部分(開放部)14cを覆うことが可能な大きさを有している。そして、駆動側フレーム12は、フレーム本体14に対し開放部14cを覆うようなかたちでフレームカバ16が取り付けられる構成となっている。したがって、前記幅方向において外側となる駆動側フレーム12の側壁(外側壁)12aは、フレーム本体14の外壁部14aとその開放部14cを覆うフレームカバ16とから成っている。なお、フレーム本体14に対するフレームカバ16の取り付けは、ボルト等のネジ部材(図示略)を用いて行われており、フレームカバ16はフレーム本体14に対し着脱可能となっている。
【0020】
また、織機1は、原動モータ20と主軸5との間に介装される駆動軸30であって、原動モータ20によって回転駆動されると共に主軸5を回転駆動する駆動軸30を備えている。さらに、織機1は、筬打ち装置40におけるロッキング軸44を揺動駆動するための揺動軸50、及びその揺動軸50と駆動軸30とを連結する揺動機構60を備えている。なお、本実施例は、その揺動機構60としてクランク機構が採用された例である。そして、その駆動軸30、揺動軸50及び揺動機構60は、前記幅方向に見て駆動側フレーム12における開放部14cの範囲内に位置するような配置で、前記した駆動側フレーム12内の空間に収容されている。そのような織機1における各構成について、詳しくは以下の通り。
【0021】
駆動軸30は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。但し、駆動軸30は、その中間の部分が両側の部分(両側部)に対し偏心する偏心部32として形成されたクランク形状の軸となっている。そして、駆動軸30は、その軸線方向を前記幅方向に一致させた向きで、駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して回転可能に支持されており、そのようなかたちで駆動側フレーム12に収容されている。
【0022】
なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30がフレーム本体14における開放部14c内の中間付近よりも下側に位置するような位置となっている。そして、駆動軸30は、その一端側においては、その一端部でフレームカバ16に対し支持されている。したがって、駆動軸30は、その他端側においては、他端部を含む部分がフレーム本体14の前記幅方向における内側の側壁(内壁部)14bから突出するかたちで設けられた状態となっている。そして、その駆動軸30は、その突出する部分よりも駆動側フレーム12側の部分においてフレーム本体14の内壁部に支持されている。そして、その駆動軸30における他端部には、カップリング部材70によって主軸5が連結されている。
【0023】
揺動軸50は、駆動軸30と同じく、駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。そして、揺動軸50は、駆動軸30と平行を成す向きで、駆動軸30と同様に駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して支持され、駆動側フレーム12に収容されている。なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30と同じくフレーム本体14における開放部14cの範囲内の位置であって、駆動軸30よりも上側の位置となっている。そして、揺動軸50も、その一端部においてフレームカバ16に支持されると共に、他端部を含む部分がフレーム本体14の内壁部14bから突出するように設けられ、その他端側においてフレーム本体14の内壁部14bに支持されている。その上で、その揺動軸50の他端部には、筬42を支持するロッキング軸44がカップリング部材72によって連結されている。
【0024】
揺動機構60は、前記のようにクランク機構であり、揺動軸50に対し相対的に回転不能に設けられた揺動アーム62と、その揺動アーム62と駆動軸30の偏心部32とを連結するリンクである連結レバ64とを含んでいる。なお、図示の例では、揺動軸50と揺動アーム62とは一体的に形成されている。また、連結レバ64は、揺動アーム62及び駆動軸30(偏心部32)に対し相対的に回転可能に連結されている。その上で、その揺動機構60においては、駆動軸30が回転駆動されて偏心部32が両側部の軸心から偏心した位置で回転運動することで、連結レバ64を介して偏心部32に連結された揺動アーム62(揺動軸50)が揺動駆動される。したがって、その構成では、駆動軸30の一部も揺動機構60として機能している。そして、そのように揺動軸50が揺動駆動されることで、その揺動軸50に連結されたロッキング軸44、及びそのロッキング軸44に支持された筬42が揺動運動し、筬打ち動作が行われる。
【0025】
以上のような織機1において、その織機1は、主軸5に連結された駆動軸30を原動モータ20で回転駆動すべく駆動軸30と原動モータ20とを連結する駆動伝達機構80を備えている。また、その駆動伝達機構80は、原動モータ20に連結される駆動伝達軸82、及びその駆動伝達軸82と駆動軸30とを連結する伝達機構84を含むように構成されている。その上で、主軸5に制動を掛けるべく織機1に備えられるブレーキ装置110は、その駆動伝達軸82に対し直接的に制動を掛けるように設けられている。また、綜絖枠(図示略)を上下方向に往復駆動する開口装置120は、原動モータ20を駆動源とするものであり、原動モータ20に連結された駆動伝達軸82に連結されている。そのような本実施例の織機1について、詳しくは、以下の通りである。
【0026】
駆動伝達軸82は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きく且つ前記した駆動軸30の長さ寸法よりも大きい軸として形成されている。その上で、駆動伝達軸82は、駆動軸30と平行を成す向きで、その一端部の側において駆動側フレーム12の内側壁12bに対し軸受を介して支持されると共に、フレーム本体14の外壁部14a(駆動側フレーム12の外側壁12a)を貫通し、その他端部が外壁部14aよりも外側に位置するように設けられている。したがって、駆動伝達軸82は、軸受で支持されている部分から外壁部14aに至る間の部分が駆動側フレーム12内に収容された状態となっている。但し、駆動伝達軸82は、前記のように一端部の側において内側壁12bに支持されるが、その一端部が内側壁12bよりも外側に位置するように、内側壁12bからも突出するように設けられている。その上で、そのように設けられた駆動伝達軸82は、駆動側フレーム12内において、伝達機構84により駆動軸30と連結されている。
【0027】
なお、その駆動伝達軸82の支持位置は、フレーム本体14における開放部14cの範囲外の位置であって駆動軸30に対し下方に離間した位置となっている。また、フレーム本体14の外壁部14aには、前記のような駆動伝達軸82の貫通を許容すべく、その支持位置に対応する位置に貫通孔14dが形成されている。
【0028】
その伝達機構84は、本実施例では、駆動側フレーム12内に収容される2つの歯車を含む歯車列として構成されている。具体的には、その伝達機構84は、駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車84aと、その駆動歯車84aに噛合する従動歯車84bであって駆動軸30に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車84bとで構成されている。なお、駆動歯車84a及び従動歯車84bが各軸に対し取り付けられる位置は、前記した駆動軸30(偏心部32)と揺動機構60(連結レバ64)との連結位置よりも、前記幅方向における駆動側フレーム12の内側壁12bの側の位置となっている。すなわち、本実施例では、駆動伝達軸82と駆動軸30とが、駆動軸30と揺動機構60との連結位置よりも前記幅方向における駆動側フレーム12の内側壁12bの側の位置で連結されている。
【0029】
また、駆動伝達軸82は、その他端部側において、その駆動伝達軸82を回転駆動するための原動機構90であって、原動モータ20を含む原動機構90と連結されている。その原動機構90は、原動モータ20に加え、原動モータ20の出力軸22と駆動伝達軸82とを連結する原動歯車列92とを備えている。また、原動機構90は、基体となる筐体形状の原動ボックス94を有しており、原動モータ20がその原動ボックス94の外側面に取り付けられると共に、原動歯車列92がその原動ボックス94内に収容される構成となっている。
【0030】
なお、その原動ボックス94は、対向する一対の側壁94a、94bのうちの一方の側壁94aにおける外側面94a1に原動モータ20が取り付けられると共に、その両側壁94a、94bが駆動側フレーム12における外側壁12aと平行を成すように設けられている。そして、原動ボックス94は、織機1の前後方向において駆動側フレーム12と重複して設けられている。また、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82が原動ボックス94内に収容された原動歯車列92と連結されることから、駆動伝達軸82は、原動ボックス94における一対の側壁94a、94bのうちの他方の側壁94bを貫通し、その他端部側の部分が原動ボックス94内に位置する(原動ボックス94に収容される)こととなる。そこで、その原動ボックス94における他方の側壁94bには、そのような駆動伝達軸82の貫通を許容する貫通孔94dが形成されている。
【0031】
その上で、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82は、その他端部において原動ボックス94における一方の側壁94aに対し軸受を介して支持されている。但し、その原動ボックス94は、その駆動伝達軸82が貫通する他方の側壁94bが駆動側フレーム12から離間するように設けられている。
【0032】
原動モータ20は、前記のように支持された駆動伝達軸82に対し上方に離間した位置で、出力軸22を駆動側フレーム12の側へ向ける向きで、ボルト等(図示略)によって原動ボックス94に取り付けられている。なお、その原動モータ20が取り付けられる原動ボックス94における一方の側壁94aには、その取り付け位置において、原動モータ20の出力軸22の貫通を許容する貫通孔94cが形成されている。したがって、前記のように原動ボックス94に原動モータ20が取り付けられた状態では、その出力軸22は、原動ボックス94内で前記幅方向に延在すると共に、駆動伝達軸82と平行を成すように存在している。その上で、その出力軸22は、原動ボックス94内において、駆動伝達軸82の他端部側の部分に対し原動歯車列92を介して連結されている。
【0033】
その原動歯車列92は、駆動軸30と駆動伝達軸82とを連結する歯車列84と同じく、2つの歯車で構成されている。具体的には、原動歯車列92は、原動モータ20の出力軸22に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車92aと、その駆動歯車92aに噛合する従動歯車92bであって駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車92bとで構成されている。
【0034】
さらに、原動機構90は、織機1における開口装置120が連結される開口軸96、及び駆動伝達軸82と開口軸96とを連結する開口歯車列98を備えている。なお、開口軸96は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が原動ボックス94の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。そして、開口軸96は、駆動伝達軸82に対し下方に離間した位置において、駆動伝達軸82と平行を成す向きで原動ボックス94の両側壁94a、94bに対し軸受を介して支持されている。但し、その開口軸96は、その一端部が原動ボックス94の一方の側壁94aから突出するように設けられている。そして、開口軸96は、その突出した一端部において開口装置120と連結されている。
【0035】
その上で、開口軸96は、原動ボックス94内において、駆動伝達軸82に対し開口歯車列98を介して連結されている。なお、その開口歯車列98は、原動歯車列92と同じく2つの歯車で構成されている。具体的には、開口歯車列98は、駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車98aと、その駆動歯車98aに噛合する従動歯車98bであって開口軸96に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車98bとで構成されている。
【0036】
また、ブレーキ装置110は、電磁ブレーキであり、駆動伝達軸82に対し直接的に制動を掛けるように設けられている。そして、本実施例では、ブレーキ装置110は、駆動側フレーム12の内側壁12bよりも前記幅方向における内側の位置に設けられている。なお、そのブレーキ装置110は、筐体状の本体ケース110aを主体として構成されており、その本体ケース110aにおいて駆動側フレーム12の内側壁12bに対し取り付けられている。さらに、そのブレーキ装置110は、本体ケース110a内に収容された制動部材110b及び被制動部材110cを備えており、その被制動部材110cが駆動伝達軸82の一端部(内側壁12bから突出する端部)に対し直接的に取り付けられるような配置で設けられている。
【0037】
因みに、その被制動部材110cは、円盤状の部材であり、中央のボス部に形成された貫通孔に駆動伝達軸82が挿通された状態で、駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられる。また、制動部材110bは、バネ部材等の付勢部材(図示略)により、被制動部材110cが取り付けられる駆動伝達軸82の軸線方向に付勢されている。そして、ブレーキ装置110は、内蔵された励磁コイル(図示略)が励磁状態(又は非励磁状態)とされることで、制動部材110cを付勢部材による付勢力に抗して被制動部材110cの側へ変位させるように構成されている。したがって、ブレーキ装置110は、被制動部材110cに対し制動部材110cを押接した状態とすることで、駆動伝達軸82に対し制動を掛ける、延いては、駆動伝達軸82に連結された駆動軸30、原動モータ20、開口装置120に対して制動を掛けるものとなっている。
【0038】
また、図示の例では、フレーム本体14は、その外壁部14aにおける貫通孔14dの周囲において外壁部14aから原動ボックス94の側へ向けて突出するように形成された突出部14eを有している。一方、原動ボックス94も、その他方の側壁94bにおける貫通孔94dの周囲において他方の側壁94bから駆動側フレーム12の側へ向けて突出するように形成された突出部94eを有している。そして、フレーム本体14及び原動ボックス94は、その両突出部14e、94eが互いに嵌まり合うかたちで連結されている。なお、その突出部14e、94e内の空間において、突出部14e、94eの内周面と駆動伝達軸82との間には、オイルシール100が設けられている。
【0039】
以上のように構成された本実施例の織機1によれば、織機1(主軸5)の制動時において、ブレーキ装置110によって駆動伝達軸82に対し直接的に制動が掛けられるため、駆動伝達軸82と駆動軸30とを連結する伝達機構84に掛かる負荷が従来の装置と比べて小さいものとなる。
【0040】
より詳しくは、ブレーキ装置110が作動すると、ブレーキ装置110による制動力が駆動伝達軸82に対し直接的に作用し、駆動伝達軸82に対し制動が掛けられる。そして、駆動伝達軸82に制動が掛けられると、駆動伝達軸82に連結された駆動軸30に制動が掛けられると共に、原動モータ20及び開口装置120にも制動が掛けられる。さらに、駆動軸30の制動は、その駆動軸30に連結された主軸5及び筬打ち装置40の制動を伴うかたちで行われる。なお、駆動軸30(主軸5、筬打ち装置40)の制動は、前記のように駆動伝達軸82と駆動軸30とが伝達機構84(駆動歯車84a、従動歯車84b)を介して連結されていることから、駆動伝達軸82に取り付けられた駆動歯車84aが駆動軸30に取り付けられた従動歯車84bに制動力を作用させることで為される。
【0041】
その上で、駆動伝達軸82に制動が掛けられると、それに伴って制動が掛けられる原動モータ20及び開口装置120の慣性により、その慣性力が駆動伝達軸82に作用する。それに伴い、駆動歯車84aが従動歯車84bに作用させる制動力は、その慣性力の作用により、ブレーキ装置110による制動力をその慣性力分だけ弱めた大きさの力となる。すなわち、制動時、伝達機構84においては、そのような大きさの制動力を駆動歯車84aが従動歯車84bに作用させることとなる。一方で、駆動軸30に制動が掛けられると、主軸5及び筬打ち装置40による慣性力が駆動軸30に作用する。そして、その慣性力は、伝達機構84においては、制動力に抗する力として従動歯車84bを介して駆動歯車84aに作用する。
【0042】
このように、駆動伝達軸82と駆動軸30とが伝達機構84のような歯車列で連結されている場合においては、制動時には、制動側の歯車(駆動歯車84a)が被制動側の歯車(従動歯車84b)に制動力を作用させると共に、制動側の歯車が被制動側の歯車から制動力に抗する力を受ける。そして、そのように作用するそれらの力が大きいほど、伝達機構84に掛かる負荷が大きくなる。なお、織機においては、一般的には、制動に伴って駆動伝達軸82に作用する慣性力(原動モータ20及び開口装置120による慣性力)の方が、駆動軸30に作用する慣性力(主軸5及び開口装置120による慣性力)よりも大きい。それにより、制動時に作用する慣性力が大きい駆動伝達軸82に直接的に制動を掛けるような織機の構成とすれば、前記した制動力及び制動力に抗する力の両方が、従来の装置の場合と比べて小さな力となる。したがって、伝達機構84に掛かる負荷が従来の装置と比べて小さくなるため、その結果として、伝達機構84の破損が可及的に防止される。
【0043】
以上では、本発明が適用された織機の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0044】
(1)ブレーキ装置の駆動伝達軸に対する連結位置について、前記実施例では、その連結位置は、駆動側フレーム12に対する前記幅方向における内側となっている。しかし、本発明においては、その連結位置は、駆動側フレームに対する前記内側に限らず、外側であっても良い。そして、その場合には、そのブレーキ装置を、駆動側フレームの外側壁に取り付けるか、あるいは原動ボックスの側壁に取り付けるかたちで設けるようにすれば良い。
【0045】
(2)駆動軸と駆動伝達軸とを連結する伝達機構について、その伝達機構は、前記実施例のような駆動側フレーム12内に収容される駆動歯車84a及び従動歯車84bの2つの歯車から成る歯車列には限らない。例えば、その伝達機構は、同じく歯車列で構成されたものであっても、3以上の歯車から成る歯車列であっても良い。また、その伝達機構は、歯車列で構成されたものに限らず、駆動軸に取り付けられたプーリと駆動伝達軸に取り付けられたプーリとをタイミングベルトで連結するように構成されたものでも良い。
【0046】
また、原動モータ及び開口装置が駆動伝達軸と連結される構成についても、前記実施例のような2つの歯車から成る歯車列には限らず、前記した伝達機構の場合と同じく、3以上の歯車から成る歯車列であっても良いし、プーリ及びタイミングベルトで連結するような構成としても良い。さらに、そのように駆動伝達軸に対し原動モータ及び開口装置が連結される構成において、原動モータ及び開口装置のうちの一方が、カップリング部材等を介して駆動伝達軸と連結されるような構成としても良い。
【0047】
(3)駆動軸と駆動伝達軸とを伝達機構で連結する位置について、その連結位置は、前記実施例では、前記幅方向に関し、駆動軸30の偏心部32に対する駆動側フレーム12の内側壁12bの側となっている。しかし、その連結位置は、前記幅方向に関し、駆動軸30の偏心部32に対する駆動側フレーム12の外側壁12aの側であっても良い。
【0048】
(4)揺動機構について、前記実施例は、揺動機構60としてクランク機構が採用された織機に対して本発明を適用した例である。そして、前記実施例では、揺動機構60における揺動アーム62が揺動軸50と一体的に形成されたものとなっている。しかし、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構であっても、揺動アームと揺動軸とが別部材として形成された上で、両者が相対回転不能に連結されるように構成されたものであっても良い。また、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構に限らず、カム機構であっても良い。そして、その場合には、カムが取り付けられる軸が、本発明で言う駆動軸となる。
【0049】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 織機
5 主軸
10 フレーム
12 駆動側フレーム(サイドフレーム)
12a 駆動側フレームの外側壁
12b 駆動側フレームの内側壁
14 フレーム本体
14a フレーム本体の外壁部
14b フレーム本体の内壁部
14c 開放部
14d 貫通孔
14e 突出部
16 フレームカバ
20 原動モータ
22 出力軸
30 駆動軸
32 偏心部
40 筬打機構
42 筬
44 ロッキング軸
50 揺動軸
60 揺動機構
62 揺動アーム
64 連結レバ
70 カップリング部材
72 カップリング部材
80 駆動伝達機構
82 駆動伝達軸
84 伝達機構
84a 駆動歯車
84b 従動歯車
90 原動機構
92 原動歯車列
92a 駆動歯車
92b 従動歯車
94 原動ボックス
94a 一方の側壁
94a1 外側面
94b 他方の側壁
94c 貫通孔
94d 貫通孔
94e 突出部
96 開口軸
98 開口歯車列
98a 駆動歯車
98b 従動歯車
100 オイルシール
110 ブレーキ装置
110a 本体ケース
110b 制動部材
110c 被制動部材
120 開口装置
図1
図2