IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7384761製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法
<>
  • -製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法 図1
  • -製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法 図2A
  • -製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法 図2B
  • -製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法 図3
  • -製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】製造工程で被覆する二軸配向ポリエチレン薄膜とその製法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20231114BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231114BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231114BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231114BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20231114BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20231114BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231114BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231114BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/32 Z
B32B27/20 Z
B32B27/18 Z
B05D3/12 C
B05D7/24 302T
B05D7/24 301E
B05D7/00 A
B05D7/04
B05D3/00 F
B05D7/24 303B
B05D7/24 303A
B29C55/14
B29C55/16
C09D175/04
C09D7/61
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122541
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021017060
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】10 2019 119 600.0
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー・リンデマン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・バース
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・ケルバー
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522757(JP,A)
【文献】特表2017-538004(JP,A)
【文献】特開平08-120205(JP,A)
【文献】特開2006-150981(JP,A)
【文献】特表2020-535037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
B29C 55/14-55/30、 61/00- 61/10
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層(A)~層(D)の順序で配置され、層(B)~層(D)は、二軸配向ポリエチレンを含む4層(A)~層(D)を備えるポリエチレン薄膜において、
層(A)は、ポリウレタンとナノ粒子とを含み、層厚25nm~300nmを有し、
層(B)は、ポリウレタンと共有結合を形成する官能基を備える重合体を含みかつ層(A)に直接接続され、
層(C)は、全薄膜厚の少なくとも50%の層厚を有し、
層(D)は、薄膜の外側層となり、粘着防止剤を含むことを特徴とするポリエチレン薄膜。
【請求項2】
層(B)~層(D)の各々は、全層質量に対して、少なくとも70重量%ポリエチレンを含む請求項1に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項3】
層(A)の層厚範囲は、50nm~250nmである請求項1又は2に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項4】
層(A)は、非晶質二酸化ケイ素で構成されるナノ粒子を有する請求項1~3の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項5】
層(A)は、平均粒径範囲20nm~150nmのナノ粒子を有する請求項1~4の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項6】
層(A)は、0.5重量%~20重量%のナノ粒子を含有する請求項1~5の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項7】
層(B)は、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含む請求項1~6の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項8】
層(B)は、粘着防止剤を含有しない請求項1~7の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項9】
層(A)の表面に直接接続される金属層又は金属酸化物層を有する請求項1~8の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項10】
層(A)の表面に直接接続される酸化アルミニウム層又は二酸化ケイ素層を有する請求項1~9の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜を備えることを特徴とする食料品包装品。
【請求項12】
ポリウレタンと共有結合を形成する官能基を備える重合体を含む層(B)と、全薄膜厚の少なくとも50%の層厚を有する層(C)と、粘着防止剤を含む層(D)とを備え、層(B)~層(D)の各々が、ポリエチレンを含む薄膜を準備する工程と、
層(B)と層(D)を薄膜の外側層として、ポリウレタンとナノ粒子を含有する流体分散系塗料を薄膜の層(B)上に塗布する工程と、
流体分散系塗料を乾燥させて、層厚25nm~300nmの層(A)を薄膜の層(B)上に形成する工程と、
薄膜の層(B)上に乾燥した層(A)が形成される薄膜を縦方向に一軸延伸する工程と、
一軸延伸した薄膜を横方向に延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程とを含むことを特徴とするポリエチレン薄膜の製法。
【請求項13】
ポリウレタンと共有結合を形成する官能基を備える重合体を含む層(B)と、全薄膜厚の少なくとも50%の層厚を有する層(C)と、粘着防止剤を含む層(D)を備え、層(B)~層(D)の各々が、ポリエチレンを含む薄膜を準備する工程と、
非配向状態の層(B)と層(D)を薄膜の外側層として、ポリウレタンとナノ粒子とを含有する流体分散系塗料を層(B)上に塗布する工程と、
流体分散系塗料を加熱により乾燥させて、層厚25nm~300nmの層(A)を薄膜の層(B)上に形成する工程と、
縦方向と横方向とに同時に薄膜を延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程とを含むことを特徴とするポリエチレン薄膜の製法。
【請求項14】
流体分散系塗料を塗布する工程前に、コロナ処理の表面処理を層(B)の表面に施す工程を含む請求項12又は13に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【請求項15】
製造工程でのリバースグラビアキス被覆法により、層(B)上に流体分散系塗料を塗布する工程を含む請求項12~14の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【請求項16】
流体分散系塗料により層(B)上に形成される湿式層の質量は、3g/m2~20g/m2である請求項12~15の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【請求項17】
流体分散系塗料は、水溶性分散系である請求項12~16の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【請求項18】
縦方向延伸比範囲は、2~8である請求項12~17の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【請求項19】
横方向延伸比範囲は、4~10である請求項12~18の何れか1項に記載のポリエチレン薄膜の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層(A)~層(D)を備える二軸配向ポリエチレン(BOPE)薄膜(フィルムシート)に関連し、層(B)~層(D)は、二軸配向ポリエチレンを含み、層(A)は、ポリウレタンとナノ粒子とを含み、層厚25nm~300nmを有し、層(B)は、ポリウレタンと複数の共有結合を形成する複数の官能基を備える複数の重合体を含みかつ層(A)に直接連結され、層(C)は、全薄膜厚の少なくとも50%の層厚を有し、層(D)は、薄膜の外側層となりかつ粘着防止剤を含有する。本発明は、この種の薄膜の製法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエチレン(BOPE、二軸延伸ポリエチレンとも称する)を含み又はこれからなる複数の樹脂(プラスチック)薄膜は、公知であるが、この樹脂薄膜は、現在までまれにしか採用されてこなかった。従来の複数のポリエチレン薄膜は、通常、ブロー成形法、流涎法、縦方向(MD)延伸法で製造される。前記の製造方法では、良好な光学特性と良好な引張強度を有するポリエチレン薄膜を製造でき、コロナ放電表面処理後に、他のポリエチレン薄膜よりも良好に印刷することができる。特に、二軸配向ポリエチレン薄膜は、複数の食料品の費用対効果効率の良い複数の包装材料として採用されている。複数の機械特性、透明性及び複数の物質不透過性(バリア性又は透過阻止性)等の特性は、複数のポリエチレン薄膜の使用時の重要な特性となることが多い。空気及び/又は水の影響を受けやすい複数の製品、例えば、食料品、医薬品等の包装では、特に、酸素及び水に対する良好な不透過特性がこの種薄膜の重要な利点となる。良好な不透過特性により、空気及び/又は水の影響を受け易い包装品をより長期間保存することができる。この利点は、特に食料品に応用される。しかしながら、二軸配向ポリエチレン薄膜の酸素不透過特性は、通常不充分である。厚さ20μm薄膜の酸素透過率(OTR、oxygen transmission ratio)は、通常約2000cm3/m2~5000cm3/m2×日である。金属化二軸配向ポリエチレン薄膜の酸素透過率値でも200cm3/m2~300cm3/m2×日であり、この値は、多くの応用例に不十分である。芳香喪失に対する保護、悪臭物質の漏洩防止及び大気中の酸素及び/又は湿度に対する保護、食料品からの水分漏出又は喪失に対する保護は、殆どの場合、多くの食料品の包装用樹脂薄膜による品質保証の一部である。この種の不透過特性を備える薄膜は、防護薄膜又は隔膜薄膜とも称する。例えば、不透過特性を向上する複数の一軸配向ポリエチレン(MOPE)又は二軸配向ポリエチレン薄膜等の複数の被覆層の使用、特に、複数の金属及び複数の金属酸化物又はポリエチレン以外の複数の重合体での被覆等、非常に種々の手段を適用して不透過特性の改良が図られている。
【0003】
前記性能特性以外に、安価で有効な効率の良い製造法を適用できる複数の特定の特性が必要な薄膜もある。特に、金属化等により密閉性被覆を形成するのに十分に平滑な表面を要する一方、他方で、十分な表面粗度で複数のロール処理等に対して十分な摩擦力を生じる複数の表面特性を備える必要がある。この背反特性を備えない限り、効率的な複数の生産工程を通じて、通常の高速加工速度で複数の薄膜を製造することは困難である。適切な表面張力(表面エネルギ)を生ずる複数の特定の特性を備える薄膜表面は、複数の薄膜印刷適性を確保しなければならない。
【0004】
優れた物質不透過特性を備える複数の高強度薄膜は、特許文献1に開示される。有利な不透過特性と表面特性は、同時押出される補助的なポリアミド含有層に依拠する。尤も、特許文献1の薄膜は、製造時にポリアミドを多量に投入するため、材料価格が高く比較的高価になる難点がある。また、金属層又は金属酸化物層を塗布する際に、特にポリアミド層の表面特性を改質し処理可能性を改善して、金属層又は金属酸化物層を良好に付着する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許第10 2005 020 913(B3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、有利な物質不透過特性、特に、酸素と水蒸気に対する良好な不透過特性を備える薄膜を提供することにある。本発明の他の目的は、容易にかつ安価に製造できる二軸配向ポリエチレン薄膜を提供することにある。得られる薄膜は、好適な複数の表面特性を備えるべきである。この薄膜は、特に迅速な表面処理に適するものである。また、本発明の目的は、金属層又は金属酸化物層の付着性を改良できる薄膜を提供することにある。安価で、効率的に二軸配向ポリエチレン薄膜を製造できる点で好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象物は、層(A)~層(D)の順序で配置される(図1及び図2B)4層(A)~層(D)を備えるポリエチレン薄膜であり、層(B)~層(D)は、二軸配向ポリエチレンを含み、層(A)は、ポリウレタンとナノ粒子とを含み、層厚25~300nmを有し、層(B)は、ポリウレタンと共有結合を形成する複数の官能基を備える複数の重合体を含みかつ層(A)に直接接続され、層(C)は、全薄膜厚の少なくとも50%の層厚を有し、薄膜の外側層となる層(D)は、粘着防止剤を含む。
【0008】
本発明の二軸配向ポリエチレン薄膜は、機械的特性に優れ、改良された不透過特性と表面特性とを備える。特に、本発明の薄膜は、層(A)上に塗布される金属層又は金属酸化物層に非常に強固に結合する。本明細書に使用する用語「金属層」は、(別途説明しない限り又は関連性から他の意味が明瞭でない限り)常に金属酸化物層を含むものとする。
【0009】
図2Aは、中央の支持層と、支持層の両面に固着した外側層(表面薄層)とを設けた従来の二軸配向ポリエチレン薄膜の断面を示し、図2Bは、本発明の薄膜の断面を示す。図2Aの従来の薄膜の中央の支持層は、薄膜全体に対して機械的特性と不透過特性を付与する主要層又は中間層である。両外側層は、何れも通常支持層に類似する材料で構成され、補助的に粘着防止剤を含む。粘着防止剤は、薄膜の表面に対してより大きな表面粗度を形成する作用があるので、薄膜の巻取時に、表面粗度により表面と裏面との強力な接着を防止して、裏面を接着する表面から剥離して、薄膜を容易に連続的に繰り出すことができる。固体粒子の表面粗度は、通常、0.001mm程度、好適な表面粗度範囲は、1μm~10μm、特に好適な表面粗度範囲は、1.5μm~5μmである。通常外側層にのみ粘着防止剤を配合して、支持層の特性への悪影響を防止することができる。
【0010】
図2Bに示す本発明の薄膜内の層(C)は、従来の薄膜の支持層に相当し、層(D)は、従来の薄膜の外側底層に相当する。層(A)と層(B)は、従来の外側頂層と置換される。本発明のポリエチレン薄膜の物質不透過特性は、層(A)の材料(ポリウレタン)により改善される。ポリウレタン表面は、極めて平滑(極めて微細な表面粗度)であり、表面張力は、明白に大きい。ポリウレタン表面に更に金属層を塗布すると、層(A)のポリウレタン表面に、金属層が、極めて強固に付着するため、不透過特性を更に向上できる。層(B)も層(A)に対し強固に付着する。また、層(A)の印刷適性も傑出する。従って、層(A)は、金属化と印刷用の下塗剤になる。このため、金属層又は金属酸化物層のない薄膜では、層(A)は、薄膜の外側層になる。
【0011】
ナノ粒子(ナノメーター級粒径の粒子物質)は、十分な表面平滑性と、十分な表面粗度を層(A)に与える。粘着防止粒子のナノ粒子への置換により、この種の金属層の不透過特性を改善できることは驚愕に値する。改善できる理由は、第1に、従来の薄膜(薄膜表面に表出する層内の粘着防止剤を含む)より微小な表面粗度による。従って、均質な被覆を形成することができる。第2に、軸巻状に捲回される金属化薄膜の不透過特性も改善される。業務用薄膜は、軸巻状で貯蔵され、後処理に利用される。巻取時に、薄膜の表面と裏面は互いに接触する。一面を金属層で被覆する薄膜の他面は、金属層に接触する。図2Aに示す従来の二軸配向ポリエチレン薄膜の金属層は、軸巻状態では双方側で粘着防止剤に直接接触する。粘着防止剤の大きな粒子が直接対向する薄膜の両面で、大型粒子は、高圧力で薄膜に対し押圧されるため、複数の孔(例えば、複数の針孔、ピンホール)、金属層に複数の亀裂、欠損を生じて、不透過特性が劣化する可能性がある。本発明の薄膜の粘着防止剤の粒子は、微細なナノ粒子である。微小ナノ粒子により、部分的に押圧する圧力が低下し、金属層中の欠損数、特に孔数が低減する。この利点は、層(D)が粘着防止剤を含まないときにも得られる。この場合も、微小なナノ粒子により、従来の粘着防止剤よりも少ない数の欠損が金属被覆層又は金属酸化物被覆層に発生するため、不透過特性は、毀損されずむしろ改善される。
【0012】
ポリウレタン表面の高平滑性、高表面張力及びポリウレタン材料自体の特性により、ロール上の巻取時に、表面と裏面は、通常強固に付着するので、ロールからポリウレタン薄膜を通常の高処理速度で引出すとき、薄膜上に強い付着力が作用して、ポリウレタン薄膜の移動速度に不規則性を生ずることがある。これにより、ポリウレタン薄膜の障壁層に損傷を生ずることがあるが、層(A)内に含まれるナノ粒子により、薄膜の表面と裏面との間に空気層が形成されるので、支障なく、高速でロールから薄膜を繰出すことができる。
【0013】
本発明のポリエチレン薄膜の層(B)~層(D)中に、任意の種類のポリエチレンを基本的に使用することができる。ポリエチレン薄膜の材料と形成される薄膜の特性は、処理性及び/又は生成する薄膜の特性に好適な影響を与える添加剤をポリエチレンに配合して、更に特性を改善することができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE、low density polyethylene)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE、linear low density polyethylene)、中密度ポリエチレン(MDPE、medium density polyethylene)及び高密度ポリエチレン(HDPE、high density polyethylene)からなる群からポリエチレンを選択することができる。ポリエチレンの特性情報は、2005年に発行された「ドミニングハウス;樹脂、特性と応用」と称する標準的参考文献第6版に記載される。また、エチレン以外の不飽和オレフィンを単量体として含むポリエチレン重合体、例えばプロピレン等を使用することもできる。
【0014】
本発明の薄膜とその製法に重要なポリエチレン特性は、ポリエチレンの平均モル質量(平均分子量又は数平均モル質量)、モル質量分布、密度及びポリエチレンの側鎖の種類と頻度に影響される。
【0015】
同一密度の他種類のポリエチレンと比べて、剛性が高く、引張強度の高い線状低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。また、靭性(例えば、耐破壊性や落槍衝撃強度等)の高い線状低密度ポリエチレンは、薄膜押出成形時に、軟弱接触による引裂きは非常に稀であり又は全く発生せず、密閉性に優れる。また、線状低密度ポリエチレンは、最小厚さ約5μm以下の薄膜を引出成形できる上、耐応力亀裂性が高く、形成される薄膜は、光学特性に優れ、特に濁り(Haze)が比較的低く、光沢度(Gloss)が高い利点がある。
【0016】
分子量分布範囲の狭い又は広いポリエチレンも使用できる点で、採用する全種類のポリエチレンが該当する。また、単相、二相又は三相分布曲線を有するポリエチエンも使用できる。代表的で好適な線状低密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)値は、50,000g/mol~150,000g/molである。特に好適に採用できる線状低密度ポリエチレン重量平均分子量(Mw)は、69,000g/mol~100,000g/molである。
【0017】
採用する線状低密度ポリエチレン密度は、0.90g/cm3~0.95g/cm3、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3である。採用する低密度ポリエチレン密度は、0.916g/cm3~0.925g/cm3である。好ましい中密度ポリエチレン密度範囲は、0.926g/cm3から0.940g/cm3であり、好ましい高密度ポリエチレン密度範囲は、0.941g/cm3から0.965g/cm3である。採用するポリエチレン結晶化度の好適な範囲は、示差走査熱量測定法(DSC)で測定する30%~70%、特に好適には35%~60%である。この結晶化度特性は、特に線状低密度ポリエチレンに該当する。
【0018】
エチレンの他に、共重合用単量体として種々の量のα-オレフィンが線状低密度ポリエチレンに含まれる。本発明では、線状低密度ポリエチレンの全質量に対して、20重量%以下、好適には15重量%以下、最適には10重量%以下のα-オレフィン単量体を含有する線状低密度ポリエチレンを採用することが好ましい。従って、採用するポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンの全質量に対して、少なくとも80重量%、特に好適には少なくとも85重量%、最適には少なくとも90重量%のエチレン単量体を含有することが好ましい。全種類のα-オレフィンを原則として共重合用単量体として採用できるが、直鎖状側鎖を有するα-オレフィンが好ましい。通常、偶数炭素数の側鎖を有するα-オレフィンである。これらは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン及び1-ドデセンからなる群から選択される直鎖状オレフィンでよい。1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群から選択される直鎖状オレフィンが好ましいが、最適には、1-ヘキセン及び1-オクテンである。
【0019】
線状低密度ポリエチレンの全質量に対して、少なくとも80重量%のエチレン単量体と、20重量%以下のα-オレフィン単量体とを含む線状低密度ポリエチレンが適切であり、α-オレフィン単量体は、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン及び1-ドデセンからなる群から選択され、線状低密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、50,000g/mol~150,000g/molであり、密度は、0.90g/cm3~0.95g/cm3であり、結晶化度が30%~70%である。特に適切な線状低密度ポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンの全質量に対して、少なくとも85重量%エチレン単量体と、15重量%以下のα-オレフィン単量体を含有し、α-オレフィン単量体は、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群から選択され、線状低密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、69,000g/mol~100,000g/mol、密度は、0.90g/cm3~0.95g/cm3、結晶化度は、30%~70%である。最適な線状低密度ポリエチレンは、全質量に対して、少なくとも90重量%エチレン単量体と、10重量%以下のα-オレフィン単量体を含有し、α-オレフィン系単量体は、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され、重量平均分子量(Mw)は、69,000g/mol~100,000g/mol、密度は、0.91g/cm3~0.94g/cm3、結晶化度は、35%~60%である。
【0020】
別途言及しない限り、層(B)~層(D)は、各層の全質量に対して、少なくともポリエチレン35重量%、特に好適には少なくともポリエチレン50重量%、より特に好適には少なくとも70重量%ポリエチレン、最適には少なくともポリエチレン90重量%を含有することが好適である。しかし、層(B)~層(D)は、層又は層製造用の材料を全体として配向できる限り、ポリエチレン以外の重合体を含んでもよい。
【0021】
本発明の薄膜の層(B)~層(D)は、二軸配向ポリエチレン薄膜を形成する。縦方向は、薄膜の縦方向(機械方向、MD)である。横方向は、縦方向に対し直角(垂直)方向(TD)である。厚さは、第3の次元である。二軸配向ポリエチレン薄膜は、ブロー成形される薄膜より良好な機械特性と良好な不透過特性を有する。
【0022】
本発明の薄膜厚範囲は、通常3μm~50μm、好適には5μm~40μm、特に好適には10μm~30μmである。薄い薄膜の方が、安価で有効であり、軽量である。薄すぎる厚さでは、機械特性と、処理可能性が不十分となる。逆に、厚すぎると、同様に製造時の処理可能性と、更なる処理は不十分になる。
【0023】
層(A)
本発明の薄膜は、ポリウレタン層の層(A)を含むことを特徴とする。ポリウレタン層(A)は、全薄膜の酸素不透過特性と水蒸気不透過特性とを明らかに改善する強い拡散抑制作用を有する。また、層(A)により、特に金属及び金属酸化物を備える本発明の薄膜の耐久性のある被覆が可能になる。
【0024】
層(A)に正確に設定され形成される有効な表面粗度は、極めて平滑な表面を層(A)に形成する層(A)内のナノ粒子に依存する。層(A)の極度に平坦な表面により、アルミニウム等の金属又は酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素等の金属酸化物が強固に付着する被覆を形成できる。微細寸法のナノ粒子は、金属層又は金属酸化物層(M)と層(A)との間の強力な結合を妨げない。また、ナノ粒子は、粘着防止(遮断)剤に比べて金属層又は金属酸化物層内で欠損を生ずる可能性が小さい。更に、層(A)表面のナノ粒子は、製造工程中の薄膜が複数のローラを通じて有効に搬送されかつローラ上への巻取と繰出しが可能な摩擦を発生するのに十分な表面粗度を付与する。その上、層(B)上に塗布され付着される金属又は金属酸化物の被覆層(M)を形成する層(A)は、ポリエチレン薄膜の層(B)よりも明らかに表面張力が非常に高くかつ非常に均一に分布する物理的性質でも同様に、平滑性が改善される。特に、層(A)の表面上へのアルミニウムで構成される金属層(M)は、この点に該当する。蒸着するアルミニウム原子の侵入深さは、(層(A)のない)非被覆薄膜の場合の侵入深さに比較して、格段に深い。
【0025】
製造工程、特に延伸工程後に実施する表面処理(例えば、コロナ処理、プラズマ処理又は火炎処理)は、もはや必須ではない。表面処理は、通常ポリエチレン外側層を有する二軸配向ポリエチレン薄膜に、金属被覆又は金属酸化物被覆を成形するのに必須である。表面処理により、ポリエチレンの共有結合表面に複数の官能基が発生して、表面張力が強化されて、付着力は改善される。薄膜の延伸工程と巻上工程との間で、表面処理が通常行われる。表面張力の効果は、特定の時間後には弱まり、その後、必要な場合には、後処理前に改めて表面処理を行う必要がある。即ち、数週間の貯蔵後には、表面張力は、閾値未満に低下するため、改めて表面処理を行う必要がある。通常の後続の表面処理(例えば、コロナ処理、プラズマ処理又は火炎処理でもよい)と比較すると、製造工程でのポリウレタン上の被覆は、永続的に表面張力を高めるのに役立ち、本発明の薄膜では、再度の表面処理は不要なため、必須ではない。薄膜を長期間貯蔵できる点は、本発明の薄膜の重要な商業的利点である。この点は、工程技術的に非常に優れているのみならず、時間節約にもなる。
【0026】
層(A)の層厚範囲は、25nm~300nm、好適には、50nm~250nm、特に好適には50nm~150nmである。また、本発明の薄膜の厚さに対する層(A)の層厚範囲は、0.1%~5%、好適には0.2%~3%、特に好適には0.5%~1%である。ポリエチレンに比較して高価なポリウレタンの層厚を薄くすると、安価になる。尤も、ポリウレタンの層厚が25nmに満たないと、薄膜上に均一な層(A)の形成が困難になると同時に、不透過特性が層(A)から徐々に失われる。逆に、300nmを超えて層(A)が厚くなると、不透過特性はより良好になるが、製造価格が上昇し、製造工程での被覆法によりもはや塗布不能(後述)となり、価格が不当に高騰する難点がある。
【0027】
被覆用ポリウレタン材料としては、市販のポリウレタン分散系樹脂剤が適する。特に、ポリウレタン30%を含有する三井ケミカル(Mitsui Chemicals)社製の水溶性分散系樹脂剤、タケラック(Takelac)WPB 341が適する。基本的に、層(A)を塗布する他の方法では、薄くかつ非常に均等な厚さを形成できる点及び平滑面を形成できる点等の利点を失い、製造工程での被覆による適切な層も形成できないこともある。単純な前記製法は、本発明の本質的な利点である(後述)。
【0028】
層(A)のナノ粒子は、好適には非晶質二酸化ケイ素のナノ粒子を含有する。特に好適には、ナノ粒子は、コロイダルシリカナノ粒子を含有するが、これ以外のナノ粒子も適する。好適にはコロイド形態の分散系粒子が採用される。乾式形態でポリウレタンに添加するナノ粒子は、コロイド状分散系粒子よりも凝集-沈殿傾向がある。これは望ましくない。好適には、球面粒子が用いられる。レーザ回折粒径分析により決定される層(A)のナノ粒子の平均粒径は、好適には、層(A)の厚さより20%を超えて大きくなく、特に好適には10%を超えて大きくなく、最適には層(A)の厚さよりも決して大きくない。例えば、粘着防止粒子等のより大きな粒子は、層からの突出量が大き過ぎて、塗布する金属層又は金属酸化物層(M)内に、欠損、特に孔(ピンホール)を形成して、不透過特性に悪影響を与える場合がある。層(A)内のナノ粒子の平均粒径範囲は、好適には、20nm~300nm、特に好適には20nm~150nm、より好適には50nm~150nm、最適には80nm~150nmである。20nmに満たないナノ粒子では、薄膜は過度に平滑となり、摩擦効果が失われる難点がある。300nmを超える大きいナノ粒子は、層(A)の上方に突出して、金属被覆又は金属酸化物被覆を損傷し、水及び空気に対する薄膜の不透過性を喪失する難点を生ずる場合がある。
【0029】
層(A)内のナノ粒子のBET(ブルナウアーエメットテラー)法理論による好適な比表面積範囲は、10m2/g~500m2/g、特に好適には10m2/g~150m2/g、より好適には10m2/g~100m2/g、最適範囲は20m2/g~70m2/gである。前記範囲のナノ粒子は、ポリウレタンに良好に結合する。ナノ粒子は、アクゾノーベル(Akzonobel)社製水中コロイド状二酸化シリコン分散系塗料商品名Levasil(登録商標)30/50型水分散系コロイドシリカが特に好適である。
【0030】
層(A)中のナノ粒子含有範囲量は、好適には0.5重量%~30重量%、特に好適には0.5重量%~20重量%、より好適には1重量%~10重量%、最適には2重量%~7重量%である。ナノ粒子の含有量により、表面粗度を調製して、金属層又は金属酸化物層(M)を層(A)上に特に良好に付着し、ロールへの薄膜の巻上げとロールからの繰出しを高速処理速度で容易に行うことができる。
【0031】
層(B)
ポリウレタンと共有結合を形成する官能基を有する重合体を含む層(B)(接着層)により、ポリウレタン層(A)薄膜への結合力を改善することができる。好適な重合体は、ポリエチレンである。他の重合体を使用する層(B)は、別途ポリエチレンを配合しなければならない。層(B)は、層(B)の全質量に対し、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、最適には少なくとも90重量%ポリエチレンを含有する。層(B)内のポリエチレンの官能基は、接着剤となる。層(B)の官能基がなく又は不十分量のとき、層(A)は、層(B)から剥離し易く、多層の薄膜構造は、不安定になる。層(B)内のポリエチレンは、層(B)が含有する官能基を有する単一の重合体が好ましい。層(B)中にポリエチレンを配合すると、層(B)、層(C)及び層(D)の処理に類似の特性を生ずる。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン並びにそれらの共重合体及びブロック共重合体からなる群から選択される重合体であるが、前記の通り、ポリプロピレン(PP)とポリフェニレンエーテル(PPE)で構成される共重合体を採用できよう。これらの中で、線状低密度ポリエチレンが最も好ましい。
【0032】
層(B)への配合物として、ポリエチレン以外のポリオレフィンを採用できる。例えば、ポリエチレンの他にポリプロピレンを30重量%まで採用することもできる。また、種々の型のポリエチレンを採用できる。このように、線状低密度ポリエチレンに別型のポリエチレンを配合して、薄膜の処理性を向上できる。また、ポリエチレンの他に、層(A)の密着性を向上する重合体を採用することが好ましい。
【0033】
カルボン酸無水物基、エポキシド基、カルボン酸基及びカルボン酸エステル基からなる群から接着性の官能基を選択することが好適である。層(B)の重合体は、例えば、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステル基を含む種々の複数の官能基を含むこともできる。層(B)の重合体は、カルボン酸無水物基及びカルボン酸基からなる群から選択される官能基を含有することが特に好適である。層(B)の重合体は、特に好適には、カルボン酸無水物基、最適には、無水マレイン酸基を含有する。特に好適には、カルボン酸無水物基である。最適には、層(B)の重合体は、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含有する。好適には、層(B)は、無水マレイン酸基を含む。特に好適には、層(B)は、無水マレイン酸基で構成される。特に好適には、層(B)は、枝状接合型無水マレイン酸基を備えるポリエチレンであり、最適には、枝状接合型無水マレイン酸基を備えるポリエチレン単独重合体である。無水マレイン酸基は、層(A)と層(B)とを特に強力に接合する。また、官能基を備える好適な重合体は、エチレンアクリル酸(EAA)である。これ以外に更に重合体を含有しない層(B)も同様に好適である。多量の無水マレイン酸変性重合体は、特に層(A)と層(B)との結合に寄与する。枝状接合型無水マレイン酸基を備える重合体の枝状接合度の好適な範囲は、0.01%~1%、特に好適には0.1%~0.4%である。この点は、特に、ポリエチレン同種重合体に該当する。
【0034】
無水マレイン酸の共重合化可能な誘導体、例えば、2-ビニル-無水マレイン酸の共重合化でも、重合体、特にポリエチレンに無水マレイン酸基を導入できる。
【0035】
例えば、三井ケミカル社製商品名Admer(登録商標)で販売されるこの種変性ポリエチレンは公知である。温度230℃で1g~10g/10分(ASTM D 1238)、特に好適には1g~6g/10分を融解指数範囲とする無水マレイン酸変性エチレン同種重合体(ホモポリマー)又はエチレン共重合体(コポリマー)が本発明の目的に好適である。エチレン同種重合体又はエチレン共重合体の好適なビカット軟化点範囲は、60℃~110℃、特に好適には80℃~110℃(ASTM D 1525)である。また、同様に、エチレン同種重合体又はエチレン共重合体の好適な融点範囲は、80℃~125℃、特に好適には、100℃~125℃、最適に110℃~125℃である。枝状接合型無水マレイン酸基は、層(B)の表面上の極性を強化しかつポリウレタン層(A)の構成成分への化学結合を可能にする。
【0036】
無水マレイン酸変性ポリエチレンは、好ましくは直鎖状ポリエチレン(LLDPE)である。好ましい密度は、0.90g/ml~0.94g/mlである。商品名ADMER(登録商標)NF-408E、NF-377E及びAT2539E(ドイツ所在三井ケミカル有限会社で市販)の無水マレイン酸変性ポリエチレンが特に好ましい。無水マレイン酸変性ポリエチレンは、その特別な組成により、極めて高い光沢を有する。従って、層(B)の表面は、表面粗度が小さくかつ表面張力が高いため、層(A)を層(B)上に十分付着させる層(A)による被覆(特に、縦方向伸張後の被覆、後述)は、非常に良好である。
【0037】
層(B)での無水マレイン酸変性ポリエチレンの好適な含有量は、少なくとも50重量%、特に好適には少なくとも80重量%、より好適には少なくとも95重量%、最適には少なくとも100重量%である。
【0038】
層(B)が粘着防止剤を含有しない点も特に好適である。粘着防止剤は、層(B)の表面粗度を不当に増大して、ポリウレタン層の結合を劣化することがある。特に、この種の粘着防止剤は、極めて薄い層(A)の表面に突起を生じて、層(A)上に塗布される金属層又は金属酸化物層に欠損、特に孔を生じて、酸素及び/又は水蒸気に対する不透過特性を劣化する可能性がある。
【0039】
層(B)の通常の層厚範囲は、0.3μm~5μm、好適には0.3μm~3μm、特に好適には0.5μm~2μmである。層(B)の好適な最大層厚は、薄膜厚の25%、好適には最大15%である。本発明では、厚さ25μmの薄膜では、理想的な層(B)の厚さは、約1μm~約2μmである。
【0040】
層(C)
層(C)は、特に本発明の薄膜の機械的特性に決定的に重要な主層(基層又は支持層とも称する)である。層(C)の二軸配向性と層厚は、層(C)の不透過特性と光学特性に顕著に寄与する。
【0041】
層(C)の好適な層厚は、薄膜の層厚の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、特に好適には少なくとも80%である層(C)の好適な層厚範囲は、3μm~45μm、特に好適には5μm~28μm、最も好適には7μm~20μmである。膜厚25μmの本発明の薄膜の理想的な層(C)の層厚は、約22μmである。
【0042】
この種の薄膜は、当業者には公知である。好適な層(C)は、ポリエチレン同種重合体を含む。層(C)のポリエチレン含有量は、50重量%より多く、好適には80重量%より多く、特に好適には90重量%より多く、最適には、ポリエチレン同種重合体により層(C)が構成される。
【0043】
層(D)
層(A)を有する薄膜の底面に、有効な表面性質、特に十分な表面粗度を与える層(D)は、本発明の薄膜をロールで搬送し、ロールから高速で繰り出すのに役立つ。層(D)は、ポリエチレン薄膜の通常の「表面薄層」を形成する。好適な層(D)は、ポリエチレン同種重合体を含有するが、ポリエチレン共重合体も含有してもよい。
【0044】
層(D)中の粘着防止剤の含有量範囲は、通常1重量%~10重量%、好適には1重量%~7重量%、特に好適には1重量%~6重量%である。粘着防止剤が1重量%に満たないと、表面が平滑過ぎて、摩擦力が生じないため、薄膜を良好に処理できず、特に良好に巻上げと再繰出しが不能になる。粘着防止剤が10重量%を超えると、多数の粒子が薄膜の表面から突出して、薄膜の巻上げ時に、突出する多数の粒子は、薄膜の対向する金属被覆面に接触して、金属層(又は金属酸化物層)中に押し込まれ、欠損、特に孔を形成して、不透過特性劣化の原因となる。従って、可能な限り少量でしかも処理可能な量を投入すべきである。事前の試験から、各薄膜での適切な量を導出できる。公知の全粘着防止剤を採用できる。層(B)について説明した内容を、層(D)の厚さに準用する。
【0045】
本発明の薄膜では、層(C)と、層(B)及び(D)との間に付加層を設けてもよい。
【0046】
また、薄膜の使用目的に対し、例えば、微小気孔を形成する鉱物添加物若しくは有機添加物、充填剤、吸収剤、紫外線安定剤又は光安定剤、染料及び表面を覆う顔料からなる群から選択される種々の通常の添加物を全層に配合できる。
【0047】
片面に金属層又は金属酸化物層を設けるポリエチレン薄膜を食料品包装又は食料品包装として使用することもある。従って、層(A)の表面に直接形成する金属層又は金属酸化物層を有する本発明の薄膜を本発明の対象物とする。食料品包装用にそのまま本発明の薄膜を使用することができる。
【0048】
層(B)、層(C)及び層(D)の順序で配置されかつそれらのみを有する厚さ18μmの市販の二軸配向ポリエチレン薄膜の酸素透過性(酸素透過率、OTR)は、約2000cm3/m2~約4000cm3/m2×日である。標準的な金属化により、約200cm3/m2~約300cm3/m2×日に酸素透過性値を低減できる。この「基準薄膜」と比較して、本発明の金属化薄膜の酸素透過性値を、本発明の手段により、価格効率良く20cm3/m2~80cm3/m2×日に低減できる(表1、図3)。即ち、100nm厚さに過ぎない被覆部(層(A))を採用して、本発明の二軸配向ポリエチレン薄膜の酸素透過性を、現時点で利用可能な二軸配向ポリエチレン薄膜に比較して、約10倍も低減できる。
【0049】
同様の点は、水蒸気透過性(水蒸気透過率)にも該当する。18μm厚さで、層(B)、層(C)及び層(D)のみをこの順序で備える市販の二軸配向ポリエチレン薄膜の水蒸気透過性(水蒸気透過率、WVTR)は、約1g/m2~約2g/m2×日である。この値は、標準的な金属化の影響をわずかに受けているに過ぎず、約1g/m2~約1.5g/m2×日で低減する。この「基準薄膜」と比較して、本発明の金属化薄膜の水蒸気透過性値は、その手段により価格効率よく0.5g/m2×日未満に低減できる(表1、図3)。
【0050】
本発明の薄膜の好適な酸素透過性範囲は、30cm3/m2~70cm3/m2×日である。本発明の薄膜の好適な水蒸気透過性は、0.1g/m2~0.5g/m2×日である。
【0051】
樹脂薄膜の金属化法は、当業者には公知である。原理的には、真空金属化法、間接金属化法、例えば、熱薄膜エンボス法、鍍金法及び塗装法により、金属化を実施できる。薄膜の特別な複数の特性又は複数の調製を必要とせず又は補助剤を不要又はほぼ不要とする点で真空金属化法が好適である。標準的な真空金属化(物理的気相成長法)又はスパッタリング(プラズマ化学気相成長法、PE-CVD)により、真空金属化法を実施できる。金属化にアルミニウムを使用すると、標準真空金属化法を適用できるので有利である。また、公知の方法で、金属酸化物を塗布できる。本発明の薄膜が備えるべき金属酸化物層は、層(A)の表面に直接形成される酸化アルミニウム層又は酸化ケイ素が好適である。金属酸化物層厚の大きさは、使用する材料により異なる。アルミニウム層の好適な層厚範囲は、30nm~80nm、特に好適には40~60nm、最適には40~50nmである。酸化ケイ素層の好適な層厚範囲は、30nm~80nm、酸化アルミニウム層の好適な層厚範囲は、10nm~20nmである。
【0052】
本発明の薄膜厚範囲は、5μm~50μmが特に適切であり、そのとき、層(A)の層厚範囲は、50nm~250nm、層(B)と層(D)の各層厚範囲は、個別に0.3μm~5μm、層(C)の層厚範囲は、3μm~45μmである。
【0053】
本発明の更なる実施の態様は、本発明の薄膜を備える食料包装品である。
【0054】
本発明の更なる実施の態様では、本発明の薄膜の製法は、下記工程を含む:
・前記組成の層(B)~層(D)を備えかつ層(B)と層(D)を外側層とする薄膜を縦方向に一軸で伸張する工程と、
・延伸した薄膜の層(B)上に、ポリウレタンとナノ粒子を含有する流体分散系塗料を塗布する工程と、
・流体分散系塗料を乾燥して、層(A)を形成する工程と、
・薄膜を横方向に延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程。
【0055】
前記製法は、順次延伸工程を含む。本発明の好適な薄膜の製法は、下記工程を含む:
・前記組成を有しかつ全成分を備える少なくとも層(B)、層(C)及び層(D)用の重合体を準備する工程と、
・各重合体を溶融する工程と、
・層(B)と層(D)を薄膜の外側層として、溶融した重合体を金型スリットから押し出して、層(B)、層(C)及び層(D)に対応する少なくとも3層を備える薄膜を形成する工程と、
・得られた薄膜を冷却ロール上で冷却して、層(B)、層(C)及び層(D)を備える薄膜を形成する工程と、
・形成した薄膜を縦方向に延伸する工程と、
・少なくともポリウレタンとナノ粒子を含む流体分散系塗料を層(B)上に塗布して、層(B)上に均一な層を形成する工程と、
・層(B)上の流体分散系塗料を加熱により乾燥して、層(A)を形成する工程と、
・層(A)を形成した薄膜を横方向に延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程。
【0056】
二軸配向ポリエチレン薄膜の従来の製法では、ポリエチレン出発材料を調製し、溶融し、その溶融物から押出成形と冷却により、流涎薄膜(一次薄膜)を製造した。その後、再加熱により延伸温度に流涎薄膜を加熱し、機械方向(MD)と横方向(TD)との二軸に順次又は同時に延伸し、延伸した二軸配向ポリエチレン薄膜を冷却後にロールに巻き上げた。順次延伸では、流涎薄膜をまず機械方向(MD)に延伸し、その後横方向(TD)に延伸した。縦方向延伸後の通常の薄膜厚範囲は、200μm~500μmである。同時延伸では、流涎薄膜は双方向時に延伸される。
【0057】
本明細書では、二軸配向ポリエチレン薄膜を薄膜と称する一方で、非配向又は一軸配向ポリエチレン薄膜も薄膜と称するが、この名称を厳密に順守しない。両者の薄膜と薄膜との概念は、本発明の意味合いでは同義語と理解できる。
【0058】
従来の製法と比較すると、本発明の製法では、付加層(A)を塗布する。縦方向延伸後でかつ横方向延伸前の段階で、分散系形態のポリウレタンを薄膜上に塗布する極めて単純な方法を実施して、従来の薄膜製法に対して、実質的に価格増加を招来しない。ポリウレタン層の形成に追加の押出機を使用する必要がない。軟化点付近に薄膜を加熱して延伸するので、横方向に薄膜を延伸する加熱の際に、ポリウレタン分散溶媒を、蒸発させて自動的に除去することができる。非常に薄い層(A)の溶媒の蒸発に要する時間は、非常に短い。同時に、流体分散系塗料の成分として添加されるナノ粒子は、液体と共に層(A)の表面上に均等に拡散して全面に分布する。従って、製造工程中、例えばベルトコンベヤで搬送される薄膜上への被覆により、極めて安価にポリウレタン層を塗布できる。
【0059】
下記工程を含む本発明の薄膜の製法でも説明する通り、縦方向の延伸過程前に、ポリウレタン分散系塗料を塗布できる:
・層(B)と層(D)とを薄膜の外側層として、前記組成物を備える非配向の層(B)~層(D)(主薄膜)で構成される薄膜を準備する工程と、
・ポリウレタンとナノ粒子とを含む流体分散系塗料を層(B)上に塗布する工程と、
・流体分散系塗料を加熱により乾燥させて層(A)を形成する工程と、
・縦方向と横方向とに同時に薄膜を延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程。
【0060】
本発明の薄膜の前記製法は、下記工程を含むことが好ましい:
・全成分を備える少なくとも層(B)、層(C)及び層(D)用の重合体を準備する工程と、
・各重合体を溶融する工程と、
・層(B)と層(D)を外側層として、金型スリットから溶融した重合体を押出して、層(B)、層(C)及び層(D)に対応する少なくとも3層を備える薄膜を形成する工程と、
・得られた薄膜を冷却ロール上で冷却して、層(B)、層(C)及び層(D)を備える冷却された薄膜を形成する工程と、
・少なくともポリウレタンとナノ粒子とを含有する流体分散系塗料を層(B)上に塗布する工程と、
・層(B)上の流体分散系塗料を加熱により乾燥して層(A)を形成する工程と、
・得られた層(A)を有する薄膜を縦方向と横方向とに同時に延伸して、二軸配向薄膜を製造する工程。
【0061】
例えば、単軸押出機又は二軸押出機を使用して、重合体を溶融し押出すことができる。
【0062】
本発明の前記製法の組み合わせを用いる本発明の製法の第3の実施の形態では、縦方向に薄膜を延伸した後、流体分散系塗料を塗布し、その後、再度同時に延伸が行われる。
【0063】
加速して製造できかつ価格を低減できる順次延伸を適用する最初の製法の方が、同時延伸を行う場合よりも塗布する流体分散系塗料が少量でよく好適である。
【0064】
流体分散系塗料は、ナノ粒子とポリウレタン以外に溶媒を含有する。流体分散系塗料は、流体分散系塗料の乾燥物質に対して、0.5重量%~20重量%、好適には1重量%~10重量%、特に好適には2重量%~7重量%のナノ粒子を含有することが好適である。温度130℃で流体分散系塗料を一定重量まで乾燥して、乾燥物質は、決定される。残渣は、乾燥物質を示す。この方法では、流体分散系塗料に用いる溶媒の好適な沸点は、140℃以下、特に好適には130℃以下、より好適には120℃以下、最適には100℃以下である。
【0065】
流体分散系塗料のポリウレタン含有量は、流体分散系塗料の乾燥物質に対して、通常80重量%~99.5重量%、好適には90重量%~99重量%、特に好適には93重量%~96重量%である。乾燥物質は、ポリウレタン以外に少なくともナノ粒子を含有し、更に補助剤を含有してもよい。また、流体分散系塗料の乾燥物質含有量は、通常5重量%~25重量%、好適には10重量%~20重量%、特に好適には12重量%~18重量%である。好適な流体分散系塗料は、水溶性分散系塗料である。流体分散系塗料に用いる唯一好適な溶媒は、水である。分散系塗料に補助的に架橋剤を配合してもよい。架橋剤の量は、分散系塗料の乾燥物質の3重量%以下、好適には1重量%以下である。架橋剤は、多官能性のアジリジン架橋剤が好適である。
【0066】
ポリウレタンとしては、好適にはポリウレタン分散系であるTakelac WPB-341(三井ケミカル社製)が採用される。これは、従来のポリウレタンとは異なり、明らかに酸素障壁性に優れる特別に変性されたポリウレタンである。従来、この樹脂剤は、「製造工程外被覆」部門中でのみ用いられ太陽電池又は特別な包装品のガス障壁性を向上した。この樹脂剤は、製造工程と事後の伸張工程には従来全く使用されていなかった。また、ポリウレタン分散系、特にポリウレタン分散系塗料TakelacWPB341には、Levasil30/50(アクゾノーベル(Akzonobel)社製)ナノ粒子を3%~5%の量だけ添加するのが好適である。
【0067】
薄膜の横方向伸張と同時に流体分散系塗料を乾燥する工程又は縦横両方向同時伸張時の薄膜の予熱と同時に、流体分散系塗料を乾燥する工程は、本発明の製法に好適である。通常延伸炉の予熱領域で、温度範囲120℃~135℃、好ましくは125℃~130℃に加熱すると、伸張温度に達するポリエチレン薄膜の延性を改善できる。延伸用予熱領域で薄膜を加熱すると、薄膜上の流体分散系塗料を同時に乾燥させて、層(A)を形成できるので、流体分散系塗料を乾燥する追加の方法と工程は不要である。予熱温度では、様々な層を構成する重合体を十分に加熱して、延伸に適する延性状態に重合体の物性を変化できる。また、予熱温度でポリウレタン層(A)を溶融して均一な膜厚に調整して、延伸時の引裂強度を改善することができる。最後に、温度を十分に低下して、隣接層から離れる程薄層化するポリエチレン層(B)上のポリウレタン層(A)の薄層化を防止することができる。
【0068】
リバースグラビアキス被覆法(Reverse Gravur Kiss Coating)、特に好適な「キス被覆法(kiss coating)」により、「リバースグラビア塗布器(reverse gravure coater)」を使用して、流体分散系塗料を層(B)上に塗布することができる。図4は、流体分散系塗料の塗布法の具体例を示す。2つの案内ロールと、薄膜の移動方向とは逆の方向に回転する印刷(塗工)ロールを介して、薄膜が、案内される。貯蔵部に収容される水溶性分散系塗料(点状で示す)は、印刷ロールに付着される。この塗工法は、流体分散系塗料を高処理速度で薄膜に均等に塗布できるものである。流体分散系塗料の全質量に対する流体分散系塗料の各固体割合は、好適には5重量%~20重量%、特に好適には10重量%~20重量%、理想的には15重量%である。流体分散系塗料により層(B)上に形成される湿式層の好適な質量は、3g/m2~20g/m2、特に好適には6g/m2~10g/m2である。流体分散系塗料の好適な固体割合は、10重量%~20重量%であり、これから形成される湿式層質量は、6g/m2~10g/m2である。流体分散系塗料の好適な塗布温度は、100℃以下、より好適には70℃以下、特に好適には40℃以下である。100℃を超える高温では、流体分散系塗料の液体が沸騰しかつ/又は成分が分解する可能性がある。温度維持には問題が生じない室温で印刷過程が通常行われる。製造直後の薄膜は、十分に冷却して、層(A)を塗布すべき点に注意を要する。
【0069】
流体分散系塗料を塗布する工程前に、コロナ処理、プラズマ処理及び火炎処理からなる群から選択される表面処理を層(B)の表面に施すことが好適である。最適にはコロナ処理である。層(B)に表面処理を施すと、層(A)と層(B)との間の付着力が改善される。結晶化度が比較的小さい状態にある薄膜の横方向延伸前に、コロナ処理、プラズマ処理及び火炎処理による事前処理は、横方向延伸後に処理する従来の薄膜よりも有効である。横方向延伸前に塗布する場合よりも、ポリウレタン分散系塗料量も、何倍も少ない。縦方向延伸後に薄膜幅30cm~1.5mの薄膜は、横方向延伸後には通常8m~11mの薄膜幅になる。従って、極めて多量の流体分散系塗料を塗布して、均等な被覆を得なければならなかった。
【0070】
本発明の製法では、冷却ローラの好適な温度範囲20℃~40℃も特徴である。
【0071】
少なくとも単一の予熱領域を有する延伸炉を通常用いて、横方向に延伸することが好適である。この延伸法では、実際の延伸開始前に、延伸炉の予熱領域内の予熱温度を設定して、ポリウレタン分散系塗料を実質的に乾燥しかつ溶融させて、均一な膜厚層に形成しなければならない。そのため、妥当なら、通常の場合よりも予熱温度を高く設定しなければならない。より高い好適な予熱温度は、2℃~15℃、特に好適には3℃~10℃である。流体分散系塗料が延伸前に十分乾燥しないと、欠損、特に孔が層(A)に形成される可能性がある。層(A)の全表面に渡り、均等な大きさの表面張力が生ずるとき、均一な膜厚の被覆が形成される。従って、十分な乾燥と溶融の尺度として酸素透過性又は水蒸気透過性を使用できる。より長時間又はより高温度の乾燥を行って、酸素透過性値又は水蒸気透過性値を改善できれば、この乾燥温度は、薄膜と製法に十分といえる。
【0072】
順次延伸での好適な縦方向延伸比範囲は、2~8、より好適には3~7、特に好適には4~6である。順次延伸での好適な横方向延伸比範囲は、4~10、特に好適には6~10、最善には6~9である。同時延伸法の好適な延伸割合は、35~60、特に好適には40~55、最善には40~50である。エアカーテンとなるエアナイフで溶融物の冷却ロール上への載置を支援しても有利である。
【0073】
延伸後に、縦方向、横方向又は双方の方向での薄膜の内部応力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】層(A)~層(D)を備える本発明のポリエチレン薄膜構造を示す斜視図
図2A】支持層と、支持層の両面に形成される2つの外側層(表面薄層)とを備え、一方の外側層は粘着防止剤を含む従来のポリエチレン薄膜構造を示す断面図
図2B】目視可能に表示するナノ粒子を含有する付加層(A)を備える本発明の薄膜構造を示す断面図
図3】酸素と水蒸気に対する薄膜の不透過特性を比較する3種の棒グラフであって、最左欄の棒グラフは、従来の二軸配向ポリエチレン(BOPE)薄膜の不透過性を短縮(表1)して示し、中央の棒グラフは、金属化二軸配向ポリエチレン(met.BOPE)薄膜を示し、最右欄の棒グラフは、製造工程で生成されたポリウレタン被覆と製造工程外で生成された金属層とを備え特に良好な不透過特性を有する本発明の薄膜(met. BOPE+ILC)を示す
図4】本発明の製法の実施に用いるリバースグラビアキス被覆工程を示す斜視図で、流体分散系塗料を被覆した薄膜の一面を点付領域で示し、貯蔵部内の流体分散系塗料も点付で示す
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0075】
材料:
タケラック(Takelac)WPB341と称する三井ケミカル社製水溶性分散系塗料のポリウレタン含有量は、30%である。レバシル(Levasil)CT3 PL(別名:PL Levasil 30/50」)と称するアクゾノーベル(Akzonobel)社製コロイダルシリカの水溶性分散系塗料のコロイダルシリカ含有量は、50重量%(粒径:80nm~100nm、比表面積:35m2/g、BET法比表面積:40m2/g)である。枝状接合型無水マレイン酸基を有するポリエチレン同種重合体のアドマー(Admer)NF-408E溶融流量質量(MFR)は、温度190℃で3g/10分、重量:2.16kg(ASTM D 1238)、密度:0.92g/cm3、ビカット軟化温度:100℃(D1525)、融点:120℃である。低密度ポリエチレンの「コンスタブ(Constab)AB 06001 LD」は、その全重量に対し4重量%の合成シリカを含有する。二酸化ケイ素の粒子粒径は、4μmである。ドイツ、リューテン市所在の「コンスタブ・ポリオレフィン・アディティブズ(CONSTAB Polyolefin Additives)有限会社」からこの製品を入手できる。
【0076】
レーザ回折粒径分析法により、粒径を好適に計測した。
【実施例1】
【0077】
温度190℃での溶融流量質量(ISO 1133):2.1g/10分、密度:0.92g/cm3(ASTM D1505)及び融点:126℃の直鎖状ポリエチレンと、混合物重量に対して5重量%の「コンスタブ(Constab)AB 06001 LD」とを混合して、本発明の薄膜を製造した。溶融流量質量:2.1(ISO 1133)、密度:0.92g/cm3(ASTM D1505)及び融点:126℃の層(C)用直鎖状ポリエチレンと、層(D)用上記混合物とを、温度220℃~250℃の個別押出機で溶融した。温度220℃~250℃で層(B)用アドマーNF-408Eを溶融した。溶融した前記材料を、金型スリットから押出した。各二軸押出機により層(B)~層(D)を個別に押出した。金型スリットから押出した溶融物を、冷却ローラで冷却し、流涎薄膜を準備した。延伸設備内の薄膜速度10m/分、延伸比5で縦方向に流涎薄膜を延伸した。延伸時の予熱ローラの温度範囲:60℃~92℃、伸長ロール温度範囲:95℃~105℃、アニールロール温度範囲:78℃~105℃であった。
【0078】
縦方向延伸後、薄膜搬送速度は、50m/分であった。得られた一軸配向ポリエチレン(MOPE)薄膜の冷却後に、薄膜の層(B)表面に通常のコロナ処理を施した。
【0079】
コロナ処理により、ポリウレタン薄膜表面の濡れ性が改善された。次に、「リバースグラビアコーター」を使用する「リバースグラビアキス被覆法」により、一軸配向ポリエチレン薄膜の層(B)上に水溶性ポリウレタン分散系塗料を被覆材料として塗布した。彫込式ロールの回転毎に、ロールの複数の凹部内に分散系塗料が充填されるグラビアロールを使用した。グラビアロールと、移動する薄膜帯との接触時に、ロール上の液体塗料の一部は、薄膜に付着する。薄膜の移動方向とは逆方向にロールが回転すると、薄膜帯上に均等な湿潤領域が形成される。本実施の形態では、1平方メートルの薄膜表面毎に水溶性分散系湿式層12gを生成する12g/m2のグラビアロールを採用した。被覆用分散系塗料は、その全質量に対して、タケラック(Takelac)WPB 341、48重量%、レバシル(Levasil)30/50、1.2重量%及び水50.8重量%を含む。
【0080】
続いて、延伸炉中の予熱領域を温度範囲144℃~160℃の空気で予熱して、水溶性のポリウレタン分散系塗料を延伸前に乾燥して、ポリウレタン層(A)を形成した後、延伸炉内延伸比8.5で薄膜を横方向に延伸した。複数の伸張領域の温度範囲は、138℃~156℃、アニール領域の温度範囲は、128℃~138℃であった。本明細書で使用する全温度は、延伸炉の関連領域内空気温度である。別途、オフラインで、薄膜を金属化した。標準的な物理気相蒸着法(PVD)により、アルミニウムを金属として蒸着した。蒸着層厚は45nm、蒸着層の光学密度は2.5であった。
【0081】
得られた薄膜の特性は、全薄膜層厚:20μm(DIN53370);層(A)厚:100nm; 層(B)厚、(D)厚:1μm;層(C)厚:18μm;金属層(M)厚:45nm;引張強度(ASTM D 882)-機械方向引張強度:62N/mm2;横方向引張強度:204N/mm2;破断時伸び(ASTM D 882)-機械方向伸び:430%、横方向伸び:56%;弾性係数(ASTM D 882)-機械方向弾性係数:280N/mm2、横方向弾性係数:444N/mm2;摩擦係数(DIN/EN ISO 8295、U/U)-機械方向摩擦係数:0.58μ秒、横方向摩擦係数:0.53μk;熱収縮率(BMS TT 0.2;100℃/10分)-機械方向熱収縮率:3.9%;横方向熱収縮率:3.6%;酸素透過性(ISO15105-2):<13cm3/(m2dbar)(温度23℃、相対湿度0%);水透過性(ASTM E96):0.8g/(m2d)(温度38℃、相対湿度90%);金属付着性(粘着テープ剥離試験、TP-104-87):5/5;[エチレンアクリル酸(EAA)封着、金属化薄膜N/15mm接着用金属化・被覆・積層工業(AIMCAL, Association of Industrial Metallizers Coaters and Laminators)工程TP-105-92]:>5、金属剥離なし、であった。
【0082】
得られた特性値から明らかな通り、本発明の薄膜の機械特性は、市販の障壁薄膜値に類似するが、酸素透過性と水蒸気透過性は、極めて低い。本発明の薄膜の使用により、包装食料品の持続性を延長することができる。
【0083】
図3は、実施例1で説明した金属化薄膜(最右側に「met.BOPE+ILC」で示す、製造工程被覆を行った金属化二軸配向ポリエチレン薄膜)と、均等厚さを有する市販の非金属化二軸配向ポリエチレン薄膜(最左側に示す短縮棒グラフ「BOPE」(表1に具体的数値を示し、図2Aに薄膜構造を略示する)と、同一薄膜を金属化した薄膜(中央に示す金属化薄膜「met.BOPE」)とに関する、酸素透過性(酸素透過率、OTR、oxygen transmission rate)と、水蒸気透過性(水蒸気透過率、WVTR、water vapor transmission rate)とを示す。図3から明らかな通り、製造時に追加高費用を要しない本発明の薄膜の酸素透過性は、市販の金属化二軸配向ポリエチレン薄膜に対し、劇的に低下する。酸素透過性は、10倍を上回って削減する。水蒸気透過性も極めて削減する。
【0084】
表1は、薄膜の数値データを示す。
【表1】
図3に短縮して図示する。
【0085】
金属付着性も格段に向上し、金属化二軸配向ポリエチレン薄膜の特性は、他に比類ない水準といえよう。
図1
図2A
図2B
図3
図4