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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】キロ程付与装置及びキロ程付与方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
B61L25/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020129965
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026475
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】三和 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田中 博文
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037270(JP,A)
【文献】特開2007-276626(JP,A)
【文献】特開2007-037294(JP,A)
【文献】特開2019-188996(JP,A)
【文献】特開2019-011024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各距離標のキロ程及び地理座標系による絶対位置と、重キロ・断キロ情報とを格納したデータベースを用いて、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程付与装置であって、
地理座標系による前記対象位置の対象絶対位置を取得する取得手段と、
前記対象絶対位置に基づき前記距離標を2つ選択する選択手段と、
前記2つの距離標の前記絶対位置及び前記対象絶対位置に基づいて、前記2つの距離標に対する前記対象位置の遠近度合を算出する算出手段と、
前記キロ程及び前記重キロ・断キロ情報に基づく前記2つの距離標間の線路に沿った長さである推定線路延長を所与の単位長毎に区切った各サンプリング点のうち、前記遠近度合に該当する該当サンプリング点を選択し前記推定線路延長と、前記2つの距離標のうちの一方の距離標のキロ程とを用いて算出する前記該当サンプリング点のキロ程を前記対象位置に対応するキロ程として決定するキロ程決定手段と、
を備えるキロ程付与装置。
【請求項2】
前記キロ程決定手段は、前記各サンプリング点のキロ程を、前記推定線路延長と前記一方の距離標の前記キロ程とに基づいて算出するサンプリング点算出手段を有し、前記該当サンプリング点について算出したキロ程を、前記対象位置に対応するキロ程として決定する、
請求項1に記載のキロ程付与装置。
【請求項3】
前記一方の距離標は、前記2つの距離標のうち、路線の起算点に近いほうの距離標である、
請求項1又は2に記載のキロ程付与装置。
【請求項4】
前記算出手段は、緯度及び経度に基づく平面座標における前記遠近度合を算出する、
請求項1~3の何れか一項に記載のキロ程付与装置。
【請求項5】
各距離標のキロ程及び地理座標系による絶対位置と、重キロ・断キロ情報とを格納したデータベースを用いて、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程付与方法であって、
地理座標系による前記対象位置の対象絶対位置を取得することと、
前記対象絶対位置に基づき前記距離標を2つ選択することと、
前記2つの距離標の前記絶対位置及び前記対象絶対位置に基づいて、前記2つの距離標に対する前記対象位置の遠近度合を算出することと、
前記キロ程及び前記重キロ・断キロ情報に基づく前記2つの距離標間の線路に沿った長さである推定線路延長を所与の単位長毎に区切った各サンプリング点のうち、前記遠近度合に該当する該当サンプリング点を選択し前記推定線路延長と、前記2つの距離標のうちの一方の距離標のキロ程とを用いて算出する前記該当サンプリング点のキロ程を前記対象位置に対応するキロ程として決定することと、
を含むキロ程付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路沿線の対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程付与装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、線路沿線の施設や設備の維持管理のため様々な検査が実施されており、これらの検査データは、その検査位置の位置情報によって管理されている。検査データと位置情報とを対応付けて管理する技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術は、予め用意された各検査設備の設置位置のデータを用いて、GPS(Global Positioning System)により取得した現在位置付近の設備を絞り込んで特定し、その特定した設備に対する検査を行って、検査データを記録してゆく検査員の作業効率化に関する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-62733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道設備の検査は軌道や土木、電気、信号等の管轄・所掌に応じた様々な分野(以下単に「分野」という。)毎に実施され、それぞれの分野で検査データが記録・管理されている。これらの各分野で記録・管理されている検査データを一元的に纏めることは簡単ではない。分野によって検査データに対応付けられている位置情報が異なるからである。
【0005】
鉄道では、路線の起算点からの線路に沿った距離であるキロ程を位置情報として用いることが一般的である。各分野で記録・管理されている検査データも、このキロ程と対応づけられていることが多い。しかし、分野によって、キロ程の精度が異なる。精確なキロ程は軌道中心線上の位置から求める必要があるが、分野によっては、必ずしも軌道中心線上の位置を精確に求めずして位置情報を概略的に求めて用いる場合がある。全ての分野が軌道を検査対象としているわけではなく、レールから少し離れた場所に設置された機器等、検査対象が分野によって異なることも一因である。そこで、GPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)を利用して取得した緯度経度を代用又は併用して位置情報として用いる場合が増えている。従って、緯度経度で管理されている検査データの位置情報を、対応するキロ程に精確に変換することができれば至便である。
【0006】
また、キロ程は、路線の起算点からの線路に沿った距離として定められているが、線路途中のルート変更や測量技術の向上に伴う再計測等によって距離が増減することがある。この場合、線路が長くなるときにはキロ程を重複(重キロ)させ、線路が短くなるときにはキロ程を断絶(断キロ)させてキロ程の不連続を許容することで、特定区間のキロ程の変更が線路全体に及ばないようにしている。緯度経度で管理されている検査データの位置情報をキロ程に変換する際には、このような重キロ・断キロを考慮しなければ精確なキロ程に変換することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を一意に決定可能とする技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
各距離標のキロ程及び地理座標系による絶対位置と、重キロ・断キロ情報とを格納したデータベース(例えば、図1のキロ程管理テーブル310)を用いて、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程付与装置であって、
地理座標系による前記対象位置の対象絶対位置を取得する取得手段(例えば、図13の対象位置取得部202)と、
前記対象絶対位置に基づき前記距離標を2つ選択する選択手段(例えば、図13のキロポスト選択部204)と、
前記2つの距離標の前記絶対位置及び前記対象絶対位置に基づいて、前記2つの距離標に対する前記対象位置の遠近度合を算出する算出手段(例えば、図13の遠近度合算出部206)と、
前記キロ程及び前記重キロ・断キロ情報に基づく前記2つの距離標間の線路に沿った長さである推定線路延長と、前記遠近度合と、前記2つの距離標のうちの一方の距離標のキロ程とを用いて前記対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程決定手段(例えば、図13のキロ程決定部208)と、
を備えるキロ程付与装置である。
【0009】
他の発明として、
各距離標のキロ程及び地理座標系による絶対位置と、重キロ・断キロ情報とを格納したデータベースを用いて、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を決定するキロ程付与方法であって、
地理座標系による前記対象位置の対象絶対位置を取得することと、
前記対象絶対位置に基づき前記距離標を2つ選択することと、
前記2つの距離標の前記絶対位置及び前記対象絶対位置に基づいて、前記2つの距離標に対する前記対象位置の遠近度合を算出することと、
前記キロ程及び前記重キロ・断キロ情報に基づく前記2つの距離標間の線路に沿った長さである推定線路延長と、前記遠近度合と、前記2つの距離標のうちの一方の距離標のキロ程とを用いて前記対象位置に対応するキロ程を決定することと、
を含むキロ程付与方法を構成してもよい。
【0010】
第1の発明によれば、重キロ・断キロ情報を考慮して、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を一意に決定することができる。つまり、重キロ・断キロ情報に基づくことで、重キロ及び断キロを考慮した2つの距離標間の推定線路延長を算出することができる。そして、この推定線路延長と、2つの距離標に対する対象絶対位置の遠近度合とに基づくことで、対象位置に対応するキロ程を決定することが可能となる。例えば、対象位置に近い2つの距離標を選択し、対象位置から2つの距離標それぞれまでの直線距離の比率を遠近度合として求め、その比率に応じて推定線路延長を比例配分して対象位置に対応するキロ程を決定する、といったことができる。これにより、線路の線形が不明である場合や、対象位置が軌道上に位置しない場合であっても、対象位置に対応するキロ程を一意に決定することが可能となる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記キロ程決定手段は、前記推定線路延長を所与の単位長毎に区切った各サンプリング点のキロ程を、前記推定線路延長と前記一方の距離標の前記キロ程とに基づいて算出するサンプリング点算出手段(例えば、図13のサンプリング点算出部210)を有し、算出した各サンプリング点の中から前記遠近度合に該当する該当サンプリング点を選択することで、該当サンプリング点について算出したキロ程を、前記対象位置に対応するキロ程として決定する、
キロ程付与装置である。
【0012】
第2の発明によれば、選択した2つの距離標間の推定線路延長を所与の単位長毎に区切った各サンプリング点の中から、遠近度合に該当するサンプリング点についてのキロ程を、対象位置に対応するキロ程として決定することができる。サンプリング点の間隔である単位長が、決定したいキロ程の精度となることから、所望の精度に応じて単位長を定めることで、対象位置に対応するキロ程を高精度に決定することが可能となる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記一方の距離標は、前記2つの距離標のうち、路線の起算点に近いほうの距離標である、
キロ程付与装置である。
【0014】
第3の発明によれば、キロ程は路線の起算点側から起算するので、線路延長の起算点に近いほうの距離標に基づくことで、対象位置に対応するキロ程を一意に決定することができる。
【0015】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記算出手段は、緯度及び経度に基づく平面座標における前記遠近度合を算出する、
キロ程付与装置である。
【0016】
第4の発明によれば、2つの距離標に対する対象位置の遠近度合を、高度を除いた平面座標に基づいて算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】キロ程管理テーブルの一例。
図2】重キロが存在する場合のキロ程の管理例1の説明図。
図3】重キロが存在する場合のキロ程の管理例2の説明図。
図4】断キロが存在する場合のキロ程の管理例3の説明図。
図5】断キロが存在する場合のキロ程の管理例4の説明図。
図6】キロ程付与処理のフローチャート。
図7】2つのキロポストの選択の説明図。
図8】遠近度合の説明図。
図9】キロ程・データ番号対応表の一例。
図10】重キロが存在する場合のキロ程・データ番号対応表の一例。
図11】断キロが存在する場合のキロ程・データ番号対応表の一例。
図12】サンプリング点の説明図。
図13】キロ程付与装置の機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0019】
本実施形態におけるキロ程付与装置1は、データベースとして格納されたキロ程管理テーブル310を用いて、鉄道沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を一意に決定する装置である。対象位置は、地理座標系による絶対位置で与えられる位置であり、例えば、画像データを含む検査データの検査位置や、検査対象である地上設備の位置である。具体的には、GNSS受信機を備えたカメラで検査対象を撮影するとともに緯度経度の位置情報を計測することで撮影画像に対応付けられた緯度経度の位置情報が、対象位置に相当する。また、GNSS受信機を用いて計測された検査対象の地上設備の緯度経度の位置情報が、対象位置に相当する。また、GNSS受信機を備えた検査装置を用いて線路上を移動しながら検査を実施し、定期的に位置情報を計測する場合の各検査データに対応付けられた緯度経度の位置情報が、対象位置に相当する。キロ程付与装置1は、これらの検査データや地上設備に対し、緯度経度の位置情報をキロ程に変換して付与するために用いられる。
【0020】
キロ程管理テーブル310は、線路におけるキロ程を管理するために予め用意されるデータベースであり、各距離標のキロ程及び地理座標系による絶対位置と、重キロ・断キロ情報とを格納している。本実施形態ではキロポストを距離標とする。キロポストは、所与の路線の起算点から線路に沿って概ね1キロメートル毎に設置され、路線の起算点からその設置位置までの線路に沿った距離(線路延長)としてキロ程が対応付けられている。本実施形態では、キロポストに対応付けられたキロ程を、当該キロポストの呼称とする。例えば、キロ程「2K」に対応付けられているキロポストのことを「2Kポスト」と呼称する。キロポストに対応付けられたキロ程は、線路が最初に敷設された当初の値のまま変化しない。当初の値のままとは、線路延長が変化して路線の起算点からの線路に沿った距離が変わったとしても、キロポストに対応付けられているキロ程は当初のキロ程のままだからである。線路延長が変化する場合としては、線路のルート変更等による場合や、近年の測量技術の向上により再計測した線路延長が線路の敷設当初から変化する場合等がある。これらの場合、当初のキロ程の他に、線路延長が増減したことによる別のキロ程(調整後のキロ程とも言える)も当該キロポストに対応づけられる場合がある。この場合であっても、例えば、キロ程「2K」に対応付けられているキロポストは「2Kポスト」に変わりなく、この「2Kポスト」にはキロ程「2K」の他に別のキロ程も対応づけられていることになる。
【0021】
図1は、キロ程管理テーブル310の一例を示す図である。図1に示すように、キロ程管理テーブル310は、各キロポストについて、当該キロポストのキロ程と、地理座標系による絶対位置と、を対応付けて格納している。図1では、絶対位置が格納されているデータレコードはキロポストしかないため、絶対位置が格納されているデータがキロポストに係るデータを意味している。絶対位置は、緯度及び経度に基づく平面座標における位置である。
【0022】
また、キロ程管理テーブル310には、重キロ・断キロ情報も格納されている。記号とキロ程とが、その情報となっている。重キロ・断キロ情報は、線路のルート変更等によって生じるキロ程の重複である重キロ及びキロ程の断絶である断キロに関する情報である。記号は、対応するキロ程の位置に対する重キロ及び断キロの有無を示す。記号「S」は、対応するキロ程の位置には重キロも断キロも存在しないことを示す。従って、記号「S」が対応付けられているキロ程は、必ずキロポストに対応するキロ程であり、絶対位置が格納されている。記号「C」と記号「W」は、重キロが存在することを示す組み合わせの記号となっている。記号「C」と記号「B」は、断キロが存在することを示す組み合わせの記号となっている。記号「C」,「W」,「B」が対応付けられているキロ程は、必ずしもキロポストに対応するキロ程ではない。図2図5を参照して詳細に後述する。また、本実施形態では、重キロ及び断キロは、キロポストの設置間隔である1キロメートルより短い1メートルを単位として管理されるものとする。なお、0.1メートルや0.01メートルといったこれより短い単位で管理するようにしてもよい。
【0023】
図2及び図3は、図1に示すキロ程管理テーブル310における重キロが存在する箇所のキロ程の管理について説明するための図である。図2及び図3ともに、線路に沿って設置されている複数のキロポストを模式的な五角形状のマークで示し、その上側にキロポスト間の実際の線路に沿った距離(線路延長)を示している。各キロポストには、当該キロポストの呼称(例えば「1Kポスト」)を吹き出しで示している。また、線路上の白丸印は、キロ程管理テーブル310に記録・管理されているキロ程(以下適宜「管理キロ程」という)に対応する実際の位置を示している。図の下側に、各管理キロ程について、キロ程管理テーブル310に記録・管理されている記号とキロ程とを示している。
【0024】
例えば、図2には、4つの白丸印があり、それぞれにキロポストが対応付けられているが、2Kポストに対応付けられた白丸印には2つの管理キロ程があることが分かる。図1のキロ程管理テーブル310を確認すると、この2Kポストに対応付けられた白丸印は(X2,Y2)の絶対位置であり、この(X2,Y2)の絶対位置に2つのキロ程(管理キロ程)が対応づけられていることが分かる。
【0025】
重キロは、キロ程の重複の開始点となる管理キロ程に記号「W」を付加し、重複の終了点となるキロ程の直後の管理キロ程に記号「C」を付加して、記号「W」を付加した管理キロ程から記号「C」を付加した管理キロ程までが重複していることを示す。つまり、記号「W」を付加した管理キロ程と、記号「C」を付加した管理キロ程との差が、重複するキロ程の長さを示す。
【0026】
具体的には、キロポストの位置に重キロが存在する場合には、重キロが存在するキロポストの呼称の管理キロ程に記号「W」が付加され、そのキロポストの管理キロ程に、重複しているキロ程の長さを加算した管理キロ程に記号「C」を付加したデータが、重キロ・断キロ情報としてキロ程管理テーブル310に格納される。
【0027】
図2の例では、「2Kポスト」に5M(5メートル)の重キロが存在している。このため、「2Kポスト」に対応付けられている管理キロ程「2K000M」に記号「W」を付加し、この管理キロ程に重複する5Mを加算した「2K005M」を「2Kポスト」に対応するもう1つの管理キロ程とし、記号「C」を付加している。
【0028】
キロポスト以外の位置(キロポスト間の線路)に重キロが存在する場合には、重複が開始する管理キロ程に記号「W」を付加したデータと、その管理キロ程に重複するキロ程の長さを加算した管理キロ程に記号「C」を付加したデータとの組が、重キロ・断キロ情報としてキロ程管理テーブル310に格納される。キロポストに対応付けられないデータであるから、絶対位置は対応付けられずにキロ程管理テーブル310に格納されている。
【0029】
図3に示す例では、「3Kポスト」及び「4Kポスト」の間に4M(4メートル)の重キロが存在している。この重キロについては、重複の開始点となる管理キロ程「3K900M」に記号「W」を付加したデータと、この管理キロ程に重複する4Mを加算した管理キロ程「3K904M」に記号「C」を付加したデータとの組が、キロ程管理テーブル310に格納されている。
【0030】
重キロは、キロポストを跨って存在する場合もある。図3の例では、「7Kポスト」の管理キロ程である「7K000M」の前後に跨って547Mの重キロが存在している。この重キロについては、図1のキロ程管理テーブル310に示す通り、重複の開始点となる管理キロ程「6K953M」に記号「W」を付加したデータと、この管理キロ程に重複する547Mを加算した管理キロ程「7K500M」に記号「C」を付加したデータとの組が、「7Kポスト」の管理キロ程である「7K000M」の前に格納されている。キロポストに対応付けられないデータであるから、絶対位置は対応付けられずにキロ程管理テーブル310に格納されている。
【0031】
図4及び図5は、図1に示すキロ程管理テーブル310における断キロが存在する箇所のキロ程の管理について説明するための図である。図2及び図3と同様に、図4及び図5ともに、線路に沿って設置されている複数のキロポストを模式的な五角形状のマークで示し、その上側にキロポスト間の線路延長を示している。各キロポストには、当該キロポストの呼称(例えば「20Kポスト」)を吹き出しで示している。また、線路上の白丸印は、キロ程管理テーブル310に記録・管理されている管理キロ程に対応する実際の位置を示している。図の下側に、各管理キロ程について、キロ程管理テーブル310に記録・管理されている記号とキロ程とを示している。
【0032】
断キロは、キロ程の断絶の開始点となる管理キロ程に記号「C」を付加し、断絶の終了点となる管理キロ程の直後の管理キロ程に記号「B」を付加して、記号「C」を付加した管理キロ程から記号「B」を付加した管理キロ程までが断絶していることを示す。つまり、記号「B」を付加した管理キロ程と、記号「C」を付加した管理キロ程との差が、断絶するキロ程の長さを示す。
【0033】
具体的には、キロポストの位置に断キロが存在する場合には、断キロが存在するキロポストの呼称の管理キロ程に記号「B」が付加され、そのキロポストの管理キロ程から断絶しているキロ程の長さを減算した管理キロ程に「C」を付加したデータが、重キロ・断キロ情報としてキロ程管理テーブル310に格納される。
【0034】
図4の例では、「21Kポスト」に5M(5メートル)の断キロが存在している。このため、「21Kポスト」に対応付けられている管理キロ程「21K000M」に記号「B」を付加し、この管理キロ程から断絶する5Mを減算した「20K995M」を「21Kポスト」に対応するもう1つの管理キロ程とし、記号「C」を付加している。
【0035】
キロポスト以外の位置(キロポスト間の線路)に断キロが存在する場合には、断絶が開始する管理キロ程に記号「C」を付加したデータと、その管理キロ程に断絶するキロ程の長さを加算した管理キロ程に記号「B」を付加したデータとの組が、重キロ・断キロ情報としてキロ程管理テーブル310に格納される。キロポストに対応付けられないデータであるから、絶対位置は対応付けられずにキロ程管理テーブル310に格納されている。
【0036】
図5に示す例では、「24Kポスト」及び「25Kポスト」の間に6M(6メートル)の断キロが存在している。この断キロについては、断絶の開始点となる管理キロ程「24K894M」に記号「C」を付加したデータと、この管理キロ程に断絶する6メートルを加算した管理キロ程「24K900M」に記号「C」を付加したデータとの組が、キロ程管理テーブル310に格納されている。
【0037】
断キロは、かつてキロポストがあった位置を跨って存在する場合も同様である。図5の例では、かつてキロポストとして存在していたはずの「31Kポスト」から「36Kポスト」までを跨った6K257Mの断キロが存在している。この断キロについては、図1のキロ程管理テーブル310に示す通り、断絶の開始点となる管理キロ程「30K500M」に記号「C」を付加したデータと、この管理キロ程から断絶する6K257Mを加算した管理キロ程「36K757M」に記号「B」を付加したデータとの組が、「37Kポスト」の管理キロ程である「37K000M」の前に格納されている。断絶によって存在しなくなった「31Kポスト」から「36Kポスト」までのキロポストは、キロ程管理テーブル310には格納されていない。
【0038】
図6は、キロ程付与装置1が行う処理であって、所与の対象位置Dに対応するキロ程を決定するキロ程付与処理の流れを説明するフローチャートである。
【0039】
キロ程付与装置1は、先ず、キロ程の付与対象となる対象位置Dの対象絶対位置を取得する(ステップS1)。対象絶対位置とは、地理座標系による緯度経度で表された位置である。例えば、ユーザが、キロ程に換算したい位置を対象位置Dとして、その位置の緯度経度をキロ程付与装置1に入力することが、このステップS1に相当する。
【0040】
次いで、キロ程付与装置1は、キロ程管理テーブル310を参照して、取得した対象絶対位置に基づき、対象位置Dに近い2つのキロポストP1,P2を選択する(ステップS3)。
【0041】
図7は、対象位置Dに近い2つのキロポストP1,P2の選択を説明する図である。キロ程管理テーブル310においては、各キロポストの位置として絶対位置(緯度経度)が必ず対応付けて格納されている。これに基づき、対象位置Dと各キロポストとの間の直線距離が近い順に2つのキロポストを選択する。そして、選択した2つのキロポストのうち、路線の起算点側である一方のキロポストを「P1」、他方のキロポストを「P2」とする。
【0042】
続いて、キロ程付与装置1は、選択した2つのキロポストP1,P2の絶対位置、及び、取得した対象位置Dの対象絶対位置に基づいて、当該2つのキロポストP1,P2に対する対象位置Dの遠近度合を算出する(ステップS5)。
【0043】
図8は、キロポストP1,P2に対する対象位置Dの遠近度合の算出を説明する図である。遠近度合とは、キロポストP1,P2に対する対象位置Dの相対的な遠さ又は近さを示す指標であり、対象位置Dから2つのキロポストP1,P2までの直線距離の比率として求める。具体的には、2つのキロポストP1,P2を結ぶ線分を求める。この線分の長さ(つまり、キロポストP1,P2間の直線距離)をLとする。次いで、この線分に対して対象位置Dから下ろした垂線との交点Qを求め、キロポストP1と交点Qとの間の距離a、及び、キロポストP2と交点Qとの間の距離b、を求める。そして、キロポストP1,P2間の直線距離Lに対するキロポストP1と交点Qとの間の直線距離aの比率「a/L」を、キロポストP1に対する対象位置Dの遠近度合とし、キロポストP1,P2間の直線距離Lに対するキロポストP2と交点Qとの間の直線距離bの比率「b/L」を、キロポストP2に対する対象位置Dの遠近度合とする。この遠近度合が小さいほど、キロポストP1,P2に近いことを示す。
【0044】
また、キロ程付与装置1はキロ程管理テーブル310を参照し、2つのキロポストP1,P2に対応付けられているキロ程、及び、重キロ・断キロ情報に基づき、2つのキロポストP1,P2間の線路に沿った長さである推定線路延長Lを算出する(ステップS7)。
【0045】
具体的には、キロ程管理テーブル310を参照して、2つのキロポストP1,P2間の線路について重キロ又は断キロが存在するかを判断する。その重キロ又は断キロを考慮して推定線路延長を算出する。
【0046】
キロポストP1,P2の管理キロ程、及び、キロポストP1,P2の間の管理キロ程の全てに記号「S」が付加されているならば、重キロも断キロも存在しないと判断する。そして、次式(1)に示すように、キロポストP1の呼称の管理キロ程M1と、キロポストP2の呼称の管理キロ程M2との差ΔS(=M2-M1)を、キロポストP1,P2の間の推定線路延長Lとする。
L=ΔS=M2-M1 ・・・(1)
【0047】
また、キロポストP1,P2の管理キロ程、及び、キロポストP1,P2の間の管理キロ程の何れかに記号「W」が付加されているならば、重キロが存在すると判断する。そして、次式(2)に示すように、キロポストP1の呼称の管理キロ程M1と、キロポストP2の呼称の管理キロ程M2との差ΔSに、記号「W」が付加された管理キロ程Mwと、それと組となる記号「C」が付加された管理キロ程Mcとの差(=Mc-Mw)である重複するキロ程の長さを加算して、キロポストP1,P2の間の推定線路延長Lとする。
L=(Mc-Mw)+ΔS ・・・(2)
【0048】
また、キロポストP1,P2の管理キロ程、及び、キロポストP1,P2の間の管理キロ程の何れかに記号「B」が付加されているならば、断キロが存在すると判断する。そして、次式(3)に示すように、キロポストP1の呼称の管理キロ程M1と、キロポストP2の呼称の管理キロ程M2との差ΔSから、記号「B」が付加された管理キロ程Mbと、それと組となる記号「C」が付加された管理キロ程Mcとの差(=Mb-Mc)である断絶するキロ程の長さを減算して、キロポストP1,P2の間の推定線路延長Lとする。
L=ΔS-(Mb-Mc) ・・・(3)
【0049】
そして、キロ程付与装置1は、算出した推定線路延長Lを用いて、2つのキロポストP1,P2間のキロ程・データ番号対応表320を作成する(ステップS9)。
【0050】
図9図11は、キロ程・データ番号対応表320の一例である。図9図11に示すように、キロ程・データ番号対応表320は、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lを所与の単位長毎に区切った各サンプリング点について、データ番号と、キロ程とを対応付けたデータテーブルである。
【0051】
サンプリング点は、図12に示すように、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lを、路線の起算点に近いほうの一方のキロポストP1から他方のキロポストP2に向かってサンプリング距離Δm(メートル)毎に区切った各位置である。サンプリング点のキロ程は、キロポストP1の呼称の管理キロ程(図12では、「M1」)に、キロポストP1から当該サンプリング点までの線路延長(図12では、「データ番号n×Δm」)を加算した距離である。サンプリング点のデータ番号は、キロポストP1を「0」として、キロポストP2に向かう順に割り当てられた連続番号である。
【0052】
図9図11に示すキロ程・データ番号対応表320は、何れも、キロポストP1,P2の呼称の管理キロ程の差ΔSを管理上の長さである1K(1キロメートル)としており、サンプリング距離Δmを1メートルとした場合の例を示している。
【0053】
図9に示すキロ程・データ番号対応表320は、キロポストP1,P2間に重キロも断キロも存在しない場合の例である。この場合、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lはその呼称の管理キロ程の差ΔSと等しく1キロメートルであり、サンプリング距離Δmが1メートルであるから、データ数Nは「1001」となる。
【0054】
図10に示すキロ程・データ番号対応表320は、キロポストP1,P2の間に重キロが存在する場合の例である。図10では、図2及び図3に示した3つのパターンの重キロそれぞれに対応する3つのキロ程・データ番号対応表320を(1)~(3)として示している。この場合、キロポストP1、P2間の推定線路延長Lは、重キロに相当するキロ程の長さが追加される。そのため、キロポストの呼称の管理キロ程の差ΔSである1キロメートルより長くなる。そして、データ数Nも、追加された長さに応じた分だけ「1001」より多くなる。
【0055】
図11に示すキロ程・データ番号対応表320は、キロポストP1,P2の間に断キロが存在する場合の例である。図11では、図4及び図5に示した3つのパターンの断キロそれぞれに対応する3つのキロ程・データ番号対応表320を(1)~(3)として示している。この場合、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lは、断キロに相当するキロ程の長さが省略される。そのため、キロポストの呼称の管理キロ程の差ΔSである1キロメートルより短くなる。そして、データ数Nも、省略された長さに応じた分だけ「1001」より少なくなる。
【0056】
2つのキロポストP1,P2間のキロ程・データ番号対応表320を作成した後(ステップS9)、キロ程付与装置1は、作成したキロ程・データ番号対応表320におけるサンプリング点のうちから、路線の起算点側のキロポストP1に対する対象位置Dの遠近度合「a/L」に該当する該当サンプリング点を選択し、その該当サンプリング点について算出したキロ程を、対象位置Dに対応するキロ程として決定する(ステップS11)。
【0057】
遠近度合に該当するサンプリング点とは、例えば図8において、キロポストP1,P2を結ぶ線分と、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lとを対応付けたときに、線分上の交点Qに該当する位置(最も近い位置)のサンプリング点である。キロ程・データ番号対応表320においては、キロポストP1,P2間の推定線路延長に沿ったN個のサンプリング点を等間隔で定めているから、このデータ数Nに対象位置DのキロポストP1に対する遠近度合「a/L」を乗じた値である「N×(a/L)」が、交点Qに該当する位置のサンプリング点、すなわち、遠近度合に該当するサンプリング点のデータ番号となる。キロ程・データ番号対応表320において、そのデータ番号に対応付けられているキロ程を、対象位置Dに対応するキロ程とする。
【0058】
[機能構成]
図13は、キロ程付与装置1の機能構成の一例を示す図である。キロ程付与装置1は、上述のように、データベースであるキロ程管理テーブル310を用いて、線路沿線の所与の対象位置Dに対応するキロ程を決定する装置である。図13に示すように、キロ程付与装置1は、入力部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成され、一種のコンピュータシステムとして実現される。なお、キロ程付与装置1は、1台のコンピュータで実現してもよいし、複数台のコンピュータを接続して構成することとしてもよい。
【0059】
入力部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等の音出力装置で実現され、処理部200からの音信号に基づく各種音出力を行う。通信部108は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される通信装置であり、所与の通信ネットワークに接続して外部装置とのデータ通信を行う。
【0060】
処理部200は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置や演算回路で実現されるプロセッサーであり、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、入力部102や通信部108からの入力データ等に基づいて、キロ程付与装置1の全体制御を行う。また、処理部200は、機能的な処理ブロックとして、対象位置取得部202、キロポスト選択部204、遠近度合算出部206、キロ程決定部208、を有する。処理部200が有するこれらの各機能部は、処理部200がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現することも、専用の演算回路で実現することも可能である。本実施形態では、前者のソフトウェア的に実現することとして説明する。
【0061】
対象位置取得部202は、地理座標系による対象位置Dの対象絶対位置を取得する。地理座標系による対象位置Dの対象絶対位置は、本実施形態では緯度経度で表される位置とする。対象絶対位置の取得は、例えば、入力部102を介したユーザの操作入力や記憶媒体からのデータの読み込み、通信部108を介したデータの受信によって実現できる。また、キロ程付与装置1を持ち運び可能に構成してその場の位置を対象位置Dとしてキロ程を付与させるならば、対象位置取得部202をGPS等のGNSS受信装置として、測位で得られた地理座標系の位置を対象絶対位置としてもよい。対象位置取得部202が取得した対象絶対位置は、対象位置情報330に記憶される。
【0062】
キロポスト選択部204は、対象位置取得部202が取得した対象位置Dの対象絶対位置に基づき、距離標であるキロポストを2つ選択する。具体的には、キロ程管理テーブル310を参照して、対象位置Dに近い(直線距離が短い)2つのキロポストを選択する。選択した2つのキロポストのうち、路線の起算点に近いほうの一方のキロポストをP1、他方のキロポストをP2とする(図7参照)。
【0063】
遠近度合算出部206は、キロポスト選択部204が選択した2つのキロポストP1,P2の絶対位置及び対象絶対位置に基づいて、2つのキロポストP1,P2に対する対象位置Dの遠近度合を算出する。遠近度合は、緯度及び経度に基づく平面座標における値として算出する。具体的には、2つのキロポストP1,P2を結ぶ線分を求め、この線分に対して対象位置Dから下ろした垂線との交点Qを求める。そして、キロポストP1,P2間の直線距離L0に対する、キロポストP1と交点Qとの間の直線距離aの比率「a/L」を、キロポストP1に対する対象位置Dの遠近度合とし、キロポストP1,P2間の直線距離Lに対する、キロポストP2と交点Qとの間の直線距離bの比率「b/L」を、キロポストP2に対する対象位置Dの遠近度合とする(図8参照)。
【0064】
キロ程決定部208は、キロ程及び重キロ・断キロ情報に基づく2つのキロポストP1,P2間の線路に沿った長さである推定線路延長Lと、遠近度合と、2つのキロポストP1,P2のうちの路線の起算点に近いほうの一方のキロポストP1のキロ程とを用いて対象位置Dに対応するキロ程を決定する。キロ程決定部208は、推定線路延長Lを所与の単位長毎に区切った各サンプリング点のキロ程を、推定線路延長と一方の距離標のキロ程とに基づいて算出するサンプリング点算出部210を有する。キロ程決定部208は、サンプリング点算出部210が算出した各サンプリング点の中から遠近度合に該当する該当サンプリング点を選択することで、該当サンプリング点について算出したキロ程を、対象位置Dに対応するキロ程として決定する。
【0065】
具体的には、サンプリング点算出部210が、キロ程管理テーブル310を参照して、2つのキロポストP1,P2間の線路について重キロ又は断キロが存在するかを判断し、その重キロ又は断キロを考慮して推定線路延長を算出する。そして、算出した推定線路延長Lを用いて、2つのキロポストP1,P2間のキロ程・データ番号対応表320を作成する。次いで、キロ程決定部208は、作成されたキロ程・データ番号対応表320におけるデータ数Nに対象位置DのキロポストP1に対する遠近度合「a/L」を乗じた値である「N×(a/L)」を求め、その値のデータ番号に対応付けられているキロ程を、対象位置Dに対応するキロ程とする。キロ程決定部208が決定したキロ程は、対象位置情報330に含めて記憶される。
【0066】
記憶部300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のIC(Integrated Circuit)メモリやハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部200がキロ程付与装置1を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が実行した演算結果や、入力部102や通信部108からの入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、キロ程付与プログラム302と、キロ程管理テーブル310と、キロ程・データ番号対応表320と、対象位置情報330と、が記憶される。
【0067】
キロ程付与プログラム302は、処理部200が当該プログラムに従ってキロ程付与処理(図4参照)を実行することで、対象位置にキロ程を付与するキロ程付与方法を実現するためのプログラムである。
【0068】
[作用効果]
本実施形態によれば、重キロ・断キロ情報を考慮して、線路沿線の所与の対象位置に対応するキロ程を一意に決定することができる。つまり、キロ程付与装置1は、キロ程管理テーブル310を参照して、対象位置Dに近い2つの距離標であるキロポストP1,P2を選択し、重キロ及び断キロを考慮した2つのキロポストP1,P2間の推定線路延長Lを算出する。そして、この推定線路延長と、2つのキロポストP1,P2に対する対象位置Dの遠近度合とに基づくことで、対象位置Dに対応するキロ程を決定する。これにより、線路の線形が不明である場合や、対象位置が軌道上に位置しない場合であっても、対象位置に対応するキロ程を精度よく一意に決定することが可能となる。
【0069】
また、算出した推定線路延長Lを用いて、2つのキロポストP1,P2間のキロ程・データ番号対応表320を作成する。キロ程・データ番号対応表320は、キロポストP1,P2間の推定線路延長Lをサンプリング距離Δm毎に区切った各サンプリング点について、データ番号と、キロ程とを対応付けたデータテーブルである。これらのサンプリング点のうちキロポストP1に対する対象位置Dの遠近度合に該当するサンプリング点についてのキロ程を、対象位置Dに対応するキロ程として決定する。サンプリング距離Δmが決定したいキロ程の精度となるから、所望の精度に応じてこのサンプリング距離Δmを定めることで、対象位置Dに対応するキロ程を高精度に決定することが可能となる。
【0070】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0071】
(A)絶対位置
上述の実施形態では、絶対位置を緯度経度の平面座標における位置とし、2つのキロポストP1,P2に対する対象位置Dの遠近度合を平面座標における値として算出した。これを、絶対位置を緯度経度高度の立体座標における位置としてもよい。この場合、緯度経度高度の三次元の絶対位置を用いて、遠近度合を立体座標における値として算出するようにしてもよい。又は、緯度経度高度の三次元の立体座標値のうち、緯度経度のみの二次元の平面座標値として用いる、或いは、緯度経度高度の三次元の立体座標値を地球表面(曲面)の平面座標に投影した二次元の平面座標値に変換して用いることで、遠近度合を平面座標における値として算出するようにしてもよい。
【0072】
(B)3つ以上のキロポスト
線路の線形や線路と対象位置Dとの位置関係によっては、2つのキロポストP1,P2が連続しない場合があり得る。連続するとは、線路に沿って隣り合って設置されている意味である。このような場合に対処するために、他のキロポストを用いることで、連続する2つのキロポストP1,P2を選択するようにしてもよい。例えば、連続する3つのキロポストであって、対象位置Dに最も近いキロポストを含む3つのキロポストP1,P2,P3を選択する。対象位置D及びキロポストP1,P2,P3の絶対位置の緯度経度を比較することで、対象位置Dに対応するキロ程として決定すべき2つのキロポスト間を特定する。3つのキロポストP1,P2,P3のうち、地球座標系上の絶対距離において対象位置Dに最も近いキロポストをキロポストP2とする。このキロポストP2は必ず選択するとして、組み合わせとなるもう1つのキロポストをキロポストP1,P3のどちらかから選択するのである。具体的には、キロポストP1,P3を結ぶ直線を求め、この直線にキロポストP2から下ろした垂線と当該直線との交点を求める。その交点の絶対位置と対象位置Dの絶対位置との緯度経度を比較することで、対象位置Dに対応するキロ程が、キロポストP1,P2間、キロポストP2,P3間のいずれに含まれるかを判断する。含まれる方のキロポストの組み合わせを選択することとする。
【0073】
(C)距離標
上述の実施形態では、距離標をキロポストとしたが、これ以外としてもよい。例えば、500メートル毎や100メートル毎の距離標としてもよい。また、固定的な間隔のポストではなく、或いは、固定的な間隔のポストと併用して、橋梁や曲線の始終点等の線路上の特徴的な場所や、任意の場所に距離標を設定することとしてもよい。その場合、上述の実施形態の「キロポスト」を「距離標」と読み替えて上述の実施形態を適用すればよい。
【符号の説明】
【0074】
1…キロ程付与装置
200…処理部
202…対象位置取得部
204…キロポスト選択部
206…遠近度合算出部
208…キロ程決定部
210…サンプリング点算出部
300…記憶部
302…キロ程付与プログラム
310…キロ程管理テーブル
320…キロ程・データ番号対応表
330…対象位置情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13