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特許7384768コミュニティ評価システム、コミュニティ評価方法、行動評価システム及び行動評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】コミュニティ評価システム、コミュニティ評価方法、行動評価システム及び行動評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20231114BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20231114BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020145591
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040740
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬
(72)【発明者】
【氏名】堀 悟
(72)【発明者】
【氏名】江端 智一
【審査官】橋沼 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077151(JP,A)
【文献】特開2013-101454(JP,A)
【文献】特開2008-257512(JP,A)
【文献】特開2002-083090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコミュニティの特定の活動が第2のコミュニティのアクティビティに与える影響を評価するコミュニティ評価システムであって、
前記第1のコミュニティの前記特定の活動の活動状況を示す活動情報データ、前記第2のコミュニティのアクティビティを示す履歴データ及び前記第2のコミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記活動情報データ、前記履歴データ及び前記コミュニケーション履歴データから、前記第1のコミュニティの前記特定の活動が前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションに反映され、前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションが前記第2のコミュニティのアクティビティに反映される過程を示す影響モデルを構築する影響モデル構築部と、
前記影響モデルにおける、前記第1のコミュニティの前記特定の活動と前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションとのつながりの大きさ及び遅延、及び前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションと前記第2のコミュニティのアクティビティとのつながりの大きさ及び遅延に基づき、前記過程の評価値を算出する影響モデル評価部とを有するコミュニティ評価システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記影響モデルは、複数のノードと前記ノード間をリンクするアークとを含み、第1層~第3層を有するネットワークモデルであって、
前記第1層は、前記第1のコミュニティの前記特定の活動を示すノードを含み、前記第2層は、前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションを示すノードを含み、前記第3層は、前記第2のコミュニティのアクティビティを示すノードを含み、
前記第1層のノードは、前記第1層の別のノードまたは前記第2層のノードにリンクされ、前記第2層のノードは、前記第2層の別のノードまたは前記第3層のノードにリンクされており、
前記第3層のノードは、前記アークと前記ノードをたどって、前記第1層のノードのうち、アークの終点とならないルートノードにたどりつくことが可能であるコミュニティ評価システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記影響モデル構築部は、前記記憶部に格納された前記活動情報データ、前記履歴データ及び前記コミュニケーション履歴データから、前記ノードが示す事象が出現するヒストグラムを作成し、前記影響モデルの前記アークは、当該アークの始点となるノードのヒストグラムのピークと当該アークの終点となるノードのヒストグラムのピークとの間の遅延時間、及び当該アークの終点となるノードのヒストグラムのピークの大きさの双方または少なくともいずれか一方が所定の条件を満たすように定められるコミュニティ評価システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記影響モデル評価部は、前記過程の評価値として前記ノードごとの評価値を算出し、
前記ノードの評価値は、当該ノードのヒストグラムのピークの大きさと前記ルートノードから当該ノードまでの経路に含まれるアークの遅延時間の総和とに基づき算出されるコミュニティ評価システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記影響モデル評価部が算出する前記過程の評価値に基づき、前記第1のコミュニティの前記特定の活動の前記第2のコミュニティのアクティビティへの貢献を評価するKPI評価部をさらに有し、
前記第1のコミュニティの前記特定の活動は複数回実施され、
前記KPI評価部は、前記第1のコミュニティの前記複数回のうちの所定の回の前記特定の活動に対する前記過程の評価値を、前記第1のコミュニティの前記複数回のうちの前記所定の回以外の回の前記特定の活動に対する前記過程の評価値と比較するコミュニティ評価システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記影響モデル評価部が算出する前記過程の評価値に基づき、前記第1のコミュニティの前記特定の活動の前記第2のコミュニティのアクティビティへの貢献を評価するKPI評価部をさらに有し、
前記第1のコミュニティの前記特定の活動は複数回実施され、
前記KPI評価部は、前記影響モデルにおける前記ノードの数および前記ノードごとの評価値に基づき、前記第1のコミュニティの複数回の前記特定の活動を比較するコミュニティ評価システム。
【請求項7】
コミュニティの構成員の行動を評価する行動評価システムであって、
前記コミュニティのアクティビティを示す履歴データ及び前記コミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記履歴データから前記構成員の前記コミュニティにおける第1の行動量、及び前記記憶部に格納された前記コミュニケーション履歴データから前記構成員の前記ネットワークコミュニティにおける第2の行動量を算出する行動量算出部と、
前記行動量算出部が算出した前記第1の行動量及び前記第2の行動量から、あらかじめ定めたKPIを算出するKPI評価部とを有する行動評価システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記コミュニティは地域コミュニティであって、
前記KPI評価部は、自治体KPI評価部を有し、
前記自治体KPI評価部は、所定の地域に居住する地域住民のそれぞれについて前記行動量算出部が算出した前記第1の行動量及び前記第2の行動量に基づき、前記所定の地域ごとに、居住する地域住民の行動状況を示す自治体KPIを算出する行動評価システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記所定の地域に居住する地域住民の行動状況を示すユーザインタフェース部をさらに有し、
前記ユーザインタフェース部は、前記所定の地域を表す地図上に、前記自治体KPIの時間変化をヒートマップとして示す行動評価システム。
【請求項10】
請求項7において、
前記履歴データは複数種類の履歴データを含み、
前記KPI評価部は、構成員KPI評価部を有し、
前記構成員KPI評価部は、前記複数種類の履歴データのうち前記構成員が選択した履歴データからの前記第1の行動量及び前記第2の行動量に基づき、前記コミュニティと前記ネットワークコミュニティにおける行動バランスを示す構成員KPIを算出する行動評価システム。
【請求項11】
記憶部と情報処理装置を有するコミュニティ評価システムを用いて、第1のコミュニティの特定の活動が第2のコミュニティのアクティビティに与える影響を評価するコミュニティ評価方法であって、
前記第1のコミュニティの前記特定の活動の活動状況を示す活動情報データを収集して前記記憶部に格納し、
前記第2のコミュニティのアクティビティを示す履歴データを収集して前記記憶部に格納し、
前記第2のコミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを収集して前記記憶部に格納し、
前記情報処理装置は、前記記憶部に格納された前記活動情報データ、前記履歴データ及び前記コミュニケーション履歴データから、前記第1のコミュニティの前記特定の活動が前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションに反映され、前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションが前記第2のコミュニティのアクティビティに反映される過程を示す影響モデルを構築し、
前記情報処理装置は、前記影響モデルにおける、前記第1のコミュニティの前記特定の活動と前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションとのつながりの大きさと遅延、及び前記ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションと前記第2のコミュニティのアクティビティとのつながりの大きさと遅延に基づき、前記過程の評価値を算出するコミュニティ評価方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1のコミュニティの前記特定の活動は複数回実施され、
前記情報処理装置は、前記第1のコミュニティの前記複数回のうちの所定の回の前記特定の活動に対する前記過程の評価値を、前記第1のコミュニティの前記複数回のうちの前記所定の回以外の回の前記特定の活動に対する前記過程の評価値と比較するコミュニティ評価方法。
【請求項13】
記憶部と情報処理装置を有する行動評価システムを用いて、コミュニティの構成員の行動を評価する行動評価方法であって、
前記コミュニティのアクティビティを示す履歴データを収集して前記記憶部に格納し、
前記コミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを収集して前記記憶部に格納し、
前記情報処理装置は、前記記憶部に格納された前記履歴データから前記構成員の前記コミュニティにおける第1の行動量、及び前記記憶部に格納された前記コミュニケーション履歴データから前記構成員の前記ネットワークコミュニティにおける第2の行動量を算出し、前記第1の行動量及び前記第2の行動量から、あらかじめ定めたKPIを算出する行動評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニティ評価システム、コミュニティ評価方法、行動評価システム及び行動評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式あるいは生産様式の変化にともなって人々を取り巻くコミュニティは変化する。放送通信技術が未発達で、伝統的な社会においては、コミュニティは現にその地域に住む人々のコミュニティ(地縁コミュニティと呼ぶ)がほぼすべてであったであろう。その後の、第2次産業、第3次産業の拡大と市場経済の発達、都市化の進展などは、核家族化を進展させ、概ね、自身が住む地域への帰属感や関与を薄める方向に働いてきたといえる。その一方で、新たなコミュニティ、例えば同じ職場で働く人々のコミュニティ、あるいは同じ趣味を有する人々のコミュニティなどが生まれており、これらのコミュニティへの帰属感の方が地縁コミュニティへの帰属感よりも強い人の数は、現在では決して少なくないものと思われる。
【0003】
しかしながら、少子高齢化、自然災害の多発といった社会問題は、あらためて人々が定住する地域に根差したコミュニティの重要性を再認識させるものである。ある地域に定住する人々による定住地域での活動が活性化されているならば、その地域は住みやすいものとなり、さらには地域の持続的な活性化につながるものと期待される。
【0004】
特許文献1には、デジタルコミュニティへのアクセス手段を提供するプラットフォームが開示される。
【0005】
特許文献2には、複数のユーザのプロファイルから共通の話題を有するユーザを含むコミュニティを生成する情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-106669号公報
【文献】特開2017-228004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地域のコミュニティを活性化するため、地域に定住する人々のつながりを強めるための活動をあらためて見直し、積極的に地域に根差したコミュニティを活性化しようという試みも始まっている。例えば、お祭りなどのイベントを通じて、意識的に定住者のつながりを活性化しようという試みである。
【0008】
これらの試みの結果を評価する方法として、例えば参加者にアンケートをとるといったことが考えられる。しかしながら、これらの試みの狙いは、地域の人々の間のつながりを広げ、あるいは深めることにより、その結果として地域を活性化する、ということであるので、主観的な評価だけでなく、その試みによって人々の間のつながりをどの程度改善できたか、客観的、かつ定量的な指標により、さらには継続的に評価をすることが望ましい。客観的指標により試みの結果を時間軸上で可視化することにより、コミュニティの成長という観点から活動を評価することが可能になる。あるいは活動の改善点が明確になることが期待される。
【0009】
特許文献1、特許文献2は、いずれもネットワーク空間上のコミュニティに関し、特にリアル世界との相互作用について考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様であるコミュニケーション評価システムは、第1のコミュニティの特定の活動が第2のコミュニティのアクティビティに与える影響を評価するコミュニティ評価システムであって、第1のコミュニティの特定の活動の活動状況を示す活動情報データ、第2のコミュニティのアクティビティを示す履歴データ及び第2のコミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを格納する記憶部と、記憶部に格納された活動情報データ、履歴データ及びコミュニケーション履歴データから、第1のコミュニティの特定の活動がネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションに反映され、ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションが第2のコミュニティのアクティビティに反映される過程を示す影響モデルを構築する影響モデル構築部と、影響モデルにおける、第1のコミュニティの特定の活動とネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションとのつながりの大きさ及び遅延、及びネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションと第2のコミュニティのアクティビティとのつながりの大きさ及び遅延に基づき、過程の評価値を算出する影響モデル評価部とを有する。
【0011】
また、本発明の他の一実施態様である行動評価システムは、コミュニティの構成員の行動を評価する行動評価システムであって、コミュニティのアクティビティを示す履歴データ及びコミュニティの構成員が少なくとも参加するネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを格納する記憶部と、記憶部に格納された履歴データから構成員のコミュニティにおける第1の行動量、及び記憶部に格納されたコミュニケーション履歴データから構成員のネットワークコミュニティにおける第2の行動量を算出する行動量算出部と、行動量算出部が算出した第1の行動量及び第2の行動量から、あらかじめ定めたKPIを算出するKPI評価部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
コミュニティ間の作用を客観的、かつ定量的な指標により、さらには継続的に評価可能とする。
【0013】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】地縁型コミュニティの活動が地域コミュニティを変化させる様子を示す図である。
図2】コミュニティ評価システムのブロック図である。
図3】記憶部2に格納されるデータ例である。
図4】データ処理サーバ3の機能ブロック図である。
図5】影響モデルの例である。
図6A】関係性に基づくネットワークモデルの作成フローである。
図6B】共起性に基づくネットワークモデルの作成フローである。
図6C】共起辞書のデータ構造である。
図7】影響モデルにおいて関係性を示す特徴量の算出方法を説明するための図である。
図8】関係性を示す特徴量を付記した影響モデルの例である。
図9】評価値テーブルの例である。
図10】行動量算出部が算出する行動量について説明するための図である。
図11】自治体KPIの変動を示すヒートマップの例である。
図12】指定テーブルの例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
実施例1では、地域に根差すコミュニティ(地縁型コミュニティと呼ぶ)の活動が、当該地域においてどのように人のつながりを変化させ、変化したつながりが地域のコミュニティ(地域コミュニティ)をどのように変化させるのか、客観的かつ定量的な指標により継続的に評価する仕掛けについて説明する。地縁型コミュニティとは、例えば町内会などの団体であり、地域の活性化を目的とした何らかの特定の活動を行うことを活動目的に有する団体である。その限りにおいて、継続的に活動している団体であっても、一時的に活動する団体であっても構わない。一方、地域コミュニティは、ここでは地域住民の集合であり、少なくともゆるやかなつながりを有しているが、集団としての目的や活動の有無は問わない。地縁型コミュニティの構成員は、地域コミュニティの構成員であることが多いと想定されるが、地域コミュニティの構成員であることを条件とするものではない。
【0016】
図1に地縁型コミュニティの特定の活動が地域コミュニティのアクティビティを変化させる1つのシナリオを示す。地縁型コミュニティである町内会が地域のお祭り(特定の活動)を企画、実行し、お祭りを通じて地域の活性化を図るものである。まず、(1)企画段階では専ら町内会に閉じた活動が進む。(2)準備段階に移行すると、お祭りの準備に協力する町内会外部の協力者、お祭りへの参加予定者のような、お祭りをキーとした町内会と外部との接点が生じる。(3)お祭り当日には、地域住民のお祭りへの参加、SNSなどを通じたお祭りの賑わいの拡散により、人のつながりが拡大される。(4)その後、お祭りを通じて形成された人のつながりを通じて地域住民に行動変容が生じ、地域が活性化する。実施例1のコミュニティ評価システムの目的は、こうした地縁型コミュニティの活動が、地域コミュニティのアクティビティをどのように、あるいはどの程度変化させたのかを計測し、評価することである。あるいは、去年のお祭りでの変化に比べて、今年のお祭りでの変化はどうであったのかを比較し、評価することである。そして評価結果を分かりやすく、地縁型コミュニティの構成員、地縁コミュニティの構成員に表示し、さらなる行動変容へのフィードバックを可能にすることである。
【0017】
図2にコミュニティ評価システムを示す。最初に本システムの特徴を概説する。まず、上述の例で言えば、評価の対象は、お祭り、すなわち地縁型コミュニティの活動それ自体ではなく、地縁型コミュニティの活動が地域コミュニティの活性化にどの程度貢献するか、という点にある。したがって、お祭りを通じた地域住民のアクティビティ(例えば、交流活動、地域サービスの利用、地元での消費など)の変化が評価対象となる。このため、本実施例のコミュニティ評価システムでは地域コミュニティのアクティビティに関するリアルデータを広く収集する。
【0018】
また、評価にあたっては、地縁型コミュニティの特定の活動が、実際に地域コミュニティのアクティビティの変化にどのような作用を与えたのかについて推定する必要がある。そのため、地域住民が少なくとも参加するSNSなどのネットワークコミュニティにおけるコミュニケーション履歴データを利用する。スマートフォン、タブレットが広く普及したことにより、これらのコミュニケーションツールによって形成されるネットワークコミュニティが、人々の情報共有や行動に与える影響もこの数年間で飛躍的に大きくなっている。そこで、本システムでは、図1の過程を、地縁型コミュニティによるリアルでの活動が、ネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションに反映する過程、及びネットワークコミュニティにおけるコミュニケーションが地域コミュニティでのリアルのアクティビティの変化に反映する過程としてモデル化し(このモデルを影響モデルと呼ぶ)、それらの過程を通じた伝達の大きさや伝達の早さを指標として、地縁型コミュニティの特定の活動が地域コミュニティのアクティビティへの変化に与える大きさを評価する。
【0019】
図2に示すコミュニティ評価システムでは、データ収集サーバ1、データ処理サーバ3、リアルデータ収集システム4、コミュニケーションシステム5が、ネットワーク6によって互いに通信可能に接続されている。データ収集サーバ1は、リアルデータ収集システム4やコミュニケーションシステム5から評価対象の地域コミュニティ、ネットワークコミュニティの情報収集とその管理を行い、収集したデータを記憶部2に保存する。記憶部2はオンプレミスのストレージとして、収集したデータを格納する形態でもよいし、記憶部2はクラウド上のオブジェクトストレージとして、収集したデータにアクセスするためのデータパスをデータ収集サーバ1の記憶装置に保存する形態であってもよい。評価対象の地域コミュニティの実情等に応じて収集するリアルデータが決定され、それに応じたリアルデータ収集システム4が選択される。収集するリアルデータの種類によって、リアルデータ収集システムは異なるので、収集データの種類の異なるリアルデータ収集システム4ごとに符号a~zを付して示すことがある。データ処理サーバ3は、記憶部2に格納されたデータを用いて上述したような評価を実行する。
【0020】
図3に記憶部2に格納されるデータ例を示す。データの内容は一例であって、コミュニティ評価システムを構成するリアルデータ収集システム4、コミュニケーションシステム5を通じて収集したデータが格納される。匿名化などの前処理を行った状態で格納されていてもよい。
【0021】
地縁活動情報データ11は、リアルデータ収集システム4である地縁型コミュニティモニタシステムから収集されるデータであって、地縁型コミュニティの活動内容を表すデータである。例えば、町内会での打ち合わせの文字起こし(ディクテーション)、会議録や町内会メンバーの通信履歴などが含まれる。
【0022】
データ12~データ15は地域コミュニティのアクティビティを表すデータとして収集されるデータの例である。人流・車流情報データ12は、リアルデータ収集システム4である、地域に配置された人流センサや車流センサで計測される人流量、車流量のデータである。利用履歴データ13は、リアルデータ収集システム4である地域施設等の予約システムから得られる公民館等の予約、利用データである。注文履歴データ14は、リアルデータ収集システム4である地域店舗への予約や発注を管理する受注システムから得られる注文履歴データである。取引履歴データ15は、リアルデータ収集システム4である地域通貨を管理する地域通貨管理システムから得られる地域通貨の取引履歴データである。これらは、地域コミュニティにおけるアクティビティを示すデータとして選択される。地域コミュニティの実情に応じて、例示以外のデータを収集してもよく、例示したデータであっても収集しなくてもよい。
【0023】
コミュニケーション履歴データ16は、コミュニケーションシステム5から収集されるデータであって、ネットワークコミュニティ、例えばSNSでの投稿や参照といったコミュニケーション履歴データである。
【0024】
図4にデータ処理サーバ3の機能ブロック図を示す。データ処理サーバ3のハードウェアは、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)のような記憶装置を備える情報処理装置である。図4では、データ処理サーバ3の実行する機能を機能ブロック図で表現しており、その各機能は、ソフトウェアのプログラムコードをメインメモリに読み込み、プロセッサが読み込んだプログラムコードを実行することで実現される。情報処理装置がプログラムによって実現する機能を本実施例では「部」と称することがある。データ処理サーバ3は分散処理サーバにより実現されてもよく、ハードウェアの物理構成には限定されない。コミュニティの活動評価は、データ処理サーバ3の備える各機能を用いて実現される。
【0025】
(1)影響モデル推定部20
影響モデル推定部20は、地縁型コミュニティの特定の活動を通じた地域コミュニティのアクティビティの変化を評価するため、記憶部2に格納されたデータを用いて影響モデルの構築と影響モデルに基づく評価を行う。図5に影響モデル推定部20によって構築される影響モデル50を示す。影響モデル50は3つの層51~53を有している。第1層51は地縁活動情報データ11から構築される地縁型コミュニティの特定の活動を示すネットワークモデルである。地縁活動情報データ11にあらわれる単語(概念)をノードとし、ノード間の関係性をアーク(矢印)で表している。第2層52はコミュニケーション履歴データ16から構築されるネットワークコミュニティのコミュニケーションの内容を示すネットワークモデルである。コミュニケーション履歴データ16にあらわれる単語(概念)をノードとし、ノード間の関係性をアークで表している。第3層53は、地域コミュニティのアクティビティを示すノード群である。ノード群は地域コミュニティのアクティビティを示すデータ12~15から設定される。以下に説明する、地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21は、第1層と第2層のネットワークモデルを構築し、コミュニケーション・地域リアル影響モデル構築部22は、第2層と第3層のネットワークモデルを構築する。
【0026】
(1a)地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21
地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21におけるネットワークモデル(第1-2層)作成フローを図6Aに示す。まず、地縁活動情報データ11からノード候補を抽出する(S01)。地縁活動情報データ11に対して形態素解析を行い、地縁型コミュニティの特定の活動に関係し、地縁活動情報データに所定回数以上あらわれる単語(概念)を抽出して第1層51のノード候補とする。続いて、コミュニケーション履歴データ16からノード候補を抽出する(S02)。同様に、コミュニケーション履歴データ16に対して形態素解析を行い、コミュニケーション履歴データに所定回数以上あらわれる単語(概念)を抽出して第2層52のノード候補とする。
【0027】
続いてステップS01、ステップS02で抽出したノード候補について、共起辞書を用いて共起性に基づくネットワークモデルを生成する(S03)。ここで、共起性に基づくネットワークモデルとは、ノード間のアークがノードの示す単語(概念)の共起性に基づき設定されたネットワークモデルをいう。ステップS03の詳細を図6Bに示し、ステップS03で使用する共起辞書60のデータ構造を図6Cに示す。
【0028】
共起辞書60は、大量の文章データから、同一の文章内で単語(概念)の組として使われやすさを示したものである。共起辞書60の作成に使用する文章データは、例えば一般の書籍や新聞、Webサイトなどから収集された文章データであって、評価対象とする地域やコミュニティなどとの関係は必要ない。共起辞書60は例えば、図6Cに示すようにテーブル形式であって、単語(概念)カラム61、比較対象単語(概念)カラム62、共起度カラム63を有する。共起度は、当該単語(概念)と当該比較対象単語(概念)とが同一の文章内で現れる確率を表している。
【0029】
共起辞書60を用いて、共起性に基づくネットワークモデルを生成する。まず、ステップS01、ステップS02で抽出したノード候補について1つの単語(概念)Kを選択し(S11)、共起辞書60を検索し、単語(概念)Kとあらかじめ定めた最低共起度以上である比較対象単語(概念)集合Uを抽出する(S12)。例えば、単語(概念)Kが「お祭り」、あらかじめ定めた最低共起度が0.01300であった場合、図6Cの共起辞書60の場合、集合Uとしてレコード群64の比較対象単語(概念)が抽出される。続いて、単語(概念)Kと集合Uに含まれるノード候補とをリンクする(S13)。このリンクは共起性に基づくものであるので、このリンクのことを共起性アークと呼ぶ。集合Uが空集合でなければ(S14でNo)、集合Uから1つの単語(概念)Jを選択する(S15)。選択された単語(概念)Jがノード候補でなければ(S16でNo)、他の単語(概念)を単語(概念)Jとして選択し、選択された単語(概念)Jを単語(概念)Kとして(S17)、ステップS11から繰り返す。
【0030】
この結果集合Uが空集合となれば(S14でYes)、すべてのノード候補について、単語(概念)Kとして選択済みかどうかを確認する(S18)。すべてのノード候補について選択済みの場合は終了し、選択していない単語(概念)があれば単語(概念)Kとして選択し、ステップS11から繰り返す。
【0031】
このように生成された共起性に基づくネットワークモデルから、関係性に基づくネットワークモデルを生成する。まず、ステップS04(図6A)では、共起性アークの関係性を示す特徴量を抽出する。特徴量の算出はステップS03で生成されたネットワークモデルの全ての共起性アークに対して行うものとする。
【0032】
図7に、ノード候補54とノード候補55とをリンクする共起性アーク57(図5参照)について、関係性を示す特徴量を算出する例を示す。関係性を示す特徴量は、情報の伝搬速度(遅延時間)と伝搬量とする。まず、伝搬量としてノード候補が示す事象の単位時間あたり(例えば1日)の出現頻度を抽出する。検討対象である共起性アーク57の始点であるノード候補54は第1層51のノード候補である「お祭り」であるから、「お祭り」という単語が地縁活動情報データ11に出現するヒストグラム71を作成する。一方、終点であるノード候補55は第2層52のノード候補である「予定聞く」であるから、「(お祭り当日の)予定を聞く」という概念がコミュニケーション履歴データ16に出現するヒストグラム72を作成する。
【0033】
作成したそれぞれのヒストグラムのピークを抽出し、ヒストグラム71のピークとヒストグラム72のピークとの間の遅延時間から伝搬速度を求めることができる。以上のようにして、共起性アークごとに情報の伝搬速度と伝搬量とを抽出する。図7の例では、ヒストグラム71のピークであるD1とヒストグラム72のピークであるD2との差分である2日が伝搬速度となり、D2における「(お祭り当日の)予定を聞く」出現頻度である500人/日が伝搬量となる。
【0034】
ステップS05(図6A)では、共起性アークの関係性を示す特徴量に基づき、共起性アークの関係性を評価し、関係性に基づくネットワークモデルを生成する。すなわち、伝搬速度と伝搬量の双方が大きいものは情報の関係性が高く、その一方あるいは双方が小さいものは情報の関係性が低いと評価できる。そこで、共起性に基づくネットワークモデルにおいて、関係性が高いと評価された共起性アークは、関係性アークとしてそのまま残し、関係性が低いと評価される共起性アークは削除することにより、関係性に基づくネットワークモデルを生成する。
【0035】
(1b)コミュニケーション・地域リアル影響モデル構築部22
コミュニケーション・地域リアル影響モデル構築部22におけるネットワークモデル(第2-3層)作成フローは、地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21の作成フローと同様であるので、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0036】
第2層52のノード候補は、地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21が作成したネットワークモデルで得られている。第3層53のノード候補は、地域コミュニティのアクティビティを表すデータとして収集されるデータに基づいて設定する。例えば、図5に例示したノード候補58(「公民館で練習」)は利用履歴データ13に含まれる公民館の利用履歴に基づいて設定されている。
【0037】
設定された第2層52のノード候補、第3層53のノード候補に対して、地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21と同じ処理を実施し、第2層52、第3層53における関係性に基づくネットワークモデルを生成する。
【0038】
さらに、コミュニケーション・地域リアル影響モデル構築部22は、地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部21が構築したネットワークモデル(第1-2層)と自身が構築したネットワークモデル(第2-3層)とを統合し、図5に示す影響モデルを構築する。このとき、2つのネットワークモデルを統合するとともに、第1層51のいずれかのノード候補から第3層53のいずれかのノード候補まで関係性アークによってリンクされないノード候補については削除する(枝刈りという)。これにより、地縁型コミュニティの特定の活動からネットワークコミュニティのコミュニケーションを介して地域コミュニティのアクティビティに至る影響モデルが作成される。図5では、枝刈りされたノード候補を×印によって示している。
【0039】
(1c)影響モデル評価部23
影響モデル評価部23は、影響モデル50における各ノードの評価値Vを算出する。図8は、図5に示した影響モデル50の各ノードの伝搬量、各アークの伝搬速度(ここでは遅延時間として示している)を示したものである。なお、影響モデルにおいて、アークの終点とならないノードをルートノード(この例では「お祭り」)と呼び、ルートノードから中間のノード及びアークをたどってノードにたどりつくまでの遅延時間を総遅延時間と呼ぶ。このとき、各ノードの評価値V=伝搬量/総遅延時間として定義する。評価値Vは伝搬量が大きく、総遅延時間が小さい程、値が大きくなるため、活動同士の密接さを示す指標として用いることができる。
【0040】
例えば、図8の例ではノード81の評価値V81は500/2=250人/日、ノード82の評価値V82は50/(2+1)=16.67人/日、ノード83の評価値V83は5/(2+1+0.5)=1.43人/日となる。
【0041】
(2)KPI評価部30
KPI評価部30の地縁型コミュニティKPI評価部31は、影響モデル推定部20で構築した影響モデルとその評価値Vから、あらかじめ所定のKPI(Key Performance Indicator)を定めておくことにより、例えば毎年のお祭りについて定点観測を行うことによって、地縁型コミュニティの特定の活動による地域コミュニティの活性化への貢献を評価する。
【0042】
一つのKPI例は、評価値Vそのものを用いるものである。図9は、影響モデル50の各ノードの評価値Vをテーブル形式で表示した評価値テーブル90である。KPIを評価値テーブル90の評価値Vの値とすることができる。評価値Vが大きくなったノードについては、伝搬量及び/または伝搬速度が大きくなったと考えられ、地域コミュニティの活性化への寄与が大きくなっていると評価できる。また、KPIを評価値テーブル90のレコード数(すなわち影響モデルにおけるノード数)とおくこともできる。この場合、評価値テーブル90のレコード数が増大することは情報の伝達経路が多様化したことを意味し、地域コミュニティが活性化していると評価できる。
【0043】
また、KPIとして評価値Vに基づく新たな指標を作成してもよい。例えば、ノード83(「町の店に予約」)という地域コミュニティのアクティビティに、ルートノード80(「お祭り」)がどの程度影響を与えたかを示す指標である影響度Eを、その経路に含まれる全ノードの評価値Vの総和として定義する。図8の例では、影響度E=268.1人/日として算出される。ノード83のようにアークの始点とならないノードをエッジノードと呼ぶものとし、同様に第3層53の各エッジノードについて、影響度Eを算出する。なお、エッジノードによっては、ルートノード80から当該エッジノードに至る途中のノードにおいて伝搬量の単位が異なる場合がある。その場合には単純和をとることができないので、単位量の異なる評価値Vの組み合わせとして影響度Eを定義すればよい。
【0044】
影響度Eに使って、地縁型コミュニティの活動が、地域コミュニティのアクティビティに与える活動を評価することができる。例えば、毎年のお祭りにおいて、同じルートノード-エッジノード間の影響度Eを比較する。影響度Eが大きくなっていれば、ルートノードからエッジノードに至る過程における情報伝搬量が大きくなる、あるいは情報伝搬速度が速くなったといえ、地縁型コミュニティの特定の活動の影響力が大きくなったと評価することができる。また、影響度Eは地域の活性化にかかわる人数の大きさを反映するため、地域活性化の指標として用いることもできる。
【実施例2】
【0045】
実施例2では、地域住民がどのように外部社会につながっているか客観的かつ定量的な指標により継続的に評価する仕掛けについて説明する。実施例1と重複する説明は省略する。
【0046】
(1)行動量算出部25
実施例2では、地域住民がどのように外部社会につながっているかを示す行動量を算出する。行動量算出部25が算出する行動量について、図10を用いて説明する。行動量算出部25は、地域住民100ごとに、リアルデータ収集システム4から地域住民100の地域コミュニティにおける活動情報、コミュニケーションシステム5から地域住民100のネットワークコミュニティにおける活動情報を得る。なお、図10に示すように、地域住民100は複数のネットワークコミュニティに属している可能性もある。リアルデータ収集システム4からの情報はリアルな居住する地域コミュニティとのつながりを示し、コミュニケーションシステム5からの情報はネットワークコミュニティとのつながりを示す。そこで、収集データごとに地域住民の行動量Aを算出する。
【0047】
行動量Aは収集データごとに定義する必要があるが、例えば、街区の人流センサから、地域住民100の通過時間、頻度が計測されるとすると、計測期間T内の地域住民100の通過時間、頻度に基づき、行動量A=通過時間×頻度、のように定義できる。図10には、各収集データについて、行動量Aを定義するためのデータ例を例示している。なお、実施例2の処理を実行する行動評価システムのシステム構成は図2と同じであり、リアルデータ収集システム4、コミュニケーションシステム5からの収集データは記憶部2に記憶され、記憶部2に格納されたデータを用いて行動量の算出などを行う。
【0048】
(2)KPI評価部30
(2a)自治体KPI評価部32
KPI評価部30の自治体KPI評価部32は、行動量Aから、あらかじめ所定の地域ごとに当該所定の地域に居住する地域住民の行動状況を示すKPI(自治体KPIという)を定めておくことにより、例えば地域住民が孤立していないかなど、地域コミュニティの状況を評価する。自治体KPIを所定の地域に居住する地域住民の行動量の平均値として継続的にモニタすることにより、地域住民が外部社会との接点を失っていないか、継続的にモニタすることができる。このとき、行動量算出部25が算出する行動量には、地域コミュニティでの行動を示す第1の行動量とネットワークコミュニティでの行動を示す第2の行動量とがあるが、自治体KPIにおいてはこれらを同等に評価してもよく、どちらかに比重をおいて評価してもよい。
【0049】
UI(ユーザインタフェース)部40は、自治体KPIの時間変化を自治体の管轄する地域の地図上にヒートマップとして表示する。ヒートマップの例を図11に示す。ヒートマップ110には、地域を示す地図上に地域住民の居住地区を示すブロック111が設けられ、例えば、自治体KPIの値の低下が大きいほど、ブロック111の色を濃く表示する。これにより、自治体では自治体KPIが低下している地域を認識することができ、例えば見守り巡回員を増やす、地域のつながりを強めるためのイベントを提案するなどといった施策を検討することができる。
【0050】
(2b)住民KPI評価部33
KPI評価部30の住民KPI評価部33は、行動量Aから、あらかじめ地域コミュニティとネットワークコミュニティにおける行動バランスを示すKPI(住民KPIという)を定めておくことにより、例えば地域住民自身が地域コミュニティのつながりとネットワークコミュニティのつながりとのバランス状況を評価することができる。
【0051】
この場合、地域住民が実質的に関与することのない地域コミュニティのアクティビティがあれば、それを含めて行動量を算出していては、KPIの指標の意味が薄まってしまう。そこで、地域住民100は、行動評価システムが収集するデータのうち、実際に地域住民100にとって意味のある収集データを指定し、指定した収集データについての行動量を住民KPIの算出に使用するよう指定する。地域住民100は自ら住民KPIの時間変化をモニタすることにより、行動変容につなげることができる。
【0052】
図12に住民KPIのために使用する収集データを指定するための指定テーブル120の例を示す。データ種類欄121は収集データの種類(ここでは、リアルデータ収集システムを指定する)を示し、センシング欄122は、当該リアルデータ収集システムが収集するセンシングデータを示し、KPIフラグ欄123は当該センシングデータを住民KPIの算出に使用するかどうかを示している。
【0053】
以上、本発明を実施例、変形例に基づき説明したが、上記した実施例、変形例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな変形が可能である。例えば、地域コミュニティを例に説明したが、本発明は任意のコミュニティ、あるいはグループ、組織、チームの間における一方の活動が他方の活動に与える評価、構成員の行動把握を目的として使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:データ収集サーバ、2:記憶部、3:データ処理サーバ、4:リアルデータ収集システム、5:コミュニケーションシステム、6:ネットワーク、11:地縁活動情報データ、12:人流・車流情報データ、13:利用履歴データ、14:注文履歴データ、15:取引履歴データ、16:コミュニケーション履歴データ、20:影響モデル推定部、21:地縁リアル・コミュニケーション影響モデル構築部、22:コミュニケーション・地域リアル影響モデル構築部、23:影響モデル評価部、25:行動量算出部、30:KPI評価部、31:地縁型コミュニティKPI評価部、32:自治体KPI評価部、33:住民KPI評価部、40:UI部、50:影響モデル、60:共起辞書、71,72:ヒストグラム、90:評価値テーブル、100:地域住民、110:ヒートマップ、120:指定テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12