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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】重機の施工管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20231114BHJP
   G01S 19/53 20100101ALI20231114BHJP
   G01S 19/42 20100101ALI20231114BHJP
【FI】
E02D3/12 102
G01S19/53
G01S19/42
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020152955
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047184
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年 2月26日、日本基礎技術株式会社総合テクニカルセンターにおいて行われた性能評価試験
(73)【特許権者】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】寺本 哲平
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-040658(JP,A)
【文献】特開2000-160549(JP,A)
【文献】特開2018-080534(JP,A)
【文献】特開2017-190579(JP,A)
【文献】特開2001-040648(JP,A)
【文献】特開平10-280394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
G01S 19/53
G01S 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の位置誘導システムであって、
前記重機のうち施工部を除く略同じ高さの2箇所に取り付けられた2台のGNSSアンテナを介して、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機と、
前記重機の施工部下端の昇降量を計測する検出器と、
前記GNSS受信機の測定データ及び前記検出器の計測値に基づいて、前記施工部下端の高さを算出する演算部と、
前記重機の施工予定位置の地盤高が予め記憶された記憶部と、
前記重機の施工部先端の高さが前記地盤高と略一致するように、前記重機を誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部と、
前記誘導情報が表示される表示部と、
を備えていることを特徴とする重機の位置誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機を施工予定地点に誘導する位置誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に鋼管杭を打設する杭打機や特許文献1に示す軟弱地盤に固化材を注入撹拌して円柱状の改良体を造成する深層混合処理装置や軟弱地盤に強固な締固め砂杭を造成するための締固め地盤改良杭の造成装置等の重機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-57255号公報
【文献】特開2017-186752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、重機が施工する施工予定地点の地盤高は、厳密に規定されているところ、施工予定地点周辺における施工により施工予定地点の地盤が盛り上がる等して地盤高を正確に把握するのが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、重機を正しい地盤高に位置誘導するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る重機の位置誘導システムは、重機の位置誘導システムであって、前記重機のうち施工部を除く略同じ高さの2箇所に取り付けられた2台のGNSSアンテナを介して、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機と、前記重機の施工部下端の昇降量を計測する検出器と、前記GNSS受信機の測定データ及び前記検出器の計測値に基づいて、前記施工部下端の高さを算出する演算部と、前記重機の施工予定位置の地盤高が予め記憶された記憶部と、前記重機の施工部先端の高さが前記地盤高と略一致するように、前記重機を誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部と、前記誘導情報が表示される表示部と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、重機のオペレータが、表示部に表示される表示画面に基づいて、重機の施工部下端を地盤高に正確に位置誘導することができる。なお、重機の施工部とは、地盤高合わせの対象となる重機内の所定の部位を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重機の施工部先端を地盤高に正確に位置誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る施工機の位置誘導兼施工管理システムの構成を示す模式図。
図2】深層混合処理装置の構成を模式的に示す正面図。
図3】施工機の位置誘導の手順を示すフローチャート。
図4】1軸オーガの施工機を位置誘導する場合の位置誘導画面。
図5】2軸オーガの施工機を位置誘導する場合の位置誘導画面。
図6】深層混合処理装置を用いて改良体を造成する手順を示す模式図。
図7】施工機の施工管理の手順を示すフローチャート。
図8】施工機向け施工管理画面を示す模式図。
図9】監督者等向け施工管理画面を示す模式図。
図10】地盤高合わせの手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0013】
図1は、発明の一実施形態を示す位置誘導兼施工管理システム1を示す模式図である。また、図2は、位置誘導兼施工管理システム1で位置誘導及び施工管理を行う深層混合処理装置の構成を示す模式図である。なお、位置誘導兼施工管理システム1で位置誘導、施工管理を行う対象は、深層混合処理装置の他に、地盤改良機(三点杭打機、バックホウタイプ)、モーターグレーダ、アスファルトフィニッシャ、タイヤローラ、タイヤショベル、ブルドーザ又はバックホウ等であっても構わない。
【0014】
〈深層混合処理装置〉
深層混合処理装置2は、原地盤g内に堅固な地盤(着底層)に達する改良体を造成するものである。深層混合処理装置2は、施工機3と、スラリープラント4と、を備えている。なお、位置誘導兼施工管理システム1が位置誘導する施工機3の台数は、1台であっても2台以上であっても構わない。施工機3は、ベースマシン本体3aと、オーガ3bと、撹拌軸3cと、撹拌翼3dと、を備えている。
【0015】
ベースマシン本体3aには、施工機3で使用する電力を発電し供給する発電機3eが設置されている。なお、必要に応じて、施工機3で使用する圧縮空気を生成する図示しない空気圧縮機を設置しても構わない。
【0016】
オーガ3bは、リーダ3fに昇降自在に設けられている。リーダ3fは、ベースマシン本体3aに垂直に支持されている。
【0017】
撹拌軸3cは、図示しないスイベルを介してオーガ3bに正逆転駆動可能に連結されている。また、撹拌軸3cは、外管と内管から成る2重管構造を呈しており、外管及び内管が相対的に反対向きに駆動可能である。
【0018】
撹拌軸3cの下端には、撹拌翼3dが取り付けられている。撹拌翼3dは、公知の構造を採用しており、内管と一体に回転する第1の撹拌翼と外管と一体に回転する第2の撹拌翼とからなる籠状の撹拌混合部を形成している。また、撹拌翼3dには、図示しない固化材吐出口が設けられている。なお、撹拌軸3cは、2重管構造に限定されず、1重管構造であっても構わない。また、施工機3は、オーガ3b、撹拌軸3cがそれぞれ1台ずつ設けられた1軸式に限定されず、1重管構造のオーガ3b、撹拌軸3cがそれぞれ2台以上設けられたものであっても構わない。
【0019】
スラリープラント4は、セメントサイロ4aと、バッチャープラント4bと、グラウトポンプ4cと、を備えている。スラリープラント4は、セメントサイロ4a内に貯蔵された固化材としてのセメントをスラリー状に調合し、その固化材(セメントスラリー)をバッチャープラント4bを介してグラウトポンプ4cからチューブ管4d内に送る。そして、固化材は、撹拌軸3cの内管を介して固化材吐出口に供給される。なお、符号4eは、スラリープラント4で使用する電力を発電し供給する発電機である。
【0020】
〈位置誘導兼施工管理システム〉
位置誘導兼施工管理システム1は、施工機3に設置されたデータ収集兼支援装置10と、第1、第2の情報端末20、30と、を備えている。
【0021】
〈データ収集兼支援装置〉
データ収集兼支援装置10は、GNSSアンテナ11と、GNSS受信機12と、を備えている。GNSS受信機12は、GNSS衛星40から所定間隔毎(例えば、1秒毎)に送信されるGNSS信号をGNSSアンテナ11を介して受信し、施工機3に取り付けられた2台のGNSSアンテナ11の3次元位置をそれぞれ測位する。なお、施工機3の位置測位に用いられるGNSS(Global Navigation Satellite System)としては、GPS(Global Positioning System)の他、例えばGLONASS(GLObal Navigation Satellite System)による測位とGPSによる測位とを動的に切替えるものや、GPSとGLONASSを組合せて測位するもの等が考えられる。
【0022】
図2に示すように、施工機3に設けられた2台のGNSSアンテナ11のうち、前方のGNSSアンテナ11は、施工機3のリーダ3fの下部に取り付けられ、後方のGNSSアンテナ11は、施工機3の後部架台に取り付けられている。2台のGNSSアンテナ11の設置位置は、左右方向(Y軸:図2の紙面垂直方向)及び高さ方向(Z軸:図2の紙面上下方向)の各座標が略一致し、前後方向(X軸:図2の紙面左右方向)の座標が異なっている。これにより、例えば、GNSSアンテナ11を施工機3のリーダ3fの頂部に取り付けた場合には、リーダ3fが風圧で揺れてGNSSアンテナ11の位置検知が正しく行われない虞があり、また、オーガ3bの位置をX軸方向に微調整したりリーダ3fを傾斜させた場合にも、GNSSアンテナ11の位置検知が正しく行われない虞があるところ、前方のGNSSアンテナ11が、リーダ3fの下部に取り付けられていることにより、そのような風圧の影響やオーガ3bの位置調整やリーダ3fの傾きの影響を軽減することができる。
【0023】
データ収集兼支援装置10は、センサ13を備えている。センサ13は、施工機3による施工時の各種情報を取得するものであり、例えば、オーガ3bの傾きを計測する傾斜センサ、オーガ3bの回転数を計測する回転数検出器、オーガ3b下端の深度を計測する深度検出器、オーガ3bの昇降速度を計測する速度検出器、オーガ3bを回転させるモータの電流値を計測する電流検出器、固化材スラリーの流量を検出する検出器等である。
【0024】
データ収集兼支援装置10は、記憶部14と、制御部15と、表示部16と、通信部17と、を備えている。
【0025】
記憶部14は、設計位置座標DB14aと、施工情報DB14bと、を備えている。
【0026】
設計位置座標DB14aは、施工機3によって造成される円柱状の改良体を設ける施工予定地点の3次元座標である設計位置座標が予め記憶されている。なお、設計位置座標は、施工機3を位置誘導する上で必要なものが少なくとも含まれるものであればよく、例えば、施工機3を平面上で誘導する場合には、施工機3の高さ方向の座標が含まれていなくても構わない。
【0027】
施工情報DB14bには、センサ13が取得した施工情報が記憶される。また、施工情報DB14bには、センサ13が施工中に計測する各種データに基づいて施工状況を判定する判定基準が予め記憶されている。判定基準は、例えば、オーガ3bの下端が着底層に達したか否かを判定する着底基準や固化材スラリー流量が規定量に達したか否かを判定するスラリー基準等を含む。
【0028】
制御部15は、データ収集兼支援装置10を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部15は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部15の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。制御部15は、演算部15aと、誘導情報生成部15bと、表示画面生成部15cと、を備えている。
【0029】
演算部15aは、GNSS受信機12が取得したGNSS信号に基づいて、施工機3の3次元座標である現在位置座標を算出する。なお、施工機3の現在位置座標とは、施工機3内の任意の位置の座標を意味し、GNSS信号及びGNSS受信機12から施工機3の任意の部位(例えば、撹拌翼3d下端)までの既知のオフセット量に基づいて、施工機3内の任意の部位の座標が算出される。また、現在位置座標は、施工機3を位置誘導する上で必要なものが少なくとも含まれるものであればよく、例えば、施工機3を平面上で誘導する場合には、施工機3の高さ方向の座標は含まれていなくても構わない。
【0030】
誘導情報生成部15bは、現在位置座標が設計位置座標に一致するように施工機3を誘導する誘導情報を生成する。
【0031】
表示画面生成部15cは、施工現場に対応する2次元地図上に現在位置座標及び設計位置座標を表示する表示画面(位置誘導画面)を生成する。また、表示画面生成部15cは、センサ13が取得した施工情報を表示する表示画面(施工機向け施工管理画面、監督者等向け施工管理画面)を生成する。
【0032】
表示部16は、施工機3のキャビン内に設置されている。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
【0033】
通信部17は、施工現場内に構築された有線又は無線の通信回線を介して第1の情報端末20と通信可能に接続されている。第1の情報端末20は、施工現場内の作業員が保持するタブレット端末等である。第1の情報端末20は、表示画面を表示可能な表示部21を備えている。また、通信部17は、ネットワーク50を介して第2の情報端末30と通信可能に接続されている。第2の情報端末30は、遠隔地に設置された管理用コンピュータやタブレット端末等である。第2の情報端末30は、表示画面を表示可能な表示部31を備えている。
【0034】
また、データ収集兼支援装置10は、オペレータの入力動作を検知する図示しない入力部を備えている。入力部は、例えば、押下するボタンやタッチ入力を検知するタッチパネルである。また、データ収集兼支援装置10は、光や音を出力する図示しない出力部を備えている。
【0035】
〈位置誘導〉
次に、位置誘導兼施工管理システム1による位置誘導について、図3に基づいて説明する。図3は、施工機3を位置誘導する手順を示すフローチャートである。
【0036】
まず、施工機3による施工前に、施工現場内に造杭される予定の全ての改良体に関する設計位置座標が設計位置座標DB14aに記憶される(ステップS1)。
【0037】
次に、GNSS受信機12が、GNSSアンテナ11を介してGNSS信号を受信する(ステップS2)。
【0038】
次に、演算部15aが、GNSS信号に基づいて、施工機3の現在位置座標を算出する(ステップS3)。具体的には、2台のGNSSアンテナ11から施工機3内の任意の部位(例えば、撹拌翼3dの下端)までの既知のオフセット量を考慮することにより、任意の部位の座標を算出する。
【0039】
また、誘導情報生成部15bは、現在位置座標が施工予定位置の設計位置座標に一致するように、施工機3を誘導する誘導情報を生成する(ステップS4)。誘導情報は、例えば、設計位置座標に対する現在位置座標の相対的な位置関係を表す向きと距離(北に1m、東に2m等)である。
【0040】
また、表示画面生成部15cは、施工現場に対応する2次元地図上に現在位置座標及び設計位置座標を表示する位置誘導画面を生成する(ステップS5)。
【0041】
次に、制御部15が、表示部16に誘導情報及び位置誘導画面を表示させる(ステップS6)。
【0042】
図4は、1軸オーガを備えた施工機3を誘導する場合に、表示部16に表示される誘導情報及び位置誘導画面の一例である。図4(1)は、位置誘導画面の向きが、施工機3の進行方向と一致するように表示されるヘッドアップモードに設定されたものであり、図4(2)は、位置誘導画面の向きが、北向きと一致するように表示されるノースアップモードに設定されたものである。なお、位置誘導画面の向きは、任意に切換可能である。
【0043】
位置誘導画面上では、例えば、設計位置座標が杭を表すアイコンで表示され、このアイコンを施工情報DB15bに記憶された施工情報に基づいて、各杭の施工状態に応じて判別可能に表示するのが好ましい。図4(1)、(2)に示す位置誘導画面では、杭を表すアイコンが、「過日施工杭」、「本日施工杭」、「目標杭」、「未施工杭」で判別可能に表示されている。「過日施工杭」とは、前日以前に施工された改良体を意味し、「本日施工杭」とは、当日に施工された改良体を意味し、「目標杭」とは、これから施工する改良体を意味し、「未施工杭」とは、目標杭より後に施工予定の改良体を意味する。なお、図4中の誘導情報は、杭芯に対する撹拌翼3dの回転中心の相対的な位置関係を表す向きと距離に設定されている。
【0044】
図5は、2軸オーガを備えた施工機3を誘導する場合に、表示部16に表示される誘導情報及び位置誘導画面の一例である。図5(1)は、位置誘導画面の向きが、施工機3の進行方向と一致するように表示されるヘッドアップモードに設定されたものであり、図5(2)は、位置誘導画面の向きが、北向きと一致するように表示されるノースアップモードに設定されたものである。なお、位置誘導画面の向きは、任意に切換可能である。なお、図5中の誘導情報は、2軸オーガの各回転軸(右軸、左軸)から各回転軸で施工される左右の改良体の杭芯までの相対的な位置関係を表す向きと距離、及び2軸オーガの各回転軸を結んだ直線と左右1組の改良体の杭芯を結んだ直線との傾きである。
【0045】
また、表示画面生成部15cは、施工機3が施工予定地点に接近するにつれて、位置誘導画面のうち施工予定地点周辺を拡大するようにしても構わない。これにより、施工機3のオペレータが、施工予定地点への接近を視覚的に感知することができる。
【0046】
このようにして、施工機3のオペレータは、表示部16に表示される位置誘導画面で、施工機3と施工予定位置との相対的な位置関係を直感的に把握することができる。また、施工機3のオペレータは、表示部16に誘導情報が表示されることにより、施工機3をスムーズに移動させることができる。さらに、表示部16に表示される位置誘導画面の向きが図4(1)、図5(1)に示すヘッドアップモードに設定されることにより、施工機3のオペレータは、施工機3と施工予定位置との相対的な位置関係をさらに直感的に把握することができる。
【0047】
なお、施工機3の移動状況に応じて、表示画面生成部15cが、位置誘導画面上に誘導情報の確認を施工機3のオペレータに促すテキストメッセージを出力しても構わない(ステップS7)。なお、メッセージは、文字、図形、音声又はそれらの組み合わせであっても構わない。この場合には、テキストメッセージを含む位置誘導画面が、表示部16に表示される(ステップS8)。
【0048】
また、第1の情報端末20及び第2の情報端末30には、通信部17を介して誘導情報及び位置誘導画面が送られ(ステップS9、S10)、表示部21、31には、誘導情報及び位置誘導画面が表示される(ステップS11)。なお、第1の情報端末20及び第2の情報端末30のユーザが誘導情報を必要としない場合には、少なくとも位置誘導画面が第1の情報端末20及び第2の情報端末30に送られれば良い。
【0049】
これにより、施工現場内の作業者や遠隔地にいる監督者等が、表示部21、31を介して誘導情報及び位置誘導画面を共有することができる。また、表示部21、31に表示される位置誘導画面の向きは、第1の情報端末20、第2の情報端末30毎にそれぞれ切換可能であるが、図4(2)、図5(2)に示すノースアップモードに設定されるのが好ましい。
【0050】
〈施工管理〉
次に、位置誘導兼施工管理システム1による施工管理について、図面に基づいて説明する。
【0051】
まず、施工機3による地盤改良の手順について図6に基づいて説明する。具体的には、まず、図6中の(1)に示すように、撹拌軸3cの下端部に設けられた撹拌翼3dを所定の施工予定位置にセットする。次に、オーガ3bを起動させて、撹拌軸3cを回転駆動させる。
【0052】
そして、図6中の(2)に示すように、撹拌翼3dが原地盤gに貫入されると共に、固化材吐出口より固化材が吐出される。撹拌翼3dが原地盤g内に貫入されるにつれて、原地盤gには縦孔5が掘削されると共に、縦孔5内で掘削土と固化材とが撹拌されて成る混合土6が順次造成されて行く。撹拌軸3cの初期貫入速度は、例えば、0.5m/minに設定される。
【0053】
図6中の(3)に示すように、撹拌軸3cの下端が堅固な地盤(着底層)に達すると、即ち撹拌軸3cが着底すると、撹拌軸3cの貫入速度が減少すると共に撹拌軸3c及び撹拌翼3dを回転させるオーガ3bのモータ電流値が上昇する。これは、撹拌翼3dが堅固な地盤に達することにより、撹拌翼3dの回転抵抗が増大することにより起因する。なお、撹拌翼3dが着底したか否かは、撹拌軸3cの貫入速度が0.2~0.3m/minの状態が1~3分以上継続しているか、及び/又はオーガ3bのモータ電流値が所定値(モータの規格、種類等によって異なるが、概ね250~400A)以上の状態が1分以上継続しているか等を基準に判定されるのが一般的であり、これらの着底基準を満たす場合に、撹拌翼3dが着底したと判定される。
【0054】
次に、図6中の(4)、(5)に示すように、撹拌軸3cの下端が着底すると、撹拌軸3cを一度上昇させた後に堅固な地盤まで下降させるダブリング処理を行う。これにより、改良体の下端付近の混合土6を十分に混合することができる。
【0055】
そして、図6中の(6)、(7)に示すように、撹拌軸3cを回転させながら引き抜くことにより、混合土6を再度混合して円柱状の改良体7を縦孔5内に造成する。
【0056】
このようにして、深層混合処理装置2は、原地盤g内に堅固な地盤に達する改良体7を造成することができる。なお、深層混合処理装置2は、着底層に達する改良体7を造成するものに限定されず、例えば、着底層に達成させることなく所定の設計深度に達する改良体7を造成するものであっても構わない。
【0057】
次に、上述した施工機3による施工と並行して行う施工管理について、図7に基づいて説明する。
【0058】
まず、センサ13が各種情報(オーガ3bの傾き、オーガ3bの回転数、オーガ3b下端の深度、オーガ3bの昇降速度及びオーガ3bを回転させるモータの電流値等の施工情報)を計測する(ステップS20)。センサ13が取得した施工情報は、施工情報DB14bに記憶される(ステップS21)。
【0059】
次に、表示画面生成部15cは、施工情報を表示する表示画面(施工機向け施工管理画面、監督者等向け施工管理画面)を生成する(ステップS22)。なお、施工機向け施工管理画面とは、施工機3のオペレータが施工状況を把握する上で必要な施工情報が含まれる表示画面であり、監督者等向け施工管理画面とは、第1、第2の情報端末20、30を保持する監督者等が施工の進捗状況を把握する上で必要な施工情報が含まれる表示画面である。
【0060】
施工機向け施工管理画面の一例を図8に示す。図8に示す施工機向け施工管理画面は、目標深度及び現深度を示す瞬時値である深度項目、単位深さ当たりの撹拌軸3cの貫入速度を示す区間値及び現貫入速度を示す瞬時値が含まれる速度項目、単位深さ当たりの撹拌翼3dの回転数を示す区間値及び現回転数を示す瞬時値が含まれる交差回数項目、単位深度当たりの固化材の流入量の目標値及び現在値を示す瞬時値が含まれる区間流量項目、直近1m当たりの固化材の流入量の目標値及び現在値を示す瞬時値が含まれる瞬時流量項目、固化材の総量が含まれる積算流量項目、オーガ3bのモータ電流値の最大値及び現在値である瞬時値が含まれる電流項目、及び縦軸に撹拌翼3dの深度、横軸にモータ電流値を示すグラフが含まれる。
【0061】
また、監督者等向け施工管理画面の一例を図9に示す。図9に示す施工機向け施工管理画面は、杭のX座標及びY座標、地盤高(GL)、オーガ下端の打設深度、モータの最大電流値、モータが最大電流値を達した際のオーガ下端の深度、現在のスラリー流量、スラリー流量の設計値、撹拌軸3cの回転数及び施工開始から現在までのオーガ先端のZ座標の経時的な変化を示すグラフを含む。なお、オーガ先端のZ座標の経時的な変化を示すグラフは適宜省略しても構わない。
【0062】
次に、制御部15が、表示部16に施工管理画面を表示させる(ステップS23)。
【0063】
なお、施工の進捗状況に応じて、表示画面生成部15cが、施工機向け施工管理画面上に施工内容の適否を施工機3のオペレータに確認を促すテキストメッセージを出力し(ステップS24)、テキストメッセージを含む施工機向け施工管理画面が、表示部16に表示される(ステップS25)。例えば、予め記憶された着底基準に基づいて撹拌翼3dの下端が着底層に達していると推測される場合には、その旨のメッセージを出力することが考えられる。なお、メッセージは、文字、図形、音声又はそれらの組み合わせであっても構わない。
【0064】
また、第1の情報端末20及び第2の情報端末30には、通信部17を介して監督者等向け施工管理画面が送られ(ステップS26、S27)、表示部21、31には、監督者等向け施工管理画面が表示される(ステップS28)。
【0065】
これにより、施工現場内の作業者や遠隔地にいる監督者等が、表示部21、31を介して監督者等向け施工管理画面を共有することができる。
【0066】
さらに、施工の進捗状況に応じて、表示画面生成部22cが、施工管理画面上に施工内容の適否を施工機3のオペレータに確認を促すテキストメッセージを出力する(ステップS30)。例えば、予め記憶された着底基準に基づいて撹拌翼3dの下端が着底層に達していると推測される場合には、その旨のメッセージを出力することが考えられる。なお、メッセージは、文字、図形、音声又はそれらの組み合わせであっても構わない。
【0067】
また、データ収集兼支援装置10は、テキストメッセージを含む施工管理画面を受信し(ステップS31)、テキストメッセージを含む施工管理画面が表示部16に表示される(ステップS32)。
【0068】
〈地盤高合わせ〉
次に、施工機の位置誘導兼施工管理システム1による施工機3の撹拌翼3dの下端を所定の高さへ誘導する位置誘導(地盤高合わせ)について、図10に基づいて説明する。図10は、施工機3の撹拌翼3dの下端を所定の高さに誘導する手順を示すフローチャートである。なお、以下では、図3で説明した施工機3を施工予定地点のX座標、Y座標に略一致するように位置誘導した後に、地盤高合わせが行われる場合を例に説明するが、施工機3の位置誘導及び地盤高合わせの順序はこれに限定されるものではない。
【0069】
まず、施工機3による施工前に、施工現場内に造杭される予定の全ての改良体に関する設計位置座標(地盤高を含む)が設計位置座標DB14aに記憶される(ステップS30)。
【0070】
次に、GNSS受信機12が、GNSSアンテナ11を介してGNSS信号を受信する(ステップS31)。また、撹拌翼3dの原位置(例えば、撹拌翼3d下端のZ軸座標がリーダ3fの下端のZ軸座標と略等しい場合の撹拌翼3d下端の位置)からの昇降量を図示しない深度検出器で計測する(ステップS32)。
【0071】
次に、演算部15aが、GNSS受信機12が取得したGNSS信号、GNSS受信機12から原位置における撹拌翼3d下端までの既知のオフセット量、及び撹拌翼3dの原位置からの昇降量に基づいて、施工機3の施工部としての撹拌翼3dの下端のZ軸座標(撹拌翼下端座標)を算出する(ステップS33)。
【0072】
また、誘導情報生成部15bは、撹拌翼下端座標が設計位置座標のうちZ軸座標(地盤高)に一致するように、施工機3を誘導する誘導情報を生成する(ステップS34)。なお、上述したように、施工機3のX軸座標、Y軸座標の位置誘導が既に完了しているため、撹拌翼下端座標及び設計位置座標はZ軸方向(高さ方向)のみで構わない。誘導情報は、例えば、設計位置座標に対する撹拌翼下端座標の相対的な位置関係を表す向きと距離(下向きに50cm等)である。
【0073】
次に、制御部15が、表示部16に誘導情報を表示させる(ステップS35)。
【0074】
さらに、第1の情報端末20及び第2の情報端末30には、通信部17を介して誘導情報が送られ(ステップS36、S37)、表示部21、31には、誘導情報が表示されるように構成しても構わない(ステップS38)。
【0075】
このようにして、本発明の実施形態に係る施工機の位置誘導兼施工管理システム1は、前記施工機3に取り付けられ、GNSS衛星40が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機12と、GNSS受信機12の測定データに基づいて、施工機3の撹拌翼3d下端の高さを算出する演算部15aと、施工機3の施工予定位置の地盤高が予め記憶された設計位置座標DB14aと、撹拌翼3d先端の高さが地盤高と略一致するように、施工機3を誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部15bと、誘導情報が表示される表示部16と、を備えている。
【0076】
この構成によれば、オペレータは、表示部16に高さ誘導情報が表示されることにより、リーダ3fに対して撹拌翼3dを相対的に昇降させて、撹拌翼3dの地盤合わせをスムーズに行うことができる。また、施工現場内や遠隔地にいる監督者等が、表示部21、31を介して高さ誘導情報を共有することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した構成以外にも本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0078】
例えば、上述した位置誘導兼施工管理システム1は、施工機3の位置誘導と施工機3による地盤改良の施工管理とを兼ねた構成であるが、これらを機能ごとに分割しても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1 :位置誘導兼施工管理システム
2 :深層混合処理装置
3 :施工機
3a :ベースマシン本体
3b :オーガ
3c :撹拌軸
3d :撹拌翼
3e :発電機
3f :リーダ
4 :スラリープラント
4a :セメントサイロ
4b :バッチャープラント
4c :グラウトポンプ
4d :チューブ管
4e :発電機
5 :縦孔
6 :混合土
7 :改良体
10 :データ収集兼支援装置
11 :GNSSアンテナ
12 :GNSS受信機
13 :センサ
14 :記憶部
14a:設計位置座標DB
14b:施工情報DB
15 :制御部
15a:演算部
15b:誘導情報生成部
15c:表示画面生成部
16 :表示部
17 :通信部
20 :第1の情報端末
21 :表示部
30 :第2の情報端末
31 :表示部
40 :GNSS衛星
50 :ネットワーク
g :原地盤
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10