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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】車両用サイドエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20231114BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20231114BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20231114BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/231
B60R21/2346
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020177577
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068735
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠登
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】河村 和浩
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佑太
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102414051(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03536563(EP,A1)
【文献】特開2012-236491(JP,A)
【文献】特開2011-246095(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/231
B60R 21/2346
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの内部に収納され、側面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて乗員の側方で膨張展開されると共に、膨張展開状態で乗員の頭部の側方を覆う頭部チャンバと乗員の腰部の側方を覆う腰部チャンバとを備えたバッグ本体と、
前記バッグ本体の内部に設けられ、前記インフレータが接続される接続部と、前記バッグ本体の膨張展開状態で前記頭部チャンバと前記腰部チャンバとを上下に繋ぐダクト部とを含んで筒状に構成されると共に、膨張展開状態における後縁部の少なくとも一部が前記バッグ本体に縫製されたダクト部材と、
を有し、
前記ダクト部材は、前記バッグ本体の膨張展開状態においてシートバックの上端部よりも上方に位置する領域及び前記シートバックの上端部よりも下方に位置する領域に分離して縫製されている車両用サイドエアバッグ。
【請求項2】
前記バッグ本体と前記ダクト部材とが共縫いされている請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ。
【請求項3】
前記ダクト部材は、少なくとも前記接続部を含む領域で前記バッグ本体に縫製されている請求項1又は2に記載の車両用サイドエアバッグ。
【請求項4】
前記ダクト部材の一部及び前記頭部チャンバは、シートバックの上端部にシート幅方向に沿って折り畳んだ状態で収納されると共に、乗員の上体をシートバックに拘束するショルダベルトの上部後面とヘッドレストとの間の空間に向けて膨張展開される請求項1~3の何れか1項に記載の車両用サイドエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側面衝突時に乗員の側方で膨張展開されるサイドエアバッグが開示されている。この特許文献1に開示されているサイドエアバッグは、乗員の頭部を拘束する頭部保護膨張部(頭部チャンバ)と、乗員の腰部を拘束する腰部保護膨張部(腰部チャンバ)と、頭部保護膨張部と腰部保護膨張部とを繋ぐ中間膨張部とを含んで構成されている。また、特許文献1では、中間膨張部の内部にインナチューブ(ダクト部材)が配置されており、このインナチューブによって、インフレータで発生したガスが頭部保護膨張部及び腰部保護膨張部に分配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-105107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグではインナチューブ(ダクト部材)の長さが短いため、頭部チャンバ及び腰部チャンバを早期に膨張展開できない場合がある。この対策として、インナチューブの上端部を頭部チャンバまで延ばし、インナチューブの下端部を腰部チャンバまで延ばした構成が考えられる。しかしながら、インナチューブの長さを長くすれば、インフレータから流入した高圧のガスによってインナチューブが揺動し、頭部チャンバ及び腰部チャンバを狙いの位置に膨張展開させることが困難となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、頭部チャンバ及び腰部チャンバを狙いの位置で早期に膨張展開することができる車両用サイドエアバッグを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用サイドエアバッグは、車両用シートの内部に収納され、側面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて乗員の側方で膨張展開されると共に、膨張展開状態で乗員の頭部の側方を覆う頭部チャンバと乗員の腰部の側方を覆う腰部チャンバとを備えたバッグ本体と、前記バッグ本体の内部に設けられ、前記インフレータが接続される接続部と、前記バッグ本体の膨張展開状態で前記頭部チャンバと前記腰部チャンバとを上下に繋ぐダクト部とを含んで筒状に構成されると共に、膨張展開状態における後縁部の少なくとも一部が前記バッグ本体に縫製されたダクト部材と、を有し、前記ダクト部材は、前記バッグ本体の膨張展開状態においてシートバックの上端部よりも上方に位置する領域及び前記シートバックの上端部よりも下方に位置する領域に分離して縫製されている
【0007】
請求項1に係る車両用サイドエアバッグでは、車両用シートの内部にバッグ本体が収納されている。また、バッグ本体は、側面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて乗員の側方で膨張展開される。ここで、バッグ本体は、膨張展開状態で乗員の頭部の側方を覆う頭部チャンバと、乗員の腰部の側方を覆う腰部チャンバとを備えている。これにより、車両の側面衝突時にバッグ本体によって乗員の側部を広範囲で保護することができる。
【0008】
また、バッグ本体の内部には筒状に形成されたダクト部材が設けられており、このダクト部材は、インフレータが接続される接続部を備えている。また、ダクト部材は、バッグ本体の膨張展開状態で頭部チャンバと腰部チャンバとを上下に繋ぐダクト部を備えている。これにより、インフレータで発生したガスは、ダクト部材の接続部及びダクト部を介して頭部チャンバ及び腰部チャンバへ流入されることとなり、ダクト部材が設けられていない構成と比較して迅速に頭部チャンバ及び腰部チャンバへガスを流すことができる。さらに、ダクト部材の後縁部の少なくとも一部がバッグ本体に縫製されているため、ダクト部材へ高圧のガスが流入した場合であっても、ダクト部材の揺動を抑制することができ、頭部チャンバ及び腰部チャンバの膨張展開位置がずれるのを抑制することができる。
さらに、ダクト部材がシートバック上端部の上下に分離してバッグ本体に縫製されているため、ダクト部材のシートバック上端部に位置する部分はバッグ本体に縫製されていない。これにより、ダクト部材を通って頭部チャンバへガスが流れる際、バッグ本体の位置にかかわらず最短距離を通るようにダクト部材を配置することができる。
【0009】
請求項2に係る車両用サイドエアバッグは、請求項1において、前記バッグ本体と前記ダクト部材とが共縫いされている。
【0010】
請求項2に係る車両用サイドエアバッグでは、バッグ本体にダクト部材を共縫いすることにより、ダクト部材とバッグ本体とを個別に縫製した構成と比較して、製造工数を削減することができる。
【0011】
請求項3に係る車両用サイドエアバッグは、請求項1又は2において、前記ダクト部材は、少なくとも前記接続部を含む領域で前記バッグ本体に縫製されている。
【0012】
請求項3に係る車両用サイドエアバッグでは、ダクト部材の接続部がバッグ本体に縫製されている。ここで、ダクト部材においてインフレータが接続される接続部は、インフレータで発生したガスが初めに流入する部位であるため、接続部が揺動すれば、ガスの下流側に位置するダクト部全体が揺動することとなり、ガスの流路が安定しない。これに対して、接続部をバッグ本体に縫製すれば、接続部の揺動が抑制され、接続部の揺動に起因するダクト部の揺動を抑制することができる。
【0013】
請求項4に係る車両用サイドエアバッグは、請求項1~3の何れか1項において、前記ダクト部材の一部及び前記頭部チャンバは、シートバックの上端部にシート幅方向に沿って折り畳んだ状態で収納されると共に、乗員の上体をシートバックに拘束するショルダベルトの上部後面とヘッドレストとの間の空間に向けて膨張展開される。
【0014】
請求項4に係る車両用サイドエアバッグでは、頭部チャンバがショルダベルトの上部後面とヘッドレストとの間の空間に向けて膨張展開される。これにより、側面衝突時に乗員の頭部を早期に拘束することができる。また、頭部チャンバは、乗員の頭部とショルダベルトとの間に挟まれることでショルダベルトから反力を得ることができ、少ない容量で乗員の頭部を拘束することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用サイドエアバッグによれば、頭部チャンバ及び腰部チャンバを狙いの位置で早期に膨張展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る車両用サイドエアバッグが適用された車両用シートを示す正面図であり、サイドエアバッグが膨張展開した状態を示す。
図2】実施形態に係る車両用サイドエアバッグが適用された車両用シートを示す側面図であり、サイドエアバッグが膨張展開した状態を示す。
図3】実施形態におけるバッグ本体の縫製前のフラットパターンを示す図である。
図4】実施形態におけるダクト部材の縫製前のフラットパターンを示す図である。
図5】実施形態に係るサイドエアバッグの折り畳み前の状態を概略的に示す図である。
図6】実施形態に係るサイドエアバッグの変形例を示す、図5に対応する図である。
図7】(A)は実施形態に係るサイドエアバッグをシート前方側から見た状態を模式的に示す模式図であり、(B)は変形例に係るサイドエアバッグをシート前方側から見た状態を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態に係る車両用サイドエアバッグ10について説明する。なお、各図の矢印FR、矢印UP及び矢印RHはそれぞれ、車両用サイドエアバッグ10が搭載された車両用シート14のシート前側、シート上側及びシート右側を示している。前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート幅方向の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0020】
(車両用シート14)
図1に示されるように、本実施形態の車両用サイドエアバッグ10(以下、単に「サイドエアバッグ10」と称する。)が搭載された車両用シート14は、シートクッション16、シートバック18及びヘッドレスト20を含んで構成されている。また、図2に示されるように、本実施形態のサイドエアバッグ10とインフレータ42とを含んでサイドエアバッグ装置12が構成されている。なお、図1及び図2に示す車両用シート14は一例として、車両左側の運転席に配置されており、シート前方と車両前方とが一致した状態となっている。また、シート幅方向の左右と車両幅方向の左右とが一致した状態となっている。
【0021】
図1及び図2に示される車両用シート14には、実際の乗員の代わりに、衝突試験用のダミーPが着座している。このダミーPは、例えばWorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)である。以下、説明の便宜上、ダミーPを「乗員P」と称する。
【0022】
シートクッション16は、シート前後方向及びシート幅方向に延在されており、乗員Pの臀部及び大腿部を支持可能に構成されている。シートバック18は、シートクッション16の後端部に回動可能に連結されてシート上下方向に延在されており、乗員Pの背部を支持可能に構成されている。ヘッドレスト20は、シートバック18の上端部に設けられて乗員Pの頭部Hを支持可能に構成されている。
【0023】
(シートベルト装置24)
図1に示されるように、乗員Pは、シートベルト装置24によって車両用シート14に拘束されている。シートベルト装置24は、ウェビング26、タングプレート30、バックル32及び図示しないリトラクタを含んで構成されている。
【0024】
ウェビング26は、長尺帯状に形成されており、装着された状態で乗員Pの上体をシートバック18に拘束するショルダベルト26Aと、乗員の腰部Lを拘束するラップベルト26Bとを備えている。ショルダベルト26Aは、乗員Pの左側の肩部Sから右側の腰部Lにかけて斜めに延在されている。そして、ショルダベルト26Aの下端部は、タングプレート30に通されている。
【0025】
タングプレート30は、ウェビング26に通されており、シート左側に設けられたバックル32に着脱可能に構成されている。そして、タングプレート30をバックル32に装着することで、ウェビング26によって乗員Pが拘束された状態となる。
【0026】
ウェビング26は、タングプレート30からシート左側へ延在されており、このシート幅方向に延在された部分によってラップベルト26Bが構成されている。このため、ラップベルト26Bの右側端部は、ショルダベルト26Aの下端部に繋がっている。また、ラップベルト26Bの左側端部は、フロアパネル40上に設けられたベルトアンカ34に固定されている。
【0027】
ショルダベルト26Aの上端部は、車体に設けられた図示しないショルダアンカに巻き掛けられている。また、ウェビング26の端部は、図示しないリトラクタに巻き取られている。ここで、ウェビング26の急な引出し時には、リトラクタの緊急時ロック機構が作動してウェビング26の引出しをロックさせる構成となっている。また、リトラクタには、衝突検知時に作動してウェビング26を強制的に巻き取るプリテンショナ機構が設けられている。
【0028】
(サイドエアバッグ装置12)
図2に示されるように、サイドエアバッグ装置12は、インフレータ42とサイドエアバッグ10とを含んで構成されている。また、サイドエアバッグ10は、バッグ本体46とダクト部材48とを含んで構成されている。ダクト部材48は、ソック、インナチューブ、整流布、ディフューザともいう。
【0029】
インフレータ42は、略円筒形状に形成されたシリンダー型のガス発生装置であり、軸方向がシートバック18の骨格を構成する図示しないサイドフレームに沿った方向とされている。また、インフレータ42の下端部42Aは、サイドエアバッグ10の接続部46Aに接続されている。そして、このインフレータ42の下端部42Aにはガス噴出部が設けられており、車両の側面衝突が検知又は予知された場合にガス噴出部からガスが発生してサイドエアバッグ10へガスが供給される。
【0030】
サイドエアバッグ10は、シートバック18の内部に収納されており、インフレータ42で発生したガスが供給されることで膨張し、サイドエアバッグ10の膨張圧によってシートバック18の表皮が破断することで乗員Pに対してシート幅方向外側の側方に膨張展開される。
【0031】
ここで、サイドエアバッグ10は、乗員Pの肩部Sから腰部Lのシート幅方向外側で膨張展開される腰部チャンバ(下部チャンバ)46Bと、乗員Pの頭部Hのシート幅方向外側で膨張展開される頭部チャンバ(上部チャンバ)46Cとを含んで構成されている。そして、サイドエアバッグ10は、腰部チャンバ46Bと頭部チャンバ46Cとが連通した一体の袋体として構成されている。
【0032】
膨張展開状態の腰部チャンバ46Bは、シート幅方向から見てシートバック18の上部から下端部にかけて配置されており、上下方向中央部がシート前方側へ膨出された略楕円状に形成されている。また、膨張展開状態の頭部チャンバ46Cは、ヘッドレスト20からシートバック18の上端部にかけて配置されており、シート幅方向から見て乗員Pの頭部Hを覆うように略矩形状に形成されている。さらに、腰部チャンバ46Bと頭部チャンバ42Bとの間の部分は、シートバック18の上端部に位置しており、シート幅方向から見て車両前後方向の長さが短く形成されている。
【0033】
図1に示されるように、頭部チャンバ46Cは、ショルダベルト26Aの上部後面とヘッドレスト20との間の空間に向けて膨張展開されるように構成されている。本実施形態では一例として、頭部チャンバ46Cは、後述するダクト部材48と共にシートバック18の上端部にシート幅方向に沿って折り畳んだ状態で収納されている。そして、頭部チャンバ46Cへガスが供給されることで、頭部チャンバ46Cの膨張圧によりシートバック18の上端部の表皮が破断され、ショルダベルト26Aとヘッドレスト20との間の空間に向けて頭部チャンバ46Cが膨張展開するように構成されている。頭部チャンバ46C及びダクト部材48の折り畳み方は特に限定せず、ショルダベルト26Aとヘッドレスト20との間の空間に向かって膨張展開する構成であれば、種々の折り畳み方を採用し得る。
【0034】
(サイドエアバッグ10)
図3に示されるように、サイドエアバッグ10を構成するバッグ本体46は、二枚の基布52、54を縫製することにより略袋状に形成される。ここで、図3における基布52に示された二点鎖線S1は、基布52と基布54とを縫製する際の縫製予定部を示している。また、図3から図5の説明において上下前後を用いた場合、特に断りのない限り、サイドエアバッグ10の膨張展開状態におけるシート上下方向の上下、及びシート前後方向の前後を示すものとする。
【0035】
基布52は、接続部構成部52A、腰部チャンバ構成部52B及び頭部チャンバ構成部52Cを含んで構成されている。腰部チャンバ構成部52Bは、腰部チャンバ46Bとなる部位であり、上下方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。
【0036】
接続部構成部52Aは、インフレータ42が接続される接続部46A(図2参照)を構成する部位であり、腰部チャンバ構成部52Bの下部における後端部から後方へ向かって斜め上方へ突出した形状に形成されている。また、頭部チャンバ構成部52Cは、腰部チャンバ構成部52Bの上方に設けられており、略矩形状に形成されている。
【0037】
基布54は、基布52に対して左右対称の形状に形成されており、基布52と同様に接続部構成部54A、腰部チャンバ構成部54B及び頭部チャンバ構成部54Cを含んで構成されている。そして、基布52に基布54を重ね合わせた状態で、縫製予定部S1に沿って二枚の基布52、54を縫製することで、バッグ本体46が形成される。
【0038】
図5に示されるように、バッグ本体46の内部にはダクト部材48が設けられている。ダクト部材48は、上下端部が開放された略筒状に形成されており、接続部48A及びダクト部48Bを含んで構成されている。
【0039】
接続部48Aは、バッグ本体46の接続部46Aと略同一の形状に形成されており、インフレータ42が接続されるように構成されている。このため、インフレータ42は、バッグ本体46の接続部46A及びダクト部材48の接続部48Aの両方に接続される。本実施形態では一例として、インフレータ42の外周部から突出された図示しないスタッドボルトを接続部46A及び接続部48Aに貫通させ、ナットなどによってシートバック18のサイドフレームに締結される。
【0040】
ダクト部材48のダクト部48Bは、バッグ本体46の頭部チャンバ46Cと腰部チャンバ46Bとを上下に繋ぐようにシート上下方向に延在されている。そして、ダクト部48Bの上端部には、頭部チャンバ46C内に開放された上側開口部48Cが形成されている。また、ダクト部48Bの下端部には、腰部チャンバ46B内に開放された下側開口部48Dが形成されている。
【0041】
図4に示されるように、サイドエアバッグ10を構成するダクト部材48は、二枚の基布56、58を縫製することにより略筒状に形成される。ここで、図4における基布56に示された二点鎖線S2、S3、S4は、基布56と基布58とを縫製する際の縫製予定部を示している。
【0042】
基布56は、接続部構成部56A及びダクト部構成部56Bを含んで構成されている。接続部構成部56Aは、インフレータ42が接続される接続部48A(図5参照)を構成する部位であり、ダクト部48Bの下端部かつ後端部から後方へ向かって斜め上方へ突出した形状に形成されている。また、ダクト部構成部56Bは、上下方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。
【0043】
基布58は、基布56に対して左右対称の形状に形成されており、基布56と同様に接続部構成部58A及びダクト部構成部58Bを含んで構成されている。そして、基布56に基布58を重ね合わせた状態で、縫製予定部S2、S3、S4に沿って二枚の基布56、58を縫製することで、ダクト部材48が形成される。
【0044】
ここで、本実施形態では、ダクト部材48の後縁部の少なくとも一部がバッグ本体46に縫製されている。具体的には、図5に示されるように、バッグ本体46の一部とダクト部材48の一部とが縫製部60及び縫製部62において共縫いされている。図5において、太線で示す部分が共縫いされた部分である。
【0045】
縫製部60は、バッグ本体46における縫製予定部S1の一部と、ダクト部材48における縫製予定部S2とが共縫いされている部分である。具体的には、縫製部60は、接続部46A及び接続部48Aの下縁に沿って縫製された部分となっている。また、縫製部62は、接続部46A及び接続部48Aの上縁からバッグ本体46の後縁に沿ってダクト部材48の上端部まで縫製された部分となっている。
【0046】
このため、本実施形態では、バッグ本体46とダクト部材48が共縫いされた縫製部60、62は、接続部46Aを含む領域に設けられている。一方、バッグ本体46において、縫製部60、62を除いた縫製部64は、バッグ本体46の基布52及び基布54の二枚の基布のみが縫製された部分となっている。
【0047】
ダクト部材48において、縫製部60、62を除いた縫製部66は、図4に示される縫製予定部S4でダクト部材48の基布56及び基布58の二枚の基布のみが縫製された部分となっている。このため、縫製部66は、サイドエアバッグ10の製造後には外側から視認できない状態となる。
【0048】
バッグ本体46及びダクト部材48を共縫いする際には、ダクト部材48の縫製予定部S4で基布56及び基布58が縫製された状態で、バッグ本体46の内側にダクト部材48を位置決めして配置する。本実施形態では、バッグ本体46の接続部46Aとダクト部材48の接続部48Aとが略同一の形状となっているため、この部分でバッグ本体46とダクト部材48とを位置決めしてもよい。
【0049】
バッグ本体46とダクト部材48の位置決めが完了した後、バッグ本体46の外周に沿って所定の間隔でピンを打って仮止めする。そして、仮止めされた状態で、縫製部60、62、64で縫製することで、サイドエアバッグ10が製造される。
【0050】
また、バッグ本体46における頭部チャンバ46Cの後端部には、テザーTの一端部が縫い付けられている。テザーTは、長尺状の布材によって形成されており、テザーTの他端部が図示しないヘッドレストステーなどに固定されることで、頭部チャンバ46Cを狙いの位置に展開させる構成となっている。
【0051】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
図2に示されるように、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ10は、側面衝突の予知時又は検知時にインフレータ42からガスの供給を受けて乗員Pの側方で膨張展開される。ここで、バッグ本体46は、膨張展開状態で乗員Pの頭部Hの側方を覆う頭部チャンバ46Cと、乗員Pの腰部Lの側方を覆う腰部チャンバ46Bとを備えている。これにより、側面衝突時にバッグ本体46によって乗員Pの側部を広範囲で保護することができる。
【0053】
特に、頭部チャンバ46Cがショルダベルト26Aとヘッドレスト20との間の空間に膨張展開されるため、側面衝突時に乗員Pの頭部Hを早期に拘束することができる。また、頭部チャンバ46Cは、乗員Pの頭部Hとショルダベルト26Aとの間に挟まれることでショルダベルト26Aから反力を得ることができ、少ない容量で乗員Pの頭部Hを拘束することができる。
【0054】
ここで、図5に示されるように、バッグ本体46の内部には筒状に形成されたダクト部材48が設けられており、このダクト部材48は、インフレータ42が接続される接続部48Aを備えている。また、ダクト部材48は、バッグ本体46の膨張展開状態で頭部チャンバ46Cと腰部チャンバ46Bとを上下に繋ぐダクト部48Bを備えている。これにより、インフレータ42(図2参照)から発生したガスは、ダクト部材48の接続部48A及びダクト部48Bを介して頭部チャンバ46C及び腰部チャンバ46Bへ流入されることとなり、ダクト部材48が設けられていない構成と比較して迅速に頭部チャンバ46C及び腰部チャンバ46Bへガスを流すことができる。
【0055】
また、本実施形態では、縫製部60、62によってダクト部材48の後縁部の少なくとも一部がバッグ本体46に縫製されているため、ダクト部材48へ高圧のガスが流入した場合であっても、ダクト部材48の揺動を抑制することができる。この結果、頭部チャンバ46C及び腰部チャンバ46Bの膨張展開位置がずれるのを抑制することができ、頭部チャンバ46C及び腰部チャンバ46Bを狙いの位置で早期に膨張展開させることができる。特に、頭部チャンバ46Cの展開位置がずれてショルダベルト26Aの外側に展開されるのを効果的に抑制することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、バッグ本体46にダクト部材48が共縫いされている。これにより、ダクト部材48とバッグ本体46とを個別に縫製する場合と比較して、製造工数を削減することができる。
【0057】
さらにまた、本実施形態では、ダクト部材48の接続部48Aがバッグ本体46に縫製されているため、接続部48Aの揺動を抑制することができる。この結果、接続部48Aの揺動に起因して下流側のダクト部48Bが揺動するのを抑制することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、ダクト部材48の後縁の全体を縫製部60、62によってバッグ本体46に共縫いしたが、これに限定されない。例えば、図6に示される変形例の構造を採用してもよい。
【0059】
(変形例)
図6に示されように、本変形例に係る車両用サイドエアバッグ70(以下、単に「サイドエアバッグ70」と称する。)は、実施形態と同様にバッグ本体46とダクト部材48とを含んで構成されている。ここで、本変形例では、バッグ本体46とダクト部材48とが共縫いされている部分が異なっている。
【0060】
実施形態と同様に、縫製部60は、接続部46A及び接続部48Aの下縁に沿って縫製された部分となっている。
【0061】
一方、接続部46A及び接続部48Aの上縁からバッグ本体46の後縁に沿って共縫いされた縫製部72が設けられている。縫製部72は、バッグ本体46の膨張展開状態におけるシートバック18の上端部よりも下方の領域に対応している。すなわち、接続部46Aから腰部チャンバ46Bの上部までの領域でバッグ本体46とダクト部材48とが共縫いされている。
【0062】
また、ダクト部材48の上端部には、バッグ本体46の後縁に沿って共縫いされた縫製部74が設けられている。縫製部74は、バッグ本体46の膨張展開状態におけるシートバック18の上端部よりも上方の領域、すなわち頭部チャンバ46Cの領域に位置している。
【0063】
縫製部72と縫製部74との間の領域、すなわち、バッグ本体46の膨張展開状態におけるシートバック18の上端部に対応する領域は、共縫いされていない縫製部76となっている。すなわち、共縫いされた領域が上下に分離しており、ダクト部材48がバッグ本体46に縫製されていない縫製部76は、バッグ本体46に対して自由に移動できる領域となっている。
【0064】
以上説明した変形例に係るサイドエアバッグ70では、シートバック18の上端部の領域でダクト部材48が自由に移動できるため、頭部チャンバ46Cへのガスの供給をより迅速に行うことができる。
【0065】
この作用について、図7を参照して説明する。図7(A)は、実施形態に係る膨張展開状態のサイドエアバッグ10をシート前方側から見た模式図であり、図7(B)は、変形例に係る膨張展開状態のサイドエアバッグ70をシート前方側から見た模式図である。
【0066】
図7(A)に示されるように、実施形態のサイドエアバッグ10では、縫製部62によって腰部チャンバ46Bから頭部チャンバ46Cまでの領域でダクト部材48がバッグ本体46に共縫いされている。このため、ダクト部材48の位置は、バッグ本体46の位置に追従する。
【0067】
これに対して、図7(B)に示されるように、変形例のサイドエアバッグ70では、共縫いされた縫製部72と縫製部74とが上下に分離しており、この縫製部72と縫製部74の間の縫製部76の領域では、ダクト部材48がバッグ本体46に共縫いされていない。これにより、サイドエアバッグ70に高圧のガスが供給された際に、ダクト部材48が腰部チャンバ46Bと頭部チャンバ46Cとを最短距離で繋ぐ位置に配置させることができる。
【0068】
以上、実施形態及び変形例に係るサイドエアバッグ10、70について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、図5に示されるように、縫製部60及び縫製部62においてダクト部材48とバッグ本体46とを共縫いしたが、これに限定されない。すなわち、縫製が完了した筒状のダクト部材48をバッグ本体46の内部に配置した後、縫製部60及び縫製部62でバッグ本体46にダクト部材48を縫製してもよい。ただし、ダクト部材48とバッグ本体46とを共縫いした方が、製造工数を削減することができる。また、縫製に使用する縫製材の量も少なくて済むため、製造コストを削減する観点で有利である。
【0069】
また、上記実施形態では、図1に示されるように、頭部チャンバ46Cをショルダベルト26Aとヘッドレスト20との間の空間に膨張展開させる構成について説明したが、これに限定されない。例えば、頭部チャンバ46Cがショルダベルト26Aよりもシート幅方向外側に膨張展開される構造に採用してもよい。この場合であっても、ダクト部材48によって腰部チャンバ46Bと頭部チャンバ46Cとを上下に繋ぎ、ダクト部材48の後縁部をバッグ本体46に縫製すれば、頭部チャンバ46C及び腰部チャンバ46Bを狙いの位置で早期に膨張展開することができる効果が得られる。
【0070】
さらに、腰部チャンバは、乗員Pの腰部Lを側方から覆う形状であれば、図2で図示した形状に限定されない。同様に、頭部チャンバ46Cは、乗員Pの頭部Hを側方から覆う形状であれば、図2で図示した形状に限定されない。
【符号の説明】
【0071】
10、70 車両用サイドエアバッグ
14 車両用シート
18 シートバック
20 ヘッドレスト
26A ショルダベルト
42 インフレータ
46 バッグ本体
46B 腰部チャンバ
46C 頭部チャンバ
48 ダクト部材
48A 接続部
48B ダクト部
H 頭部
L 腰部
P 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7