IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許-積層型流体加温器 図1
  • 特許-積層型流体加温器 図2
  • 特許-積層型流体加温器 図3
  • 特許-積層型流体加温器 図4
  • 特許-積層型流体加温器 図5
  • 特許-積層型流体加温器 図6
  • 特許-積層型流体加温器 図7
  • 特許-積層型流体加温器 図8
  • 特許-積層型流体加温器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】積層型流体加温器
(51)【国際特許分類】
   F28F 17/00 20060101AFI20231114BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20231114BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F28F17/00 511
F28F3/08 311
F28D9/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020218727
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103839
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰健
(72)【発明者】
【氏名】東 正高
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134066(JP,A)
【文献】特開2019-211166(JP,A)
【文献】特開2006-057867(JP,A)
【文献】特開2017-166775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0076518(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110986653(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 17/00
F28F 3/08
F28D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、
前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、
を有する積層体と、
前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、
を備えており、
前記加温対象流体は、前記加温流体の凝固点より低い温度の流体であって、
前記回収装置は、前記加温流体チャネル内での前記加温流体の流動が停止された際に、前記加温流体チャネルから前記加温流体を回収する、積層型流体加温器。
【請求項2】
前記回収装置は、前記複数の加温流体チャネル内の前記加温流体を回収する際に前記複数の加温流体チャネルから流出した前記加温流体を受け入れる受入管または貯留部を含む、請求項1に記載の積層型流体加温器。
【請求項3】
前記受入管または前記貯留部は、前記複数の加温流体チャネルに連通するヘッダに接続されるか、または、前記ヘッダに接続された流入配管若しくは流出配管に接続されている、請求項2に記載の積層型流体加温器。
【請求項4】
加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、
前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、
を有する積層体と、
前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、
を備えており、
前記回収装置は、ガスを押し出すガス噴出部と、前記ガス噴出部からの前記ガスによって前記複数の加温流体チャネルから押し流された前記加温流体を受け入れる受入管または貯留部と、を含む、積層型流体加温器。
【請求項5】
前記ガス噴出部は、前記複数の加温流体チャネルに連通するヘッダに接続されるか、または、前記ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されている、請求項4に記載の積層型流体加温器。
【請求項6】
前記ガス噴出部は、前記複数の加温流体チャネルに連通する複数のヘッダのうちの前記複数の対象流体チャネルの入口により近い側の第1ヘッダに接続されるか、または前記第1ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続され、
前記受入管または前記貯留部は、前記複数のヘッダのうち前記複数の加温流体チャネルを通して前記第1ヘッダに連通する第2ヘッダに接続されるか、または前記第2ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されている、請求項4に記載の積層型流体加温器。
【請求項7】
加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、
前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、
を有する積層体と、
前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、
を備えており、
前記加温流体層には、前記対象流体層に隣接する第1加温流体層と、前記対象流体層に隣接することなく前記第1加温流体層に隣接する第2加温流体層と、が含まれており、
前記複数の加温流体チャネルは、前記第1加温流体層に形成された複数の第1加温流体チャネルと前記第2加温流体層に形成された複数の第2加温流体チャネルと、を含み、
前記回収装置は、前記複数の第1加温流体チャネル及び前記複数の第2加温流体チャネルから選択的に前記加温流体を回収する、積層型流体加温器。
【請求項8】
前記加温流体層には、前記第1加温流体層を含む2つの第1加温流体層が含まれており、
前記第2加温流体層は、前記2つの第1加温流体層に挟持されている、請求項7に記載の積層型流体加温器。
【請求項9】
前記複数の第2加温流体チャネルは、前記第2加温流体層において、前記複数の第1加温流体チャネルの入口に対応する位置から当該複数の第1加温流体チャネルの中間部に対応する位置に亘る範囲にのみ形成されている、請求項7または8に記載の積層型流体加温器。
【請求項10】
前記複数の加温流体チャネルは、前記回収装置による前記加温流体の回収時に、前記複数の加温流体チャネル内の前記加温流体が重力で流れて前記複数の加温流体チャネルから流出する構造である、請求項1から3及び7から9の何れか1項に記載の積層型流体加温器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型流体加温器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、低温の液化ガス等の加温対象流体を流通させる第1流路層と、不凍液等の加温流体を流通させる第2流路層と、を備え、これら第1流路層と第2流路層とが積層された構成の積層型流体加温器が知られている。特許文献1に開示された積層型流体加温器では、加温流体が比較的低温になり易い場所において、第1流路層と第2流路層の間に伝熱性能が低い調整層を設けることにより、加温流体が凍結することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6118008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、伝熱性能の低い調整層を第1流路層と第2流路層との間に設けることによって、加温流体と加温対象流体との間の伝熱を局所的に抑制し、それによって加温流体の凍結を抑制するものである。この技術は、第1流路層に加温対象流体が流通し、第2流路層に加温流体が流通する通常時においては、加温流体の凍結を抑制できるかもしれない。しかしながら、緊急停止時等のように、加温流体の流通が停止した場合においては、加温流体と加温対象流体との間の伝熱を抑制したとしても、何れは加温流体が凍結してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加温流体の流通が停止された場合であっても、加温流体が凍結することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る積層型流体加温器は、加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、を有する積層体と、前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、を備えており、前記加温対象流体は、前記加温流体の凝固点より低い温度の流体であって、前記回収装置は、前記加温流体チャネル内での前記加温流体の流動が停止された際に、前記加温流体チャネルから前記加温流体を回収する。
【0007】
本発明に係る積層型流体加温器では、回収装置が加温流体層の複数の加温流体チャネルに溜まった加温流体の少なくとも一部を回収する。したがって、加温流体チャネルに加温流体が溜まった状態に維持されることを防止できるため、加温流体の流動が停止された状態でも加温対象流体によって加温流体が必要以上に冷却されることを防止できる。したがって、加温流体チャネル内で加温流体が凍結することを防止できる。特に、加温流体層に形成された加温流体チャネルが細径の流路で形成される場合には、加温流体が加温流体チャネル内で流動しないときに早期に凍結する恐れがある。しかし、回収装置によって加温流体を回収すれば、加温流体が加温流体チャネル内で凍結することを回避できる。
【0008】
前記回収装置は、前記複数の加温流体チャネル内の前記加温流体を回収する際に前記複数の加温流体チャネルから流出した前記加温流体を受け入れる受入管または貯留部を含んでもよい。この態様では、加温流体チャネルから流出した加温流体が受入管または貯留部に回収される。
【0009】
前記受入管または前記貯留部は、前記複数の加温流体チャネルに連通するヘッダに接続されるか、または、前記ヘッダに接続された流入配管若しくは流出配管に接続されていてもよい。
【0010】
この態様では、加温流体チャネルから流出した加温流体がヘッダを通して受入管または貯留部に回収されるか、または、ヘッダ及び流入配管若しくは流出配管を通して受入管または貯留部に回収される。これらの場合のうち、受入管または貯留部がヘッダに接続される場合において、この接続部分が加温流体チャネルよりも下の位置であれば、より多くの加温流体をヘッダを通して回収できる。また、受入管または貯留部がヘッダに接続される場合において、この接続部分が流入配管若しくは流出配管よりも高い位置にある場合には、流入配管及び流出配管内の加温流体が受入管または貯留部に流入しないため、受入管または貯留部を小型化できる。また、受入管または貯留部が流入配管若しくは流出配管に接続される場合には、流入配管若しくは流出配管よりも上側に位置する加温流体チャネル内の加温流体を回収できるため、流入配管若しくは流出配管を通して多くの加温流体を回収できる。
【0011】
本発明に係る積層型流体加温器は、加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、を有する積層体と、前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、を備えており、前記回収装置は、ガスを押し出すガス噴出部と、前記ガス噴出部からの前記ガスによって前記複数の加温流体チャネルから押し流された前記加温流体を受け入れる受入管または貯留部と、を含
【0012】
この態様では、ガス噴出部からのガスの圧力を利用して、加温流体チャネル内の加温流体を加温流体チャネルから流出させる。したがって、重力で加温流体を流出させる構成に比べ、加温流体を迅速に回収できる。
【0013】
前記ガス噴出部は、前記複数の加温流体チャネルに連通するヘッダに接続されるか、または、前記ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されていてもよい。
【0014】
この態様では、ガス噴出部は、ヘッダ内の加温流体又は流入配管若しくは流出配管内の加温流体に向けてガスを流す。このときのガス圧力を受けて加温流体チャネル内の加温流体が加温流体チャネルから押し出されて、受入管または貯留部に回収される。
【0015】
前記ガス噴出部は、前記複数の加温流体チャネルに連通する複数のヘッダのうちの前記複数の対象流体チャネルの入口により近い側の第1ヘッダに接続されるか、または前記第1ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されてもよい。この場合において、前記受入管または前記貯留部は、前記複数のヘッダのうち前記複数の加温流体チャネルを通して前記第1ヘッダに連通する第2ヘッダに接続されるか、または前記第2ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されていてもよい。
【0016】
この態様では、ガス噴出部が対象流体チャネルの入口により近い側の第1ヘッダに接続されるか、または第1ヘッダに接続される流入配管若しくは流出配管に接続されている。このため、ガス噴出部からのガスが対象流体チャネルの入口に対応する位置により早く到達するため、加温流体チャネルのうち、より低温となる傾向がある対象流体チャネルの入口に対応する位置から加温流体をより早く逃がすことができる。
【0017】
本発明に係る積層型流体加温器は、加温対象流体を流すための複数の対象流体チャネルを有する対象流体層と、前記対象流体層に積層され、前記対象流体層を加温する加温流体を流すための複数の加温流体チャネルを有する加温流体層と、を有する積層体と、前記複数の加温流体チャネルに溜まった前記加温流体の少なくとも一部を回収する回収装置と、を備えており、前記加温流体層には、前記対象流体層に隣接する第1加温流体層と、前記対象流体層に隣接することなく前記第1加温流体層に隣接する第2加温流体層と、が含まれており、前記複数の加温流体チャネルは、前記第1加温流体層に形成された複数の第1加温流体チャネルと前記第2加温流体層に形成された複数の第2加温流体チャネルと、を含、前記回収装置は、前記複数の第1加温流体チャネル及び前記複数の第2加温流体チャネルから選択的に前記加温流体を回収する
【0018】
この態様では、第1加温流体層及び第2加温流体層により加温対象流体の加温能力を高めることができ、その一方で、複数の加温流体チャネルから流出させる加温流体の流出量を低減できる。
【0019】
前記加温流体層には、前記第1加温流体層を含む2つの第1加温流体層が含まれていてもよい。この場合、前記第2加温流体層は、前記2つの第1加温流体層に挟持されていてもよい。
【0020】
この態様では、第1加温流体チャネル内の加温流体に比べて第2加温流体チャネル内の加温流体の方が凍結し難いため、第2加温流体チャネルの加温流体であれば回収しやすい。一方で、第2加温流体チャネル内の加温流体に比べて第1加温流体チャネル内の加温流体の方が凍結しやすいため、第1加温流体チャネル内の加温流体を選択的に回収すれば、加温流体の凍結を回避しやすい。
【0021】
前記複数の第2加温流体チャネルは、前記第2加温流体層において、前記複数の第1加温流体チャネルの入口に対応する位置から当該複数の第1加温流体チャネルの中間部に対応する位置に亘る範囲にのみ形成されていてもよい。
【0022】
この態様では、第2加温流体層において、第1加温流体チャネルの中間部に対応する位置から第1加温流体チャネルの出口に対応する位置に亘る範囲においては、第2加温流体チャネルが形成されない。すなわち、より高温になる第1加温流体チャネルの出口側においては、第2加温流体チャネルを設けなくても、加温対象流体を所望の温度にすることができる場合がある。この場合、上記の範囲において第2加温流体チャネルを形成しないようにすれば、第2加温流体チャネルを形成するのに要する手間を低減できる。しかも、第2加温流体チャネルから回収する加温流体の量を低減できる。
【0023】
前記複数の加温流体チャネルは、前記回収装置による前記加温流体の回収時に、前記複数の加温流体チャネル内の前記加温流体が重力で流れて前記複数の加温流体チャネルから流出する構造であってもよい。
【0024】
この態様では、加温流体チャネル内の加温流体を押し出す加圧手段、加温流体チャネル内の加温流体を吸引する吸引手段を設けることなく、加温流体チャネル内の加温流体を回収できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、加温流体の流通が停止された場合であっても、加温流体が凍結することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る積層型流体加温器の斜視図である。
図2】前記積層型流体加温器の積層体の断面構成を部分的に拡大して示す図である。
図3】(a)(b)加温流体チャネルの形状を説明するための図である。
図4】貯留部が流入ヘッダに接続された構成の変形例を示す概略図である。
図5】吸引器が設けられた構成の変形例を示す概略図である。
図6】第2実施形態に係る積層型流体加温器の概略図である。
図7】第3実施形態に係る積層型流体加温器の概略図である。
図8】第3実施形態に係る積層型流体加温器の積層体の断面構成を部分的に拡大して示す図である。
図9】(a)第4実施形態に係る積層型流体加温器における第1加温流体チャネルの設けられる範囲を説明するための図であり、(b)第4実施形態に係る積層型流体加温器における第2加温流体チャネルの設けられる範囲を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る積層型流体加温器10は、加温流体の熱で加温対象流体を加温するものであり、加温流体と加温対象流体との間の熱交換を行うための積層体12を備えている。
【0029】
積層体12は、図2に示すように、対象流体層15と加温流体層16とが交互に積層された構造であり、複数の対象流体層15と複数の加温流体層16とを備えている。なお、一部の対象流体層15と加温流体層16との間に、所定の機能を発揮させるための別の層(図示省略)が設けられていてもよい。
【0030】
各対象流体層15は、複数の対象流体チャネル17を有しており、各対象流体チャネル17には、加温対象流体が流れる。加温対象流体としては、例えば、液化天然ガス(LNG)、液化アンモニア、液化二酸化炭素等の液化ガスが挙げられる。
【0031】
各加温流体層16は、複数の加温流体チャネル18を有しており、各加温流体チャネル18には、加温流体が流れる。加温流体としては、例えば、不凍液(エチレングリコール水溶液)、温水等の液体が挙げられる。
【0032】
積層体12は、片面に複数の溝が形成された金属板を複数重ね合わせ、これら複数の金属板を拡散接合することによって得られたものである。このため、積層体12は、片面に複数の溝が形成された第1金属板から形成された対象流体層15と、片面に複数の溝が形成された第2金属板から形成された加温流体層16と、を有する。第1金属板に形成された複数の溝に第2金属板が重ね合わされることにより、複数の対象流体チャネル17が形成され、第2金属板に形成された複数の溝に第1金属板が重ね合わされることにより、複数の加温流体チャネル18が形成される。対象流体層15及び加温流体層16はそれぞれ、図1に示すように、上下方向に延びる姿勢で配置される。ただし、積層体12はこの姿勢で配置される構成に限られるものではない。
【0033】
なお、第1金属板と第2金属板とを拡散接合した場合には、その境界は現れなくなるため、対象流体層15と加温流体層16との間の境界は見た目には分からない。なお、図1では、対象流体層15及び加温流体層16の積層方向が分かるように、便宜的に境界を破線で示している。ただし、第1金属板と第2金属板との接合は拡散接合に限られるものではない。
【0034】
各対象流体チャネル17は、積層体12の下面及び上面に開口しており、下面及び上面の間で上下方向に直線状に延びるか、下面及び上面の間で左右に蛇行しながら上下方向に延びている。下面の開口が対象流体チャネル17の入口となり、上面の開口が対象流体チャネル17の出口となる。
【0035】
各加温流体チャネル18は、積層体12における一方の側面(図1の右側面)の下部とその反対側の側面(図1の左側面)の上部とに開口している。一方の側面の下部に形成された開口が、加温流体の入口となり、他方の側面の上部に形成された開口が加温流体の出口となる。すなわち、加温流体の入口は、出口よりも下の高さ位置に配置されている。各加温流体チャネル18は、入口と出口との間で左右に蛇行しながら上下方向に延びていてもよく、あるいは直線状に上下方向に延びていてもよい。ただし、入口と出口の位置関係が逆であってもよい。
【0036】
図1に示すように、積層体12には、対象流体チャネル17に連通する分配ヘッダ21及び集合ヘッダ22と、加温流体チャネル18に連通する流入ヘッダ25及び流出ヘッダ26と、が結合されている。
【0037】
分配ヘッダ21は、加温対象流体を複数の対象流体チャネル17に分配するためのヘッダであり、複数の対象流体チャネル17の入口を覆うように設けられている。分配ヘッダ21には、加温対象流体の導入配管27が接続される。
【0038】
集合ヘッダ22は、複数の対象流体チャネル17を流れた加温対象流体を集合させるためのヘッダであり、複数の対象流体チャネル17の出口を覆うように設けられている。集合ヘッダ22には、導出配管28が接続される。
【0039】
流入ヘッダ25は、加温流体を複数の加温流体チャネル18に分配させるためのヘッダであり、複数の加温流体チャネル18の入口を覆うように積層体12の側面に設けられている。流入ヘッダ25は、積層体12の下縁に沿って水平に延びている。流入ヘッダ25には、加温流体の流入配管29が接続される。
【0040】
流出ヘッダ26は、複数の加温流体チャネル18を流れた加温流体を集合させるためのヘッダであり、複数の加温流体チャネル18の出口を覆うように積層体12の側面に設けられている。流出ヘッダ26は、積層体12の上縁に沿って水平に延びている。流出ヘッダ26には、流出配管30が接続される。
【0041】
加温対象流体は、加温流体の凝固点よりも低い温度の流体であるため、加温流体チャネル18内での加温流体の流動が停止された場合には、加温流体が加温流体チャネル18内で凍結して加温流体チャネル18の閉塞を起こす可能性がある。このため、本実施形態の積層型流体加温器10には、加温流体チャネル18から加温流体を回収するための回収装置35が設けられている。
【0042】
回収装置35は、加温流体を貯留する貯留部36と、加温流体の流動を切り換える切換機構37と、開閉機構38と、を備えている。
【0043】
切換機構37は、流入配管29を開閉するように流入配管29に設けられた本流側弁37aと、流入配管29から分岐するように設けられた分岐側弁37bと、を備えている。本流側弁37aは、流入配管29における分岐側弁37bの位置よりも流入ヘッダ25から離れた位置に配置されている。分岐側弁37bは、流入ヘッダ25から水平に延びる流入配管29の底部から下方に向けて分岐している分岐管40に設けられている。貯留部36は、分岐管40を介して分岐側弁37bの下部に配置されている。言い換えると、貯留部36は流入配管29に接続されている。なお、貯留部36の下部には、加温流体を外部に排出させるときに開けるベント弁42が設けられている。
【0044】
なお、図例では、切換機構37が本流側弁37aと分岐側弁37bとを備えた構成を示しているが、これに限られるものではない。切換機構37は、流入配管29と分岐管40との接続部分に配置された三方弁(図示省略)によって構成されてもよい。
【0045】
開閉機構38は、加温流体を回収する際に、加温流体チャネル18内の加温流体が重力で流れ落ちるように、加温流体チャネル18を大気に開放させるために設けられている。開閉機構38は、加温流体チャネル18が大気に開放された状態と、大気に対して遮断された状態とを切り換え可能に構成されている。開閉機構38は通常動作時には、閉じられており、加温流体を回収するときに開放される。
【0046】
加温流体の熱で加温対象流体を加熱し、加温対象流体を気化させる通常動作時には、本流側弁37aが開かれるとともに分岐側弁37bが閉じられた状態となっており、また開閉機構38が閉じられた状態となっている。この状態では、加温流体が流入配管29を流入ヘッダ25に向かって流れる。この加温流体は流入ヘッダ25から各加温流体チャネル18に流入する。一方、加温対象流体は導入配管27を分配ヘッダ21に向かって流れる。この加温対象流体は分配ヘッダ21から各対象流体チャネル17に流入する。
【0047】
積層体12内では、加温流体チャネル18内を流れる加温流体と対象流体チャネル17内を流れる加温対象流体との間で熱交換が行われ、加温対象流体が加温されて気化する。各加温流体チャネル18内を流れた加温流体は流出ヘッダ26内で合流し、流出配管30を流れる。一方、対象流体チャネル17内を流れた加温対象流体は集合ヘッダ22内で合流し、導出配管28を流れる。
【0048】
積層型流体加温器10が通常動作を行っている最中に何らかの原因で、加温対象流体及び加温流体の流通が停止された場合には、加温流体チャネル18内から加温流体を抜くため、本流側弁37aが閉じられるとともに分岐側弁37bが開かれる。このとき、開閉機構38が開かれる。
【0049】
この状態では、加温流体が流入配管29から流入ヘッダ25に向かう流動は停止されているため、加温流体チャネル18内の加温流体はより下側となる方向に流れる。すなわち、加温流体は重力で流動する。これにより、加温流体チャネル18内の加温流体は、加温流体チャネル18から流入ヘッダ25を通して流入配管29に流入する。流入配管29に流入した加温流体は分岐側弁37bを通して貯留部36に流入する。これにより、加温流体チャネル18内が加温流体で満たされた状態は解消する。したがって、加温流体チャネル18内の加温流体が加温対象流体によって冷却されて凍結するという事態を抑制できる。
【0050】
なお、加温流体が加温流体チャネル18から重力で流れる構成とする場合、加温流体チャネル18は、図3(a)に示すように、出口から入口に向かって次第に下降する傾斜状に直線的に延びる形状であってもよく、あるいは、図3(b)に示すように、途中部分が折れ曲がりながら下降する形状(サーペンタイン形状)であってもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、回収装置35が加温流体層16の複数の加温流体チャネル18に溜まった加温流体の少なくとも一部を回収する。したがって、加温流体チャネル18に加温流体が溜まった状態に維持されることを防止できるため、加温流体の流動が停止された状態でも加温対象流体によって加温流体が必要以上に冷却されることを防止できる。したがって、加温流体チャネル18内で加温流体が凍結することを防止できる。特に、加温流体層16に形成された加温流体チャネル18のように細径の流路の場合には、加温流体が加温流体チャネル18内で流動しないときに早期に凍結する恐れがある。しかし、回収装置35によって加温流体チャネル18内の加温流体を回収するため、加温流体が加温流体チャネル18内で凍結することを回避できる。
【0052】
また本実施形態では、流入配管29よりも上側に位置する加温流体チャネル18内の加温流体を回収できるため、流入配管29を通してより多くの加温流体を回収できる。
【0053】
また本実施形態では、加温流体チャネル18内の加温流体が重力で流れて加温流体チャネル18から流出するため、加温流体チャネル18内の加温流体を押し出す加圧手段、加温流体チャネル18内の加温流体を吸引する吸引手段を設けることなく、加温流体チャネル18内の加温流体を回収できる。
【0054】
なお第1実施形態では、貯留部36が流入配管29に接続された構成を示したが、図4に示すように、貯留部36が流入ヘッダ25に接続された構成であってもよい。すなわち、分岐管40は流入ヘッダ25における底部に接続されるとともに、流入ヘッダ25から下方に延びている。そして、この分岐管40に貯留部36が設けられている。
【0055】
流入ヘッダ25は水平方向に長い形状であり、分岐管40は、この流入ヘッダ25に対する流入配管29の接続部よりも下方の位置で流入ヘッダ25に接続されている。なお、分岐管40が流入ヘッダ25に接続する位置、すなわち流入ヘッダ25内に開口する位置は、全ての加温流体チャネル18よりも下方に位置していてもよい。この場合、分岐側弁37bが開放されると、全ての加温流体チャネル18内の加温流体が分岐管40すなわち貯留部36に流入する。
【0056】
第1実施形態では、流入ヘッダ25が水平方向に延びる形状としたが、これに限るものではない。流入ヘッダ25は、例えば垂直方向に長い形状でもよい。この場合、流入ヘッダ25に対する流入配管29の接続部は、流入ヘッダ25の長手方向の中間部に位置するため、流入ヘッダ25の底部は、流入配管29の接続部よりも下側に位置しやすい。したがって、分岐管40が流入配管29から分岐する構成に比べ、分岐管40の接続位置を下方に位置させることができる。
【0057】
第1実施形態では、流入配管29又は流入ヘッダ25に接続された分岐管40に貯留部36が設けられる構成としているが、この構成に限られない。例えば、貯留部36が省略され、貯留部36を有しない分岐管40が流入配管29又は流入ヘッダ25に接続されてもよい。この場合、分岐管40は、加温流体チャネル18内の加温流体を回収する際に加温流体チャネル18から流出した加温流体を受け入れる受入管として機能する。
【0058】
第1実施形態では、分岐側弁37bが、流入配管29又は流入ヘッダ25に接続された分岐管40に設けられた構成としたが、この構成に限られない。例えば、分岐側弁37bが流入配管29又は流入ヘッダ25に直接接続されていてもよい。
【0059】
第1実施形態では、貯留部36及び分岐管40が積層体12に対して加温流体の流入側に設けられる構成としたが、これに代え、積層体12に対して加温流体の流出側に設けられてもよい。すなわち、貯留部36及び分岐管40が流出配管30又は流出ヘッダ26に接続されてもよい。
【0060】
第1実施形態では、加温流体チャネル18内の加温流体が重力で分岐管40に流れ落ちる構成としたが、図5に示すように、加温流体チャネル18内の加温流体を吸引する吸引器45が設けられてもよい。吸引器45は、貯留部36に配管を介して接続された真空ポンプ45aを有しており、この配管には開閉弁47が設けられる。開閉弁47は通常閉じられているが、真空ポンプ45aを作動させる場合に開かれる。吸引器45で加温流体チャネル18内の加温流体を吸引する場合には、分岐管40は必ずしも流入ヘッダ25の底部に接続されていなくてもよい。
【0061】
吸引器45が設けられる構成では、流出配管30に流出側本流弁37dが設けられる。流出側本流弁37dも、加温流体チャネル18からの加温流体の回収を行う回収動作と、回収を行わない非回収動作との切り換えを行う切換機構37を構成している。
【0062】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
第2実施形態では、加温流体チャネル18に向けてガスを押し出すガス噴出部50が設けられている。なお、開閉機構38は省略されている。
【0064】
ガス噴出部50は、ガス圧力によって加温流体チャネル18内の加温流体を加温流体チャネル18から流出させるためのものであり、例えば、流入ヘッダ25に取り付けられて、流入ヘッダ25内に向けてガスを噴出する。ガス噴出部50と流入ヘッダ25との間には、開閉弁51が設けられている。開閉弁51は、通常動作時は閉じられているが、ガスを送り出す際に開かれる。
【0065】
図6に示す例では、ガス噴出部50は、加温流体チャネル18に連通する2つのヘッダ(流入ヘッダ25及び流出ヘッダ26)のうち、加温対象流体の分配ヘッダ21により近い側の第1ヘッダ(流入ヘッダ25)に取り付けられている。つまり、分配ヘッダ21に近い位置で加温流体チャネル18にガスを入れる。このため、分配ヘッダ21を通過した直後で且つより低温となっている加温対象流体と熱交換する加温流体をより迅速にその位置から逃がすことができる。そして、加温流体チャネル18から押し出された加温流体は流出ヘッダ26(第2ヘッダ)に導入される。なお、ガスは例えば窒素ガスであるが、加温対象流体によって凍結しないガスであれば、これに限られるものでない。
【0066】
なお、積層型流体加温器10が、流出ヘッダ26の方が流入ヘッダ25よりも分配ヘッダ21に近い構成である場合には、ガス噴出部50は流出ヘッダ26(第1ヘッダ)に取り付けられてもよい。この場合、貯留部36は流入ヘッダ25(第2ヘッダ)に取り付けられる。
【0067】
貯留部36は、ガス噴出部50からのガスによって加温流体チャネル18から押し出された加温流体を受け入れる。また、切換機構37は、流出配管30を開閉する流出側本流弁37dと、流出側本流弁37dよりも加温流体チャネル18に近い位置で流出配管30から分岐するように設けられた流出側分岐弁37cと、を備えている。貯留部36は、流出側分岐弁37cを介して流出配管30に接続されている。
【0068】
なお、流出側分岐弁37cは、流出配管30に取り付けられるのではなく、流出ヘッダ26に取り付けられていてもよい。また流出側分岐弁37cは、流出配管30に直接取り付けられるのではなく、流出配管30から分岐する図略の分岐管に設けられていてもよい。つまり、貯留部36は、流出配管30から分岐するように設けられていればよい。
【0069】
通常動作時は、流出側本流弁37dが開かれるとともに流出側分岐弁37cが閉じられている。そして、加温流体を回収すべくガス噴出部50からガスを送り出すときには、流出側本流弁37dが閉じられるとともに流出側分岐弁37cが開かれる。
【0070】
したがって、第2実施形態では、ガス噴出部50からのガスの圧力を利用して、加温流体チャネル18内の加温流体を加温流体チャネル18から流出させることができる。したがって、重力で加温流体を加温流体チャネル18から流出させる構成に比べ、加温流体を迅速に回収できる。
【0071】
なお、図6では、ガス噴出部50が流入ヘッダ25に取り付けられているが、ガス噴出部50は、本流側弁37aよりも流入ヘッダ25に近い位置で流入配管29から分岐する図略の分岐管に接続されていてもよく、あるいは本流側弁37aよりも流入ヘッダ25に近い位置で流入配管29に取り付けられていてもよい。
【0072】
また、ガス噴出部50は、流出配管30又は流出ヘッダ26に取り付けられてもよい。この場合、貯留部36は、流入ヘッダ25又は流入配管29に取り付けられる。
【0073】
第2実施形態においても、回収装置35が貯留部36を有する構成としているが、これに限られるものではなく、貯留部36を有しない構成としてもよい。この場合、回収装置35は、流出配管30又は流出ヘッダ26に接続された図略の分岐管を有し、この分岐管が、加温流体チャネル18内の加温流体を回収する際に加温流体チャネル18から流出した加温流体を受け入れるように構成されていてもよい。この分岐管は、受入管として機能する。ただし、ガス噴出部50が流出配管30又は流出ヘッダ26に取り付けられる場合には、分岐管は、流入配管29又は流入ヘッダ25に接続される。
【0074】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0075】
(第3実施形態)
図7及び図8は、第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0076】
第3実施形態では、図8に示すように、加温流体層16に第1加温流体層16aと第2加温流体層16bとが含まれる。第1加温流体層16aは、対象流体層15に隣接する層であり、第2加温流体層16bは、第1加温流体層16aに隣接する層である。この第2加温流体層16bには別の第1加温流体層16aが隣接するため、対象流体層15は隣接していない。つまり、第2加温流体層16bは、2つの第1加温流体層16aに挟持されている。この別の第1加温流体層16aには別の対象流体層15が隣接している。
【0077】
第1加温流体層16aに設けられた複数の第1加温流体チャネル18aと第2加温流体層16bに設けられた複数の第2加温流体チャネル18bとには、それぞれ加温流体が流入して、対象流体層15の複数の対象流体チャネル17を流れる加温対象流体と熱交換する。このとき、第1加温流体チャネル18aを流れる加温流体の方が、第2加温流体チャネル18bを流れる加温流体よりも冷やされる。
【0078】
流入ヘッダ25内の加温流体は、第1加温流体チャネル18aと第2加温流体チャネル18bとに分配される。一方、図7に示すように、流出ヘッダ26には第1流出ヘッダ26aと第2流出ヘッダ26bとが含まれており、第1流出ヘッダ26a内の空間は、第1加温流体チャネル18aに連通し、第2流出ヘッダ26b内の空間は、第2加温流体チャネル18bに連通している。したがって、第1加温流体チャネル18aを流れた加温流体は第1流出ヘッダ26a内に流入し、第2加温流体チャネル18bを流れた加温流体は第2流出ヘッダ26b内に流入する。
【0079】
流出配管30には、第1流出ヘッダ26aに接続された第1流出配管30aと、第2流出ヘッダ26bに接続された第2流出配管30bと、が含まれている。したがって、第1流出ヘッダ26a内の加温流体は第1流出配管30aに流入し、その一方、第2流出ヘッダ26b内の加温流体は第2流出配管30bに流入する。
【0080】
切換機構37は、第1流出配管30aに設けられた第1本流側弁37a1と、第2流出配管30bに設けられた第2本流側弁37a2と、第2本流側弁37a2よりも加温流体チャネル18に近い位置で第2流出配管30bから分岐するように設けられた分岐側弁37b1と、を含む。なお、分岐側弁37b1は、第2流出ヘッダ26bに設けられてもよい。
【0081】
開閉機構38は、流入配管29に設けられるが、これに代え、流入ヘッダ25に設けられてもよい。
【0082】
貯留部36は、分岐側弁37b1を介して第2流出配管30bに接続されている。したがって、第2本流側弁37a2を閉じるとともに、開閉機構38及び分岐側弁37b1を開けば、第2加温流体チャネル18b内の加温流体が第2流出ヘッダ26b及び第2流出配管30bを通して、貯留部36に回収される。このとき、第1加温流体チャネル18a内の加温流体は貯留部36に回収されない。
【0083】
第3実施形態では、回収装置35が第1加温流体チャネル18a及び第2加温流体チャネル18bから選択的に加温流体を回収する。このため、第1加温流体層16a及び第2加温流体層16bにより加温対象流体の加温能力を高めることができる一方で、複数の加温流体チャネル18から流出させる加温流体の流出量を低減できる。
【0084】
また第3実施形態では、第2加温流体層16bが2つの第1加温流体層16aに挟持されている。この構成では、第1加温流体チャネル18a内の加温流体に比べて第2加温流体チャネル18b内の加温流体の方が冷却され難いため、第2加温流体チャネル18bの加温流体を回収しやすい。しかも、第1加温流体チャネル18a内での加温流体の流動が停止した状態で、第1加温流体チャネル18a内の加温流体が凍結したとしても、第2加温流体チャネル18bに加温流体を流入させることにより、第1加温流体チャネル18a内の加温流体を融解できる。
【0085】
なお、第3実施形態では、回収装置35が第2加温流体チャネル18b内の加温流体を選択的に回収するように構成されているが、これに限られるものでない。回収装置35が第1加温流体チャネル18a内の加温流体を選択的に回収するように構成されていてもよい。すなわち、第2加温流体チャネル18b内の加温流体に比べて第1加温流体チャネル18a内の加温流体の方が凍結しやすいため、第1加温流体チャネル18a内の加温流体を選択的に回収する構成であれば、加温流体の凍結を回避しやすい。
【0086】
第3実施形態では、加温流体が流入ヘッダ25から第1加温流体チャネル18a及び第2加温流体チャネル18bに分流する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、流入ヘッダ25が第1流入ヘッダと第2流入ヘッダとを有し、流入配管29が、第1流入ヘッダに繋がる第1流入配管と第2流入ヘッダに繋がる第2流入配管とを有する構成であってもよい。この場合、第1流入配管内の加温流体が第1流入ヘッダを通して第1加温流体チャネル18aに流入し、第2流入配管内の加温流体が第2流入ヘッダを通して第2加温流体チャネル18bに流入する。この場合には、第2加温流体チャネル18b内の加温流体を回収する貯留部36又は分岐管40が第2流入ヘッダ又は第2流入配管に接続されてもよい。
【0087】
第3実施形態においても、重力で加温流体を回収する構成に限られず、吸引器45、ガス噴出部50を用いて加温流体を回収する構成としてもよい。
【0088】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0089】
(第4実施形態)
図9(a)(b)は、第4実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
第4実施形態では、第2加温流体層16bにおいて第2加温流体チャネル18bが設けられる領域の大きさと第1加温流体層16aにおいて第1加温流体チャネル18aが設けられる領域の大きさとが異なっている。
【0091】
具体的には、複数の第1加温流体チャネル18aは、第1加温流体層16a(積層体12)の全体に亘る範囲に設けられている。このため、図9(a)に示すように、流入ヘッダ25は、積層体12の下端部に位置する一方で、第1流出ヘッダ26aは、積層体12の上端部に位置している。このため、複数の第1加温流体チャネル18aは、積層体12の下端部から上端部に亘る領域に設けられている。
【0092】
これに対し、第2流出ヘッダ26bは、図9(b)に示すように、積層体12の中間部の高さに位置している。このため、複数の第2加温流体チャネル18bは、積層体12の下端部から中間部に亘る領域55には設けられるが、積層体12の中間部から上端部に亘る領域56には設けられていない。つまり、第2加温流体チャネル18bは、第1加温流体チャネル18aの入口に対応する位置から当該第1加温流体チャネル18aの中間部に対応する位置に亘る範囲にのみ形成されている。この場合、第2加温流体層16bは、第2加温流体チャネル18bを形成する溝を有する第2金属板と、溝が形成されていない金属板とによって構成できるため、第2金属板をエッチング加工する製法を採用したとしても、積層体12の製造コストを低減できる。
【0093】
この構成において、回収装置35は、第1加温流体チャネル18a内の加温流体又は第2加温流体チャネル18b内の加温流体を選択的に回収する。特に、回収装置35が第2加温流体チャネル18b内の加温流体を回収する構成であれば、回収装置35が回収する加温流体の量を低減できる。
【0094】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1~第3実施形態の説明を第実施形態に援用することができる。
【0095】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、各実施形態では、積層型流体加温器10が、加温対象流体が気化するように加温される加温器として形成されているが、これに限られるものでない。例えば、積層型流体加温器10は、加温対象流体が気化する温度以下の範囲で加温される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 :積層型流体加温器
12 :積層体
15 :対象流体層
16 :加温流体層
16a :第1加温流体層
16b :第2加温流体層
17 :対象流体チャネル
18 :加温流体チャネル
18a :第1加温流体チャネル
18b :第2加温流体チャネル
29 :流入配管
30 :流出配管
35 :回収装置
36 :貯留部
50 :ガス噴出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9