(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】液晶配向を有する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231114BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20231114BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20231114BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337 525
G02C7/06
G02B3/14
(21)【出願番号】P 2020511193
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2018072922
(87)【国際公開番号】W WO2019038439
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518436043
【氏名又は名称】モロー・エン・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェレ・デ・スメット
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ウィルフリート・セシル・マルシャル
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・シルケル
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/023950(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0128334(US,A1)
【文献】特開2009-198906(JP,A)
【文献】特開2007-065013(JP,A)
【文献】特開2016-018126(JP,A)
【文献】国際公開第2005/076265(WO,A1)
【文献】特開2011-034062(JP,A)
【文献】特開2010-091828(JP,A)
【文献】特開2008-090259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/1337
G02C 7/06
G02B 3/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学デバイスおよび第2の光学デバイスのスタックを備える偏光無依存の調節可能なレンズにおいて、少なくとも前記第1の光学デバイスは、
- 第1の電極層(8)
、及び、
- 前記第1の電極層(8)からある距離(d)に提供される第2の電極層(9)であって、前記第1および第2の電極層(8、9)は、光透過性であ
る、第2の電極層(9)、並びに、
前記第1の電極層(8)と前記第2の電極層(9)との間に
、
- 前記第1の電極層(8)に隣接しかつフレネルレンズ構造体の中心に第1の傾斜表面(11)を備える前記フレネルレンズ構造体である回折光学構造体(4)であって、複数の角度のさらなる傾斜表面によって取り囲まれ、第1およびさらなる傾斜表面は各々、前記第1の電極層(8)に対してある傾斜角を有し、第1の配向層でカバーされる、回折光学構造体(4)
、
- 前記第2の電極層(9)に隣接してスペース(7)の側に配置されるさらなる配向層
、及び、
- 前記第1およびさらなる傾斜表面上の前記第1の配向層と前記第2の電極層(9)に隣接する前記さらなる配向層との間の前記スペース(7)を満たしかつオフ状態において垂直方向に整列する液晶分子(10)を備える液晶材料(11)
、
を備え、
前記第1の配向層との界面における前記液晶分子(10)は、単一の配向方向(12)にプレチルト角(α)を有し、前記さらなる配向層は、前記配向方向に対して逆平行な方向における配向のために前処理されており、前記プレチルト角(α)は、前記傾斜角よりも大きく、それとともに、前記液晶材料内の前記液晶分子(Np)の前記第1の電極層(8)への投影(Npxy)が、60度の範囲(θ)内の前記配向方向(12)に対して横方向の角度を含むように、オン状態において整列するように前記液晶分子(10)を向けることによって前記第1の傾斜表面およびさらなる傾斜表面の前記傾斜角を補償する、偏光無依存の調節可能なレンズ。
【請求項2】
前記プレチルト角(α)は、前記プレチルト角(α)が前記配向方向から45度の範囲内で選択されることによって前記傾斜を補償する、請求項1に記載の調節可能なレンズ。
【請求項3】
前記プレチルト角(α)は、前記プレチルト角(α)が前記配向方向から30度の範囲内で選択されることによって前記傾斜を補償する、請求項2に記載の調節可能なレンズ。
【請求項4】
前記プレチルト角(α)は、前記第1の光学デバイスにわたって実質的に均一である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項5】
傾斜表面上の前記第1の配向層は、少なくとも1つの内側セグメントおよび外側セグメントにセグメント化され、前記内側および外側セグメントは、前記配向方向と整列し、前記外側セグメントは、少なくとも1つの内側セグメントのそれよりも大きいプレチルト角(α)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項6】
前記複数の角度のさらなる傾斜表面は各々、前記第1の電極層から突き出ているブレーズから延び、前記ブレーズはさらに、前記第1の電極層(8)に対して実質的に横方向に延びる側壁を有し、前記第1の配向層(8)は、前記ブレーズの前記側壁が、自由に保たれ、配向層のないままであるように、定義済みのパターンに従って提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項7】
前記第1の電極層(8)は、前記第2の電極層(9)に対して実質的に平行に延びる、請求項1から6のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項8】
複数のスペーサ(5)が、前記第1およびさらなる傾斜表面と前記第2の電極層(9)との間に提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項9】
前記第2の光学デバイスは、前記第1の光学デバイスと同一である、請求項1から8のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項10】
前記第2の光学デバイスは、偏光子である、請求項1から9のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項11】
前記第1の光学デバイスは、0~+4の範囲内の屈折度数を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項12】
前記第1の光学デバイスは、+0.5~+3.0
の範囲内の屈折度数を有する、請求項11に記載の調節可能なレンズ。
【請求項13】
前記第1の光学デバイスは、+1.0~+2.5の範囲内の屈折度数を有する、請求項12に記載の調節可能なレンズ。
【請求項14】
前記第1の光学デバイスは、15mm~35mmの範囲内の直径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の調節可能なレンズ。
【請求項15】
前記第1の光学デバイスは、20mm~30mmの範囲内の直径を有する、請求項14に記載の調節可能なレンズ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の調節可能なレンズを備える眼鏡。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の調節可能なレンズを製造する方法において、前記方法はプレチルト角(α)の適用を含み、これにより、前記第1の配向層との界面における前記液晶分子(10)が、単一配向方向(12)に前記プレチルト角(α)を有し、前記プレチルト角(α)は、前記傾斜角よりも大きく、それとともに、前記液晶材料内の前記液晶分子(Np)の前記第1の電極層(8)への投影(Npxy)が、60度の範囲(θ)内の前記単一配向方向(12)に対して横方向の角度を含むように、オン状態において整列するように前記液晶分子(10)を向けることによって前記少なくとも1つの傾斜表面の前記傾斜角を補償する、方法。
【請求項18】
前記プレチルト角(α)の適用のステップは、前記第1の光学デバイスを前記単一配向方向にラビングするステップおよび/または感光性配向材料を使用するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の光学デバイスの前記製造は、
- 第1の基板に第1の電極層(8)、フレネルレンズ構造体および前記第1の配向層を提供するステップと、
- 前記プレチルト角(α)を前記第1の配向層に前記単一配向方向において適用するステップと、
- 第2の基板に前記第2の電極層(9)および前記さらなる配向層を提供するステップ、および、さらなるプレチルト角を前記さらなる配向層に前記単一配向方向に対して逆平行の方向において適用するステップと、
- 前記第1の配向層と前記さらなる配向層との間にアセンブリにより形成される前記スペース(7)が、前記液晶材料で満たされるように、前記第1および第2の基板を組み立てるステップおよび液晶材料を提供するステップと、
を備える、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
- 第1の基板に光透過性の第1の電極層(8)および前記第1の電極層(8)に隣接する回折光学構造体(4)を提供するステップであって、前記回折光学構造体は、フレネルレンズ構造体の中心に第1の傾斜表面(11)を備える前記フレネルレンズ構造体であり、前記回折光学構造体は、複数の角度のさらなる傾斜表面によって取り囲まれ、前記第1およびさらなる傾斜表面は各々、前記第1の電極層(8)に対してある傾斜角を有する、ステップと、
- 少なくとも1つの配向層を前記第1の傾斜表面およびさらなる傾斜表面上に適用するステップ、および第1の定義済みのプレチルト角(α)をそれに隣接する液晶分子(10)に適用するように前記少なくとも1つの配向層を処理するステップと、
- 第2の基板に光透過性の第2の電極層(9)および第2の定義済みのプレチルト角(α)をそれに隣接する液晶分子(10)に適用するように処理されたその上のさらなる配向層を提供するステップと、
- 前記少なくとも1つの配向層および前記さらなる配向層が互いに面する状態で、前記第2の電極層が、前記第1の電極層(8)からある距離(d)に提供されるように、前記第1および前記第2の基板を組み立てるステップ、および液晶材料で満たされるスペース(7)をそれらの間に創出するステップと、
を備え、
前記少なくとも1つの配向層の前記適用および/または処理は、異なる配向方向(12a、12b)および/または異なるプレチルト角(α)を有する複数のセグメントを提供するように構成される、光学デバイスを製造する方法。
【請求項21】
第1の配向層および第2の配向層は、所定のパターンに従って前記第1およびさらなる傾斜表面上に適用され、前記第1の配向層および第2の配向層は、第1のセグメントおよび第2のセグメントに対応し、前記第1の配向層および前記第2の配向層は、異なるプレチルト角を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1および前記第2の配向層は、感光性材料を備え、それは、前記異なるプレチルト角を規定するように照射によって処理される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1の配向層は、前記少なくとも1つの傾斜表面上に適用され、前記第1の配向層は、感光性材料を備え、前記セグメントは、前記感光性材料の処理によって提供され、前記セグメントの少なくとも第1のものおよび第2のもののための前記処理は、相互に異なるプレチルト角および/または相互に異なる配向方向を提供するために、異なる、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第1のセグメントでは第1の配向方向にかつ第2のセグメントでは前記第1の配向方向に対して平行でかつ反対である配向方向に処理される第1の配向層が、提供される、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントは、前記第1のセグメントが、前記第1の配向方向における前記フレネルレンズ構造体の中心の下流に位置する傾斜表面の第1の部分をカバーし、前記第2のセグメントが、前記第1の配向方向における前記中心の上流に位置する同じ傾斜表面の第2の部分をカバーするように配置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および第2のセグメントは、内側セグメントであり、さらなる外側セグメントが、前記第1および前記第2のセグメントの各々に隣接して存在し、前記内側セグメントおよび外側セグメントは、前記第1の配向方向に対して平行に配置され、前記外側セグメントは、同じ配向方向および前記内側セグメントと異なるプレチルト角を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記内側セグメントおよび外側セグメントは、前記第1の配向方向に対して平行な相互界面を有して配置される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の角度のさらなる傾斜表面は各々、前記第1の電極層(8)から突き出ているブレーズから延び、前記ブレーズはさらに、前記第1の電極層(8)に対して実質的に横方向に延びる側壁を有し、前記第1の配向層は、前記ブレーズの前記側壁が、自由に保たれ、配向層のないままであるように、定義済みのパターンに従って提供される、請求項
21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項20から28のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる光学デバイス。
【請求項30】
第1の光学デバイスおよび第2の光学デバイスのスタックを備える偏光無依存の調節可能なレンズであって、少なくとも前記第1の光学デバイスは、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、偏光無依存の調節可能なレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学デバイスに関し、詳しくは液晶を備える光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
老眼は、目が、近距離に焦点を合わせるその能力を失う、よく知られた障害であり、世界中で20億を超える患者に影響を及ぼしている。古典的な解決策は、読書用眼鏡、累進焦点レンズまたは多焦点コンタクトレンズなどの受動的レンズを含む。しかしながら、これらの受動的レンズは典型的には、制限された視野、低減されたコントラストまたは長い適応時間に苦しむ。
【0003】
したがって、レンズの焦点距離、レンズの一部の焦点距離が、変えることができる、リフォーカス可能なレンズは、知られている問題の多くを取り除くということになるので、この分野において大きな注目を集めている。いくつかの光学機械的解決策が、存在するけれども、電気光学的解決策は、再構成するのがより容易であり、より速い応答時間を有し、機械的により堅牢であるので、好ましい。大部分の電気光学的解決策は、1つまたは複数の液体で満たされた空洞を必要とし、一般に液晶ベースの実施を使用している。液晶ディスプレイ技術は、非常に成熟しているが、リフォーカス可能な液晶レンズを眼科用レンズ内に統合するための方法を見いだすことは、主に眼科用レンズが一般に有するメニスカス形状のために、困難であることが判明している。
【0004】
例えば、既存のリフォーカス可能な液晶レンズは、特許文献1において述べられている。この特許は、2つのプラスチックレンズ半分、すなわち回折/屈折光学構造体を有する第1の湾曲したレンズ半分および第2のレンズ半分から成るレンズを開示する。両方のレンズ半分上には、透明電極が、堆積される。レンズ半分は、光学構造体のエリアを除いて、UV硬化性接着剤を用いて全表面にわたって一緒に接着される。光学構造体の場所では、液晶材料が、両方のレンズ半分の間のギャップを満たす。オフ状態においては、液晶は、レンズ半分のプラスチック基板と同じ屈折率を有する。それはその結果、回折/屈折光学構造体を隠し、レンズ作用はない。レンズ半分の間に電場を印加することによって、液晶材料の屈折率は、変調され、それは、下にある回折/屈折光学構造体と異なることになり、それによってレンズ作用につながる。
【0005】
液晶レンズが、2つの比較的厚い(>1mm)レンズ半分上に直接作られる、上記の手法は、一連の不都合を有する。回折/屈折光学構造体の湾曲した表面上への電極層の共形堆積は、実現するのが困難であり、信頼性問題を生じさせることにつながることもあるので、大量に製造することは、非常に困難である。現況技術のワンドロップフィル(one-drop fill)プロセスを使用してコスト効率が良く、審美的にクリーンなシールを得ることは、極薄のレンズにおいて実現するのが困難であり、それ故にこの手法の大量生産を妨げる。回折/屈折光学構造体は、平坦な表面を有することができるが、しかしこれは、平坦なレンズが、湾曲した後面と前面との間に何とかして統合される必要がある、典型的な薄いレンズ設計において最大直径を制限する。回折/屈折光学構造体は、湾曲させることができるが、しかしその結果液晶は、プロセス中にあふれ出ることもあり、表面の汚染および接着剤の不良接着につながる。接着後に空洞を満たすことは、別のオプションであるが、しかしレンズがそれを通じて満たされるチャンネルを見えるままにしておくこともあり、レンズの美的感覚を傷つける。人は、各レンズブランクを別々に製造しなければならず、スループットを制限する。
【0006】
特許文献1において観察されるように、電気アクティブレンズは、それが焦点を合わせることを意図されている光の偏光に鈍感でなければならないということが、要件である。これはしかしながら、大部分の液晶材料が、複屈折性であり、そのため偏光に敏感であるという事実によって複雑になる。2つの基本的解決策が、知られており、1つは、ネマチック液晶を有する多層レンズ構造体、例えば両方の偏光について直交配向を有する2つの層を使用するか、または特許文献1において提案されるなどの、コレステリック液晶と組み合わされた単一層を使用する必要がある。本手法は、多層レンズ構造体を創出することを実際には困難にし、1つの層だけを有する偏光無依存のレンズを構築するためにコレステリック液晶の使用を強要する。しかしながら、コレステリック層、特に厚い層の曇りを制御することは、コレステリック層の回位線および大きい内部エネルギーに起因して、非常に困難であることが、当業者には知られている。コレステリック液晶の曇りを回避するために、人は、液晶層の厚さを低減しなければならないが、しかしこれは、ブレーズ高さを制限して光学的回折/屈折構造体におけるブレーズのより短いピッチの使用を強要し、それによって色収差を増加させる。
【0007】
ネマチック液晶を有するレンズ構造体の一例は、特許文献2から知られている。レンズは、フレネルレンズ構造体と上部基板との間に液晶材料を備える。電極層は、フレネルレンズ構造体の下にかつ上部基板の上にある。さらに、配向層が、上部基板の上に(電極層をカバーし、液晶材料に面して)かつフレネルレンズ構造体の上に存在する。配向層は典型的には、ポリイミド材料から構成され、ラビングなどによって、配向方向を得るように前処理される。液晶が、配向層と接触するとき、分子は優先的に、基板の平面内にあり、配向方向に整列している。
図6との関連で明記されるように、液晶分子は、方位方向に、すなわち配向層に対して平行に整列する。整列の方向はまた、プレチルトとしても示される。十分に強い電場が、レンズにわたって印加されるとき、液晶分子は、配向層に対して垂直に向くことになる。分子の整列は、材料の全体的な屈折率を決定し、それとともに可視性を決定する。これは、レンズの可視性の調節を可能にする。もし目に見えないならば、全体的なジオプタ強度は、レンズが目に見えるときの場合と異なることになる。特許文献2から知られている構造体は、いわゆる可変波面コンポーネント(上述のレンズ構体を含む)および波面部分間の位相不連続を補正することを目的とする位相補償コンポーネントを備えることが、観察される。
【0008】
言われるように、オフ状態において平面液晶を使用する多層レンズは、曇りのより少ない偏光無依存のレンズをもたらすこともあるが、しかし提案される手法は、大きい厚さおよび多くの取り扱い問題を有するレンズにつながることになる。特に、液晶が、デバイスがオフであるときに平面方向にあるように光学デバイスを規定するとき、フレネルレンズ構造体は、平面方向における分子のそれに実質的に等しい屈折率を有するということが、望まれる。それは典型的には、約1.7であるが、一方平行方向における屈折率は、約1.5である。直交方向に配置される2つのスタックされたレンズ構造体に基づいて偏光無依存のレンズを作りたいと望むとき、本発明者らは、ゴースト像の発生を防止することが、むしろ困難であるということを、本発明につながる研究において観察している。オフ状態において配向方向に対して垂直に配置されるホメオトロピック液晶の使用は、オプションのこともあり得る。しかしながら、これは、フレネル構造体の表面が、平坦でないという点において問題がある。結果として、フレネルレンズの表面に対して垂直に整列する液晶分子は、いろいろな向きを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7,728,949号
【文献】米国特許出願公開第2013/0128334A1号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Stohr他、「Microscopic Origin of Liquid Crystal Alignment on Rubbed Polymer Surfaces」
【文献】Yaroshchuk他、「Photoalignment of liquid crystals: basics and current trends」
【文献】S-C Jeng他、「Controlling the alignment of polyimide for liquid crystal devices」High Performance polymers - polyimide based - from chemistry to applications (INTECH、2012)における第5章、87~104頁、特に88~89および95頁
【文献】Kooy他、「A review of roll-to-roll nanoimprint lithography」Nanoscale Research Letters 2014
【文献】Y. J. Liu他、「Nanoimprinted ultrafine line and space nano-gratings for liquid crystal alignment」
【文献】R. Lin他、「Molecular - Scale Soft Imprint Lithography for Alignment」
【文献】Wu他、「Controlling pretilt angles of liquid crystal using mixed polyimide alignment layer」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故に、電気的に調節可能な位相プロファイル、例えば焦点距離変化を有する光学デバイスの必要性があり、それによってこのデバイスは、信頼できる光学特性を有して大量生産することができる。
【0012】
さらに、第1の光学デバイスおよび第2の光学デバイスのスタックを備える偏光無依存の調節可能なレンズの必要性があり、異なる焦点の第1の状態と第2の状態との間の移行は、十分に達成可能であり、二重像の出現は、防止されるまたは少なくともかなり抑制される。
【0013】
そのような偏光無依存の調節可能なレンズを備える眼鏡用レンズの必要性もまたある。
【0014】
さらに、そのような光学デバイス、ならびに/または偏光無依存の調節可能なレンズに含まれる第1および第2の光学デバイスのスタックを製造する方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によると、本発明は、第1の光学デバイスおよび第2の光学デバイスを備える偏光無依存の調節可能なレンズに関し、第1の光学デバイスは、第1の電極層および第1の電極層からある距離に提供される第2の電極層を備え、第1および第2の電極層は、光透過性である。第1の光学デバイスはさらに、第1の電極層と第2の電極層との間に、第1の電極層に隣接しかつフレネルレンズ構造体の中心に第1の傾斜表面を備えるフレネルレンズ構造体である回折光学構造体を備え、それは、複数の角度のさらなる傾斜表面によって取り囲まれる。これらの第1およびさらなる傾斜表面は各々、第1の電極層に対して少なくとも1つの傾斜角を有し、第1の配向層でカバーされる。さらなる配向層が、第2の電極に隣接するスペースの側に配置される。液晶材料は、少なくとも1つの傾斜表面上の配向層と第2の電極層と間のスペースを満たし、第1の光学デバイスのオフ状態において垂直方向に整列する液晶(LC)分子を備える。本発明によると、LC分子は、単一配向方向にプレチルト(α)を適用するために前処理されており、そのプレチルト(α)は、傾斜表面上のそれぞれのLC分子の場所に対応する前記傾斜角よりも大きく、それとともに、液晶材料内のLC分子の第1の電極層への投影(Npxy)が、60度の範囲(θ)内の配向方向に対して横方向の角度を含むように、オン状態において整列するように前記LC分子を向けることによって、少なくとも1つの傾斜表面の傾斜角を補償する。
【0016】
さらなる態様によると、本発明の調節可能なレンズを備える眼鏡用レンズが、提供される。
【0017】
再びさらなる態様によると、第1および第2の光学デバイスのスタックを備える偏光無依存の調節可能なレンズを製造する方法が、提供され、単一配向方向におけるプレチルトの適用を含み、そのプレチルト(α)は、傾斜表面上のそれぞれのLC分子の場所に対応する前記傾斜角よりも大きく、それとともに、液晶材料内のLC分子の第1の電極層への投影(Npxy)が、60度の範囲(θ)内の配向方向に対して横方向の角度を含むように、オン状態において整列するように前記LC分子を向けることによって少なくとも1つの傾斜表面の傾斜角を補償する。調節可能なレンズは、より詳しくは本発明の調節可能なレンズである。
【0018】
本発明の発明者らは、ホメオトロピック液晶材料の使用が、液晶材料がその上部に適用されるフレネルレンズ構造体の傾斜表面にもかかわらず、偏光無依存の調節可能なレンズを達成するために実行可能であるということを観察している。アーチファクトを防止するために、プレチルトが、適応されることもある。しかしながら、プレチルトだけでは、二重像の発生を防止しない。そのような二重像は、回位、すなわち望まない方向におけるLC分子(それらの固有の双極子を有する)の向きによって引き起こされる。一般に、これは、LC分子が、配向方向に局所的に整列せず、反対方向に曲がるということにつながる。オン状態における回位はその上、第1の配向層からさらなる配向層への液晶を通じての局所的ねじれとして見ることができ、第1の電極層に対して平行な有効な向きは、第1の配向層までの距離とともに変わり、回転が、生じる。しかしながら、傾斜表面(その上にLC分子が存在する)の傾斜角よりも大きいプレチルトを、その上配向方向に対して投影される横方向の角度が、あまり大きすぎないような仕方で適用するとき、その結果問題は、十分に抑制される。なお生じるどんな回位も、中心の外側で、むしろエッジに向かって見いだされる。その上、偏光無依存の調節可能なレンズに到達するために2つの同一の光学デバイスをスタックするとき、片方の光学デバイスにおけるそのような回位が、もう一方の光学デバイスによって増幅されるというリスクは、むしろ小さくなる。
【0019】
配向方向における少なくとも1つの傾斜表面の傾斜角を補償することによって、そのような回位の大部分は、回避される。LC分子は、傾斜が、補償されるので、所定の配向方向に向く傾向がある。これは、光学的不具合を大幅に減少させ、デバイスの光学的信頼性を改善する。少なくとも1つの傾斜表面は、少なくとも第1の電極層に対して傾斜するということが、明確にするために観察される。球状の傾斜表面については、傾斜角は、第1の電極層とのエッジにおいて最大であることになる。チルト角は、傾斜表面上のLC分子の場所の法線に対して定義され、配向層の前処理に起因して適用されるチルト角である。第1の電極層に対して垂直である液晶分子の向きはまた、絶対チルト角βとしても明記され、傾斜角および適用されるプレチルト角αの組み合わせである。第1の電極層への絶対チルト角βの投影は、60度よりも小さい配向方向に対して横方向の角度θを含む。プレチルトは、配向方向において定義されるので、傾斜角もまた、配向方向において定義される。図を参照して理解されることになるように、配向方向に対して60度よりも小さい横方向の角度θはそれ故に、-60から+60度の間の値を有する。
【0020】
好ましくは、前記プレチルトは、液晶材料内の分子の第1の電極層への投影が、配向方向から45度の範囲内に、より好ましくは配向方向から30度の範囲内にあるように、プレチルトが選択されることによって傾斜を補正する。前記範囲は、絶対角度を定義し、それ故に60度に至るまでの範囲は、配向方向に対して-60から+60度に及ぶ。より好ましくは、後者は、光学デバイスのオフ状態において測定される。これは、LC分子が、垂直方向に整列するとき、それらのベクトルが、垂直成分ならびに配向方向における成分、および配向方向に対して垂直な成分を示すことを意味する。配向方向におけるこの成分は、少なくとも好ましい実施形態では、分子の投影が、配向方向から上述の範囲内にあるように、垂直成分よりも大きい。
【0021】
配向方向は、電場をアクティブにすることにより分子の大部分の目的とする向きを規定する。しかしながら、分子がこの方向に向くかどうかは、電極層に関するそれらの向きに関連する。したがって、第1の電極層への分子の投影が、なされるとき、分子は、投影が、配向方向から上述の範囲内にあるとき、望ましい方向に向くと決定することができる。この条件が、満たされるとき、分子は、電場が、アクティブにされるとき、配向方向に向く傾向があることになる。これは、所望の光学的効果が、到達可能であるように、分子の予測可能な、したがって信頼できる反応を与える。
【0022】
好ましい実施形態では、そのような単一傾斜表面上のLC分子は、均一なプレチルトを与えられる。フレネルレンズ構造体の中心における傾斜表面は、その円周の角度傾斜表面のどれよりも小さい(最大)傾斜角を有することもあるということが、観察される。したがって、プレチルト角は、そのような角度傾斜表面については中心についてよりも大きいこともある。なお、さらなる一実施形態では、プレチルトは、光学デバイスにわたって実質的に均一である。実質的に一定のプレチルト角を提供することは、実現しかつ制御するのがかなり容易である。前記傾斜角は、配向方向および第1の電極層に対して垂直な方向を備える平面内で測定されることが、観察される。
【0023】
別法として、光学デバイス上の位置に応じてプレチルト角を選択的に調節することが可能である(例えば、感光性材料を使用して)。さらなる一実施形態では、絶対チルト角(平面の第1の電極層に対するLC分子の向き)は、公差のマージン内でデバイスにわたって同じであることが、確実にされてもよい。プレチルトを変えるために、人は例えば、表面がラビングされる強度を増加させる(非特許文献1)または感光性配向材料を使用してもよい(非特許文献2)。
【0024】
当業者は、フレネルのような回折構造体が、本発明におけるように提供されるとき、傾斜表面が、隣接傾斜表面を相互接続する接続表面と交互に入れ替えられるということに気付くことになる。接続表面は、傾斜表面に対して実質的に垂直にまたは電極層に対して実質的に垂直に向けられる。そのため、そのような接続表面は(接続表面とともに)、ブレーズとして知られている直立構造体を構成する。
【0025】
配向層が、そのような接続表面上に延び、プレチルトをLC分子に提供するように前処理されるとき、LC分子は、第1の電極層に対して実質的に平行な向きをオフ状態において得ることもある。これについての効果は、小さな影響であると考えられる。しかしながら、有利な一実施形態では、第1の配向層は、ブレーズの先端に至るまでのそのような接続表面が、配向層のないままであるように、定義済みのパターンに従って適用されてもよい。典型的にはポリイミドに基づく、第1の配向層のパターン化の適用は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フォトリソグラフィのマスクの使用(ポリイミド層の適用の前かまたは後の)、ならびに/または感光性ポリイミド層の塗布およびそれに続く照射(UVでの)および層の非硬化部分の除去によって達成されてもよい。
【0026】
さらなる実施によると、フレネルレンズ構造体は、第1および第2のセグメントを提供され、第1のセグメントにおけるプレチルト(α)は、第2のセグメントにおけるそれよりも小さい。セグメントは、第1のセグメントにおける1つまたは複数の傾斜表面の傾斜角が、第2のセグメントにおける1つまたは複数の傾斜表面の少なくとも1つの傾斜角よりも小さいように、適切に配置される。セグメントは、例えばストリップとしてまたはリングとして適用されてもよい。これとともに、傾斜角の差は、絶対チルト角βが、光学デバイスについて公差のマージン内で均一であることになるように、補償することができる。
【0027】
別の実施形態では、傾斜表面上の配向層は、少なくとも1つの内側セグメントおよび外側セグメントにセグメント化され、前記セグメントは、前記配向層と整列し、外側セグメントは、少なくとも1つの内側セグメントのそれよりも大きいプレチルト角αを有する。このより具体的な実施形態では、配向層が、異なるセグメントにおいて異なって前処理されるだけでなく、別個の配向層も、適用される。
【0028】
好ましくは、回折光学構造体は、前記少なくとも1つの傾斜表面が、対向する傾斜の向きを有する傾斜表面セグメントを備えるように、楕円形状を有する。楕円形状は、光学目的のためにしばしば使用され、プレチルト補償なしで、LC分子が、必然的に対向する方向に向くということになり、それによって上述の回位を創出するように、対向する傾斜表面を創出する。好ましくは、回折光学構造体として楕円形状を使用するとき、配向方向は、楕円体の短軸に対して平行であるように選択される。これは、プレチルトが、この短軸に対して平行であることを暗示する。この方向では、回折光学構造体の傾斜角は、最小のプレチルトを用いて補償することができる。この方向では、回位を引き起こす傾斜は、抑制される。
【0029】
好ましくは、第1の電極層は、第2の電極層に対して実質的に平行に延びる。好ましくは、複数のスペーサが、傾斜表面と第2の電極層との間に提供される。スペーサは、層を互いに所定の距離に保ち、層が実質的に平行に延びることを可能にする。スペーサは、光学性能の妨害なしに機械的安定性を提供するように表面積にわたって適切に分けられる。
【0030】
一実施形態では、偏光無依存の調節可能なレンズの第2の光学デバイスは、偏光子である。結果として得られる調節可能なレンズは、サングラスに使用することができる。それに加えて、それは、偏光子のない従来のサングラスに適切にアセンブルされ、そのサングラスはオプションとして、屈折度数を提供される。偏光子は、当業者によく知られているように、それが、可視光の第2の直交偏光方向を考慮するような方向に提供されることになる。
【0031】
別の好ましい実施形態では、第2の光学デバイスは、別のレンズであり、それは、第1の光学デバイスに対して第2の直交方向における光の偏光に影響を与える。より好ましくは、第2の光学デバイスは、それが、フレネルレンズ構造体、第1の配向層、液晶材料および第1の電極層と第2の電極層との間のさらなる配向層の組み合わせを備えるという点において第1の光学デバイスに対応する。そのような偏光無依存の調節可能なレンズは、好ましくは適切であるような任意の屈折度数を有する第1の眼鏡用レンズと第2の眼鏡用レンズとの間で、それ自体再び眼鏡にアッセンブルされるべきである。オフ状態における液晶の屈折率(典型的には1.5)に合致する材料は、一般に利用可能であるので、それが、オフ状態において目に見えない(ゼロ屈折度数)ように構成可能であるということは、本調節可能なレンズの利点である。それ故に、レンズをアクティブに使用する(すなわちレンズの焦点を合わせる)とき、単に電気の使用があるだけである。
【0032】
なおさらなる実施では、そのような第1および第2の光学デバイスは、実質的にまたは完全に同一であることが、好ましい。これは、製造を容易にする。その上、第1および第2の光学デバイスは、逆の向きにアセンブルされ、その結果第2の電極は、第1の電極よりも互いにより近くにあるということが、好ましいと考えられ、別なふうに述べると、第1の電極は、むしろアセンブリの外側にあり、第2の電極は、アセンブリの内側にある。これは、ホメオトロピック液晶材料を使用するとき、最良の性能をもたらすことが見いだされている。
【0033】
特に眼鏡への所望される統合を考慮すると、フレネルレンズ構造体によって規定されるレンズは、20~30mmなどの、15~35mmの直径を有することが、好ましい。これは、かなり広いレンズである。本発明につながる問題は特に、そのような直径を有するレンズに関連して観察された。それはまた、より大きい直径においても利用可能であることになるが、しかし二重像はその結果、十分に抑制されないこともある。
【0034】
好ましくは、第1の電極層は、第2の電極層に対して実質的に平行に延びる。これは、電極間の距離、したがって電場の強度が、全幅にわたって同じである、安定したデバイスを達成するために好ましい。その上、そのような平行延長は、第1および第2の電極が各々、基板上に適用され、電極層および任意のさらなる層(フレネルレンズ構造体および配向層などの)を有する基板が、その後一緒にアセンブルされるという点において、達成することができる。
【0035】
再びさらなる実施では、複数のスペーサが、傾斜表面と第2の電極層との間に提供される。複数のスペーサは、光学性能を妨害しないように適切に分配される。偏光無依存の調節可能なレンズの屈折度数は適切に、0から4の間、好ましくは+0.5から+3.0の間、+1.0から+2.5の間などの、範囲内にある。
【0036】
使用されるフレネルレンズ構造体は、当業者に知られているように、様々な次数であってもよく、フレネルレンズ構造体の高さは、次数とともに増加する。より高い次数は、より良好な光学品質を与えるが、しかしより遅く切り替わる。さらに、二重像に関する問題は、より低い次数のレンズについてよりもより高い次数のレンズについてより顕著であると思われる。三次のレンズおよび六次のレンズが、作られている。
【0037】
光学デバイスを製造するために、好ましくは次の、
- 第1の基板に第1の電極、フレネルレンズ構造体および第1の配向層を提供するステップと、
- プレチルトを第1の配向層に単一配向方向において適用するステップと、
- 第2の基板に第2の電極およびさらなる配向層を提供するステップ、およびプレチルトをさらなる配向層に、プレチルトが、第1および第2の基板のアセンブリ後に第1の配向方向に対して逆平行であるような方向において適用するステップと、
- 第1の配向層とさらなる配向層との間にアセンブリにより形成されるスペースが、前記液晶材料で満たされるように、第1および第2の基板を組み立てるステップおよび液晶材料を提供するステップとが行われる。
【0038】
さらなる配向層の前処理は、LC分子が、LC材料が存在するスペースの上部側および底部側において所望の向きに向けられるように望まれるということが、明瞭にするために観察される。さらなる配向層に適用される、結果として得られるプレチルト角は、第1の配向層に適用されるそれに等しい必要はない。第2の電極層が、平面であるとき、それは、好ましい状況であり、さらなる配向層のプレチルト角は、第1の配向層のそれよりも小さくてもよい。適切には、第1の配向層におけるプレチルト角は、5~7度などの、4~8度の範囲内にあり、例えば約6度である。さらなる配向層のプレチルトの逆平行方向は、生成デバイスにおける状況を参照することを意図されているということが、明瞭にするために観察される。
【0039】
再びさらなる態様では、本発明は、光学デバイスを製造する方法に関し、
- 第1の基板に光透過性の第1の電極層(8)および第1の電極層に隣接する回折光学構造体(4)を提供するステップであって、前記回折光学構造体は、フレネルレンズ構造体の中心に第1の傾斜表面(11)を備えるフレネルレンズ構造体であり、それは、複数の角度のさらなる傾斜表面によって取り囲まれ、その第1およびさらなる傾斜表面は各々、第1の電極層(8)に対してある傾斜角を有する、ステップと、
- 少なくとも1つの配向層を前記第1およびさらなる傾斜表面上に適用するステップ、および定義済みのプレチルトをそれに隣接する液晶(LC)分子に適用するように前記少なくとも1つの配向層を処理するステップと、
- 第2の基板に光透過性の第2の電極層および定義済みのプレチルトをそれに隣接する液晶(LC)分子に適用するように処理されたその上のさらなる配向層を提供するステップと、
- 配向層が互いに面する状態で、第2の電極層が、第1の電極層からある距離(d)に提供されるように、第1および第2の基板を組み立てるステップ、ならびに液晶材料で満たされるスペースをそれらの間に創出するステップであって、前記少なくとも1つの配向層の適用および/または処理は、異なる配向方向および/または異なるプレチルト角(α)を有する複数のセグメントを提供するように構成される、ステップと、を含む。
【0040】
この態様によると、(第1の)配向層は、異なる配向方向および/または異なるプレチルト角を有する複数のセグメントに細分される。これとともに、プレチルトは、下にあるフレネルレンズ構造体の傾斜に合致するように配置されてもよい。これは、LC分子がすべて適切に整列することを確実にするために有益である。適切には、オン状態におけるLC分子の向きは、第1の電極層へ投影されるとき、最大で45度、または最大で30度さえもの、配向方向に対して横方向の角度を含むということが、それとともに達成される。セグメントへの配向層の細分は、二重像の問題を低減するための効果的な方法と考えられる。好ましくは、プレチルトを提供するステップは、光学デバイスを前記配向方向にラビングするステップおよび/または感光性配向材料を使用するステップの1つを含む。
【0041】
これについての好ましい実施形態では、第1のセグメントにおいて第1の配向方向にかつ第2のセグメントにおいて第1の配向方向に対して平行でかつ反対である配向方向に処理される第1の配向層が、提供される。ここにおいて、さらにより好ましい実施では、第1のセグメントおよび第2のセグメントは、第1のセグメントが、第1の配向方向においてフレネルレンズ構造体の中心の下流に位置する傾斜表面の第1の部分をカバーし、第2のセグメントが、第1の配向方向において前記中心の上流に位置する同じ傾斜表面の第2の部分をカバーするように配置される。この実施形態では、第1および第2のセグメントは、反対の配向方向を与えられる。第1のセグメントと第2のセグメントとの間のボーダは、フレネルレンズ構造体の中心を通ってもよい。別法として、そのようなボーダは、1つの傾斜表面から後続の傾斜表面への移行部と少なくとも部分的に一致してもよい。これについての利点はその結果、線が傾斜表面の中心に見えなくなるということであり、それは、ユーザにとって最も有力な表面である。最も好ましくは、反対の配向方向を有するセグメントに第1の配向層を細分するとき、対応するセグメントは、液晶材料で満たされた空洞の底部側および上部側の配向の合致を確実にするために、さらなる配向層において適用される。
【0042】
さらなる実施では、そのような第1および第2のセグメントは、同じ配向方向だが、しかし異なるプレチルト角を有するさらなるセグメントによって分割されるまたはむしろさらなるセグメントを伴ってもよい。例えば、前記第1および第2のセグメントは、内側セグメントであり、さらに外側セグメントが、第1および第2のセグメントの各々に隣接して存在し、内側および外側セグメントは、好ましくは第1の配向方向に対して平行な相互界面を有して、第1の配向方向に対して平行に配置され、外側セグメントは、内側セグメントと異なるプレチルト角を有する。
【0043】
別の実施形態では、それは、前の実施形態と組み合わされてもよく、第1の配向層は、第1のセグメントに対応する所定のパターンに従って適用され、第2の配向層は、第2のセグメントに対応する所定のパターンに従って適用され、前記第1および第2の配向層は、異なるプレチルト角(α)を有する。第1および第2の配向層はここでは、感光性材料を備えてもよく、それは、プレチルト角を規定するために照射によって処理される。例えば、非特許文献3によって開示されるなどの、多面体オリゴマーシルセスキオキサンのナノ粒子を用いたポリイミドのドーピングは、ナノ粒子の濃度に依存して異なるプレチルト角を有する材料を生み出すために使用されてもよい。別法としてまたは追加として、感光性材料を備える第1の配向層が、適用され、前記セグメントは、前記感光性材料の処理によって提供され、前記セグメントの少なくとも第1および第2のものについての処理は、相互に異なるプレチルト角および/または相互に異なる配向方向を提供するために、異なる。
【0044】
この技術は、それ自体知られているが、二重像の問題を防止するまたは低減するためにフレネルレンズ構造体との組み合わせで本発明の文脈における適用は、従来技術において知られていないまたは取り組まれていない。
【0045】
再びさらなる実施形態では、角度傾斜表面は各々、第1の電極層から突き出ているブレーズから延び、前記ブレーズはさらに、第1の電極層(8)に対して実質的に横方向に延びる側壁を有し、第1の配向層は、ブレーズの側壁が、自由に保たれ、配向層のないままであるように、定義済みのパターンに従って提供される。
【0046】
再びさらなる態様によると、本発明は、上文に述べられた製造の方法に従って得ることができる光学デバイスに関する。結果として得られるデバイスは、第1の電極層と、第1の電極層からある距離(d)に提供される第2の電極層であって、その第1および第2の電極層は、光透過性でかつそれらの間に存在する、第2の電極層と、第1の電極層に隣接しかつフレネルレンズ構造体の中心に第1の傾斜表面を備えるフレネルレンズ構造体である回折光学構造体であって、それは、複数の角度のさらなる傾斜表面によって取り囲まれ、その第1およびさらなる傾斜表面は各々、第1の電極層に対してある傾斜角を有し、第1の配向層でカバーされる、回折光学構造体と、少なくとも1つの傾斜表面上の前記第1の配向層と第2の電極層との間のスペースを満たしかつオフ状態において垂直に整列する液晶(LC)分子を備える液晶材料と、第2の電極に隣接するスペースの側に配置されるさらなる配向層とを提供される光学デバイスである。前記第1の配向層との界面におけるLC分子は、単一配向方向においてプレチルト(α)を有し、第1の配向層は、異なる配向方向および/または異なるプレチルト角を有するために、複数のセグメントを提供される。第1および第2のセグメントが、異なりかつ反対の配向方向を有するとき、さらなる配向層は、それに応じて反対の配向方向を有する第1および第2のセグメントを提供される。
【0047】
本発明はさらに、第1の光学デバイスおよび第2の光学デバイスのスタックを備える偏光無依存の調節可能なレンズに関し、少なくとも第1の光学デバイスおよび好ましくは第2の光学デバイスもまた、前の態様に従い、かつ/または明記された方法に従って得ることができる。この態様の光学デバイスは、本発明の方法を用いて製造することができ、偏光無依存の調節可能なレンズにおいて適用されるとき、二重像問題の低減を可能にする。適切な一実施形態では、偏光無依存の調節可能なレンズは、湾曲している。好ましくは、第1および第2の光学デバイスのアセンブリは、定義済みの曲率を適用するように処理される。より好ましくは、前記定義済みの曲率は、そのようなガラスの片側への付着かまたはより好ましくはそのような眼鏡ガラスの2つのレンズ半分間の統合のために、偏光無依存の調節可能なレンズが統合されるべき眼鏡からのガラスの曲率に合致する。曲率の適用は、LC分子の配向特性に悪影響を有さないことが、見いだされている。
【0048】
この方法を使用して、上で述べられたような信頼できる光学特性を有する光学デバイスが、製造可能である。当業者は、プレチルトが、製造プロセスの異なる段階において、複数の技法を使用して、かつ使用される技法に応じて、提供可能であることに気付くことになる。1つの態様に対して上文に論じられた任意の実施形態または実施は、明瞭に否定しない限り、また任意の他の態様にも当てはまる。
【0049】
本発明は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を例示する図面に関してより詳細に今から述べられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の一実施形態による光学デバイスの横断面を示す図である。
【
図2】本デバイスのオン状態およびオフ状態における目的とするLCの向きを示す図である。
【
図3】傾斜表面上の配向方向の効果を例示する図である。
【
図4】傾斜表面を補償するプレチルトを例示する図である。
【
図5】LC分子へのプレチルトの効果が、レンズ表面の複数の場所において示される、レンズ表面の一部の図を例示する図である。
【
図6】表面が、セグメント化され、異なるプレチルトが、セグメントに適用される、レンズ表面の斜視図を例示する図である。
【
図7】プレチルトをレンズ表面に適用するための複数のオプションを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面では、同じ参照番号は、同じまたは類似の要素に割り当てられている。
【0052】
本開示は、特定の実施形態に関してかつある図面を参照して述べられることになるが、しかし本開示は、それらに限定されない。述べられる図面は、概略的なだけであり、限定されない。図面では、要素のいくつかのサイズは、説明に役立つ目的のために誇張され、スケール通りに描かれないこともある。寸法および相対寸法は、必ずしも本開示の実際の実施化(reduction to practice)に対応するとは限らない。
【0053】
さらに、明細書およびクレームにおける用語第1、第2、第3および類似のものは、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも逐次的または経時的順序を記述するためとは限らない。用語は、適切な環境下で交換可能であり、本開示の実施形態は、本明細書で述べられるまたは例示される以外の順序で動作可能である。
【0054】
その上、明細書およびクレームにおける用語上部、底部、上に、下におよび類似のものは、説明する目的のために使用され、必ずしも相対位置を記述するためとは限らない。そのように使用される用語は、適切な環境下で交換可能であり、本明細書で述べられる開示の実施形態は、本明細書で述べられるまたは例示される以外の向きにおいて動作可能である。
【0055】
クレームにおいて使用される、用語「備える(comprising)」は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきでなく、それは、他の要素またはステップを排除しない。それは、言及される通りに述べられる特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を明記すると解釈される必要があるが、しかし1つもしくは複数の他の特徴、整数、ステップもしくはコンポーネント、またはそれらのグループの存在または追加を除外しない。それ故に、表現「手段AおよびBを備えるデバイス」の範囲は、コンポーネントAおよびBだけから成るデバイスに限定されるべきでない。それは、本開示に関して、デバイスの関連するコンポーネントだけが、AおよびBであるということを意味する。クレームにおいて使用される、用語「~の少なくとも1つ」は、言及される通りに述べられる特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの1つまたは複数の存在を明記すると解釈されるべきであり、それによって表現「および/または」を置き替える。それ故に、AおよびBの少なくとも1つは、Aおよび/またはBと解釈されるべきである。クレームにおいて使用される、用語「~の1つ」は、言及される通りに述べられる特徴、整数、ステップまたはコンポーネントのただ1つの存在を明記すると解釈されるべきであり、それによって表現「または」を置き替える。それ故に、AおよびBの1つは、AまたはBと解釈されるべきである。
【0056】
熱可塑性、または熱軟化性プラスチックは、特定の温度よりも上で柔軟にまたは成形可能になり、冷却することで固化するプラスチック材料、ポリマーである。好ましくは、これらの熱可塑性の層は、光学的に透明である、すなわち可視スペクトル、例えば400~700nmにおいて5から100%の間の光透過効率を有するポリマーから作られる。例は、ポリエチレンテレフタレート、三酢酸セルロース、透明なポリウレタンポリカーボネート、またはMitsui MR8などの眼鏡を作るために使用されるチオウレタン材料である。これらの材料で作られるフィルムは、5から1000μmの間で変化する厚さを有し、典型的には3mmに至るまでの曲げ半径に耐えることもある。
【0057】
回折光学素子は、ブレーズド格子、フレネルレンズ、フレネルアキシコンまたは透過光に所定の位相プロファイルを誘発する他の構造体などの、回折構造体を備えてもよい。
【0058】
空洞7を満たす流体材料は、液晶材料である。好ましくは、空洞を満たす液晶材料の屈折率は、少なくとも液晶材料の状態の1つについて回折光学素子4、ボーダ6および接着剤の屈折率と合致する。例えば、よく知られた液晶E7の通常屈折率は、UV接着剤NOA74に等しい。液晶材料は、オフ状態において垂直方向に整列する。垂直方向に整列する液晶材料は、液晶が、自然に配向表面に対して垂直方向に整列する、材料である。言い換えれば、電圧が、光学デバイスのオフ状態において、印加されないとき、液晶は、配向表面に対して実質的に垂直のままである。そのような材料はまた、負の誘電異方性(ε)を有することも知られており、それ自体知られている。結果として得られる液晶材料はまた、ホメオトロピックとも呼ばれている。光学デバイスの下方部分では、配向表面は主に、回折構造体の傾斜表面によって形成される。光学デバイスの上方部分では、配向表面は、第2の電極層または第2の電極を備える層によって形成される。上方および下方配向層は、光学デバイスの空洞から底部および上部壁を形成する。一実施形態では、下方配向表面および上方配向表面は、平行でなく、傾斜表面に対応する傾斜セグメントを示す。
【0059】
垂直方向に整列する液晶材料内の結晶は、それらのオフ状態において、電極層に関する代わりに、配向表面である、接触面に関して実質的に垂直な位置を取る傾向があるということが、観察されている。本発明の光学デバイスにおけるこの挙動の結果は、結晶の少なくとも一部が、それらのオフ状態において、第1の電極層に関して傾いた位置を取るということである。このチルトは、回折構造体における少なくとも1つの傾斜表面の傾斜に直接関係している。したがって、典型的には、電極層に関するこのチルトは、光学デバイスにわたって不連続である。さらなる記述では、第1の電極層の法線に関するLC分子のチルトは、有効チルト角と呼ばれる。
図4では、有効チルト角は、参照表示βを用いて例示される。
【0060】
プレチルトの概念は、LC材料について知られている。文献では、用語プレチルトは、典型的には環境に応じて、わずかに異なる定義を有することができる。本開示では、垂直方向に整列する液晶材料が、使用され、配向層は、不連続であり、電極層に関して異なる傾斜方向および/または角度を示す。プレチルトは、この文脈においては、デバイスのオフ状態において、LC結晶と配向材料の表面法線との間の角度に関係すると定義される。配向材料は、LC分子と接触する材料である。
図4では、プレチルトは、参照表示αを用いて例示される。この定義によると、配向表面が、第1の電極層に対して平行であるとき、有効チルト角βおよびプレチルトαが、同じであるということは、明らかである。これは、
図4では図の中間部分に例示される。また、この定義によると、プレチルトが、与えられないとき、LC分子は、配向表面に対して実質的に垂直に延びる。
【0061】
複数の技法が、プレチルトをLC分子に提供するために文献において述べられる。これらの技法の多くは、LC分子を所定の方向に向けることを目標としている。これは、オン状態に切り替わるとき、LC分子が向く方向に影響を与える。大部分の光学システムについて、これらのLC分子が、単一方向に向くことは、好ましい。これもまた、プレチルトが、多くの場合に角度を規定するだけでなく、また角度が向けられる方向も規定するということを明らかにする。例えば、プレチルトが、ラビングを介して実現されるとき、ラビング方向が、プレチルト方向を決定し、ラビング強度が、プレチルト角を決定する。
【0062】
完全性のために、光リークと呼ばれる効果を含む、光学デバイスにおけるLC材料の光学的効果が、説明される。回折構造体全体にわたる1つの偏光についての均一な光学的応答を確実にするために、ネマチックLC分子は、すべての状態において一軸的に整列したままであるべきである。このようにして、複屈折性分子によって引き起こされる遅延は、2つの特定の垂直の向きに線形的に偏光した光の偏光に影響を及ぼさないことになる。透過光の位相プロファイルがその結果、例えば様々な場所において回折構造体の高さによって影響を受けるとき、それは、一点への焦点調節などの、特定の挙動を示すように注意深く管理することができる。一軸方向に対して平行な線形的に偏光した光は、線形的に偏光したままであることになるが、しかし変化した位相プロファイルを有し、一方垂直方向は、影響を受けないままである。所望の応答を有する光学デバイスはその結果、正しい向きを有するLCセルの前部に線形偏光子を置くか(全体的な光透過の減少という代償を払って)、または2つの同一セルを90度の角度の下に置くことによって構築することができ、偏光無依存のデバイスにつながる。
【0063】
しかしながら、もし分子の向きが、例えば回折構造体の表面のために、一軸構成から逸脱するならば、位置依存遅延が、有効になる。結果として、偏光の位置依存変化が、生じることになり、局所的位相プロファイルは、2つの状態の重ね合わせになることになる。完全な一軸的向きと異なり、線形偏光子は、デバイス全体にわたる望まれない位相プロファイルを除去することができず、それ故に位置依存二重像が、有効になることになる。同様に、2つのそのような同一のデバイスは、位置依存二重像につながるということになる。この効果は、光リークと呼ばれ、本発明によって最小化される。
【0064】
好ましくは、底部基板は、第1の光学的に透明な熱可塑性の層2を備え、第1の光学的に透明な電極8を備える。上部基板は、第2の光学的に透明な熱可塑性の層3を備え、第2の光学的に透明な電極9を備える。層2および3は、好ましくは回折光学素子4の上部に提供されるスペーサ5の数によって設定される、ある固定距離dに提供される。距離dは、好ましくはさらにボーダ6によって維持される。回折光学素子4、スペーサ5およびボーダ6は、
図1によって例示されるように、層2と3との間にかつ電極層8と9との間に位置決めされる。距離dは、10ナノメータ(nm)から100マイクロメータ(μm)の間、典型的には50nmから50μmの間とすることができる。
【0065】
好ましい実施形態では、ボーダ6、スペーサ5および回折光学素子4は、同じ材料組成を有する。例えば、スペーサ5、回折光学素子4およびボーダ6は、ビスフェノールフッ素ジアクリレートなどの高屈折率モノマーまたはNorland Optical Adhesives (NOA)としてNorland Products, Incから市販のNOA 1625もしくはNOA 164などの高屈折UV接着剤から作ることができる。
【0066】
以下で開示されるように、ボーダ6、スペーサ5および回折光学素子4は、底部基板上に存在する、上述の材料組成を有する同じ層からナノインプリント技術を使用して形成することができる。
【0067】
ナノインプリント技術は、半導体および平面パネル製造技術に使用されるリソグラフィのパターン化と比較して、より簡単で、より低コストでかつ高スループットのパターン化技術である。とりわけ、参照によりこれによって組み込まれる、非特許文献4において開示されるように、ナノインプリントリソグラフィは、所望のパターンの逆を含有する作製済みのモールドの使用を伴う。このモールドは、ポリマー被覆基板に押し付けられ、それによってパターンが、それの機械的変形によってポリマーに複製される。変形の後、パターンは、変形したポリマーへの熱プロセスを使用してまたは変形したポリマーをUV光にさらすことによって固定され、ナノインプリントされたパターンの硬化をもたらす。その後、モールドは、取り除かれる。逆パターンは、形成すべき単一構造体に対応することができる。ポリマー内に構造体のアレイを形成することはその結果、必要とされる構造体の数と同じ回数だけナノインプリントプロセスを繰り返すことを必要とする。スループットは、もしモールドが、逆パターンのアレイを含有するならば、増加することができ、それによって単一ナノインプリント中に、所望の数の構造体が、同じポリマー内に同時に形成される。
【0068】
好ましくは、その表面が、第2の熱可塑性の層3の方へ向けられる、回折光学素子4の表面は、液晶材料のための配向層として構成されるサブミクロンの溝を含有する。これらの溝は、前の段落において論じられたようなナノインプリントによって回折光学素子4を形成するとき、創出することができる。ナノインプリントプロセスに使用されるモールドは、ボーダ6、スペーサ5および回折光学素子4の負の形状を含有するだけでなく、その内部表面は、少なくとも回折光学素子4の形状の場所に、例えば円形または長方形のパターンの溝も含有する。この手法は、一体的方法でこれらの特徴を形成することを可能にする。非特許文献6においてするように、非特許文献5においてナノインプリント技術を使用してそのような配向パターンを形成することを開示する。
【0069】
液晶材料の配向特性は、溝それ自体の幾何学的形状によって決定されるだけでなく、また溝が形成される回折光学素子4を構成する材料によっても決定される。もし別の材料が、溝の同じ構成のために使用されるならば、追加の共形配向層が、異なる材料配向特性を提供するためにこれらの溝を覆って形成されてもよい。例えば、ホメオトロピック配向層が、塗布されることもあり、もし回折光学素子の材料が、液晶分子を平面方向に整列させるならば、溝の少なくともいくつかの上を覆う。この共形配向層は、回折光学素子4の完全な溝付き表面をカバーすることができる。別法として、この溝付き表面の一部だけが、この追加の共形配向層を用いてカバーすることができ、追加の共形配向層と回折光学素子4との間の材料配向特性の差を利用することを可能にする。
【0070】
平坦化材料の層は、回折光学素子4の上部の空洞7の内部に存在することができる。配向層はまた、その表面が第2の熱可塑性の層3の方に向けられる、平坦化層の表面に形成される溝によって、空洞7の底部に存在してもよい。デバイス1の動作中は、これらの溝は、空洞7内に存在する液晶を向けるのに役立つ。好ましくは、別の配向層もまた、第2の光学的に透明な電極3に隣接する空洞7の側に存在し、それによって溝付き表面に面している。
【0071】
少なくともそれらの界面における、回折光学素子4および平坦化層それぞれの材料は、同じ屈折率を有することができる。さらに、これらの材料の低周波数電場(例えば1Hz~10kHz)における誘電率は、異なってもよい。この平坦化材料はまた、ボーダ6の上側部分を形成するために使用することもできる。もしノッチ16が、存在するならば、それは、この平坦化材料内に形成される。
【0072】
光学的に透明な電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)、ClearOhm(登録商標)銀ナノワイヤまたはAGFA Orgaconインクなどの材料で作ることができる。ITOの脆弱性のため、PEDOT:PSS、グラフェン、カーボンナノチューブまたは銀ナノワイヤなどの、剛性がより少なく、より柔軟な材料が、使用されてもよい。光学的に透明な電極8、9は、回折光学素子4の異なるゾーンに別々に対処するためにパターン化することができる。これらの電極はまた、例えば回折光学素子4のエリア内に電極を有することだけによってまたはこのエリア内の電極をボーダ6のエリア内の電極から分離するために、全能力を低減するようにパターン化されてもよい。
【0073】
この開示の第2の態様では、前の態様において開示されたような光学デバイス1は、光学機器において使用される。光学機器に挿入されるとき、光学デバイス1は、目に向かう光の位相プロファイルを調節するように構成される。
【0074】
そのような光学機器は、レンズとすることができ、光学デバイスは、レンズ挿入物として使用される。眼科応用を考えるとき、レンズは、眼鏡用レンズ、コンタクトレンズまたは眼内レンズのこともある。眼鏡用レンズおよびコンタクトレンズの両方は一般に、メニスカス形状を有するので、光学デバイス1もまた、それが埋め込まれる必要があるレンズの曲率と実質的に同じ曲率で湾曲するとき、光学デバイスは、レンズ内により容易に統合することができる。典型的には、光学デバイスはその結果、2つの直交方向に湾曲することになる。眼内レンズについては、平面のまたは湾曲した光学デバイスが、埋め込まれてもよい。
【0075】
そのような光学機器は、2つ以上の光学デバイス1を含有することができる。複数のこれらの光学デバイス1が、スタックされてもよい。複数の光学デバイスをスタックすることによって、単一光学デバイスの電気光学特性が、組み合わされてもよい。例えば、ネマチック液晶で満たされるがしかし直交配向を有する2つのデバイスは、偏光無依存の調節可能なレンズにつながる可能性がある。
【0076】
図2は、オン/オフ状態の間での屈折率の十分に制御された差を創出するためのLC分子10の目的とする挙動を示す。そのような制御された差は、光学デバイスの所望の信頼できる光学特性をもたらす。図では、オフ状態におけるLC分子は、10aを用いて参照され、オン状態におけるLC分子は、10bを用いて参照される。オフ状態において、LC分子は、垂直方向に整列する。
【0077】
LC分子を備える光学デバイスは、そのオン状態およびオフ状態における液晶の屈折率の差を通じて動作する。これは、LC分子の向きの変化の結果であり、それが、注意深く制御されない限り、レンズは、誤って振る舞う。特に、分子の大部分、好ましくはすべてが、オフ状態において上を指すということが、望ましい。この状態では、液晶の屈折率は、レンズの樹脂材料の屈折率と実質的に合致する。これは、使用される液晶混合物の通常屈折率、ne、が、レンズ材料の屈折率と実質的に同じであるということを意味する。この合致は、可視光のすべての波長について十分な方法でなされる。したがって、レンズを作るための樹脂材料は、2つの屈折率が、0.05を超えて逸脱することがないように、液晶混合物の分散曲線によく似ている屈折率分散曲線を有して準備される。
【0078】
電場が、印加されるとき、LC分子の大部分、好ましくはすべてが、実質的に水平方向に整列し、すべてが所定の軸に対して実質的に平行に延び、より好ましくは実質的に同じ方向を指すということが、望ましい。このようにして、1つの偏光だけについて光パワーがあり、その上部および底部配向層の両方は、協調した仕方で働く。この光パワーが実用的に有用であるためには、通常屈折率および異常屈折率の差は、十分に大きく、典型的には>0.15であるべきである。
【0079】
図1は、本発明の光学デバイスの横断面を示し、回折構造体が、複数の傾斜表面11を備え、傾斜が、異なる傾斜方向および/または異なる傾斜角を有する、典型的な状況を示す。フレネルレンズは、高度の対称性を示す。したがって、傾斜表面11は、異なる傾斜角を有することができる。好ましい配向方向12の方向に傾斜する傾斜表面は、11aを用いて参照される。好ましい配向方向12と反対の方向に傾斜する傾斜表面は、11bを用いて参照される。
図4はさらに、平坦な表面11cを示す。本発明による、そのような回折構造体を有する光学デバイスにおいて
図2に例示されるような挙動を得るために、LC分子のプレチルトが、変えられる。プレチルトの変化のない、LC材料の挙動は、
図3に例示される。
【0080】
ポリイミドにおける好ましい配向方向12を有する光学デバイスが、好ましくは創出される。これは、光の片方の偏光方向のパワーが、焦点を合わせられ、もう一方が、変わらないということを確実にする。これは、一実施形態によると、両方のレンズ上のポリイミド層をラビングすることによって達成され、逆平行方向にはレンズ層表面はない。同じ結果を達成する他の技法がまた、使用されてもよいことに留意する。
【0081】
試験中に、好ましい配向方向を創出するこの技法は、低い光パワーを有するレンズについて適切に働くことが、観察された。言い換えれば、中間のまたは低い構造体を用いた回折構造体が、使用されるとき、この技法は、適切に働いた。しかしながら、より高いパワーのレンズについては、これは、電場がオンに切り替えられるとき、膨大な数の回位をもたらした。
【0082】
本発明は、表面トポグラフィが、LC分子をさらに傾け、それ故に、電場が、オンに切り替えられるとき、それが、LC分子をレンズの反対側において反対方向に向ける(それらの固有の双極子を用いて)という洞察に少なくとも部分的に基づいている。これは、特に上部および底部表面におけるLC双極子が、反対方向に向けられる側において、回位を引き起こす。そのような望まれない挙動は、
図3に例示され、下文により詳細に説明される。この望まれない効果は、レンズにおける面の傾斜またはそれ故にレンズのパワーおよび直径が高いほどより顕著になる。これらの回位は典型的には、外側の最も急勾配のブレーズにおいてレンズの同じ側に生じることに留意する。
【0083】
図3は、そのような状況を例示する。図の中心に示される、
図3での光学デバイスは、図の右手側に向かう好ましい配向方向12を有するように処理される。光学デバイスにおける回折構造体は、フレネルレンズである。図の左手側には、光学デバイスの左手側における傾斜セグメント11aの横断面が、示される。図の右手側には、光学デバイスの右手側におけるさらなる傾斜セグメント11bの横断面が、示される。図から、これらの傾斜セグメントが、対向する傾斜の向きを有することは、明らかである。
【0084】
図3はさらに、両側において、上部の状況および下部の状況を示す。上部の状況は、それらの直立状態10aにおけるLC分子に対応し、一方下部の状況は、それらの横倒し状態10bにおけるLC分子に対応する。直立状態は、有意な電場が電極層間に創出されないときにLC分子が取る状態である。横倒し状態は、所定の電場が電極層間に創出されるときにLC分子が取る状態である。
【0085】
好ましい配向方向の結果として、
図3に例示されるように、LC分子の大部分は、横倒し状態10bにおいて右に向く傾向がある。しかしながら、図の右手側における傾斜角は、傾斜表面の近くに位置するLC分子を左に向けさせ、参照数字10bbを用いて例示される。右手側かつ下部の状況における図は、LC分子の一部分が、左10bbに向けられ、一方LC分子の別の部分が、右10bに向けられることを例示する。この文脈にいて、これは、バルクLCセル内への空洞の側における分子の配向の抽象的拡張であることに留意する。一般にバルク分子は、セルのバルクにおける向きの不一致を補償するために追加のねじれを示すことになる。これは、光学誤差が、光学デバイスにおいて目に見えるように、LC分子を透過する光を妨害する。
【0086】
この問題に対処するために、配向材料の表面に関するLC材料のプレチルトαは、表面トポグラフィによって設定されるチルトを補償するために変えられる。このプレチルトは、LC材料の知られている特性であり、LC分子と配向材料11の表面法線との間の角度αを表す。簡単にするために、人は、もし人が、LCのプレチルトを傾斜よりも大きく増加させることができれば、すべてのLC分子が、同じ方向に向くことになり、目的とする配向挙動が、達成できるということを理解することができる。これは、
図4に例示される。
図4は、プレチルトの原理を例示する。図は、異なる傾斜角を有する表面上の表面法線とLC分子との間の角度αを示す。
【0087】
図4から、図において角度βを用いて例示される、LC分子10aの絶対チルトが、好ましい配向方向12と一致するように、プレチルトが、選択可能であるということは、明らかである。言い換えれば、実質的にすべてのLC分子10aは、直立状態においては、絶対チルトβの同じ方向を有するように向けられる。これを達成するために、プレチルトは、最も急勾配の対向する傾斜表面角度よりも大きい角度αを有するように選択される。これは、
図4の右手部分に例示され、その傾斜表面11bは、プレチルト方向と比較して反対方向における直立軸に関してある角度を示す表面法線を有する。プレチルト角αは、結果として得られる絶対チルトβが、所望の方向にあるように、表面法線と直立方向との間の角度よりも大きい。LC分子が、電場をオンに切り替えることによってアクティブにされるとき、すべてのLC分子は、右手側に向くことになり、それによって
図3に例示される状況を回避し、信頼できる光学特性を得る。
【0088】
プレチルトを変えるために、人は、表面がラビングされる強度を増加させる(非特許文献)または感光性配向材料(非特許文献2)もしくは垂直方向に整列したLCおよび水平方向に整列したLCの混合物(非特許文献7)もしくは文献において説明される他の手法を使用することができる。レンズ上の位置に応じてプレチルト角を選択的に調節することが可能であり(例えば、感光性材料を使用して)、絶対チルト角がフレネルレンズ全体にわたって同じであることを確実にするということに留意する。
【0089】
別の手法は、ファセットの傾斜を制限することである。これは、特定のレンズパワーのためにレンズのより非球面設計を使用することによってまたは別法として傾斜がプレチルトよりも高いレンズ半分の外側部分を除去する(例えば、卵形レンズを作る)ことによってなされてもよい。
【0090】
図5Aは、レンズ表面の一部分の斜視図を示す。この部分は、上で述べられたような回折光学素子4の中間部分のこともあり得る。この図では、表面法線は、レンズ表面の複数の場所に描かれる。この表面法線は、連続した線を用いて矢印として描かれ、参照符号Nを用いて表される。オフ状態におけるLCの向きは、上で説明されたように、表面法線およびプレチルトの組み合わせである。LCの向きを示すベクトルもまた、レンズ表面のこれらの複数の場所に描かれ、参照符号Npを用いて表される。このLCの向きのベクトルは不連続の点線を用いて描かれる。このLCの向きのベクトルは、オフ状態におけるLC分子の向きを例示することに直接関係し、例示することを目的としている。プレチルト角は、角度αとして例示され、表面法線NとLCの向きのベクトルNpとの間の角度である。
【0091】
有効チルト角βは、第1の電極層の表面法線とLCの向きとの間の角度として上で定義される。
図5では、第1の電極層の表面法線が、示され、参照符号13を用いて表される。有効チルト角βは、LC分子と表面法線13との間の角度として示される。
【0092】
有効チルト角βは、レンズが、アクティブにされるとき、LC分子の向きの方向について決定される。LC分子の向きの方向への有効チルト角βの効果は、第1の電極層に対して平行な表面にLCの向きのベクトルNpを投影することによって最も良く説明することができる。配向方向12は典型的には、第1の電極層に対して平行に定義されることに留意する。この表面へのLCの向きのベクトルNpの投影は、
図5に示され、参照符号Npxyを用いて表される。投影Npxyは、配向方向12に対して平行な成分および配向方向12に対して横方向の成分を含む。横方向成分は、レンズ表面上の場所に応じて、0である可能性があることに留意する。特に傾斜表面が、配向方向に対して横方向に傾斜していないとき、投影Npxyの横方向成分は、0である。
【0093】
図5では、角度θは、投影Npxyと配向方向12との間の角度を例示するために使用される。試験は、実質的に配向表面全体にわたって、θが、60度よりも小さい、より好ましくは45度よりも小さい、最も好ましくは30度よりも小さいとき、レンズデバイスの信頼できかつ予測可能な動作が、保証可能であるということを示している。上記の説明および対応する図に基づいて、当業者は、角度θが、プレチルトを増加させることによってかつ/または傾斜角を低減することによってより小さくすることができるということに気付くことになる。
【0094】
図5Bは、第1の電極層に対して平行な、上面図における同じレンズ表面を示し、
図5Aに示される同じ矢印を示す。それによって、
図5Bは、第1の電極層へのLC分子の投影Npxyを示す。
図5Bはまた、表面法線Nも示す。
図5Bでは、角度θは、はっきりと見ることができる。レンズの中心線への図示される投影については、角度θは、0である。レンズの底部への投影については、角度θは、約30度である。
【0095】
図5Cは、側面図における同じレンズ表面を示し、また
図5Aおよび
図5Bに示される同じ矢印も示す。
図5Cから、有効チルト角βは、すべてのLCの向きのベクトルNpが、図の右手側を指すようなものであることが、明らかである。結果として、LCの向きのベクトルNpはすべて、配向方向に正のベクトル成分を有する。当業者は、これらのベクトルがすべて図の右手側を指すという効果が、LC分子が、それらがアクティブにされるとき、右手側の方へ向くことになることであるということに直接気付くことになる。これは、アクティブにされるとき、LC分子の均一な反応を創出し、それは、上で述べられたように、有利である。
【0096】
図6は、
図5Aに似た図を示すが、しかしレンズ表面は、2つのセグメントを備える。
図6での矢印は、上で述べられた、
図5での矢印に類似している。プレチルトは、片方のセグメントの配向方向が、もう一方のセグメントにおける配向方向に対して平行でかつ反対であるように、2つのセグメントにおいて異なる。特に、
図6のレンズ表面の右手側における配向方向12aは、右を指す。
図6のレンズ表面の左手側における配向方向12bは、左を指す。LC分子が、アクティブにされるとき、レンズ表面の右手側のLC分子は、右に向くことになり、一方レンズ表面の左手側のLC分子は、左に向くことになる。その効果は、上で述べられている。絶対プレチルトは、レンズ表面が、セグメント化されるとき、レンズ表面の傾斜角を補償するために著しくより小さい可能性がある。
図6から、表面法線の大部分が、少なくとも配向方向におけるベクトル成分を示すことになるということは、当業者には明らかであることになる。プレチルトは概して、それらの影響が、LC分子をアクティブにするときに低減されるように、配向方向以外の方向におけるベクトル成分の影響を補償することを目指す。
【0097】
図7は、レンズ表面のための複数のセグメント化オプションを示し、複数の配向方向および/またはプレチルトが、複数のセグメントに割り当てられてもよい。
図7では、矢印は、配向方向を例示し、一方破線は、レンズのセグメント化を例示する。
図7Aは、単一セグメントだけを有し、それ故に単一配向方向だけを有するレンズ表面を示す。
図7Aは、
図5に示される実施形態と一致する。
図7Bは、
図6の実施形態に対応する2つのセグメントを有するレンズ表面を示す。2つのセグメントは、反対の配向方向を提供される。
【0098】
レンズ表面内に複数のセグメントを考えるとき、平行だがしかし反対の配向を有する2つのセグメントの次に、他の構成が、可能である。例えば、好ましい一方向配向を有する液晶と組み合わせた中心対称の回折フレネルレンズ構造体の場合、レンズの側におけるセグメント内の分子(
図5Aおよび
図5Bを参照)は、局所傾斜に起因して配向方向に関して最大の横方向成分を有する。
図5および
図6を参照して、レンズの中間における光学品質に影響を及ぼすことなく、角度θを低減するために、外側のセグメントは、より大きいプレチルト角を提供されてもよい。これは、オフ状態におけるより悪い屈折率不一致という犠牲に至ることもあるが、しかしオン状態におけるより良好な光学性能につながることになる。内側セグメントと外側セグメントとの間の境界は、配向方向と平行な線以外のより複雑な形状を有することができ、特定の望まれる光学品質尺度に従って設計されてもよい。そのようなセグメント化は、
図7Cに例示される。
【0099】
そのような構成はさらになお、平行だが、しかし対向する配向方向を有する中央区分と組み合わされてもよい。そのような構成の一例は、
図7Dに例示される。このようにして、大きい中央回位線が、設計によって課せられるが、しかし軸外の逸脱は、側部において最小化され、一方有効チルト角およびプレチルト角は、概して同じ方向にある。
【0100】
複雑さという代償を払って、さらにより洗練されたセグメント化が、実施されてもよく、光学品質をさらに最適化する。
【0101】
図および記述に基づいて、当業者は、本発明の動作および利点ならびにそれらの異なる実施形態を理解することができることになる。しかしながら、記述および図は、単に本発明を理解することを目的としており、本発明をある実施形態またはそれに使用される例に限定するためではないということに留意する。したがって、本発明の範囲は、クレームにおいて規定されることになるだけであるということが、強調される。
【符号の説明】
【0102】
1 光学デバイス
2 第1の光学的に透明な熱可塑性の層
3 第2の光学的に透明な熱可塑性の層
4 回折光学素子
5 スペーサ
6 ボーダ
7 空洞
8 第1の光学的に透明な電極
9 第2の光学的に透明な電極
10 LC分子
10a オフ状態にあるLC分子、直立状態にあるLC分子
10b オン状態にあるLC分子、横倒し状態にあるLC分子
10bb 傾斜表面の近くに位置するLC分子
11 傾斜表面、配向材料
11a 好ましい配向方向の方向に傾斜した表面(セグメント)
11b 好ましい配向方向と反対の方向に傾斜した表面(セグメント)
11c 平坦な表面
12 好ましい配向方向
13 第1の電極層の表面法線
16 ノッチ