(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】遺伝子操作されたグルコシルトランスフェラーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 9/10 20060101AFI20231114BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20231114BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALN20231114BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12P19/18
C12N15/54
C12Q1/6813 Z
(21)【出願番号】P 2020514929
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 US2018050345
(87)【国際公開番号】W WO2019055373
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-09
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イウゲェン・リー
(72)【発明者】
【氏名】エレン・ディー・セムケ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エス・ペイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャレッド・ビー・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・マリー・ヘネシー
(72)【発明者】
【氏名】スラフコ・クラリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール・アルカン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ボット
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529096(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205401(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106262(WO,A1)
【文献】特表2020-534819(JP,A)
【文献】Scientific Reports,2016年,Vol.6,Article No.39479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/10
C12P 19/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成し、配列番号4の残基55~960と少なくとも90%同一である触媒ドメインを含
み、
(i)アミノ酸残基Asp-531に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Gly、Leu又はMet基によるものであり;
(ii)アミノ酸残基Arg-534に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Lys、Gly、Ile、Leu又はMet残基によるものであり;
(iii)アミノ酸残基Thr-563に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Ala残基によるものであり;
(iv)アミノ酸残基Gln-588に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Leu残基によるものであり;
(v)アミノ酸残基Ile-591に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Val、Lys又はArg残基によるものであり;
(vi)アミノ酸残基Lys-593に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Met残基によるものであり;
(vii)アミノ酸残基Ile-608に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Tyr残基によるものであり;
(viii)アミノ酸残基Ala-610に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Cys又はThr残基によるものであり;
(ix)アミノ酸残基Leu-661に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Pro残基によるものであり;
(x)アミノ酸残基Arg-722に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、His又はAsn残基によるものであり;
(xi)アミノ酸残基Thr-728に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Ser残基によるものであり;
(xii)アミノ酸残基Met-732に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Leu残基によるものであり;
(xiii)アミノ酸残基Arg-741に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Ser、Ala、Pro、Gln又はThr残基によるものであり;
(xiv)アミノ酸残基Tyr-848に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Glu残基によるものであり;及び/又は
(xv)アミノ酸残基Ile-1453に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Gly又はMet基によるものである、非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
配列番号62のアミノ酸残基Gln-588、Arg-741又はArg-722に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項
1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
配列番号62のアミノ酸残基Gln-588、Arg-741又はArg-722に対応する位置において2つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項
2に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項4】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも50%のα-1,3結合を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項5】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも100のDPwを有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項6】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも650のDP
wを有する、請求項
5に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項7】
配列番号4の残基55~960と少なくとも95%同一である触媒ドメインを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項8】
配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項9】
配列番号4と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項
8に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項10】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも90%のα-1,3結合を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、1つ以上の調節配列が、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記1つ以上の調節配列がプロモーター配列を含む、請求項
11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
水、スクロース及び請求項1~
10のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼを含む反応組成物。
【請求項14】
不溶性α-グルカンを生成する方法であって、
少なくとも水、スクロース及び請求項1~
10のいずれか1項に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させることであって、それにより、不溶性α-グルカンは、生成される、接触させること
を含む方法。
【請求項15】
前記不溶性α-グルカンを単離することをさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に全体として組み込まれる米国仮特許出願第62/557,834号明細書(2017年9月13日に出願された)の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、酵素触媒の分野に属する。例えば、本開示は、改変されたアミノ酸配列を有するグルコシルトランスフェラーゼ酵素に関する。このような改変された酵素は、増大した分子量を有する生成物を合成する。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式なコピーは、2018年9月11日作成の20180911_CL6159WOPCT_SequenceListing_ST25という名称のファイルにより、約315キロバイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、本明細書と同時に提出される。このASCIIフォーマット文献に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
多糖類を様々な用途に使用することが望まれているため、研究者は、生分解性であり、再生可能に供給される原料から経済的に製造することができる多糖類を探求してきた。このような多糖の1つは、α-1,3-グルカンであり、α-1,3-グリコシド結合を有することを特徴とする不溶性グルカンポリマーである。このポリマーは、例えば、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)から単離されたグルコシルトランスフェラーゼ酵素を使用して調製されている(非特許文献1)。また、例えば、特許文献1は、酵素的に製造されたα-1,3-グルカンから紡糸繊維を調製することを開示している。様々な他のグルカン材料も、新規又は改良された用途を開発するために研究されてきた。例えば、特許文献2は、α-1,3及びα-1,6結合の混在を有するいくつかの不溶性グルカンの酵素的合成を開示している。
【0005】
これら及び他の進展は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いたグルカンポリマーの生成においてなされてきた一方、このような酵素によって合成される不溶性グルカン生成物の分子量の増大に対して関心がほとんど向けられていないように見える。この技術的空白を解決するために、本明細書では、より高分子量の不溶性グルカン生成物を生成する改変されたアミノ酸配列を有するグルコシルトランスフェラーゼが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7000000号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0232819号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Simpson et al.,Microbiology 141:1451-1460,1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本開示は、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成し、及び不溶性α-グルカンの分子量は、置換位置においてのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい、非天然グルコシルトランスフェラーゼに関する。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、本開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、任意選択的に、1つ以上の調節配列は、ヌクレオチド配列に作動可能に連結され、好ましくは、1つ以上の調節配列は、プロモーター配列を含む、ポリヌクレオチドに関する。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、水、スクロース及び本開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼを含む反応組成物に関する。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、不溶性α-グルカンを生成する方法であって、(a)少なくとも水、スクロース及び本明細書に開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させることであって、それにより、不溶性α-グルカンは、生成される、接触させることと;(b)任意選択的に、工程(a)で生成された不溶性α-グルカンを単離することとを含む方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、本開示は、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を調製する方法であって、(a)(i)配列番号4又は配列番号4の55~960位と少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ(ii)1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定することと;(b)工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列を改変して、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、親グルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい分子量を有する不溶性α-グルカンを合成する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供することとを含む方法に関する。
【0013】
配列の簡単な説明
【0014】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
引用する全ての特許文献及び非特許文献の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0017】
別段の開示がなされていなければ、本明細書で使用される用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、参照されるものの1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を包含するものとする。
【0018】
存在する場合、特に記載しない限り、全ての範囲は、包括的であり、結合可能である。例えば、「1~5」と記載されている場合、記載範囲は「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などの範囲を含むと解釈されたい。
【0019】
用語「α-グルカン」、「α-グルカンポリマー」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。α-グルカンは、α-グリコシド結合によって互いに連結されるグルコースモノマー単位を含むポリマーである。典型的な実施形態では、本明細書のα-グルカンは、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のα-グリコシド結合を含む。本明細書のα-グルカンポリマーの例としては、α-1,3-グルカンが挙げられる。
【0020】
用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。α-1,3-グルカンは、グリコシド結合により互いに連結されるグルコースモノマー単位を含むポリマーであって、少なくとも約50%のグリコシド結合がα-1,3である。特定の実施形態におけるα-1,3-グルカンは、少なくとも90%又は95%のα-1,3グリコシド結合を含む。本明細書のα-1,3-グルカンにおける他の結合の大部分又は全ては、典型的には、α-1,6であるが、いくつかの結合はα-1,2及び/又はα-1,4であり得る。
【0021】
用語「グリコシド結合(glycosidic linkage)」、「グリコシド結合(glycosidic bond)」、「結合」などは、本明細書では同じ意味で用いられ、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に連結する共有結合を指す。本明細書で使用する場合、用語「α-1,3-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位及び3位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に連結する共有結合の種類を指す。本明細書で使用する場合、用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位及び6位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に連結する共有結合を指す。本明細書におけるグルカンポリマーのグリコシド結合は、「グリコシド結合」とも呼ぶことができる。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と呼ばれることになる。
【0022】
本明細書のα-グルカンのグリコシド結合プロファイルは、当技術分野で既知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMR又は1H NMR)を使用する方法を用いて決定することができる。使用し得るこれらの方法及び他の方法は、例えば、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書の大きいα-グルカンポリマーの「分子量」は、重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)として表すことができ、その単位はダルトン又はグラム/モルである。代わりに、大きいα-グルカンポリマーの分子量は、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すことができる。オリゴ糖などのより小さいα-グルカンの分子量は、通常、「DP」(重合度)として提供され得、これは、単に、α-グルカン内に含まれるグルコースの数を指す。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるなど、これらの分子量の測定値を算出するための様々な手法が当技術分野で知られている。
【0024】
本明細書の用語「スクロース」は、α-1,2-グリコシド結合によって連結されたα-D-グルコース分子及びβ-D-フルクトース分子から構成される非還元二糖を指す。スクロースは、一般には砂糖として知られている。
【0025】
用語「ロイクロース」及び「D-グルコピラノシル-α(1-5)-D-フルクトピラノース」は、本明細書では同じ意味で用いられ、α-1,5グルコシル-フルクトース結合を含有する二糖を指す。
【0026】
用語「グルコシルトランスフェラーゼ」、「グルコシルトランスフェラーゼ酵素」、「GTF」、「グルカンスクラーゼ」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。本明細書でのグルコシルトランスフェラーゼの活性は、生成物α-グルカン及びフルクトースを製造するための基質スクロースの反応を触媒する。GTF反応の他の生成物(副生成物)としては、グルコース、様々な可溶性グルコ-オリゴ糖及びロイクロースを挙げることができる。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の野生型形態は、一般に、(N末端からC末端の方向に)、シグナルペプチド(これは、典型的には、切断プロセスにより除かれる)、可変ドメイン、触媒ドメイン及びグルカン結合ドメインを含有する。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼは、CAZy(Carbohydrate-Active EnZymes)データベース(Cantarel et al.,Nucleic Acids Res.37:D233-238,2009)によれば、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)の下に分類される。
【0027】
本明細書の用語「グルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメイン」は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素にα-グルカン合成活性を付与するグルコシルトランスフェラーゼ酵素のドメインを指す。グルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメインは、典型的には、この活性を有する任意の他のドメインの存在を必要としない。
【0028】
用語「酵素反応」、「グルコシルトランスフェラーゼ反応」、「グルカン合成反応」、「反応組成物」、「反応配合物」などは、本明細書では同じ意味で用いられ、通常、水と、スクロースと、少なくとも1種の活性グルコシルトランスフェラーゼ酵素とを最初に含み、任意選択的に他の成分も最初に含む反応を指す。グルコシルトランスフェラーゼ反応が通常開始した後に、グルコシルトランスフェラーゼ反応にさらに存在し得る成分としては、フルクトース、グルコース、ロイクロース、可溶性グルコ-オリゴ糖(例えば、DP2~DP7)(これらは、使用されるグルコシルトランスフェラーゼに応じて生成物又は副生物と考えられ得る)及び/又はDP8以上(例えば、DP100以上)の不溶性α-グルカン生成物が挙げられる。少なくとも8又は9の重合度(DP)を有するα-1,3-グルカンなどの特定のグルカン生成物は、非水溶性であるため、グルカン合成反応では溶解されず、むしろ溶液外に存在する(例えば、反応から沈殿したため)可能性があることが理解されるであろう。それは、水、スクロース及びグルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させる工程が実施されるグルカン合成反応中である。本明細書で使用される用語「好適な反応条件下」は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素活性によってスクロースからα-グルカン生成物への変換を支援する反応条件を指す。
【0029】
用語「体積パーセント(percent by volume)」、「体積パーセント(volume percent)」、「vol%」、「v/v%」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。溶液中の溶質の体積パーセントは、次式を用いて求めることができる:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
【0030】
用語「重量パーセント(percent by weight)」、「重量パーセンテージ(weight percentage)(wt%)」、「重量-重量パーセンテージ(%w/w)」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。重量パーセントは、組成物、混合物又は溶液中に含まれる質量を基準とした物質のパーセンテージを指す。
【0031】
用語「水性条件」、「水性反応条件」、「水性状況」、「水性系」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。本明細書の水性条件は、溶媒が例えば少なくとも約60重量%水である溶液又は混合物を指す。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応は、水性条件下で実施される。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「可溶性」、「水溶性(aqueous-soluble)」、「水溶性(water-soluble)」は、本明細書において水及び/又は水溶液中に溶解する能力を有するグルカンを特徴付ける。本明細書の可溶性グルカンの例は、8未満のDPを有するα-1,3-グルカンなどの特定のオリゴ糖である。対照的に、「不溶性」、「非水溶性(aqueous-insoluble)」、「非水溶性(water-insoluble)」(などの用語)であるグルカンは、本明細書において水及び/又は水溶液中に溶解しない(又は認識できるほどに溶解しない)。任意選択的に、溶解度を決定するための条件としては、約1~85℃(例えば、20~25℃)の水/溶液温度範囲及び/又は約4~9(例えば、約6~8)のpH範囲が挙げられる。
【0033】
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸分子」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。これらの用語はヌクレオチド配列などを包含する。ポリヌクレオチドは、任意選択的に、合成の、非天然の又は改変されたヌクレオチド塩基を含有する一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNAのポリマーであり得る。ポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はそれらの混合物の1つ以上のセグメントから構成され得る。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、コード領域からRNA(RNAは、DNAポリヌクレオチド配列から転写される)を発現するDNAポリヌクレオチド配列を指し、このRNAは、メッセンジャーRNA(タンパク質をコードする)又は非タンパク質コードRNAであり得る。遺伝子は、コード領域単独を指す場合があるか、又はコード領域への上流及び/若しくは下流の調節配列(例えば、プロモーター、5’非翻訳領域、3’転写ターミネーター領域)を含む場合がある。タンパク質をコードするコード領域は、代わりに、本明細書では「オープンリーディングフレーム」(ORF)と呼ぶことができる。「天然の」又は「内在性の」遺伝子は、それ自体の調節配列とともに天然に見出されたままの遺伝子を指し;そのような遺伝子は宿主細胞のゲノムの本来の場所に位置する。「キメラ」遺伝子は、天然には一緒に見出されることがない(すなわち調節領域及びコード領域は互いに非相同である)調節配列及びコード配列を含む、天然遺伝子でない任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列及びコード配列又は同一起源に由来するが、天然に見出されるものと異なる方法で配列された調節配列及びコード配列を含む可能性がある。「外来」又は「異種」遺伝子は、遺伝子導入によって宿主生物内に導入される遺伝子を指す可能性がある。外来/異種遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、天然宿主内の新規な場所に導入された天然遺伝子又はキメラ遺伝子を含む可能性がある。本明細書に開示される特定の実施形態におけるポリヌクレオチド配列は、異種である。「導入遺伝子」は、遺伝子導入手順(例えば、形質転換)によりゲノムに導入された遺伝子である。「コドン最適化」オープンリーディングフレームは、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するよう設計されたコドン使用頻度を有する。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、通常、定義された配列を有するアミノ酸残基の鎖と定義される。本明細書で使用する場合、ポリペプチドという用語は、用語「ペプチド」及び「タンパク質」と互換可能である。本明細書のポリペプチドに含有される典型的なアミノ酸としては(括弧書きで示されるそれぞれの3文字及び1文字コード)、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、バリン(Val、V)が挙げられる。
【0036】
用語「異種」は、天然には対象位置に見出されないことを意味する。例えば、異種遺伝子は、天然には宿主生物内に見出されないが、遺伝子移入によって宿主生物中に導入される遺伝子であり得る。別の例として、キメラ遺伝子中に存在する核酸分子は、そのような核酸分子がキメラ遺伝子の他のセグメントと自然には関連しないため、異種として特徴付けることができる(例えば、プロモーターは、コード配列に対して異種であり得る)。
【0037】
本明細書中の細胞又は生物に含まれる「非天然」のアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、そのような細胞又は生物の天然の(自然の)対応物に存在しない。このようなアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、細胞又は生物に対して異種であると言うこともできる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「調節配列」は、遺伝子の転写開始部位の上流に位置するヌクレオチド配列(例えば、プロモーター)、5’非翻訳領域、イントロン及び3’非コード領域を指し、遺伝子から転写されるRNAの翻訳、プロセシング若しくは安定性及び/又は翻訳に影響を及ぼす可能性がある。本明細書の調節配列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、ステムループ構造及び遺伝子発現の調節に関連する他の要素を含む可能性がある。本明細書の1つ以上の調節要素は、本明細書のコード領域に対して異種であり得る。
【0039】
本明細書中で使用する「プロモーター」は、遺伝子からのRNAの転写を制御することができるDNA配列を指す。一般に、プロモーター配列は、遺伝子の転写開始部位の上流にある。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来し得るか、又は自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成され得るか、又はさらに合成DNAセグメントを含み得る。あらゆる状況下のほとんどの時点で遺伝子が細胞内で発現することを誘発するプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。代わりに、プロモーターは、誘導可能であり得る。本明細書の1つ以上のプロモーターは、本明細書のコード領域にとって異種であり得る。
【0040】
本明細書で使用する場合、「強力なプロモーター」は、単位時間当たり相当に多数の生成開始を指示できるプロモーター及び/又は細胞内の遺伝子の平均転写レベルよりも高いレベルの遺伝子転写を駆動するプロモーターを指す。
【0041】
本明細書中で使用する場合、用語「3’非コード配列」、「転写ターミネーター」、「ターミネーター」などは、コード配列の下流に位置するDNA配列を指す。これには、ポリアデニル化認識配列及びmRNAプロセシング又は遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする他の配列が含まれる。
【0042】
本明細書で使用する場合、第1の核酸配列は、第1の核酸配列の一本鎖形が好適なアニーリング条件(例えば、温度、溶液イオン強度)下で第2の核酸配列にアニーリングできる場合には第2の核酸配列に「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、周知であり、Sambrook J,Fritsch EF and Maniatis T,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:,Cold Spring Harbor,NY(1989)で例証されており、この文献、特に11章及び表11.1が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
用語「DNA操作技術」は、DNAポリヌクレオチド配列の配列が改変される任意の技術を指す。改変されているDNAポリヌクレオチド配列は改変のための基質自体として使用できるが、DNAポリヌクレオチド配列は特定の技術のために物理的に所有されている必要はない(例えば、コンピュータ内に保存された配列を操作技術のための基礎として使用することができる)。DNA操作技術は、より長い配列内で1つ以上のDNA配列を欠失及び/又は突然変異させるために使用することができる。DNA操作技術の例としては、組換えDNA技術(制限及びライゲーション、分子クローニング)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び合成DNA法(例えば、オリゴヌクレオチド合成及びライゲーション)が挙げられる。合成DNA技術に関して、DNA操作技術は、in silicoでDNAポリヌクレオチドを観察することと、DNAポリヌクレオチドの所望の改変(例えば、1つ以上の欠失)を決定することと、所望の改変を含有するDNAポリヌクレオチドを合成することとを必要とする可能性がある。
【0044】
本明細書の用語「in silico」は、例えば、コンピュータなどの情報記憶及び/又はプロセシング装置内及び上で;コンピュータソフトウェア又はシミュレーションを使用して実施又は生成されること、すなわちバーチャルリアリティを意味する。
【0045】
ポリヌクレオチドに関して本明細書で使用する用語「上流」及び「下流」は、それぞれ、「5’」及び「3’」を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「発現」は、(i)コード領域からのRNA(例えば、mRNA又は非タンパク質コーディングRNA)の転写、及び/又は(ii)mRNAからのポリペプチドの翻訳を指す。ポリヌクレオチド配列のコード領域の発現は、特定の実施形態では、上方制御又は下方制御することができる。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方の機能によって影響されるような2つ以上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、コード配列と作動可能に連結されている。すなわち、コード配列は、プロモーターの転写調節下にある。コード配列は、例えば、1つ(例えば、プロモーター)又は複数(例えば、プロモーター及びターミネーター)の調節配列と作動可能に連結することができる。
【0048】
「組換え」という用語は、プラスミド、ベクター又はコンストラクトなどのDNA配列を特徴付けるために本明細書で使用される場合、そうしなければ配列の2つの別々のセグメントであったものを、例えば化学合成により、且つ/又は核酸の分離したセグメントを遺伝子工学技術で操作することにより人工的に組み合わせることを指す。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「形質転換」は、任意の方法によって核酸分子を宿主生物又は宿主細胞に移すことを指す。生物/細胞中に形質転換された核酸分子は、生物/細胞中で自律的に複製するか、又は生物/細胞のゲノム中に組み込まれるか、又は複製若しくは組み込みなしに細胞中に一過的に存在するものであり得る。例えば、プラスミド及び直鎖状DNA分子など、形質転換のために好適な核酸分子の非限定的な例は、本明細書に開示されている。形質転換核酸配列を含有する本明細書に記載の宿主生物/細胞は、例えば、「トランスジェニック」、「組換え」、「形質転換された」、「遺伝子操作された」、「形質転換体」及び/又は「外因性遺伝子発現のために改変された」と称することができる。
【0050】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に関して本明細書で使用する用語「配列同一性」、「同一性」などは、特定の比較ウィンドウにわたって最高一致のために整列させたときに同一である、2つの配列内の核酸残基又はアミノ酸残基を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」、「同一性パーセント」などは、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定される数値を指すが、このとき、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適整列のための参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含む可能性がある。パーセンテージは、両方の配列内で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が発生する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。DNA配列とRNA配列との間の配列同一性を算出するとき、DNA配列のT残基は、RNA配列のU残基と合致し、したがってRNA配列のU残基と「同一である」と見なし得ることは理解されるであろう。第1及び第2のポリヌクレオチドの「相補性パーセント」を決定するために、例えば、(i)第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドの相補配列(又はその逆)間の同一性パーセント及び/又は(ii)標準的なワトソン・クリック塩基対を作り出すであろう第1及び第2のポリヌクレオチド間の塩基のパーセンテージを決定することによってそれを得ることができる。
【0051】
同一性パーセントは、全てが参照により本明細書に組み込まれる:1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humana:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);及び5)Sequence Analysis Primer (Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載されるものを含むが、これらに限定されない任意の公知の方法によって容易に決定することができる。
【0052】
同一性パーセントを決定する好ましい方法は、試験する配列同士の最良の一致を付与するように設計される。同一性及び類似性を決定する方法は、例えば、公的に入手可能なコンピュータプログラムにコード化されている。配列アラインメント及び同一性パーセントの算出は、例えば、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGNプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を用いて実施することができる。配列の多重アラインメントは、例えば、Clustal Vアラインメント法を含む、様々な種類のアルゴリズムを包含するClustalアラインメント法(Higgins and Sharp,5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.,8:189-191(1992)により記載され、また、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGN v8.0 プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される)を用いて行うことができる。多重アラインメントの場合、デフォルト値はGAP PENALTY=10及びGAP LENGTH PENALTY=10に対応し得る。Clustal法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメント及び同一性パーセントの計算のためのデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5であり得る。核酸の場合、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4及びDIAGONALS SAVED=4であり得る。さらに、Clustal Wアラインメント法を使用することができ(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.8:189-191(1992);Thompson,J.D.et al,Nucleic Acids Research,22(22):4673-4680,1994によって記載されている)、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGN v8.0 プログラム(DNASTAR Inc.)で見出すことができる。多重アラインメント(タンパク質/核酸)のデフォルトパラメータは、GAP PENALTY=10/15、GAP LENGTH PENALTY=0.2/6.66、Delay Divergen Seqs(%)=30/30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUBであり得る。
【0053】
本明細書には、様々なポリペプチドアミノ酸配列及びポリヌクレオチド配列が特定の実施形態の特徴として開示されている。本明細書に開示した配列と少なくとも約70~85%、85~90%又は90%~95%同一であるこれらの配列のバリアントを、使用又は参照することができる。代わりに、バリアントアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、本明細書に開示した配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し得る。バリアントアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、開示した配列と同一の機能/活性又は開示した配列の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の機能/活性を有する。メチオニンで始まらない、本明細書に開示した任意のポリペプチドアミノ酸配列は、典型的には、アミノ酸配列のN末端に少なくとも開始メチオニンをさらに含むことができる。対照的に、メチオニンで始まる本明細書に開示した任意のポリペプチドアミノ酸配列は、このようなメチオニン残基を任意選択的に欠失し得る。
【0054】
用語「~と整列する」、「~に対応する」などは、本明細書において同じ意味で用いられ得る。本明細書のいくつかの実施形態は、配列番号62の少なくとも1つの特定のアミノ酸残基に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含むグルコシルトランスフェラーゼに関する。(1)クエリ配列が対象配列と整列し得る場合(例えば、この場合、アラインメントは、クエリ配列及び対象配列[又は対象配列の部分配列]が少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%同一であることを示す)並びに(2)クエリアミノ酸位置が(1)のアラインメントにおいて対象アミノ酸位置と一直線に整列する(一直線に一列に並ぶ)場合、グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸位置又はその部分配列は、(例えば、触媒ドメイン又は触媒ドメインに加えてグルカン結合ドメイン)(このようなアミノ酸位置又は配列を「クエリ」位置又は配列と呼ぶことができる)、配列番号62の特定のアミノ酸残基(そのようなアミノ酸位置又は配列を「対象」位置又は配列と呼ぶことができる)に対応するように特徴付けることができる。一般に、開示された本明細書に記載される任意のアラインメントアルゴリズム、ツール及び/又はソフトウェア(例えば、BLASTP、ClustalW、ClustalV、Clustal-Omega、EMBOSS)を用いて、対象配列(配列番号62又は配列番号62の部分配列)とクエリアミノ酸配列を整列させて、同一性パーセントを決定することができる。まさにさらなる例として、European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS[例えば、バージョン5.0.0以降],Rice et al.,Trends Genet.16:276-277,2000)のNeedleプログラムにおいて実行されるようなニードルマン-ヴンシュアルゴリズム(Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.48:443-453,1970)を使用して、クエリ配列を本明細書の対象配列と整列させることができる。このようなEMBOSSアラインメントのパラメータとは、例えば、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、EBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスを含み得る。
【0055】
本明細書の配列番号62の特定のアミノ酸残基のナンバリング(例えば、Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848、Ile-1453)は、配列番号62の全長アミノ酸配列に関する。配列番号62の最初のアミノ酸(すなわち1位、Met-1)は、シグナルペプチドの開始点である。別段の開示がなされていなければ、本明細書の置換は、配列番号62の全長アミノ酸配列に関する。
【0056】
本明細書の用語「非天然グルコシルトランスフェラーゼ」(「変異体」、「バリアント」、「改変された」などは、このようなグルコシルトランスフェラーゼを記載するために同様に用いられる)は、配列番号62の特定のアミノ酸残基に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。このような少なくとも1つのアミノ酸置換は、典型的には、非天然グルコシルトランスフェラーゼの天然対応物(親)において同じ位置で一般に(自然に)存在するアミノ酸残基に代わるものである(すなわち配列番号62が位置についての基準として使用されるが、本明細書のアミノ酸置換は、非天然グルコシルトランスフェラーゼの天然対応物に関する)(別の方法として、非天然グルコトランスフェラーゼの配列を配列番号62と整列させる場合、特定の位置での置換が存在するかどうかを決定することは、それ自体、配列番号62におけるそれぞれのアミノ酸残基に依存せず、むしろ、非天然グルコシルトランスフェラーゼの天然対応物内の対象位置に存在するアミノ酸に依存する)。天然対応物のグルコシルトランスフェラーゼにおいて関連した位置で一般に存在するアミノ酸は、アラインメントがなされる配列番号62の特定のアミノ酸残基と同じである(又は保存されている)ことが多い。非天然グルコシルトランスフェラーゼは、任意選択的に、その天然対応物配列に対して他のアミノ酸変化(変異、欠失及び/又は挿入)を有し得る。
【0057】
本明細書の置換/アラインメントを説明することは、有益であり得る。配列番号12(GTF0544)は、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)のグルコシルトランスフェラーゼのトランケート型である。配列番号12のLeu-193は、配列番号62のLeu-373に対応することに留意されたい(アラインメントは示さず)。例えば、配列番号12が、193位で変異されて、Leu残基を異なる残基(例えば、Gln)で置換する場合、配列番号12の193位で変異したバージョンは、配列番号62のLeu-373に対応する位置でアミノ酸置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼに相当すると言うことができる。
【0058】
用語「単離された」は、天然に存在しない形態又は環境にある物質(又はプロセス)を意味する。単離された物質の非限定的例としては、(1)天然に存在しない任意の物質(例えば、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ)、(2)限定されないが、自然界では結合している天然に存在する成分の1つ以上若しくは全部から少なくとも部分的に取り出される任意の宿主細胞、酵素、バリアント、核酸、タンパク質、ペプチド、補因子若しくは炭水化物/糖などの任意の物質;(3)天然に見出される物質に対して人の手により改変された任意の物質(例えば、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ);又は(4)その物質の量を、それが自然に結合している他の成分に対して増加させることによって修飾された任意の物質が挙げられる。本明細書に開示される実施形態(例えば、酵素及び反応組成物)は、合成物/人工物であり、且つ/又は天然に存在しない特性を有すると考えられる。
【0059】
本明細書で使用される「増加した」という用語は、増加した量又は活性が比較される量又は活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%又は200%多い量又は活性を指すことができる。用語「増加した」、「上昇した」、「高められた」、「より多い」、「向上した」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。これらの用語は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの「過剰発現」又は「上方制御」を特徴付けるために使用することができる。
【0060】
グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いた不溶性グルカンポリマーの生成において進展がなされてきた一方、このような酵素によって合成される不溶性グルカン生成物の分子量の増大に対して関心がほとんど向けられていないように見える。この技術的空白を解決するために、本明細書では、より高分子量の不溶性グルカン生成物を生成する改変されたアミノ酸配列を有するグルコシルトランスフェラーゼが開示される。
【0061】
本開示の特定の実施形態は、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成し、及びα-グルカンの分子量は、置換位置においてのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい、非天然グルコシルトランスフェラーゼに関する。したがって、概して、α-1,3結合を有するより高分子量の不溶性α-グルカンを合成することができる変異体グルコシルトランスフェラーゼ酵素が本明細書で開示される。
【0062】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成する。いくつかの態様では、このようなα-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%は、α-1,3結合であり得る。α-グルカンの結合プロファイルは、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲を有するものとして特徴付けることができる。例えば、30%~99%のα-1,3結合を有するこれらの態様のいずれかにおける他の結合は、α-1,6であり得、且つ/又はα-1,4若しくはα-1,2結合のいずれも含み得ない。
【0063】
いくつかの態様におけるα-グルカンは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%未満のα-1,2又はα-1,4グリコシド結合を有し得る。別の実施形態では、α-グルカンは、α-1,3及び任意選択的にα-1,6結合のみを有する(すなわちα-1,2又はα-1,4結合がない)。
【0064】
いくつかの態様におけるα-グルカンは、直鎖/非分枝鎖(分枝点がない)であり得る。代わりに、本明細書のα-グルカンでは、分枝が存在し得る。例えば、α-グルカンは、ポリマー中の結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の分枝点を有し得る。
【0065】
特定の実施形態では、α-グルカンは、少なくとも約100のDPw又はDPnでの分子量を有し得る。例えば、DPw又はDPnは、少なくとも約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100又は1200であり得る。α-グルカンの分子量は、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲(例えば、100~1200、400~1200、700~1200、100~1000、400~1000、700~1000)として表すことができる。本明細書の分子量は、本実施例(以下)に開示されているか、又は例えば米国特許出願公開第2017/0002335号明細書、同第2015/0064748号明細書又は同第2015/0232819号明細書に開示されている方法を含む任意の好適な方法に従って測定することができる。
【0066】
特定の態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-1,3-グルカンの多分散指数(PDI、これは、DPw/DPnに等しい)は、置換位置においてのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼ(例えば、親グルコシルトランスフェラーゼ)によって生成されるα-1,3-グルカンのPDIと同じ又は類似であり得る。PDIは、例えば、約2.5、2.4、2.3、2.2、2.1若しくは2.0以下又は約2.0~2.5、2.0~2.4、2.0~2.3、2.0~2.2、2.1~2.5、2.1~2.4、2.1~2.3若しくは2.1~2.2の範囲であり得る。本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼを提供するアミノ酸置換は、任意選択的に、維持されたPDIを有するが、分子量が増大したα-1,3-グルカンの酵素的合成を可能にするものと特徴付けることができる。
【0067】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-グルカンは、非水溶性である。α-1,3-グルカンは、一般に、8又は9のDPw及び上記中性(例えば、pH6~8)水性条件で不溶性である。
【0068】
前述の結合プロファイル及び/又は分子量プロファイルのいずれかを例えば本明細書において組み合わせて、本開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン生成物を適切に特徴付けることができる。いくつかの態様では、α-グルカン生成物の結合及び/又は分子量プロファイルは、全てが参照により本明細書に組み込まれる以下の刊行物:米国特許第7000000号明細書及び同第8871474号明細書;米国特許出願公開第2015/0232819号明細書のいずれかにおいて開示され得る。
【0069】
非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼが、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む点を除いて、本開示のように不溶性α-グルカンを生成することができる、以下の刊行物に開示される任意のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を含み得る:米国特許第7000000号明細書及び同第8871474号明細書;並びに米国特許出願公開第2015/0232819号明細書及び同第2017/0002335号明細書(これらの全てが参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの態様では、このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)前述の置換の少なくとも1つを有し、且つ(ii)少なくとも1つの置換を有さないそれぞれの対応物/親グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0070】
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、且つ(ii)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、26、28、30、34又は59と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。これらのアミノ酸配列の大部分を有するグルコシルトランスフェラーゼの不溶性α-グルカン生成物に関する特定の情報が表2において提供される。
【0071】
【0072】
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、且つ(ii)配列番号4のアミノ酸残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960又は配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるグルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含むか又はそれからなる。このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、非水溶性であるα-グルカンを生成し、且つ少なくとも約50%(例えば、≧90%又は≧95%)のα-1,3結合を含み、任意選択的に、少なくとも100のDPwをさらに有することができると考えられる。例えば、配列番号65のアミノ酸54~957位を有するグルコシルトランスフェラーゼは、100%のα-1,3結合及び少なくとも400のDPwを有するα-1,3-グルカンを生成できる(データは示さず、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0002335号明細書の表6を参照されたい)ことに留意されたい。配列番号65(GTF7527)、30(GTF2678)、4(GTF6855)、28(GTF2919)及び20(GTF2765)は、それぞれの野生型対応物と比較して、シグナルペプチドドメイン及び可変ドメインの全部分又は実質的部分が欠如するグルコシルトランスフェラーゼをそれぞれ表すことにさらに留意されたい。したがって、これらのグルコシルトランスフェラーゼ酵素の各々は、後にグルカン結合ドメインが続く触媒ドメインを有する。これらの酵素中の触媒ドメイン配列のおよその位置は、以下のとおりである:7527(配列番号65の残基54~957)、2678(配列番号30の残基55~960)、6855(配列番号4の残基55~960)、2919(配列番号28の残基55~960)、2765(配列番号20の残基55~960)。GTF2678、6855、2919及び2765の(およその)触媒ドメインのアミノ酸配列は、GTF7527のおよその触媒ドメイン配列(すなわち配列番号65のアミノ酸54~957)とそれぞれ約94.9%、99.0%、95.5%及び96.4%の同一性を有する。これらの特定のグルコシルトランスフェラーゼの各々(GTF2678、6855、2919及び2765)は、100%のα-1,3結合及び少なくとも400のDPwを有するα-1,3-グルカンを生成することができる(データは示さず、米国特許出願公開第2017/0002335号明細書の表4を参照されたい)。この活性及び前述の触媒ドメインの関連性(高い同一性パーセント)に基づいて、本明細書に開示の少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに有する前述の触媒ドメインの1つを有する本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、少なくとも約50%(例えば、≧90%又は≧95%)のα-1,3結合及び少なくとも100のDPwを含む不溶性α-グルカンを生成することができると考えられる。
【0073】
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、且つ(ii)配列番号62、又は配列番号4(その開始メチオニンを有しない)、又は配列番号4の55~960位(およその触媒ドメイン)などのその部分配列と少なくとも約40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0074】
特定の態様における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、触媒ドメインのみを有する必要があると考えられているが、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、より広範なアミノ酸配列内に含まれ得る。例えば、触媒ドメインは、そのC末端でグルカン結合ドメインに連結し得、且つ/又はそのN末端で可変ドメイン及び/若しくはシグナルペプチドに連結し得る。
【0075】
非天然グルコシルトランスフェラーゼにおけるアミノ酸置換は、配列番号62における対応する位置に関して本明細書で概して開示されるが、このような置換は、代わりに、便宜的に、単に非天然グルコシルトランスフェラーゼ自体の配列におけるその位置番号に関して記載され得る。
【0076】
非天然グルコシルトランスフェラーゼのなおもさらなる別の例は、本明細書に開示されるもの並びにN末端及び/又はC末端に1~300(又はその間の任意の整数[例えば、10、15、20、25、30、35、40、45又は50])個の残基を含むもののいずれでもあり得る。そのような追加の残基は、例えば、そのグルコシルトランスフェラーゼ酵素が由来する対応する野生型配列由来であるか、又は(N末端又はC末端での)エピトープタグ又は(N末端での)異種シグナルペプチドなどの異種配列であり得る。本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、典型的には、N末端シグナルペプチドを欠き、このような酵素は、任意選択的に、そのシグナルペプチドが分泌プロセス中に除去された場合、成熟したものとして特徴付けることができる。
【0077】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、細菌などの任意の微生物源に由来し得る。細菌グルコシルトランスフェラーゼの例は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種又はラクトバチルス(Lactobacillus)種に由来するものである。ストレプトコッカス(Streptococcus)種の例としては、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.ソブリナス(S.sobrinus)、S.デンチロウセッティ(S.dentirousetti)、S.ダウネイ(S.downei)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.オラリス(S.oralis)、S.ガロリティカス(S.gallolyticus)及びS.サングイニス(S.sanguinis)が挙げられる。ロイコノストック(Leuconostoc)種の例としては、L.メセンテロイデス(L.mesenteroides)、L.アメリビオスム(L.amelibiosum)、L.アルゲンチナム(L.argentinum)、L.カルノスム(L.carnosum)、L.シトレウム(L.citreum)、L.クレモリス(L.cremoris)、L.デキストラニカム(L.dextranicum)及びL.フルクトサム(L.fructosum)が挙げられる。ラクトバチルス(Lactobacillus)種の例としては、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.デルブリュキイ(L.delbrueckii)、L.ヘルベチクス(L.helveticus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、L.クルバツス(L.curvatus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.サケイ(L.sakei)、L.ブレビス(L.brevis)、L.ブフネリ(L.buchneri)、L.フェルメンタム(L.fermentum)及びL.ロイテリ(L.reuteri)が挙げられる。
【0078】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、適切に遺伝子操作された微生物株の発酵によって調製することができる。大腸菌(E.coli)、バチルス属(Bacillus)株(例えば、B.サブティリス(B.subtilis))、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)並びにアスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、A.アワモリ(A.awamori))及びトリコデルマ(Trichoderma)属(例えば、T.レーセイ(T.reesei))(例えば、Adrio及びDemain,Biomolecules 4:117-139,2014を参照されたい(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる))などの微生物種を用いる発酵による組換え酵素の製造は、当技術分野で周知である。非天然グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、典型的には、酵素のための発現カセットを形成するために異種プロモーター配列と連結され、且つ/又はそれに合うようにコドン最適化される。そのような発現カセットは、当技術分野で周知の方法を使用して、好適なプラスミドに組み込まれるか、又は微生物宿主染色体中に組み込まれ得る。発現カセットは、アミノ酸をコードする配列に続いて転写ターミネーターヌクレオチド配列を含み得る。発現カセットは、プロモーター配列とグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸コード配列との間に、グルコシルトランスフェラーゼ酵素の直接的な分泌のために設計されたシグナルペプチド(例えば、異種シグナルペプチド)をコードするヌクレオチド配列も含み得る。発酵の終わりに、細胞を適宜破壊し得(一般に、分泌のためのシグナルペプチドが採用されない場合)、グルコシルトランスフェラーゼ酵素は、沈殿、濾過及び/又は濃縮などの方法を使用して単離することができる。代わりに、グルコシルトランスフェラーゼを含む溶解物又は抽出物をさらに単離することなしに使用することができる。グルコシルトランスフェラーゼが分泌される(すなわちそれが発酵ブロス中に存在する)場合、それは、発酵ブロスから単離されたものとして又は発酵ブロスに含まれるものとして任意選択的に使用され得る。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の活性は、スクロースのグルカンポリマーへのその変換率を測定するなどの生化学的分析によって確認することができる。
【0079】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly、Leu又はMet残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Arg-534に対応する位置でのアミノ酸置換は、Lys、Gly、Ile、Leu又はMet残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Thr-563に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Glu-567に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Val-586に対応する位置でのアミノ酸置換は、Thr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Gln-588に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Ile-591に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val、Lys又はArg残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Lys-593に対応する位置でのアミノ酸置換は、Met残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Ile-608に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Ala-610に対応する位置でのアミノ酸置換は、Cys又はThr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Leu-661に対応する位置でのアミノ酸置換は、Pro残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Arg-722に対応する位置でのアミノ酸置換は、His又はAsn残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Thr-728に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Met-732に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Arg-741に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser、Ala、Pro、Gln又はThr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Asn-743に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser、Thr又はAsp残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Ala-777に対応する位置でのアミノ酸置換は、Asn残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Tyr-848に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Ile-1453に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly又はMet残基によるものであり得る。
【0080】
特定の実施形態における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、上に列挙した置換のいずれかに加えて又は代わりに上に列挙した置換に加えて、配列番号62のアミノ酸残基Phe-424、Asn-475、Trp-511、Arg-609、Asn-614又はAsn-1214に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得る。このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、上記に開示したグルコシルトランスフェラーゼ/触媒ドメインアミノ酸配列(及びそれに対する同一性パーセント)のいずれかに基づき得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Phe-424に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala、Val、Leu、Glu又はGln残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Asn-475に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln又はSer残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Trp-511に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Arg-609に対応する位置でのアミノ酸置換は、His残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Asn-614に対応する位置でのアミノ酸置換は、Phe残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸残基Asn-1214に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu又はIle残基によるものであり得る。
【0081】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、本明細書で開示されたアミノ酸置換の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ又はそれを超えるものを含み得る。いくつかの態様における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Gln-588、Arg-741又はArg-722に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得る。いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、これらの部位の1つ(例えば、Q588)、これらの部位の2つ(例えば、Q588及びR741)又はこれらの部位の3つ全て(Q588、R741及びArg-722)で置換を含み得る。このようなアミノ酸置換は、例えば、上記で開示したもののいずれか(例えば、Q588L、R741S、R722H)であり得る。いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、これらの部位の1つ、2つ又は3つ全てで置換を含み、上記で開示したように本開示の置換の総数を有し得る。
【0082】
好適な置換部位及びこれらの部位での特定の置換の例としては、例えば、α-1,3-グルカン生成物の分子量(DPw)が少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%増大することと関連する、実施例1の表3(以下)で列挙されるものを挙げることができる。いくつかの代替的な態様では、置換部位及びこのような部位での特定の置換の例としては、不溶性α-1,3-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼに利点を与える機能と関連する、実施例1の表3(以下)で列挙されるもののいずれかを挙げることができる。表3に列挙された前述の置換は、列挙された配列番号62における残基位置番号に対応するものである。いくつかの態様では、1つ以上の置換は、保存的又は非保存的置換であり;このような保存(又は非保存)は、例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼが由来する天然のグルコシルトランスフェラーゼに存在するアミノ酸に関するものであり得る。
【0083】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、置換位置においてのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼ(又は単に「別の」グルコシルトランスフェラーゼ)(例えば、親グルコシルトランスフェラーゼ)によって合成される1,3-結合を含む不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい分子量を有する1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成することができる。本明細書の第2のグルコシルトランスフェラーゼは、例えば、全て又は大部分が天然のアミノ酸配列で構成され得る。したがって、本明細書の第2のグルコシルトランスフェラーゼは、いくつかの態様において天然のグルコシルトランスフェラーゼであり得るが、それは、他の態様において予め改変されたグルコシルトランスフェラーゼであり得る(例えば、本開示の置換と異なる1つ以上の他のアミノ酸置換を有するグルコシルトランスフェラーゼ)。いくつかの実施形態では、非天然グルコシルトランスフェラーゼと比較される第2のグルコシルトランスフェラーゼは、置換位置で天然のアミノ酸残基を有する。アミノ酸残基が天然のものであるかどうかの決定は、第2のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を、第2のグルコシルトランスフェラーゼが由来する天然/野生型のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と比較することによってなされ得る。
【0084】
いくつかの態様では、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%大きい分子量を有する不溶性α-グルカンを合成することができる。このような判断は、本明細書に開示されるような(例えば、初期スクロース濃度、温度、pH及び/又は反応時間を考慮する)任意のグルカン合成反応/プロセスに対して、任意の好適な測定技術(例えば、SEC)を用いてなされ得る。典型的には、本明細書における非天然グルコシルトランスフェラーゼと第2のグルコシルトランスフェラーゼとの比較は、同一又は類似の反応条件下でなされ得る。不溶性α-グルカンの分子量は、例えば、DPwとして表すことができる。
【0085】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。任意選択的に、1つ以上の調節配列は、ヌクレオチド配列と作動可能に連結され、好ましくは、プロモーター配列は、調節配列として含まれる。
【0086】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、細胞中にヌクレオチド配列を移入するのに有用なベクター又はコンストラクトであり得る。好適なベクター/コンストラクトの例は、プラスミド、酵母人工染色体(YAC)、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、ウイルス又は線状DNA(例えば、線状PCR産物)から選択することができる。いくつかの態様におけるポリヌクレオチド配列は、細胞内に一過的(すなわちゲノムに組み込まれていない)又は安定に(すなわちゲノムに組み込まれている)存在することができる。いくつかの態様におけるポリヌクレオチド配列は、1つ以上の好適なマーカー配列(例えば、選択又は表現型マーカ-)を含み得るか又はそれらを欠き得る。
【0087】
特定の実施形態におけるポリヌクレオチド配列は、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含み得る。例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター配列(例えば、異種プロモーター)と作動可能な連結であり得る。プロモーター配列は、例えば、細胞中(例えば、大腸菌(E.coli)又はバチルス(Bacillus)などの細菌細胞;真菌、酵母、昆虫又は哺乳動物細胞などの真核細胞)又はin vitroタンパク質発現系での発現に好適であり得る。他の好適な調節配列の例としては、転写ターミネーター配列が挙げられる。
【0088】
本明細書のいくつかの態様は、本明細書に開示されるようなポリヌクレオチド配列を含む細胞に関し、このような細胞は、本明細書に開示される任意の型であり得る(例えば、大腸菌(E.coli)又はバチルス(Bacillus)などの細菌細胞;真菌、酵母、昆虫又は哺乳動物細胞などの真核細胞)。細胞は、任意選択的に、ポリヌクレオチド配列によりコードされる非天然グルコシルトランスフェラーゼを発現し得る。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列は、細胞内に一過的(すなわちゲノムに組み込まれていない)又は安定に(すなわちゲノムに組み込まれている)存在する。
【0089】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、水、スクロース及び1種以上の本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼ)を含む反応組成物に関する。このような反応組成物は、少なくとも、開示されるように1,3-結合を含むα-グルカンを生成する。
【0090】
本明細書の反応組成物の温度は、必要に応じて制御される場合があり、例えば約5~50℃、20~40℃、30~40℃、20~30℃、20~25℃、20℃、25℃、30℃、35℃又は40℃であり得る。
【0091】
本明細書の反応組成物中のスクロースの初期濃度は、例えば、約20~400g/L、75~175g/L又は50~150g/Lであり得る。いくつかの態様では、初期スクロース濃度は、少なくとも約50、75、100、150若しくは200g/Lであるか、又は約50~600g/L、100~500g/L、50~100g/L、100~200g/L、150~450g/L、200~450g/L若しくは250~600g/Lである。「スクロースの初期濃度」は、全ての反応成分(例えば、少なくとも水、スクロース、非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素)が加えられた/合わせられた直後の反応組成物におけるスクロース濃度を指す。
【0092】
特定の実施形態における反応組成物のpHは、約4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、5.0~8.0、5.5~7.5又は5.5~6.5であり得る。いくつかの態様では、pHは、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5又は8.0であり得る。pHは、リン酸塩、トリス、クエン酸塩又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない好適な緩衝液を添加又は混入することによって調節又は制御することができる。本明細書の反応組成物中の緩衝液濃度は、例えば、約0.1~300mM、0.1~100mM、10~100mM、10mM、20mM又は50mMであり得る。
【0093】
反応組成物は、本明細書に開示される反応条件の1つ以上を適用するに好適な任意の容器(例えば、不活性容器/コンテナ)内に入れることができる。いくつかの態様における不活性容器は、ステンレス鋼製、プラスチック製又はガラス製(又はこれらの構成要素の2つ以上を含む)であり得、且つ特定の反応物を入れるのに好適なサイズであり得る。例えば、不活性容器の体積/容量(及び/又は本明細書の反応組成物の体積)は、約又は少なくとも約1、10、50、100、500、1000、2500、5000、10000、12500、15000又は20000リットルであり得る。不活性容器は、任意選択的に撹拌装置を備えることができる。
【0094】
本明細書の反応組成物は、1種、2種又はそれを超えるグルコシルトランスフェラーゼ酵素を、例えば、まさにその酵素の少なくとも1つが本明細書に開示される非天然グルコシルトランスフェラーゼである限り、含有することができる。いくつかの実施形態では、1種又2種のグルコシルトランスフェラーゼ酵素のみが反応組成物に含まれる。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応は、無細胞(例えば、細胞全体が存在しない)であり得、典型的には、無細胞(例えば、細胞全体が存在しない)である。
【0095】
反応組成物に関して本明細書に開示される(例えば、上記及び以下の実施例において)特徴のいずれも、本明細書のグルカン生成方法の適切な態様を特徴付けることができ、その逆も同様である。
【0096】
本開示は、不溶性α-グルカンを生成するための方法であって、(a)少なくとも水、スクロース及び不溶性α-グルカンを生成する本明細書に開示される少なくとも1種の非天然グルコシルトランスフェラーゼを接触させることであって、それにより、不溶性α-グルカンは、生成される、接触させることと;b)任意選択的に、工程(a)で生成された不溶性α-グルカンを単離することとを含む方法にも関する。任意選択的に、グルカン合成法として特徴付けることができるこのような方法の実施は、典型的には、本明細書の反応組成物を実施する場合にも実行される。
【0097】
本明細書に開示されるようなグルカン合成法は、少なくとも水、スクロース及び不溶性α-グルカンを生成する本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼを接触させることを含む。これら及び任意選択的に他の試薬は一緒に添加することができるか、又は下記で考察するような任意の順序で添加することができる。この工程は、任意選択的に、水、スクロース及び不溶性α-グルカンを合成する非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応組成物を提供することとして特徴付けることができる。本明細書の接触工程は、多くの方法において実施できる。例えば、所望の量のスクロースを最初に水に溶解させ(任意選択的に、他の成分、例えば緩衝液成分もこの調製段階で添加され得る)、その後、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を添加することができる。溶液は、静止させたままであり得るか、又は例えば撹拌若しくはオービタルシェイカーによる振盪によってかき混ぜ得る。グルカン合成法は、バッチ、フェドバッチ、継続的な方法又はこれらの方法の任意の変形形態によって実施され得る。
【0098】
特定の実施形態における反応の完了は、視覚的に(例えば、不溶性グルカンがもはや蓄積しない)、且つ/又は溶液中に残ったスクロース(残留スクロース)の量を測定することによって決定でき、この場合、少なくとも約90%、95%又は99%のスクロース消費率が反応完了を指示し得る。開示したプロセスの反応は、例えば、約1時間~約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、36、48、60、72、96、120、144又は168時間実施され得る。
【0099】
本明細書のグルカン合成法のいくつかの態様において生成される不溶性α-グルカンの分子量は、第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%大きいことができる。いくつかの態様におけるそのような分子量増大は、約16~24時間(例えば、約20時間)にわたって実施される反応において達成される。
【0100】
本明細書のグルカン合成法において生成される不溶性α-グルカンは、任意選択的に単離され得る。特定の実施形態では、不溶性α-グルカン生成物の単離は、遠心分離及び/又は濾過の工程を少なくとも実施することを含む。単離は、任意選択的に、α-グルカンを水若しくは他の水性液体で1回、2回若しくはそれを超えて洗浄すること、及び/又はα-グルカン生成物を乾燥させることをさらに含み得る。
【0101】
乾燥形態で提供される、本明細書の単離されたα-グルカン生成物は、例えば、2.0、1.5、1.0、0.5、0.25、0.10、0.05又は0.01wt%以下の水を含み得る。いくつかの態様では、α-グルカン生成物は、少なくとも1グラム(例えば、少なくとも約2.5、5、10、25、50、100、250、500、750、1000、2500、5000、7500、10000、25000、50000又は100000g)の量で提供され、このような量は、例えば、乾燥量であり得る。
【0102】
前述又は下記実施例において記載されるものなど、α-グルカンを合成するための開示された条件のいずれかを、本明細書に開示される反応組成物の実施に適用することができ(逆も同様である)、且つ/又は非天然グルコシルトランスフェラーゼの特徴/活性を特徴付けるために適宜使用することができる。
【0103】
本開示は、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を調製する方法にも関する。本方法は、
(a)(i)配列番号4又は配列番号4の55~960位と少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ(ii)1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定することと;
(b)工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列を改変して、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、親グルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい分子量を有する不溶性α-グルカンを合成する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供することと
を含む。
【0104】
このような方法は、任意選択的に、ポリヌクレオチドによってコードされる非天然グルコシルトランスフェラーゼを発現する方法において、このようにして調製されるポリヌクレオチドを使用することをさらに含み得る。このような発現方法は、例えば、当技術分野で既知の任意の異種タンパク質発現法に従い得る。ポリヌクレオチドを調製する本方法は、任意選択的に、グルコシルトランスフェラーゼの生成物分子量を増加させる方法として代替的に特徴付けることができる。
【0105】
本明細書の同定工程(a)は、場合により、親グルコシルトランスフェラーゼ酵素のアミノ酸配列を同定することを含み得る。ポリヌクレオチド配列は、親グルコシルトランスフェラーゼが同定された種において使用される遺伝暗号などの遺伝暗号(コドン)に従うこのアミノ酸配列から決定することができた。
【0106】
本明細書の親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドの同定は、例えば、(a)in silicoで、(b)核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を用いて、(c)タンパク質シーケンシング工程を含む方法を用いて、且つ/又は(d)タンパク質結合工程を含む方法を用いて実施することができる。
【0107】
in silico検出に関して、コンピュータ又データベース(例えば、GENBANK、EMBL、REFSEQ、GENEPEPT、SWISS-PROT、PIR、PDBなどの公開データベース)に保存された候補となる親グルコシルトランスフェラーゼ酵素のアミノ酸配列(及び/又はこのようなグルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列)をin silicoで精査して、親グルコシルトランスフェラーゼについて上記で記載されたような配列同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素を同定することができる。このような精査は、例えば、上述したようなアラインメントアルゴリズム又はソフトウェア(例えば、BLASTN、BLASTP、ClustalW、ClustalV、Clustal-Omega、EMBOSS)などの当技術分野において既知の任意の手段を使用することを含むことができよう。
【0108】
上記に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼの同定は、任意選択的に、核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を介して実施することができる。このような方法は、例えば、DNAハイブリダイゼーション(例えば、サザンブロット、ドットブロット)、RNAハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット)又は核酸ハイブリダイゼーション工程(例えば、全てがオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを含み得るDNAシーケンシング、PCR、RT-PCR)を有する任意の他の方法の使用を含むことができる。配列番号4又はその部分配列(例えば、配列番号4の55~960位)をコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、このようなハイブリダイゼーションにおいてプローブとして使用することができる。ハイブリダイゼーション法を実施するための条件及びパラメータは、一般に周知であり、例えばSambrook J,Fritsch EF及びManiatis TのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989);Silhavy TJ,Bennan ML及びEnquist LWのExperiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);Greene Publishing Assoc.及びWiley-Interscienceにより出版されたAusubel FM et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Hoboken,NJ(1987);並びにInnis MA、Gelfand DH、Sninsky JJ及びWhite TJ(Editors)のPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,CA(1990)において開示される。
【0109】
上記に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼの同定は、任意選択的に、タンパク質シーケンシング工程を含む方法を介して実施することができる。このようなタンパク質シーケンシング工程は、例えば、N末端アミノ酸分析、C末端アミノ酸分析、エドマン分解法又は質量分析法などの1つ以上の手法を含むことができる。
【0110】
上記に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼの同定は、任意選択的に、タンパク質結合工程を含む方法を介して実施することができる。このようなタンパク質結合工程は、例えば、配列番号4内(例えば、配列番号4の55~960位内)のモチーフ又はエピトープに結合する抗体を用いて実施することができる。
【0111】
工程(a)(すなわち工程[b]における改変前)で同定されたポリヌクレオチドは、いくつかの態様において、表1に開示される任意のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と同一であるか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼをコードすることができる。このようなグルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-グルカンは、例えば、本明細書に開示されるものであり得る。
【0112】
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を調製する方法は、工程(a)で同定された(親グルコシルトランスフェラーゼをコードする)ポリヌクレオチド配列を改変する工程(b)を含む。このような改変により、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸が置換される。このような1つ以上の置換から生じる(改変されたポリヌクレオチド配列によってコードされる)非天然グルコシルトランスフェラーゼは、任意選択的に、本明細書において「子グルコシルトランスフェラーゼ」として特徴付けることができる。
【0113】
本明細書の親グルコシルトランスフェラーゼ酵素は、例えば、配列番号4(任意選択的にその開始メチオニンを有さない)又は配列番号4の55~960位(およその触媒ドメイン)と、少なくとも約40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるアミノ酸配列を含み得る。単に参照を目的として、開始メチオニンを有さない配列番号4が配列番号62の部分配列であることに留意されたい。
【0114】
工程(b)におけるポリヌクレオチドの好適な改変は、当技術分野で既知の任意のDNA操作技術にしたがって行うことができる。改変工程(b)は、任意選択的に、in silicoで実施することができ、その後、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の合成が行われる。例えば、工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列は、好適な配列操作プログラム/ソフトウェア(例えば、VECTOR NTI、Life Technologies、Carlsbad、CA;DNAStrider;DNASTAR、Madison、WI)を用いてin silicoで操作され得る。このような仮想的な操作後、改変ポリヌクレオチド配列を、任意の好適な技術(例えば、オリゴヌクレオチドのアニーリングに基づく連結又はHughes et al.,Methods Enzymol.498:277-309(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)において開示される任意の技術)によって人工的に合成することができる。前述の方法論が(親グルコシルトランスフェラーゼをコードする)既存のポリヌクレオチドを有していることに必ず依存するとは考えられないことが理解されなければならない。
【0115】
改変工程(b)は、任意選択的に、工程(a)で同定された親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の物理的なコピーを用いて実施することができる。例として、そのようなポリヌクレオチドは、増幅された産物が本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするような方法で設計されたプライマーを用いる、増幅のための鋳型として役立ち得る(例えば、Innis et al.,ibid.を参照されたい)。
【0116】
本方法におけるアミノ酸置換は、本明細書に開示されるようなそれらの置換の組み合わせのいずれかであり得る。本質的には、本明細書で開示されるような任意の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、本方法によって調製されるようなポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0117】
本明細書に開示される組成物及び方法の非限定的例としては、以下が挙げられる。
1.配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成し、及び不溶性α-グルカンの分子量は、置換位置においてのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい、非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
2.(i)アミノ酸残基Asn-531に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly、Leu又はMet残基によるものであり;(ii)アミノ酸残基Arg-534に対応する位置でのアミノ酸置換は、Lys、Gly、Ile、Leu又はMet残基によるものであり;(iii)アミノ酸残基Thr-563に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala残基によるものであり;(iv)アミノ酸残基Glu-567に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln残基によるものであり;(v)アミノ酸残基Val-586に対応する位置でのアミノ酸置換は、Thr残基によるものであり;(vi)アミノ酸残基Gln-588に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり;(vii)アミノ酸残基Ile-591に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val、Lys又はArg残基によるものであり;(viii)アミノ酸残基Lys-593に対応する位置でのアミノ酸置換は、Met残基によるものであり;(ix)アミノ酸残基Ile-608に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものであり;(x)アミノ酸残基Ala-610に対応する位置でのアミノ酸置換は、Cys又はThr残基によるものであり;(xi)アミノ酸残基Leu-661に対応する位置でのアミノ酸置換は、Pro残基によるものであり;(xii)アミノ酸残基Arg-722に対応する位置でのアミノ酸置換は、His又はAsn残基によるものであり;(xiii)アミノ酸残基Thr-728に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser残基によるものであり;(xiv)アミノ酸残基Met-732に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり;(xv)アミノ酸残基Arg-741に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser、Ala、Pro、Gln又はThr残基によるものであり;(xvi)アミノ酸残基Asn-743に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser、Thr又はAsp残基によるものであり;(xvii)アミノ酸残基Ala-777に対応する位置でのアミノ酸置換は、Asn残基によるものであり;(xviii)アミノ酸残基Tyr-848に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu残基によるものであり;及び/又は(xix)アミノ酸残基Ile-1453に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly又はMet残基によるものである、実施形態1の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
3.配列番号62のアミノ酸残基Gln-588、Arg-741又はArg-722に対応する位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、任意選択的に、(i)アミノ酸残基Gln-588に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり;(ii)アミノ酸残基Arg-741に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser残基によるものであり;及び/又は(iii)アミノ酸残基Arg-722に対応する位置でのアミノ酸置換は、His残基によるものである、実施形態1又は2の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
4.配列番号62のアミノ酸残基Gln-588、Arg-741又はArg-722に対応する位置において2つ以上のアミノ酸置換を含む、実施形態3の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
5.非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成される不溶性α-グルカンは、少なくとも約50%のα-1,3結合を含み、任意選択的に、α-グルカンは、少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する、実施形態1、2、3又は4の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
6.非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成される不溶性α-グルカンは、少なくとも650のDPwを有する、実施形態1、2、3、4又は5の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
7.配列番号4の残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960又は配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%同一である触媒ドメインを含む、実施形態5又は6の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
8.配列番号4、配列番号65、配列番号30、配列番号28又は配列番号20と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態5、6又は7の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
9.非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成される不溶性α-グルカンは、少なくとも約90%(又は少なくとも95%)のα-1,3結合を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7又は8の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
10.非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成される不溶性α-グルカンの分子量は、第2のグルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも少なくとも約10%大きい、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8又は9の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
11.実施形態1~10のいずれか1つに記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、任意選択的に、1つ以上の調節配列は、ヌクレオチド配列に作動可能に連結され、好ましくは、1つ以上の調節配列は、プロモーター配列を含む、ポリヌクレオチド。
12.水、スクロース及び実施形態1~10のいずれか1つに記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼを含む反応組成物。
13.不溶性α-グルカンを生成する方法であって、(a)少なくとも水、スクロース及び実施形態1~10のいずれか1つに記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させることであって、それにより、不溶性α-グルカンは、生成される、接触させることと;(b)任意選択的に、工程(a)で生成された不溶性α-グルカンを単離することとを含む方法。
14.非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、実施形態1~10のいずれか1つの)をコードするポリヌクレオチド配列を調製する方法であって、(a)(i)配列番号4又は配列番号4の55~960位と少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ(ii)1,3-結合を含む不溶性α-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定することと;(b)工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列を改変して、配列番号62のアミノ酸残基Asn-531、Arg-534、Thr-563、Glu-567、Val-586、Gln-588、Ile-591、Lys-593、Ile-608、Ala-610、Leu-661、Arg-722、Thr-728、Met-732、Arg-741、Asn-743、Ala-777、Tyr-848又はIle-1453に対応する位置において親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、親グルコシルトランスフェラーゼによって合成される不溶性α-グルカンの分子量よりも大きい分子量を有する不溶性α-グルカンを合成する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供することとを含む方法。
15.同定工程は、(a)in silicoで、(b)核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を用いて、(c)タンパク質シーケンシング工程を含む方法を用いて、且つ/若しくは(d)タンパク質結合工程を含む方法を用いて実施され、及び/又は改変工程は、(e)in silico、続いて非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列の合成において、若しくは(f)親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の物理的なコピーを用いて実施される、実施形態14に記載の方法。
【実施例】
【0118】
以下の実施例において、本開示の実例をさらに示す。これらの実施例は、本発明の特定の好ましい態様を示しているが、単に説明の目的でのみ示されていると理解されるべきである。上述の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば、本明細書に開示した実施形態の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲において、本明細書に開示した実施形態を様々な使用及び条件に適合させるために様々な変更及び修飾を加えることができる。
【0119】
実施例1
グルコシルトランスフェラーゼα-グルカン生成物の分子量に影響を及ぼすアミノ酸部位の分析
本実施例は、分子量が増大したα-グルカンを生成するグルコシルトランスフェラーゼバリアントに関するスクリーニングについて記載する。本スクリーニングは、部位評価ライブラリ(SEL)を使用して実施した。
【0120】
本実施例におけるアミノ酸置換を調製するために使用されるグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、配列番号4(GTF6855)であり、これは、本質的にはストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)SK126(表1を参照されたい)由来の全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(配列番号62によって表される)のN末端がトランケートされた(シグナルペプチド及び可変領域が除去された)バージョンである。配列番号4においてなされる置換は、配列番号4の各アミノ酸残基/位置(配列番号4のMet-1残基を除く)が配列番号62内のアミノ酸残基/位置と適宜に対応するため、天然のアミノ酸残基に対する置換として特徴付けられ得る。少なくともスクロース及び水を含む反応において、配列番号4のグルコシルトランスフェラーゼは、典型的には、約100%のα-1,3結合及び400以上のDPwを有するα-グルカンを生成する(例えば、米国特許第8871474号明細書及び同第9169506号明細書並びに米国特許出願公開第2017/0002336号明細書(これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。不溶性であるこのα-グルカン生成物は、例えば、濾過を介して酵素的合成後に単離することができる。
【0121】
本実施例を要約すると、SEL由来のGTF6855バリアント(各々が単一のアミノ酸置換を有する)は、それぞれ細菌的に発現され、精製され、100ppmの濃度に標準化された。次に、α-1,3-グルカン合成反応における基質としてスクロースを用いて各酵素調製物を(三重に)選別した。各反応で得られたα-1,3-グルカンポリマーを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて長さ(DPw)について分析した。
【0122】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主においてGTF6855(配列番号4)の種々の単一アミノ酸置換バリアントを個別に発現するためのプラスミドを調製した。このようなプラスミドを以下のとおり調製した。(5’から3’方向に作動可能に連結された)B.サブティリス(B.subtilis)aprEプロモーター、配列番号4(GTF6855)をコードするコドン最適化配列及びBPN’ターミネーターを有するDNA発現カセットを合成した。この発現カセットを(pHYT-GTF6855を形成する)pHYT複製型シャトルベクターにクローン化し、B.サブティリス(B.subtilis)CBS12-1に形質転換した。pHYTベクターは、BstEII及びEcoRI部位を使用してテトラサイクリン耐性遺伝子の後ろにターミネーター配列(配列番号67)を加えることによりpHY300PLK(Takara)から誘導された。pHY300PLKにおけるHindIII部位は、リンカー配列(示さず)をBamHI及びHindIII部位にクローン化することにより除去された。pHYT-GTF6855プラスミドを増幅し、SELを生成するために使用した。得られた単一アミノ酸置換GTFをコードするプラスミドは、各置換を検証するために配列決定された。
【0123】
GTF6855(配列番号4)及びその単一アミノ酸置換バリアントを生成するために、pHYT-GTF6855又その変異したバージョンで個別に形質転換されたB.サブティリス(B.subtilis)をトリプトンソーヤブロス(Oxoid Ltd.,UK)及びGrant’s II培地で培養した。ハートインフュージョン寒天プレート(Difco Laboratories、MI)を使用して、形質転換体を選択した。プラスミドの完全性は、25μg/mLのテトラサイクリンの添加によって維持した。37℃での約6時間のインキュベーション後、発現の対象となった各GTFを増殖培地において検出した。遠心分離及び濾過後、発現したGTFを有する培養上清を得た。上清中に存在するGTF酵素は、洗浄された(2×MILLIQ 1×25mM NaH2PO4 pH5.7、中間の遠心分離工程100×gを伴う)SUPERDEX 200レジン(GE Healthcare)を用いる親和性クロマトグラフィーにより、明らかに一様になるまで精製された。各GTFを、25mM NaH2PO4 pH5.7中のデキストラン T1(Pharmacosmos)の15%溶液を用いて100×gの遠心分離によって溶出した。精製された各GTFを、Harvard Apparatusの96ウェルDISPODIALYZER(10000ダルトン MWCO)を用いて、25mM NaH2PO4 pH5.7緩衝液(少なくとも100×)に対して透析した。
【0124】
透析後、精製されたGTF6855を標準として用いて、OD280によりGTF酵素濃度を測定した。精製された各GTFの100ppmへの標準化は、25mM NaH2PO4 pH5.7により適切に希釈することによって達成された。各サンプルのタンパク質濃度は、AGILENT BIO SEC3ガードカラムカラム(3μm 100Å(4.6×50mm)を装着したAGILENT 1200(Agilent Technologies)HPLCを用いて確認された。5μLのサンプルを測定毎にカラムに注入した。均一濃度流の25mM KH2PO4 pH6.8+0.1M NaClにより流速0.5mL/分で1.3分間化合物を溶出した。
【0125】
各GTF(GTF6855及びその各バリアント)をスクロースとともに反応に投入して、α-グルカンを生成した。各反応を以下のとおり実施した:37.5μLの100ppm酵素サンプル(BSA検量線に基づくppm)を20mM Na2HPO4/NaH2PO4 pH5.7中の262.5μLの86g/Lスクロース(75g/L終濃度)に添加し、30℃で一晩(約20時間)インキュベートした。このインキュベーション後、各反応を80℃で1時間のインキュベーションによりクエンチした。適切な分析により、以下の表3に列挙された各バリアント酵素は、α-1,3-グルカンを生成するグルコシルトランスフェラーゼ反応を行い得ることが示された(データは示されていない)。
【0126】
クエンチされた各反応の一定分量100μLを、SEC分析のための調製物中において、DMSO/2%LiCl中で20倍希釈し、0.2μm PALL GHPメンブレン(4000gx30分x30℃)に通して遠心分離により濾過した。WATERS ACQUITY APC-XT 450-Å 2.5-μm 4.6x30mmカラムを備えたWATERS APC-SECシステムを用いて、α-1,3-グルカンポリマーサイズが概算された。流速0.65mL/分のDMSO/0.25% LiCl移動相で55℃においてカラムを保持した。80、165、325及び750kDの分子量を有するデキストラン分析標準を使用して、溶出ピーク頂点を介してそれぞれ280、480、660及び880のα-1,3-グルカンDPwを概算した。
【0127】
上記の方法論により測定される各反応(約20時間)で生成されるα-1,3-グルカンの分子量(DPw)及び多分散指数(PDI)を表3に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
表3のデータに基づくと、GTF6855(配列番号4)におけるアミノ酸位置、例えばY848、I591、Q588、A610、R534、N531、I1453、K593、M732、T728、R722、A777及びI608での個別の置換は、親非置換酵素(GTF6855、配列番号4)によって生成される不溶性α-1,3-グルカンの平均DPwよりも少なくとも10%大きいDPwを有する不溶性α-1,3-グルカンを生成する酵素をそれぞれもたらす。興味深いことに、これらのより高いDPwのα-1,3-グルカン生成物は、概して、親非置換酵素(GTF6855、配列番号4)によって生成されるα-1,3-グルカンの平均PDI(2.1~2.2)と同じ又は類似したPDIを有しており、分子量の増加は、おそらくポリマーの均一性を損なわないことを意味した。
【0133】
類似のSEL研究(全てのデータを示しているわけではない)において、GTF6855(配列番号4)の以下のアミノ酸位置での個別の置換は、不溶性α-1,3-グルカンの分子量にも増大効果を与えるように思われた(置換残基、もたらされるDPw):N614(P,1054)、R609(H,1052)、F424(A,1051;V,1023;L,942;E,937;Q,725)、W511(Y,1020)、N475(Q,975;S,954)、A610(T,972;C,959)、Y848(E,922)、N1214(L,918;I,863)、N531(L,879;M,724;G,714)、I591(K,840;R,824)、R534(K,759)、Q588(L,734)及びR722(H,701)(非置換GTF6855は、DPw487を有する不溶性α-1,3-グルカンを生成した)。
【0134】
本実施例における前述の部位のいずれかでの1つ以上の置換により、親非置換グルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-1,3-グルカンのDPwよりも有意に高いDPwを有する不溶性α-1,3-グルカンの生成が可能になると予想される。
【0135】
実施例2
より高分子量のα-グルカン生成物を生成するグルコシルトランスフェラーゼバリアントの生成
本実施例は、分子量が増大したα-グルカンを生成するグルコシルトランスフェラーゼバリアントに関する別のスクリーニングについて記載する。
【0136】
このグルコシルトランスフェラーゼの多数の単一アミノ酸置換バリアントを提供するために、GTF6855(配列番号4)で飽和突然変異誘発を実施した。各バリアントを、以下と同じ又は類似のパラメータを用いてグルカン合成反応に投入した:容器、120rpmで撹拌される250mLの底くぼみ付き振盪フラスコ;初期pH、5.7;反応容量、50mL;スクロース、75g/L;GTF、酵素を異種性発現する大腸菌(E.coli)細胞の1.5mLの溶解物;KH2PO4、5mM;温度、30℃;時間、約20時間。各反応で生成されるα-1,3グルカンの分子量(DPw)(実施例1において開示されるものと類似のSEC方法論により測定される)が表4において提供される。
【0137】
【0138】
表4のデータに基づくと、例えばGTF6855(配列番号4)の列挙される各単一アミノ酸置換により、分子量(DPw)が増大した不溶性α-1,3-グルカンを生成する酵素がもたらされることは明白である。したがって、表4で示された位置での1つ以上の置換により、親非置換グルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-1,3-グルカンのDPwよりも有意に高いDPwを有する不溶性α-1,3-グルカンの生成が可能になると予想される。
【0139】
実施例3
グルコシルトランスフェラーゼα-グルカン合成活性におけるアミノ酸置換組み合わせの効果の分析
本実施例は、グルコシルトランスフェラーゼに対する複数のアミノ酸置換の導入の効果及びそのα-グルカン合成機能におけるそれらの効果を決定することについて記載する。この分析は、例えば、α-グルカン生成物の分子量を増大させるために上記で同定されたアミノ酸置換が、同様にこの分子量の増大を付与する置換組み合わせに含まれ得ることを示す。
【0140】
簡潔に述べると、プラスミドに含まれる適切なDNA鋳型の部位特異的突然変異誘発により、配列番号4(GTF6855、このグルコシルトランスフェラーゼの説明については、表1及び実施例1を参照されたい)に対してアミノ酸置換の特定の組み合わせを行った。各改変されたグルコシルトランスフェラーゼをコードするプラスミド配列は、独立して、配列決定され、意図したコドン変化を確認した。置換の各組み合わせを以下の表5に列挙する。適切な分析により、各改変された酵素は、α-1,3-グルカンを生成するグルコシルトランスフェラーゼ反応を行い得ることが示された(データは示されていない)。
【0141】
改変されたグルコシルトランスフェラーゼをコードする発現プラスミドは、独立して、9つのプロテアーゼ欠失(amyE::xylRPxylAcomK-ermC、degUHy32、oppA、ΔspoIIE3501、ΔaprE、ΔnprE、Δepr、ΔispA、Δbpr、Δvpr、ΔwprA、Δmpr-ybfJ、ΔnprB)を含むB.サブティリス(B.subtilis)株を形質転換するのに使用された。5μg/mLのクロラムフェニコールを添加したLBプレート上に形質転換細胞を塗布した。これらのプレート上で増殖させたコロニーを、25μg/mLのクロラムフェニコールを含むLBプレート上に数回線状に塗布した。次いで、特定のバリアントグルコシルトランスフェラーゼを発現するための得られた各バチルス(Bacillus)株を、25μg/mLのクロラムフェニコールを含有するLB培地中で6~8時間増殖させ、次いで30℃で2~3日間Grants II培地中へ継代培養した。培養物を4℃において15,000gで30分間回転させ、上清を0.22μmフィルタで濾過した。各々が発現分泌したバリアントグルコシルトランスフェラーゼを含む、濾過した上清を、分取し、-80℃で凍結させた後、α-1,3-グルカン合成活性を分析するために使用した(以下)。
【0142】
同一量の各バリアント酵素を、活性的に、以下と同じ又は類似のパラメータを用いてグルカン合成反応に投入した:容器、ガラス撹拌棒上にテフロン(Teflon)(登録商標)刃傾斜タービン(45°角)を備え、50~200rpmで撹拌した500mLのジャケット付き反応器;初期pH、5.5;反応体積、500mL;スクロース、108g/L;KH2PO4、1mM;温度、39℃;時間、約18~24時間;前のα-1,3-グルカン合成反応からの濾液、50体積%。各反応で生成されたα-1,3-グルカンの分子量(DPw)(実施例1において開示されるものと類似の方法論により測定される)が表5において提供される。
【0143】
【0144】
表5のデータに基づくと、分子量を増大させる置換を含む、GTF6855(配列番号4)への複数のアミノ酸置換の導入により、より高分子量の不溶性α-1,3-グルカンを生成するための試みに使用できることは明白である。例えば、これらのDPw値を、表3に示される置換を有さないGTF6855(配列番号4)のものと比較されたい。
【0145】
例えば、配列番号62のGln-588位、Arg-741位及び/又はArg-722位に対応する位置でのそれらを含む、複数の置換を有するグルコシルトランスフェラーゼがグルコシルトランスフェラーゼによって生成される不溶性α-グルカンの分子量を増大させ得ることは明白である。
【配列表】