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特許7384794発酵ブロスからL-フコースを精製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】発酵ブロスからL-フコースを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20231114BHJP
   C13B 20/14 20110101ALI20231114BHJP
   C13B 20/16 20110101ALI20231114BHJP
   C13B 20/18 20110101ALI20231114BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231114BHJP
   A23L 33/125 20160101ALN20231114BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALN20231114BHJP
   C07H 3/08 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12P19/02
C13B20/14
C13B20/16
C13B20/18
C12N15/09 Z
A23L33/125
A61K31/7004
C07H3/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020528123
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081468
(87)【国際公開番号】W WO2019101629
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】17202833.4
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/079908
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511297753
【氏名又は名称】クリスチャン・ハンセン・ハーエムオー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Chr. Hansen HMO GmbH
【住所又は居所原語表記】Maarweg 32 53619 Rheinbreitbach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフリッヒ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】イェンネワイン,シュテファン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532832(JP,A)
【文献】特表2017-506065(JP,A)
【文献】特表2007-506711(JP,A)
【文献】国際公開第2008/090631(WO,A1)
【文献】米国特許第03240775(US,A)
【文献】特表2021-503895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ブロスからL-フコースを精製するための方法であって、
L-フコースを含む発酵ブロスからバイオマスを除去する工程であり、清澄化溶液が提供される工程と、
カチオン性イオン交換処理、および
アニオン性イオン交換処理
に清澄化溶液を供することによって、精製溶液を提供する工程と、
電気透析によってまたはナノ濾過および電気透析によって精製溶液から塩を除去する工程と
を含み、
前記バイオマスが、L-フコースを生成する細胞を含み、
前記電気透析工程後、前記精製溶液が、カチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体での処理による、変色工程に供される、
方法。
【請求項2】
L-フコースがカチオン性イオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下でカチオン性イオン交換処理が行われ、L-フコースがアニオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下でアニオン性イオン交換処理が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマスが、
i)遠心分離および/もしくは濾過によって発酵ブロスから除去され、濾過は精密濾過、限外濾過、クロスフロー濾過、透析濾過およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
ii)L-フコースを生成する組換え細菌細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カチオン性イオン交換処理において強カチオン性イオン交換体が使用される、および/またはアニオン性イオン交換処理において強アニオン交換体が使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カチオン性イオン交換処理が、不特定のカチオンを除去してそれらを特定のカチオンH またはNa で置き換えるために行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アニオン交換工程が、不特定のアニオンを除去してそれらを特定のアニオンCl またはOH で置き換えるために行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
L-フコースがアニオン交換材料およびカチオン交換材料を通過する条件が、清澄化溶液のpHおよび/または塩濃度を調整することによって確立される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
カチオン性イオン交換処理およびアニオン性イオン交換処理後、精製溶液が、L-フコース、色彩付与物質および塩を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アニオン性イオン交換処理において、塩化物形態のアニオン交換材料が使用され、および/またはカチオン性イオン交換処理において、水素形態のカチオン性イオン交換材料が使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
清澄化溶液が、まずカチオン性イオン交換処理に供され、その後アニオン性イオン交換処理に供される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
精製溶液が、ナノ濾過および/または逆浸透によって濃縮される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
清澄化溶液および/または精製溶液が、
i)100g/L以上のL-フコース濃度まで濃縮される;および/または
ii)4℃~45℃の温度でのナノ濾過によって濃縮される;および/または
iii)20℃~50℃の温度での逆浸透によって濃縮される;および/または
iv)5バール超50バール未満の間の圧力でのナノ濾過によって濃縮される;および/または
v)5バール超100バール未満の間の圧力での逆浸透によって濃縮される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
電気透析が、中性条件下での電気透析または酸性条件下での電気透析である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
精製溶液から塩を除去した後に、
i)精製溶液中の塩の量が、10%(w/w)未満である;および/または
ii)導電率が、0.2mS/cm~10.0mS/cmの間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
清澄化溶液が活性チャコールでの処理ならびに/または直列に結合されたカチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体での処理による、変色の工程に供され、前記除去が、
i)清澄化溶液の透析濾過および/もしくは濃縮の工程の前もしくは後に行われる;ならびに/または
ii)清澄化溶液の電気透析および/もしくは透析濾過の工程の前もしくは後に行われる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記精製溶液が、活性チャコールでの処理、ならびに直列に結合されたカチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体での処理による、変色工程に供される、
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
精製溶液が、
i)顆粒化;
ii)噴霧乾燥;
iii)ローラー乾燥;または
iv)凍結乾燥
に供される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
精製溶液が、結晶化に供される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵ブロスからL-フコースを単離するための効率的な手法に関する。発酵ブロスに含まれるL-フコースは、微生物発酵(細菌または酵母)により生成される。本発明の方法は、発酵ブロスからバイオマスを除去する工程と、得られる溶液をカチオン交換処理およびアニオン交換処理の少なくとも1つに供する工程と、イオン交換処理後に塩を除去する工程とを含む。方法は、粉末形態、顆粒化形態およびL-フコース結晶の形態のL-フコースを提供し得る。
【背景技術】
【0002】
炭水化物は、エネルギー貯蔵、構造的機能、シグナル伝達、情報記憶等において重要な役割を担うことによって、あらゆる種類の生物で役割を果たす。この目的のために、いくつかのメジャーな単糖、例えばグルコース、N-アセチル-グルコサミン、マンノース、N-アセチル-マンノサミン、フルクトース、フコース、リボース、L-フコース、キシロース等、およびより特殊な用途のためのいくつかのマイナーな糖、例えばD-アロースが、天然に合成される。
【0003】
L-フコース(6-デオキシ-L-ガラクトース)は、いわゆる希少単糖の1つである。これは、多くの天然生成物においてD-およびL-形態:L-フコース(イソデュライト(isodulite)とも呼ばれる)およびD-フコース(CAS 3615-37-0)の両方で見られる。L-型は、天然において最も一般的である。L-フコースは、研究開発における使用のための基本分子であり、グリカン構造の特徴的構成要素である。フコシル化物質の分野における科学的調査では、なかでも、それらが胚発生において極めて重要であり、生物の免疫応答に関与することが示されている。
【0004】
L-フコースならびにフコシル化オリゴ糖および多糖は、栄養学および生物医学用途への高い可能性を有することから、化学、食品、化粧品および製薬産業において極めて注目されている(Hauberら、2008年、Int.J. Med. Sci.5:371~376.;Isnardら、2005年、Ophthalmologics 219:324~333;Robertら、2004年、Biomed.Pharmacother.58:123~128;Wildら、2002年、Cells Tissues Organs 172:161~173;Adamら、1997年、Am.J. Respir.Care Med.155:2102~2104)。さらに、フコシル化誘導体は、その抗アレルギーおよび乳化特性が知られている。また、食物により供給されるL-フコースは、哺乳動物に存在するL-フコースサルベージ経路を介してフコシル化グリカンの合成に使用され得ることも知られている。このように、L-フコースは、脳および免疫系の発達に重要である。重要性はまた、フコース代謝の遺伝性障害である白血球接着不全II症候群によっても明らかである。
【0005】
哺乳動物細胞では、L-フコースはフコシル化グリカン、例えばABO血液型抗原およびヒトミルクオリゴ糖に存在する。L-フコースおよびフコシル化オリゴ糖またはタンパク質はまた、化学、製薬および栄養補給食品産業において極めて注目されている。
【0006】
L-フコースはまた、なかでも、ヒト母乳中に約(0.5g/l)の濃度で見られる。ヒト母乳は、健康な子供の発育において重要な役割が与えられている。その中に存在する物質、特にオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖(HMO))は、母乳の主要な固形成分の1つであり、還元末端にラクトース単位を有し、分岐状している、またはN-アセチルラクトサミンに連鎖しているコア構造を有する。構造の変動性は、末端位置におけるフコシル修飾により拡張される。健康および発育上の利益の点で、HMOの生物学的機能は数多くの研究の対象となっているが、十分な量の化合物の技術的精製が必要である。先行技術では、天然源からの直接抽出により、または単糖の化学修飾によりL-フコースを提供することが知られている(PT Vanhoorenら、1999年、J.Chem.,Technol.,Biotechnol.、74、479)。
【0007】
いくつかの単糖は、天然から大量に、妥当なコストで得ることができるが(例えばグルコース、N-アセチルグルコサミンおよびフルクトース)、ほとんどの単糖は比較的希少であり、例えばL-フコース(6-デオキシ-L-ガラクトース)のように天然では少量でしか見出すことができない。
【0008】
単糖の商業生産では、ほとんど天然から得られたオリゴ糖のみが源として使用される。これらのオリゴ糖は酸加水分解され、放出された単糖から個々の糖が精製される。単糖の高い化学的類似性により(ほとんどの場合、個々のヒドロキシル基の配向によってのみ互いから区別される)、純粋な形態の個々の単糖の分離はいくぶん骨の折れる作業であり、費用を要する。
【0009】
L-フコースの天然源は、海藻(フコイダン、硫酸化フコースポリマー)、ジャガイモ、大豆等の植物からの多糖である。植物では、フコースは、典型的には、多糖鎖の末端または多糖鎖内にL-フコピラノシル単位を有する多糖に関連している。L-フコースの別の重要な発生源は、細菌、真菌および微細藻類の細胞外多糖類である。
【0010】
L-フコースは、様々な抽出方法によって藻類または細菌源等の天然源から得ることができる。L-フコースの回収に使用されるこれらの天然源の希少材料は、典型的には多成分混合物である。L-フコースは現在、これらの複合的なオリゴ糖の加水分解により得られる。十分な純度のL-フコースの分離を達成するのは困難であり、先端技術における問題である。
【0011】
複合的な加水分解物からの個々の単糖の精製には、多くの場合、有害化学物質を使用する必要がある。例えば、US3,240,776は、酢酸鉛および過剰量の有機溶媒を使用してL-フコースが単離される、L-フコースの抽出方法を開示している。
【0012】
したがって、オリゴ糖の複合的な加水分解物からの個々の単糖の単離は困難であり(放出された個々の単糖の高い化学的類似性に起因する)、また環境に有害である(炭酸鉛等の毒性化学物質の過剰な使用に起因する)。また、ある特定の糖に富むオリゴ糖の利用可能性は、天然では幾分制限され得、また季節の変化により極めて変動性となり得る。L-フコースは主に、ヒバマタ科およびコンブ科を含む全ての一般的なワカメ中に存在するフカン一硫酸塩である多糖フコイダンから得られる(Black,W.A.P (1954):The seasonal variation in the combined L-fucose content of the common british Laminariaceae and Fucaceae.J.Sci.Food Agric.5、445~448)。
【0013】
今日では、L-フコースは主に、世界中に見られるが大西洋の欧州沿岸で大量に見られるヒバマタ科に属するワカメの採集により大量に得られる。海岸からのワカメの大量採取は、環境上の懸念をもたらし、環境保護法により制限されている。L-フコースおよびL-フコース含有物質は、進行中の研究の対象である。
【0014】
例えば、JP2000351790は、フコイダンを抽出するための、ならびに抽出されたフコイダンからフコース含有オリゴ糖を獲得および分離するための方法を開示している。
【0015】
WO2012/034996A1は、天然のL-フコース含有細菌性多糖の加水分解によってL-フコースを得ることができることを示している。この文献は、腸内細菌科に属する株を開示しており、この株は、L-フコースを含む細胞外多糖を生成することができる。L-フコースの生成のために、その株により生成された多糖が回収され、例えば硫酸またはトリフルオロ酢酸での処理による加水分解に供される。
【0016】
多糖またはオリゴ糖加水分解物からのL-フコースの抽出の他に、L-フコースの合成的生成のための異なる方法が開発されている。この生成プロセスは、L-アラビノース、D-ガラクトース、L-ラムノース、D-マンノースおよびD-グルコース等の他の単糖から出発する。希少な単糖であるL-ラムノースから出発する最も効率的な合成経路により、L-フコースの効率的合成を達成することができた(Defayeら、1984年、Carbohydr.Res.126、165~169)。一般に、これらの化学合成の収率は多くの場合幾分低く、いくつかの化学工程が関与する。いくつかの合成工程が関与することの他に、L-フコースの化学合成には広範な保護基化学を使用する必要がある。一般に、単糖の大量化学合成は、天然から収集された多糖からのL-フコースの抽出と比較して、経済的に実行可能であることは証明されていない。
【0017】
L-フコースの回収には、典型的には、付随する糖または糖関連化合物の性質に依存して、例えばアニオンまたはカチオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、透析、分別結晶化等の高度の分離技術が必要であった(WO2005/040430A1)。
【0018】
JP63027496は、ナガマツモ科またはモズク科に属する藻類からのL-フコースの直接抽出を記載している。藻類は、水中に分散され、濃硫酸で処理された。得られた加水分解藻類溶液は冷却され、不溶性物質は濾過により除去された。濾液のpHは5に調整され、濾液はチャコールで処理され、濾過された。L-フコース以外の糖を消化および除去するために、酵母が濾液に添加された。混合物は、チャコールで処理され、濾過された。濾液は、脱イオン化のためにカチオンおよびアニオン交換樹脂で処理され、濃縮された。濃縮された糖溶液は、エタノールと混合され、結晶化された。このようにして、98.7%の純度のL-フコースが得られた。
【0019】
ある刊行物は、テンサイパルプのエタノール不溶性残渣からのペクチンの単離を記載している(Romboutsら、1986年、Carbohydrate Research、154:177~187)。単離されたペクチンは、DEAE-セルロースでのクロマトグラフィーにより、またはCuSOでの沈殿により精製された。ペクチンは、比較的高い含量の中性糖を有していた。各ペクチン中の主要な中性糖は、アラビノースおよびガラクトースであったが;存在する他の糖は、ラムノース、L-フコース、キシロース、マンノースおよびグルコースであった。L-フコースは、糖/ペクチン混合物から分離されなかった。
【0020】
したがって、現在、純粋な形態のいかなる単糖の調製も、混合物中の他の単糖からの目的とする単糖の分離に著しい労力を必要とし、多くの場合大量の有機溶媒および他の有害化学物質が関与する。その結果、例えばL-フコース等の目的とする単一の単糖のみの蓄積が、多大な助けとなる。しかしながら、ほとんどの微生物は、それらが利用可能な単糖の種類に制限がある。さらに、微生物は、炭素源として同時にいくつかの単糖が利用可能である場合、ある特定の単糖に対する強い優先性を示すことが多い。
【0021】
L-フコースの生成のための別の可能な手法は、化学合成である。D-ガラクトースのC-6炭素の脱酸素は、D-フコースをもたらす。しかしながら、L-ガラクトースは大量に利用可能ではないため、この方法はL-フコースの合成に実用的ではない。L-フコースは、L-アラビノースから、数多くの中間体が関与する複雑な反応シーケンスを介して得ることができる。D-グルコースにおけるC-5での立体配置の反転およびC-6の脱酸素は、複数工程手順でL-フコースを提供する。
【0022】
L-フコースはまた、化学合成により、L-アラビノース(Tanimura、1961年、Chem. Abstr.55:12306)、D-グルコース(Chiba,T.&Tejima、1979年、Chem.Pharm.Bull.27:2838~2840)、メチル-L-ラムノース(Defaye,J.ら、1984年、Carbohydrate Res.126:165~169)、D-マンノース(Gesson,J-Pら、1992年、Tetrahedron Lett.33:3637~3640)およびD-ガラクトース(Dejter-Juszynski,M&Flowers,H-M.、1973年、Carbohydrate Res.28:144~146)から得ることができる。複数酵素系を使用したフクロース-6-ホスフェートからのL-フコースおよびその類似体の酵素合成が行われている(WO97/15683A1を参照されたい)。
【0023】
D-マンノースから出発すると、L-フコースの生成にはC-1での立体選択的鎖伸長および末端グリコール部分の開裂が必要である。6-デオキシヘキソースとしてのL-ラムノースは、L-フコースを生成するためにOH-反転、すなわちC-2およびC-4での反転を必要とする。D-ガラクトースは、反転を行う必要がなく、C-1ホルミル基の還元およびC-6一級ヒドロキシルからホルミルへの酸化がL-フコースをもたらすため、L-フコースの生成のための最も好適な出発材料であると思われている。上述のプロセスの共通の特徴は、プロセスの立体配置反転、脱酸素、ならびに還元および/または酸化工程を受けないヒドロキシル基の不可避の一時的保護である。しばしば選択的技術を必要とする数多くの保護/脱保護工程が、これらの方法を非効果的にしている。さらに、いくつかの場合において、副生成物から中間体を単離するために骨の折れるクロマトグラフィー分離が必要である。
【0024】
WO2014/067696A1は、一緒に作用して遊離形態のL-フコースを合成するグリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼを有する組換え微生物を使用することによりL-フコースを生成するための方法を初めて記載している。この方法は、2種類の酵素および受容体分子を必要とする。グリコシルトランスフェラーゼは、GDP-L-フコースから受容体、例えばラクツロースへのフコースの移動を触媒して、フコシルラクツロースを合成する。フコシル化受容体(例えばフコシルラクツロース)は、次いでグリコシダーゼにより受容体分子およびL-フコースに加水分解される。次いで受容体は、使用されたフコシルトランスフェラーゼにより再びフコシル化に利用可能となる。次いでL-フコースは、培地への輸送によって細胞から解放され、上清から回収され得る。この手段により、GDP-フコース経路のフィードバック阻害を容易に克服することができ、微生物発酵によって有意な(数g/l)量の遊離L-フコースを得ることができる。
【0025】
L-フコース自体およびフコシル化基質は、化学および製薬産業において重要な出発材料であるだけでなく、化粧品および栄養補給食品の製造において有用である。したがって、工業規模でのL-フコースの生成のための革新的な生成プロセスが常に必要とされている。
【0026】
L-フコースを回収するためのバイオテクノロジー的な方法が提案されている。例えば、WO2012/034996A1は、L-フコースの発酵生成のための腸内細菌科の単離微生物を使用したL-フコースの生成方法を教示している。しかしながら、L-フコースは時間を要する発酵の後にのみ非精製混合物として得られるため、L-フコースを得るために複雑なさらなる精製ステップが必要である。
【0027】
US8,642,297B2は、組換えセロリマンニトール-1-デヒドロゲナーゼを使用したL-フコースの生成を意図した一般的な発酵方法を前提としている。しかしながら、この目的において具体的な実施形態も実施例も開示されていない。さらに、反応に使用され得る代替の酵素は開示されていない。
【0028】
WO2005/087941A1は、L-フコースの生成のための組み合わされた発酵酵素方法を開示している。この場合、まず、アセトバクテリウムのデヒドロゲナーゼを使用してL-フシトールからL-フクロースが生成される。次いでこれは、さらなる工程においてL-フコースに合成されなければならない。
【0029】
別の方法として、アニオン交換クロマトグラフィーによるオリゴ糖の複雑な混合物の分離が説明されている(Derevitskayaら、1975年、Dokl. Akad.Nauk.SSSR、223:1137~1139)。この開示によれば、2-アミノ-2-デオキシグルシトール、グルコサミン、ガラクトースおよびL-フコースが、アニオン交換クロマトグラフィーによって0.2Mホウ酸塩で緩衝されたオリゴ糖混合物から成功裏に分離された。
【0030】
JP H11-035591は、オキナワモズクから調製されたフコイダンまたはフコイダンを含有する抽出物からL-フコースを生成するための方法を開示している。この方法は、例えば、水および/または酸による処理、中和、透析および電気透析処理、ならびに溶離剤としてアルカリを使用したイオン交換処理を含む複数工程の方法である。L-フコースは、最終的にアルコールから結晶化される。
【0031】
酵素および微生物合成もまた、L-フコースの生成に使用されている。L-フコースは、L-フクロース-1-ホスフェートアルドラーゼにより触媒され、続いて酸ホスファターゼおよびL-フコースイソメラーゼと反応する、ジヒドロキシアセトンホスフェート(DHAP)およびDL-ラクトアルデヒドからの酵素合成により生成される。L-フコース生成物は、任意選択でシリカゲルによる分離と組み合わされたDowex(登録商標)50W-X8(Ba2+形態)クロマトグラフィーにより単離された(Wongら、1995年;J.Org.Chem.、60:7360~7363)。
【0032】
EP0102535A2は、10%超のフコースおよび/またはラムノースを含む細胞外多糖を生成するアルカリゲネス属、クレブシエラ属、シュードモナス属またはエンテロバクター属を使用した発酵によって、フコースおよびラムノースから選択されるデオキシ糖を生成するための方法を開示している。フコースおよび/またはラムノースは、クロマトグラフィー、イオン交換もしくは吸着(例えばゼオライトとの)によって、またはさらなる発酵処理によって、発酵生成物の加水分解物から回収され得る。
【0033】
同様に、腸内細菌科からの細菌株が、好気性発酵条件下で、L-フコース含有多糖を生成し得ることが判明しており、そこからフコースが酸性加水分解および多くの精製工程によって分離および単離されている(WO2012/034996A1)。
【0034】
しかしながら、例えば形質転換された大腸菌での発酵による、より低コストのフコシル化ラクトース生成手法が探求されている(Drouillardら、2006年、Angew.Chem,Int.Ed.45、1778;WO2010/070104A1;WO2010/142305A1;WO2012/097950A1、WO2012/112777A2;Baumgartnerら、2013年、Microb.Ceil Fact.12:40)。
【0035】
WO2015/032412A1は、ラクトースの存在下で単一フコシルトランスフェラーゼをコードする組換え遺伝子を有する遺伝子修飾細胞を培養することにより、2’-フコシルラクトース(2’-FL)およびジフコシルラクトース(DFL)の混合物を高収率で作製する方法を開示している。2’-FLおよびDFLの得られる混合物は、酸により開始される、またはフコシダーゼにより媒介される加水分解に供され、L-フコースを高収率で生成し得る。
【0036】
WO2016/150629A1は、原材料としてL-フシトールを使用することによるL-フコースの生体触媒および/または発酵生成の方法を示している。1工程反応でL-フシトールをL-フコースに変換するために、生体触媒工程において単離後に、または生成する細胞内にin vivoで直接、ガラクトースオキシダーゼが使用される。
【0037】
WO2016/120448A1は、L-フコースの発酵生成のための方法を記載している。微生物発酵プロセスを使用して遊離形態の単糖、例えばL-フコースを生成するための方法が開示されている。使用された微生物は、細胞内で生成されたヌクレオチド活性化糖に対してヒドロラーゼ活性を示し、非修飾遊離形態の単糖を放出する。遊離形態のL-フコースは、培養上清に運ばれる。
【0038】
精製L-フコースを提供するための現行の試みは、小規模の実証にのみ関連しているが、今日まで、発酵ブロスからの食品グレード純度および食品グレード品質の大量精製プロセスは利用可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明の目的は、高純度のL-フコースの大量(工業規模)精製のための方法を提供することであった。具体的には、方法は、食品グレード品質でkg規模からトン規模のL-フコースを提供するのに好適であるべきであり、連続的な様式で実行されるのに好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項18に記載の組成物、請求項21に記載の食品組成物、請求項28に記載の液体の即時使用可能な乳児または幼児用栄養製品、請求項29に記載の噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品、請求項30に記載の健康補助食品、請求項31に記載のプレミックス、および請求項33に記載の組成物の使用によって解決される。従属請求項は、有利な実施形態を例示している。
【0041】
本発明によれば、発酵ブロスからL-フコースを精製するための方法が提供される。この方法は、
L-フコースを含む発酵ブロスからバイオマスを除去する工程であり、清澄化溶液が提供される工程と、
カチオン性イオン交換材料によるカチオン性イオン交換処理であり、L-フコースがカチオン性イオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下で行われる、カチオン性イオン交換処理;および
アニオン性イオン交換材料によるアニオン性イオン交換処理であり、L-フコースがアニオン性イオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下で行われる、アニオン性イオン交換処理
に清澄化溶液を供することによって、精製溶液を提供する工程と;
電気透析および/またはナノ濾過によって精製溶液から塩を除去する工程と
を含む。
【0042】
本発明の方法は、高純度(食品グレード品質)および大量(1回の実行当たりkgからトンの範囲の工業規模)の目的とするL-フコースを提供するのに好適である。さらに、本発明の方法は、極めて迅速および安価に行うことができる。したがって、これは非常に経済的に実行され得る。さらに、方法は、バッチ式または連続式で行うことができる。後者は、回数当たりに得ることができる収率をさらに改善する。方法の最後には、L-フコースの純度は、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、最も好ましくは少なくとも98%となり得る。
【0043】
L-フコースの精製のための提示された方法はまた、L-フコースの生成に使用される組換え微生物発酵株由来の組換えDNAおよび組換えタンパク質を、L-フコースの調合物が含まないという点で有利である。
【0044】
本発明の方法は、発酵ブロスからの特定のL-フコースの精製のために考案されたものであるが、前記方法はまた、in vitroでの酵素反応、いわゆるin vitro生体触媒反応により、または透過処理された全細胞生体触媒アプローチを使用することにより生成されたL-フコースの精製にも使用され得る。in vitro生体触媒反応の反応混合物からのL-フコースの精製は、反応混合物からのバイオマスの除去を必要としないことが理解される。したがって、in vitro生体触媒反応の反応混合物は、清澄化プロセスストリームに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本発明によれば、「純度」という用語は、化学的純度を指し、L-フコース等の物質が異物で希釈されていない、または異物と混合されていない程度を指定するものである。したがって、化学的純度は、単一物質と副生成物/不純物との間の関係の指標である。化学的純度は、パーセンテージ(%)として表現され、以下の式を用いて計算される。
【0046】
【数1】
【0047】
L-フコースを含む組成物において、L-フコースの純度は、当業者に公知の任意の好適な方法によって、例えばHPLCを使用することによって決定され得る。適切な検出器は、電気化学的検出器、屈折率(RI)検出器、質量分析計(MS)、ダイオードアレイ検出器(DAD)およびNMR検出器からなる群から選択される検出器であってもよい。例えば、HPLCにおいて、同じクロマトグラムにおけるL-フコースおよびL-フコースとは異なる化合物の量の両方を表すピーク下面積の合計に対するL-フコースの量を表すピーク下面積の比。しかしながら、これは、選ばれたHPLC法によってすべての不純物が分析され得ることを暗に意味する。さもなければ、質量収支アプローチ、すなわち目的とする生成物(例えばL-フコース)の絶対的定量が必要である。このアプローチでは、純度の定量のために参照物質として純粋な物質が使用され、そして純度は生成物(目的とする生成物および全不純物)から得られた乾燥物量に対して鑑定される。前記質量収支アプローチはまた、本発明による純度を決定するために使用され得る。
【0048】
本発明によれば、「培養ブロス」は、精製されるL-フコースを含有する発酵後の任意の液体を指す。「培養ブロス」、「発酵ブロス」および「培養培地」という用語は、本明細書において同義語として使用される。培養ブロスは、精製されるL-フコースだけでなく、バイオマス(例えば生体細胞および細胞残屑)、培地成分、塩、ならびに他の酸および有色化合物等の夾雑物を含む。培養ブロス中のL-フコースの純度は、80%未満であってもよい。培養ブロス中に含まれる生体細胞は、L-フコースを細胞内で生成し、生成したL-フコースを液体培養培地中に排出する生体細胞である。生体細胞は、遺伝子修飾生体細胞、例えば遺伝子修飾大腸菌細胞を含んでもよく、またはそれからなってもよい。遺伝子修飾は、特にその生体細胞の増殖期の間にL-フコースを生成するための修飾を含んでもよく、またはそれからなってもよい。
【0049】
「バイオマス」という用語は、本明細書において使用される場合、発酵工程の最後に発酵ブロス中に存在する生体細胞全体を指す。バイオマスは、L-フコースを生成した微生物の細胞、発酵工程中にL-フコースを生成する能力を失っていてもよい微生物の子孫細胞、および発酵工程の最後に発酵ブロス中に意図せずに存在する任意の他の細胞を含む。したがって、清澄化発酵ブロス、すなわちプロセスストリームが実質的に細胞を含まないように、発酵工程の最後に発酵ブロス中に存在する本質的にすべての生体細胞が、発酵ブロスから分離される。
【0050】
「プロセスストリーム」という用語は、精製されるL-フコースを含む任意の溶液を指す。
「通過液」という用語は、イオン交換材料(すなわちカチオンおよび/またはアニオン交換材料)を通過した直後の、L-フコースを含む溶液を指し、すなわち、固相イオン交換材料に接触した後の、L-フコースを含む移動相である。換言すれば、通過液中に存在するL-フコースは、固定相に吸着されない、または固定相により吸収されいない。
【0051】
本発明によれば、弱カチオン性イオン交換材料と強カチオン性イオン交換材料との間の違いは、前者のイオン交換に好適な化学基はpKaが少なくとも1(例えばカルボキシレート基のpKaのように、pKaが2~5)であり、一方で後者はpKaが1未満(例えばスルホン酸基のpKaのように、pKaが-4~0)であるという点である。
【0052】
清澄化溶液の生成
バイオマスは、好ましくは、L-フコースを生成する生体細胞、好ましくはL-フコースを生成する細菌細胞、より好ましくはL-フコースを生成する組換え細菌細胞、最も好ましくはL-フコースを生成する組換え大腸菌細胞、組換えバチルス属細胞および/または組換えコリネバクテリウム属細胞、特に組換え枯草菌および/または組換えバチルス・メガテリウムを含む。
【0053】
バイオマスは、遠心分離および/もしくは濾過によって発酵ブロスから除去され得、濾過は、好ましくは、精密濾過、限外濾過、クロスフロー濾過、透析濾過およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0054】
培養ブロスからバイオマスを除去するための好適な遠心分離法では、バイオマスはペレットとして得られ、上清は、さらなる処理に供される清澄化プロセスストリームとして得られる。培養ブロスからバイオマスを除去するための好適な濾過法では、濾液が清澄化プロセスストリームとなる。バイオマスを除去するための好ましい濾過法は、精密濾過および/または限外濾過である。限外濾過では、精密濾過の場合よりもさらに小さい粒子が除去され得る。任意選択で、限外濾過は、クロスフロー限外濾過である。
【0055】
精密濾過は、粒子を含有する流体が媒体に通される物理的分離プロセスであり、前記媒体は、粒子を保持するための入り組んだ(torturous)チャネルを含有する多孔質物質(深層濾過)、および/または特定の細孔サイズより小さい粒子/分子を通過させる、前記細孔サイズを有する膜(膜濾過もしくはデッドエンド濾過)を含む。「精密濾過」という用語は、本明細書において使用される場合、生体細胞(および細胞残屑)が発酵ブロスから除去されて(清澄化)プロセスストリームから離れる物理的分離プロセスを指す。
【0056】
限外濾過は、デッドエンド精密濾過と根本的には異ならない膜濾過の形態である。限外濾過では、圧力および濃度勾配により生成された力が、粒子および巨大可溶性分子を含む液体を半透膜に通し、粒子および巨大可溶性分子をいわゆる保持物中に保持させることによりそのような粒子および巨大可溶性分子の除去をもたらし、一方、水および低分子量溶質、例えばL-フコース等は、膜を通過して透過液(濾液)中に入る。限外濾過用の膜は、膜を通過して透過液中に入ることができる可溶性分子の最大分子量を表すその分子量カットオフ(MWCO)により定義される。MWCOより大きい任意の粒子および分子は、膜を通過することができず、保持物中に残留する。限外濾過は、液体の流れが膜表面と平行であるクロスフローモードで、または液体の流れが膜表面に垂直であるデッドエンドモードで適用されてもよい。
【0057】
発酵ブロスからバイオマスを除去するための精密濾過および/または限外濾過用の非限定的な例および好適なフィルタは、コンパクトな設計およびより良好な性能を提供するためにらせん状に巻回されたポリエーテルスルホン膜を備えるモジュールであり、限外濾過用途のために0.05μmの公称細孔サイズを有するSPIRA-CEL(登録商標)DS MP005 4333を含む。精密濾過によりバイオマスを除去するための好適な膜は、少なくとも0.2μmの細孔サイズを有し得る。あるいは、バイオマスの除去は、バイオマスおよびより大きなタンパク質等の追加的な細胞残屑を除去するために100~1000KDaの間、好ましくは150kDa~500kDaの間のMWCOを有する膜を用いた精密濾過により行われてもよい。例えば、150,000ダルトン(150kDa)のMWCOを有するポリエーテルスルホン膜(5m)を使用した中空繊維限外濾過モジュールであるFS10-FC FUS1582(Microdyn-Nadir GmbH、Wiesbaden、DE)を代替として使用することができる。
【0058】
追加的および/または代替的実施形態において、より小さい粒子および巨大可溶性分子は、クロスフロー限外濾過によって清澄化プロセスストリームから除去される。ここで、清澄化プロセスストリームは、10kDaのMWCOを有するフィルタ、例えば、10,000ダルトン(10kDa)のMWCOを有するポリエーテルスルホン膜を使用したらせん状巻回限外濾過モジュール(5.7m)であるSpira-Cel(登録商標)DSUP010(Microdyn-Nadir GmbH、Wiesbaden、DE)を使用した限外濾過工程に供されてもよい。
【0059】
要約すると、発酵ブロスからバイオマスを除去するための以下の可能性が、本発明において採用され得る。
1)遠心分離による採取。不溶性部分が、1工程で培養ブロスから除去される。利点:不溶性部分の迅速な除去;
2)精密濾過による採取。ある特定のサイズを超える不溶性部分および巨大分子が、1工程で培養ブロスから除去される。精密濾過では、らせん状巻回膜または中空繊維クロスフローフィルタが使用され得る。500kDa以上の範囲内、より好ましくは150KDa以上の範囲内の分子量カットオフを有する精密濾過膜が使用され得る。利点:ある特定のサイズを超える不溶性部分および巨大分子の迅速な除去;
3)限外濾過による採取。ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子が、1工程で培養ブロスから除去される。限外濾過では、らせん状巻回膜または中空繊維クロスフローフィルタが使用され得る。100kDa以下の範囲内、より好ましくは10KDa以下の範囲内の分子量カットオフを有する限外濾過膜が使用され得る。利点:ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子の迅速な除去;
4)精密濾過と組み合わせた遠心分離による採取:ある特定のサイズを超える不溶性部分および巨大分子が、2工程で培養ブロスから除去される。精密濾過では、らせん状巻回膜または中空繊維クロスフローフィルタが使用され得る。500kDa以上の範囲内、より好ましくは150KDa以上の範囲内の分子量カットオフを有する精密濾過膜が使用され得る。利点:精密濾過に使用される膜またはフィルタを詰まらせることのない、ある特定のサイズを超える不溶性部分および巨大分子の迅速な除去;
5)限外濾過と組み合わせた遠心分離による採取:ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子が、2工程で培養ブロスから除去される。限外濾過では、らせん状巻回膜または中空繊維クロスフローフィルタが使用され得る。100kDa以下の範囲内、より好ましくは10KDa以下の範囲内の分子量カットオフを有する限外濾過膜が使用され得る。利点:限外濾過に使用される膜またはフィルタを詰まらせることのない、ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子の迅速な除去;
6)限外濾過工程と組み合わせた精密濾過による採取:ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子が、2工程で培養ブロスから除去される。精密濾過および/または限外濾過では、らせん状巻回膜または中空繊維クロスフローフィルタが使用され得る。500kDa以上の範囲内、より好ましくは150KDa以上の範囲内の分子量カットオフを有する精密濾過膜が使用され得る。100kDa以下の範囲内、より好ましくは10KDa以下の範囲内の分子量カットオフを有する限外濾過膜が使用され得る。利点:限外濾過に使用される膜またはフィルタを詰まらせるリスクが少ない、ある特定のサイズを超える不溶性部分、巨大分子および小分子の最も迅速な除去。
【0060】
L-フコースを含む清澄化プロセスストリームは通常、(これらに限定されないが)一価イオン、二価イオン、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、有機酸、核酸、単糖および/またはオリゴ糖を含む、実質的な量の望ましくない不純物を含有し得る。
【0061】
好ましくは本発明の方法には存在しない工程
本発明の方法は、1つまたは複数のクロマトグラフィー分離工程を含んでもよい。しかしながら、好ましい実施形態において、方法は、クロマトグラフィー分離を必要としない、またはそれを含まない(例えばクロマトグラフィー分画を必要としない)ことを特徴とし得る。クロマトグラフィー分離を行わないことの利点は、溶出溶液を調製し、それを使用して固相からL-フコースを溶出し、溶出物の分画物をプールするための時間および経費が省かれることから、この方法がより迅速に、およびより安価に実行され得ることである。
【0062】
さらに、本発明の方法は、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-ブタノンおよび/または酢酸エチルの使用を含まず、任意選択で有機溶媒の使用を必要としないことを特徴とし得る。有機溶媒を使用しないことの利点は、最終生成物である最終的なL-フコースまたはL-フコースを含む組成物が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-ブタノンおよび/または酢酸エチルを含まず、任意選択でいかなる有機溶媒も含まないことが確実となり得ることである。さらに、プロセスはより安価となり、環境に優しくなり、また作業者にとってより安全となる。
【0063】
さらに、本発明の方法は、有機溶媒を含む溶液で固定相からL-フコースを溶出する工程を含まないことを特徴とし得る。利点は、精製L-フコースがいかなる有機溶媒も含まないことを維持し得ることである。さらに、プロセスはより安価となり、環境に優しくなり、また作業者にとってより安全となる。
【0064】
さらに、本発明の方法は、重金属の使用を必要としないことを特徴とし得る。利点は、精製L-フコースが重金属を含まないことが確実となり得ることである。
本発明の方法は、プロセスストリームを、好ましくは45℃超の温度に加熱する1つまたは複数の工程を含んでもよい。しかしながら、好ましい実施形態において、本発明の方法は、発酵ブロス、清澄化溶液および/または精製溶液を45℃超の温度に加熱する工程を含まない。利点は、そのような熱処理工程を採用する先行技術の方法と比較して、各溶液を加熱するためのエネルギーが削減され、それによって方法がより経済的で、かつより環境に優しくなることである。
【0065】
カチオン性イオン交換処理
不純物のなかでも、カチオンは、本発明の方法のカチオン性イオン交換処理工程によって、すなわち少なくとも1回のカチオン交換処理を清澄化プロセスストリームに適用することによって、清澄化プロセスストリームから除去され得る。具体的には、カチオンは、清澄化プロセスストリームがカチオン性イオン交換処理工程に適用される前にカチオン交換体(固定相)の材料に結合している他のカチオンに、交換される。重要なことに、カチオン性イオン交換処理が、清澄化プロセスストリームからアンモニアおよび汚染タンパク質の一部を除去することが判明した。
【0066】
カチオン性イオン交換処理工程では、正電荷を有する材料が樹脂に結合するため、それらは、細胞を含まない培養ブロスから除去され得る。L-フコースの水溶液は、正電荷を有する材料をカチオン交換材料に吸着させる一方でL-フコースを通過させる任意の好適な様式で接触する。カチオン交換樹脂と接触した後に得られる液体は、水、所定のカチオン(この工程の前にカチオン性イオン交換材料に固定されていたカチオン)、アニオン、着色物質およびL-フコースを含む。
【0067】
カチオン交換処理は、弱カチオン性イオン交換材料または強カチオン性イオン交換材料を用いて行うことができ、好ましくは強カチオン性イオン交換材料を用いて行われる。
本発明の方法のカチオン性イオン交換処理では、強カチオン性イオン交換体が使用され得る。正電荷を有する化合物を除去するのに好適なカチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂、例えば、固体骨格(例えばポリスチレン骨格)に結合したカルボキシレート基(弱カチオン交換体)またはスルホン酸基(強カチオン交換体)を含む樹脂である。好適な樹脂は、(これらに限定されないが)Lewatit(登録商標)S2568(H)(Lanxess AG、ケルン、DE)、Dowex(登録商標)50WX2(Merck KGaA、ダルムシュタット、DE);Amberlite(登録商標)IR-116(オルガノ株式会社)およびDiaion(商標)SK-102(三菱ケミカル株式会社)を含む。
【0068】
カチオン性イオン交換処理工程は、培養培地からのバイオマスの除去後の第1の工程、すなわち清澄化培養培地が供される第1の工程であってもよい。
不特定のカチオンは、好ましくは、特定のカチオンHまたはNaにより置き換えられる。不特定のカチオンがHにより置き換えられる場合、通過液のpHは、好ましくは、さらなる処理工程(例えばアニオン性イオン交換処理)を行う前に6~8のpHに、最も好ましくは通過液にNaOHを添加することにより調整される。
【0069】
好ましい実施形態において、清澄化プロセスストリームがカチオン交換体に適用される前に、カチオン性イオン交換材料はH形態で存在する、すなわちカチオン性イオン交換材料のイオン交換リガンドがプロトン化されている。これによって、カチオン交換の間に、清澄化プロセスストリーム中のカチオンがHにより置き換えられる。したがって、前記の工程後の溶液(通過液)のpHは、前記の工程前の溶液のpHよりも酸性である。好ましくは、その後の精製工程の前に、通過液のpHは中性またはほぼ中性のpH値(例えばpH6.5以上pH7.5以下)まで上昇する。pHの上昇は、プロセスストリームにNaOHを添加することにより達成され得る。
【0070】
カチオン性イオン交換体は、対イオンとして任意のアルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例えばCa2+、Mg2+)、アンモニウムイオンまたは炭酸イオンと共に使用され得る。好ましくは、ナトリウム(Na)がカチオン性イオン交換体の対イオンである。より好ましくは、水素(H)が対イオンである。対イオンとしての水素の利点は、カチオン性イオン交換材料と接触した際にプロセスストリーム中にプロトン化形態のアニオンが生成され、これらのプロトン化アニオンが通過液中に、すなわちカチオン性イオン交換材料を通過した溶液中に見られることである。その後、プロトン化形態の前述のアニオンは、塩基(例えばNaOH)を生成物ストリームに添加し、これがプロトン化形態の前述のアニオンを特定の塩形態(例えばナトリウム塩形態)に変換することによって中和され得る。ナトリウム塩形態のアニオンを得ることは、ナトリウムイオンが比較的小さいカチオンであり、より大きいカチオンよりもナノ濾過および/または電気透析によって容易に除去され得るため有益である。
【0071】
好ましくは、カチオン交換処理工程は、アニオン交換処理工程の前に行われる。しかしながら、原則的に、カチオン性イオン交換処理はまたアニオン交換処理工程後に行うことができる。
【0072】
カチオン交換樹脂の粒子サイズは、好ましくは、0.1~1mmの間の範囲内である。この粒子サイズ範囲は、使用された細胞を含まない培養ブロスが効率的に流動する一方で、それでも電荷を有する材料がカチオン交換樹脂により効果的に除去されることを可能にする。イオンの効率的な交換が生じ得ることを確実にするために、流速は、好ましくは床容積の0.5倍超2.5倍未満の間、より好ましくは1.0倍超2.0倍未満の間となるべきである。イオン交換処理は、従来の様式で、例えばバッチ式または連続式で、好ましくは連続式で行うことができる。
【0073】
L-フコースがカチオン交換材料を通過する条件は、清澄化溶液のpHおよび/または塩濃度を調整することによって、好ましくは清澄化溶液のpHを6~8の範囲内のpHに調整すること、および/または必要に応じて塩濃度を調整することによって確立され得る。
【0074】
カチオン性イオン交換処理およびアニオン性イオン交換処理後、精製溶液は、L-フコース、色彩付与物質および塩を含んでもよく、塩は、好ましくはNaClである。本発明の好ましい実施形態によれば、アニオン性イオン交換処理において、塩化物形態のアニオン交換材料が使用される。
【0075】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、カチオン性イオン交換処理において、水素形態のカチオン性イオン交換材料が使用される。水素形態(H対イオン)のカチオン交換体の使用は、任意の他の形態(H以外の対イオン)のカチオン交換材料と比較して、塩および汚染タンパク質のはるかにより良好な結合が得られるため有益であることが発見された。水素形態の使用によって、通過液がカチオン性イオン交換処理に適用された溶液よりも酸性のpHを有するようになる。しかしながら、前記pHは、塩基、好ましくはNaOHの添加によって容易に中性pHまで、好ましくは6~8の範囲内のpHまで上昇する。NaOHによる中和は、導入されるナトリウムイオンが比較的小さく、ナノ濾過および/または電気透析によって容易に除去され得るため有益である。
【0076】
カチオン交換樹脂の粒子サイズは、使用された細胞を含まない培養ブロスが効率的に流動する一方で、それでも電荷を有する材料がカチオン性イオン交換樹脂により効果的に除去されることを可能にするように選択されるべきである。イオンの効率的な交換が生じ得ることを確実にするために、流速は、好ましくは床容積の0.2倍超2.0倍未満、より好ましくは0.5倍超1.5倍未満となるべきである。イオン交換処理は、従来の様式で、例えばバッチ式または連続式で、好ましくは連続式で行うことができる。
【0077】
清澄化溶液は、まずカチオン性イオン交換処理に供され、その後アニオン性イオン交換処理に供されてもよい。このプロセスの順番は、カチオン性イオン交換材料が汚染タンパク質の強い結合を得るためにH形態となり得、塩基(例えばNaOH)での中和後に、アニオン性イオン交換材料にプロセスストリーム中の所定の塩形態のアニオン(例えばNa形態のアニオン)を含む溶液が流され得るという利点を有する。
【0078】
アニオン性イオン交換処理
好ましくは、アニオン交換処理工程は、カチオン交換処理工程の後に行われる。しかしながら、原則的に、アニオン交換処理工程は、カチオン交換処理工程の前に、すなわちプロセスストリームがカチオン性イオン交換体で処理された後に行うことができる。
【0079】
アニオン交換工程は、不特定のアニオンを除去し、それらを特定のアニオン、好ましくは特定のアニオンClまたはOHにより置き換えるために行われる。不特定のアニオンがClにより置き換えられる場合、通過液のpHは、好ましくは、さらなる処理工程(例えば電気透析により精製溶液から塩を除去する工程)を行う前に6~8のpHに、最も好ましくは通過液にNaOHを添加することにより調整される。
【0080】
アニオンは、本発明の方法のアニオン性イオン交換処理工程によって、すなわち少なくとも1回のアニオン性イオン交換処理を清澄化プロセスストリームに適用することによって、清澄化プロセスストリームから除去され得る。アニオン性イオン交換処理工程は、培養培地からのバイオマスの除去後の第1の工程、すなわち清澄化培養培地が供される第1の工程であってもよい。好ましくは、アニオン性イオン交換処理は、カチオン性イオン交換処理工程の後の工程で行われる。
【0081】
負電荷を有する材料は、アニオン性イオン交換樹脂に結合するため、プロセスストリームから除去され得る。L-フコースを含む水溶液は、負電荷を有する材料をアニオン交換材料に吸着させる一方でL-フコースを通過させる、任意の好適な様式で接触する。アニオン交換樹脂と接触した後に得られる液体は、水、所定のカチオン、所定のアニオン、着色物質およびL-フコースを含む。アニオン性イオン交換工程の条件は、L-フコースがアニオン交換材料に結合しない、すなわち材料と接触した後に通過液中に存在するような条件である。
【0082】
アニオン性イオン交換処理の開始時に、生成物ストリームのpHは好ましくはpH6~8(最も好ましくはpH7)に調整される。通過液(アニオン交換材料を通過した生成物ストリーム)は、より低いpH、例えば4.5~6の範囲内のpHを有し得る。このpHでは、通過液中のアニオンは、プロトン化形態で存在し得る。通過液のpHは、塩基、例えばNaOHを添加することにより上昇され得る。
【0083】
アニオン交換の間、清澄化プロセスストリーム中のアニオンは、Clにより置き換えられ得る。したがって、プロセスストリームのpHは若干より酸性となる。好ましくは、pHは、その後の精製工程の前に、好ましくはプロセスストリームの中性またはほぼ中性のpH値(pH6.5以上pH7.5以下)を達成するように増加される。より好ましくは、プロセスストリームのpHの増加は、プロセスストリームにNaOHを添加することにより達成される。
【0084】
アニオン交換体は、弱アニオン性イオン交換体または強アニオン性イオン交換体、好ましくは強アニオン性イオン交換体であってもよい。
好適な強塩基性アニオン交換樹脂は、固体骨格(例えばポリスチレン骨格)に結合したトリメチルアンモニウム基またはヒドロキシエチル基を含む樹脂である。好適な樹脂は、(これらに限定されないが)Lewatit(登録商標)S6368A、Lewatit(登録商標)S4268、Lewatit(登録商標)S5528、Lewatit(登録商標)S6368A(Lanxess AG、ケルン、DE)、Dowex(登録商標)AG 1x2、Dowex(登録商標)1x8、Purolite(登録商標)Chromalite CGA100x4(Purolite GmbH、ラーティンゲン、DE)、Amberlite(登録商標)FPA51(Dow Chemicals、MI、USA)を含む。好ましくは、アニオン交換樹脂は、塩化物形態で存在する。好適な弱アニオン交換樹脂は、固体骨格(例えばポリスチレン骨格)に結合したアミノ酸を含む樹脂である。
【0085】
アニオン性イオン交換体は、対イオンとして任意の塩基、例えばHCO 、I、Br、NO 等と共に使用され得る。好ましくは、対イオンは、水酸化物イオン(OH)である。より好ましくは、対イオンは、塩化物イオン(Cl)である。対イオンとして塩化物イオンを使用する利点は、Clアニオンが、発酵ブロス中に元々存在する多くの他のアニオンより小さいことである。これによって、電気透析および/またはナノ濾過(例えば透析濾過)により塩化物アニオンがプロセスストリームからより容易に除去され得る。対イオンとしてOHアニオンを使用する利点は、アニオン性イオン交換処理後の工程においてpHがHClで中和される場合、他のアニオンより容易に除去され得る小さい塩化物アニオンがプロセスストリームに導入されることである。
【0086】
アニオン交換樹脂の粒子サイズは、使用されたプロセスストリームが効率的に流動する一方で、それでも電荷を有する材料がアニオン交換樹脂により効果的に除去されることを可能にするために、好ましくは0.1~1mmの間である。イオンの効率的な交換が生じ得ることを確実にするために、流速は、好ましくは床容積の0.5倍超2.5倍未満、より好ましくは1.0倍超2.0倍未満となるべきである。イオン交換処理は、従来の様式で、例えばバッチ式または連続式で、好ましくは連続式で行うことができる。
【0087】
L-フコースがアニオン交換材料を通過する条件は、清澄化溶液のpHおよび/または塩濃度を調整することによって、好ましくは清澄化溶液のpHを6~8の範囲内のpHに調整することによって、および/または必要に応じて塩濃度を調整することによって確立され得る。例えば、NaOHの添加によりpH6~8に調整された、対イオンとしてHを用いたカチオン性イオン交換処理の通過液に由来するL-フコースを含む溶液がアニオン性イオン交換処理に供される場合、通過液の塩濃度は、アニオン性イオン交換樹脂へのL-フコースの結合を回避するのに十分高いことが観察された。しかしながら、前述の条件下では、アニオン交換樹脂に汚染物(例えばある特定のタンパク質、DNAおよびRNA分子(特に組換えDNAおよびRNA分子)ならびに有色物質)がまだ結合することが観察された。
【0088】
好ましい実施形態において、精製プロセスは、水素(H)形態のカチオン交換樹脂および塩化物(Cl)形態のアニオン交換樹脂による処理を含む。カチオン交換樹脂は、好ましくは、強カチオン交換体である。アニオン交換体は、弱または強アニオン交換体であってもよく、好ましくは強アニオン交換体である。さらに、アニオン交換材料はまた、吸収体材料であってもよい。カチオン性イオン交換樹脂およびアニオン性イオン交換樹脂の両方による処理は、生成物ストリームからの全ての不特定のイオンの除去を可能にする。したがって、不特定のイオンは、特定のアニオン、好ましくはナトリウムカチオン(例えば、対イオンとしてHを有するカチオン性イオン交換材料との接触後のNaOHによる生成物ストリームの中和により導入される)および塩化物アニオンにより置き換えられ得る。ナトリウムカチオンおよび塩化物アニオンは、共に比較的小さいイオンであり、より大きいイオンよりも迅速および経済的に電気透析および/またはナノ濾過(透析濾過)によって除去され得る。
【0089】
精製溶液の濃縮
好ましい実施形態において、L-フコースを含むイオン交換処理後の溶液(通過液)は、好ましくはナノ濾過、逆浸透および/または真空蒸発(例えば流下膜式蒸発器、回転蒸発器もしくはプレート蒸発器の使用による)によって濃縮される。逆浸透および/またはナノ濾過が好ましい方法である(例えば、20Å以上のサイズ排除限界を有するナノ濾過膜によるナノ濾過)。ナノ濾過および/または逆浸透が特に好ましい。逆浸透に勝るナノ濾過の利点は、ナノ濾過がより迅速な濃縮を達成し、また塩イオンの部分的除去を達成することである。真空蒸発に勝るナノ濾過および/または逆浸透の利点は、L-フコースとのカラメル化反応が生じないこと、すなわち濃縮中に有色カラメル体(caramel bodies)が生成されないことである。
【0090】
精製溶液は、最も好ましくはナノ濾過により濃縮され、最も好ましくは、100~200kDaの範囲内の分子量カットオフを有するナノ濾過膜が使用される。この分子量カットオフの利点は、L-フコースが阻止される一方で塩イオンが膜を通過し得る、すなわち濃縮の他に脱塩が実現されることである。
【0091】
溶液の濃縮の前に、溶液中のL-フコースは、20%(w/w)以下、10%(w/w)以下または5%(w/w)以下の濃度を有し得る。
プロセス中、清澄化溶液および/または精製溶液は、100g/L以上、好ましくは200g/L以上、より好ましくは300g/L以上のL-フコース濃度まで濃縮され得る。
【0092】
さらに、清澄化溶液および/または精製溶液は、80℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは4℃~45℃、より好ましくは10℃~40℃、より一層好ましくは15℃~30℃、最も好ましくは15℃~20℃の温度でのナノ濾過によって濃縮され得る。
【0093】
さらに、清澄化溶液および/または精製溶液は、20℃~50℃、より好ましくは30℃~45℃、最も好ましくは35℃~45℃の温度での逆浸透によって濃縮され得る。
さらに、清澄化溶液および/または精製溶液は、ナノ濾過により、5バール超50バール未満の間の圧力、好ましくは10バール超40バール未満の間の圧力、より好ましくは15バール超30バール未満の間の圧力で濃縮され得る。
【0094】
さらに、清澄化溶液および/または精製溶液は、逆浸透により、5バール超100バール未満の間の圧力、好ましくは10バール超80バール未満の間の圧力、より好ましくは15バール超70バール未満の間の圧力で濃縮され得る。
【0095】
逆浸透は、溶液(プロセスストリーム)から0.1nm超の粒子を除去する膜濾過法である。プロセスストリームから水のみが除去され、一方で、イオン、糖等の全ての他の分子は保持物中に濃縮される。逆浸透を使用することによって、L-フコースの濃度の上昇のみが達成され得るが、その脱塩は達成されない。
【0096】
追加的および/または代替的実施形態において、濃縮工程は、以下のパラメータの少なくとも1つ、任意選択で以下のパラメータの全てを含む。
i)濃縮は、100g/L以上、好ましくは200g/L以上、より好ましくは300g/L以上のL-フコース濃度まで行われる;
ii)濃縮がナノ濾過により行われる場合、濃縮は、80℃未満、好ましくは50℃以下、より好ましくは4℃~45℃、最も好ましくは4℃~40℃の温度で行われる;
iii)濃縮が逆浸透および/または真空蒸発により行われる場合、濃縮は、50℃未満、好ましくは20℃~45℃、最も好ましくは30℃~45℃、より好ましくは35℃~45℃の温度で行われる;ならびに
iv)濃縮は、5バール超50バール未満の間の圧力、好ましくは10バール超40バール未満の間の圧力、より好ましくは15バール超30バール未満の間の圧力で行われる。
【0097】
本発明の好ましい実施形態において、L-フコースを含む溶液は、電気透析工程前に、真空蒸発(例えば流下膜式蒸発器もしくはプレート蒸発器の使用による)、逆浸透またはナノ濾過(例えば20Å以上のサイズ排除限界を有するナノ濾過膜によるナノ濾過)を使用して、好ましくはナノ濾過または逆浸透を使用して、より好ましくはナノ濾過を使用して濃縮される。
【0098】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、L-フコースを含む溶液は、電気透析工程後に、真空蒸発(例えば流下膜式蒸発器もしくはプレート蒸発器の使用による)、逆浸透またはナノ濾過(例えば20Å以上のサイズ排除限界を有するナノ濾過膜によるナノ濾過)を使用して、好ましくはナノ濾過または逆浸透を使用して、より好ましくはナノ濾過を使用して濃縮される。
【0099】
好ましくは、L-フコースを含む溶液は、固体形態(例えば結晶化形態または顆粒化形態)のL-フコースの単離が行われる前に濃縮される。
塩の除去
L-フコースを精製するための方法は、塩が溶液から除去される、好ましくは清澄化溶液および/または精製溶液から除去される工程を含む。塩の除去は、脱塩される溶液をナノ濾過および/または電気透析に供することにより達成され得る。
【0100】
ナノ濾過は、膜がナノメートルサイズの細孔を含む膜濾過法である。ナノ濾過膜は、1~10ナノメートルの範囲の細孔サイズを有する。ナノ濾過膜の細孔サイズは、精密濾過の細孔サイズより小さく、さらには限外濾過膜の細孔サイズより小さいが、実際には逆浸透に使用される膜の細孔サイズより大きい。ナノ濾過における使用のための膜は、主に薄いポリマーフィルムから形成される。一般的に使用される材料は、ポリエチレンテレフタレートまたはアルミニウム等の金属を含む。細孔密度は、1cm当たり1~10個の細孔の範囲であってもよい。ナノ濾過は、L-フコースを精製するための方法において、溶液中、例えば清澄化溶液および/または精製溶液中のL-フコースの濃度を増加させるために使用される。さらに、溶液(プロセスストリーム)の脱塩が生じる。
【0101】
ナノ濾過に好適な膜は、150~300Daの範囲内のサイズ排除を提供するポリアミドまたはポリピペラジンの薄いフィルム複合膜、例えばDow Filmtec(商標)NF270(Dow Chemical Company、USA)を含む。そのような膜は、高フラックスを可能にする。特に、100~300KDaの間の分子カットオフを有するナノ濾過膜は、プロセスストリーム中のL-フコースの濃度を上昇させるのに有益である。この分子カットオフを有する膜は、膜を通したL-フコースの通過を防止し、それらはまた、イオン交換材料での処理後のプロセスストリーム中に存在する塩(例えば塩化ナトリウム)が膜を通過し、L-フコースから分離されるため、脱塩を実現するという利点を有する。ナノ濾過のための好適な膜の追加の例は、Trisep(登録商標)4040-XN45-TSF(Microdyn-Nadir GmbH、Wiesbaden、DE)、GE4040F30およびGH4040F50(GE Water & Process Technologies、ラーティンゲン、DE)を含む。
【0102】
ナノ濾過は、L-フコースを含む溶液の電気透析処理の前に、実質的な量の夾雑物(例えば塩イオン)を効率的に除去することが判明した。ナノ濾過はまた、(例えば限外濾過工程による)発酵ブロスからのバイオマスの除去後の清澄化発酵ブロスから低分子量夾雑物を除去するのに効率的であることが判明した。低分子量成分の除去は、イオン交換処理前にL-フコースを含む溶液を濃縮および脱ミネラル化するのに有益である。L-フコースの濃度を上昇させるためのナノ濾過の使用は、より低いエネルギーおよび処理コストをもたらし、また低減された熱曝露に起因して製品のよりよい品質をもたらす。
【0103】
電気透析は、透析および電気分解を組み合わせたものであり、半透膜を通したその選択的エレクトロマイグレーションに基づく溶液中のイオンの分離および濃縮に使用され得る。工業的電気透析の応用は1960年代初頭に遡り、この方法は乳児用フォーミュラに含めるための乳清の脱ミネラル化に使用された。電気透析のさらなる応用は、ワイン、ブドウマスト、リンゴジュースおよびオレンジジュース等の飲料のpHの調整を含む。
【0104】
今日では、飲料水の製造のための汽水の脱塩および乳児用食品製造のための乳清の脱ミネラル化が、電気透析の最も普及した用途である。電気透析の基本原理は、直流発電機に接続された、イオン伝導のために電解質に浸漬された電極の対を備える電解槽からなる。直流発電機の陽極に接続された電極はアノードであり、陰極に接続された電極はカソードである。次いで電解液は電流の流れを担うが、これは、それぞれアノードおよびカソードに向かう陰イオンおよび陽イオンの移動から生じる。電気透析に使用される膜は、本質的に、負電荷基または正電荷基を有する多孔質イオン交換樹脂のシートであり、したがってそれぞれカチオン膜またはアニオン膜と説明される。イオン交換膜は、通常、ジビニルベンゼンで架橋された好適な官能基(例えば、カチオン膜の場合はスルホン酸基、またはアニオン膜の場合は四級アンモニウム基)を保持するポリスチレンマトリックスからなる。
【0105】
電解質は、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよび/またはスルファミン酸を含む水溶液であってもよい。電解質はカソードおよびアノードを包囲し、槽内の電流の流れを可能にするように機能する。次いで、イオンが枯渇しているストリームが、イオンが高濃度化されているストリームから十分に分離される(2つの溶液はまた、希釈物(イオンが枯渇している)および濃縮物(イオンが高濃度化されている)と呼ばれる)ように、アニオン膜およびカチオン膜が2つの電極ブロック間のフィルタプレスのように平行となる手法で電気透析積層体が組み立てられる。
【0106】
電気透析プロセスの中心は膜積層体であり、これは、2つの電極間に設置されるスペーサーで隔てられたいくつかのアニオン交換膜およびカチオン交換膜からなる。直流電流を印加することにより、アニオンおよびカチオンは膜を介して電極に移動し、(脱塩された)希釈物ストリームおよび濃縮物ストリームを生成する。
【0107】
電気透析における使用のためのイオン交換膜の細孔サイズは、希釈物ストリームと濃縮物ストリームとの間の高い濃度差により生じる、希釈物ストリームから濃縮物ストリームへの生成物の拡散を防止するのに十分小さい。バイオマスからの分離、ならびに/またはカチオンおよび/もしくはアニオンの交換後、タンパク質、および特に組換えDNA分子(断片から全ゲノムまでのサイズ範囲)は、目的とする生成物から定量的に除去されなければならない。
【0108】
電気透析は、水溶液からイオンを除去するために使用され、一方で、L-フコースはプロセスストリーム中に残留する。電気透析の重要な利点は、L-フコースを含む溶液から組換えDNA分子が完全に除去され得ることである。さらに、プロセスストリーム中の塩の量が、電気透析により大幅に低減され得ることが見いだされた。実際に、生成物ストリームから塩化ナトリウムが完全に除去され得ることが発見された。これは、塩化ナトリウム等の塩を含まないL-フコースが提供され得るという利点を有し、これによって塩(例えば塩化ナトリウム)の存在が最終生成物、例えば乳児用食品において有し得るいかなる悪影響も防止される。
【0109】
塩の除去(例えば電気透析による)は、0.2~10.0mS/cm、好ましくは0.4~5.0mS/cm、より好ましくは0.5~1.0mS/cmの間の安定な導電率(mS/cm)が達成されるまで行うことができる。さらに、電気透析は、10.0g/l未満、好ましくは5.0g/l未満、より好ましくは1.0g/l未満、より一層好ましくは0.5g/l以下、最も好ましくは0.4g/l以下、特に0.2g/l以下の塩の量(g/l)が達成されるまで行うことができる。
【0110】
電気透析は、中性条件下または酸性条件下で行うことができる。2つの異なる型の間の違いは、プロセスストリーム中に存在するアニオンの形態にある。
電気透析の間中性条件である場合、電気透析を開始する前に、プロセスストリームのpHは、5.0~9.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5のpHに達するまで、酸、好ましくは塩酸(HCl)で、または塩基、好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)で調整され得る。
【0111】
電気透析の間酸性条件である場合、電気透析を開始する前に、プロセスストリームは、1.0~3.0、好ましくは1.5~2.5、より好ましくは1.8~2.2のpHに達するまで、酸、好ましくは塩酸(HCl)で酸性化される。電気透析は、好ましくは、安定な導電率(mS/cm)およびpHが達成されるまで行われる。
【0112】
電気透析は、1.0~10.0mS/cm、好ましくは1.5~10.0mS/cm、より好ましくは2.0~8.0mS/cmの間の安定な導電率(mS/cm)が達成されるまで行うことができる。電気透析の間、pHは、塩基、好ましくは水酸化ナトリウムで制御および調整されなければならない。中性条件下で、電気透析は、バイポーラ膜を使用して行うことができる。この場合、L-フコースは別個の電気透析濃縮回路で濃縮され得る。したがって、L-フコースは電気透析の間高濃度化され得る。
【0113】
プロセスにおいて、精製溶液から塩を除去した後、
i)精製溶液中の塩の量は、10%(w/w)未満、好ましくは5%(w/w)未満、より好ましくは1%(w/w)未満、より一層好ましくは0.5%(w/w)以下、最も好ましくは0.4%(w/w)以下、特に0.2%(w/w)以下となり得る;および/または
ii)導電率は、0.2~10.0mS/cmの間、好ましくは0.4~5.0mS/cmの間、より好ましくは0.5~1.0mS/cmの間となり得る。
【0114】
清澄化および/または精製溶液の変色
清澄化溶液および/または精製溶液は、好ましくは活性チャコールでの処理、ならびに/または直列に結合されたカチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体での処理による変色の工程に供されてもよい。
【0115】
変色工程は、
i)清澄化溶液の透析濾過および/もしくは濃縮の工程の前もしくは後;ならびに/または
ii)清澄化溶液の電気透析および/もしくは透析濾過の工程の前もしくは後に行われてもよい。
【0116】
好ましくは、変色工程は、特にその工程がカチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体(直列に結合されている)による処理によって行われる場合、電気透析工程の後に行われる。利点は、カチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体に、非常に低濃度の塩を含むプロセスストリームが流され得、これによって、電荷を有する多くの汚染物(例えば、電荷を有するペプチドおよび/またはDNA分子)がイオン交換材料に結合する一方で、L-フコースは非結合状態を維持し、通過液中に位置することである。したがって、有色物質および電荷を有する非有色物質に関して、L-フコースの純度はこの工程により大幅に改善され得る。任意選択で、前記工程は、ナノ濾過工程の後および/または電気透析工程の前に行われる。
【0117】
カチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体(直列に結合されている)での処理と比較した、活性チャコールでの処理による色彩付与物質の除去の利点は、電荷を有する色彩付与物質および電荷を有さない(中性の)色彩付与物質の両方が除去され得、また電荷を有さない(中性の)炭水化物(例えばオリゴ糖、単糖)が除去され得ることである。
【0118】
活性チャコールとも呼ばれる活性炭は、吸着に利用可能な表面積を増加させる微小な低容積細孔を有するように加工された炭素の形態である。典型的には、わずか1グラムの活性炭は、その高度のミクロ多孔性に起因して、ガス吸着により決定される3000mを超える表面積を有する。
【0119】
単糖またはオリゴ糖等の炭水化物物質は、水溶液からチャコール粒子の表面に結合する傾向を有する。オリゴ糖の活性チャコールとの相互作用は、単糖の相互作用よりはるかに強力である。この挙動はその構造によりもたらされ、これによって、L-フコースは、汚染オリゴ糖より、弱く結合する、すなわちより少量が活性チャコールに結合する。オリゴ糖以外に、有色材料が活性チャコールに吸着する。塩等の他の水溶性材料は、より弱く結合し、チャコールを水で洗浄することにより(インキュベーション後)L-フコースと共に活性チャコールから溶出される。水での溶出後、吸着したオリゴ糖および有色物質は依然として活性チャコールに結合したままである。したがって、活性チャコールでの処理工程により、汚染オリゴ糖および有色夾雑物の除去が可能である。要するに、活性チャコール工程は、着色剤、他の不純物を除去し、塩等の水溶性夾雑物の量を低減する。
【0120】
色彩付与化合物、オリゴ糖または夾雑物の除去に好適な活性チャコールは、(これらに限定されないが)顆粒化活性チャコール、例えばNorit(登録商標)GAC830EN(Carbot Cooperation)およびEpibon(登録商標)Y12×40 spezial(Donaucarbon)、または粉末化活性チャコール、例えばNorit(登録商標)DX1、Norit(登録商標)SA2(Carbot Cooperation)およびCarbopal(登録商標)MB4(Donaucarbon)である。
【0121】
カチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体(直列に結合されている)での処理による色彩付与物質の除去は、活性チャコールでの処理と比較して、色彩付与物質が溶液から除去され得るだけでなく、溶液中の不特定の塩イオンが特定の塩イオン、例えばNaおよびClに交換され得、また電荷を有するペプチドが除去され得るという利点を有する。このイオン交換の利点は、脱塩プロセスがより効率的となり得ることである(NaおよびClは、他の可能なイオンと比較して小さいイオンであり、したがって脱塩処理工程によってより容易に除去され得る)。さらなる利点は、L-フコースの結晶化に対するある不特定の塩の悪影響が回避され得ることである。
【0122】
イオン交換処理は、電荷を有する材料および色彩付与物質が各イオン交換材料に吸着し、一方L-フコースは各イオン交換材料を通過する、すなわち通過液中に位置するように行われる。得られる液体(通過液)は、水、少量の所定のイオン、低減された量の色彩付与物質およびL-フコースを含む。
【0123】
カチオン交換体は、弱カチオン性イオン交換体または強カチオン性イオン交換体であってもよく、好ましくは強カチオン性イオン交換体である。
好適なカチオン交換樹脂は、(これらに限定されないが)Lewatit(登録商標)S2568(H)(Lanxess AG、ケルン、DE)、Dowex(登録商標)50WX2(Merck KGaA、ダルムシュタット、DE);Amberlite(登録商標)IR-116(オルガノ株式会社)およびDiaion(商標)SK-102(三菱ケミカル株式会社)等の強酸性カチオン交換樹脂である。
【0124】
カチオン性イオン交換体は、対イオンとして任意のアルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例えばCa2+、Mg2+)、アンモニウムイオンまたは炭酸イオンと共に使用され得る。好ましくは、ナトリウムイオン(Na)が対イオンである。
【0125】
アニオン交換体は、弱アニオン交換体または強アニオン交換体であってもよく、好ましくは強アニオン性イオン交換体である。
好適なアニオン交換樹脂は、(これらに限定されないが)Lewatit(登録商標)S6368A、Lewatit(登録商標)S4268、Lewatit(登録商標)S5528、Lewatit(登録商標)S6368A(Lanxess AG、ケルン、DE)、Dowex(登録商標)AG 1x2、Dowex(登録商標)1x8、Purolite(登録商標)Chromalite CGA100x4(Purolite GmbH、ラーティンゲン、DE)、Amberlite(登録商標)FPA51(Dow Chemicals、MI、USA)等の強塩基性(I型)アニオン交換樹脂である。好ましくは、アニオン交換樹脂は、塩化物形態で存在する。
【0126】
アニオン性イオン交換体は、対イオンとして任意の塩基と、例えばHCO 、I、Br、NO 等と共に使用され得る。好ましくは、水酸化物イオン(OH)が対イオンとして使用される。より好ましくは、塩化物イオン(Cl)が対イオンとして使用される。
【0127】
カチオン性イオン交換体とアニオン性イオン交換体が直列に結合した場合、アニオン性イオン交換体は、カチオン性イオン交換体の上流側または下流側に位置し得る。好ましくは、アニオン性イオン交換体は、それと直列に結合されたカチオン性イオン交換体の下流側に位置する。したがって、上記の直列構造を通過する溶液は、まずカチオン性イオン交換体を通過し、次いでアニオン性イオン交換体を通過する。
【0128】
カチオン性イオン交換体および/またはアニオン性イオン交換体を通過したプロセスストリーム(すなわち対応する通過液)のpHは、好ましくは2.0超10.0未満、より好ましくは3.0超9.0、最も好ましくは4.0超8.0未満である。
【0129】
イオン交換樹脂の粒子サイズは、プロセスストリームが効率的に流動する一方で、それでも電荷を有する材料および色彩付与物質がイオン交換樹脂により効果的に除去されることを可能にするように選択されるべきである。イオンの効率的な交換が生じ得ることを確実にするために、流速は、好ましくは床容積の0.2倍超2.0倍未満の間、より好ましくは床容積の0.5倍超1.5倍未満の間、最も好ましくは床容積の0.75倍超1.2倍未満となるべきである。イオン交換処理は、従来の様式で、例えばバッチ式または連続式で、好ましくは連続式で行うことができる。
【0130】
しかしながら、エンドトキシンを含まない株(例えばバチルス株および/または遺伝子操作されたエンドトキシンを含まない株)が使用される場合、エンドトキシンを除去する工程は必要でなくなり得る。
【0131】
エンドトキシンの無菌濾過および/または除去
本発明の好ましい実施形態において、精製溶液は、好ましくは10kDa以下のフィルタモジュールを通した精製溶液の濾過により、無菌濾過されおよび/またはエンドトキシン除去に供される。一例として、L-フコースを含有する精製溶液は、3kDaフィルタを通した、または6kDaフィルタを通した精製溶液の濾過により、無菌濾過されおよび/またはエンドトキシン除去工程に供される。エンドトキシンの除去は、L-フコースが人による消費に意図される場合に必要である。
【0132】
L-フコースの顆粒化形態の提供
顆粒化(例えば噴霧乾燥)生成物のインスタント特性を改善するために、食品粉末凝集が一般的に使用される。このプロセスは、流動性および/または視覚的外観を改善するために生成物粒子を大きくすることが望ましい場合に使用される。
【0133】
一般に、顆粒または凝集体の主な特性、例えばサイズ、多孔性、可溶性、湿潤性、形状および/または密度等は、凝集(顆粒化)プロセスの種類、および凝集の間の動作条件に依存する。流動床凝集は、取り扱いおよび包装のための高い多孔性および良好な機械的抵抗性を有する凝集体を生成するのに好適なプロセスの1つである。
【0134】
流動床凝集の動作原理は、高温気流による粒子の流動化、および液体結合剤噴霧化による表面粒子の湿潤からなる。流動床上での湿潤粒子間の衝突は、液体架橋および粒子合体を形成する。これらの粒子を乾燥させると、架橋は固化し、凝集体の一体化をもたらす。
【0135】
本発明によれば、精製溶液は顆粒化され得る、特に5~50%(w/w)、好ましくは10~40%(w/w)、より好ましくは15~35%(w/w)のL-フコース濃度で顆粒化され得る。
【0136】
入口温度は、50℃~120℃、好ましくは65℃~110℃、より好ましくは80~100℃の範囲内であってもよい。
出口温度(生成物温度)は、30℃~80℃、好ましくは35~75℃、より好ましくは40~75℃の範囲内であってもよい。
【0137】
得られる顆粒は、好ましくは材料重量の0.1~5%の間、より好ましくは材料重量の0.5%~2.5%の間、最も好ましくは材料重量の0.7%~1.5%の間の乾燥減量を有するべきである。
【0138】
好ましい実施形態において、顆粒化L-フコースは、好ましくは、150μm~1400μmの間の粒子サイズを有する材料を少なくとも50%(w/w)、より好ましくは、150μm~1400μmの間の粒子サイズを有する材料を少なくとも60%(w/w)超、最も好ましくは150~1400μmの間の粒子サイズを有する材料を70%(w/w)超有する。
【0139】
粒子サイズは、異なる細孔サイズを有する篩で材料を篩い分けすることにより決定され得る。例えば、150μm~1400μmの間の粒子サイズを有する材料としてL-フコースを得るためには、1400μmのメッシュ開口直径を有する篩、および150μmのメッシュ開口直径を有する篩を続けて使用して(いずれの順番でもよい)、目的とする粒子サイズを有する材料を選択することができる。
【0140】
L-フコースのロール乾燥形態の提供
L-フコースは、ローラー乾燥形態で提供されてもよい。これに関して、精製溶液は、ローラー乾燥されてもよい、すなわちローラー乾燥手順に供されてもよい。
【0141】
L-フコースの結晶化形態の提供
L-フコースは、結晶化形態で提供されてもよい。水溶液からL-フコースを結晶化するための方法が、本明細書において説明される。
【0142】
L-フコースは、酵素または発酵(培養)ブロスを使用した生体触媒アプローチから選択的に結晶化され得ることが発見されている。
好ましい実施形態において、結晶化に使用されるL-フコースの水溶液は、50%(w/w)超、好ましくは60%(w/w)超、好ましくは70%(w/w)超、特に80%(w/w)超の炭水化物含量を有する。
【0143】
あるいは、結晶化に使用される水溶液中のL-フコース濃度は、650~950g/l、好ましくは800~880g/lである。
上記濃度範囲および比率は、好ましくは、前に説明した方法を使用することにより培養ブロスから例えば細胞、色彩付与物質、塩および/または電荷を有する分子を除去した後に、培養ブロスからの水性プロセスストリームを濃縮することによって、従来の様式で達成され得る。
【0144】
L-フコース含有溶液の濃縮は、ナノ濾過および/または真空蒸発(例えば回転蒸発器またはプレート蒸発器の使用による)、好ましくは真空蒸発と組み合わせたナノ濾過により、水を除去することによって達成され得る。
【0145】
結晶化を開始するために、20℃~50℃の間、好ましくは25℃の温度の前述の濃縮L-フコース溶液にシード結晶が添加され得る。
濃縮溶液中、L-フコースは、好ましくは、特に75%(w/w)超の炭水化物濃度を有する。
【0146】
L-フコースを含む溶液は、真空下、好ましくは200ミリバール未満の圧力、より好ましくは100ミリバールr未満の圧力、特に50ミリバール未満の圧力でインキュベートされ得る。
【0147】
さらに、L-フコースを含む溶液は、15℃~60℃の間、好ましくは20℃~45℃の間、より好ましくは25℃~40℃の間、特に30℃~35℃の間の温度でインキュベートされ得る。
【0148】
さらに、L-フコースを含む溶液は、炭水化物濃度が85%超、好ましくは90%超となるまで、または粘凋性結晶化パルプ(viscous crystallization pulp)が生成するまでインキュベートされ得る。
【0149】
L-フコースを含む溶液(結晶化混合物)は、次いで好適な結晶化槽内に設置され、室温(25℃)で12~96時間、固体結晶化塊が形成されるまでインキュベートされ得る。
【0150】
結晶化塊は機械的に破砕され得、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、イソプロパノールおよび/またはエタノール、好ましくはエタノールが、結晶溶液に添加され得る。L-フコース結晶を溶解するために、1kgの結晶化材料が、0.5~3lのエタノール、好ましくは0.7~2.0lのエタノール、より好ましくは1.0~1.5lのエタノールと混合される。
【0151】
L-フコース結晶は、(真空ありもしくはなしでの)濾過により、または遠心分離により液相から除去され得る。残りの母液を除去するために、結晶は、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、イソプロパノールおよび/またはエタノール、好ましくはエタノールで洗浄される。残りの母液を除去するために、1kgの結晶化L-フコースが、0.5~3l、好ましくは0.7~2.0l、より好ましくは1.0~1.5lのエタノールで好ましくは洗浄される。
【0152】
得られた結晶は、4~48時間、好ましくは8~36時間、より好ましくは12~24時間、または重量の変化が観察され得なくなるまで乾燥され得る。乾燥温度は、10℃~80℃の間、好ましくは20℃~70℃の間、より好ましくは30℃~60℃の間、特に40℃~50℃の間となるように選択される。
【0153】
水溶液からのL-フコースの結晶化に関して、有機溶媒を使用して水溶液からL-フコースを結晶化するための第2の代替の方法が、本明細書において説明される。
好ましい実施形態において、結晶化に使用されるL-フコースの水溶液は、40%(w/w)超、好ましくは50%(w/w)超、好ましくは60%(w/w)超、特に70%(w/w)超の炭水化物含量を有する。
【0154】
あるいは、結晶化に使用される水溶液中のL-フコース濃度は、650~850g/l、好ましくは700~780g/lであってもよい。
上記濃度範囲および比率は、好ましくは、前に説明した方法を使用することにより培養ブロスから例えば細胞、色彩付与物質、塩および/または電荷を有する分子を除去した後に、培養ブロスからの水性プロセスストリームを濃縮することによって、従来の様式で達成され得る。
【0155】
L-フコース含有溶液の濃縮は、ナノ濾過および/または真空蒸発(例えば回転蒸発器またはプレート蒸発器の使用による)により、水を除去することによって達成され得る。好ましくは、ナノ濾過は、真空蒸発と組み合わせて使用される。
【0156】
L-フコースを含む溶液の濃縮後、溶液は、特に70%(w/w)超のL-フコース炭水化物濃度を有する。結晶化アプローチから残りの水を除去するために、0.5倍体積のブタノールが溶液に添加され得る。次いで、結晶化アプローチは、真空下、真空蒸留により等量の添加液体が除去されるまでインキュベートされ得る。
【0157】
結晶化を開始するために、前述の濃縮L-フコース溶液にシード結晶が添加され得るが、この溶液は、好ましくは、20℃~50℃の間、好ましくは25℃の温度である。
結晶化は、好ましくは、200ミリバール未満、より好ましくは100ミリバール未満、特に50ミリバール未満の圧力で行われてもよい。
【0158】
さらに、結晶化は、15℃~60℃の間、好ましくは20℃~45℃の間、より好ましくは25℃~40℃の間、特に30℃~35℃の間の結晶化溶液の温度で行われてもよい。
【0159】
さらに、結晶化溶液は、炭水化物濃度が85%超、好ましくは90%超となるまで、または粘凋性結晶化パルプが発生するまでインキュベートされ得る。
結晶化混合物は、次いで好適な結晶化槽内に設置され、室温(25℃)で12~96時間、固体結晶化塊が形成されるまでインキュベートされ得る。
【0160】
結晶化塊は機械的に破砕され得、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、イソプロパノールおよび/またはエタノール、好ましくはエタノールが、結晶化塊に添加され得る。L-フコース結晶を溶解するために、1kgの結晶化材料が、0.5~3lのエタノール、好ましくは0.7~2.0lのエタノール、より好ましくは1.0~1.5lのエタノールと好ましくは混合される。
【0161】
L-フコース結晶は、真空ありもしくはなしでの濾過、または遠心分離により液相から除去され得る。残りの母液を除去するために、結晶は、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、イソプロパノールおよび/またはエタノール、好ましくはエタノールで洗浄され得る。残りの母液を除去するために、1kgの結晶化L-フコースが、0.5~3l、好ましくは0.7~2.0l、より好ましくは1.0~1.5lのエタノールで好ましくは洗浄される。
【0162】
得られた結晶は、4~48時間、好ましくは8~36時間、より好ましくは12~24時間、または重量の変化が観察され得なくなるまで乾燥され得る。乾燥温度は、10℃~80℃の間、好ましくは20℃~70℃の間、より好ましくは30℃~60℃の間、特に40℃~50℃の間で選択され得る。
【0163】
L-フコースの凍結乾燥形態の提供
L-フコースを含む精製溶液はまた、凍結乾燥されてもよい。この凍結乾燥において、L-フコースを含む精製溶液は凍結され、次いで、凍結した水が固相から気相に直接昇華するように減圧される。この方法は通常、吸湿性のL-フコース粉末を生成する。
【0164】
本発明により提供される組成物および製品
本発明によれば、
a)少なくとも95wt.%のL-フコース;
b)最大1wt.%の有機溶媒;および
c)最大1wt.%の塩
を含む組成物が提供される。
【0165】
好ましい実施形態において、組成物は、
a)95.50~100.00wt.%のL-フコース、好ましくは98.00~100.00wt.%のL-フコース、より好ましくは98.50~100.00wt.%のL-フコース、任意選択で98.70~99.90wt.%のL-フコース;および/または
b)0.00~1.00wt.%の有機溶媒、好ましくは0.00~0.50wt.%の有機溶媒、より好ましくは0.00~0.40wt.%の有機溶媒、任意選択で0.10~0.20wt.%の有機溶媒;および/または
c)0.00~1.00wt.%の塩、好ましくは0.00~0.50wt.%の塩、より好ましくは0.00~0.40wt.%の塩、任意選択で0.10~0.20wt.%の塩を含む。
【0166】
好ましくは、組成物は、
a)0.00~0.50wt%のタンパク質、より好ましくは0.00~0.40wt%のタンパク質、任意選択で0.10~0.20wt%のタンパク質;および/または
b)0.00~0.50wt%のDNA、より好ましくは0.00~0.40wt%のDNA、任意選択で0.10~0.20wt%のDNA
(のみ)を含む。
【0167】
組成物は、L-フコースが、非晶質形態または結晶形態で、好ましくは顆粒形態または結晶形態で存在することを特徴とし得る。結晶形態は、好ましくは二水和物結晶形態である。
【0168】
ヒトミルクは、乳児の最善の栄養源である。ヒトミルクは、遊離L-フコースを含む。フコースは、ヒトにより吸収され、GDP-フコースへのフコースサルベージ経路により活性化され得ることが知られている。次いで、GDP-フコースは、免疫認識および脳の発達等の細胞間伝達(commination)プロセスにおいて重要なフコシル化グリカンの合成に使用される。
【0169】
食品組成物、好ましくは乳児用食品フォーミュラ、幼児用食品フォーミュラまたは医療用栄養製品が提供され、食品組成物は、L-フコース、およびプロバイオティクス炭水化物(例えばガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、マルトデキストリン、イソマルトース、ラクツロース等)または別の単糖(例えばN-アセチル-ノイラミン酸等のシアル酸)を含む。
【0170】
食品組成物、好ましくは乳児用食品フォーミュラ、幼児用食品フォーミュラまたは医療用栄養製品は、L-フコースおよび少なくとも1種のヒトミルクオリゴ糖を含んでもよい。
【0171】
食品組成物は、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-フココペンタオース(fucocopentaose)I、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ジフコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトースおよびシアリル化ラクト-N-ネオテトラオースおよびラクト-N-テトラオース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の糖を含んでもよい。
【0172】
食品組成物は、
i)液体食品組成物であってもよく、1mg/l~2g/lの濃度、より好ましくは5mg/l~1.5g/lの濃度、より一層好ましくは20mg/l~1g/lの濃度、最も好ましくは50mg/l~0.7g/lの濃度のL-フコースを含む;または
ii)固体食品組成物であってもよく、5mg/kg~15g/kgの濃度、より好ましくは25mg/kg~10g/kgの濃度、より一層好ましくは100mg/kg~10g/kgの濃度、最も好ましくは375mg/kg~5.25g/kgの濃度のL-フコースを含む。
【0173】
食品組成物は、L-フコース(上記参照)と同じ濃度(範囲)のシアル酸(例えばN-アセチルノイラミン酸)を含んでもよい。
食品組成物は、
i)少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖、好ましくは2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖、最も好ましくはその中性ヒトミルクオリゴ糖の全て;ならびに
ii)少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖、好ましくは3’-シアリルラクトースおよび6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖、最も好ましくはその酸性ヒトミルクオリゴ糖の全て;ならびに
iii)シアル酸(例えばN-アセチルノイラミン酸)
を含んでもよい。
【0174】
組成物は、さらに、ラクトース、乳清タンパク質、ビオチン、無脂肪乳、植物油、脱脂粉乳、モルティエラ・アルピン(Mortierella alpine)の油、魚油、炭酸カルシウム、塩化カリウム、ビタミンC、塩化ナトリウム、ビタミンE、酢酸鉄、硫酸亜鉛、ナイアシン、カルシウム-D-パントテネート、硫酸銅、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、硫酸マグネシウム、ヨウ化カリウム、葉酸、ビタミンK、亜セレン酸ナトリウムおよびビタミンDからなる群から選択される少なくとも1種の物質、任意選択で全ての物質を含んでもよい。
【0175】
食品組成物は、タンパク質源、ビタミン、油、ミネラル、酵素、さらなる炭水化物およびプロバイオティクス株からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでもよい。
【0176】
食品組成物は、医療用食品組成物、健康補助食品、小袋製品、液体の即時使用可能な乳児用栄養製品、液体の即時使用可能な幼児用栄養製品、顆粒化製品、噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品、およびそれらの組合せからなる群から選択される組成物であってもよい。
【0177】
さらに、1mg/l~2g/lの濃度のL-フコース、シアル酸(例えばN-アセチルノイラミン酸)(好ましくは1mg/l~2g/lの濃度)、ならびに
i)2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖;ならびに/または
ii)3’-シアリラクトース(sialylactose)または6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖
を含む、液体の即時使用可能な乳児または幼児用栄養製品が提供される。
【0178】
本発明はまた、5mg/kg~15g/kgの濃度のL-フコース、シアル酸(例えばN-アセチルノイラミン酸)(好ましくは5mg/kg~15g/kgの濃度)、ならびに
i)2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖;ならびに/または
ii)3’-シアリルラクトースおよび6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖
を含む、噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品を提供する。
【0179】
さらに、L-フコース、ならびに2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースIからなる群から選択される少なくとも1種の中性HMOを含む健康補助食品が提供される。
【0180】
本発明によれば、L-フコース、ならびにタンパク質源、ビタミン、油、ミネラル、酵素、さらなる炭水化物(例えばプレミックス中にすでに存在するL-フコースとは異なる炭水化物)およびプロバイオティクス株からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、食品用のプレミックス(例えば乳児または幼児用食品フォーミュラ用のプレミックス)が提供される。より好ましくは、プレミックスは、これらの物質の全てを含む。
【0181】
タンパク質源は、乳清、トウモロコシ大豆ブレンド(CSB)、タンパク質加水分解物およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
ビタミンは、ビタミンA、チアミン、リボフラビン、ビタミンB12、フォレートおよびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0182】
油は、パーム油、DHA、アラキドン酸およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
ミネラルは、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、酸化亜鉛およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0183】
酵素は、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ(amyloglcosidase)およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
炭水化物は、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ラクトース、イソマルトース、シアル酸およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0184】
プロバイオティクス株は、ラクトバチルス、ビフィドバクテリア、バチルス、酵母およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
プレミックスは、粉末乾燥、顆粒化または液体(シロップ)製品の形態であってもよい。
【0185】
本発明によれば、医薬組成物、好ましくはウイルス感染、細菌感染(改善された免疫機能)、記憶障害、脳の発達および腸内毒素症の少なくとも1つの予防または処置における使用のための医薬組成物が提供される。医薬組成物は、本発明による組成物を含み、任意選択で、L-フコースとは異なる少なくとも1種の糖および/または少なくとも1種のプロバイオティクス細菌株を含み、少なくとも1種の糖は、好ましくは、ラクトース、ラクツロース、イヌリンおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種の糖である。
【0186】
本発明による全ての組成物(例えば食品組成物、液体の即時使用可能な乳児または幼児用栄養製品、噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品、健康補助食品およびプレミックス)は、以下の特徴の少なくとも1つを特徴とし得る。
【0187】
組成物は、好ましくはラクトースを含む。
固体組成物の場合、ラクトースの濃度は、50~800g/kg、好ましくは100~750g/kg、より好ましくは200~700g/kg、より一層好ましくは300~650g/kg、最も好ましくは400~600、特に440~560g/kgであってもよい。
【0188】
液体組成物の場合、ラクトースの濃度は、10~95g/L、好ましくは20~90g/L、より好ましくは30~85g/L、より一層好ましくは40~80g/L、最も好ましくは50~75g/L、特に60~74g/Lであってもよい。
【0189】
組成物中にラクトースを有することは、その組成物を食品として消費する人の健康への好ましい効果に関連することが見出された。この効果は、ラクトースと本発明の組成物中に存在する他の成分(例えばフコース、シアル酸、中性HMOおよび酸性HMO)との組合せ効果に起因する。ラクトースは、他の成分と共に、病原性細菌から体を保護し、組成物を消費する人の胃腸管内での炎症反応を調整するように連携して作用すると推測される。
【0190】
組成物は、好ましくは、最大量のHMO(酸性および中性HMO)を含む。
固体組成物の場合、HMOの最大濃度は、20~70g/kg、好ましくは25~65g/kg、より好ましくは30~60g/kg、より一層好ましくは35~55g/kg、最も好ましくは40~50、特に42.2~48.1g/kgの範囲内であってもよい。
【0191】
液体組成物の場合、HMOの最大濃度は、2.0~9.0g/L、好ましくは3.0~8.0g/L、より好ましくは4.0~7.0g/L、より一層好ましくは4.5~6.5g/L、最も好ましくは5.0~7.0g/L、特に5.7~6.5g/Lであってもよい。
【0192】
組成物は、好ましくは、ある特定の濃度のHMOを含む。
固体組成物の場合、2’-FLの濃度は、5~40g/kg、好ましくは10~35g/kg、より好ましくは12.5~30g/kg、最も好ましくは15~25g/kg、特に18.5~22.2g/kgであってもよい。
【0193】
液体組成物の場合、2’-FLの濃度は、0.5~5.5g/L、好ましくは1.0~4.5g/L、より好ましくは1.5~4.0g/L、最も好ましくは2.0~3.5g/L、特に2.5~3.0g/Lであってもよい。
【0194】
固体組成物の場合、3’-FLの濃度は、3.5~7.5g/kg、好ましくは4.0~7.0g/kg、より好ましくは4.5~6.5g/kg、最も好ましくは5.0~6.0g/kg、特に5.5~5.9g/kgであってもよい。
【0195】
液体組成物の場合、3’-FLの濃度は、500~1000mg/L、好ましくは600~950mg/L、より好ましくは650~900mg/L、最も好ましくは700~850mg/L、特に750~800mg/Lであってもよい。
【0196】
固体組成物の場合、LNTの濃度は、7~15g/kg、好ましくは8~14g/kg、より好ましくは9~13g/kg、最も好ましくは10~12g/kg、特に11.1g/kgであってもよい。
【0197】
液体組成物の場合、LNTの濃度は、0.2~3.5g/L、好ましくは0.4~3.0g/L、より好ましくは0.8~2.5g/L、最も好ましくは1.0~2.0g/L、特に1.5g/Lであってもよい。
【0198】
固体組成物の場合、3’-SLの濃度は、0.4~3.5g/kg、好ましくは0.8~3.0g/kg、より好ましくは1.0~2.5g/kg、最も好ましくは1.4~2.0g/kg、特に1.48~1.7g/kgであってもよい。
【0199】
液体組成物の場合、3’-SLの濃度は、50~400mg/L、好ましくは100~350mg/L、より好ましくは150~300mg/L、最も好ましくは180~250mg/L、特に200~230mg/Lであってもよい。
【0200】
固体組成物の場合、6’-SLの濃度は、0.5~3.5g/kg、好ましくは1.0~3.0g/kg、より好ましくは1.5~2.5g/kg、最も好ましくは2.0~2.3g/kg、特に2.07~2.22g/kgであってもよい。
【0201】
液体組成物の場合、6’-SLの濃度は、100~500mg/L、好ましくは150~450mg/L、より好ましくは200~400mg/L、最も好ましくは250~350mg/L、特に280~300mg/Lであってもよい。
【0202】
固体組成物の場合、LNnTの濃度は、0.2~3.5g/kg、好ましくは0.4~1.8g/kg、より好ましくは0.8~1.4g/kg、最も好ましくは1.0~1.2g/kg、特に1.11g/kgであってもよい。
【0203】
液体組成物の場合、LNnTの濃度は、10~350mg/L、好ましくは20~300mg/L、より好ましくは50~250mg/L、最も好ましくは100~200mg/L、特に150mg/Lであってもよい。
【0204】
固体組成物の場合、LNFP-Iの濃度は、1.0~10.0g/kg、好ましくは3.0~9.0g/kg、より好ましくは6.0~8.0g/kg、最も好ましくは7.0~7.5g/kg、特に7.4g/kgであってもよい。
【0205】
液体組成物の場合、LNFP-Iの濃度は、0.1~2.0g/L、好ましくは0.3~1.5g/L、より好ましくは0.6~1.2g/L、最も好ましくは0.8~1.1g/L、特に1.0g/Lであってもよい。
【0206】
組成物がプレミックスの場合、上述の濃度は、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも8倍、より一層好ましくは少なくとも16倍、最も好ましくは少なくとも20倍、特に少なくとも22倍高くてもよい。
【0207】
例示的食品組成物
本発明の方法は、特に乳児および幼児用栄養製品に含めるのに有用な、食品または食事用途での使用を可能にするのに十分な純度の目的とするL-フコースを提供する。得られるL-フコースは、それを乳児用ベースフォーミュラの成分と混合することにより、乳児用フォーミュラの調製に使用され得る。乳児用フォーミュラは、粉末フォーミュラまたは即時使用可能な液体乳児用フォーミュラであってもよい。
【0208】
ベースフォーミュラは、以下の成分の少なくとも1つ、任意選択で全てを有し得る。
【表A】
【0209】
本発明の組成物の使用
食品組成物および/または医薬組成物の製造における本発明の組成物の使用が提案される。
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1
発酵ブロスからL-フコースを精製するための方法であって、
L-フコースを含む発酵ブロスからバイオマスを除去する工程であり、清澄化溶液が提供される工程と、
カチオン性イオン交換処理、および
アニオン性イオン交換処理
に清澄化溶液を供することによって、精製溶液を提供する工程と、
電気透析および/またはナノ濾過によって精製溶液から塩を除去する工程と
を含む方法。
態様2
L-フコースがカチオン性イオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下でカチオン性イオン交換処理が行われ、L-フコースがアニオン交換材料を通過し、通過液中に存在する条件下でアニオン性イオン交換処理が行われる、態様1に記載の方法。
態様3
バイオマスが、
i)遠心分離および/もしくは濾過によって発酵ブロスから除去され、濾過は、好ましくは、精密濾過、限外濾過、クロスフロー濾過、透析濾過およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
ii)L-フコースを生成する細胞、好ましくは細菌細胞、より好ましくは組換え細菌細胞、最も好ましくは組換え大腸菌細胞、組換えバチルス属細胞および/もしくは組換えコリネバクテリウム属細胞、特に組換え枯草菌および/もしくは組換えバチルス・メガテリウムを含む、態様1または2に記載の方法。
態様4
カチオン性イオン交換処理において強カチオン性イオン交換体が使用される、および/またはアニオン性イオン交換処理において強アニオン交換体が使用される、態様1~3のいずれかに記載の方法。
態様5
カチオン性イオン交換処理が、不特定のカチオンを除去してそれらを特定のカチオンで置き換えるために、好ましくはそれらを特定のカチオンH またはNa で置き換えるために行われ、不特定のカチオンがH で置き換えられる場合、通過液のpHは、好ましくは、さらなる処理工程を行う前に6~8のpHに、最も好ましくはNaOHを通過液に添加することによって、調整される、態様1~4のいずれかに記載の方法。
態様6
アニオン交換工程が、不特定のアニオンを除去してそれらを特定のアニオンで、好ましくは特定のアニオンCl またはOH で置き換えるために行われ、不特定のアニオンがCl で置き換えられる場合、通過液のpHは、好ましくは、さらなる処理工程を行う前に6~8のpHに、最も好ましくはNaOHを通過液に添加することによって、調整される、態様1~5のいずれかに記載の方法。
態様7
L-フコースがアニオン交換材料およびカチオン交換材料を通過する条件が、清澄化溶液のpHおよび/または塩濃度を調整することによって、好ましくは清澄化溶液のpHを6~8の範囲内のpHに調整することによって確立される、態様1~6のいずれかに記載の方法。
態様8
カチオン性イオン交換処理およびアニオン性イオン交換処理後、精製溶液が、L-フコース、色彩付与物質および塩を含み、塩は、好ましくはNaClである、態様1~7のいずれかに記載の方法。
態様9
アニオン性イオン交換処理において、塩化物形態のアニオン交換材料が使用され、および/またはカチオン性イオン交換処理において、水素形態のカチオン性イオン交換材料が使用される、態様1~8のいずれかに記載の方法。
態様10
清澄化溶液が、まずカチオン性イオン交換処理に供され、その後アニオン性イオン交換処理に供される、態様1~9のいずれかに記載の方法。
態様11
精製溶液が、好ましくはナノ濾過および/または逆浸透によって、より好ましくはナノ濾過によって濃縮され、最も好ましくは、100~200kDaの範囲内の分子量カットオフを有するナノ濾過膜が使用される、態様1~10のいずれかに記載の方法。
態様12
清澄化溶液および/または精製溶液が、
i)100g/L以上、好ましくは200g/L以上、より好ましくは300g/L以上のL-フコース濃度まで濃縮される;および/または
ii)80℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは4℃~45℃、より好ましくは10℃~40℃、より一層好ましくは15℃~30℃、最も好ましくは15℃~20℃の温度でのナノ濾過によって濃縮される;および/または
iii)20℃~50℃、より好ましくは30℃~45℃、最も好ましくは35℃~45℃の温度での逆浸透によって濃縮される;および/または
iv)5バール超50バール未満の間の圧力、好ましくは10バール超40バール未満の間の圧力、より好ましくは15バール超30バール未満の間の圧力でのナノ濾過によって濃縮される;および/または
v)5バール超100バール未満の間の圧力、好ましくは10バール超80バール未満の間の圧力、より好ましくは15バール超70バール未満の間の圧力での逆浸透によって濃縮される、態様1~11のいずれかに記載の方法。
態様13
電気透析が、中性条件下での電気透析または酸性条件下での電気透析である、態様1~12のいずれかに記載の方法。
態様14
精製溶液から塩を除去した後に、
i)精製溶液中の塩の量が、10%(w/w)未満、好ましくは5%(w/w)未満、より好ましくは1%(w/w)以下、より一層好ましくは0.5%(w/w)以下、最も好ましくは0.4%(w/w)以下、特に0.2%(w/w)以下である;および/または
ii)導電率が、0.2mS/cm ~10.0mS/cm の間、好ましくは0.4mS/cm ~5.0mS/cm の間、より好ましくは0.5mS/cm ~1.0mS/cm の間である、態様1~13のいずれか一項に記載の方法。
態様15
清澄化溶液および/または精製溶液が、好ましくは活性チャコールでの処理ならびに/または直列に結合されたカチオン性イオン交換体およびアニオン性イオン交換体での処理による、変色の工程に供され、前記除去が、任意選択で、
i)清澄化溶液の透析濾過および/もしくは濃縮の工程の前もしくは後に行われる;ならびに/または
ii)清澄化溶液の電気透析および/もしくは透析濾過の工程の前もしくは後に行われる、態様1~14のいずれかに記載の方法。
態様16
精製溶液が、
i)顆粒化;
ii)噴霧乾燥;
iii)ローラー乾燥;または
iv)凍結乾燥
に供される、態様1~15のいずれかに記載の方法。
態様17
精製溶液が、任意選択でブタノールを精製溶液に添加することによってまたはいかなる有機溶媒も精製溶液に添加せずに、結晶化に供される、態様1~16のいずれかに記載の方法。
態様18
1.少なくとも95.00wt.%のL-フコース;
2.最大1.00wt.%の有機溶媒;および
3.最大1.00wt.%の塩
を含む組成物。
態様19
a)95.50~100wt.%のL-フコース、好ましくは98.00~100.00wt.%のL-フコース、より好ましくは98.50~100.00wt.%のL-フコース、任意選択で98.70~99.90wt.%のL-フコース;および/または
b)0.00~1.00wt.%の有機溶媒、好ましくは0.00~0.50wt.%の有機溶媒、より好ましくは0.00~0.40wt.%の有機溶媒、任意選択で0.10~0.200wt.%の有機溶媒;および/または
c)0.00~1.00wt.%の塩、好ましくは0.00~0.50wt.%の塩、より好ましくは0.00~0.40wt.%の塩、任意選択で0.10~0.20wt.%の塩
を含む、態様18に記載の組成物。
態様20
L-フコースが、非晶質形態または結晶形態で、好ましくは顆粒形態または結晶形態で存在する、態様18または19に記載の組成物。
態様21
L-フコース、ならびにガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、ラクツロース、イソマルトース、マルトデキストリン、ラクトースおよびヒトミルクオリゴ糖から選択される少なくとも1種の他の炭水化物を含む食品組成物、好ましくは乳児用食品フォーミュラ、幼児用食品フォーミュラまたは医療用栄養製品。
態様22
2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ジフコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトースおよびシアリル化ラクト-N-ネオテトラオースおよびラクト-N-テトラオース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のヒトミルクオリゴ糖を含む、態様21に記載の食品組成物。
態様23
i)液体食品組成物であり、1mg/l~2g/lの濃度、より好ましくは5mg/l~1.5g/lの濃度、より一層好ましくは20mg/l~1g/lの濃度、最も好ましくは50mg/l~0.7g/lの濃度のL-フコースを含む;または
ii)固体食品組成物であり、5mg/kg~15g/kgの濃度、より好ましくは25mg/kg~10g/kgの濃度、より一層好ましくは100mg/kg~10g/kgの濃度、最も好ましくは375mg/kg~5.25g/kgの濃度のL-フコースを含む、態様21または22に記載の食品組成物。
態様24
i)少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖、好ましくは2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖、最も好ましくは前記中性ヒトミルクオリゴ糖の全て;ならびに
ii)少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖、好ましくは3’-シアリルラクトースおよび6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖、最も好ましくは前記酸性ヒトミルクオリゴ糖の全て;ならびに
iii)シアル酸、好ましくはN-アセチルノイラミン酸を含む、態様21~23のいずれかに記載の食品組成物。
態様25
ラクトース、乳清タンパク質、ビオチン、無脂肪乳、植物油、脱脂粉乳、モルティエラ・アルピン(Mortierella alpine)の油、魚油、炭酸カルシウム、塩化カリウム、ビタミンC、塩化ナトリウム、ビタミンE、酢酸鉄、硫酸亜鉛、ナイアシン、カルシウム-D-パントテネート、硫酸銅、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、硫酸マグネシウム、ヨウ化カリウム、葉酸、ビタミンK、亜セレン酸ナトリウムおよびビタミンDからなる群から選択される少なくとも1種の物質、任意選択で全ての物質を含む、態様21~24のいずれかに記載の食品組成物。
態様26
タンパク質源、ビタミン、油、ミネラル、酵素、さらなる炭水化物およびプロバイオティクス株からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、態様21~25のいずれかに記載の食品組成物。
態様27
医療用食品組成物、健康補助食品、小袋製品、液体の即時使用可能な乳児用栄養製品、液体の即時使用可能な幼児用栄養製品、顆粒化製品、噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品、およびそれらの組合せからなる群から選択される組成物である、態様21~26のいずれかに記載の食品組成物。
態様28
1mg/l~2g/lの濃度のL-フコース、シアル酸ならびに
i)2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖;ならびに/または
ii)3’-シアリラクトースまたは6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖
を含む、液体の即時使用可能な乳児または幼児用栄養製品。
態様29
5mg/kg~15g/kgの濃度のL-フコース、シアル酸ならびに
i)2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオースからなる群から選択される少なくとも1種の中性ヒトミルクオリゴ糖;ならびに/または
ii)3’-シアリルラクトースおよび6’-シアリルラクトースからなる群から選択される少なくとも1種の酸性ヒトミルクオリゴ糖
を含む、噴霧乾燥乳児用フォーミュラ製品。
態様30
L-フコース、ならびに2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオースおよびラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースIからなる群から選択される少なくとも1種の中性HMOを含む健康補助食品。
態様31
L-フコース、ならびにタンパク質源、ビタミン、油、ミネラル、酵素、さらなる炭水化物およびプロバイオティクス株からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、好ましくは噴霧乾燥、顆粒化または液体製品の形態の、プレミックスであって、好ましくは、
i)タンパク質源は、乳清、トウモロコシ大豆ブレンド、タンパク質加水分解物およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
ii)ビタミンは、ビタミンA、チアミン、リボフラビン、ビタミンB12、フォレートおよびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
iii)油は、パーム油、DHA、アラキドン酸およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
iv)ミネラルは、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、酸化亜鉛およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
v)酵素は、アミラーゼ、アミログルコシダーゼおよびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
vi)炭水化物は、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン(FOS)、ラクトース、イソマルトース、シアル酸およびそれらの組合せからなる群から選択される;ならびに/または
vii)プロバイオティクス株は、(カプセル化)ラクトバチルス、ビフィドバクテリア、バチルス、酵母およびそれらの組合せからなる群から選択される、プレミックス。
態様32
態様18~20のいずれかに記載の組成物を含み、任意選択で、L-フコースとは異なる少なくとも1種の糖および/または少なくとも1種のプロバイオティクス細菌株を含み、少なくとも1種の糖は、好ましくは、ラクトース、ラクツロース、イヌリンおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種の糖である、好ましくはウイルス感染、細菌感染、記憶障害および腸内毒素症の少なくとも1つの予防または処置における使用のための、医薬組成物。
態様33
食品組成物および/または医薬組成物の製造における、態様18~20のいずれかに記載の組成物の使用。
【0210】
以下の図面および実施例を参照しながら、本発明による主題をより詳細に説明するが、その主題を本明細書に示す特定の態様に限定することは望まない。
【図面の簡単な説明】
【0211】
図1図1は、L-フコースを精製するための本発明の方法の例を示す。発酵後、発酵ブロスは遠心分離および/または濾過により清澄化される。清澄化発酵ブロスは、電荷を有する汚染物の除去および不特定イオンの特定イオンへの交換のために、イオン交換処理に供される。次いで、イオン交換処理の通過液は、透析濾過および/または濃縮に供される。この工程後、L-フコースを含む溶液は、電気透析および/または透析濾過に供される。次いで、L-フコースを含む溶液は、電荷を有する有色物質およびペプチドの除去のためにさらなるイオン交換処理に供される。その後、L-フコースを含む溶液は、活性チャコール処理に供される。次いで、溶液は、L-フコースの結晶化に供されるか、またはさらなる電気透析および/もしくは透析濾過工程とその後の顆粒化および/もしくは噴霧乾燥に供される。
図2図2は、L-フコースを精製するための本発明の第2の方法の例を示す。発酵後、発酵ブロスは遠心分離および/または濾過により清澄化される。清澄化発酵ブロスは、電荷を有する汚染物の除去および不特定イオンの特定イオンへの交換のために、イオン交換処理に供される。次いで、イオン交換処理の通過液は、透析濾過および/または濃縮に供される。この工程後、L-フコースを含む溶液は、電気透析および/または透析濾過に供される。次いで、L-フコースを含む溶液は、活性チャコール処理に供される。その後、L-フコースを含む溶液は、電荷を有する有色物質およびペプチドの除去のためにさらなるイオン交換処理に供される。次いで、溶液は、L-フコースの結晶化に供されるか、またはさらなる電気透析および/もしくは透析濾過工程とその後の顆粒化および/もしくは噴霧乾燥に供される。
図3図3は、L-フコースを精製するための本発明の第3の方法の例を示す。発酵後、発酵ブロスは遠心分離および/または濾過により清澄化される。清澄化発酵ブロスは、透析濾過および/または濃縮に供される。次いで、溶液は、電荷を有する汚染物の除去および不特定イオンの特定イオンへの交換のために、イオン交換処理に供される。この工程後、L-フコースを含む溶液は、電気透析および/または透析濾過に供される。次いで、L-フコースを含む溶液は、活性チャコール処理に供される。その後、L-フコースを含む溶液は、電荷を有する有色物質およびペプチドの除去のためにさらなるイオン交換処理に供される。次いで、溶液は、L-フコースの結晶化に供されるか、またはさらなる電気透析および/もしくは透析濾過工程とその後の顆粒化および/もしくは噴霧乾燥に供される。
図4図4は、L-フコースを精製するための本発明の第4の方法の例を示す。発酵後、発酵ブロスは遠心分離および/または濾過により清澄化される。清澄化発酵ブロスは、透析濾過および/または濃縮に供される。次いで、溶液は、活性チャコール処理に供される。この工程後、L-フコースを含む溶液は、電荷を有する汚染物の除去および不特定イオンの特定イオンへの交換のために、イオン交換処理に供される。その後、L-フコースを含む溶液は、電気透析および/または透析濾過に供される。その後、溶液は、電荷を有する有色物質およびペプチドの除去のためにさらなるイオン交換処理に供される。次いで、溶液は、L-フコースの結晶化に供されるか、またはさらなる電気透析および/もしくは透析濾過工程とその後の顆粒化および/もしくは噴霧乾燥に供される。
図5図5は、水溶液からの結晶化により形成されたL-フコースの結晶の顕微鏡写真を示す。L-フコースは、50μm~150μmの長さを有する針状結晶を形成することが観察され得る。
図6図6は、水溶液から結晶化されたL-フコースに対して記録されたHPLCダイアグラムを示す。結晶化したL-フコースの純度は、99.8%として検出される。含水率は0.1%(w/w)である。
図7図7は、水溶液から顆粒化されたL-フコースに対して記録されたHPLCダイアグラムを示す。顆粒化したL-フコースの純度は、97.8%として検出される。含水率は1.7%(w/w)である。
【実施例
【0212】
実施例1
細菌発酵からのL-フコースの精製
細菌発酵によりL-フコースを生成し、濾過により採取した。得られた透明な、粒子を含まないL-フコース溶液(34g/l)を、強カチオン性イオン交換体(プロトン形態のLewatit(登録商標)S2568、Lanxess)で処理した。水酸化ナトリウムでの中和後、溶液をさらに強アニオン性イオン交換体(塩化物形態のLewatit(登録商標)S6368A)で処理した。
【0213】
イオン交換処理後のL-フコースの濃縮のために、溶液をさらに逆浸透工程によって処理した。Emrich EMRO1.8逆浸透システム(Emrich Edelstahlbau)は、Trisep(登録商標)TS80(80-40-TS80-TSA)ナノ濾過モジュールを備えていた。入口圧力を25バールに設定し、L-フコース濃度が100g/lに達するまで溶液を濃縮した。あるいは、L-フコース溶液はまた、真空蒸発により濃縮されてもよいが、それでも濾過技術は濃縮中のメイラード反応の発生を低減する。
【0214】
イオン交換工程からの塩化ナトリウムおよび他のイオンの除去のために、PCCell ED 1000A膜積層体を備えるPCCell P15電気透析システム(PCell、ドイツ、ホイスヴァイラー)を使用して溶液を電気透析した。その積層体はサイズ排除限界60Daをもつ下記の膜から構成されていた:カチオン交換膜CEM:PC SK、およびアニオン交換膜CEM:PcAcid60。出発溶液の導電率は15~25mS/cmの間であったが、導電率が1.5~2mS/cmとなるまで溶液を電気透析した。
【0215】
電気透析後、溶液を再び強カチオン性イオン交換体(ナトリウム形態のLewatit(登録商標)S2568、Lanxess)および強アニオン性イオン交換体(塩化物形態のLewatit(登録商標)S6368A)で処理し、有色物質および残留し得る不特定イオン(例えばペプチド等)を除去した。
【0216】
有色物質のより厳密な除去のために、L-フコース含有溶液をさらに活性炭粉末で処理した。溶液を撹拌下でNorit DX1活性チャコールと共に2時間インキュベートした。インキュベーション後、活性炭を濾過により除去した。
【0217】
活性炭処理後、CSM RE8040BE逆浸透モジュールを備えるEmrich EMRO1.8逆浸透システム(Emrich Edelstahlbau)を使用して、逆浸透濾過によりL-フコース含有溶液を濃縮した。濾過システムの流速が50リットル/時未満に低下するまで溶液を濃縮した。濃縮後の乾燥物量は、30~35%(w/w)の間であった。
【0218】
あるいは、L-フコースはまた、真空蒸発により濃縮されてもよい。この技術は、より高濃度(50~60%(w/w))のL-フコースをもたらす。真空蒸発による濃縮の欠点は、L-フコースが部分的にカラメル化を生じることであり、これは溶液が明確な褐色に変化することにより明らかである。つまり、生成物品質、生成物純度および生成物収率は、この濃縮法によって低減される。
【0219】
実施例2
有機溶媒の使用によるL-フコースの結晶化
L-フコースの結晶化のために、15リットルの32%(w/w)溶液を、Hei-VAP工業用蒸発器(Heidolph Instruments GmbH、シュヴァーバッハ、ドイツ)を使用した真空蒸発により乾燥物量80~85%(w/w)の最終濃度まで濃縮し、L-フコースの結晶化のための母液を得た。
【0220】
結晶化工程を開始するために、母液にシード結晶を播種した。さらに2.5リットル(ブタノール対フコースの比1:2)のn-ブタノールを添加し、溶液が結晶で飽和するまで溶液を真空下で濃縮した。
【0221】
結晶化塊をピストンから取り出し、固体結晶化塊が得られるまで少なくとも24時間インキュベートした。
固体結晶をエタノールと1対1(1kgの結晶化塊に対して1リットルエタノール)の比で混合した。結晶から母液およびエタノールを除去するために、溶液を遠心分離した。
【0222】
結晶を再びエタノール(5kgのL-フコース結晶に対して2.5リットル)で洗浄し、再び遠心分離した。固体L-フコース結晶を遠心分離物から取り出し、エタノールが残留しなくなるまで40℃で乾燥させた。L-フコースを0.2mm径の篩にかけた。
【0223】
最終的に、5kgのL-フコース結晶化アプローチから3.3kgのL-フコースが得られた(収率:66%)。
実施例3
水溶液からのL-フコースの結晶化
水溶液からのL-フコースの結晶化のために、15リットルの32%(w/w)溶液を、Hei-VAP工業用蒸発器(Heidolph Instruments GmbH、シュヴァーバッハ、ドイツ)を使用した真空蒸発により乾燥物量80%~85%(w/w)の最終濃度まで濃縮した。
【0224】
結晶化工程を開始するために、母液にシード結晶を播種した。溶液を、透明結晶の形成が観察されるまで真空下で濃縮した。
結晶化塊をピストンから取り出し、固体結晶化塊が得られるまで少なくとも72時間インキュベートした。固体結晶をエタノールと1対1(1kgの結晶化塊に対して1リットルエタノール)の比で混合した。
【0225】
結晶から母液およびエタノールを除去するために、溶液を遠心分離した。結晶をエタノール(5kgのL-フコース結晶に対して2.5リットル)で洗浄し、再び遠心分離した。固体L-フコース結晶を遠心分離物から取り出し、エタノールが残留しなくなるまで40℃で乾燥させた。L-フコースを0.2mm径の篩にかけた。
【0226】
最終的に、5kgのL-フコース結晶化アプローチから3.0kgのL-フコースが得られた(収率:60%)。
実施例4
顆粒化によるL-フコースの単離
L-フコースの顆粒化のために、Glatt(Glatt GmbH、ドイツ)からの流動床システムを使用した。L-フコースの結晶化アプローチから、40%(w/w)のL-フコース溶液が提供され、流動床システムにおける顆粒化に使用された。
【0227】
流動床システムは、合計500gの固体L-フコースを備え、システムは、供給溶液を添加することにより開始された。システムは、45℃~50℃の間の生成物温度により安定化された。300gのL-フコース後、第1の凝集体が形成された。1000gの40%(w/w)L-フコース溶液(400gのL-フコース)後、システムを停止し、分析した。
【0228】
顆粒化および80%の回収率の後、570g/lのかさ密度および0.9%の乾燥減量で720gのL-フコースを回収することができた。顆粒化したL-フコースのサイズを、篩い分けにより分析した。この試験は、材料の70%が150μm~1400μmの間のサイズを有することを示している。
【0229】
実施例5
L-フコースの例示的精製における純度
培養ブロスからのL-フコースの例示的精製における純度を、表1に示す。
【0230】
【表1】
【0231】
実施例6
代表的な乳児用フォーミュラ製品の組成物
以下では、代表的な乳児用フォーミュラ製品の組成物が示される(以下の表2を参照されたい)。
【0232】
組成物は、豊富な中性HMOである2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)および任意選択でラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)およびラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、酸性HMO(6’-シアリルラクトース(6’-SL)および3’-シアリルラクトース(3’-SL))、ならびにシアル酸であるN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)と組み合わせたL-フコースを含む。
【0233】
1種または複数種のプロバイオティクス株が製品中に存在してもよい。各成分の最終濃度は、90mlの水中の13.5gの粉末の調製に基づいている。
【0234】
【表2-1】
【0235】
【表2-2】
【0236】
実施例7
ヒトミルクオリゴ糖、単糖L-フコースおよび単糖N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を含む乳児用フォーミュラ製品用の代表的プレミックスの組成物
以下では、乳児用フォーミュラ製品用の代表的プレミックスの組成物が示される(以下の表3を参照されたい)。
【0237】
組成物は、豊富な中性HMOである2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)および任意選択でラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)およびラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ならびに酸性HMO(例えば6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)およびシアリル化LNT誘導体)、ならびにシアル酸であるN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)と組み合わせた単糖L-フコースを含む。
【0238】
プレミックスは、乳清、ラクトース、脂質(飽和および不飽和脂肪酸)ならびにミネラル等の乳児用食品フォーミュラを再構成するために必要な他の栄養製品に前記プレミックスを添加することにより、乳児用フォーミュラに再構成するために使用され得る。表3に示されるプレミックスは、1kgの最終的な乳児用フォーミュラ製品に使用されることが意図される。
【0239】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7