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特許7384795アルミニウム表面材と臭素化プライマー層とが積層されたポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】アルミニウム表面材と臭素化プライマー層とが積層されたポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/095 20060101AFI20231114BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231114BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20231114BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231114BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B32B15/095
B32B15/08 Z
B32B15/20
B32B5/18 101
E04B1/80 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020529256
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018066440
(87)【国際公開番号】W WO2019126292
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】62/607,364
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ストッビー、ウィリアム ジー.
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-148653(JP,A)
【文献】特表平08-508689(JP,A)
【文献】特開平05-043657(JP,A)
【文献】特表平06-502672(JP,A)
【文献】特表2014-527096(JP,A)
【文献】特開2013-230364(JP,A)
【文献】特開平06-049267(JP,A)
【文献】特開昭56-121758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
E04B 1/62- 1/99
C09J 1/00- 5/10、 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有するポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム表面材カバーと、前記発泡体の前記主表面と前記アルミニウム表面材との間に取り付けられたプライマー層と、を含む物品であって、
(A)前記プライマー層が、前記プライマー層中に臭素濃度を有し、プライマー成分と臭素化成分とを含み、前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じ又は異なる成分であり;
(B)前記プライマー層に塩素化成分が含まれておらず、前記プライマー層は摂氏70度より高いガラス転移温度を有しており
(C)前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と前記表面材との間に、繊維マット、繊維生地、及び分散繊維の形態の繊維が存在せず、
前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体がハロゲン化発泡剤を含まないことを特徴とする、物品。
【請求項2】
前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して30重量パーセントより大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して40重量パーセント以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して50重量パーセント以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記臭素化成分が臭素化エポキシ樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
前記臭素化成分が臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/607,364号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、発泡体とアルミニウム箔表面材との間に臭素化プライマー層を有する、アルミニウム箔表面材に取り付けられたポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体を含むポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム表面材を有するポリウレタン(PUR)又はポリイソシアヌレート(PIR)発泡体コアと、それらの間のプライマー層とを含む積層物品は、建築及び建設に使用されている一般的な断熱製品である。例えば、THE DOW CHEMICAL COMPANYは、このような積層物品を「THERMAX」TMの商品名で提供している。このような積層物品の製造には、プライマーを含むプライマー層でアルミニウム表面材をコーティングすることが含まれる。プライマー層でコーティングされたアルミニウム表面材の表面にポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体配合物が付着され、両方がプライマー層のプライマーに結合して、PUR/PIR発泡体が形成される。
【0004】
アルミニウム表面材を有するPUR/PIR発泡積層体物品における課題は、発泡体を加熱し過ぎると発泡体と表面材との間の位置に発泡体からガスが追い出される場合があり、その結果、発泡体から剥離するのに伴い表面材に気泡(ブリスター)が形成されることである。そのような現象は、例えば、PUR/PIR発泡積層体が火にさらされる際に発生する。火災条件により、発泡体のセル壁が破裂し、発泡剤が発泡体から追い出され、その結果これはアルミニウム表面材と発泡体との間に閉じ込められる。十分なガス圧が存在する場合、ガスにより、表面材が発泡体から局所的に層間剥離し、ブリスターが形成される。火災条件では、PUR/PIR発泡積層体の表面に多数のそのようなブリスターが形成される可能性がある。継続して火にさらされるとブリスターが破裂するため、ブリスター内のガスは火の近くで放出される。ガスが可燃性の場合、ブリスターが破裂すると、火に燃料が足され、火が激しくなる。現在の典型的な発泡剤は、シクロペンタン、イソペンタン、及び2,3-ジメチルブタンなどの可燃性炭化水素であるため、ブリスターガスは可燃性になる傾向がある。
【0005】
そのようなブリスターの破裂による火災の激化の問題に対処する1つの方法は、PUR/PIR発泡体の形成において臭素化発泡剤を使用することである。例えば、N-プロピルブロミド(NPB)は、PUR/PIR発泡体で使用される臭素化発泡剤であり、発泡体-箔積層体の可燃性を低下させる。発泡剤が発泡体から追い出されて箔表面材にブリスターを形成する場合、ブリスター内のガスはNPBを含む。NPBのような臭素化成分は難燃剤として機能するため、NPBを含むブリスターが火の近くで破裂すると、燃焼を阻害する臭素ラジカルが形成されるため、臭素の放出に伴い実際にはガスが火災を妨げる。しかしながら、臭素化発泡剤は環境審査の対象となるため、臭素をブリスターガスに導入するためのハロゲン化発泡剤以外の代替手段を見出すことが望ましく、NPBを使用せずにブリスターガス中の炭化水素に対する臭素のレベルを同様にすることがより望ましい。また、炭化水素は燃料として機能するため、ブリスターガス中の臭素に対する炭化水素の比率が低いこと、及びNPBを用いて製造された物品の比率と同様であることが望まれる。更に、ブリスターガス中の臭素の量を減少させることなしに積層物品中の臭素の合計量を減らすことが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、PUL/PIR発泡体と、アルミニウム箔表面材と、それらの間のプライマーとの積層物品を提供することにおける課題の解決手段を提供し、これにより、火災条件において積層物品のアルミニウム箔表面材とPUR/PIR発泡体との間のブリスター中の臭素レベルを、PUR/PIR発泡体の発泡剤としてNPBが存在する場合と同等に得られるが、臭素化発泡剤が必要とされず、また積層物品中の臭素の全体量が減少する。更に、本発明は、ブリスターガス中の炭化水素に対するブリスターガス中の臭素の同様の濃度を提供する。これが本発明の主な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した主な目的を達成するために、臭素化材料を発泡体内の発泡剤としてではなくプライマー層の一部として使用できることを驚くべきことに且つ予期しなかったことに発見した結果である。結果としてブリスターガスに必要とされる場所に最も近いプライマー層に臭素を集中させることができ、発泡体中の臭素化発泡剤から供給される臭素と比較して同様の炭化水素対臭素の比率をブリスターガス中で達成しながらも、全体としてより少ない臭素を積層物品中に存在させることができる。
【0008】
本発明は、NPB含有積層体のブリスターガス中の臭素が、表面から約6ミリメートル下の深さまでの発泡体から主に生じるという仮説の結果である。この仮説に基づくと、表面の下6ミリメートルを超える深さで発泡体中に存在する臭素は、ブリスターガスに寄与しないため、「不必要」である。したがって、ブリスターが形成される発泡体の表面の近くに臭素を選択的に配置すると、臭素がより効率的に利用され、発泡体のコア側により深く存在する臭素を浪費することなく、ブリスターガス中で同じ量の臭素を達成することができる。本発明によりこのような仮説が裏付けられた。
【0009】
更に、驚くべきことには、実際のブリスターが形成されるプライマー層は、積層体中でNPBや他の臭素化発泡剤を使用しなくても、NPBを使用する場合の発泡体中の臭素の総含有量よりもはるかに多い濃度のブリスターガス中の臭素を得るために必要とされる臭素のほとんど又は全てを含み得ることが見出された。プライマー層は、プライマーと臭素化成分とのブレンドを含んでいてもよく、及び/又はプライマー自体が臭素化材料であってもよい。
【0010】
本発明は、PUR/PIR発泡体と、発泡体の主表面上のアルミニウム表面材と、それらの間のプライマー層とを含む積層物品であり、PUR/PIR発泡体は、放出される炭化水素発泡剤の中に臭素を導入できる臭素化難燃剤を含まず、プライマー層は、プライマー成分と臭素化成分を含む。プライマー成分と臭素化成分は、1種類の同じものであってもよく、或いは別個であるが均質にブレンドされた成分であってもよい。
【0011】
第1の態様では、本発明は、主表面を有するポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム表面材カバーと、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体の主表面とアルミニウム表面材との間に取り付けられたプライマー層と、を含む物品であって、(A)プライマー層がプライマー成分と臭素化成分とを含み、プライマー成分と臭素化成分が同じ又は異なる成分であり;(B)プライマー層に塩素化成分が含まれておらず;(C)ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と表面材との間に、繊維マット、繊維生地、及び分散繊維の形態の繊維が存在しないことを特徴とする、物品である。
【0012】
本発明は、断熱物品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以降の詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲、並びにそれらの以前及び以降の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら、本発明は、別途規定のない限り、開示された具体的な組成物、系、及び/又は方法に限定されず、そのため当然変動し得ることが理解されるべきである。本発明の態様は、物質組成の法定分類などの特定の法定分類で説明及び特許請求され得るが、これは便宜上に過ぎず、当業者であれば、本発明の各態様を任意の法定分類において説明及び特許請求できることを理解するであろう。
【0014】
本発明は様々な形態で実施することができるものの、複数の実施形態の以下の説明は、本開示が本発明の例示と見なされるべきであり、例示された具体的な実施形態に本発明が限定されることは意図されていないことを理解して行われる。見出しは便宜上与えられているに過ぎず、いかなる形でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の任意の見出し又は任意の部分で示される実施形態は、同じ若しくは任意の他の見出し又は本開示の他の部分で示されている実施形態と組み合わされてもよい。
【0015】
本明細書に記載されている要素のあらゆる可能な変形形態での任意の組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0016】
本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物の引用と関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の態様を説明するためのものであって、限定を目的とするものではないことが理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。この後に続く本明細書及び特許請求の範囲においては、本明細書で定義する多くの用語について言及する。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「A」、「AN」、及び「THE」は、文脈からそうでないことが明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0019】
「複数」は2つ以上を意味する。「及び/又は」は「及び、又は代替として」を意味する。本明細書において数値が開示される場合、例えば、分子量などの特性に関連して(代替として)値が開示される場合、開示されている数値のいずれかが単独で使用されてオープンエンドの範囲が記述されてもよく、或いは組み合わされてクローズドエンドの範囲」が記述されてもよい。別段の指示がない限り、全ての範囲には端点が含まれる。
【0020】
本明細書において、「分子量」への言及は、別段の記載がない限り、重量平均分子量、MWを指す。
【0021】
本明細書で使用される「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、後述する事象、状態、構成要素、又は状況が生じても生じなくてもよく、その説明には、前記事象、状態、構成要素、又は状況が生じる事例と生じない事例が含まれることを意味する。
【0022】
本明細書で使用される「PUR」という用語はポリウレタンポリマーを指し、「PIR」という用語はポリイソシアヌレートポリマーを指し、「PUR/PIR」という用語は「ポリウレタンポリマー又はポリイソシアヌレートポリマー」を指す。
【0023】
「重量による」という用語は、そうでないとの明記がない限り、成分と組み合わせて使用される場合、その構成要素が含まれる配合物又は組成物の総重量を基準とする。例えば、組成物又は物品中の特定の要素又は成分が8重量%の量で存在するとされる場合、このパーセンテージは100%の総組成割合に対するものであると理解される。いくつかの例では、成分の重量パーセントは、「乾量基準」又は「固形分基準」の組成物の総重量に基づいており、これらは水又は溶媒を含まない(例えば組成物の総重量を基準として約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、又は約0重量%の水又は溶媒)組成物の重量を示す。
【0024】
試験方法は、日付が試験方法番号と共に示されていない場合、本文書の優先日時点で最も新しい試験方法を指す。試験方法への言及には、試験協会と試験方法番号の両方への言及が含まれる。本明細書では、以下の試験方法の略称と識別子が適用される:ASTMは米国試験材料協会を指し;ENは欧州規格を指し;DINはドイツ規格協会を指し;ISOは国際標準化機構を指す。
【0025】
発泡積層体及びその他の建築材料の可燃性は、標準化試験プロトコルを使用することにより評価することができる。ASTM E-84「トンネル」試験は、サンプル表面に沿って広がる炎を観察することにより建築製品の表面燃焼特性を評価するための標準方法である。その際、このサンプルの燃焼挙動は、レッドオーク標準と比較して特徴付けられる。延焼指数(FSI)及び煙蔓延指数(SDI)は、所定のサンプルについて報告されるパラメータであり、FSIは建物の内面を横切って炎が進行する速度の測定値であり、SDIは燃焼に伴いサンプルによって発生する煙のレベルを定量化する。ASTM E-84では、レッドオークのキャリブレーション材料には100のFSIとSDIの値が割り当てられる。
【0026】
可燃性の低下により、発泡体-箔積層体は、ASTM E-84などの大規模火災試験で許容範囲の性能を達成することができ、この場合、延焼値が25以下であることが、外装断熱用途における断熱材として製品を使用できるようにするために望まれ、国際建築基準法第803.1.2項により「クラスA」として定義される。同じコードにおいて、26~75の延焼値は「クラスB」として定義されており、76~200の延焼値は「クラスC」として定義されている。
【0027】
本発明の物品は、主表面を有するポリウレタン(PUR)又はポリイソシアヌレート(PIR)発泡体を含む。物品は少なくとも1つの主表面を有し、多くの場合、ボードなどの物品は対向する主表面を有し得る。「主表面」は、物品の表面の最も大きい平面表面積に等しい平面表面積を有する物品の表面である。平面表面積とは、表面の輪郭と粗さを無視するように平面に投影された表面積である。物品は単一の主表面を有していてもよい。ボード、シート、及び厚板などの物品は対向する主表面を有し得る。立方体は6つの主表面を有することができる。本発明のPUR/PIR発泡体は、少なくとも1つの主表面を有し、通常は2つの対向する主表面を有する。
【0028】
本発明の最も広い範囲において、1以上、1.2以上、5以上、10以上、50以上、又は100以上の指数を有する発泡体を含む、あらゆるPUR/PIR発泡体が本発明での使用に適している。しかしながら、PUR/PIR発泡体は、200以上、好ましくは250以上、より好ましくは300以上、350以上、更には400以上の指数を有することが望ましく、それと同時に望ましくは650以下であり、550以下、500以下、更には450以下であってもよい。一実施形態では、PUR/PIR発泡体は、例えば300~600などの200~650の指数を有する。指数は、ポリオール成分官能基(ヒドロキシル官能基)に対するイソシアネート成分官能基のモル比の尺度である。PUR/PIR発泡体の指数が増加すると、発泡体がより硬くなる。火災条件で発泡体炭化物の完全性を維持するには、より高い指数が望ましい。発泡体の製造に使用される出発材料からPUR/PIR発泡体の指数を決定することが最も容易である。イソシアネート及びポリオール成分の核磁気共鳴分光法は、得られる発泡体の指数を計算するために、それぞれの官能基のモル量を明らかにすることができる。
【0029】
望ましくは、PUR/PIR発泡体は、発泡体中の主要な(最も高いモル量の)ポリオール反応物として、反応したポリエステルポリオール、特に芳香族ポリエステルポリオールを含む。PUR/PIRポリマーの形成に使用され得る他のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び当該技術分野で公知のその他のものが挙げられる。主要なポリオールは、PUR/PIR発泡体の製造に使用される出発材料から決定することができる。
【0030】
本発明のPUR/PIR発泡体は、難燃性PUR/PIR発泡体の作製において使用される一般的な発泡剤である臭化N-プロピル(NPB)を含まない。望ましくは、PUR/PIR発泡体は、放出された炭化水素発泡剤の中に臭素を導入することができる全ての臭素化発泡剤を含まない。望ましくは、PUR/PIR発泡体は、あらゆるハロゲン化発泡剤を含まない。更に望ましくは、PUR/PIR発泡体は、あらゆるハロゲン及びハロゲン化成分を含まない。
【0031】
PUR/PIR発泡体は、発泡体の特定の位置に埋め込まれているか発泡体全体に分散された繊維を含むことができ、望ましくは含む。繊維は、ガラス繊維などの無機繊維であってもよい。繊維は、特に炭化した際に、PUR/PIR発泡体に構造的完全性を与える役割を果たす。
【0032】
本発明の物品は、更に、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体の主表面を被覆しており、これに取り付けられているアルミニウム表面材を含む。アルミニウム表面材は、0.02ミリメートル(0.8ミル)以上、好ましくは0.023ミリメートル(0.9ミル)以上の厚さを有し、0.0254ミリメートル(1.0ミル)以上、0.03ミリメートル(1.2ミル)以上、0.038ミリメートル(1.5ミル)以上、0.051ミリメートル(2ミル)以上、0.076ミリメートル(3ミル)以上、0.102ミリメートル(4ミル)以上、0.127ミリメートル(5ミル)以上、0.254ミリメートル(10ミル)以上であってもよく、それと同時に、厚さは通常3ミリメートル以下である。一実施形態では、アルミニウム箔表面材は、例えば0.023~0.127MMなどの0.02~0.254MMの厚さを有する。
【0033】
アルミニウム表面材とPUR/PIR発泡体との間には、アルミニウム表面材とPUR/PIR発泡体の両方に取り付けられたプライマー層が存在する。プライマー層は、プライマー成分と臭素化成分を含み、それらから構成されていてもよい。プライマー成分と臭素化成分は、同じ成分であってもよく、或いはこれらは別々の成分であってもよい。例えば、プライマー層は、プライマー成分と臭素化成分の両方の役割を果たす単一の成分を含んでいてもよい。プライマー層は、プライマー成分として機能してもしなくてもよい臭素化成分と組み合わされた臭素化されていないプライマーも、或いは代わりに含んでいてもよい。望ましくは、プライマー成分と臭素化成分は同じ成分である。
【0034】
プライマー成分は、アルミニウム表面材とPUR/PIR発泡体の両方に結合する界面バインダーとして機能する。プライマー成分は、間にプライマー成分が存在していない状態でのアルミニウム表面材とPUR/PIR発泡体との間の接着よりも、PUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間の接着力を強くする。
【0035】
臭素化成分は、プライマー層が火災条件下で典型的に到達し得る温度まで加熱された場合に到達する温度で放出される臭素ラジカルを与える。望ましくは、臭素化成分は、摂氏180度(℃)、更には200℃であっても熱的に安定であり、ここでの「安定」とは、材料が指定温度以上で5%の重量損失温度を有することを意味する。5%の重量損失温度は、10℃/分の昇温速度で加熱された場合に組成物の5重量%が失われる温度であり、窒素雰囲気を使用した熱重量分析によって決定される。
【0036】
望ましくは、臭素化成分は、十分な臭素を含み、プライマー層中の臭素の濃度が30重量パーセント(重量%)以上、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上にするような十分に高い濃度で存在し、45重量%以上、更には50重量%以上であってもよく、それと同時に通常は70重量%以下であり、ここでの重量%臭素は、プライマー成分と臭素化成分の固形分の合計重量の割合としての臭素の重量である。一実施形態では、プライマー層中の臭素の濃度は、例えばプライマー成分と臭素化成分の固形分の合計重量に対して40重量%~70重量%などの30重量%~70重量%である。プライマー層の重量%臭素は、プライマー層としてアルミニウム表面材に残るアルミニウム表面材に塗布される成分の組成に基づいて決定することができる(つまり、塗布される材料は水などの揮発性溶媒や担体をほとんど含まない)。
【0037】
プライマー層中の臭素の濃度が30重量%以上である場合、本発明の物品が熱に曝される際にPUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間に形成される気泡(ブリスター)中のガスは、NPB発泡剤を使用して作製されたTHERMAXTMブランドの断熱材(THERMAXはTHE DOW CHEMICAL COMPANY,MIDLAND,MI,USAの商標である)で同様の条件下で同様の気泡が形成される場合と同じくらい多くの臭素を含むようである。したがって、本明細書に開示の本発明の臭素含有プライマー層を使用すると、加熱された際にPUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間に形成されるガスの気泡中に臭素ラジカルを与える必要がある位置に臭素がより効率的に配置される。
【0038】
プライマー成分と臭素化成分の両方として機能できる材料の最も望ましい例は、直鎖臭素化エポキシ樹脂(BER)である。しかし、臭素を含み、アルミニウムに接着し、PUR/PIR発泡体と反応してそれと結合することができるヒドロキシルや他の反応性基(エポキシ、アミノ、又はカルボン酸部位等)を有する任意の組成物も、本発明のために適したプライマーとなり得る。望ましくは、臭素の濃度は、本明細書で教示される望ましい範囲内であるブリスターガス中の炭化水素:臭素のモル濃度を得るのに十分な高さである。
【0039】
望ましくは、プライマー層は直鎖BERを含むかそれからなる。プライマー層は、1つのタイプのBER又は2つ以上のBERのブレンドを含んでいてもよく、或いはこれらからなっていてもよい。好ましくは、プライマー層中の直鎖BERは、テトラブロモビスフェノールAに基づく(すなわち、それから製造され、そのためその中で反応した重合単位を含む)。特定の実施形態では、BERは、700以上、又は1000以上、好ましくは1500以上、1600以上、1800以上、2000以上、2500以上、5000以上、7500以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、更には21,000以上の重量平均分子量を有していてもよく、それと同時に、典型的には、50,000以下の平均重量分子量を有し、40,000以下、30,000以下、20,000以下、15,000以下、10,000以下、7000以下の重量平均分子量を有していてもよい。一実施形態では、臭素化エポキシ樹脂は、例えば10,000~40,000などの700~100,000又は1,000~100,000の重量平均分子量を有する。重量平均分子量は、グラム毎モルの単位である。重量平均分子量は、ASTM D5296に従って、ポリスチレン標準と比較したゲル浸透クロマトグラフィーにより決定することができる。
【0040】
望ましいBERは、直鎖BERの重量を基準として、40重量%以上の臭素、又は45重量%以上の臭素、好ましくは50重量%以上の臭素、より好ましくは53重量%以上の臭素を含み、それと同時に典型的には75重量%以下の臭素、更には70重量%以下、65重量%以下の臭素、60重量%以下の臭素、又は55重量%以下の臭素を含む。一実施形態では、臭素化エポキシ樹脂は、例えば45~70重量%などの40~75重量%の臭素を含有する。BER中の重量%臭素は、BERの分子組成から計算することができる。分子組成が不明な場合は、蛍光X線を使用して臭素組成を決定することができる。BERは、例えば米国特許第4684701号明細書の方法により製造することができる。
【0041】
臭素化成分ではない適切なプライマー材料の例(すなわち非臭素化プライマー成分)としては、ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂、フェノール及びクレゾールに基づくノボラック樹脂、スチレン-アクリルコポリマー及びアクリロニトリルに基づくアクリルポリマーなどの熱硬化性芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
非臭素化プライマー成分(又はBER)と組み合わせることができる適切な臭素化成分の例としては、EMERALD INNOVATIONTM3000(EMERALD INNOVATIONはCHEMTURA CORPORATION,PHILADELPHIA,PA,USAの商標である)及びFR-122(ICL INDUSTRIAL PRODUCTS,TEL AVIV,ISRAEL)の商品名で入手可能なものなどの臭素化スチレン/ブタジエンコポリマーが挙げられる。プライマー層の他の適切な成分としては、トリブロモネオペンチルアルコール、ジブロモネオペンチルグリコールトリス-(トリブロモネオペンチル)リン酸エステル、リン酸トリフェニル、リン酸トリエチル、エチレングリコールの1,2-(リン酸トリエチルエステル)(FYROL PNX)、テトラブロモビスフェノールA、トリス-(ジクロロプロピル)-リン酸エステル、ジ-(ジフェニルリン酸)-レゾルシノール、2,4,6-トリブロモフェニルのグリシジルエーテルなどのフェニルグリシジルエーテルの臭素化バージョン、臭素化ポリブタジエンゴム、テトラブロモフタル酸エステルジオール(PHT-4Aジオール)、テトラブロモビスフェノールAのビス-(1,2-ジブロモプロピルエーテル)、及びSAYTEXTMHP-3010(SAYTEXはALBEMARLE CORPORATION,CHARLOTTE,NC,USAの商標である)の商品名で販売されているものなどの臭素化ポリスチレンを挙げることができる。
【0043】
特定の実施形態では、プライマー層は塩素又は塩素化成分を含まない。望ましくは、プライマー層は、臭素化成分以外のハロゲン化成分を全く含まない。塩素はアルミニウム表面材の腐食を引き起こすため、塩素及び塩素化成分は特に望ましくない。
【0044】
望ましくは、プライマー層は、摂氏70度(℃)より高い、好ましくは100℃以上のガラス転移温度を有し、その結果、(任意選択的には暖かいままで)プライマー層がアルミニウム表面材に貼り付くことなくプライマー層でコーティングされたアルミニウム表面材を巻き取ることができる。一実施形態では、プライマー層は、例えば100℃~180℃などの70℃~200℃のガラス転移温度を有する。プライマー層のガラス転移温度は、開放アルミニウムDSCパン中に10ミリグラムのサンプル重量で、2回の走査でオーブンを25℃から200℃まで10℃毎分で昇温させる、示差走査熱量測定を使用して決定することができ、ガラス転移温度は、2回目の走査の検出された相転移の開始と終了との間の中点温度である。複数のガラス転移温度が明らかな場合(例えばプライマー層が複数の成分を含む場合)には、最も低いガラス転移温度がプライマー層のガラス転移温度とみなされる。
【0045】
臭素化成分は、通常、1.0グラム毎平方メートル(G/M)以上、好ましくは1.2G/M以上、又は1.5G/M以上、より好ましくは1.6G/M以上の平均臭素濃度が得られるようなレベルでプライマー層中に存在し、これは2.0G/M以上、2.5G/M以上、3.0G/M以上、3.5G/M以上、4.0G/M以上、4.5G/M以上、5.0G/M以上、5.5G/M以上、6.0G/M以上、6.5G/M以上、7.0G/M以上、更には10.0G/M以上、15.0G/M以上、19.0G/M以上であってもよく、BR濃度はPUR/PIR発泡体に取り付けられたアルミニウム表面材の表面積に基づく。臭素の平均濃度に公知の技術的な上限は存在しないものの、濃度は通常20.0G/M以下である。一実施形態では、臭素化成分は、例えば1.5~20.0G/Mなどの1.2~20.0G/Mの平均臭素濃度で存在する。臭素の平均濃度(G/M)は、アルミニウム表面材上にコーティングされたプライマー層の固形分の質量(G)に、プライマー層コーティングの臭素濃度(プライマー層中の臭素%)を掛け、その後コーティングされたアルミニウム表面材の表面積(M)で割ることにより決定することができる。
【0046】
PUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間には、繊維マット、繊維生地(織布及び不織布を含む)、及び分散繊維の形態の繊維が存在しない。好ましくは、PUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間にはいかなる種類の繊維も存在しない。PUR/PIR発泡体は、その中に埋め込まれているか分散されているガラス繊維などの繊維を含んでいてもよく、望ましくは含む。結果として、繊維はPUR/PIR発泡体から延びて部分的にPUR/PIR発泡体の表面に存在し得る。PUR/PIR発泡体の中に埋め込まれている繊維は、部分的に又は完全にPUR/PIR発泡体の表面上に存在していても、発泡体とアルミニウム表面材との間にあるとはみなされない。本明細書では、PUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材との間に存在する繊維は、PUR/PIR発泡体とアルミニウム表面材の両方に対して完全に外部にある。
【0047】
プライマー層、及び望ましくは物品全体は、以下の材料、すなわちハロゲン化パラフィン、ヒ素グループの金属酸化物(例えばアンチモン酸化物やヒ素酸化物など)、ハロゲン化可塑剤、及びポリ酢酸ビニルのうちの任意の1種又は任意の1種以上の組み合わせを含んでいなくてもよい。
【0048】
本発明の物品の製造は、最初にアルミニウム表面材の片面をプライマー層でコーティングし、次いでPUR/PIR発泡体へと膨張するPUR/PIR発泡体配合物でプライマー層をコーティングすると同時にプライマー層に接着させることによるのが一般的である。プライマー層は、アルミニウム表面材上にコーティングされると、アルミニウム表面材と接着する。PUR/PIR発泡体配合物がプライマー層の上にコーティングされると、PUR/PIR発泡体はプライマー層と接着する。典型的には、PUR/PIR発泡体配合物中のイソシアネート成分は、プライマー層中のヒドロキシル又は他の反応性基と結合して、PUR/PIR発泡体とプライマー層との間の接着を実現する。
【0049】
プライマー層は、様々な異なる手法でアルミニウム表面材に塗布することができる。これは、プライマー及び臭素化成分の無希釈組成物として塗布されてもよく、任意選択的には、液体コーティングプロセスにより塗布できるように加熱溶融されていてもよい。同様に、プライマーと臭素化成分との固体粉末混合物として塗布されてもよく、任意選択的には、その後加熱溶融されて均一なコーティングとしてアルミニウム箔に付着されてもよい。また、プライマーや臭素化成分が共通の溶媒に溶解している流体として塗布されてもよく、溶媒はその後蒸発してアルミニウム箔上に望まれる均一なコーティングを形成する。或いは、プライマー層は、分散液としてアルミニウム表面材に塗布されてもよく、プライマー及び/又は臭素化成分からなる小さな粒子が、適切な流体、好ましくは水の中に懸濁される。プライマー成分と臭素化成分のうちのいずれかである一方の成分が流体媒体に可溶性であり他方が不溶性である、固体粒子の分散を形成する分散液を得ることも許容される。
【0050】
これらのプライマー分散液では、粒子は、適切な粉砕プロセスを介して固体状態で、或いは粒子を分散させてから安定化するための剪断プロセスによって液体状態で、プライマー成分又は臭素化成分を含む流体媒体中で分散液を形成することができる。或いは、分散液は、プライマー成分又は臭素化成分の粉末を望まれる流体媒体の中に混合することによって形成することができる。多くの場合、分散液の安定化を助けるために、少量の界面活性剤を流体媒体に添加することが有用である。分散液の平均粒子サイズは、通常30ミクロン以下、好ましくは20ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、最も好ましくは1ミクロン以下である。
【0051】
アルミニウム表面材上にコーティング可能な流動性相へと軟化することが困難なほどに十分に高い分子量又は粘度を有するBERでは、水性分散液を使用することが望ましい。BERは、機械的な分散手法を使用して水性媒体中に分散されてもよく、次いで分散液がアルミニウム表面材上にコーティングされ、水性成分が蒸発されてもよい。望ましくは、プライマー層をアルミニウム表面材に塗布する際には有機溶媒は使用されない。溶媒が必要な場合は、EPA有害大気汚染物質リストに記載されていないものから選択することが望ましい。有用な溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸N-ブチル、メチルエチルケトン、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
【0052】
プライマー層がプライマーと臭素化成分との溶液又は分散液からコーティングされる場合には、コーティングされた箔を、溶媒又は分散媒体を蒸発させるのに十分な時間高温にし、任意選択的には(必要に応じて)、堆積した粒子を一貫した膜へと溶融又は固化することが多くの場合望ましい。使用される温度は、溶液又は分散液を形成するために使用される水又は有機溶媒の標準沸点よりも高くする必要があるが、プライマー又は臭素化成分の分解が開始される温度よりも低くする必要がある。
【0053】
条項:
本発明の特定の実施形態は以下の条項に開示されている。条項のいずれかに開示されている実施形態は、任意の別の条項に開示されている実施形態と組み合わされてもよい。更に、いずれかの条項の1つの実施形態に開示されている1つ以上の要素は、任意の別の条項に開示されている任意の別の実施形態に開示されている要素と組み合わされてもよい。
【0054】
条項1A:主表面を有するポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム表面材カバーと、前記発泡体の前記主表面と前記アルミニウム表面材との間に取り付けられたプライマー層と、を含む物品であって、(A)前記プライマー層が、前記プライマー層中に臭素濃度を有し、プライマー成分と臭素化成分とを含み、前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じ又は異なる成分であり;(B)前記プライマー層に塩素化成分が含まれておらず;(C)前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と前記表面材との間に、繊維マット、繊維生地、及び分散繊維の形態の繊維が存在しないことを特徴とする、物品。
【0055】
条項1B:主表面を有するポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム表面材カバーと、前記発泡体の前記主表面と前記アルミニウム表面材との間に取り付けられたプライマー層と、を含む物品であって、(A)前記プライマー層が、前記プライマー層中に臭素濃度を有し、プライマー成分と臭素化成分とを含み、前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じ又は異なる成分であり;(B)前記プライマー層に塩素化成分が含まれておらず;(C)前記ポリイソシアヌレート発泡体と前記表面材との間に、繊維マット、繊維生地、及び分散繊維の形態の繊維が存在しないことを特徴とする、物品。
【0056】
条項2:前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して30重量パーセントより大きい、条項1A又は1Bに記載の物品。一実施形態では、前記プライマー層中の臭素の前記濃度は、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して30重量%~80重量%;又は30重量%~70重量%;又は30重量%~60重量%;又は30重量%~50重量%;又は30重量%~40重量%である。
【0057】
条項3:前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して40重量パーセント以上である、条項1A又は1Bに記載の物品。一実施形態では、前記プライマー層中の臭素の前記濃度は、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して40重量%~80重量%;又は40重量%~70重量%;又は40重量%~60重量%;又は40重量%~50重量%である。
【0058】
条項4:前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して50重量パーセント以上である、条項1A又は1Bに記載の物品。一実施形態では、前記プライマー層中の臭素の前記濃度は、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して50重量%~80重量%;又は50重量%~70重量%;又は50重量%~60重量%である。
【0059】
条項5:前記臭素化成分が臭素化エポキシ樹脂である、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。一実施形態では、前記臭素化エポキシ樹脂は、例えば40~75重量%;又は40~70重量%;又は40~65重量%;又は40~60重量%;又は45~75重量%;又は45~70重量%;又は45~65重量%;又は45~60重量%;又は50~75重量%;又は50~70重量%;又は50~65重量%;又は50~60重量%の臭素などの40重量%以上の臭素を含む。
【0060】
条項6:前記臭素化エポキシ樹脂が700以上100,000以下の重量平均分子量を有する、条項5に記載の物品。一実施形態では、前記臭素化エポキシ樹脂は、700~50,000;又は1,000~50,000;又は10,000~50,000;又は10,000~40,000;又は10,000~30,000;又は15,000~30,000;又は15,000~25,000の重量平均分子量を有する。
【0061】
条項7:前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じである、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0062】
条項8:前記臭素化成分が臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーである、条項1A、1B、又は2~4のいずれか1つに記載の物品。一実施形態では、前記臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーは、10,000~1,000,000;又は10,000~500,000;又は10,000~250,000;又は10,000~200,000;又は20,000~250,000;又は50,000~250,000;又は50,000~200,000;又は75,000~150,000の重量平均分子量を有する。
【0063】
条項9:前記プライマー層が摂氏70度以上のガラス転移温度を有する、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。一実施形態では、前記プライマー層は、70℃~200℃;又は70℃~180℃;又は70℃~150℃;又は80℃~200℃;又は80℃~180℃;又は80℃~150℃;又は90℃~200℃;又は90℃~180℃;又は90℃~150℃;又は100℃~200℃;又は100℃~180℃;又は100℃~150℃;又は110℃~200℃;又は110℃~180℃;又は110℃~150℃;又は120℃~200℃;又は120℃~180℃;又は120℃~150℃のガラス転移温度を有する。
【0064】
条項10:前記プライマー層が前記臭素化成分以外のハロゲン化成分を含まない、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0065】
条項11:前記プライマー層が、ハロゲン化パラフィン、ヒ素グループの金属酸化物、及びポリ酢酸ビニルを含まない、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0066】
条項12:前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体がハロゲン化発泡剤を含まない、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0067】
条項13:前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体が臭化N-プロピルを含まない、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0068】
条項14:前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体が200以上の指数を有する硬質発泡体である、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。一実施形態では、前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体は、200~650;又は200~550;又は200~400;又は300~650;又は300~550;又は300~400;又は400~650;又は400~550の指数を有する。
【0069】
条項15:前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体がポリイソシアヌレート発泡体である、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0070】
条項16:前記アルミニウム箔表面材の厚さが0.02ミリメートル以上である、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。一実施形態では、アルミニウム箔表面材は、0.02~0.254MM;又は0.02~0.127MM;又は0.023~0.254MM;又は0.023~0.127MMの厚さを有する。
【0071】
条項17:前記臭素化成分が、例えば1.0~20.0G/M;又は1.2~20.0G/M;又は1.2~15.0G/M;又は1.5~20.0G/M;又は1.5~15.0G/M;又は1.6~20.0G/M;;又は1.6~15.0G/M;又は2.0~20.0G/M;又は2.0~15.0G/M;又は2.0~10.0G/Mなどの1.0G/M以上の平均臭素濃度で存在する、前記条項のうちのいずれか1つに記載の物品。
【0072】
本発明を以下の実施例で詳しく定義するが、その中の全ての部及びパーセントは別段の記載がない限り重量基準である。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示目的で与えられているにすぎず、いかなる形でも限定するものとして解釈すべきではないことが理解されるべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の必須の特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で種々の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更及び改変をなし得る。
【実施例
【0073】
実験室スケールでの物品の作製
本発明を実証する実験室スケールの実施例の物品は、以下の方法で作製した。1枚のアルミニウム表面材(厚さ22.86ミクロン(0.9MIL)、HANOVER FOILS LLC,ASHLAND,VA,USAから製品ID C504Wとして入手可能)をプライマー層でコーティングし、シートから0.41メートル×0.41メートル(16インチ×16インチ)のプライマーでコーティングされたアルミニウム表面材の正方形片を切り取った。プライマーの組成及び厚さは、以下に記載するように各実施例で様々であった。正方形の箔を、プライマーでコーティングされたた面を上に向けて平らな表面上に置いた。0.38メートル×0.38メートル(15インチ×15インチ)のブロックをアルミニウム表面材片の中央に配置し、アルミニウム表面材の1.27センチメートルの端部をブロックの周り全体で折り畳んで表面材から0.38メートル×0.38メートルの正方形の底面と1.27センチメートルの壁とを有する「皿」を形成し、プライマー層が「皿」の内側に配置されるようにした。表面材の「皿」は、箱の側面がアルミニウム表面材の「皿」の壁を支持するように、0.38メートル×0.38メートルの内寸を持つ箱の中に配置した。
【0074】
PIR発泡体配合物は、配合物のA側とB側の成分(以下で説明)をプラスチックチューブ中で一体に組み合わせ、15秒間混合して混合物を形成することにより調製した。触媒を混合物に添加し、更に5秒間混合することでPIR発泡体配合物を得た。
【0075】
PIR発泡体配合物を上述した皿の中に注ぎ入れ、PIR発泡体へと硬化させることで積層物品を形成した。得られた積層物品は約20センチメートルの厚さを有していた。積層物品を7日間寝かせた。積層物品の一部を、物品の中央のアルミニウム箔表面材から測定して2.5センチメートルの厚さで切り取った。(PIR発泡体の硬化に伴ってアルミニウム箔表面材を有する物品の表面が箱の底面からわずかに盛り上がり、それによってアルミニウム箔表面材を有する凹面が作成されるため、積層物品は端部で厚くなる傾向があり、中央の厚さが2.5センチメートルの場合、端部の厚さは3.8センチメートルにも及び得る)。以下に記載のように、切り取った部分にブリスターを生じさせ、ブリスターガスを直ちに分析した。
【0076】
ブリスター試験及びセルガス分析
以下の手順を使用して、実施例の物品の表面材のブリスターを生じさせた。アルミニウム箔が表面にある発泡体積層物品を、フィッシャーバーナー上で、物品のコーティングされていないアルミニウム表面を下に向け、フィッシャーバーナー(モデル3-900、外径3.8センチメートル(1.5インチ)の炎口部、及び3.175ミリメートル(1/8インチ)の開口部を有する金属格子)の上に水平に固定した。バーナーの上部と物品のアルミニウム表面材との間の距離は26.67センチメートル(10.5インチ)であった。
【0077】
物品の下からバーナーを外し、エアーウィングを大きく開いて点火し、ガスニードルバルブを完全に1回転させて開き、8~12本の青い炎のスパイクがバーナー表面で観察されるようにガスフローバルブを調整した。
【0078】
次いで、点火されたバーナーを吊り下げられた物品の中心の真下に配置し、炎の真上の物品の領域を観察しながら、アルミニウム表面材を90秒間炎にさらした。90秒後、バーナーへのガスの流れを止めた。炎にさらしている間にアルミニウム表面材の下にブリスターが形成され、約20~25センチメートル(8~10インチ)の最終直径へと成長した。バーナーを止めた直後に、予め秤量された10ミリリットルの気密ガラス製シリンジに取り付けられたシリンジ針を物品の発泡体側から挿入することによりブリスター内のガスをサンプリングし、約5ミリリットルのセルガスをブリスターを構成する気泡体積から採取した。
【0079】
ブリスターガスが入っているシリンジに5ミリリットルのトルエンを入れた。シリンジとその中身を分析天秤で秤量した。シリンジとその中身を激しく振とうしてブリスターガスとトルエンを混合した。
【0080】
(A)中性子放射化分析による臭素濃度
ブリスターガスサンプル中の臭素の濃度は、中性子放射化分析によって決定することができる。中性子放射化分析は、約0.1グラムのブリスターガス/トルエンサンプル(上を参照)を、予め洗浄した2グラムのポリエチレンバイアルに移すことによって行った。様々な臭素濃度の標準は、適切な量の米国国立標準技術研究所(NIST)認定の標準溶液を同様のバイアルの中に移すことによって準備した。標準は、メタノールを使用して実験サンプルと同じ体積に希釈した。それに加えて、純粋なメタノールが入っているブランクサンプルも準備した。バイアルをヒートシールした。サンプル、標準、及びブランクの臭素含有量は、MARK I TRIGATM原子炉(TRIGAはGENERAL ATOMICS CORPORATION,SAN DIEGO,CA,USAの商標である)を使用して分析した。サンプルは、回転試料台内で30キロワットの原子炉出力で10分間照射した。10分後、ガンマ分光法をそれぞれ4000秒間行った。臭素濃度は、CANBERRATMソフトウェア(CANBERRAはMIRION TECHNOLOGIES,SAN RAMON,CA,USAの商標である)と標準的な比較手法を使用して、スペクトルから計算した。結果は値に対して5%未満の不確実性を示す。
【0081】
GC/MSによる積分炭化水素面積
ブリスターガス/トルエン混合物の一部を20ミリリットルのシンチレーションバイアルの中に溶出させた。トルエン/ガス混合物の一定分量をガスクロマトグラフ/液体クロマトグラフ(GC/LC)バイアルの中に入れ、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/質量分析)により分析した。3つの発泡剤(イソペンタン、N-ペンタン、シクロペンタン)についての積分ピーク面積を測定し、合計して積分炭化水素面積を得た。発泡剤の保持時間の特定は、各種類の発泡剤の純粋なサンプルに対してGC/MSを実行することにより決定した。
【0082】
GC/質量分析条件は以下の通りである。装置:5977A質量分析計検出器と連結されたAGILENT 7890B GC。ソフトウェア:MASSHUNTER。カラム:1.00ミクロンの膜による30メートル×内径0.25ミリメートルのもの;AGILENT J&W DB-5MS。カラム温度プロファイル:40℃、3分間保持、毎分8℃で250℃まで昇温、250℃で3分間保持。ソース温度:250℃。四重極:150℃。ガス流量:三方スプリッタへの1.6ミリリットル毎分の一定流量のヘリウム リストリクター#1:毎分1.0ミリリットルのMSD。リストリクター#2:FIDに対して毎分1.2ミリリットル。スプリット比:100/1。注入量:1マイクロリットル。検出器:電子増倍管1213V。ソース:EI。固定電子エネルギー:70.0電子ボルト。スキャン:18~550AMU(EI)。レート:2.8スキャン毎秒。ゲイン:1.000。溶媒遅延:1.00分。合計実行時間:32.25分。
【0083】
B)ブリスターガス中の相対的な炭化水素/臭素濃度
ブリスターガス中の炭化水素と臭素の相対濃度は、各サンプルについて、積分炭化水素面積を臭素濃度で割ることによって決定した。値が低いほど可燃性炭化水素と比較して臭素が多いことに起因して可燃性ガスが少ない組成であることを示すため、この比の値は低い方が望ましい。
【0084】
比較及び本発明のサンプル
比較例A:標準のNPBを含む物品
3つの参照標準は、NPB発泡剤を含む従来の発泡体を使用し、上述した実験室スケールの物品作製手順を使用し、スチレン-アクリレートでコーティングされたアルミニウム表面材上に付着させた表2の比較例AのPIR発泡体配合物を使用して作製した。この比較例のプライマー層には臭素化成分は存在しなかった。
【0085】
3つの比較例Aのサンプルのブリスター試験からのセルガスの分析とセルガス分析からの結果を表3に示す。
【0086】
比較例B:プライマー層中に臭素を含まないNPB非含有PIR
比較例Bのサンプルは、上述した実験室スケールの物品作製手順を使用し、スチレン-アクリレートでコーティングされたアルミニウム表面材上に付着させた表2の比較例BのPIR発泡体配合物を使用して作製した。この比較例のプライマー層には臭素化成分は存在しなかった。
【0087】
比較例Bのサンプルについてのブリスター試験からのセルガスの分析とセルガス分析からの結果を表3に示す。
【0088】
実施例1A、1B、及び1C:NPB非含有PIRを用いた臭素化エポキシ樹脂プライマー
実施例1A~1Cは、全て、プライマー層のプライマー成分と臭素化成分の両方として臭素化エポキシ樹脂(BER)を使用するNPB非含有PIR発泡体物品である。3つの実施例(EX)1のサンプルは、アルミニウム箔上に3つの異なる添加量のBERを含んでおり、プライマー層としてのBERの3つの異なる添加量で、異なるブリスターガスの臭素レベルが生じることを示している。BERポリマーは52.0重量%の臭素を含む。
【0089】
実施例(EX)1のサンプルは、上述した実験室スケールの物品作製手順を使用して、及びプライマーコーティングされたアルミニウム表面材上に付着させた表2の実施例1用のPIR発泡体配合物を使用して作製した。実施例1のサンプルについては、1,2-ジクロロエタン中の臭素化エポキシ樹脂の10重量%溶液をアルミニウム表面材の「皿」の内側表面に塗り広げ、ジクロロエタン溶媒を蒸発させることにより、プライマーでコーティングされたアルミニウム表面材を作製した。塗布される10重量%溶液の量は、乾燥後にアルミニウム表面材の「皿」の表面上で、実施例1Aでは1.6G/M(0.15G/FT)であり、実施例1Bでは3.3G/M(0.31G/FT)であり、実施例1Cでは6.6G/M(0.61G/FT)である均一な臭素含有濃度が得られるように計算した。[例えば、実施例1Aについては、BERの10%溶液4.44Gには、BER固形分0.444Gが含まれている。BERは52%のBR固形分であることから、0.444GのBERには0.444×0.52=0.231GのBRが含まれている。箱は、0.38M×0.38M(底面積=0.1444M)の面積である。したがって、0.1444Mの面積を被覆する0.231GのBRは、0.231G/0.1444M=プライマー層中の1.6G/MのBR含有量に相当する]。
【0090】
24時間後、PIR発泡体配合物を実験室で塗布したプライマー層の上に注いだ。
【0091】
BERは、分子式CO(C1816BR)NC1815BR(CAS番号68928-70-1)を有しており、臭素含有率が52.0重量%であり、分子量が20,000であり、TGが140~150℃であり、5重量%損失温度が357℃である。(このBERは、ICL INDUSTRIAL PRODUCTS(TEL AVIV,ISRAELからF-2100として市販されている)。
【0092】
実施例1A~1Cのサンプルについてのブリスター試験からのセルガスの分析及びセルガス分析の結果は表3にまとめられている。
【0093】
実施例2A、2B、2C、及び2D:NPB非含有PIRを用いたポリアクリレート/臭素化ポリマープライマー
実施例2A~2Dは、全て、アルミニウム箔に塗布されるプライマー層中のプライマー成分としてのポリアクリレート樹脂と、臭素化成分としての臭素化ポリマー(臭素化スチレン-ブタジエンコポリマー、65重量%の臭素)との組み合わせを使用するNPB非含有PIR発泡体物品である。
【0094】
実施例2のサンプルは、上述した実験室スケールの物品作製手順を使用し、プライマーでコーティングされたアルミニウム表面材上に付着させた表2の実施例2用のPIR発泡体配合物を使用して作製した。実施例2のサンプルについては、トルエンに10重量%で溶解させた臭素化ポリマーと、キシレン中の固形分含有率が58重量%である2-ヒドロキシエチルアクリレートを含むPARALOID AU-608Xポリアクリレート樹脂組成物との、固形分基準で50/50重量%のブレンドである17重量%溶液を、アルミニウム表面材の「皿」の内側表面上に塗り広げることにより、プライマーでコーティングされたアルミニウム表面材を作製した。塗布された17重量%溶液の量は、乾燥後に実施例2Aでは1.7G/M(0.16G/FT)、実施例2Bでは3.4G/M(0.32G/FT)、実施例2Cでは5.2G/M(0.48G/FT)、実施例2Dでは10.2G/M(0.95G/FT)の臭素濃度が得られるように計算した。コーティングされたAL「皿」を24時間乾燥した後、PIR発泡体配合物を実験室で塗布したプライマー層の上に注いだ。
【0095】
臭素化されたポリマーは、臭素含有率が65重量%であり、重量平均分子量が100,000であり(そしてTGが約130℃である)、分子式:(C[(CBR(CBR](Cの臭素化スチレン-ブタジエンコポリマー(CAS番号1195978-93-8)である。この臭素化ポリマーは、ICL INDUSTRIAL PRODUCTS(TEL AVIV,ISRAEL)からFR-122Pとして市販されている。
【0096】
得られたプライマー層中の臭素の合計量は、プライマー層の重量を基準として32.5重量%であった。プライマー層の重量とはプライマー層の固形分重量を指す。
【0097】
実施例2A~2Dのサンプルについてのブリスター試験からのセルガスの分析とセルガス分析からの結果は表3にまとめられている。
【0098】
実施例3A、3B、3C、及び3D:占有技術のNPB非含有PIRを用いた臭素化プライマー
実施例3A及び3Bは、共にNPBを含まず積層されたPIR発泡体物品であり、SELECTIVE COATINGS&INKS,INC.(FARMINGDALE,NJ,USA)から入手した占有技術のプライマー組成物であるPMR-17628Sがアルミニウム箔上に塗布された。このプライマーコーティングは、メチルエチルケトン中に溶解させたプライマー樹脂の溶液中に粉砕された臭素化材料が懸濁されている懸濁液(すなわち2成分プラス溶媒)を含んでおり、54重量%の固形分を含み乾燥後の臭素含有率が60%になるように規定されていた。
【0099】
実施例3のサンプルは、上述した実験室スケールの物品作製手順を使用して、プライマーコーティングされたアルミニウム表面材上に付着させた表2の実施例1及び実施例2用のPIR発泡体配合物と同じものを使用して作製した。実施例3A及び実施例3Bのサンプルについては、メチルエチルケトンを使用して1.64Gのプライマー組成物PMR-17628S(固形分54重量%)を10グラムまで希釈し、この約10重量%の固形物懸濁液を、プライマーコーティングを塗布するためのアルミニウム表面材の「皿」の内側表面に塗り広げた。実施例3A及び実施例3Bの臭素含有量は、3.7G/M(0.34G/FT)であった。[プライマーの54%固形分懸濁液1.64Gは1.64×0.54=0.886Gのプライマー固形分である。プライマーは60重量%のBR固形分であることから、0.886×0.60=0.531GのBR固形分である。プライマーは0.38M×0.38M=0.1444Mの面積に塗り広げられる。0.1444Mに塗り広げられた0.531GのBR固形分は0.531G/0.1444M2=3.7G/Mに相当する]
【0100】
サンプル実施例3C及び実施例3Dについては、2.18GのPMR-17628S(54重量%固形分)をメチルエチルケトンで合計10Gに希釈し、プライマーコーティングを塗布するためにこの懸濁液をアルミニウム表面材の「皿」の内側表面に塗り広げた。実施例3C及び3Dの臭素含有量は5.0G/M(0.46G/FT)であった。
【0101】
EX3A~3Dのサンプルについてのブリスター試験からのセルガスの分析とセルガス分析からの結果は表3にまとめられている。
【0102】
表1に、サンプルの調製において使用した材料が特定されている。
【0103】
【表1】
【0104】
表2は、比較例Aで使用したPIR発泡体配合物、比較例B、並びに実施例1、2、及び3で使用したPIR発泡体配合物を示している。
【0105】
【表2】
【0106】
表3のデータは、本発明の物品のプライマー層に臭素を選択的に配置することにより、物品中の総臭素含有率が高い従来の物品から見込まれる炭化水素対臭素の比率でブリスターガスの形成が可能になることを明らかにしている。表3の実施例の総臭素含有率は、表2に示されている配合物を使用して発泡体の片面に表面材を積層して作製した密度32.4KG/M(2.0LBS/FT)の発泡体の30.5CM×30.5CM×2.5CM(12IN×12IN×1IN)の体積中に存在する臭素の重量%を計算することにより決定した。コーティングされた表面材のプライマー層中に存在する臭素の量は、発泡体内に存在する臭素の質量に追加される。これは、イソシアネート基と水との反応により生成するあらゆる炭化水素発泡剤又は二酸化炭素の損失がないと仮定している。
【0107】
比較例Aについては、プライマー層に臭素が含まれていないため、臭素含有率は発泡体中のN-PBとRB-7940にのみ由来する。そのため、存在する臭素の重量パーセントは、N-PBの重量に臭素の重量分率を掛けたものに、RB-7940の重量に臭素の重量分率を掛けたものを加えて、配合物中に存在する臭素の総重量を求めることにより計算した。次いで、この値を全ての配合物成分の総重量で割ってから100を掛けることで、配合物中に存在する臭素の総重量パーセントを得た。目的の30.5CM×30.5CM×2.5CM(12IN×12IN×1IN)の発泡体の体積(2325.625CM(又は144IN)に相当)の質量を決定するためには、この値を0.032G/CMの密度で割ってこの規定された体積に関連する質量を求める。次いで、表3に示されているサンプルの総重量に対する臭素の重量%は、臭素の質量を規定された体積の発泡体の質量で割って100%を掛けたものとして計算する。実施例1、2、及び3については、同じ寸法の30.5CM×30.5CMの1枚の箔上へのプライマー層のコーティング量に関連する臭素の質量を、発泡体配合物に関連する臭素の質量に加え、この合計を発泡体成分の総質量で除ることで表3に記載されている臭素の重量パーセントを得る。
【0108】
特に、得られるブリスターガス中の炭化水素/臭素比は、NPBを用いて製造され、物品のPIR発泡体全体で臭素の総含有量が遥かに多い発泡体に匹敵し得る。したがって、臭素化材料をプライマー層に優先的に配置することにより、臭素濃度が全体として低い物品でより低い可燃性を有するブリスターガスを達成することができる。
【0109】
【表3】
【0110】
比較例Bのブリスターガスにおける炭化水素/臭素比の高い比率は、1.5重量%の臭素含有量でポリイソシアヌレートマトリックス中のテトラブロモフタル酸エステル/エーテルポリオールRB9170に関連する臭素が、ブリスター形成時に存在する熱条件で臭素をブリスターガスの中に気化できないことを示している。RB9170の役割は、350℃を超える温度で発生する炭化物形成化学反応中に放出される可燃性分解生成物の可燃性を低減する臭素源を提供することである。比較例Aのサンプルについては、NPBに関連する臭素濃度は臭素全体の50%、すなわち1.5重量%である。実施例2Dは、臭素化プライマー層のみを使用すると、厚さ2.5CMの比較例AサンプルのNPB臭素添加量全体で達成される濃度と同様のブリスターガス中の臭素濃度を生成できることを示している。実施例3A~3Dは、同様に、プライマー層中の他の臭素源も、ブリスターガス中の同様の炭化水素対臭素比をもたらし得ることを示している。
【0111】
実施例4:ASTM E-84スタイナートンネル試験を使用する可燃性試験
上の実施例で記載した実験室スケールの物品に加えて、本発明の更なる実施形態を、米国特許第4,028,158号明細書に記載されている「自由膨張」ポリイソシアヌレート発泡体ボード製造プロセスを使用して行った。全体の厚さが10.2CM(4.0インチ)の3つの発泡積層体ボードサンプルを、表4に示すように一定のPIR配合物を使用して作製した。これは以下に記載の通りに2層の不織連続ストランド軽量ガラス繊維マット(75G/M)を含んでいた。
【0112】
【表4】
【0113】
十分に混合した(A側+B側)の配合物を、下面のアルミニウム箔プラス下面のガラスマットの上にのせた。次いで、上面ガラスマットと上面アルミニウム表面材を取り付け、このサンドイッチ構造体を計量ロールに通して液体を広げ、構造体の幅方向に均一な厚さを得た。その後、AL箔プラスガラス繊維を積層したポリイソシアヌレート配合物を、加熱空気を循環させることにより124℃(255°F)の温度でサーモスタット制御された硬化オーブンに送った。オーブン及び重合反応からの加熱により発泡剤が膨張し、箔間でポリマーが発泡し、オーブンの端までに積層体が10.2CM(4.0インチ)の厚さまで完全に膨張した。その後、積層体を両側でトリミングして最終的な幅を1.22M(48インチ)にし、次いで長さ2.44M(8FT)のボード片へと切断した。その後、これらのボードを10枚のボードの組立体へと積み重ね、倉庫に保管した。積層ボードの内側の発泡体の密度は30.4KG/M(1.9LBS/FT)であった。
【0114】
3つの異なる上面アルミニウム箔表面材ロールを使用して、この方法で、発泡させた積層構造体を作製した。これらのサンプルは表5にまとめられている。実施例4Aは標準の臭素を含まないプライマーを使用し、実施例4Bと実施例4Cのサンプルは、実施例3で使用したものと同じPMR-17628Sである占有技術のプライマー組成物の2つの異なるコーティング重量を使用した。しかしながら、実施例4については、懸濁液は、更に希釈することなく供給されたままの状態で使用した。発泡体特性の一貫性を維持するために、大きな発泡積層体ボードのサンプルは、プロセスを停止することなしに、1つの上面材から次への「オンザフライ」移行を利用して、1回の連続運転で製造した。3つのサンプル全ての底面のアルミニウム箔は一定であり、HANNOVER FOILS,LLC,ASHLAND VAの0.0009”DOW BLUE TINT断熱表面材、厚さ22.86ミクロン(0.9ミル)のアルミニウム箔、及び発泡体の表面材側のヒドロキシ官能性スチレン-アクリレートプライマーコーティングから構成されていた。
【0115】
【表5】
【0116】
全ての上面材(実施例4A、実施例4B、及び実施例4C)で、発泡体への上面材の優れた接着が観察された。物品の上面から剥がされた箔は、金属表面上にポリマー発泡体の残留物を示した。27日間寝かせた後、実施例4で製造した3枚のポリイソシアヌレート発泡体ボードに対してINTERTEK(ELMENDORF,TX,USA)でASTM E-84スタイナートンネル試験を行った。試験結果は表6にまとめられている。
【0117】
【表6】
【0118】
表6に示されているように、プライマー層に臭素を含む表面材を含む両方のサンプル(実施例4B及び実施例4C)は、ベースのPIR発泡体配合物で見込まれるクラスBの評価を受けた標準の表面材対称(実施例4A)よりも大幅に低い延焼指数スコアを有し、クラスAの評価を得た。このASTM E84データは、大規模な可燃性試験であっても、アルミニウム箔と発泡体との間のプライマーに臭素を配合すると、標準のPIR発泡積層体断熱ボードの可燃性が大幅に低下することを示している。
なお、本発明には、以下に示した実施形態が包含されるものとする。
[1]主表面を有するポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム表面材カバーと、前記発泡体の前記主表面と前記アルミニウム表面材との間に取り付けられたプライマー層と、を含む物品であって、
(A)前記プライマー層が、前記プライマー層中に臭素濃度を有し、プライマー成分と臭素化成分とを含み、前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じ又は異なる成分であり;
(B)前記プライマー層に塩素化成分が含まれておらず;
(C)前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体と前記表面材との間に、繊維マット、繊維生地、及び分散繊維の形態の繊維が存在しないことを特徴とする、物品。
[2]前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して30重量パーセントより大きい、前記[1]に記載の物品。
[3]前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して40重量パーセント以上である、前記[1]に記載の物品。
[4]前記プライマー層中の臭素の前記濃度が、前記プライマー成分と前記臭素化成分の固形分の合計重量に対して50重量パーセント以上である、前記[1]に記載の物品。
[5]前記臭素化成分が臭素化エポキシ樹脂である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の物品。
[6]前記臭素化エポキシ樹脂が700以上100,000以下の重量平均分子量を有する、前記[5]に記載の物品。
[7]前記プライマー成分と前記臭素化成分が同じである、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の物品。
[8]前記臭素化成分が臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーである、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の物品。
[9]前記プライマー層が摂氏70度以上のガラス転移温度を有する、前記[1]~[8]のいずれか1項に記載の物品。
[10]前記プライマー層が前記臭素化成分以外のハロゲン化成分を含まない、前記[1]~[9]のいずれか1項に記載の物品。
[11]前記プライマー層が、ハロゲン化パラフィン、ヒ素グループの金属酸化物、及びポリ酢酸ビニルを含まない、前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の物品。
[12]前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体がハロゲン化発泡剤を含まない、前記[1]~[11]のいずれか1項に記載の物品。
[13]前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体が臭化N-プロピルを含まない、前記[1]~[12]のいずれか1項に記載の物品。
[14]前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体が200以上の指数を有する硬質発泡体である、前記[1]~[13]のいずれか1項に記載の物品。
[15]前記ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体がポリイソシアヌレート発泡体である、前記[1]~[14]のいずれか1項に記載の物品。
[16]前記アルミニウム箔表面材の厚さが0.02ミリメートル以上である、前記[1]~[15]のいずれか1項に記載の物品。