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特許7384796マイクロカプセルを含有する毛髪染色用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】マイクロカプセルを含有する毛髪染色用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/11 20060101AFI20231114BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61K8/11
A61Q5/10
A61K8/87
A61K8/88
A61K8/81
A61K8/84
A61K8/89
A61K8/73
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/46
A61K8/22
A61K8/19
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020529400
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019051743
(87)【国際公開番号】W WO2019145416
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】18153663.2
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレン フェアホフニク
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ストリュイゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン カルフ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508252(JP,A)
【文献】特表2002-532109(JP,A)
【文献】特表2015-533863(JP,A)
【文献】国際公開第2016/116604(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/001385(WO,A1)
【文献】特開2017-057164(JP,A)
【文献】特表2017-509681(JP,A)
【文献】特開2017-210436(JP,A)
【文献】特表2018-516286(JP,A)
【文献】特表2017-538815(JP,A)
【文献】特表2014-534066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
B01J13/02-13/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)酸化剤を含有する酸化相;
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有するアルカリ相;および
(iii)ポリマーシェルとコアとを有し、コアが香料オイルを含有するコア・シェルマイクロカプセルであって、100~500ミクロンの平均サイズを有するマイクロカプセル
を含有する、酸化毛髪染色用組成物。
【請求項2】
コア・シェルマイクロカプセルが、組成物の全質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.2質量%~5質量%の量で添加されている、請求項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項3】
コア・シェルマイクロカプセルのポリマーシェルは、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートもしくは芳香族ポリオールにより架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン/アラビアゴムシェル壁およびこれら混合物からなる群から選択される材料から構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項4】
マイクロカプセルが、カチオン性コーティングを有していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項5】
オイルベースのコアが、
- LogT<-4を有する高インパクト香料原料を少なくとも15質量%含有する香料オイル25~100質量%、および
- 1.07g/cm超の比重を有する比重調整材料0~75質量%
を含有していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項6】
染料前駆体が、p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)-p-フェニレンジアミン、4-アミノフェノール、1,4-ジアミノ-ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項7】
カップリング剤が、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-クロロレゾルシノール、2,5-ジアミノ-トルエン、1,3-ジアミノ-ベンゼン、2,4-ジアミノフェノキシエタノールHCl、2-アミノ-ヒドロキシエチルアミノアニソールスルフェート、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエンおよびこれらの混合物からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項8】
酸化剤が、過酸化水素であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項9】
アルカリ性の薬剤が、水酸化アンモニウム、エタノールアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項10】
組成物がさらに、1もしくは複数の四級アンモニウム化合物、好ましくはセチルトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリドおよびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含有していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物。
【請求項11】
以下のもの:
(i)酸化剤を含有する第一の容器;および
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有する第二の容器
を含む毛髪染色用キットであって、第一の容器および/または第二の容器がさらに、ポリマーシェルと、封入された香料オイルを含有するコアとを有するコア・シェルマイクロカプセルを含有しており、前記マイクロカプセルが、100~500ミクロンの平均サイズを有していることを特徴とする、毛髪染色用キット。
【請求項12】
以下のステップ:
a)請求項1から10までのいずれか1項に記載の毛髪染色用組成物を毛髪に適用するステップ、
b)毛髪を放置するステップ、および
c)毛髪をシャンプーで洗浄するステップ
を含む、毛髪の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪染色用(ヘアカラーリング)組成物の分野に関する。本発明はより具体的には、付香されたオイルをベースとするコアと、ポリマーシェルとから構成されるマイクロカプセルを含有する酸化性の毛髪染色用組成物に関する。毛髪を染色する方法および毛髪染色用キットも本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
制御された方法で香りを放出するための、香料を含有するデリバリー・システムは香料産業において慣用されており、従来技術において文書にも多数示されている。
【0003】
使用中および使用後における強烈で強い香料の放出(つまり良好な嗅覚的性能)に対する消費者からの要求の増大は、新規のデリバリー・システムを開発する原動力となっている。
【0004】
さらに、これらのシステムは、物理的に分離したり分解したりすることなく、攻撃的なベースに耐えられるものでなくてはならない。これは、デリバリー・システムのための安定性に関する性能とよばれる。
【0005】
消費者製品次第であるが、消費者ベースは、程度の差はあるものの、攻撃的である。
【0006】
非常に攻撃的な媒体を含有している消費者製品の中でも、たとえば毛髪染色用システムが挙げられる。
【0007】
実際、毛髪染色用システムは、2つの主要なカテゴリーに分類される。これは、酸化によるシステムと、酸化によらないシステムであり、また適用後の色の耐久性(一時的であるか、永久的であるか)である。
【0008】
永久染毛剤は、酸化染毛剤とも呼ばれているが、染色の効率がよく、かつシャンプーにも抵抗性であることから、一般的に使用されている。
【0009】
これらは一般に、2成分(2剤)キットとして市販されている。1つの成分は染料前駆体およびカップリング剤をアルカリ性のベース中に含有しており、もう1つの成分は、過酸化水素が安定化された溶液である。これらの2つの成分は、使用直前に混合される。
【0010】
永久的なシステムの大部分は、アルカリベース中に水酸化アンモニウムを含んでいる。しかし、これらの2つの相を混合する時に、若干のアンモニアが放出され、これが混合時にユーザーによって知覚される不快感を生じ、かつシステムの適用の間および毛髪への適用を洗い流した後でさえ、毛髪に不快な臭いを残すことがある。そのため、このアンモニアの悪臭をマスクするために、毛髪染色用組成物にはしばしば香料が添加される。
【0011】
フレグランスが、封入されていないオイルとして存在している場合には、主な目標はフレグランスの性能を強化することと、使用の間および使用後、たとえば毛髪を洗って、乾かした後に、嗅覚的な知覚を持続させることである。さらに、毛髪染色用組成物は、香料の安定性に関して非常に問題となる攻撃的な成分を高レベルで含有しており、これによって、調香師が使用できる原材料のパレットが大いに制限される。
【0012】
従って、適用後(つまり毛髪を洗って、乾燥させた後)に香料を毛髪において放出するのみでなく、適用の間にも放出し、その際に香料が毛髪染色用組成物中で安定している酸化毛髪染色用組成物を提供する必要がある。
【0013】
本発明は、25ミクロン超のサイズを有するコア・シェルマイクロカプセルに封入された香料を含む毛髪染色用組成物をベースとして、上記の問題への解決策を提案するものである。封入によって、香料がマイクロカプセル外部のベースの攻撃的な成分によって分解されることから保護される。さらに、マイクロカプセルのサイズが適切であることで、適用時の香料の放出が補助される。
【0014】
発明の概要
本発明の第一の対象は、
(i)酸化剤を含有する酸化相;
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有するアルカリ相;
(iii)ポリマーシェルとコアとを有し、コアが香料オイルを含有するコア・シェルマイクロカプセルであって、25ミクロン以上の平均サイズを有するマイクロカプセル
を含有する酸化毛髪染色用組成物である。
【0015】
本発明の第二の対象は、
(i)酸化剤を含有する第一の容器;および
(ii)アルカリ化薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有する第二の容器
を含む毛髪染色用キットであって、これは、第一の容器および/または第二の容器がさらに、ポリマーシェルと、封入された香料オイルを含有するコアとを有するコア・シェルマイクロカプセルを含有しており、前記マイクロカプセルが、25ミクロン以上の平均サイズを有していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第三の対象は、
a)上記の毛髪染色用組成物を毛髪に適用するステップ、
b)毛髪を放置するステップ、および
c)毛髪をシャンプーで洗浄するステップ
を有する毛髪の染色方法である。
【0017】
発明の詳細な説明
断りがない限り、パーセントの記載(%)は、組成物の質量%を表すものと解釈する。
【0018】
本発明によれば、「封入されたオイル」とは、コア・シェルマイクロカプセルに封入されたオイルを指す。
【0019】
「コア・シェルマイクロカプセル」またはこれに類似した記載は、本発明では、ミクロン範囲(たとえば平均直径(d(v,0.5))が、25ミクロン以上、有利には30ミクロン以上、好ましくは70ミクロン以上、好ましくは100ミクロン以上、さらに好ましくは150ミクロン以上)の粒径分布を有し、かつ外側のポリマーシェルと、外側のシェルに囲まれた内側の連続オイル相とを有するカプセルであると解釈する。1実施態様によれば、マイクロカプセルは、25~2000ミクロン、好ましくは100~500ミクロン、さらに好ましくは150~500ミクロンに含まれる平均サイズを有する。
【0020】
本発明によれば、「平均直径」または「平均サイズ」という用語の使用に差異はない。
【0021】
平均サイズは、レーザー回折粒径分析装置によって測定した。
【0022】
本発明は意外にも、香料の放出は、25ミクロン以上、好ましくは100ミクロン以上の平均サイズを有するマイクロカプセルを用いると、特に有利であることを見出した。というのも、瞬間的なフラグランスの放出バースト(またはブルーミング)は、ユーザーが毛髪染色用組成物を毛髪に適用して泡立てた時の機械的作用によって、封入されたオイルから得られるものだからである。さらに、持続性の効果は、適用後にもユーザーが知覚することができる。
【0023】
従って、本発明の第一の対象は、
(i)酸化剤を含有する酸化相;
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有するアルカリ相
を含有する酸化毛髪染色用組成物であって、ポリマーシェルとコアとを有し、コアが香料オイルを含有し、かつ25ミクロン以上の平均サイズを有するコア・シェルマイクロカプセルを含んでいることを特徴とする酸化毛髪染色用組成物である。
【0024】
本発明によれば、染料前駆体およびカップリング化合物は、酸化剤の存在下で酸化染毛剤を形成すると解すべきである。
【0025】
毛髪染色用組成物は、酸化相および/またはアルカリ相に、前記マイクロカプセルを含有している。
【0026】
本発明の本質的な特徴の1つは、25ミクロン以上のサイズを有するマイクロカプセルの存在である。
【0027】
本発明のマイクロカプセルは、ブルーミングおよび持続効果に関して良好な性能を示し、これは良好な匂い性能へと言い換えられる。この点で、理想的な状況はマイクロカプセルがブルーミングにおいて、乾燥した毛髪において最善の性能を有していることと相まって、最善の性能を示すことであるものの、その適用に依存する異なったシナリオは極めて興味深く、かつブルーミング性能が若干劣るものの、持続性能が高いカプセルは、非常に有用であることも考えられ、逆もしかりである。本発明によるカプセルは、マイクロカプセルのサイズに依存して異なるブルーミング性能/持続性能を有している。当業者は、適用におけるニーズに応じて最善のバランスを選択することができる。
【0028】
非限定的な例として、25~70ミクロンの間に含まれる平均サイズを有するマイクロカプセルは、持続性にとって最適であり、100ミクロン超、好ましくは100~500ミクロンの平均サイズを有するマイクロカプセルは、ブルーミングにとって最適であることが判明した。
【0029】
コア・シェルマイクロカプセル
オイルベースのコア
本発明によれば、オイルベースのコアは、香料を含有している。
【0030】
特定の1実施態様によれば、オイルベースのコアは、香料と、機能性食品、化粧成分、殺虫剤および殺生物活性物質からなる群から選択されるもう1つの成分との混合物を含有している。
【0031】
特定の1実施態様によれば、オイルベースのコアは、香料からなる。
【0032】
「香料オイル」(または「香料」)とは、ここでは、約20℃で液体である成分または組成物を意味する。上記の実施態様のいずれかによれば、香料オイルは、付香成分単独であってもよいし、付香組成物の形の複数成分の混合物であってもよい。「付香成分」とは、ここでは、匂いを付与または変調することを主目的として使用される化合物を意味する。換言すれば、付香する成分であると考えられる成分、当業者によって少なくとも組成物に肯定的な、もしくは快適な匂いを付与するか、匂いをそのように修正することができると認識される成分であって、単に匂いを有するのみではない成分である。本発明の目的のためには、香料オイルは、付香成分と、付香成分と一緒に付香成分のデリバリーを改善するか、増強するか、もしくは修正する物質、たとえば香料前駆体、エマルション、もしくは分散液との組み合わせ、ならびに匂いを変調または付与する以外の付加的な利点、たとえば持続性、ブルーミング、悪臭の抑制、抗菌効果、微生物安定性もしくは殺虫をもたらす組み合わせも含む。
【0033】
油相に存在する付香成分の性質およびタイプは、ここでこれ以上詳細な記載を保証するものではないし、そのような詳細な記載はいずれにしても網羅することができるものではなく、当業者であれば、自身の一般的な知識に基づいて、および意図する使用もしくは適用および所望の感覚的効果に従って選択することができる。一般的に言えば、これらの付香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素もしくは硫黄を含むヘテロ環化合物および精油といった様々な化学的クラスに属し、前記の付香用補助成分は、天然由来であっても、合成されたものであってもよい。これらの補助成分の多くはいずれにしても、たとえばS. Arctanderの著書、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAまたはその最新版といった参考文献に、あるいは似たような性質のその他の文献、ならびに香料分野における数多くの特許文献に列挙されている。前記の成分は、様々なタイプの付香化合物を、制御された方法で放出することで知られている化合物であってもよいと理解される。
【0034】
付香成分は、目下、香料産業において使用されている溶剤中に溶解されていてもよい。溶剤はアルコールでないことが好ましい。そのような溶剤の例は、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、Abalyn(R)(Eastmanから入手可能なロジン樹脂)、ベンジルベンゾエート、エチルシトレート、リモネンまたはその他のテルペン類、またはイソパラフィンである。有利には、溶剤は、たとえばAbalyn(R)またはベンジルベンゾエートのように、非常に疎水性であり、立体障害度が高い。
【0035】
1実施態様によれば、オイルベースのコアは、
- LogT<-4を有する高インパクト香料原料を少なくとも15質量%含有する香料オイル25~100質量%、および
- 1.07g/cm超の比重を有する比重調整材料0~75質量%
を含む。
【0036】
付香化合物の匂いの閾値濃度は、ガスクロマトグラフ(GC)を用いて測定される。具体的には、シリンジを用いて注入された香料オイル成分の正確な体積、正確な分解比、および公知の濃度と鎖長分布の炭化水素標準物質を用いた炭化水素レスポンスを測定するようにガスクロマトグラフを較正する。空気の流量を正確に測定し、ヒトによる空気の吸入が12秒間継続することを前提として、サンプルの体積を計算する。任意のポイントにおける検出器のその都度の正確な濃度は公知であるから、吸入体積あたりの質量は公知であり、従って付香化合物の濃度も公知である。閾値濃度を決定するために、溶液を逆算された濃度における吸い込み(スニフ)ポートに送達する。パネリストは、GC溶離液の匂いを嗅いで、匂いを認識した時の保持時間を同定する。全パネリストの平均値によって、付香化合物の閾値濃度を決定する。匂いの閾値の決定は、C. Vuilleumier等による Multidimensional Visualization of Physical and Perceptual Data Leading to a Creative Approach in Fragrance Development, Perfume & Flavorist, Vol. 33, September, 2008, pp 54-61に、より詳細に記載されている。
【0037】
-4未満のLogTを有する高インパクト香料原料および1.07g/cm超の比重を有する比重調整材料の性質は、WO2018/115250に記載されており、その内容をここで参照することによって取り入れる。
【0038】
1実施態様によれば、-4未満のLogTを有する高インパクト香料原料は、以下の表Aのリストから選択される。
【0039】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0040】
1実施態様によれば、-4未満のLogTを有する高インパクト香料原料は、アルデヒド、ケトン、アルコール、フェノール、エステル、ラクトン、エーテル、エポキシド、ニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
1実施態様によれば、-4未満のLogTを有する高インパクト香料原料は、アルコール、フェノール、エステル、ラクトン、エーテル、エポキシド、ニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であり、有利には-4未満のLogTを有する香料原料の全質量を基準として、20~70質量%の量で含有されている。
【0042】
1実施態様によれば、-4未満のLogTを有する香料原料は、アルデヒド、ケトンおよびこれらの混合物を、-4未満のLogTを有する香料原料の全質量を基準として20~70質量%含有している。
【0043】
従って、オイルベースのコアに含まれている残りの香料原料は、-4超のLogTを有していてもよい。
【0044】
-4超のLogTを有する香料原料の非限定的な例は、表Bに記載されている。
【0045】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0046】
1実施態様によれば、オイルベースのコアは、1.07g/cm超の比重を有する比重調整材料を2~75質量%含有している。
【0047】
ある成分の比重は、その質量と体積との間の比率によって規定される(g/cm)。
【0048】
成分の比重を決定するためにはいくつかの方法が利用可能である。
【0049】
たとえば精油のd20比重を測定するためには、ISO298:1998法を参照することができる。
【0050】
1実施態様によれば、比重調整材料は、ベンジルサリチレート、ベンジルベンゾエート、シクロヘキシルサリチレート、ベンジルフェニルアセテート、フェニルエチルフェノキシアセテート、トリアセチン、メチルサリチレート、エチルサリチレート、ベンジルシンナメートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
特定の1実施態様によれば、比重調整材料は、ベンジルサリチレート、ベンジルベンゾエート、シクロヘキシルサリチレート、ベンジルシンナメートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
別の実施態様によれば、香料は、アルデヒド、ケトンおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の香料原料を、有利には香料オイルの全質量を基準として、20~70質量%の量で含有している。
【0053】
本発明により使用することができるアルデヒドの非限定的な例として、C6アルデヒド、C7アルデヒド、C8アルデヒド、C9アルデヒド、C10アルデヒド、C11アルデヒド、C12アルデヒド、ウンデセナール、酢酸メチルオクチルアルデヒド、アルデヒドmna、アルデヒドsupra、トリデシレンアルデヒド、ノニレンアルデヒド、cisノネナール、シトラール、シトロネラール、コステナール(9-デセナール)、デセナール、ジメチルヘプテナール、ドデセナール、ドデシサール、ヘプテナール、ハーブアルデヒド、ヘキセナール、メロナール(2,6-ジメチルヘプト-5-エナール)、ノナジエナール、ノナジエナール、ノナナール、ペラルゴジエナール、タンジェリナール、((4z)-4-ドデセナール)、トランスデセナール、ウンデセナール、virisal(R)(3,7-ジメチルオクタナール)、アクロパール、シクロベルタール、farenal(R)(2,6,10-トリメチルウンデセ-9-エナール)、イソシクロシトラール、イソフレシャール((5-もしくは6-)メチル-(7もしくは8)-(l-メチルエチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2-カルボアルデヒド)、liminal(R)、ノナナール、オクタナール、トランス-2ヘキセナール、トリメナール、トリベルタール、ゼストヴェル(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド)、アミルシンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シクロサール、フロロヒドラール、ミモサール、trifernal(R)((+-)-3-フェニルブタナール)、フロラロゾン、ヒベルナール、hivernal(R)neo、ブーゲオナール、リリアール、vulcanolide(R)、イソブタバン、アニスアルデヒド、フォリアヴール、フムサール、エチルバニリン、バニリン、ヘリオプロパナール、ヘリオトロピン、ピノアセトアルデヒド、ミソラール、サフラナール、tillenal(R)、ハーブアルデヒド、scentenal(R)、アルデヒドミュゲ50(2-(3,7-ジメチルオクト-6-エンオキシ)アセトアルデヒド)、プレシクレモンBおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
本発明により使用することができるケトンの非限定的な例として、メチルヘプチルケトン、エチルアミルケトン、エチルペンチルケトン、エチルビニルケトン、コアヴォン、メチルヘプテノン、メチルヘキシルケトン、メチルペンチルケトン、ムラントン、δ-ダマスコン、α-ダマスコン、ダマセノン、Iralia(R)total(メチルイオノン)、neobutenone(R)alpha、イソEスーパー(1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン)、Violet BC((3E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン)、Violet ATおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
別の実施態様によれば、香料オイルは、WO2012/084916に記載されているような匂い立ち(elevating)原料を含有しており、前記明細書の内容を参照することによってここに取り入れる。
【0056】
非限定的な例として挙げることができる、これらの基準を満足するPRMの例は以下の実施例にみることができる。特に、匂い立ち用PRMとして同定されるPRMの例は、イソプロピルメチルブチレート、サフラナール、シトロネロール、リナロール、ブチルアセテート、α-ビスアボロール、カルボン、Exaltolide(R)(ペンタデカノリド、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、Fructalate(R)(ジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、Koumalactone(R)((3aRS,6SR,7aSR)-ペルヒドロ-3,6-ジメチル-ベンゾ[B]フラン-2-オン、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、メチルベンゾエート、ジヒドロエストラゴール、アリルヘプタノエートおよびヒドロキシシトロネラールを含み、これらの中でもイソプロピルメチルブチレート、サフラナール、シトロネロール、ブチルアセテート、α-ビサボロール、カルボン、Exaltolide(R)(ペンタデカノリド、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、Fructalate(R)(ジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、Koumalactone(R)((3aRS,6SR,7aSR)-ペルヒドロ-3,6-ジメチル-ベンゾ[B]フラン-2-オン、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製)、メチルベンゾエートおよびアリルヘプタノエートが最も好適である。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも10質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも20質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも30質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも40質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも50質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも60質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも70質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも80質量%含有する。1実施態様によれば、香料は、香料の全質量を基準として、匂い立ち用PRMを少なくとも90質量%含有する。別の実施態様によれば、香料は全てが匂い立ち用PRMからなる。
【0057】
ポリマーシェル
本発明のマイクロカプセルのポリマーシェルの性質は様々であってよい。非限定的な例として、シェルは、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールにより架橋したメラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン/アラビアゴムのシェル壁およびこれらの混合物からなる群から選択される材料から構成されていてよい。
【0058】
1実施態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、メラミンホルムアルデヒド樹脂または少なくとも1種のポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールにより架橋したメラミンホルムアルデヒド樹脂をベースとする。
【0059】
シェルは、ハイブリッド、つまり有機と無機のハイブリッド、たとえば架橋された少なくとも2種類の無機粒子からなるハイブリッドシェル、またはポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から得られるシェルであってもよい。
【0060】
1実施態様によれば、シェルはアミノプラストコポリマー、たとえばメラミンホルムアルデヒド、または尿素ホルムアルデヒド、または架橋したメラミンホルムアルデヒド、またはメラミングリオキサールを含む。
【0061】
特定の1実施態様によれば、コア・シェルマイクロカプセルは、次のステップを含む方法によって得られる、架橋したメラミンホルムアルデヒドマイクロカプセルである:
1)香料オイルを、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1のポリイソシアネートと混合して油相を形成するステップ、
2)アミノプラスト樹脂および任意で安定剤を水に分散させるか、または溶解して水相を形成するステップ、
3)油相を水相に添加して水中油型分散液を形成するステップであって、油相と水相とを混合することによる平均液滴サイズは25~1000ミクロンであるステップ、
4)硬化ステップを実施してマイクロカプセルの壁を形成するステップ、
5)任意で最終分散液を乾燥させて、乾燥したコア・シェルマイクロカプセルを得るステップ。
【0062】
この方法は、WO2013/092375およびWO2015/110568に、より詳しく記載されており、その内容を参照することによりここに取り入れる。
【0063】
もう1つの実施態様によれば、シェルは、たとえばイソシアネートベースのモノマーとアミン含有架橋剤、たとえばグアニジンカボネートおよび/またはグアナゾールとから構成されるポリウレアベースであってもよいが、これらに限定されるわけではない。有利なポリウレアベースのマイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1のポリイソシアネートと、アミン(たとえば水溶性グアニジン塩およびグアニジン)からなる群から選択される少なくとも1の反応相手との重合による反応生成物であるポリウレア壁と、コロイド状安定剤または乳化剤と、封入された香料とを有する。しかしアミンの使用は省略することができる。
【0064】
もう1つの実施態様によれば、シェルは、たとえばポリイソシアネートとポリオール、ポリアミド、ポリエステル等から構成されるポリウレアベースであるが、これらに限定されるわけではない。
【0065】
特定の1実施態様によれば、コロイド状安定剤は、ポリビニルアルコールの0.1%~0.4%水溶液、ビニルピロリドンおよび四級化ビニルイミダゾールのカチオン性コポリマーの0.6%~1%水溶液を含む(全てのパーセンテージは、コロイド状安定剤の全質量を基準とする)。もう1つの実施態様によれば、乳化剤は、好ましくは、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、ビートペクチン、ダイズタンパク加水分解物、セリシン加水分解物、シュードコラーゲン、バイオポリマーSA-N、ペンタケア-NA PF、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、変性デンプン、変性セルロース、多糖類、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性もしくは両親媒性のバイオポリマーである。
【0066】
特定の1実施態様によれば、ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、好ましくはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチルもしくはジフェニル成分を含む芳香族ポリイソシアネートである。有利な芳香族ポリイソシアネートは、ビウレットおよびポリイソシアヌレートであり、さらに有利にはトルイレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(Bayer社から商品名Desmodur(R)RCで市販)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Bayer社から商品名Desmodur(R)L75で市販)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社から商品名Takenate(R)D-110Nで市販)である。
【0067】
特定の1実施態様によれば、ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社から商品名Takenate(R)D-110Nで市販)である。
【0068】
コア・シェルマイクロカプセルの水性分散液/スラリーの製造は、当業者に周知である。1つの態様では、前記のマイクロカプセル壁の材料は、任意の適切な樹脂を含有していてよく、これらは特にメラミン、グリオキサール、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等を含む。適切な樹脂は、アルデヒドおよびアミンの反応生成物を含み、適切なアルデヒドは、ホルムアルデヒドおよびグリオキサールを含む。適切なアミンは、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、およびこれらの混合物を含む。適切なメラミンは、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミンおよびこれらの混合物を含む。適切な尿素は、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素レゾルシノールおよびこれらの混合物を含む。製造に適した材料は、以下の1もしくは複数の企業から入手することができる:Solutia Inc.(米国ミズーリ州St Louis在)、Cytec Industries(米国ニュージャージ州West Paterson在)、Sigma-Aldrich (米国ミズーリ州St. Louis在)。
【0069】
具体的な1実施態様によれば、コア・シェルマイクロカプセルは、ホルムアルデヒド不含のカプセルである。ホルムアルデヒド不含のアミノプラストマイクロカプセルスラリーの典型的な製造方法は、以下のステップを含む:
1)以下の成分の反応生成物もしくは以下の成分を一緒に反応させることにより得られるオリゴマー組成物を準備するステップ:
a)メラミンもしくはメラミンおよび2つのNH官能基を有する少なくとも1のC1~C4化合物の混合物の形のポリアミン成分、
b)グリオキサール、C~C-2,2-ジアルコキシエタナールおよび任意でグリオキサレートの混合物であって、グリオキサール/C~C-2,2-ジアルコキシ-エタナールのモル比が1/1~10/1である混合物の形のアルデヒド成分、および
c)プロトン酸触媒
2)水中油型分散液を準備するステップであって、液滴のサイズは25~1000ミクロンであり、分散液は、
i.オイル、
ii.水性媒体、
iii.ステップ1)で得られた少なくとも1のオリゴマー組成物、
iv.以下のものから選択される少なくとも1の架橋剤:
A)C~C12芳香族もしくは脂肪族のジイソシアネートもしくはトリイソシアネートおよびそれらのビウレット、トリウレット、三量体、トリメチロールプロパン付加物およびこれらの混合物、および/または
B)式
A-(オキシラン-2-イルメチル)
のジオキシランまたはトリオキシラン化合物であって、上記式中で、nは、2または3を表し、Aは、任意で2~6個の窒素原子および/または酸素原子を有するC~C基を表す化合物、
v.任意で2つのNH官能基を有するC~C化合物
を含む、
3)前記の分散液を加熱するステップ、
4)前記の分散液を冷却するステップ。
【0070】
この方法は、WO2013/068255に、より詳しく記載されており、その内容を引用することによりここに取り入れる。
【0071】
もう1つの実施態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリウレアベースであるか、またはポリウレタンベースである。ポリウレアベースまたはポリウレタンベースのマイクロカプセルスラリーを製造する方法の例は、たとえばWO2007/004166、EP2300146、EP2579976に記載されており、これらの内容も、引用することによってここに取り入れる。一般に、ポリウレアベースまたはポリウレタンベースのマイクロカプセルスラリーを製造する方法は、以下のステップを含む:
a)少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1のポリイソシアネートを、オイルに溶解して油相を形成するステップ、
b)乳化剤またはコロイド状安定剤の水溶液を製造して水相を形成するステップ、
c)油相を水相に添加して水中油型分散液を形成するステップであって、平均液滴サイズは、25~1000ミクロン、好ましくは100~1000μmであるステップ、
d)界面重合を開始するために十分な条件を適用してスラリーの形のマイクロカプセルを形成するステップ。
【0072】
本発明によれば、カプセル封入の後で、マイクロカプセルの性質の如何に関わらず、カプセル内部のコアは、香料オイルからなるコアオイルのみからなるものと理解すべきである。
【0073】
本発明の毛髪染色用組成物は、マイクロカプセル中のコアの香料オイルおよび/または壁によって変更されうる(異なった化学的性質または同じ化学的性質であっても、異なったプロセスパラメータ、たとえば架橋温度または時間)マイクロカプセルを含むことができる。
【0074】
カチオン性コーティング
本発明の特定な1実施態様によれば、マイクロカプセルは、非イオン性多糖類、カチオン性ポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される、外側のコーティングを有している。
【0075】
そのようなコーティングは、洗浄プロセスにおいてカプセルが基材に堆積し、かつ維持されることの助けになるため、使用/洗浄段階/泡立ての間に破壊されなかった著量のカプセルが毛髪に移行し、乾燥後に摩擦によってカプセルが破壊された時に香料が放出される。
【0076】
非イオン性多糖類ポリマーは当業者に周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーン(イナゴマメ)ゴム、キシログルカン、グアーゴム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される。
【0077】
カチオン性ポリマーもまた、当業者には周知である。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、さらに好ましくは少なくとも約1.5meq/g、しかしまた好ましくは約7meq/g以下、さらに好ましくは約6.2meq/g以下のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、US Pharmacopoeiaの窒素を測定するための化学的試験に記載されているようなKjeldahl法により測定することができる。好ましいカチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖の一部を形成することができるか、または主鎖に直接結合している側鎖の置換基に含まれうる、第一級、第二級、第三級および/または第四級アミノ基を含む単位を含有するポリマーから選択される。カチオン性ポリマーの質量平均分子量(Mw)は好ましくは、10000~3500000ダルトン、より好ましくは50000~2000000ダルトンである。
【0078】
特定の1実施態様によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、四級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、四級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドをベースとするカチオン性ポリマーを使用する。好ましくは、コポリマーは、ポリクアテルニウム-5、ポリクアテルニウム-6、ポリクアテルニウム-7、ポリクアテルニウム-10、ポリクアテルニウム-11、ポリクアテルニウム-16、ポリクアテルニウム-22、ポリクアテルニウム-28、ポリクアテルニウム-43、ポリクアテルニウム-44、ポリクアテルニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、またはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群から選択される。
【0079】
市販品の具体例として、Salcare(R)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドのカチオン性コポリマー、BASF社製)またはLuviquat(R)、たとえばPQ11N、FC550またはStyle(ポリクアテルニウム-11~68、またはビニルピロリドンの四級化コポリマー、BASF社製)、またはJaguar(R)(C13SまたはC17、Rhodia社製)を挙げることができる。
【0080】
特定の1実施態様によれば、コア・シェルの形態を有し、以下のものを含有するマイクロカプセルはポリウレアベースであって、カチオン性コーティングを有していないマイクロカプセルである:
- 香料を含有するオイルベースのコア、
- 少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1のポリイソシアネートから、ポリアミンまたはアミンの不在下で形成される、重合したポリイソシアネートと、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、ビートペクチン、ダイズタンパク加水分解物、セリシン加水分解物、シュードコラーゲン、バイオポリマーSA-N、ペンタケア-NA PF、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、変性デンプン、変性セルロース、多糖類、およびこれらの混合物からなる群から選択される乳化剤とから実質的に構成されるシェル。
【0081】
1実施態様によれば、ポリウレアベースのマイクロカプセルは、以下のステップ:
a)香料オイルを、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1のポリイソシアネートと混合して油相を形成するステップ、ただし油相は実質的にジイソシアネートを含まない、
b)イオン性もしくは非イオン性乳化剤を水中に溶解して水相を形成するステップであって、イオン性乳化剤は、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、ビートペクチン、ダイズタンパク加水分解物、セリシン加水分解物、シュードコラーゲン、バイオポリマーSA-N、ペンタケア-NA PFおよびこれらの混合物からなる群から選択され、非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、変性デンプン、変性セルロース、多糖類およびこれらの混合物からなる群から選択されるステップ、
c)油相を水相に添加して水中油型分散液を形成するステップ、
d)界面重合を開始するために十分な条件を適用して、スラリーの形のマイクロカプセルを形成するステップ
を含む方法によって得られ、この方法は、
- 少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1のポリイソシアネートが、1~15質量%に含まれる量で油相に存在する、
- アミンまたはポリアミンは、プロセスのいずれの段階でも著量で添加されることがない、および
- カチオン性ポリマーを添加してマイクロカプセルの外側のコーティングを形成する、さらなるステップを含んでいない
ことによって特徴付けられる。
【0082】
ブルーミング効果は、マイクロカプセルが100ミクロンよりも大きな平均サイズを有していると特に強力であることが示された。
【0083】
従って、特定の1実施態様によれば、マイクロカプセルは、100ミクロン超の平均サイズを有しており、好ましくは100~500ミクロン、より好ましくは150~500ミクロンの平均サイズを有している。
【0084】
1実施態様によれば、マイクロカプセルは、組成物の全質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.2質量%~5質量%の量で使用される。
【0085】
当然のことながら、上記の濃度は、それぞれの製品において所望される嗅覚効果に従って調節することができる。
【0086】
本発明によれば、酸化毛髪染色用組成物は、
(i)酸化剤を含有する酸化相;
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有するアルカリ相;
(iii)ポリマーシェルとコアとを有し、コアが香料オイルを含有するコア・シェルマイクロカプセルであって、25ミクロン以上の平均サイズを有するマイクロカプセル
を含有する。
【0087】
本発明の毛髪染色用組成物は、酸化毛髪染色用組成物である。
【0088】
「酸化毛髪染色用組成物」とは、2つのグループの無色の染料分子を含む組成物を意味する。これらの分子はつまり、染料前駆体と、カップリング剤である。酸化プロセスによって互いに反応することで、これらの分子は広い範囲の着色分子(染料)を形成し、これらの分子が次いで、その大きさによって毛髪に捕らえられる。換言すれば、染料前駆体およびカップリング化合物が、酸化剤の存在下で、酸化染毛剤を形成する。
【0089】
本発明において、「染料前駆体」および「酸化染料前駆体」の使用に相違はない。
【0090】
染料前駆体
染料前駆体は、少なくとも2つの電子供与基、たとえばNHおよびOHによってパラ位またはオルト位で置換されて酸化されやすい性質のベンゼンから誘導された芳香族化合物であってもよい。
【0091】
1実施態様によれば、染料前駆体は、p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)-p-フェニレンジアミン、4-アミノフェノール、1,4-ジアミノ-ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0092】
主な染料前駆体は、カップリング剤との組合せで使用される。カップリング剤は有利には、ベンゼンから誘導され、かつNHおよびOHのような基によってメタ位で置換され、単独で発色することはないが、色を修飾して、染料前駆体により発色された色に陰影を付けたり、強化する芳香族化合物である。
【0093】
1実施態様によれば、カップリング剤は、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-クロロレゾルシノール、2,5-ジアミノ-トルエン、1,3-ジアミノ-ベンゼン、2,4-ジアミノフェノキシエタノールHCl、2-アミノ-ヒドロキシエチルアミノアニソールスルフェート、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0094】
酸化染料前駆体は好ましくは、組成物の全質量を基準として、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~4質量%の量で使用される。
【0095】
毛髪染色用組成物中での酸化染料前駆体およびカップリング剤の使用は、従来技術に広く開示されており、当業者には周知である。たとえばEP0946133A1を挙げることができ、その内容を参照することによりここで取り入れる。
【0096】
アルカリ相
アルカリ相は、アルカリ性の薬剤を含有しており、これは好ましくは水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、エタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0097】
アルカリ性の薬剤は好ましくは、組成物の全質量を基準として、1質量%~10質量%、好ましくは3質量%~9質量%の量で使用される。
【0098】
本発明によれば、カップリング剤および染料前駆体はアルカリ性の媒体中で、酸化剤の存在下に酸化性のヘアダイを形成する。
【0099】
酸化剤
酸化剤は、分子を発色させ、ヘアカラーにおける変化をもたらすために必要な酸素ガスを供給する。
【0100】
酸化剤は、組成物中での使用にとって安全で効果的でなくてはならない。
【0101】
好ましくは、本発明で使用するために適切な酸化剤は、液状で、および/または使用を意図した形で、本発明による組成物中で可溶性である。
【0102】
好ましくは、本発明で使用するために適切な酸化剤は、水溶性である。本発明で使用するために適切な酸化剤は、無機ペルオキシ酸化剤、前もって成形された有機ペルオキソ酸酸化剤および有機過酸化物酸化剤またはこれらの混合物から選択される。
【0103】
酸化剤は好ましくは、組成物の全質量を基準として、5~30質量%、好ましくは5~25質量%の量で使用される。
【0104】
任意の成分
化粧品組成物において慣用の成分を、本発明において定義した毛髪染色用組成物に添加することができる。たとえば、界面活性剤、カチオン性ポリマー、油状物質、シリコーン誘導体、フリーの(封入されていない)香料、保存剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、発泡剤もしくは噴射剤、増粘剤を挙げることができる。
【0105】
特定の1実施態様によれば、毛髪染色用組成物は、ヘアコンディショナーの利点を付与するために、1もしくは複数の四級アンモニウム化合物、好ましくはセチルトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含有する。
【0106】
四級アンモニウム化合物は好ましくは、組成物の全質量を基準として、0.1質量%~5質量%に含まれる量で使用される。
【0107】
毛髪染色用キット
永久的な毛髪染色用組成物は一般に、使用前に酸化反応が起こることを回避するために、2成分キットとして市販されている。
【0108】
従って、本発明のもう1つの対象は、
(i)酸化剤を含有する第一の容器;および
(ii)アルカリ性の薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有する第二の容器
を含む毛髪染色用キットであって、これは、第一の容器および/または第二の容器がさらに、ポリマーシェルと、封入された香料オイルを含有するコアとを有するコア・シェルマイクロカプセルを含有しており、前記マイクロカプセルが、25ミクロン以上の平均サイズを有していることを特徴とする。
【0109】
1実施態様によれば、毛髪染色用キットは、
(i)酸化剤を含有している酸化相を含む第一の容器、および
(ii)アルカリ化薬剤、染料前駆体、およびカップリング化合物を含有しているアルカリ相を含む第二の容器
を含み、酸化相および/またはアルカリ相がさらに、ポリマーシェルと、封入された香料オイルを含むコアとを有し、25ミクロン以上の平均サイズを有するコア・シェルマイクロカプセルを含有していることを特徴とする。
【0110】
毛髪染色用組成物に関して上に記載した実施態様は、毛髪染色用キットにも該当する。
【0111】
好ましい1実施態様によれば、マイクロカプセルは、アルカリ性の薬剤を含有する容器中に存在する。
【0112】
毛髪を染色する方法
本発明による毛髪染色用組成物は、この分野で周知の方法に従って製造することができる。
本発明による毛髪染色用組成物を毛髪に使用するためには、毛髪に毛髪染色用組成物を適用し、毛髪を放置し、次いでシャンプーで毛髪を洗浄すればよいのみである。より具体的には、必要量の組成物を毛髪に、たとえばクシもしくはブラシを使用して適用し、こうして組成物が適用された毛髪を約1~30分放置し、次いでシャンプーで洗浄する。
【0113】
従って、本発明のもう1つの対象は、
a)上記の毛髪染色用組成物を毛髪に適用するステップ、
b)毛髪を放置するステップ、および
c)毛髪をシャンプーで洗浄するステップ
を含む、毛髪の染色方法である。
【0114】
上記のとおり、毛髪染色用組成物は一般に、使用前に酸化反応が生じることを回避するために2成分キットとして提供されているので、組成物を毛髪に適用する前にユーザーが上記のキットの第一の容器の中身と、第二の容器の中身とを混合する必要がある。
【実施例
【0115】
例1
マイクロカプセルの製造
1-A→マイクロカプセルA(ポリウレアベース-300ミクロン)
以下の成分を使用してマイクロカプセルAを製造した:
【表3】
1) 第2表参照
2) Takenate(R) D-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物)、三井化学株式会社製および同社の商標、ポリイソシアネート75%/酢酸エチル25%
3) アラビアゴム、Alland & Robert社製品および同社の商標
【0116】
【表4】
1) スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
2) 1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
3) 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
4) メチルジヒドロジャスモネート、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
5) ペンタデセノリド、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
【0117】
ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(R) D-110N、三井化学株式会社製)を第1表に記載の量で香料オイルAと混合することにより油相を製造した。
【0118】
アラビアゴムを水中に溶解することにより水相を製造した。香料/ポリイソシアネートのプレミックスオイルを、230rpmで撹拌しながら水相に分散させることによりエマルションを製造した。エマルションのpHを測定すると、6.7であった。温度を70℃に上げ、70℃で1時間30分保持し、カプセルを硬化させた。この時点で、カプセルが形成され、架橋され、かつ安定した。混合物を室温まで冷却させた。
【0119】
カプセル封入およびカプセル壁を製造するためのTakenate(R) D-110Nの使用の後、香料オイル中の未反応のポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く(10ppm以下)、従ってカプセル内部のコアは、実質的に香料オイルから構成されていた。カプセルのサイズの分布は、光学顕微鏡および光の散乱(Mastersizer 3000、Malvern)により制御され、300ミクロンであった。
【0120】
1-B→マイクロカプセルB(メラミングリコールベース-30ミクロン)
丸底フラスコ中で、メラミン(0.8g)、2,2-ジメトキシエタナール(水中60質量%、1.22g)、グリオキサール(水中40質量%、1.54g)および2-オキソ酢酸(水中50質量%、0.52g)を室温で水中(2.06g)に分散させた。分散液のpH値は、水酸化ナトリウム(水中30質量%、0.86g、pH=9.5)により制御した。反応混合物を45℃で25分間加熱して、溶液が得られた。次いで、水(6.72g)を添加し、樹脂が完全に透明になるまで、45℃で撹拌した。
【0121】
樹脂を200mLのビーカーに移した。グアナゾール(0.55g)を、Ambergum 1221の溶液(水中2質量%、25.18g)に溶解した。得られた溶液をビーカーに移した。Takenate D-110N(1.94g)の油溶液および香料オイルA(第2表に記載の組成物)(24.97g)を水溶液に添加した。2相の反応混合物を、ウルトラ・ツラックスを用いて24000rpmで2分間せん断した。酢酸(0.14g)を添加して、重縮合を開始した(pH=5.35)。エマルションの質は、光学顕微鏡で制御した。エマルションを200mLのSchmizo反応器に移し、45℃で1時間加熱し、次いで60℃で1時間、最後に80℃で30分加熱し、25分で70℃に冷却した。次いで、第一のカチオン性コポリマー、つまりアクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー(Salcare SC60、BASF社製)(18.96g、水中3質量%)および第二のカチオン性コポリマーであるポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル(Jaguar C13S、Rhodia社製)(9.71g、水中1質量%)を添加し、反応混合物を70℃で1時間加熱した。最後に尿素溶液(4.54g、水中40質量%)を反応混合物に添加し、これを70℃で30分間加熱した。
【0122】
カプセルのサイズ分布は、光学顕微鏡および光の散乱(Mastersizer 3000、Malvern)により制御され、平均粒径は30ミクロンであった。
【0123】
1-C→比較マイクロカプセルC(メラミングリオキサールベース-10ミクロン)
比較マイクロカプセルCは、カプセルBと同じプロトコルを使用して製造したが、但し、平均粒径は10ミクロンであった。
【0124】
例2
毛髪染色用組成物の嗅覚的性能
【表5】
1) Carbopol EDT 2050
2) Covastyle PAP
3) Covastyle MAP
4) Covastyle MPDS
5) Resorcine
6) Arlypon F
7) Lipocol L 12
8) Cutina AGS
9) Emulgin O 30
10) Lanette O
11) Covastyle PAP
12) Dehyquart A-CA
13) Dissolvine D-40
14) Covastyle MBS
15) アスコルビン酸
16) 第6表を参照
【0125】
手順:
相Aの全ての成分を混合し、75℃になるまで加熱した。
相Bの全ての成分を合し、70~75℃で溶融させた。
相Bを相Aに(両相とも70~75℃で)十分に撹拌しながら添加した。40℃に冷却されるまで混合を継続した。相Cの残りの成分を撹拌下に添加した。
【0126】
【表6】
1) Carbopol Ultrez 10 Polymer
2) Covastyle PAP
3) Covastyle MAP
4) Covastyle MPDS
5) Resorcine
6) Lipocol L 12
7) Arlypon F
8) Dow Corning 200 Fluid 350
9) Lanette O
10) Eumulgin O 30
11) Cutina AGS
12) Covastyle MBS
13) Dissolvine D-40
14) Merquat 280
15) 水酸化アンモニウム、30%水溶液
16) 第6表を参照
【0127】
手順:
相Aの全ての成分を混合し、75℃になるまで加熱した。
相Bの全ての成分を合し、70~75℃で溶融させた。
相Bを相Aに(両相とも70~75℃で)十分に撹拌しながら添加した。室温に冷却されるまで混合を継続しながら相Cを添加した。室温で相Dの成分を撹拌しながら添加した。相Cの残りの成分を撹拌下に添加した。
【0128】
【表7】
1) Crodafos CS 20 Acid
2) Paraffin Oil 30-40 cPs
3) Acetulan
4) Brij 78P
5) 過酸化水素35%水溶液
6) 第6表を参照
【0129】
手順:
相Aの全ての成分を混合し、75℃になるまで加熱した。
相Bの全ての成分を合し、70~75℃で溶融させた。
相Bを相Aに(両相とも70~75℃で)十分に撹拌しながら添加し、室温に冷却されるまで混合を継続した。室温で相Cの残りの成分を撹拌下に添加した。
【0130】
【表8】
1) テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)ピラノール、スイス国ジュネーブ在Firmenich SA社製
2) 2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、米国在International Flavors & Fragrances
【0131】
マイクロカプセルA、BまたはCを、アルカリベースBに添加した。アルカリベースB 2gを、酸化ベースC 2gと混合し、香料の強度を評価した:
・2つのベースの混合時
・混合物をクシで毛髪に適用した時
・クシで梳かしたあとの乾いた毛髪に適用した時
【0132】
嗅覚的性能
付香されたマイクロカプセルを含有する、本発明において記載した組成物の嗅覚的効果を測定するために、コーカソイドの茶色い毛髪サンプル10gを長さ20cmで使用して、平坦な金属チップで固定した。この評価のために、平坦に束ねたコーカソイドの毛髪を選択したが、その理由は、コーカソイドの毛髪は、直径が比較的小さいため、アジア人の太くて粗い毛髪と比較して、粘性のコンディショナー組成物の適用の良好な再現性が保証されうるからである。アルカリベースB 2gを酸化剤ベースC 2gと混合した後で、ガラス板の上に置かれ、クシで広げられたサンプルに、着色用の生成物4gを平たいブラシで適用した。毛髪用着色剤を適用した直後に、8名のパネリストのグループによってサンプルの嗅覚的評価を行った。評価は、コード化したサンプルでランダムに行った。強度は、1~7(1=匂いなし、7=最大の匂い強度)で報告された。8名のパネリストによる評価の平均値が報告された。強度の値が5以上の場合を、カプセルの性能が高いと見なすことができる。
【0133】
香料の強度を評価した:
・2つのベースの混合時
・混合物をクシで毛髪に適用した時
・クシで梳かしたあとの乾いた毛髪に適用した時
これらの結果は、以下の表に示されている。
【0134】
【表9】
【0135】
同じ量の香料A(0.25%)は、より大きなカプセルに封入された場合には、機械的せん断が適用された際に、より強力な香料のインパクトを送達した。カプセルB(30ミクロン)およびカプセルA(300ミクロン)については、2つの相を混合する段階ですでにインパクトがあったが、このインパクトは、クシで生成物を毛髪に適用した時に一段と強力であった。非常に小さいカプセルC(10ミクロン)は、カプセルを有していない参考例に対して、利点をもたらすものではないように見えるが、30ミクロンのカプセルBではすでに香料強度の利点が存在し、この利点は、300ミクロンのカプセルAでは、はるかに強力であった。乾燥した毛髪では、カプセルC(10ミクロン)およびカプセルB(30ミクロン)は、合した後に良好な香料の増幅があったが、非常に大きいカプセルA(300ミクロン)では、増幅はむしろ限定されていた。
【0136】
例3
異なったサイズのマイクロカプセルの製造
3-A→比較マイクロカプセル3A(ポリウレアベース-13ミクロン)
例1でカプセルAについて記載したものと同じプロトコルを使用して、マイクロカプセル3Aを製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は13ミクロンであり、異なった香料Cを用いた。第8表を参照のこと。
【0137】
【表10】
1) メチル-2-((1RS,2RS)-3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセテート、Firmenich SA
2) スピロ[1,4-メタノナフタレン-2(1H),2′-オキシラン]、3,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-3´,7-ジメチル、Firmenich SA
3) (3E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン
4) 2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド
【0138】
3-B→マイクロカプセル3B(ポリウレアベース-70ミクロン)
カプセル3Aの場合と同じプロトコルを使用してマイクロカプセル3Bを製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は70ミクロンであった。
【0139】
3-C→マイクロカプセル3C(ポリウレアベース-140ミクロン)
比較マイクロカプセル3Cは、カプセル3Aの場合と同じプロトコルを使用して製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は140ミクロンであった。
【0140】
3-D→マイクロカプセル3D(ポリウレアベース-360ミクロン)
比較マイクロカプセル3Dは、カプセル3Aの場合と同じプロトコルを使用して製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は360ミクロンであった。
【0141】
3-E→比較マイクロカプセル3E(メラミングリオキサールベース-10ミクロン)
例1においてカプセルBについて記載したものと同じプロトコルを使用してマイクロカプセル3Eを製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は10ミクロンであり、異なった香料Cを使用した。第8表を参照のこと。
【0142】
3-F→マイクロカプセル3F(メラミングリオキサールベース-40ミクロン)
比較マイクロカプセル3Fは、カプセル3Eの場合と同じプロトコルを使用して製造したが、但し、これらのマイクロカプセルの平均粒径は40ミクロンであった。
【0143】
例5
毛髪染色用組成物の嗅覚的性能
香料D(第13表を参照のこと)を、例2に記載の毛髪着色用ベースに添加した。
【0144】
【表11】
1) 2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド
2) 2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、IFF
3) 3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール
4) メチル2-((1RS,2RS)-3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセテート、Firmenich SA
5) 1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、IFF
6) (3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、Firmenich SA
7) ペンタデセノリド
【0145】
マイクロカプセル3A、3B、3C、3Dまたは3Eを、アルカリベースBに添加した。アルカリベースB 2gを、酸化ベースC 2gと混合して、香料の強度を、上記のプロトコルに従って評価した:
・2つのベースの混合時
・混合物をクシで毛髪に適用した時
・クシで梳かしたあとの乾いた毛髪に適用した時
これらの結果は、以下の表に示されている。
【0146】
【表12】
【0147】
同じ量の香料A(0.1%)は、より大きなカプセルに封入された場合には、機械的せん断が適用された際により強力な香料のインパクトを送達した。カプセル3-B(73ミクロン)、3-C(140ミクロン)、3-D(360ミクロン)および3Fについては、2つの相を混合する段階ですでにインパクトがあったが、このインパクトは、ブラシで、100ミクロンよりも大きいカプセル3-Cおよび3-Dを毛髪に適用した時には一段と強力であった。40ミクロンと粒径が小さいメラミングリオキサールカプセル(3-E)は、合した後に良好な香料の増幅があった。