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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】不織布処理用の液体ポリマー溶液
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20231114BHJP
   D06M 15/03 20060101ALI20231114BHJP
   D06M 15/15 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/03
D06M15/15
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020554114
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019025361
(87)【国際公開番号】W WO2019195271
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】62/651,417
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520377691
【氏名又は名称】ポリグリーン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブセブスチ、ミルセア ダン
(72)【発明者】
【氏名】メイリ、ツビ
(72)【発明者】
【氏名】シャハール、シャイ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-512627(JP,A)
【文献】特表2007-528918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0193516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
D04H1/00-18/04、
C08L101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイルの含浸領域のパターンを作るポリマー網目構造により含浸されたテキスタイル繊維を含むテキスタイル複合品であって、前記ポリマー網目構造が、非ポリマー架橋剤の不在下で合成ポリマーに架橋された天然ポリマーを含み、前記ポリマー網目構造を伴わない同テキスタイルとの比較において吸水性が少なくとも10%高く、
前記天然ポリマーはゼラチン、グアー、及びデンプンからなる群から選択され、
前記合成ポリマーは塩形態のスチレン/マレイン酸コポリマーである、
テキスタイル複合品。
【請求項2】
生分解性である、請求項1に記載のテキスタイル複合品。
【請求項3】
吸収性製品に使用するための請求項1に記載のテキスタイル複合品。
【請求項4】
前記吸収性製品が、クリーニングワイプ、家庭用又は施設用のクリーニング又はメンテナンス機器、ハンドワイプ、ハンドタオル化粧品若しくは生理用ワイプ、ベビーワイプ、顔用ティッシュ、衛生吸収パッド、パンティー、及び創傷被覆材ら選択される、請求項3に記載のテキスタイル複合品。
【請求項5】
ポリマー複合水溶液で処理するテキスタイル材料の吸水性の改善に使用するためのポリマー複合水溶液の調製方法であって、
ポリマー複合水溶液が、非ポリマー架橋剤の不在下、制御された温度及び時間の条件下で自己架橋が行われる天然及び合成ポリマーの網目構造を含み、
a)アルカリ性塩基溶液を調製すること、
b)塩形態の、マレイン及びスチレンのモノマーを有する合成ポリマーSP:synthetic polymer)のポリマー溶液を調製することであって、SPと水を(a)からのアルカリ性溶液と混合することにより当該塩形態を得ること、
c)ゼラチン、グアー、及びデンプンからなる群から選択される天然ポリマーNP:natural polymer)の水溶液を加熱下で調製すること、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得ること、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加えること
を含む、方法。
【請求項6】
繊維材料の吸水性を改善させるためのポリマー水性複合溶液であって、塩形態のスチレンマレイン酸コポリマーと水酸化物を含む合成ポリマー水溶液とゼラチンを含む水溶液との混合物を含む、ポリマーの水性複合溶液。
【請求項7】
繊維及び生分解性超吸収性ポリマーを含むテキスタイル複合品用の材料を調製する方法であって、当該方法が
a)フーラード、ロールコーティング、リバースロールコーティング、ナイフ装置、又はそのいずれかの組み合わせにより、前記繊維に、請求項の方法により調製されるポリマー複合水溶液を塗布すること;及び
b)水の熱駆動除去、次いで自己架橋が行われて、テキスタイルの含浸領域のパターンを作るポリマー網目構造により含浸されたテキスタイル繊維を含むテキスタイル複合品を製造すること、
を含み、
前記ポリマー網目構造が、非ポリマー性架橋剤の不在下で合成ポリマーに架橋された天然ポリマーを含み、
前記テキスタイル複合品が、前記ポリマー網目構造なしの同じテキスタイルと比較して少なくとも10%高い吸水性を有し、
前記繊維が、合成繊維、天然繊維、又は合成繊維と天然繊維の混合物から作られた、不織布、織布、又はニットのテキスタイル材料であり、
前記天然ポリマーはゼラチン、グアー、及びデンプンからなる群から選択され、
前記合成ポリマーは塩形態のスチレン/マレイン酸コポリマーである、
方法。
【請求項8】
熱駆動除去が50~90℃の範囲の温度で行われ、自己架橋が90~180℃の範囲の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
自己架橋が100~250℃の温度で2~30分の期間行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の方法を実施することを含む、テキスタイル複合品を製造する方法
【請求項11】
請求項1若しくは記載のテキスタイル複合品の又は請求項10に記載の方法により製造されるテキスタイル複合品の、吸収性製品への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、織布又は他のテキスタイル材料タイプなどの吸水性テキスタイル材料及び関連する吸収製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、吸収性テキスタイル材料を製造するための既知の方法があり、これらは2つの異なるクラス:a)テキスタイル繊維及びポリマー吸収剤を用いる方法、b)既製のテキスタイル材料及び反応性液体媒質を用いる方法に分けることができる。
【0003】
以後、既製のテキスタイル材料と反応性液体媒質を使用した方法についてのみ検討する。
【0004】
b)既製のテキスタイル材料と反応性液体媒質を使用した方法
これらの方法の特徴は、不織布、織布、ニット又は編組タイプなどの従来の伝統的な既製のテキスタイル材料に、溶液、エマルジョン又は懸濁液の形態の液体を含浸させ、ポリマー吸収剤を、含浸させた湿潤テキスタイル材料の乾燥中にその場で、又は乾燥及び適切な熱処理の適用後に生成させることにある。当技術分野で知られている代表的な方法:b1)重合可能な含浸体を使用する方法及びb2)架橋可能な含浸体を使用する方法。
【0005】
b1)重合可能な含浸体を使用する方法
これらの方法において、含浸に使用される液体は、合成不織布基材上で直接部分的に中和された酸性ビニルモノマーのその場での重合を生じさせる。これらの方法は、米国特許第4,537,590号、第4,540,454号、第4,573,988号、第4,676,784号、第5,567,478号、第5,962,068号、第6,417,425号及び第6,645,407号に記載されている。
【0006】
b2)架橋可能な含浸体を使用する方法
これらの方法では、不織布、織布又は他の既知のタイプとしての既製のテキスタイル材料に、溶解又は分散状態で、又は複数温度で活性を示す架橋剤であり、ポリマー吸収剤のその場での生成を誘発する補助材料と混合させた形でポリマーを含む、溶液又はエマルジョンの形態の液体を含浸させる。このクラスでは、より多くのバリアントが見られる:
【0007】
i)自己架橋性合成ポリマーを含む含浸体を使用する方法。
実質的に直鎖のアクリル系ポリマーがそのペンダント基を介して架橋される様々な方法が報告されている。ペンダント基は適切に加熱すると互いに反応することになる。かかる反応を受けることになるモノマーの任意の組合せは、米国特許第4,057,521号、第4,861,539号、第4,962,172号、第4,963,638号、第5,280,079号及び第5,413,747号の要領で使用され得る。
【0008】
自己架橋性ポリマーに基づく含浸体には、架橋が不完全であるという欠点があり、このため、重合中に使用されるモノマー、開始剤及び有機溶媒残留物の抽出に関連するプロセス中に、最終生成物が10%を超える割合で失われる。さらに、得られた架橋ポリマーの自由吸収性は低い値(0.9%NaCl溶液中50 g/g未満)であり、生成物は安全ではない。
【0009】
ii)合成ポリマーと架橋剤を含む含浸体を使用する方法
さらに、水膨潤性の架橋カルボン酸コポリマーが調製され得ることは、米国特許第2,988,539号、第3,393,168号及び第3,514,419号により知られている。しかしながら、これらの先行技術のコポリマーはすべて、共重合中に架橋されるか、又は重合後に架橋され、それに続いてカルボン酸基が中和され、水膨潤性ポリ電解質を形成し、したがってこれらの先行技術のポリ電解質は、基材上のコーティングとして又はその可撓性フィルムとしてその場で架橋され得ない。
【0010】
米国特許第3,926,891号、第3,980,663号及び第4,155,957号は、遊離カルボキシル化学官能基を有するポリマーの架橋剤として使用され得る組合せの主要なクラスの化学構造を示している。飽和炭素上での求核置換として知られているメカニズムに基づいて、架橋反応が行われることも示されている。ポリマー上のカルボン酸イオンは求核基として作用し、架橋剤は求核攻撃の基材である。
【0011】
Chengら、米国特許第5,693,707号は、水中に10~40重量%のポリマーを含む水性ポリマー組成物を提示しており、このポリマーは、20~90重量%のアルファ、ベータ-エチレン系不飽和カルボン酸モノマー、10~80重量%の1つ以上の軟化モノマーから本質的になり、水性組成物は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物でpH4~6に調整され、さらに0.1~3重量%のジルコニウム架橋塩を含む。かかる水性組成物は、不織布及び織布基材に適用されて、吸収性テキスタイルウェブを作製する。
【0012】
Goldsteinらは、米国特許第6,506,696号で、この発明の高性能不織布を形成する方法が、二重架橋可能な官能基を有するポリマーを含む水性ポリマーエマルジョンを合成ベースの不織布に塗布すること、この場合、二重架橋可能なポリマーには、アセトアセタート官能基とカルボン酸官能基が組み込まれているものとし、次いで水を除去すること、及び有効量のポリアルデヒドと有効量のポリアジリジン化合物で架橋可能なポリマーを架橋することを含むことを示している。
【0013】
Soerens Dave Allenは、米国特許第7,205,259号で、基材に塗布した後、約120℃以下の温度で自発的に架橋できる吸収性結合剤乾燥組成物を提案している。吸収性結合剤乾燥組成物は、カルボン酸、スルホン酸、又はリン酸、又はそれらの塩、又は第四級アンモニウム塩などのモノエチレン性不飽和ポリマー、及びアルコキシシラン官能基を含むアクリラート若しくはメタクリラートエステル、又はトリアルコキシシラン官能基を含む化合物との共重合及びその後の水との反応によるシラノール基の形成が可能なモノマー、及び乾燥成分を含む。吸収性結合剤乾燥組成物は、多種多様な湿度制御物品の製造における使用に特に適している。
【0014】
架橋反応の制御の複数のバリアントに加えて、多様な化学組成物(ポリマー及び架橋剤)が、米国特許第3,983,271号、第4,066,584号、第4,320,040号、第4,418,163号、第4,731,067号、第4,855,179号、第4,880,868号、第4,888,238号、第5,698,074号、第5,997,791号、第6,150,495号、第6,162,541号、第6,241,713号、第6,773,746号及び第6,824,650号の文献に示されている。
【0015】
iii)バイオポリマーと架橋剤を含む含浸体を使用する方法
Weerawarnaらは米国特許第7,300,965号で、超吸収性を有する混合ポリマー網目構造を提供している。この組成物は、カルボキシアルキルセルロース及びカルボン酸又はカルボン酸誘導体置換基を有する合成水溶性ポリマーを架橋剤と反応させることにより得ることができる。架橋剤は、カルボキシアルキルセルロース又は水溶性ポリマーの少なくとも1つと反応して、網目構造を提供する。適切な架橋剤には、カルボン酸基に対して反応性を示す架橋剤が含まれる。
【0016】
カルボン酸基に対して反応性を示す代表的な有機架橋剤には、ジオールとポリオール、ジアミンとポリアミン、ジエポキシドとポリエポキシド、ポリオキサゾリン官能化ポリマー、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上のヒドロキシ基を有するアミノールが含まれる。
【0017】
カルボン酸基に対して反応性を示す代表的な無機架橋剤には、多価カチオン及びポリカチオン性ポリマーが含まれる。具体例としての無機架橋剤には、コハク酸(ジカルボン酸)、クエン酸(トリカルボン酸)、及びブタンテトラカルボン酸(テトラカルボン酸)などのカルボン酸配位子を含む又は含まない、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び炭酸ジルコニウムアンモニウムが含まれる。三価鉄及び二価亜鉛及び銅の水溶性塩は、架橋剤として使用することができる。代表的なカルボン酸架橋剤には、ジカルボン酸及びポリカルボン酸が含まれる。米国特許第5,137,537号、第5,183,707号及び第5,190,563号は、架橋剤としての少なくとも3つのカルボキシル基(例えば、クエン酸及びオキシジコハク酸)を含むC2~C9ポリカルボン酸の使用を記載している。適切なポリカルボン酸架橋剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、酒石酸モノコハク酸、マレイン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、all-cis-シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、及びベンゼンヘキサカルボン酸がある。架橋は、架橋を行うのに十分な温度及び期間で加熱することにより達成され得る。架橋剤又は合成水溶性ポリマー及び架橋剤を含有するカルボキシメチルセルロース溶液については、風乾するか、溶媒で沈殿させた後、架橋することができる。架橋時間と温度は、使用する架橋剤とポリマーによって異なる。
【0018】
Sunらは、米国特許第6,689,378号において、複合体化していないシクロデキストリン及び複合体化したシクロデキストリンを、共有結合によりセルロース繊維などの多糖含有基材に固定化する方法を提示している。セルロース/シクロデキストリン組成物は、ティッシュ及びパーソナルケア用品などのあらゆるタイプのセルロース繊維含有用品に使用することができる。
【0019】
有用なポリマー性アニオン性反応性化合物は、基材のヒドロキシル基に共有結合する2つ以上のアニオン性官能基を含む反復単位を有する化合物である。具体例としてのポリマー性アニオン性反応性化合物には、米国特許第4,210,489号に記載されているエチレン/無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ビニル/無水マレイン酸コポリマー及びエピクロロヒドリンと無水マレイン酸又は無水フタル酸のコポリマーは他の例である。ポリ(スチレン/無水マレイン酸)を含むオレフィンと無水マレイン酸のコポリマーも検討され得る。
【0020】
使用できる無水マレイン酸のコポリマー及びターポリマーは、米国特許第4,242,408号に開示されている。
【0021】
その場で重合可能であるシステムと同様、架橋可能な含浸体は、言及された熱処理の条件では架橋が完了せず、テキスタイル製品の使用中に可溶性ポリマーの他に架橋剤も抽出されるという可能性が永久に存在するという欠点があり、これはモノマーや重合助剤の残留物と比較して、ヒトの健康にとってはより危険である。テキスタイル材料処理用の混合物中のバイオポリマーの存在は、架橋中に発生する化学変換収率の向上には寄与しない。高分子架橋剤の使用に言及すると、合成プロセスの結果であるこれらの製品については、それらの純度又は膨潤媒質として使用される水溶液中での抽出性について述べられていない。
【0022】
吸収性テキスタイルを得るための当該技術分野における既知方法の特定の欠点は、それらの製品が生態学的ではないことである。上述のポリマー吸収剤の大部分は合成の生成物であり、その化学構造のために、特定の活性生物培地、すなわち家庭用堆肥中での生分解能力を有するものではない。さらに、バイオポリマーを含む吸収性テキスタイルは、生分解性ではあるが、自由吸収性の値は小さい。既知の吸収性テキスタイルの別の欠点は、かかるテキスタイルに含まれるポリマー網目構造が、最終使用者に健康被害を与える可能性のある架橋剤の使用を通じて得られたことである。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、テキスタイルを処理し、吸水性及び生分解性が改善された新しいテキスタイル複合品を形成するための新しい方法を提供することにより、当技術分野で既知の吸収性テキスタイルを得る方法の欠点を取り除く。新しい方法では、溶液形態で、少なくとも2タイプの可溶性ポリマー(合成ポリマーと天然ポリマー)を含み、別の非ポリマー架橋剤を含まない、水性テキスタイル含浸ポリマー組成物を利用する。2タイプのポリマーは、テキスタイルにポリマー組成物を含浸させ、熱処理に曝したとき、ポリマーがテキスタイル繊維に相互侵入し、テキスタイルへの自己架橋が行われるように選択された所定の比率で組み合わされる。得られる乾燥形態の複合テキスタイルは、接触している液体媒質のタイプに応じて、非含浸テキスタイル材料と比較した場合、少なくとも10%高い自由吸収能力を有する。得られたテキスタイルはまた、高い生分解性を特徴とする。より具体的には、得られた乾燥形態の複合テキスタイルは、非含浸テキスタイル材料と比較した場合、少なくとも10%高い、好ましくは少なくとも20%高い、より好ましくは30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上高い自由吸収能力を有する。
【0024】
「材料」の語と組み合わせる場合も組み合わせない場合も、布、テキスタイル、ウェブという用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0025】
本発明の別の目的は、繊維及びテキスタイル繊維に相互侵入するポリマー網目構造を含むテキスタイル複合品を提供することであり、前記ポリマー網目構造は、非ポリマー架橋剤の不在下で合成ポリマーに架橋された天然ポリマーを含む。テキスタイル複合品は、テキスタイル繊維に相互侵入する前記ポリマー網目構造が存在しない同じテキスタイルと比較して、少なくとも50%高い吸水率を有する。
【0026】
本発明の別の目的は、天然ポリマーが合成ポリマーの生分解を活性化し、システムに優れた生分解性を与える、新しいタイプのポリマー組成物を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、少なくとも2つのタイプの可溶性ポリマー、すなわち合成ポリマーと天然ポリマーから作製される新しいタイプのポリマー組成物を提供することであり、前記天然ポリマーは、加熱下で合成ポリマーの架橋を活性化し、かかる組成物を含浸させ乾燥したテキスタイルに、水性液体への曝露時に優れた自由吸収性を付与する。
【0028】
天然ポリマーは、合成ポリマーの架橋剤と生分解プロセスの活性剤の両方の役割を果たすバイオポリマーである。
【0029】
本発明の別の目的は、テキスタイル内に少なくとも部分的に侵入し、テキスタイルの含浸領域のパターンをもたらす相互侵入ポリマー性材料の内部パターンを有するテキスタイル複合品を提供することである。含浸されたテキスタイルの熱処理及び乾燥に続いて、水性液体への曝露時に改善された吸水性を有するテキスタイル複合品が得られる。
【0030】
本発明の別の目的は、テキスタイル材料の吸水性能又は生分解性に影響を与えることのない、例えば、可塑剤、活性表面剤、染色剤、香料、防臭剤、静菌剤などのテキスタイル業界で使用される様々な添加剤と適合性のある安定した水溶液中の新しいタイプのポリマー網目構造組成物を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、合成繊維(ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコールなど)、天然繊維(セルロース、ビスコース、綿、羊毛、PLAなど)、又は合成繊維と天然繊維の混合物のいずれかから、好ましくは30~90g/mの密度で作られた不織布、織布、又はニットのテキスタイル材料の含浸体として使用するのに適した、溶液形態の新しいタイプのポリマー網目構造組成物を提供することである。テキスタイル材料は、例えば、PLAで作製される場合など、それ自体が生分解性であってもよく、又はポリマー網目構造での含浸及び乾燥後に生分解性となり、本発明の複合吸収性テキスタイルを形成することもあり得る。
【0032】
本発明の別の目的は、かかる組成物を含浸させたテキスタイル材料から水を熱駆動により除去した後に自己架橋が行われた後、テキスタイルが水性液体に曝されたときに、テキスタイル材料内の液体媒質の迅速な接近と吸収を可能にする自由空間を有する複合吸収性テキスタイル材料を生じさせる、新しいタイプのポリマー水性組成物を提供することである。
【0033】
水中での2つのポリマーの組合せ比は、熱力学的に安定しており、布地への含浸に適しており、制御された熱条件下(温度と時間)で自己架橋が行われる水溶液が得られるように選択することが好ましい。
【0034】
本発明に従ってポリマー組成物で処理されたテキスタイル材料は、改善された吸水性及び生分解性を特徴とする。生分解性に関して、テキスタイルが水性の生物学的媒質と接触してこの媒質の吸収を開始すると、テキスタイル内に含浸された複合ポリマー材料は膨潤し、テキスタイル内又はその表面上(支持体としてのテキスタイルの機能)でゲル状材料に変化している。
【0035】
本発明の他の実施形態によれば、異なる水性媒質で膨潤した後生じる乾燥形態及びゲル形態の両方で、人体と接触した場合でも依然として安全であり、環境にやさしく、使用されるテキスタイル材料に顕著な生態学的特徴を与えるものである、吸収性テキスタイル材料の形成に使用するためのポリマー複合溶液が提供される。
【0036】
別の実施態様によれば、本発明は、ポリマー複合物で処理された基材、例えば布の吸水性を改善するのに使用されるポリマー複合水溶液の調製方法を提供するものであり、前記方法は:
a)アルカリ性塩基溶液を調製する工程、
b)酸性形態の合成ポリマー(SP)の水溶液を調製し、後で(a)からのアルカリ性溶液で処理し、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での塩形態を得る工程、
c)1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での天然ポリマーNPの水溶液を加熱下で調製する工程、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得る工程、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加える工程
を含む。
【0037】
好ましい実施形態によれば、本発明で使用される合成ポリマー(SP)は、カルボン酸又は無水カルボン酸基を有するモノマーでできている。より具体的には、本発明での使用に適したSPは、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーから―必要に応じて、必ずしもカルボン酸官能基を含むとは限らない他のタイプのビニル系モノマーと共に―作製された直鎖又は分枝状グラフトホモポリマー若しくはコポリマーである。
【0038】
好ましくは、天然ポリマーは、タンパク質、大豆タンパク質、コラーゲン、コラーゲンバイオポリマー、ゼラチン、コラーゲン加水分解物、アルブミン、グアー又はデンプン及びカゼインから選択されるバイオポリマーである。
【0039】
好ましくは、合成ポリマーは、無水マレイン酸(マレイン酸)に基づくコポリマー、例えば、スチレン無水マレイン酸(SMA)のコポリマー、イソブチレン及び無水マレイン酸などのオレフィンと無水マレイン酸のコポリマー(例:Isobam(商標)の商品名で販売されている市販のコポリマー)、又はメチルビニルエーテルとマレイン酸のコポリマー(例:Gantrez(商標)の商品名で販売されている市販のコポリマー)、ポリ(デシルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、ポリ(エチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、ポリ(マレイン酸-co-プロペン)、ポリ(n-ブチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、ポリ(オクタデセン-alt-無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン-alt-マレイン酸)又はポリ(マレイン酸-co-ドデシルメタクリラート)である。
【0040】
好ましい実施形態によれば、本発明のSPにおける総遊離カルボン酸基の含有量は、0.009~0.015モル/グラムSPの範囲である。より具体的には、合成ポリマーSPの遊離カルボン酸基は、49~99%、好ましくは60~95%、最も好ましくは65~90%の中和度に対応する塩状態にある。
【0041】
好ましい実施形態によれば、本発明で使用されるSPの平均分子量は、50KDa~1,000KDa、好ましくは100KDa~750KDa、より好ましくは150KDa~500KDaである。
【0042】
好ましい実施形態によれば、本発明で使用される天然ポリマーNPは、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリエステル及びリグニン(天然の形態の、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている)から選択されるバイオポリマーである。より好ましくは、本発明で使用されるNPは、下記の特徴の少なくとも1つを有する、レシチンなどの水溶性リン脂質、ゼラチン、アルブミンなどのポリペプチド又はタンパク質、又はセルロース、アルギナート、デキストラン、キトサンなどの多糖類である:
a)平均分子量が、5~100KDa、好ましくは25~50KDa、より好ましくは75~100KDaである。
b)相対濃度0.005~0.01モル/グラムNP、より好ましくは0.001~0.002モル/グラムNPでのアミン又はヒドロキシルなどの遊離化学基である。
c)親水性であり、水環境でヒドロゲルを形成することができ、テキスタイル繊維内に組み込まれることができる。
【0043】
好ましい実施形態によれば、本発明で使用されるバイオポリマーは、そのNH基又はOH基が、高温条件下で選択された期間、合成ポリマー中のCOOH基に架橋して、ポリマー骨格間でエステル結合及びアミド結合を形成することから架橋する能力を有する。さらに、本発明のバイオポリマーは、本発明のSP及びNPの複合溶液で含浸されたテキスタイルの生分解を活性化する。
【0044】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明で使用されるポリマー複合溶液は安定した溶液であり、可塑剤、抗菌剤、界面活性剤、消臭剤、香料、防腐剤などから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。ポリマー複合溶液は、布地への含浸に適しており、温度と時間の制御された条件下での自己架橋にも適している。
【0045】
好ましくは、テキスタイル材料への複合ポリマー溶液の十分な侵入を可能にするために、テキスタイル密度は、30~90g/mである。
【0046】
本発明の一態様を以下に示す。
[発明A1]
テキスタイル繊維と前記テキスタイル繊維に相互侵入するポリマー網目構造を含むテキスタイル複合品であって、前記ポリマー網目構造が、非ポリマー架橋剤の不在下で合成ポリマーに架橋された天然ポリマーを含み、前記ポリマー網目構造を伴わない同テキスタイルとの比較において吸水性が少なくとも10%高いテキスタイル複合品。
[発明A2]
生分解性である、発明A1に記載のテキスタイル複合品。
[発明A3]
ポリマー複合溶液で処理されたテキスタイル材料の吸水性の改善に使用するためのポリマー複合水溶液であって、前記ポリマー溶液が、天然及び合成ポリマーの網目構造を含み、前記天然及び合成ポリマーにおいて、非ポリマー架橋剤の不在下、制御された温度及び時間の条件下で自己架橋が行われる、ポリマー複合水溶液。
[発明A4]
前記テキスタイル材料が、前記複合ポリマー溶液で処理される前に30~90g/m の密度を有する不織布、織布、又はニットタイプである、発明A3に記載のポリマー複合水溶液。
[発明A5]
a)アルカリ性塩基溶液を調製すること、
b)酸性形態の合成ポリマー(SP)の水溶液を調製し、後で(a)からのアルカリ性溶液で処理し、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での塩形態を得ること、
c)1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での天然ポリマーNPの水溶液を加熱下で調製すること、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得ること、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加えること
を含む、発明A3に記載のポリマー複合水溶液の調製方法。
[発明A6]
前記合成ポリマー(SP)が、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーから―必要に応じて必ずしもカルボン酸官能基を含むとは限らない他のタイプのビニル系モノマーと共に―作製された直鎖又は分枝状グラフトホモポリマー若しくはコポリマーから選択される、発明A5に記載の方法。
[発明A7]
前記SPが、無水マレイン酸及び/又はマレイン酸に基づくコポリマー、好ましくはスチレン無水マレイン酸(SMA)のコポリマー、イソブチレンと無水マレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Isobam(商標)で販売されている市販のコポリマー)又はメチルビニルエーテルとマレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Gantrez(商標)で販売されている市販のコポリマー)である、発明A5に記載の方法。
[発明A8]
前記天然ポリマー(NP)が、タンパク質、大豆タンパク質、コラーゲン、コラーゲンバイオポリマー、ゼラチン、コラーゲン加水分解物、アルブミン、グアー又はデンプン及びカゼインから選択されるバイオポリマーである、発明A5に記載の方法。
[発明A9]
前記天然ポリマー(NP)が、ポリペプチド、タンパク質、多糖、ポリエステル及びリグニン(天然形態の、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている)から選択されるバイオポリマーである、発明A5に記載の方法。
[発明A10]
前記天然ポリマー(NP)が、レシチンなどの水溶性リン脂質、ゼラチン、アルブミンなどのポリペプチド又はタンパク質、又はセルロース、アルギナート、デキストラン、キトサンなどの多糖類から選択されるバイオポリマーである、発明A5に記載の方法。
[発明A11]
前記天然ポリマー(NP)が、高温条件下及び選択された期間、SP中のCOOH基に架橋結合することができるアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有する、発明A5に記載の方法。
[発明A12]
吸収性製品に使用するための発明A1に記載のテキスタイル複合品。
[発明A13]
前記吸収性製品が、クリーニングワイプ、家庭用又は施設用のクリーニング又はメンテナンス機器、ハンドワイプ、ハンドタオル、個人用、化粧品若しくは生理用ワイプ、ベビーワイプ、顔用ティッシュ、衛生吸収パッド、パンティー、創傷被覆材などから選択される、発明A12に記載の使用。
本発明の一態様を以下に示す。
[発明B1]
テキスタイル繊維と前記テキスタイル繊維に相互侵入するポリマー網目構造を含むテキスタイル複合品であって、前記ポリマー網目構造が、非ポリマー架橋剤の不在下で合成ポリマーに架橋された天然ポリマーを含み、前記ポリマー網目構造を伴わない同テキスタイルとの比較において吸水性が少なくとも10%高いテキスタイル複合品。
[発明B2]
生分解性である、発明B1に記載のテキスタイル複合品。
[発明B3]
ポリマー複合溶液で処理されたテキスタイル材料の吸水性の改善に使用するためのポリマー複合水溶液であって、前記ポリマー複合溶液が、天然ポリマーと、カルボン酸又は無水カルボン酸基を有するモノマーを有する合成ポリマーの網目構造を含み、前記複合溶液中の前記天然ポリマー及び合成ポリマーにおいて、非ポリマー架橋剤の不在下、制御された温度及び時間の条件下で自己架橋が行われる、ポリマー複合水溶液。
[発明B4]
前記テキスタイル材料が、前記複合ポリマー溶液で処理される前に30~90g/m の密度を有する不織布、織布、又はニットタイプである、発明B3に記載のポリマー複合水溶液。
[発明B5]
a)アルカリ性塩基溶液を調製すること、
b)酸性形態の合成ポリマー(SP)の水溶液を調製し、後で(a)からのアルカリ性溶液で処理し、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での塩形態を得ること、
c)1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での天然ポリマーNPの水溶液を加熱下で調製すること、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得ること、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加えること
を含む、発明B3に記載のポリマー複合水溶液の調製方法。
[発明B6]
前記合成ポリマー(SP)が、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーから―必要に応じて必ずしもカルボン酸官能基を含むとは限らない他のタイプのビニル系モノマーと共に―作製された直鎖又は分枝状グラフトホモポリマー若しくはコポリマーから選択される、発明B5に記載の方法。
[発明B7]
前記SPが、無水マレイン酸及び/又はマレイン酸に基づくコポリマー、好ましくはスチレン無水マレイン酸(SMA)のコポリマー、イソブチレンと無水マレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Isobam(商標)で販売されている市販のコポリマー)又はメチルビニルエーテルとマレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Gantrez(商標)で販売されている市販のコポリマー)である、発明B5に記載の方法。
[発明B8]
前記天然ポリマー(NP)が、タンパク質、大豆タンパク質、コラーゲン、コラーゲンバイオポリマー、ゼラチン、コラーゲン加水分解物、アルブミン、グアー又はデンプン及びカゼインから選択されるバイオポリマーである、発明B5に記載の方法。
[発明B9]
前記天然ポリマー(NP)が、ポリペプチド、タンパク質、多糖、ポリエステル及びリグニン(天然形態の、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている)から選択されるバイオポリマーである、発明B5に記載の方法。
[発明B10]
前記天然ポリマー(NP)が、レシチンなどの水溶性リン脂質、ゼラチン、アルブミンなどのポリペプチド又はタンパク質、又はセルロース、アルギナート、デキストラン、キトサンなどの多糖類から選択されるバイオポリマーである、発明B5に記載の方法。
[発明B11]
前記天然ポリマー(NP)が、高温条件下及び選択された期間、SP中のCOOH基に架橋結合することができるアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有する、発明B5に記載の方法。
[発明B12]
吸収性製品に使用するための発明B1に記載のテキスタイル複合品。
[発明B13]
前記吸収性製品が、クリーニングワイプ、家庭用又は施設用のクリーニング又はメンテナンス機器、ハンドワイプ、ハンドタオル、個人用、化粧品若しくは生理用ワイプ、ベビーワイプ、顔用ティッシュ、衛生吸収パッド、パンティー、創傷被覆材などから選択される、発明B12に記載の使用。
[発明B14]
前記合成ポリマー(SP)が、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーから―必要に応じて必ずしもカルボン酸官能基を含むとは限らない他のタイプのビニル系モノマーと共に―作製された直鎖又は分枝状グラフトホモポリマー若しくはコポリマーから選択される、発明B3に記載のポリマー複合水溶液。
[発明B15]
前記合成ポリマー(SP)が、無水マレイン酸及び/又はマレイン酸に基づくコポリマー、好ましくはスチレン無水マレイン酸(SMA)のコポリマー、イソブチレンと無水マレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Isobam(商標)で販売されている市販のコポリマー)又はメチルビニルエーテルとマレイン酸のコポリマー(例えば、商品名Gantrez(商標)で販売されている市販のコポリマー)である、発明B3に記載のポリマー複合水溶液。
[発明B16]
前記天然ポリマー(NP)が、セルロース、アルギナート、デキストラン、キトサンなどの多糖類;ポリエステル及びリグニン(天然の形態の、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている);グアー;デンプン;レシチンなどの水溶性リン脂質;ゼラチン、アルブミン、大豆タンパク質、コラーゲン、コラーゲンバイオポリマー、コラーゲン加水分解物及びカゼインなどのポリペプチド又はタンパク質から選択されるバイオポリマーである、発明B3に記載のポリマー複合水溶液。
[発明B17]
前記天然ポリマー(NP)が、高温条件下及び選択された期間、SP中のCOOH基に架橋結合することができるアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有する、発明B3に記載のポリマー複合水溶液。
[その他]発明B3の補正は、明細書の段落0037等の記載を根拠とします。新たに加入された発明B14は、明細書の段落0037等の記載を根拠とします。新たに加入された発明B15は、明細書の段落0039等の記載を根拠とします。新たに加入された発明B16は、明細書の段落0038、0042、0054等の記載を根拠とします。新たに加入された発明B17は、明細書の段落0043等の記載を根拠とします。
次に、本発明について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、SP-NP複合溶液の粘度、合成ポリマー(SP)の中和度、及び溶液の安定性の間の相関を示すグラフである。SPは、水酸化ナトリウムで中和した後の塩形態のSMAC(スチレンマレイン酸コポリマー)により表されている。天然ポリマー(NP)はゼラチンにより表されている。次のポリマー溶液を試験した:100%SMAC、90%SMAC及び10%ゼラチン、70%SMAC及び30%ゼラチン。使用したSMACは、例1でさらに説明するように、中和度が異なっていた。 図1から、合成ポリマーの中和度が30~60%の間である場合、天然ポリマーであるゼラチンの存在がポリマー複合溶液の粘度の低下をもたらすことが注目される。中和度が60%を超える場合、天然ポリマーの存在により、天然ポリマーを含まない同じ溶液と比較して、複合溶液の粘度値が増加する。 複合ポリマー溶液の安定性に関して、合成ポリマーSMACの中和度が30%より大きい場合、SMACとゼラチンを含む複合溶液は安定していることが注目される。
図2図2は、相対吸収性RQに及ぼす、合成ポリマーとゼラチンを含むポリマー複合溶液を含浸させた不織布サンプルに対する熱処理の影響を示すグラフである。
図3図3は、ポリマー複合材料を含浸させたテキスタイル対非含浸テキスタイルの吸水性に対する繊維のタイプの影響を示すグラフである。
図4図4は、本発明のテキスタイル複合品を提供するために、加熱条件下でテキスタイル材料とポリマー網目構造との間で起こるプロセスの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の目的の範囲内にあるポリマー複合溶液は、高吸収性テキスタイル材料を製造するために、任意のタイプのテキスタイル、好ましくは不織布を処理するために使用される、以後含浸組成物(IC)と呼ぶ新しいタイプのテキスタイル処理のためのものである。
【0049】
ポリマー複合溶液は、塩形態の合成ポリマー(SP)、天然ポリマー(NP)、添加剤(A)及び水(W)を含む。
【0050】
テキスタイル材料TEX(処理前)と含浸組成物IC[IC=SP+NP+A]の比率は、乾燥重量で85:25~99:1%である。
【0051】
塩形態の合成ポリマー(SP)と天然ポリマー(NP)の比率SP/NPは、乾燥重量で70:30~95:5%である。
【0052】
添加剤(A)とポリマーの比率A/(SP+NP)は、乾燥重量で0.5~5%である。
【0053】
複合ポリマー溶液中の含水量は、79~99重量%である。合成ポリマー塩、SPは、以下の特徴を有する市販のポリマーであり得る:
a)カルボキシル基を含まない他のタイプのビニル系モノマーを伴うか又は伴わずにアクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーを含む直鎖コポリマー又は分枝状グラフトホモポリマー若しくはコポリマーである。
b)全遊離カルボキシル基の含有量が0.009:0.0095モル/グラム~0.01:0.0.15モル/グラムである。
c)合成ポリマー、SPの遊離カルボキシル基が、49~99%、好ましくは60~95%、最も好ましくは65~90%の中和度に対応する塩状態にある。
d)合成ポリマーの塩状態が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの水酸化物、重炭酸塩又は炭酸塩、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの水酸化物などの強無機塩基物質を使用することによって得られる。
e)合成ポリマー、SPの平均分子量が、50,000Da~1,000,000Da、好ましくは100,000Da~750,000Da、最も好ましくは150,000Da~500,000Daである。
【0054】
天然ポリマー、NPは、好ましくは、以下のクラスの物質:タンパク質、炭水化物、バイオポリエステル又はリグニン(天然形態としての、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている)に属する市販のバイオポリマーである。好ましいのは、全体として水溶性であり、下記の特徴を有するタンパク質及び炭水化物である:
d)平均分子量が、5,000~100,000Da、好ましくは25,000~50,000Da、さらに好ましくは75,000~100,000Daである。
e)NH、OH-CH、OH-C3-5などの遊離化学官能基、単一タイプ又は複数タイプとして、0.001~0.002モル/グラム、好ましくは0.005~0.01モル/グラムの含有量を有する。
【0055】
適した添加剤Aは、可塑剤、抗菌剤、活性表面剤、消臭剤、香料、防腐剤などで、吸収性以外の特性と相関関係にある量である。
【0056】
ポリマー複合溶液は、ポリマー材料SP及びNPの安定した溶液であり、保存又は後処理の条件下で相分離しない。
【0057】
理論に縛られるものではないが、ポリマー複合溶液は、テキスタイル繊維内で相互侵入し、100~250℃の温度で、好ましくは2~30分の期間の熱処理条件下で自己架橋することができる。
【0058】
得られるテキスタイルは、テキスタイル内に少なくとも部分的に侵入する相互侵入ポリマー材料の内部パターンを有する複合テキスタイル品である。含浸されたテキスタイルの温度100~250℃での熱処理及び乾燥に続いて、水性液体に曝されたときに改善された吸水性を有するテキスタイル複合品が得られる。
【0059】
本発明のテキスタイル複合品を提供するために、加熱条件下でテキスタイル材料とポリマー網目構造との間で行われるプロセスの概略図を図4に示す。
【0060】
ポリマー複合物で処理された基材、例えば布の吸水性の改善に使用されるポリマー複合水溶液の調製は、以下の工程:
a)アルカリ性塩基溶液を調製する工程、
b)酸性形態の合成ポリマー(SP)の水溶液を調製し、後で(a)からのアルカリ性溶液で処理し、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での塩形態を得る工程、
c)1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での天然ポリマーNPの水溶液を加熱下で調製する工程、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得る工程、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加える工程
を含む。
【0061】
ポリマー複合溶液と共に使用されるテキスタイル材料は、合成繊維又は天然繊維又は合成繊維と天然繊維の混合物から形成される、不織布、織布、又は当技術分野で既知の市販されている他のタイプなどの既製のテキスタイル材料を含む。好ましいテキスタイル材料は、30~90g/m、好ましくは40~80g/m、より好ましくは50~70g/mの密度を有する合成繊維でできている。
【0062】
テキスタイル材料の含浸は、当技術分野で知られている任意の設備、例えば噴霧装置、フーラード(foulard)、ロールコーティング、リバースロールコーティング、ナイフ装置などを使用して行われる。
【0063】
湿潤テキスタイル材料のさらなる処理は、材料の初期密度及びかくして選択された含浸度により異なる。例えば:
a)テキスタイル材料の密度が最初に70g/mより高かった場合、湿潤テキスタイル材料は、まず50~90℃の温度、好ましくは55~85℃、最も好ましくは60~80℃の温度での熱気流中で乾燥され、その結果その固体複合物(テキスタイル+複合ポリマー)の含水率は12重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは8重量%未満となり、次いで5~180分間、好ましくは10~150分間、最も好ましくは15~120分間の期間90~180℃の温度、好ましくは100~170℃の温度、最も好ましくは110~160℃の温度での熱気流中における補足的熱処理にかけられる。
b)テキスタイル材料の密度が最初に70g/m未満であった場合、湿潤テキスタイル材料は、100~150℃の温度で180~300秒間、好ましくは140~180℃の温度で60~180秒間、さらに好ましくは200~250℃の温度で30~120秒間の1回の熱処理にかけられる。
【0064】
熱処理に続いて、テキスタイル材料は室温で放冷され、最終的に包装される。
【0065】
得られたテキスタイル材料は、吸水性が改善されており、例えばクリーニングワイプ、家庭用又は施設用のクリーニング又はメンテナンス、ハンドワイプ、乾いたままであると使用者に感じさせるが、水分を吸収し得るハンドタオル、個人の衛生、化粧用若しくは生理用ワイプ、ベビーワイプ、顔用ティッシュ、パンティー若しくは創傷被覆材のコア、衛生的な吸収性パッド及びその他の同様の用途など、様々な用途で使用され得る。
【0066】
試験方法
1.合成ポリマー、天然ポリマー及び助剤を含むポリマー溶液の特徴
-溶液の粘度について、25℃の温度でスピンドルL1のタイプに関連した溶液の量を使用し、粘度計ViscoStar Plus、Fungilab(スペイン)を使用して評価した。
-含浸に使用されるポリマー溶液の安定性について、被検溶液が5000rpmで30分間、25ml量の溶液を遠心分離した後に沈殿を示すかどうかで安定又は不安定であると評価した。実験室の遠心分離機GLC-2B Sorvall(Thermo Scientific)を使用して、周囲温度で試験を実施した。
【0067】
2.自由吸収性
以下の測定が行われる:
-Mtex、[グラム]、セミ分析用天秤で秤量することによる含浸に使用される乾燥テキスタイル材料の質量
-Mtwstart、[グラム]-サンプルを秤量することによる湿潤出発材料の質量
-Mtid-[グラム]-含浸後の水気を切ったテキスタイル材料の質量
-MIC-[グラム]-次式で評価された含浸後のテキスタイルから見出される乾燥ポリマー複合材料の質量:
MIC=Mtex*IMD/100、グラム
テキスタイル材料の含浸度は、次の式を使用して確立される:
[IMD]dry=MIC/(Mtex+MIC)*100、%
【0068】
テキスタイル材料の吸収性評価:
2.1-非含浸テキスタイル材料の吸収性Q1は、テキスタイル材料の表面全体が液体で覆われるように、吸収性の値が所望されるテキスタイルサンプルM-texを150ml容量の液体に導入し、この接触を60分間振とうせずに維持することで構成される。最後に、材料を液体から取り除き、垂直方向にぶら下げて15分間余分な液体の水切りを行う。水切りしたテキスタイル材料サンプルを秤量し、得られた値をM-tex-wetとして記録する。
非含浸テキスタイル材料の吸収性Q1は、次式を使用して得られる:
Q1=(M-tex-wet-M-tex)/M-tex、、(g/g)
【0069】
2.2.含浸テキスタイル材料の吸収性Q2
テキスタイルサンプルを、専門技術用天秤で秤量することでMtexの値を得る。次に、実験室用噴霧装置を使用して、選択された質量の液体、すなわち蒸留水、含浸溶液又は他のタイプの溶液を含浸させる。かくして得られた湿潤材料を再び秤量し、値をMtwstartとする。この値が、事前に確立された含浸度(IMD)よりも高い場合、湿潤サンプルを、ガラス棒の使用による圧搾プロセスにかけて、過剰な含浸液を除去し、最終的に質量Mtidの湿潤サンプルを得る。次に、液体の蒸発を避けるために、湿潤サンプルを密閉ガラスビーカーに30分間保持する。
テキスタイル材料サンプルの吸収性は、次式で得られる:
Q2-TEXIC=[Mtid-(Mtex+M IC)]/(Mtex+M IC)、(g/g)
【0070】
2.3相対吸収性
RQは、含浸されたテキスタイル材料の吸収性Q2と非含浸である同じテキスタイル材料の吸収性Q1との間の比率を表す。
相対吸収性は、次の式を使用して計算される:
[RQ]1=Q2/Q1又は
[RQ]2=[(RQ1)-1]*100、(%)
【0071】

例1
合成ポリマー、天然ポリマー及び無機塩基のストック溶液を次の要領で調製する:
a)合成ポリマー溶液のストック:
358gの脱塩水と一緒に0.0091mol/gの遊離カルボキシル基を含む平均分子量450,000Daで8%の含水量を有する粉末形態の42.6gのSMAcスチレン/マレイン酸コポリマー[米国特許第7,985,819号記載の要領で調製]を、攪拌しながら混合容器に加え、内容物を80℃で1時間混合して合成ポリマーの溶解を完了させ、ポリマー溶液を40℃に冷却することにより終了となる。最後に、乾燥重量で10%のSMAcポリマー溶液400gが得られる。
【0072】
b)水酸化ナトリウム溶液のストック
加熱冷却ジャケットを備えた攪拌機能をもつ混合容器を使用して、乾燥重量10%(純度98.9%の水酸化ナトリウムペレットから)と脱塩水から400gのNaOH溶液を調製する。
【0073】
c)天然ポリマー溶液のストック
200ブルームで14%含水率(天然ポリマー-NPとして)を有する10%乾燥重量のゼラチンタイプA溶液400gを、混合容器を使用して354gの脱塩水に46.5gの天然ポリマーを溶解し、溶液の完全な均一化を確実にするために、40℃の温度で1時間、60rpm以下の回転速度で攪拌することにより調製した。
【0074】
さらに、上記で調製した3タイプの溶液を使用して、次の要領でストック溶液を脱塩水で希釈して3セットの複合溶液を調製した。
合成ポリマーが0%~110%の異なる中和度を有する3%濃度の12溶液でできたゼラチン不含有のSet-SOL1。
合成ポリマーが0%~110%の異なる中和度を有する3%濃度の12溶液からなるSMAcに対し10%の割合でゼラチンを含有するSet-SOL-2、及び合成ポリマーが0%~110%の異なる中和度を有する3%濃度の12溶液からなるSMAcに対し30%の割合でゼラチンを含有するSet-SOL-3。
【0075】
3つのセットに対応するすべての複合溶液について、サンプルが不溶相を含む場合はサンプルが不安定であり、不溶相のない均一な溶液である場合はサンプルが安定しているという意味で、粘度と安定性に関して特性を明らかにした。
得られた結果を表1及び図1に示す。
【表1】
【0076】
図1から、合成ポリマーの中和度が30~60%の範囲である場合、天然ポリマーの存在が合成ポリマーの粘度の低下をもたらすことが注目される。中和度が60%を超える場合、バイオポリマーの存在により、複合溶液の粘度値の増加が測定される。
【0077】
複合溶液の安定性の観点から、これは合成ポリマーの中和度に依存的である。合成ポリマーの中和度が30%より大きい場合、SMAcとゼラチンを含む複合システムは安定していることが注目されている。
【0078】
例2~例5
これらの例では、NaOHによりもたらされた中和度が59%のSMAc(例1に記述)及び様々な値のゼラチン含有量を含み、さらにポリマー組成物の含有量に対して1.5%の乾燥重量を含むポリマー溶液の1重量%の濃度による異なる含浸度での、密度が50g/mのビスコース繊維を含むいくつかの不織布の脱塩水(導電率2マイクロS)に対する吸収性の値を示す。
【0079】
実験は次の要領で行った。
質量0.5gのテキスタイル材料に、実験装置で噴霧することにより、例1に記載の方法に従って調製した複合溶液を含浸させ、最終的に、乾燥した繊維材料のサンプルの乾燥質量に対する事前に確立された含浸度IMDを得た。さらに、湿潤テキスタイルサンプルを、空気循環機能をもつオーブンに吊り下げた状態で置き、180℃に予熱し、この温度で4分間維持した。最後に、サンプルをオーブンから取り出し、周囲温度で放冷した。次に、「試験方法」の章に記載されている方法に従って、テキスタイル材料を吸収性試験に供した。
【0080】
実験条件と結果を表2に示す。
【表2】
【0081】
例6~例12
これらの例では、前の例で述べた空気循環機能を備えた同じオーブンを使用して、200℃で100秒間の熱処理による20%の含浸度で、ポリマー複合物に対し3.6%のゼラチン、NaOHを使用して中和度64%にした合成ポリマーSMAcの溶液を使用して、密度が50g/mのビスコース繊維からなるテキスタイル材料の含浸状態を示している。最後に、テキスタイルサンプルの吸収性を、人体から分泌された模擬流体に代表される様々な液体媒質に対して評価した(Margareth R.C.Marquesら、溶出試験での適用可能性がある模擬生体液(Simulated Biological Fluids with Possible Application)、溶出技術(Dissolution Technologies)、2011年8月、1)
【0082】
結果を表3に示す
【表3】
【0083】
例13
この例では、相対吸収性RQ1に対する、吸収性テキスタイル材料を得るために密度が50g/mのテキスタイル材料のサンプルが受ける熱処理の温度と時間の影響が示されている。結果を図2に示す。
【0084】
得られたデータは、含浸布の熱処理は、吸収性の最高値が得られるような方法でなければならないことを示している。架橋度が低いため、又はポリマー複合液の架橋度が高すぎるために、最大値が低くなる。
【0085】
例14
この例は、布地が含浸される繊維のタイプの影響を示している。
【0086】
この目的のために、例2と一致する化学組成を有する複合ポリマー溶液を使用した。
【0087】
ポリプロピレン繊維(PP繊維)、ポリエステル繊維(PET繊維)ビスコース繊維(ビスコース繊維)からのテキスタイル材料が使用されている。
【0088】
得られた結果を図3に示す。
【0089】
例15~例16
これらの例では、本発明による複合材料の調製に使用されるバイオポリマーのタイプが、例1からの複合液の調製技術及び例3からのテキスタイル材料の含浸方法の使用によるテキスタイル材料の吸収性に及ぼす影響が示されている。
【0090】
ゼラチンの代わりにグアーガム(G4129 Sigma Aldrich)と可溶性デンプン(S9765 Sigma Aldrich)が使用されている。
【表4】
【0091】
本発明における実施態様
1.高吸収性材料の製造のためにあらゆるタイプの既製のテキスタイル材料を処理するためのポリマー複合溶液。処理された材料は、好ましい不織布である。
【0092】
2.ポリマー溶液は、塩形態の合成ポリマーSP、天然ポリマーNP、及び必要に応じて添加剤A及び水Wを含む。
【0093】
3.既製のテキスタイル材料TEXと含浸組成物IC間の比率=(SP+NP+Aは、乾燥重量で85:25~99:1%である。
【0094】
4.合成ポリマー塩SPと天然ポリマーNPの比率は、乾燥重量で70:30~95:5%のSP:NPである。
【0095】
5.添加剤Aとポリマー(SP+NP)の比率は、乾燥重量で0.5:5%である。
【0096】
6.ポリマー溶液の含水率は79:99重量%である。
【0097】
7.好ましくは塩の形態の合成ポリマーSPは、以下の特徴を有する市販のポリマーである:
f)合成ポリマーの構成は、カルボキシル化学官能基を含まない他のタイプのビニル系モノマーを伴うか又は伴わずにアクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸及びこれらに類するものなどのビニル酸性モノマーを含むコポリマーとして直鎖状又はグラフトホモポリマー若しくはコポリマーとして分枝状である。
g)全遊離カルボキシル化学官能基の含有量が0.009:0.0095モル/グラム~0.01:0.0.15モル/グラムである。
h)合成ポリマー、SPの遊離カルボキシル化学官能基が、塩状態にあり、49~99%、好ましくは60~95%、最も好ましくは65~90%の中和度に対応する。
i)合成ポリマーの塩状態が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの水酸化物、重炭酸塩又は炭酸塩、好ましくは水酸化物などの強塩基性の無機物質を使用することで得られる。
j)合成ポリマー、SPの平均分子量が、50,000Da~1,000,000Da、好ましくは100,000Da~750,000Da、最も好ましくは150,000Da~500,000Daの値を有する。
【0098】
8.天然ポリマー、NPは、好ましくは、以下のクラスの物質:タンパク質、炭水化物、バイオポリエステル又はリグニン(天然形態としての、又は、化学的若しくは酵素的加水分解により修飾されている)に属する市販のバイオポリマーである。好ましいのは、全体として水溶性であり、下記の特徴を有するタンパク質及び炭水化物である:
a)平均分子量が、5,000~10,000Da、好ましくは25,000~50,000Da、さらに好ましくは75,000~100,000Daである。
b)NH、OH-CH、OH-C3-5などの遊離化学官能基、単一タイプ又は複数タイプとして、0.001~0.002モル/グラム、好ましくは0.005~0.01モル/グラムの含有量を有する。
【0099】
9.使用に適した添加剤Aは、可塑剤、抗菌剤、活性表面剤、消臭剤、香料、防腐剤などで、吸収性以外の特性と関連した量である。
【0100】
10.ポリマー複合溶液は、貯蔵又は後処理の条件での相分離の現象を伴わない安定した溶液である。
【0101】
11.ポリマー溶液は、2~20分の間に100~250℃の温度で熱処理する条件で、繊維状の塊の内部において架橋を形成することにより、乾燥状態で3次元のポリマー網目構造材料を生成することができる。
【0102】
12.ポリマー複合物で処理された基材、例えば布の吸水性の改善に使用されるポリマー複合水溶液の調製方法であって、以下の工程、すなわち:
a)アルカリ性塩基溶液を調製する工程、
b)酸性形態の合成ポリマー(SP)の水溶液を調製し、後で(a)からのアルカリ性溶液で処理し、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での塩形態を得る工程、
c)1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の濃度での天然ポリマーNPの水溶液を加熱下で調製する工程、
d)塩形態の(b)で得られたSP溶液を(c)で得られたNP溶液と加熱及び攪拌下で混合して、テキスタイル材料に高い吸水性を与える含浸体として使用するのに適したポリマーの水性安定複合溶液を得る工程、及び必要に応じて
e)(d)で得られた水性複合溶液に、可塑剤、表面剤、消臭剤、香料及び保存料のリストから選択された少なくとも1つの補助材料を加える工程
を含む。
【0103】
13.使用するテキスタイル材料は、合成繊維又は天然繊維又は合成繊維と天然繊維の混合物から形成された不織布、織布、又は当技術分野で既知の市販されている他のタイプのものであり、密度が30~90g/m、好ましくは40~80g/m、より好ましくは50~70g/mである合成繊維から形成されたテキスタイル材料が好ましい。
【0104】
14.ポリマー複合溶液は、次のように、吸収性テキスタイル材料を得るための処理剤として使用される:
-例えば、当技術分野で知られている任意の設備(噴霧装置、フーラード(foulard)、ロールコーティング、リバースロールコーティング、ナイフ装置など)を使用するテキスタイル材料の含浸。
湿潤テキスタイル材料の処理は、材料の初期密度と選択した含浸度によって異なる:
a)テキスタイル材料の密度が最初に70g/mより高かった場合、湿潤テキスタイル材料は、まず50~90℃の温度、好ましくは55~85℃、最も好ましくは60~80℃の温度での熱気流中で乾燥され、その結果その固体複合物の含水率は12重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは8重量%未満となり、次いで5~180分間、好ましくは10~150分間、最も好ましくは15~120分間の期間、90~180℃の温度、好ましくは100~170℃の温度、最も好ましくは110~160℃の温度での熱気流中における補足的熱処理にかけられる。
b)テキスタイル材料の密度が最初に70g/m未満であった場合、湿潤テキスタイル材料は、100~150℃の温度で180~300秒間、好ましくは140~180℃の温度で60~180秒間、さらに好ましくは200~250℃の温度で30~120秒間の1回の熱処理にかけられる。
熱処理に続いて、処理されたテキスタイル材料を室温で放冷させ、最終的に梱包する。
【0105】
15.得られたテキスタイル材料は、吸水性が改善されており、例えばクリーニングワイプ、家庭用又は施設用のクリーニング又はメンテナンス、ハンドワイプ、乾いたままであると使用者に感じさせるが、水分を吸収し得るハンドタオル、個人用、化粧用若しくは生理用ワイプ、ベビーワイプ、顔用ティッシュ、衛生的な吸収性パッド及びその他の同様の用途など、様々な用途で使用され得る。
【0106】
参考文献

図1
図2
図3
図4