(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】異物を検出するための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20231114BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20231114BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20231114BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/40
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2020556814
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 US2019027789
(87)【国際公開番号】W WO2019204379
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】201841014936
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】カナカサバイ, ヴィスワナタン
(72)【発明者】
【氏名】アラヴィンド, ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】ブハット, スマ メマーナ ナラヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ボホリ, アドナン クトゥブディン
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502385(JP,A)
【文献】特開2014-126513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0054333(US,A1)
【文献】特開2015-216828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/40
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出コイル(106)、及び前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対を有する検出マット(102)であって、前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対は、前記検出コイル(106)の第1の群及び前記検出コイル(106)の第2の群を含み、前記検出コイル(106)の前記第1の群は第1のインピーダンス値を含み、前記検出コイル(106)の第2の群は第2のインピーダンス値を含む、検出マット(102)と、
前記検出マット(102)に動作可能に結合され、かつ前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対を励磁するように構成された1つ又は複数の駆動サブシステム(112)と、
前記検出マット(102)に動作可能に結合され、かつ前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対から差動電流信号を受信するように構成された比較サブシステム(114)であって、前記比較サブシステム(114)は、前記差動電流信号に基づいて、制御信号を生成するように構成されている、比較サブシステム(114)と
を備える、
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項2】
前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群は、無線電力伝送(WPT)システムの一次磁界に対して対称に配置され、また前記検出装置(100)は、前記差動電流信号に基づいて、前記WPTシステムの動作環境における異物の存在を検出するように構成されている、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項3】
前記検出コイル(106)の群の前記第1及び第2の群は、前記検出コイル(106)に関して構造的に類似の配置を含む、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項4】
前記検出コイル(106)の群の前記第1及び第2の群は、前記検出マット(102)上の同一の幾何学的領域に配置されている、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項5】
前記第1及び第2のインピーダンス値は互いに類似している、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項6】
前記第1及び第2のインピーダンス値は互いに異なっており、前記検出マット(102)は、前記検出コイル(106)の前記第1又は第2の群のうちの一方に動作可能に結合されて、前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群におけるインピーダンス値の差を補償するための補償器要素をさらに含む、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項7】
前記第1及び第2のインピーダンス値は互いに異なっており、前記1つ又は複数の駆動サブシステム(112)は、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群が駆動されるように、前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群に対して、異なる電圧信号を供給するように構成された駆動コントローラをさらに含む、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項8】
前記1つ又は複数の駆動サブシステム(112)は、前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群にそれぞれ結合された2つの駆動ユニットと、少なくとも1つの駆動コントローラとを含み、前記駆動コントローラは前記駆動ユニットに結合されている、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項9】
前記複数の検出コイル(106)は複数の検出領域を含み、前記複数の検出領域はそれぞれ、前記検出コイル(106)の1つ又は複数の群を含む、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項10】
前記1つ又は複数の駆動サブシステム(112)の少なくとも一部は、前記複数の検出領域のうちの2つ以上の検出領域に結合されるように構成されている、請求項9に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項11】
検出領域の対に対応している前記複数の検出領域における検出領域は、前記検出コイル(106)に関して構造的に類似の配置を含む、請求項10に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項12】
前記検出マット(102)は、可撓性マット、
又は剛性マットである、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項13】
前記検出コイル(106)の群内の前記検出コイル(106)は、直列接続、並列接続、又は直列接続と並列接続との組み合わせで結合されており、また前記複数の検出コイル(106)は、同心コイル、隣接配置コイル、コイルの並列配置を含み、前記複数の検出コイル(106)は、1つ又は複数の層に配置されている、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項14】
前記比較サブシステム(114)は、
前記検出コイル(106)の前記第1及び第2の群から差動電流信号を受信し、前記差動電流信号に基づいて、検出電圧信号を生成するように構成された電気巻線及び磁気コアと、
前記検出電圧信号を閾値電圧信号と比較して、前記制御信号を生成するように構成されたコンパレータと
を含む、請求項1に記載の
異物を検出するための検出装置(100)。
【請求項15】
異物を検出するための検出装置(406)であって、
複数の検出コイル(106)、及び前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対を有する検出マット(408)であって、前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対は、前記検出コイル(106)の第1の群及び前記検出コイル(106)の第2の群を含み、前記検出コイル(106)の前記第1の群は第1のインピーダンス値を含み、前記検出コイル(106)の第2の群は第2のインピーダンス値を含む、検出マット(408)と、
前記検出マット(408)に動作可能に結合され、かつ前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対を励磁するように構成された1つ又は複数の駆動サブシステム(410)と、
前記検出マット(102)に動作可能に結合され、かつ前記検出コイル(106)の群の少なくとも一対から差動電流信号を受信するように構成された比較サブシステム(414)であって、前記比較サブシステムは、前記差動電流信号に基づいて、制御信号を生成するように構成されている、比較サブシステム(414)と
を備える、
異物を検出するための検出装置(406)と、
無線電力伝送(WPT)システムであって、
交流(AC)電圧信号の形式で電力を供給するように構成された一次電源と、
少なくとも1つの送信機コイルを含む送信機ユニットであって、前記送信機ユニットは、前記一次電源から前記AC電圧信号を受信するように構成されており、前記送信機ユニットは、前記受信したAC電圧信号に応答して、一次磁界を生成するように構成されており、また前記検出マット(102)は、前記送信機ユニットに動作可能に結合されている、送信機ユニットと、
少なくとも1つの受信機コイルを含み、かつ前記送信機ユニットが生成する前記一次磁界の少なくとも一部を受け取るように構成された受信機ユニットと、
制御ユニットであって、前記検出装置に動作可能に結合されており、かつ
前記検出装置から前記制御信号を受信し、かつ
前記制御信号に基づいて、前記送信機ユニットへの電力供給を制御するように構成された制御ユニットと
を含む無線電力伝送(WPT)システムと
を備える、
異物を検出するための検出システム(400)。
【請求項16】
前記駆動サブシステムは、前記検出装置を断続的に、又は周期的に励磁するように構成されている、請求項15に記載の
異物を検出するための検出システム(400)。
【請求項17】
前記
検出装置(406)は、前記制御ユニットに前記制御信号を伝達するように構成された、通信ユニットをさらに含む、請求項15に記載の
異物を検出するための検出システム(400)。
【請求項18】
複数の検出コイル、及び前記検出コイル
の群の少なくとも一対を有する検出マットを備える検出装置を利用すること(602)であって、前記検出コイル
の群の少なくとも一対は、前記検出コイルの第1の群及び前記検出コイルの第2の群を含み、前記検出コイルの前記第1の群は第1のインピーダンス値を含み、前記検出コイルの第2の群は第2のインピーダンス値を含む、利用すること(602)と、
前記検出コイル
の群の少なくとも一対を励磁すること(604)と、
前記検出コイル
の群の少なくとも一対からの差動電流信号を測定すること(606)と、
前記差動電流信号に基づいて、制御信号を生成すること(608)と、
前記制御信号を送信すること(610)と
を含む、
異物を検出するための方法(600)。
【請求項19】
前記制御信号に基づいて、送信機ユニットへの電力供給を制御すること(700)をさらに含む、請求項18に記載の
異物を検出するための方法(600)。
【請求項20】
前記差動電流信号に基づいて、検出電圧信号を生成すること(702)と、
前記検出電圧信号を閾値電圧信号と比較して、前記制御信号を生成すること(704)と
をさらに含む、請求項19に記載の
異物を検出するための方法(600)。
【請求項21】
前記検出コイル
の群の少なくとも一対を励磁すること(604)は、断続的に、又は周期的な間隔で前記検出コイル
の群の少なくとも一対を励磁することを含む、請求項18に記載の
異物を検出するための方法(600)。
【請求項22】
前記検出コイル
の群の少なくとも一対を励磁すること(604)は、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、前記検出コイル
の群の一対における群が駆動されるように、インピーダンス値の異なる前記検出コイル
の群の一対における前記検出コイル
の群に対して、異なる電圧信号を供給することを含む、請求項18に記載の
異物を検出するための方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は検出装置に関し、より詳細には、本明細書の実施形態は、あるシステムの動作環境における異物の検出を行うための検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線電力伝送(wireless power transfer:WPT)システムは、あるデバイスから別のデバイスへと無線でエネルギーを伝送する誘導電力伝送の原理に基づいて動作している。通常、WPTシステムでは、送信機などの一次電力デバイスは、受信機と呼ばれる二次電力デバイスへと無線で電力を伝送している。これら送信機及び受信機は、WPTシステムの稼働中に、動作可能に近接して配置されるそれぞれのコイルを含む。電流が送信機コイルを通過すると、磁界が発生して受信機コイルに起電力が誘起され、これによって送信機から受信機へと無線で電力が伝送される。
【0003】
このようなWPTシステムでは、無線電力伝送中に送信機コイルと受信機コイルとの間に金属缶やアルミホイルなどの何らかの金属物体が存在する場合、渦電流のためにこの金属物体が不必要に加熱される恐れがある。これにより、火災安全上の問題など、安全上の危険が生じる恐れがある。また、無線電力伝送プロセスの効率に思わぬ影響が出たり、このプロセス全体が完全に中断されたりする恐れもある。
【0004】
WPTシステムで異物を検出するには、さまざまな方法がある。これらの方法としては、一次コイルから引き出される電力の測定値に基づいて、一次コイル内の電流の周波数変動によって異物の存在を検出することや、一次コイル内の電流及び電圧の不均衡な差異を検出することなどが挙げられる。また、一部の検出方法では、無線電力伝送が開始された後、異物の検出にいくらか遅延が生じる可能性がある。この間、異物によって電力が消費され続け、これが電力の浪費へとつながることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、ある検出装置は、複数の検出コイル、及び検出コイル群の少なくとも一対を有する検出マットを備え、この検出コイル群の一対は、検出コイルの第1及び第2の群を含む。検出コイルの第1の群は第1のインピーダンス値を含み、検出コイルの第2の群は第2のインピーダンス値を含む。さらに、この検出装置は、1つ又は複数の駆動サブシステムと、1つの比較サブシステムとを備える。駆動サブシステムは、検出マットに動作可能に結合され、かつ検出コイル群の少なくとも一対を励磁するように構成されている。比較サブシステムは、検出マットに動作可能に結合され、検出コイル群の少なくとも一対から差動電流信号を受信するように構成され、ここで比較サブシステムは、この差動電流信号に基づいて、制御信号を生成するように構成されている。
【0006】
別の実施形態では、ある検出システムは、検出装置と、無線電力伝送(WPT)システムとを備える。この検出装置は、複数の検出コイル、及び検出コイル群の少なくとも一対を有する検出マットを備え、この検出コイル群の少なくとも一対は、検出コイルの第1及び第2の群を含む。検出コイルの第1の群は第1のインピーダンス値を含み、検出コイルの第2の群は第2のインピーダンス値を含む。さらに、この検出装置は、1つ又は複数の駆動サブシステムと、1つの比較サブシステムとを備える。駆動サブシステムは、検出マットに動作可能に結合され、検出コイル群の少なくとも一対を励磁するように構成されている。比較サブシステムは、検出マットに動作可能に結合され、検出コイル群の少なくとも一対から差動電流信号を受信するように構成され、ここで比較サブシステムは、この差動電流信号に基づいて、制御信号を生成するように構成されている。WPTシステムは、交流(AC)電圧信号の形式で電力を供給するように構成された、一次電源を含む。WPTシステムは、少なくとも1つの送信機コイルを有する送信機ユニットをさらに含み、この送信機ユニットは、一次電源からAC電圧信号を受信するように構成されている。また、この送信機ユニットは、受信したAC電圧信号に応答して、一次磁界を生成するように構成され、ここで検出マットは、送信機ユニットに動作可能に結合されている。WPTシステムは、少なくとも1つの受信機コイルを含み、かつ送信機ユニットが生成する一次磁界の少なくとも一部を受け取るように構成された受信機ユニットをさらに含む。さらに、WPTシステムは、検出装置に動作可能に結合され、かつこの検出装置から制御信号を受信し、かつこの制御信号に基づいて、送信機ユニットへの電力供給を制御するように構成された制御ユニットを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、ある方法は、複数の検出コイル、及び検出コイル群の少なくとも一対を有する検出マットを備える検出装置を利用することであって、この検出コイル群の一対は、検出コイルの第1及び第2の群を含む、利用することを含む。検出コイルの第1の群は第1のインピーダンス値を含み、検出コイルの第2の群は第2のインピーダンス値を含む。本方法は、検出コイル群の少なくとも一対を励磁することと、検出コイル群の少なくとも一対からの差動電流信号を測定することとをさらに含む。さらに、本方法は、差動電流信号に基づいて、制御信号を生成することと、この制御信号を送信することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のこれら並びに他の特徴及び態様は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読解すると、より効果的に理解され、ここではこれらの図面全体を通して、同様の符号が同様の部分を表している。
【0009】
【
図1】本明細書の態様による、異物の存在を検出するための例示的な検出装置の概略図である。
【
図2A】本明細書の態様による、例示的な検出コイル群の対を示した概略図である。
【
図2B】本明細書の態様による、例示的な検出コイル群の対を示した概略図である。
【
図3A】本明細書の態様による、駆動サブシステムに結合された、検出コイル群の対を備える検出装置の一部を示した概略図である。
【
図3B】本明細書の態様による、駆動サブシステムに結合された、検出コイル群の対を備える検出装置の一部を示した概略図である。
【
図3C】本明細書の態様による、検出コイル群の対に結合された、1つ又は複数の駆動サブシステムを有する検出装置の一部を示した概略図である。
【
図3D】本明細書の態様による、検出コイル群の対に結合された、1つ又は複数の駆動サブシステムを有する検出装置の一部を示した概略図である。
【
図3E】本明細書の態様による、検出コイル群の対に結合された、1つ又は複数の駆動サブシステムを有する検出装置の一部を示した概略図である。
【
図4】本明細書の態様による、WPTシステムの動作環境における異物の存在を検出するための検出装置を有する、例示的な検出システムの概略図である。
【
図5】本明細書の態様による、検出装置の例示的な比較サブシステムを示した概略図である。
【
図6】本明細書の態様による、WPTシステムの動作環境における異物の存在を検出するための例示的な方法である。
【
図7】本明細書の態様による、WPTシステムの動作環境における異物の存在を検出するための例示的な方法である。
【
図8】本明細書の態様による、検出マットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の実施形態は、異物の検出を行うための検出装置、検出システム、及び方法に関する。特定の実施形態では、本検出装置を、無線電力伝送(WPT)システムにおける異物の検出を行うために使用することができる。本明細書で使用する場合、「異物」という用語は、導電性であるか、又は検出可能な透磁率を有し、またシステムの一部ではないが、このシステムの動作環境に偶発的に存在する物体を指す。異物の非限定的な例としては、鉄系物体、ブリキ缶、又は他の導電性若しくは鉄系の物体が挙げられる。一例では、缶又は鍵束は、本WPTシステムの動作環境において異物と見なされる。
【0011】
本明細書で使用する場合、「一次磁界」という用語は、本WPTシステムの送信機ユニットを例とする送信機ユニットによって励磁される磁界を指す。用語の「動作環境」は、本システム内の一次磁界によって画定されるものであり、ここでは、送信機ユニットの一次磁界が検出可能に存在し、また異物と検出可能に相互作用することができる。一例として、本WPTシステムの動作環境に存在する異物では、この一次磁界と相互作用するために、温度の上昇が発生する可能性がある。
【0012】
本明細書で使用する場合、「検出コイル群」という用語は、単一の検出コイル又は2つ以上のコイルを指し、個々の群それぞれの検出コイルは互いに電気的に結合されている。また、「検出コイル群の対」という用語は、そのような2つの検出コイル群を指す。
【0013】
一部の電気自動車(EV)及びハイブリッド車は、WPTシステムを使用した無線電力伝送又は誘導電力伝送によって充電されている。このWPTシステムは、充電スタンドの一部である送信機ユニットと、電気自動車(EV)内に配置された受信機ユニットとの2つの部分で主として構成されている。充電スタンドの送信機ユニットは、EVの受信機ユニットに誘導結合されている。通常、EVの受信機コイルが送信機コイルの動作環境内へと持ち込まれ、かつ送信機ユニットへの電力供給が開始されると、送信機ユニットのコイルと受信機ユニットのコイルとの間で電力の伝送が開始される。
【0014】
導電性材料又は鉄鋼材料製の異物がこのWPTの動作環境に偶発的に位置していると、この異物は、送信機ユニットが生成する磁界と相互作用する可能性がある。その結果、当該異物は偶発的に磁界を傍受し、この磁界を介して送信機ユニットから電力を引き出す可能性がある。したがって、ここで異物が電力を引き出してしまうことにより、電力の浪費や異物の不必要な加熱が発生することになる。これに適時に対処しない場合、又はこれに気付かない場合、異物の取扱いに危険が生じる恐れがあるまで当該異物の温度が上昇する可能性があり、また安全上のリスクも引き起こす恐れがある。したがって、電力の浪費を防止し、かつ危険な環境でのリスクを回避するために、異物の存在を検出することが望ましい。
【0015】
図1は、複数の検出コイル106、及び検出コイル106の群の少なくとも一対(
図1には図示せず)を有する検出マット102を備える検出装置100を示す。検出コイル106の群の少なくとも一対は、検出コイル106の第1の群及び検出コイル106の第2の群を含み、検出コイル106の第1の群は第1のインピーダンス値を有し、検出コイル106の第2の群は第2のインピーダンス値を有する。検出装置100は、検出マット102に動作可能に結合され、かつ検出コイル106の群の少なくとも一対を励磁するように構成された、1つ又は複数の駆動サブシステム112をさらに備える。さらに、検出装置100は、検出マット102に動作可能に結合され、かつ検出コイル106の群の少なくとも一対から差動電流信号を受信するように構成された比較サブシステム114を備える。比較サブシステム114は、この差動電流信号に基づいて、制御信号を生成するように構成されている。
【0016】
特定の実施形態では、検出装置100は、無線電力伝送(WPT)システム(
図1には図示せず)の動作環境において、異物の存在を検出するように構成されている。本WPTシステムの動作環境において異物が存在する場合、1つ又は複数の検出コイル106のインピーダンス値に変動をもたらす可能性がある。検出コイル106のインピーダンス値の変動を使用して、異物の存在を確認している。検出コイル106の群については、
図2A~
図2B及び
図3A~
図3Bに関してより詳細に説明するものとする。
【0017】
さらに、検出マット102は、「検出領域」104とも呼ばれるいくつかの幾何学的位置を含んでいてもよい。検出領域104は検出マット102の離散的領域を画定しており、検出領域104はそれぞれ、検出コイル106の1つ又は複数の群を含む。なお、検出領域104は、物理的に互いから分離又は隔離されていなくてもよく、ここでは検出領域104は、互いから電気的に絶縁されていてもよい。また、検出領域104は、幾何学的又は非幾何学的な形状を有していてもよい。
【0018】
検出マット102は、可撓性マット、形状適合マット、剛性マット又はプラグ・アンド・プレイ型マット、スタンドアロン型マット、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。なお、検出マット102の表面積は、この検出マット102が配置されている送信機ユニットの表面積以上であってもよい。検出マット102の基板は、電気絶縁材料製であってもよい。検出マット102は、その上での電気自動車の動作に耐えるために、機械的耐摩耗性材料をさらに含んでいてもよい。検出マット102は屋外用途向けにさらに設計され、ひいては耐温設計又は耐湿設計されていてもよく、また水の浸入に耐性があってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、検出コイル106は検出マット102の基板上に配置されていてもよいし、あるいはユーザの安全性及び美観を確保するために、検出マット102の基板に埋め込まれていてもよい。いくつかの他の実施形態では、検出コイル106は、検出マット102の基板上に印刷されてもよいし、成形されてもよいし、織り込まれてもよいし、あるいは付加製造されてもよい。
【0020】
検出コイル106は電磁コイルである。なお、
図1の図示の実施形態では、図示を目的として検出コイル106を使用しているが、検出コイル106はそれぞれ、渦巻き状又は他のコイル位相を含んでいてもよい。さらに、検出領域104はそれぞれ、1つ又は複数の検出コイル106を有していてもよい。特定の実施形態では、検出コイル106の群は、検出コイル106のさまざまなコイル位相、形状、及び幾何学的配置を含んでいてもよい。検出コイル106の形状に関する非限定的な例としては、らせんコイル、渦巻き状コイル、及び非円形コイルなどが挙げられる。検出マット102上に設けられた異なる検出コイル106又は検出コイル106の群は、同一のインピーダンス値を有していてもよいし、あるいは異なるインピーダンス値を有していてもよい。
【0021】
検出コイル106の群の対はそれぞれ、検出マット102上の同一の又は異なる幾何学的位置に配置されて、検出コイル106の群の対を形成している2つの群を含む。一例として、これら一対における2つの群は同一の検出領域104に配置されてもよいし、あるいは2つの異なる検出領域104に配置されてもよい。非限定的な例としては、検出コイル106の群はそれぞれ、同心コイル、隣接配置コイル、コイルの並列配置が挙げられる。さらに、検出コイル106の1つ又は複数の群は、単一の平面、あるいは2つ以上の層に配置されてもよい。検出コイル106の群内の検出コイル106は、直列接続、並列接続、又は直列接続と並列接続との組み合わせで接続されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、検出コイル106の群の対は、同心コイルを含む。非限定的な例では、これら2つの同心コイルのうちの一方のインダクタンス値は、もう一方の同心コイルのインダクタンス値とは異なっている。一例として、一対の同心コイルの一方の同心コイルが有するインダクタンス値をLで表してもよいが、一対の同心コイルのもう一方の同心コイルが有するインダクタンス値をnLで表してもよい。
【0023】
駆動サブシステム112は、1つ又は複数の駆動ユニットと、1つの駆動コントローラとを含む。駆動サブシステム112は、検出マット102に動作可能に結合され、検出コイル106の群の1つ又は複数対を励磁するように構成されている。駆動サブシステム112は、検出装置100において指定された検出コイル106の群を断続的に、又は周期的に励磁するように構成されていてもよく、ここで指定された検出コイル群は、検出コイル106の群の1つ又は複数対を形成している。駆動サブシステム112は、同一の又は異なる検出領域104に属する、検出コイル106の群の対を励磁するように構成されていてもよい。特定の実施形態では、駆動サブシステム112は、本WPTシステムの一次磁界(
図1には図示せず)に対して対称に配置された、検出コイル106の群を励磁するように構成されていてもよい。
【0024】
一例では、駆動サブシステム112は、検出コイル106の群の対における群を同時に、又は順次励磁するように構成されていてもよい。付加的に、又は代替的に、駆動サブシステム112は、検出マット102における検出コイル106の群の2つ以上の対を同時に、又は順次励磁するように構成されていてもよい。一例では、駆動サブシステム112は、異物の存在について検出マット102をスキャンするように構成されていてもよい。異物の存在の検出は、ある装置(EVなど)の無線電力伝送を開始する前に完了してもよい。さらに、異物の存在の検出はまた、この装置(EVなど)の無線電力伝送のプロセス中に周期的に、又は断続的に実行されてもよい。
【0025】
一例で
図3A~
図3Eに関して詳述しているように、検出コイル106の群の対はそれぞれ、それぞれの駆動サブシステムに結合されていてもよく、別の例では、検出コイル106の群の2つ以上の対は、共通の駆動コントローラを共有する、異なる駆動ユニットに結合されていてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、駆動サブシステム112の駆動ユニットは、検出コイル106の1つ又は複数の群に電圧信号を供給するように構成され、また駆動コントローラは、駆動ユニットの動作を制御するように構成されている。そのために駆動コントローラは、駆動サブシステム112をオンにして、検出コイル106の1つ又は複数の群を励磁し、また検出コイル106の群を励磁する必要がない場合、駆動サブシステム112をオフにする。特定の実施形態では、駆動サブシステム112はインバータ、コンバータ、線形増幅器、電子スイッチ、又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む。駆動サブシステム112のスイッチング動作は、双方向スイッチ、半導体スイッチなどの電子スイッチ、リレー、コントラクタなどの機械的スイッチ、又はそれらの組み合わせによって実行されてもよい。特定の実施形態では、駆動サブシステム112は、本WPTシステムの送信機ユニットに電力を供給するように構成された一次電源から、電力を引き出してもよい。あるいは、駆動サブシステム112は、バッテリなどであるが、これに限定されない個別の電源を有していてもよい。
【0027】
なお、動作中、検出マット102上に異物が存在する場合、1つ又は複数の検出コイル106に誘導結合され、これにより、検出コイル106におけるそれらの特定の群で、結果として得られるインピーダンス値に影響が及ぶ可能性がある。さらに、検出装置100における検出コイル106の個々の群固有のインピーダンス値はまた、異物が存在しない場合、同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、検出コイル106の群の対における2つの群が有する固有のインピーダンス値は、異物が存在しない場合、同一であってもよいし、異なっていてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、検出マット102は、検出コイル106の群の対における少なくとも一方に動作可能に結合されて、異物が存在しない場合には、検出コイル106の群の対における2つの群それぞれから、結果として得られる類似したインピーダンス値をもたらす補償器要素(
図1には図示せず)をさらに含む。いくつかの他の実施形態では、駆動コントローラを使用して、検出コイル106の群の対における群のうちの一方に電圧補償を行ってもよい。一例として、駆動サブシステム112の駆動コントローラは、異物が存在しない場合に、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、検出コイル106の群の対における2つの群が駆動されるように、検出コイル106の群の対における2つの群に対して、異なる電圧信号を供給する。
【0028】
比較サブシステム114は、検出マット102に動作可能に結合され、検出マット102から1つ又は複数の差動電流信号を受信するように構成されている。比較サブシステム114は、この差動電流信号に基づいて検出電圧信号を判定するように構成されている。なお、異物が存在しない場合には、この差動電流信号の値は非常に小さくなり、検出不可能となる場合がある。また、異物と1つ又は複数の検出コイル106との誘導結合により、差動電流信号の値は、異物存在下で検出可能な非ゼロ値となる可能性がある。
【0029】
検出装置100は、WPTシステムなどであるが、これに限定されないシステムにおける異物の存在を検出するために使用できる、スタンドアロン型装置であってもよい。そのために、検出装置100を既存のWPTシステムと共に使用して、無線電力伝送の前及び/又は最中に異物の存在を検出してもよい。検出マット102、駆動サブシステム112、及び比較サブシステム114に加えて、検出装置100は、検出装置100が使用される本システムと検出装置100とが通信できるようにする通信ユニット(
図1には図示せず)をさらに備えていてもよい。一例として、この通信ユニットにより、米国自動車技術者協会(society of automotive engineers:SAE)規格に従って、検出装置100がWPTシステムと通信することができるようになり得る。この通信ユニットを使用して、本WPTシステムの制御ユニットに対して検出電圧信号を伝達して、本WPTシステムの送信機ユニットへの電力供給を継続するかどうかを判断してもよい。
【0030】
有利には、本技術による検出装置100は、本WPTシステムの動作環境において、比較的小さな異物の存在でさえも検出するように構成されている。一例では、この異物は2平方cm以上の表面積を有していてもよい。
【0031】
ここで
図2A~
図2Bを参照すると、特定の実施形態では、ある検出装置の検出コイル群の1つ又は複数対を励磁して、検出マットからの差動電流信号が求められてもよく、ここで、この差動電流信号を使用して、異物の有無が判定される。なお、これら検出コイルの対における個々の2つの群はそれぞれ、1つ又は複数の検出コイルを含んでいてもよい。
【0032】
特定の実施形態では、検出コイル群の対における第1及び第2の群は、一次磁界に対して対称に配置されている。さらに、検出コイル群の対における第1及び第2の群は、検出マット上の同一の幾何学的領域に配置されている。いくつかの実施形態では、検出コイル群の対における第1及び第2の群は、検出コイルに関して構造的に類似の配置を含む。また、特定の実施形態では、検出コイル群の対におけるこれらの群が有する第1及び第2のインピーダンス値は、本WPTシステムの動作環境に異物が存在しない場合類似している。本明細書で使用する場合、類似のインピーダンス値とは、互いのプラスマイナス0.5%以下の変動を有するインピーダンス値を指す。一例として、第1の群のインピーダンス値は、第2の群のインピーダンス値のマイナス0.5%以内であってもよく、ここで、これら第1及び第2の群は、検出コイル群の対を形成している。
【0033】
他のいくつかの実施形態では、これら第1及び第2のインピーダンス値は、異物がない場合異なっている。これらの実施形態のいくつかでは、検出マットは、検出コイル群の対における第1又は第2の群のうちの一方に動作可能に結合されて、これら検出コイル106の第1及び第2の群におけるインピーダンス値の差を補償するための補償器要素を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、これら第1及び第2のインピーダンス値は、異物がない場合には異なっており、また1つ又は複数の駆動サブシステムは、異物が存在しない場合に、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、検出コイル群の対における第1及び第2の群が駆動されるように、これら検出コイルの第1及び第2の群に対して、異なる電圧信号を供給するように構成された駆動コントローラをさらに含む。
【0034】
図2Aに関して記載しているように、検出コイル群の特定対における検出コイルは一次磁界に対して対称に配置され、このために、類似の一次磁界の強度にさらされている。
図2Bに関して記載しているように、検出コイル群の対における群は、検出マットにおいて同一の幾何学的領域に配置されていてもよく、このためにこれらの群では、一次磁界の強度が類似する可能性がある。いくつかの実施形態では、検出コイル群の対における群はそれぞれ、本WPTシステムの動作環境に異物がない場合には、同一のインピーダンス値を含む。いくつかの他の実施形態では、検出コイル群の対における2つの群は、異なるインピーダンス値を有する。これらの実施形態では、これら検出コイル群の対における2つの群は、補償器要素に関連して、又は駆動コントローラの補助を受けながら、ごくわずかで検出不可能な量の差動電流を供給してもよいが、ただし異物存在下では、これら検出コイル群の対に属する一群における1つ又は複数の検出コイルが異物と電気的に結合されて、当該検出コイル群の正味インピーダンスを変更するので、これら検出コイル群の対における2つの群によって引き出される電流に差が生じることになる。その結果、これら一対における2つの群の一方の入力電流と、これら検出コイル群の当該対におけるもう一方の群からの入力電流との間の差である差動電流が、検出可能な値に達することになる。
【0035】
図2Aは、検出コイル205の群204を有する複数の検出領域202を備える、例示的な検出マット200を示す。なお、非限定的な図示の実施形態では、検出領域202において4x4アレイを有するものとして検出マット200を示しており、また検出コイル205の4つの群204を有するものとして検出領域202をそれぞれ示しているが、検出マット200における検出領域202の数や、各検出領域202における群204の数は変動してもよく、またこれは、単に例示を目的としているにすぎない。さらに、なお、図示の例では、16個の検出領域202を有するものとして検出マット200を示しているが、検出マット200などの1つの検出マットにおける検出領域202の数は、1つ又は複数であってもよい。また、群204はそれぞれ、1つ又は複数の検出コイル205を含んでいてもよい。さらに、群204における検出コイル205の渦巻き形状は例示を目的としているものであり、この検出コイル205の形状は、円形形状、非円形形状、渦巻き形状、らせん形状、又はそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されないものであってもよい。検出マット200は、送信機ユニット(
図2Aには図示せず)上に配置されていてもよい。さらに、点線で描かれた円206は、検出マット200の下に配置された送信機ユニットの送信機コイルを表している。
【0036】
一次磁界の類似の強度にさらされる可能性の高い検出コイルにおける任意の2つの群204を対にして、異物の存在を検出するための検出コイル群の対を形成してもよい。検出コイル205の群204の想定できるいくつかの対を、n-n’によって表している。一例として、参照番号208によって参照される群204は、送信機コイル206又は送信機ユニットの一次磁界に対して対称に配置され、検出コイル群208の対212を形成している。同様に、群210は、送信機ユニットの一次磁界に対して対称に配置され、検出コイル群210の別の対214を形成している。なお、212、214、n‐n’以外の検出コイル205の群204の他の対も想定可能である。
【0037】
特定の実施形態では、検出マット200が送信機ユニット上に配置される場合、WPTシステム(
図2Aには図示せず)の動作環境における異物の存在を検出するために、群204の1つ又は複数対における検出コイル205が励磁されてもよい。一例として、2つの対212又は214のうちの一方は、駆動サブシステムによって励磁されてもよい。さらに、これらの群の対における2つの群が有するインピーダンス値が異なっている場合、検出コイル205の群204の対における群204のうちの少なくとも一方に補償器要素218が動作可能に結合されて、異物が存在しない場合に、これら検出コイル205の群の対における2つの群204のそれぞれから、結果としてもたらされるインピーダンス値が類似するようにしてもよい。
【0038】
図2Bは、2つ以上の検出コイル222を有する複数の検出領域224を備える検出マット220を示す。検出装置220は、送信機ユニット(
図2Bには図示せず)上に配置されていてもよい。図示の実施形態では、点線で描かれた円225は、検出装置220の下に配置された送信機ユニットの送信機コイルを表している。また、領域224はそれぞれ、各検出領域224に配置された同心状の検出コイル222の複数群を含む。なお、領域224当たりの検出コイル222の数がより多くなるか、又は検出コイル222の形状、及び形状寸法が異なっていることが本出願の範囲内で想定され、また
図2Bで図示している実施形態は、単に例示を目的として提示している代表的な実施形態である。検出コイル222の群228及び230の対226は、図示の方法で形成されている。個々の群228及び230は、これらの群228及び230の検出コイル222が類似の一次磁界の強度にさらされるように、同一の幾何学的領域に配置されている。
【0039】
図3Aは、本明細書の検出装置の一部300を示している。一部300は、本検出装置の検出マット上に配置された、検出コイル308の群304及び306の対302を含む。本明細書で企図されている実施形態では、検出コイル308の2つの群304及び306は両方とも、単一の駆動サブシステム310によって励磁される。駆動サブシステム310は、駆動ユニット311と、駆動コントローラ314とを含む。また、検出コイル308の群304及び306の両方は、駆動サブシステム310の単一の駆動ユニット311を使用して励磁される。駆動ユニット311は、インバータ/コンバータ312、コンデンサ309及び311、1つ又は複数の補償器要素315及び317を含む。なお、コンデンサ309及び311の容量値は固定であってもよいし、あるいは可変であってもよい。駆動サブシステム310の駆動コントローラ314は、検出コイル308の2つの群304及び306への励磁電圧を制御するように構成されている。図示のように、各群304及び306内の検出コイル308は、直列接続、並列接続、又はその両方で互いに結合されていてもよい。コンデンサ309及び311はこれらの群304及び306に結合され、群304及び306の検出コイル308と共振回路を形成する。コンデンサ309及び311は、検出コイル308で駆動される電流を調整し、したがって、本検出装置の検出マット上における異物を検出するために使用される磁界の強度を修正する補助をしている。
【0040】
異物の近傍に存在する1つ又は複数の検出コイル308は、異物と電磁的に結合してもよく、この誘導結合により、検出コイル308によって引き出される電流の値の変動がもたらされてもよい。一実施形態では、検出コイル308の対302における2つの群304及び306は、異物が存在しない場合、検出可能に類似したインピーダンス値を有していてもよい。異物の存在を検出するために、当該対302の差動電流信号が、群304の帰還電流信号I1318及び群306の継続電流信号I2320、又はその逆に基づいて計算される。別の実施形態では、異物が存在しない場合において、2つの群304及び306が検出可能に異なるインピーダンスを有するときは、1つ又は複数の補償器要素315及び317を使用して、これら2つの群によって引き出される電流が、異物が存在しない場合に確実に類似するようにしている。補償器要素315及び317の非限定的な例は、直列又は並列、あるいはその両方の形態のインダクタンス、抵抗、静電容量を含んでいてもよい。
【0041】
図3Bは、本明細書の検出装置の一部330が、本検出装置の検出マット上に配置された検出コイル338の第1の群334及び第2の群336の対332を備える、別の実施形態を示す。これら2つの群334及び336は、駆動サブシステム340に結合されている。駆動サブシステム340は、第1の群334及び第2の群336をそれぞれ励磁するように構成された、2つの駆動ユニット342及び344を含む。これら2つの駆動ユニット342及び344は、インバータ348及び350、DC/DCコンバータ352及び354、並びにコンデンサ333及び335を含む。図示していないが、一方又は両方の駆動ユニット342及び244は、1つ又は複数の補償器要素をさらに含んでいてもよい。これらの群334及び336に結合されたコンデンサ333及び335は、群334及び336の検出コイル338と共振回路を形成して、当該コイルで駆動される電流を調整し、したがって、検出マットにおける磁界の強度をも調整する補助をしている。インバータ348及び350は、これら2つの群334及び336を駆動している2つのDC/DCコンバータ352及び354から入力を受け取り、ここでこれら2つの群334及び336は、異物が存在しない場合、類似の又は異なるインピーダンス値を有していてもよい。
【0042】
駆動サブシステム340は、第1及び第2の群334及び336のインピーダンス値に差が生じた場合でも、第1及び第2の群334及び336の電流値におけるいずれの差も補償するように構成され得る、駆動コントローラ346をさらに含む。これらの群334及び336が有するインピーダンス値が異なっている実施形態では、駆動コントローラ346は、1つ又は複数の方法によって、これら2つの群334及び336を駆動するために使用される電流を調整するように構成されていてもよい。一実施形態では、駆動コントローラ346は、DC/DCステージコンバータ352及び354を制御することにより、インバータ348及び350の電圧信号V1及びV2を変化させるように構成されていてもよい。別の実施形態では、インバータ348及び350の動作周波数を変更することなく、これらのインバータ348及び350のデューティサイクルを変更してもよく、これにより、異物が存在しない場合に、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、検出コイル338の第1及び第2の群334及び336が駆動されるようにすることができる。当該対332の差動電流信号は、第1の群334の帰還電流信号I1356及び第2の群336の継続電流信号I2358、又はその逆に基づいて計算される。
【0043】
ここで
図3C~
図3Eを参照すると、
図3C~
図3Eは、駆動サブシステムと検出コイル群との間の動作可能な結合に関する実施形態を示している。検出動作中、これらの検出コイル群は、検出システムの1つ又は複数の駆動サブシステムに結合され、この駆動サブシステムの1つ又は複数の駆動ユニットから電流を引き出している。これらの群の対における両方の群のインピーダンス値が類似している場合、当該検出コイル群の対におけるこれら2つの群によって引き出される電流では、異物が存在しない場合に差動電流の値が僅少となる。しかし、検出コイル群の対における2つの群のインピーダンスが異なる場合、駆動コントローラは、当該検出コイルの対の一方又は両方の群に補償を行って、異物が存在しない場合に、類似の電流信号によってこれら2つの群が確実に駆動されるようにしている。駆動コントローラは、検出コイルの励磁電圧、励磁周波数、及び励磁時間をさらに制御している。駆動コントローラは、駆動ユニットをオンにして検出コイル群を励磁し、また検出コイル群を励磁する必要がない場合、駆動ユニットをオフにする。駆動コントローラは、これらの駆動ユニットを制御するために、電子回路を使用してもよい。電子回路の非限定的な例としては、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field‐programmable gate array:FPGA)、半導体デバイス、論理ゲート、デバイスドライバ、発振器及びタイマ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
図3Cは、検出マット上に配置された検出コイル群366の複数364に結合された駆動サブシステム362を有する、検出装置(
図3Cには図示せず)の一部360を示す。駆動サブシステム362は複数の駆動ユニット368を含み、ここで駆動ユニット368はそれぞれ、検出コイルの対応する群366に結合されている。駆動サブシステム362は、駆動ユニット368の動作を制御している駆動コントローラ370をさらに含む。
【0045】
図3Dは、検出マット上に配置された検出コイルの群386の複数384に結合された駆動サブシステム382を有する、検出装置(
図3Dには図示せず)の一部380を示す。駆動サブシステム382は、複数の駆動ユニット387を含む。駆動サブシステム382は、駆動ユニット387の動作を制御している駆動コントローラ389をさらに含む。検出コイル群の対388は、各対388が単一の駆動ユニット387に結合されるように、駆動サブシステム382に結合されている。
【0046】
図3Eは本検出装置(
図3Eには図示せず)の一部390を示し、ここで本検出装置は、検出コイル群394の複数393に結合された、2つの駆動サブシステム391及び392を使用している。これらの検出コイルは検出マット上に配置されている。検出コイル群394の対395及び397はそれぞれ、駆動サブシステム391及び392に結合されている。駆動サブシステム391は、駆動ユニット399と、駆動コントローラ401とを含み、駆動サブシステム392は、駆動ユニット403と、駆動コントローラ405とを含む。
【0047】
図4は、WPTシステム404の動作環境402における異物の存在を検出するための、例示的な検出システム400を示している。システム400は、検出装置406と、WPTシステム404とを備える。検出装置406は、WPTシステム404の動作環境402における異物の存在を検出するための複数の検出コイル、及び検出コイル群の少なくとも一対を有する検出マット408を備える。
【0048】
検出装置406は、駆動サブシステム410をさらに備える。駆動サブシステム410は、駆動ユニット411と、駆動コントローラ412とを含む。図示していないが、検出システム400は、2つ以上の駆動サブシステム410を備えていてもよい。さらに、駆動サブシステム410は、複数の駆動ユニット411、又は複数の駆動コントローラ412、あるいはその両方を含んでいてもよい。駆動サブシステム410は、検出マット408に動作可能に結合され、検出マット408における2つ以上の検出コイル群を励磁するように構成されている。検出装置406は、検出マット408に動作可能に結合され、かつ検出マットから差動電流信号を受信するように構成された、比較サブシステム414をさらに備える。さらに、比較サブシステム414は、差動電流信号に基づいて、制御信号を供給するように構成されている。
【0049】
検出システム400のWPTシステム404は、WPTシステム404の送信機ユニット420に交流(AC)電圧信号の形式で電力を供給するように構成された、一次電源418を含む。送信機ユニット420は、少なくとも1つの送信機コイル(
図4には図示せず)を含む。送信機ユニット420は、一次電源418からAC電圧信号を受信し、かつ受信したAC電圧信号に応答して、一次磁界又は動作環境402を生成するように構成されている。
【0050】
検出マット408は、送信機ユニット420に動作可能に結合されている。具体的には、検出マット408は送信機ユニット420上に配置されている。いくつかの実施形態では、検出マット408は、送信機ユニット420の表面422上に直接配置されている。いくつかの他の実施形態では、検出マット408は、検出マット408がWPTシステム404の動作環境内に配置されるように、送信機ユニット408の上方に配置されている。検出マット408は、送信機ユニット420の送信機コイルに対して配置され、かつ位置合わせされていてもよい。検出マット408は、送信機コイルが検出マット408に対して幾何学的に対称に配置されるように配置されていてもよい。さらに、検出マット408はスタンドアロン型マット408、プラグ・アンド・プレイ型マットであってもよく、また可撓性構造、共形構造、又は剛性構造のうちの1つ又は複数を有していてもよい。
【0051】
WPTシステム404は、送信機ユニット420によって生成される一次磁界402の少なくとも一部を受け取るように構成された少なくとも1つの受信機コイルを有する、受信機ユニット424をさらに含む。受信機ユニット424は、充電する必要のある装置の下側426に配置されていてもよい。図示の実施形態では、受信機ユニット424は、WPTシステム404を使用して充電される電気自動車(EV)416の下側426に配置されている。EV416は、バッテリ417などの外部電源を含んでいてもよい。WPTシステム404は制御ユニット426をさらに含み、この制御ユニット426は一次電源418の動作を制御し、また検出装置406に動作可能に結合されている。制御ユニット426は、検出装置406から制御信号を受信する。また、制御ユニット426は、この制御信号に基づいて、一次電源418から送信機ユニット420への電力供給を制御する。
【0052】
特定の実施形態では、検出装置406は、比較サブシステム414に動作可能に結合され、かつ比較サブシステム414から制御信号を受信するように構成された通信ユニット428を備える。さらに、この通信ユニット428は、WPTシステム404の制御ユニット426と通信するように構成されている。特定の実施形態では、この通信ユニット428は、たとえば携帯電話ネットワークを使用することによって、EV416のユーザ又はそれぞれのEV充電スタンドのオペレータに制御信号を送信して、異物の存在及び/又は不在を伝達することができる。
【0053】
比較サブシステム414が検出マット408の検出コイルから受信した差動電流信号は、検出電圧信号と呼ばれる電圧信号へと変換される。いくつかの実施形態では、この検出電圧信号は、閾値又は閾値電圧信号と比較される。閾値又は閾値は、たとえば、検出装置406のパラメータ及び設計に基づいて、ユーザによって定義されてもよい。検出電圧信号の値が閾値電圧信号の値よりも大きい場合は、検出コイル群の対における2つの群によって引き出される電流が異なっていることを示し、これは、WPTシステム404の動作環境に異物が存在することを示す。あるいは、電圧信号の値が閾値電圧信号の値以下である場合は、検出コイル群の対における2つの群によって引き出される電流が適切に類似していることを示し、これは、WPTシステム404の動作環境に異物が存在しないか、又は本WPTの動作に悪影響を及ぼさないであろう非常に小さな異物(コイルなど)が存在することを示す。
【0054】
さらに、検出電圧信号の値が閾値電圧信号の値よりも大きい場合の実施例では、制御信号は、検出装置406によってWPTシステム404へと伝達されて、送信機ユニット420への電力供給を停止することができる。いくつかの実施形態では、通信ユニット428は制御ユニット426と通信し、この制御ユニット426は、次いで一次電源418から送信機ユニット420への電力供給を停止する。別の実施形態では、送信機ユニット420がコイルのアレイで構成されている場合、検出装置406によって制御ユニット426へと制御信号が伝達されると、制御ユニット426は、送信機ユニット420におけるコイルのアレイのサブセットのみを励磁し、その結果として、異物が検出される領域を回避する。
【0055】
図5は、検出マットの検出コイル群504及び506の対502に動作可能に結合された、例示的な比較サブシステム500を示す。なお、
図5の図示の例は、差動電流を測定する非限定的な例であり、差動を測定する他の方法もまた、本明細書において使用されてもよく、ここで他の方法は、差動増幅器などであるが、これに限定されない電子回路を使用して、個々の電流を感知して、これらの個々の電流間の差を検出することを含んでいてもよい。当該対502からの差動電流信号は、一方の群への継続電流信号と、当該群の対における他方の群からの帰還電流信号とを使用することによって求めることができる。図示の実施形態では、群504からの帰還電流信号I
1508及び群506からの継続電流信号I
2510を使用して、群504及び506の対502の差動電流信号を導出している。
【0056】
2つの電流信号508及び510が磁気コア512を通過するとき、これらの電流信号508及び510の差がコア内に磁束鎖交を発生させ、これによって磁気コア512に沿って巻回されている電気巻線514において、参照番号516によって全体を示している、対応する検出電圧信号を誘起する。この検出電圧は、磁気的に飽和していないコア条件下で、電流信号508と510との差に比例し、また当該群の対502における2つの群504及び506間の差動電流の測定値を表している。
【0057】
比較サブシステム500は、検出電圧信号を受信して整流する整流器518をさらに含む。任意選択のフィルタ520は、電圧信号をコンパレータ522に送信する前に、これをフィルタリングする。一例では、フィルタ520は、測定値から高周波数成分を除外するように構成されている。このコンパレータ522は、フィルタリングされた電圧信号を閾値電圧信号と比較し、それに応じて、
図4のWPTシステム404などのWPTシステムに制御信号が伝達される。
【0058】
図6は、あるシステムの動作環境における異物の存在を検出するための、例示的な方法のフローチャート600である。一例では、本システムはWPTシステムであってもよい。ブロック602で、当該検出装置の検出マットを本WPTシステムの送信機ユニット上に配置することにより、ある検出装置が利用される。この検出マットは送信機ユニット上に直接配置されてもよいし、あるいは送信機ユニットと物理的に接触しないように、送信機ユニットの上方に配置されてもよい。この検出マットは、複数の検出コイル、及び検出コイル群の少なくとも一対を含み、これら検出コイル群の少なくとも一対は、検出コイルの第1の群及び検出コイルの第2の群を含み、検出コイルの第1の群は第1のインピーダンス値を含み、検出コイルの第2の群は第2のインピーダンス値を含む。
【0059】
ブロック604で、検出コイル群の少なくとも一対が励磁される。いくつかの実施形態では、一対におけるこれらの群は、一次磁界に対して対称に配置されていてもよい。いくつかの他の実施形態では、当該対におけるこれらの群は、同じ幾何学的位置に配置されている。特定の実施形態では、当該対におけるこれらの群は2つの異なる検出領域に配置されてもよく、これらの検出領域は、検出領域の対における2つの検出領域が送信機ユニットの磁界に対して対称に配置されるように選択されてもよい。
【0060】
特定の実施形態では、検出コイル群の2つ以上の対が励磁されてもよい。一例では、異物の存在を検出するために、検出コイル群のさまざまな対が同時に励磁されてもよい。一実施形態では、これら検出コイル群のさまざまな対は、異物の存在を検出するために検出マットの表面全体が励磁されるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、さまざまな対がさまざまなインスタンスで時間内に励磁されてもよい。別の実施形態では、2つ以上の対が同時に励磁されてもよい。一実施形態では、これらさまざまな群の対は、時系列順に励磁されてもよい。
【0061】
また、これらの群の対は、受信機ユニットに対する本WPTシステムの無線電力伝送動作を開始する前に、また本WPTシステムの無線電力伝送実行中において励磁されてもよい。これらの群の対は断続的に、又は定期的な間隔で励磁されてもよい。また、検出領域のさまざまな対に対応している検出コイルは、さまざまインスタンスで時間内に励磁される。さらに、異物が存在しない場合に、大きさと位相とが類似している同一の電流によって、これら検出コイルの対における検出コイルが駆動されるように、これらインピーダンス値の異なる検出コイルの対における検出コイルに対して、異なる電圧信号が供給されている。
【0062】
ブロック606で、励磁された検出コイルの差動電流信号が求められる。一実施形態では、この差動電流信号は、検出コイル群の対における一方の群の継続電流信号と、当該検出コイル群の対における他方の群の帰還電流信号とを使用して求められる。2つ以上の対が同時に励磁される実施形態では、異物の存在を検出するために、対応する個々の差動電流信号が求められてもよい。この差動電流信号に基づいて、本WPTシステムの動作環境における異物の有無が判定される。
【0063】
次いで、ブロック608で、差動電流信号に基づいて、制御信号が生成される。ブロック610で、生成された制御信号が送信される。一例では、この制御信号は、本WPTシステムの制御ユニットへと送信される。いくつかの実施形態では、本WPTシステムの送信機ユニットへの電力供給は、本WPTシステムの制御ユニットが受信した制御信号に基づいて継続、調整、又は停止される。
【0064】
図7は、制御信号に基づいて送信機ユニットへの電力供給を制御する方法の方法フローチャート700である。ブロック702で、たとえば比較サブシステムの電気巻線及び磁気コアを使用して、差動電流信号に比例した検出電圧信号が生成される。ブロック704で、検出電圧信号が閾値と比較される。いくつかの実施形態では、この閾値は閾値又は閾値電圧信号であってもよい。この閾値電圧信号は、本WPTシステムの仕様に基づく所定の電圧信号であってもよい。
【0065】
判定ブロック706で、検出電圧信号が閾値電圧信号よりも大きいことが判明した場合、本WPTシステムに対して、送信機ユニットへの電力供給を開始せず、これを調整、又は停止する旨の制御信号が伝達される(ブロック708)。あるいは、判定ブロック706で、検出電圧信号が閾値電圧信号よりも小さかった場合、本WPTシステムへの通信が行われないか、又は送信機ユニットへの電力供給を継続又は開始する旨を示す制御信号が、本WPTシステムに対して伝達される(ブロック710)。
【0066】
この検出は、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行されてもよい。ほぼリアルタイムの検出は、検出を開始した時点から数マイクロ秒から数ミリ秒の間に制御信号が生成され、かつ伝達されるように実行されてもよい。特定の実施形態では、検出マットは、たとえば1秒に1回など、定期的な間隔で任意の異物についてスキャンされてもよい。異物を検出すると、送信機ユニットに対して通信信号が送信される。
【0067】
図8は、本明細書の態様による、検出マット800の断面図である。いくつかの実施形態では、検出マット800は、
図4の送信機ユニット420などの送信機ユニットに取り外し可能に結合される、スタンドアロン構造であってもよい。一例では、検出マット800は、プラグ・アンド・プレイ構造であってもよい。検出マット800は、1つ又は複数のプリント回路基板(PCB)804を有する基板802を含む。基板802は、電気絶縁材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、基板802自体がプリント回路基板(PCB)であってもよい。
【0068】
さらに、検出コイル808の群806は、基板802上に配置されてもよい。一実施形態では、検出コイル808の群806は、それぞれのPCB804上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、検出コイル808は基板802上に配置されてもよいし、あるいはユーザの安全性及び美観を確保するために、基板802に埋め込まれていてもよい。検出コイル808はまた、可撓性又は通常のプリント回路基板上に印刷されていてもよい。特定の実施形態では、検出コイル808は、基板808又はPCB804上に印刷されてもよいし、成形されてもよいし、織り込まれてもよいし、あるいは付加製造されてもよい。なお、検出コイル808はそれぞれ小型であるため、細いゲージワイヤ内で巻回されていてもよい。
【0069】
被覆層810が、検出コイル808上に配置されてもよい。この被覆層810は、第1の面812及び第2の面814を有する。特定の実施形態では、検出コイル808は、被覆層810の第2の面814に直接配置されていてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、検出コイル808はPCB804上に配置されていなくてもよい。さらに、適切な電子回路816が基板802に設けられて、検出マット800と、本検出装置の駆動サブシステム及び比較サブシステムとを動作可能に結合できるようにしてもよい。
【0070】
基板802及び被覆層810は、可撓性材料、硬質材料、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。被覆層810は、熱伝導性及び電気絶縁性(thermally conductive and electrically insulating:TCEI)材料を含む。一実施形態では、この熱伝導性及び電気絶縁性(TCEI)材料は、耐摩耗性のフィラーを含むエラストマー又は熱可塑性プラスチックを含んでいてもよい。一実施形態では、これらのエラストマーはシリコーンゴムであってもよい。これらのフィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、酸化グラフェン、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素などのTCEIフィラーであってもよい。同様に、これらの熱可塑性プラスチックは、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(poly methyl‐methacrylate:PMMA)、及びポリエステルであってもよい。また、特定の実施形態では、基板802及び被覆層810は、検出コイル808と共に折り畳み可能であってもよい。一実施形態では、検出マット800は形状適合構造であってもよい。そのために、検出マット800が送信機ユニット上に配置されるとき、この検出マット800は、送信機ユニットの表面の勾配及び曲線に概ね適合するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、被覆層810は、基板802、検出コイル808の周辺に、また恐らくは電子回路816の周辺にエンクロージャを形成してもよい。
【0071】
一実施形態では、検出マット800は、標準のSAE規格の送信機システムと一体化されていてもよい。特定の実施形態では、検出マット800の寸法は、約0.5m~約2.2mの範囲内であってもよい。検出マット800は、送信機コイルの表面積を覆うのに適切な大きさであってもよい。いくつかの例では、検出マット800の長さは、約0.5m~約2.2mの範囲内であってもよく、また幅は、約0.5m~約2.2mの範囲内であってもよい。また、検出マット800の厚さは、約1mm~約20mmの範囲内であってもよい。一実施形態では、検出マット800は一体構造であってもよい。別の実施形態では、検出マット800は、独立した個々の部品を一体化することによって形成されていてもよい。
【0072】
有利なことに、本技術による装置、システム、及び方法は構造が単純であるため、複雑な組み立てを何ら必要としない。また、本技術は非常に感度が高く、無線電力伝送が開始された直後に異物の存在を検出することができる。これは、電力の浪費を最小限に抑えるのに役立つ。本明細書の実施形態は、本WPTシステムの動作環境内に位置する異物を検出するための感度が高く、簡便で、なおかつ正確なシステムを提供する。さらに、本明細書の検出装置は、既存のWPTシステムに加える必要のある変更又は調整を最小限にするか、あるいは全くこれらを必要とせずに、既存のWPTシステムに配備することができる。有利なことに、本明細書の装置、システム、及び方法により、電気自動車(EV)の無線電力伝送中に安全な作業環境が実現するが、これは、本WPTシステムの動作環境において異物の検出時にEVの無線電力伝送を停止するか、又は異物の存在の検出時に警報を発することによって実現される。
【0073】
本発明の特定の特徴のみを本明細書に例示し、かつ記載しているが、当業者であれば多くの修正及び変更に想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の範囲内にある全てのそのような修正及び変更を網羅することを意図するものであることを理解されたい。