(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】表示装置、表示システム
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20231114BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20231114BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
G06F3/0346 421
G09F9/00 366Z
G09F9/30 338
(21)【出願番号】P 2020566349
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 IB2020050067
(87)【国際公開番号】W WO2020148601
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019006581
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉住 健輔
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-019073(JP,A)
【文献】特表2010-530026(JP,A)
【文献】特表2002-502129(JP,A)
【文献】特開2000-207118(JP,A)
【文献】特開2010-015398(JP,A)
【文献】特表2016-530590(JP,A)
【文献】特表2007-535728(JP,A)
【文献】特開2012-044143(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208168(WO,A1)
【文献】特開2003-173235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/01
3/03
3/041-3/04895
G09F9/30-9/46
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、受光部と、を有し、
前記表示部は、可視光を発する複数の表示素子と、可視光を受光する複数の第1の受光素子と、を有し、
前記複数の表示素子、及び前記複数の第1の受光素子は、それぞれマトリクス状に配置され、
前記受光部は、赤外光を受光する第2の受光素子を有し、
前記表示素子は、第1の画素電極、共通層、発光層、及び共通電極を有し、
前記第1の受光素子は、第2の画素電極、前記共通層、活性層、及び前記共通電極を有し、
前記発光層と、前記活性層とは、互いに異なる有機化合物を含み、
前記第1の画素電極と、前記第2の画素電極とは、同一面上に設けられ、
前記共通電極は、前記発光層を介して前記第1の画素電極と重なる部分と、前記活性層を介して前記第2の画素電極と重なる部分と、を有し、
前記共通層は、前記第1の画素電極と前記共通電極の間に配置される部分と、前記第2の画素電極と前記共通電極の間に配置され部分と、を有し、
前記共通層は、正孔を輸送する機能または電子を輸送する機能を有し、
前記第1の画素電極と前記第2の画素電極の間には、隔壁が配置される、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置と、
発光装置と、を備え、
前記発光装置は、第1の入力手段、第2の入力手段、第1の発光素子、第2の発光素子、及び発振装置を有し、
前記第1の発光素子は、可視光を呈するレーザ光源を含み、且つ、前記第1の入力手段への入力に応じて、発光状態が制御され、
前記第2の発光素子は、赤外光を呈する光源を含み、
前記発振装置は、前記第2の入力手段への入力に応じて、前記第2の発光素子の発光状態を制御する機能を有し、
前記第1の受光素子は、前記第1の発光素子が発する可視光を受光し、第1の電気信号に変換する機能を有し、
前記第2の受光素子は、前記第2の発光素子が発する赤外光を受光し、第2の電気信号に変換する機能を有する、
表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、表示システムに関する。本発明の一態様は、表示装置に関する。本発明の一態様は、入力装置に関する。本発明の一態様は、発光装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法、を一例として挙げることができる。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。
【背景技術】
【0003】
近年、表示装置の大型化が進められている。例えば、大型の表示装置の用途としては、家庭用のテレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、PID(Public Information Display)等が挙げられる。
【0004】
表示装置としては、例えば、発光素子を有する発光装置が開発されている。エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence、以下ELと記す)現象を利用した発光素子(EL素子とも記す)は、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流低電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有し、表示装置に応用されている。例えば、特許文献1に、有機EL素子が適用された、可撓性を有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示装置の大型化によって、多人数で同じ画面を見ることが可能となる。プレゼンテーションなどの用途や、娯楽施設での多人数参加型のゲーム用途などでは、視聴するだけでなく、操作を伴う用途が求められている。
【0007】
例えば会議などにおけるプレゼンテーション向けに多く用いられるレーザポインタでは、ユーザが注目する部分を指し示すことはできても、画面を操作することができなかった。そのため説明を行うユーザは、レーザポインタで指し示して説明する動作と、マウスやコントローラ等で画面を操作する動作を同時に行う必要があり、円滑なプレゼンテーションの妨げになっていた。また、説明を行うユーザ以外のユーザが、画面を操作することができなかった。
【0008】
本発明の一態様は、利便性の高い表示システムを提供することを課題の一とする。または、レーザポインタで簡便に画面の操作が可能な表示システムを提供することを課題の一とする。または、多人数で画面の操作が可能な表示システムを提供することを課題の一とする。または、上記表示システムを実現可能な表示装置及びレーザポインタ装置(発光装置)を提供することを課題の一とする。または、レーザポインタで指し示す部分の位置情報を取得可能な表示装置を提供することを課題の一とする。または、従来のレーザポインタに代わる、画面の操作が可能なデバイスを提供することを課題の一とする。
【0009】
または、本発明の一態様は、製造コストが抑制された表示装置を提供することを課題の一とする。または、品質の高い表示装置、発光装置、または表示システムを提供することを課題の一とする。または、信頼性の高い表示装置、発光装置、または表示システムを提供することを課題の一とする。または、新規な表示装置、発光装置、または表示システムを提供することを課題の一とする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、表示装置と、発光装置とを有する表示システムである。発光装置は、可視光を発する手段と、不可視光を発する手段と、を有する。表示装置は、画像を表示する手段と、可視光が照射される部分の位置情報を取得する手段と、を有する表示部と、不可視光を受光する手段と、を有する。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、表示装置と、発光装置とを有する表示システムである。発光装置は、可視光を発する手段と、不可視光を発する手段と、を有する。表示装置は、画像を表示する手段と、可視光が照射される部分の位置情報を取得する手段と、を有する表示部と、不可視光を受光する手段と、を有する。表示システムは、不可視光を受光したとき、位置情報に基づいて処理を実行する機能を有する。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、表示装置と、発光装置と、を備える表示システムである。表示装置は、表示部と、受光部と、を有する。表示部は、可視光を発する複数の表示素子と、複数の第1の受光素子と、を有する。複数の表示素子、及び複数の第1の受光素子は、それぞれマトリクス状に配置される。受光部は、第2の受光素子を有する。発光装置は、第1の入力手段、第2の入力手段、第1の発光素子、第2の発光素子、及び発振装置を有する。第1の発光素子は、可視光を呈するレーザ光源を含み、且つ、第1の入力手段への入力に応じて、発光状態が制御される。第2の発光素子は、赤外光を呈する光源を含み、発振装置は、第2の入力手段への入力に応じて、第2の発光素子の発光状態を制御する機能を有する。第1の受光素子は、第1の発光素子が発する可視光を受光し、第1の電気信号に変換する機能を有する。第2の受光素子は、第2の発光素子が発する赤外光を受光し、第2の電気信号に変換する機能を有する。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、表示部と、受光部と、を有する表示装置である。表示部は、可視光を発する複数の表示素子と、可視光を受光する複数の第1の受光素子と、を有する。複数の表示素子、及び複数の第1の受光素子は、それぞれマトリクス状に配置される。また、受光部は、赤外光を受光する第2の受光素子を有する。
【0015】
また、上記において、表示素子は、第1の画素電極、発光層、及び共通電極を有することが好ましい。また、第1の受光素子は、第2の画素電極、活性層、及び共通電極を有することが好ましい。また、発光層と、活性層とは、互いに異なる有機化合物を含むことが好ましい。また、第1の画素電極と、第2の画素電極とは、同一面上に設けられることが好ましい。また、共通電極は、発光層を介して第1の画素電極と重なる部分と、活性層を介して第2の画素電極と重なる部分と、を有することが好ましい。
【0016】
また、上記において、表示素子及び第1の受光素子は、共通層を有することが好ましい。このとき、共通層は、第1の画素電極と共通電極の間に位置する部分と、第2の画素電極と共通電極の間に位置する部分と、を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、第1の入力手段、第2の入力手段、第1の発光素子、第2の発光素子、及び発振装置を有する発光装置である。第1の発光素子は、可視光を呈するレーザ光源を含み、且つ、第1の入力手段への入力に応じて、発光状態が制御される。第2の発光素子は、赤外光を呈する光源を含む。発振装置は、第2の入力手段への入力に応じて、第2の発光素子の発光状態を制御する機能を有する。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記いずれかの表示装置と、上記発光装置とを備える表示システムである。このとき、第1の受光素子は、第1の発光素子が発する可視光を受光し、第1の電気信号に変換する機能を有し、第2の受光素子は、第2の発光素子が発する赤外光を受光し、第2の電気信号に変換する機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、利便性の高い表示システムを提供できる。または、レーザポインタで簡便に画面の操作が可能な表示システムを提供できる。または、多人数で画面の操作が可能な表示システムを提供できる。また、上記表示システムを実現可能な表示装置及びレーザポインタ装置(発光装置)を提供できる。または、レーザポインタで指し示す部分の位置情報を取得可能な表示装置を提供できる。または、従来のレーザポインタに代わる、画面の操作が可能なデバイスを提供できる。
【0020】
または、本発明の一態様によれば、製造コストが抑制された表示装置を提供できる。または、品質の高い表示装置、発光装置、または表示システムを提供できる。または、信頼性の高い表示装置、発光装置、または表示システムを提供できる。または、新規な表示装置、発光装置、または表示システムを提供できる。
【0021】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1Aは、表示システムの構成例を示す図である。
図1Bは、表示装置の構成例を示す図である。
図1Cは、発光装置の構成例を示す図である。
図2A及び
図2Bは、表示装置の構成例を示す図である。
図3A乃至
図3Cは、表示システムの操作方法例を説明する図である。
図4A及び
図4Bは、表示システムの操作方法例を説明する図である。
図5A乃至
図5Cは、表示システムの操作方法例を説明する図である。
図6は、表示システムの操作方法例を説明する図である。
図7は、表示システムの操作方法例を説明する図である。
図8A乃至
図8Cは、表示パネルの構成例を示す図である。
図9A及び
図9Bは、表示パネルの構成例を示す図である。
図10A乃至
図10Cは、表示パネルの構成例を示す図である。
図11は、表示パネルの構成例を示す図である。
図12は、表示パネルの構成例を示す図である。
図13A及び
図13Bは、表示パネルの構成例を示す図である。
図14A及び
図14Bは、表示パネルの構成例を示す図である。
図15は、表示パネルの構成例を示す図である。
図16A及び
図16Bは、画素回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0025】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成要素の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0026】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0027】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0028】
なお、以下では「上」、「下」などの向きを示す表現は、基本的には図面の向きと合わせて用いるものとする。しかしながら、説明を容易にするためなどの目的で、明細書中の「上」または「下」が意味する向きが、図面とは一致しない場合がある。一例としては、積層体等の積層順(または形成順)などを説明する場合に、図面において当該積層体が設けられる側の面(被形成面、支持面、接着面、平坦面など)が当該積層体よりも上側に位置していても、その向きを下、これとは反対の向きを上、などと表現する場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」や「絶縁層」という用語は、「導電膜」や「絶縁膜」という用語に相互に交換することが可能な場合がある。
【0030】
本明細書等において、表示装置の一態様である表示パネルは表示面に画像等を表示(出力)する機能を有するものである。したがって表示パネルは出力装置の一態様である。
【0031】
また、本明細書等では、表示パネルの基板に、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)などのコネクターが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On Glass)方式等によりICが実装されたものを、表示パネルモジュール、表示モジュール、または単に表示パネルなどと呼ぶ場合がある。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示システムについて説明する。
【0033】
[概要]
本発明の一態様の表示システムは、画像を表示する表示部(画面ともいう)を備える表示装置と、レーザ光を発する発光装置とを備える。発光装置は、レーザポインタとして用いることができる。
【0034】
発光装置は、可視レーザ光を発する光源(第1の発光素子、または第1の発光デバイスともいう)を備える。さらに発光装置は、非可視光(不可視光)を発する光源(第2の発光素子、または第2の発光デバイスともいう)を備える。非可視光は可視光を含まない光であり、紫外光、赤外光、または赤外光よりも波長の長い電磁波(電波)を含んでいてもよい。非可視光としては可視光よりも波長の長い光を用いることが好ましく、特に赤外光を用いることが好ましい。
【0035】
発光装置が発する可視レーザ光は、指向性が高く照射範囲が狭いため、表示部に照射することにより、表示部の所定の領域を指し示すことが可能である。一方、発光装置が発する非可視光は、上記可視レーザ光よりも指向性の低い光、すなわち照射範囲の広い光を用いることができる。
【0036】
可視レーザ光は、発光装置が備える第1のスイッチを操作することにより照射可能な構成とすることができる。また非可視光は、発光装置が備える第2のスイッチを操作することにより照射可能な構成とすることができる。このように、可視レーザ光と非可視光をそれぞれ個別に操作可能な構成とすることで、第2のスイッチを操作しない場合には、従来のレーザポインタとして用いることができる。なお、第1のスイッチ及び第2のスイッチとしては、物理スイッチだけでなく、タッチセンサ(タッチパッドを含む)、光学センサ、音響センサ、加速度センサ、温度センサなどの種々のセンサにより構成されるセンシングデバイスを適用することもできる。
【0037】
表示装置の表示部には、画像を表示するための画素が、マトリクス状に複数配置されている。画素は、少なくとも一の表示素子(表示デバイスともいう)を有する。さらに表示部には、上記可視レーザ光を受光し、電気信号(第1の電気信号ともいう)に変換する第1の受光素子(第1の受光デバイスともいう)がマトリクス状に複数配置されている。第1の受光素子としては、例えばフォトダイオードを用いることができる。表示部に、第1の受光素子がマトリクス状に配置されることで、表示装置は、可視レーザ光が照射される位置を位置情報として取得することができる。
【0038】
また、表示装置は、表示部とは異なる部分に、受光部を備える。受光部は、上記非可視光を受光し、電気信号(第2の電気信号ともいう)に変換する第2の受光素子(第2の受光デバイスともいう)を備える。
【0039】
表示装置は、受光部で非可視光が受光されたときに、可視レーザ光が照射される部分の位置情報に基づいて、様々な処理を実行することができる。例えば、画面に表示されるオブジェクトの選択、実行、移動などの処理の他、文字入力機能、描画機能などのための処理を実行することができる。また、可視レーザ光の照射位置の軌跡に応じて、ジェスチャー入力の機能のための処理を実行することもできる。なおここで挙げた、表示システムが実行しうる処理は一例であり、表示システムに組み込まれるアプリケーションソフトウェアに応じて、様々な処理が実行されうる。
【0040】
このように、本発明の一態様の表示システムは、レーザポインタとしての機能を有する発光装置を、ポインティングデバイスなどの入力デバイスとしても機能させることができる。これにより、従来必要であったマウスやタッチパッドなどの入力デバイスが不要となるため、利便性を高めることができる。
【0041】
また、発光装置が発する非可視光に情報を含ませることにより、さらに利便性を高めることができる。例えば、非可視光に発光装置の識別情報を含ませることによって、複数のユーザが同時に操作することも可能となる。また、非可視光を操作する第2のスイッチの構成や、操作方法に応じて、非可視光に情報を含ませることもできる。例えば非可視光の発光時間やタイミングを情報として用い、マウス操作におけるクリック、ダブルクリック、長押し操作などと同様の機能を実現することもできる。また、第2のスイッチを複数設けることや、第2のスイッチとしてタッチパッドや、ダイヤル等の入力手段を適用することで、アナログ入力も可能となる。非可視光に情報を含ませる場合には、例えばパルス位置変調(PPM:Pulse Position Modulation)方式などの変調方式により、非可視光にデータを重畳させることが好ましい。
【0042】
ここで、表示装置の表示部に設けられる表示素子と第1の受光素子とは、同一基板上に作製されることが好ましい。このとき、表示素子として、発光層に有機化合物を含む有機電界発光素子(有機EL素子)を用い、第1の受光素子として、活性層に有機化合物を含む有機フォトダイオードを用いることが好ましい。さらに、表示素子と第1の受光素子の作製工程の一部を兼ねることで、製造コストを低減でき、作製歩留りを高めることができる。
【0043】
以下では、本発明の一態様の表示システム、表示装置、及び発光装置のより具体的な例について、図面を参照して説明する。
【0044】
[表示システムの構成例]
図1Aに、表示システム10の概略図を示す。表示システム10は、表示装置11と、発光装置12とを有する。
【0045】
発光装置12は、筐体に設けられたスイッチ51と、スイッチ52と、を有する。また発光装置12は、筐体の先端から、可視光VLと、赤外光IRを射出することができる。スイッチ51を操作することで可視光VLが、スイッチ52を操作することで赤外光IRが、それぞれ独立に射出される。ここでは、スイッチ51及びスイッチ52として、それぞれ1つの物理スイッチを用いた場合の例を示している。
【0046】
図1Aに示すように可視光VLは指向性の高い光であり、赤外光IRは、可視光VLと比較して指向性の低い光である。
図1Aでは、可視光VLの照射領域59を実線で、赤外光IRの照射領域58を破線で、それぞれ示している。
【0047】
可視光VLとしては、レーザ光を用いることが好ましい。例えば赤色のレーザ光(例えばピーク波長が620nm以上700nm以下である光)、緑色のレーザ光(例えばピーク波長が500nm以上550nm以下である光、代表的には532nm近傍である光)を用いることが好ましい。またレーザ光はこれに限られず、ピーク波長が可視光領域(例えば350nm乃至750nm)に位置する光であればよく、例えば青色、黄色、橙色、藍色、または紫色など、様々な色調のレーザ光を用いることもできる。
【0048】
赤外光IRとしては、ピーク波長が近赤外領域(750nm以上2500nm以下)に位置する光を用いることが好ましい。また、赤外光IRは、発光強度の指向特性(例えば視野角、または半値全角)が、可視光VLよりも広いことが好ましい。例えば半値全角が30度以上、好ましくは40度以上、より好ましくは50度以上であって、180度以下である光を用いることが好ましい。これにより、後述する表示装置11の表示部21内に可視光VLを照射した状態で、表示部21の外に設けられる受光部30に、赤外光IRを照射することができる。
【0049】
表示装置11は、表示部21と、受光部30を有する。
【0050】
表示部21は、表示装置11の画像を表示する領域であり、画面ともいうことができる。また、表示部21は、発光装置12が発する可視光VLを受光し、当該可視光VLが照射される照射領域59の位置情報を取得する機能を有する。ここで、表示部21上における、照射領域59の直径及び面積は、表示部21の短辺方向の長さ、及び面積よりも十分に小さい(少なくとも1/10未満)ことが好ましい。
【0051】
表示部21には、複数の表示素子23と、複数の受光素子24が、それぞれマトリクス状に配置されている。
図1A中には、表示部21の一部の拡大図を示している。ここでは1つの画素22が、赤色を呈する表示素子23R、青色を呈する表示素子23B、緑色を呈する表示素子23G(以下、まとめて表示素子23と呼ぶことがある)、及び可視光を受光し、電気信号に変換する受光素子24を有する例を示している。
【0052】
なお、ここでは表示素子23の配列間隔と受光素子24の配列間隔を同じとしているが、受光素子24の配列間隔を、表示素子23の配列間隔よりも大きくしてもよい。受光素子24の配列間隔は、照射領域59の直径よりも小さくすればよい。例えば受光素子24の配列間隔を10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下とすることができる。配列間隔が小さいほど、照射領域59の位置検出の精度を高めることができる。表示素子23の配列間隔と、受光素子24の配列間隔を異ならせる場合には、受光素子24の配列間隔を表示素子23の配列間隔の整数倍とすると、設計が容易となるため好ましい。
【0053】
また、発光装置12が発する可視光VLとしては、レーザ光を用いることができるため、照射領域59に照射される可視光VLの照度は外光に比べて極めて高い。そのため、受光素子24の面積、より具体的には有効受光面積を、表示素子23の有効発光面積よりも十分に小さくすることができる。そのため、受光素子24を設けることによる表示部21の開口率(有効表示面積比)の低下を極めて小さいものとすることができる。また、受光素子24の感度についても、高い感度が要求されないため、受光素子24の活性層に用いる材料の選択の幅を広げることができ、低コストで実現することができる。
【0054】
受光部30は、発光装置12が発する赤外光IRを受光し、電気信号に変換する機能を有する。受光部30には、赤外光IRを受光する受光素子が複数設けられていてもよいし、当該受光素子を1つ有する構成としてもよい。ここでは、受光部30が表示部21の外側に設けられる例を示しているが、表示部21の輪郭の内側に位置していてもよいし、表示部21に赤外光IRを透過する開口を設け、その開口と重なる位置に設ける構成としてもよい。また、表示部21が赤外光IRを透過する場合には、表示部21の裏面側に受光部30を設けてもよい。また、表示部21が有する受光素子24と同様に、受光部30を構成する受光素子を表示部21に形成してもよい。または、受光素子24に、可視光VLと赤外光IRの両方を受光可能な素子を適用し、表示部21が受光部30を兼ねる構成としてもよい。
【0055】
〔表示装置の構成例〕
図1Bは、表示装置11の一例を示すブロック図である。表示装置11は、表示パネル20、受光部30、制御部41、駆動部42、駆動部43等を有する。
【0056】
表示パネル20は、表示部21、駆動回路25、駆動回路26等を有する。表示部21は、マトリクス状に配置された複数の画素22を有する。ここでは、画素22が、表示素子23と、受光素子24を備える例を示している。
【0057】
駆動回路25は、表示素子23の駆動を制御する回路である。駆動回路25は、例えばソースドライバ及びゲートドライバ等の機能を有する回路を適用できる。駆動回路25は、駆動部42から供給される信号に応じて各画素22を駆動することで、表示部21に画像を表示させることができる。
【0058】
駆動回路26は、受光素子24の駆動を制御する機能と、受光素子24から出力される電気信号を読み出し、駆動部42に出力する機能を有する。例えば駆動回路26は、複数のセンスアンプまたはADコンバータ等を含む読み出し回路としての機能と、受光素子24を選択する選択回路としての機能と、を有する回路等を適用できる。
【0059】
受光部30は、少なくとも一の受光素子31を有する。受光部30は、受光素子31を駆動する機能と、受光素子31から出力される電気信号を駆動部43に出力する機能と、を有する。
【0060】
駆動部42は、制御部41から入力される信号に基づいて、表示パネル20に出力する信号を生成し、出力する機能と、表示パネル20から入力される信号を制御部41に出力する信号に変換し、出力する機能と、を有する。駆動部42には、例えばタイミングコントローラ、DAコンバータ、ADコンバータ、アンプ、バッファなどが含まれる。
【0061】
駆動部43は、制御部41から入力される信号に基づいて、受光部30に出力する信号を生成し、出力する機能と、受光部30から入力される信号を制御部41に出力する信号に変換し、出力する機能と、を有する。駆動部43には、例えばタイミングコントローラ、DAコンバータ、ADコンバータ、アンプ、バッファなどが含まれる。
【0062】
図1Bには、制御部41に入力される信号S1及び信号S2と、制御部41が出力する信号S3を、矢印で示している。信号S1には、表示部21で受光した可視光VLの照射領域59の位置情報のデータなどが含まれる。信号S2には、受光部30で受光した赤外光IRに関するデータなどが含まれる。制御部41は、信号S2と信号S3に基づいて、様々な処理を実行することができる。また、当該処理に基づいて表示部21に表示する画像のデータを含む信号S3を生成し、駆動部42に出力することができる。
【0063】
制御部41としては、例えばCPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを有する構成とすることができる。制御部41は、プロセッサにより種々のプログラムからの命令を解釈し実行することで、各種のデータ処理やプログラム制御を行う。プロセッサにより実行しうるプログラムは、プロセッサが有するメモリ領域に格納されていてもよいし、これとは異なるメモリモジュールに格納されていてもよい。
【0064】
【0065】
図2Aに示す構成は、表示装置11が、表示モジュール15と、制御装置16とに分かれている例を示している。例えば、制御装置16としてコンピュータを用いた場合の例である。このとき、表示モジュール15は、ケーブルや無線通信によりコンピュータと接続することのできるモニタ装置やテレビジョン装置などとして機能させることができる。
【0066】
表示モジュール15は、表示パネル20、受光部30、駆動部42a及び駆動部43aを有する。制御装置16は、制御部41、駆動部42b、及び駆動部43bを有する。
【0067】
駆動部42a及び駆動部42bは、それぞれ表示モジュール15と制御装置16との間で通信を行うためのインターフェースとしての機能を有する以外は、これら一対で、上記駆動部42と同様の機能を有する。例えば、駆動部42a及び駆動部42bは、それぞれ通信規格に応じて電気信号の符号化、複合化などを実行すること、及びこれらの間で信号の伝送を行うことができる。同様に駆動部43a及び駆動部43bも、それぞれインターフェースとしての機能を有する。
【0068】
なお、ここでは説明を容易にするため、駆動部42aと駆動部43a、または駆動部42bと駆動部43bとを、それぞれ分けて明示しているが、それぞれ1つのコンポーネントで実現することもできる。
【0069】
図2Bに示す構成は、表示装置11が、表示モジュール15aと、受光モジュール15bと、制御装置16と、に分かれている例を示している。表示モジュール15a及び受光モジュール15bが有する各構成は、
図2Aで示した表示モジュール15が有する各構成と同様である。
【0070】
〔発光装置の構成例〕
図1Cは、発光装置12の一例を示すブロック図である。発光装置12は、スイッチ51、スイッチ52、発光素子53、発光素子54、駆動部55、信号生成部56、駆動部57等を有する。
【0071】
発光素子53は、可視レーザ光である可視光VLを発する光源として機能する。発光素子53としては、特に半導体レーザ素子を用いると、発光装置12を軽量なものにできるため好ましい。
【0072】
発光素子53に用いることのできる半導体レーザ素子としては、端面発光レーザ(EEL:Edge Emitting Laser)、面発光レーザ(SEL:Surface Emitting Laser)等が挙げられる。面発光レーザとしては、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、または、外部共振器型垂直面発光レーザ(VECSEL:Vertical External Cavity Surface Emitting Laser)などがある。
【0073】
また、発光素子53としては、日本工業規格(JIS C 6802)またはIEC規格(IEC 60825-1)により分類される、クラス1、クラス1M、クラス2、またはクラス2Mに適合する半導体レーザ素子を用いることが好ましい。例えばレーザの出力値が1mW未満、または0.2mW近傍の半導体レーザ素子を用いることが好ましい。
【0074】
駆動部55は、スイッチ51の操作に応じて、発光素子53の発光、非発光を制御する機能を有する。駆動部55の最も簡易な構成としては、スイッチ51として物理スイッチを用い、スイッチ51と、電源と、発光素子53とを直列に接続する構成とすることができる。駆動部55は、スイッチ51及び発光素子53の構成、または発光素子53の発光方法などに応じて、適切な回路等を用いることができる。
【0075】
発光素子54は、赤外光IRを発する光源として機能する。発光素子54としては、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を好適に用いることができる。
【0076】
発光ダイオードとしては、砲弾型、表面実装(SMD:Surface Mount Device)型、またはチップオンボード(COB:Chip On Board)型などが挙げられる。砲弾型LEDを用いることでコストを低減することができる。また表面実装型LEDまたはチップオンボード型LEDを用いることで、輝度や耐久性を向上させることができる。
【0077】
信号生成部56は、発光素子54が発する赤外光IRにデータを重畳させるための信号を生成する回路である。信号生成部56は、スイッチ52の操作に応じて、パルス位置変調方式等の変調方式に従って信号を生成し、駆動部57に出力することができる。
【0078】
駆動部57は、信号生成部56で生成した信号に基づいて、発光素子54の発光、非発光を制御する機能を有する。
【0079】
信号生成部56と、駆動部57とをまとめて、発振装置と呼ぶこともできる。発振装置は、スイッチ52への入力に応じて、発光素子54の発光状態を制御する機能を有する。
【0080】
ここで、信号生成部56が生成するデータは、機器の識別データを含むことが好ましい。これにより、複数のユーザが同時に表示システム10を操作することも可能となる。
【0081】
図1Cでは、発光装置12は、スイッチ51から発光素子53までの系統と、スイッチ52から発光素子54までの系統とが、それぞれ独立した構成を示している。このような構成とすることで、極めて簡単に発光装置12を構成できるため、製造コストを低減できる。なお、発光装置12の構成はこれに限られず、少なくとも発光素子53と、発光素子54と、スイッチ等の操作手段と、を有する構成とすればよい。
【0082】
[表示システムの処理の例]
本発明の一態様の表示システムは、ユーザが操作する発光装置から発せられる可視光の照射領域の位置情報と、赤外光に含まれる情報と、に応じて、様々な処理を実行できる。表示システムによる処理の多くは、表示部に表示される画像の変化を伴う。このとき、表示システムは、新たな画像を生成する処理を実行し、画面を更新する機能を有する。
【0083】
さらに、本発明の一態様の表示システムは、ユーザがレーザポインタとしても機能する発光装置によって、物理的に離れた場所からも、画面を遠隔操作することができる。以下では、表示システムの処理により、ユーザが実行可能な操作の例について、図面を参照して説明する。
【0084】
なお、以下で示す表示システム10により実現される処理方法、操作方法、動作方法、または表示方法は、例えばプログラムとして記述されうる。また以下で説明する処理方法、操作方法、動作方法、または表示方法が記述されたプログラムは、非一時的記憶媒体に格納され、表示システム10の制御部41が有する演算装置等により読み出され、実行することができる。すなわち、以下で説明する処理方法、操作方法、動作方法、または表示方法を、ハードウェアにより実行させるためのプログラム、または当該プログラムが格納された非一時的記憶媒体は、本発明の一態様である。
【0085】
〔操作方法例1〕
図3Aには、表示装置11と、発光装置12により画面を操作するユーザ60とを、模式的に示している。
【0086】
ユーザ60は、発光装置12のスイッチ51を操作することで可視光VLを照射することができる。また、発光装置12のスイッチ52を操作することで、赤外光IR(図示しない)により、表示システム10に様々な処理を実行させることができる。
【0087】
表示装置11は、表示部21と、表示部21と重ならない領域に受光部30が設けられている。また、表示部21には、オブジェクト61が表示されている。
【0088】
図3Aでは、ユーザ60が、発光装置12によって、表示部21に表示されたオブジェクト61を移動させる様子を示している。
【0089】
オブジェクト61の一部(
図3Aではオブジェクト61の上部)に照射領域59が位置するように可視光VLを照射し、照射領域59を動かすことにより、オブジェクト61を、照射領域59の軌跡に沿って移動させることができる。
【0090】
この操作は、マウスを用いた場合におけるドラッグ操作に相当する。例えばユーザ60は、スイッチ52を押し続けた状態で照射領域59を移動させることでオブジェクト61をドラッグさせ、スイッチ52を離すことで、オブジェクト61の位置を決定させることができる。
【0091】
なお、ドラッグ操作の機能は一例であり、従来のマウスを用いた場合の操作であるクリック、ダブルクリック、長押し操作などに準じた操作を、ユーザ60は発光装置12を用いて直感的に行うことができる。また、スイッチ52を2つ以上設けることで、2つ以上のボタンを備えるマウスと同様に、発光装置12の機能性を高めることができる。
【0092】
図3Bは、表示システム10に、描画機能を実行させた状態を示している。ユーザ60は、発光装置12を操作することにより、照射領域59の軌跡に沿った図形(オブジェクト62)などを、表示部21に描画することができる。
【0093】
またここでは示さないが、描画する線の太さ、種類、色などを切り替えるためのアイコン画像などを表示部21に表示してもよい。また、線だけでなく、矩形、多角形、円、楕円、半円などの様々な図形を描画する機能を有していてもよい。
【0094】
図3Cは、表示システム10に、文字入力機能を実行させた状態を示している。ユーザ60は、発光装置12を操作することにより、フリーハンドで文字(オブジェクト63)を描画することができる。表示システム10は、オブジェクト63の形状に最も類似した文字を認識し、文字情報として表示することができる。
【0095】
図3Cでは、ユーザ60が数字の「5」を描画し、文字情報として、数字の「5」が表示された状態を示している。
【0096】
〔操作方法例2〕
表示システム10は、照射領域59の軌跡を認識し、これを入力操作として用いる機能(ジェスチャー入力ともいう)を有していてもよい。
【0097】
図4Aには、ジェスチャー入力により、オブジェクト66aに含まれる情報を拡大表示する操作を行っている状態を示している。照射領域59の軌跡65が概略円形を描くように、ユーザ60が発光装置12を操作することで、オブジェクト66aは、軌跡65に囲まれた範囲を含む情報が拡大されたオブジェクト66bに変化する。
【0098】
図4Bには、上記とは反対に、ジェスチャー入力により、オブジェクト67aに含まれる情報を縮小表示する操作を行っている状態を示している。照射領域59の軌跡65が概略三角形を描くように、ユーザ60が発光装置12を操作することで、オブジェクト67aは、軌跡65に囲まれた範囲の情報を含み、広範囲に縮小表示されたオブジェクト67bに変化する。
【0099】
このように、発光装置12を用いてジェスチャー入力が可能な構成とすることで、ユーザ60は、より直感的に画面の操作を行うことができるため、よりユーザフレンドリな表示システム10を実現することができる。
【0100】
〔操作方法例3〕
表示システム10の表示部21に、発光装置12による操作モードを切り替えるためのメニューを表示させ、ユーザ60が当該メニューから機能を選択可能な構成としてもよい。
【0101】
図5Aでは、表示部21にオブジェクト61が表示された状態を示している。この状態で、照射領域59を表示部21の外周部に近づけることで、
図5Bまたは
図5Cに示すように、種々のアイコン(ここではアイコン69a乃至69d)を含むメニュー画像(オブジェクト68)が現れる。このように、必要のないときにメニュー画像を隠し、必要に応じてメニュー画像を表示させる機能を有することで、表示領域を有効に活用することができるため好ましい。
【0102】
図5Bでは、表示部21の横側からメニュー画像が現れる例を示し、
図5Cでは、表示部21の上側からメニュー画像が現れる例を示している。メニュー画像が現れる位置は固定されていてもよいが、表示部21の外周部のいずれの場所に照射領域59を近づけてもメニュー画像が現れるようにすると、より操作性を高めることができる。メニュー画像の出現位置は、ユーザにより設定できることが好ましい。または、メニュー画像の表示を、ジェスチャー入力により行ってもよい。
【0103】
例えば、
図5Cに示すアイコン69aを選択することで、発光装置12による操作を、オブジェクトの操作のモードに切り替えることができる。またアイコン69bを選択することで、描画モードに切り替えることができる。またアイコン69cを選択することで、背景画像の操作モードに切り替えることができる。またアイコン69dを選択することで、ジェスチャー入力モードに切り替えることができる。
【0104】
このように、表示システム10が様々なモードに切り替える機能を有することで、発光装置12自体に多くの機能を持たせる必要が無く、簡易な構成の発光装置12で操作を行うことができる。
そのため、発光装置12の製造コストを低減することができる。
【0105】
〔操作方法例4〕
本発明の一態様の表示システムは、複数のユーザが発光装置を用いて操作することもできる。
【0106】
図6は、表示システム10を用いて、会議を行っている様子を示している。表示装置11の表示部21には、会議に用いる資料が表示されている。
【0107】
会議に出席している人々のうち、ユーザ60aとユーザ60bは、それぞれ発光装置12aまたは発光装置12bを持っている。
【0108】
ユーザ60aは、描画モードでの操作を行っている。
図6には、発光装置12aが発する可視光VLaの照射領域59aと、照射領域59aの軌跡に沿って描画された手書き文字の画像(オブジェクト64)を示している。
【0109】
ユーザ60bは、発光装置12bをレーザポインタとして使用している。ユーザ60bは、可視光VLbの照射領域59bにより、表示部21の一部を指し示している。
【0110】
発光装置12a及び発光装置12bが発する赤外光IR(図示しない)には、それぞれ異なる識別情報が重畳される。これにより、ユーザ60aとユーザ60bは、それぞれ独立に画面の操作を行うことができる。
【0111】
発光装置12aが発する可視光VLaと、発光装置12bが発する可視光VLbとは、異なる波長の光であることが好ましい。これにより、照射領域59aと照射領域59bとが、どちらの発光装置によるものであるかを、当該波長によって識別することができるため、ユーザ60aとユーザ60bとが同時に操作することができる。
【0112】
また、発光装置12aと発光装置12bとが、それぞれが発する赤外光IRに、可視光VLaまたは可視光VLbが照射される向きの情報を重畳することでも、照射領域59aと照射領域59bとを識別することができる。例えば、発光装置12a及び発光装置12bが、自身の傾きや方位を検出するセンサ(例えば加速度センサなど)、または可視光VLaまたは可視光VLbの照射方向を検出するセンサ(例えばカメラなど)等を有する構成とし、そのセンサで取得した情報を赤外光IRに重畳させて送信する構成としてもよい。
【0113】
または、表示装置11が、発光装置12aと発光装置12bの向きや姿勢を検出する手段(例えばカメラ等)を有する構成とし、可視光VLa及び可視光VLbの射出方向を認識する機能を有していてもよい。
【0114】
図7には、表示システム10を用いて、複数のユーザがゲームを楽しんでいる様子を示している。表示部21には、ターゲットとして、移動する飛行体や、未知の生物を模した複数のオブジェクト61が表示されている。
【0115】
ユーザ60a及びユーザ60bは、照射領域59aまたは照射領域59bをオブジェクト61に合わせた状態で、赤外光IR(図示しない)を照射するためのスイッチ52を操作することで、オブジェクト61を破壊し、得点を得ることができる。また、表示部21の上部には、それぞれのユーザが取得した得点(Scoreと表記)と、残り時間(TIMEと表記)が表示されている。
【0116】
以上が表示システムの処理により、ユーザが実行可能な操作の例についての説明である。
【0117】
本発明の一態様によれば、表示部に照射される可視レーザ光の照射位置情報と、受光部で受光する非可視光に含まれる情報に基づいて処理を実行し、表示に反映することのできる表示システムを実現できる。また、本発明の一態様は、上記表示システムを実現可能な表示装置であり、また本発明の他の一態様は、上記表示システムを実現可能な発光装置である。表示システムを構成しうる表示装置と発光装置とは、それぞれ個別に製造及び販売することができる。
【0118】
本発明の一態様によれば、利便性の高い表示システム、レーザポインタにより簡便に画面の操作が可能な表示システム、または、多人数で画面の操作が可能な表示システム等を実現できる。
【0119】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0120】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で例示した表示システムに適用可能な表示パネルについて、図面を参照して説明する。
【0121】
本発明の一態様の表示パネルは、可視光を呈する表示素子と、赤外光を受光する受光素子(受光デバイス)とを有する。当該表示素子は、発光素子(発光デバイスともいう)であることが好ましい。また、受光素子は、光電変換素子であることが好ましい。
【0122】
ここで、表示素子として発光素子を用いる場合には、OLED(Organic Light Emitting Diode)やQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)などのEL素子を用いることが好ましい。EL素子が有する発光物質としては、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)、無機化合物(量子ドット材料など)などが挙げられる。また、発光素子として、マイクロLED(Light Emitting Diode)などのLEDをの可撓性を高めること
【0123】
受光素子としては、例えば、pn型またはpin型のフォトダイオードを用いることができる。受光素子は、受光素子に入射する光を検出し電荷を発生させる光電変換素子として機能する。光電変換素子は、入射する光量に応じて、発生する電荷量が決まる。特に、受光素子として、有機化合物を含む層を有する有機フォトダイオードを用いることが好ましい。有機フォトダイオードは、薄型化、軽量化、及び大面積化が容易であり、また、形状及びデザインの自由度が高いため、様々な表示装置に適用できる。
【0124】
発光素子は、例えば一対の電極間に発光層を備える積層構造とすることができる。また、受光素子は、一対の電極間に活性層を備える積層構造とすることができる。受光素子の活性層には、半導体材料を用いることができる。例えば、シリコンなどの無機半導体材料を用いることができる。
【0125】
特に、受光素子の活性層に、有機化合物を用いることが好ましい。このとき、発光素子と受光素子の一方の電極(画素電極ともいう)を、同一面上に設けることが好ましい。さらに、発光素子と受光素子の他方の電極を、連続した一の導電層により形成される電極(共通電極ともいう)とすることがより好ましい。さらに、発光素子と受光素子とが、共通層を有することがより好ましい。これにより、発光素子と受光素子とを作製する際の作製工程を簡略化でき、製造コストを低減すること、及び、製造歩留りを向上させることができる。
【0126】
以下では、より具体的な例について、図面を参照して説明する。
【0127】
[表示パネルの構成例1]
〔構成例1-1〕
図8Aに、表示パネル100Aの断面概略図を示す。
【0128】
表示パネル100Aは、受光素子110及び発光素子190を有する。受光素子110は、画素電極111、共通層112、活性層113、共通層114、及び共通電極115を有する。発光素子190は、画素電極191、共通層112、発光層193、共通層114、及び共通電極115を有する。
【0129】
画素電極111、画素電極191、共通層112、活性層113、発光層193、共通層114、及び共通電極115は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0130】
画素電極111及び画素電極191は、絶縁層214上に位置する。画素電極111と画素電極191は、同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0131】
共通層112は、画素電極111上及び画素電極191上に位置する。共通層112は、受光素子110と発光素子190に共通で用いられる層である。
【0132】
活性層113は、共通層112を介して、画素電極111と重なる。発光層193は、共通層112を介して、画素電極191と重なる。活性層113は、第1の有機化合物を有し、発光層193は、第1の有機化合物とは異なる第2の有機化合物を有する。
【0133】
共通層114は、共通層112上、活性層113上、及び発光層193上に位置する。共通層114は、受光素子110と発光素子190に共通で用いられる層である。
【0134】
共通電極115は、共通層112、活性層113、及び共通層114を介して、画素電極111と重なる部分を有する。また、共通電極115は、共通層112、発光層193、及び共通層114を介して、画素電極191と重なる部分を有する。共通電極115は、受光素子110と発光素子190に共通で用いられる層である。
【0135】
本実施の形態の表示パネルでは、受光素子110の活性層113に有機化合物を用いる。受光素子110は、活性層113以外の層を、発光素子190(EL素子)と共通の構成にすることができる。そのため、発光素子190の作製工程に、活性層113を成膜する工程を追加するのみで、発光素子190の形成と並行して受光素子110を形成することができる。また、発光素子190と受光素子110とを同一基板上に形成することができる。したがって、作製工程を大幅に増やすことなく、表示パネルに受光素子110を内蔵することができる。
【0136】
表示パネル100Aでは、受光素子110の活性層113と、発光素子190の発光層193と、を作り分ける以外は、受光素子110と発光素子190が共通の構成である例を示す。ただし、受光素子110と発光素子190の構成はこれに限定されない。受光素子110と発光素子190は、活性層113と発光層193のほかにも、互いに作り分ける層を有していてもよい(後述の表示パネル100D、100E、100F参照)。受光素子110と発光素子190は、共通で用いられる層(共通層)を1層以上有することが好ましい。これにより、作製工程を大幅に増やすことなく、表示パネルに受光素子110を内蔵することができる。
【0137】
表示パネル100Aは、一対の基板(基板151及び基板152)間に、受光素子110、発光素子190、トランジスタ131、及びトランジスタ132等を有する。
【0138】
受光素子110において、それぞれ画素電極111及び共通電極115の間に位置する共通層112、活性層113、及び共通層114は、有機層(有機化合物を含む層)ということもできる。画素電極111は可視光を反射する機能を有することが好ましい。画素電極111の端部は隔壁216によって覆われている。共通電極115は可視光を透過する機能を有する。
【0139】
受光素子110は、光を検出する機能を有する。具体的には、受光素子110は、基板152を介して外部から入射される光122を受光し、電気信号に変換する、光電変換素子である。
【0140】
基板152の基板151側の面には、遮光層BMが設けられている。遮光層BMは、受光素子110と重なる位置及び発光素子190と重なる位置に開口を有する。遮光層BMを設けることで、受光素子110が光を検出する範囲を制御することができる。
【0141】
遮光層BMとしては、発光素子からの発光を遮る材料を用いることができる。遮光層BMは、可視光を吸収することが好ましい。遮光層BMとして、例えば、金属材料、又は、顔料(カーボンブラックなど)もしくは染料を含む樹脂材料等を用いてブラックマトリクスを形成することができる。遮光層BMは、赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ、及び青色のカラーフィルタの積層構造であってもよい。
【0142】
ここで、発光素子190の発光の一部が、表示パネル100A内で反射され、受光素子110に入射されてしまう場合がある。遮光層BMは、このような迷光の影響を抑制することができる。例えば、遮光層BMが設けられていない場合、発光素子190が発した光123aは、基板152で反射され、反射光123bが受光素子110に入射することがある。遮光層BMを設けることで、反射光123bが受光素子110に入射することを抑制できる。これにより、ノイズを低減し、受光素子110を用いたセンサの感度を高めることができる。
【0143】
発光素子190において、それぞれ画素電極191及び共通電極115の間に位置する共通層112、発光層193、及び共通層114は、EL層ということもできる。画素電極191は可視光を反射する機能を有することが好ましい。画素電極191の端部は隔壁216によって覆われている。画素電極111と画素電極191とは隔壁216によって互いに電気的に絶縁されている。共通電極115は可視光を透過する機能を有する。
【0144】
発光素子190は、可視光を発する機能を有する。具体的には、発光素子190は、画素電極191と共通電極115との間に電圧を印加することで、基板152側に光121を射出する電界発光素子である。
【0145】
発光層193は、受光素子110の受光領域と重ならないように形成されることが好ましい。これにより、発光層193が光122を吸収することを抑制でき、受光素子110に照射される光量を多くすることができる。
【0146】
画素電極111は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ131が有するソースまたはドレインと電気的に接続される。画素電極111の端部は、隔壁216によって覆われている。
【0147】
画素電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ132が有するソースまたはドレインと電気的に接続される。画素電極191の端部は、隔壁216によって覆われている。トランジスタ132は、発光素子190の駆動を制御する機能を有する。
【0148】
トランジスタ131とトランジスタ132とは、同一の層(
図8Aでは基板151)上に接している。
【0149】
受光素子110と電気的に接続される回路の少なくとも一部は、発光素子190と電気的に接続される回路と同一の材料及び同一の工程で形成されることが好ましい。これにより、2つの回路を別々に形成する場合に比べて、表示パネルの厚さを薄くすることができ、また、作製工程を簡略化できる。
【0150】
受光素子110及び発光素子190は、それぞれ、保護層195に覆われていることが好ましい。
図8Aでは、保護層195が、共通電極115上に接して設けられている。保護層195を設けることで、受光素子110及び発光素子190に水などの不純物が入り込むことを抑制し、受光素子110及び発光素子190の信頼性を高めることができる。また、接着層142によって、保護層195と基板152とが貼り合わされている。
【0151】
なお、
図9Aに示すように、受光素子110上及び発光素子190上に保護層を有していなくてもよい。
図9Aでは、接着層142によって、共通電極115と基板152とが貼り合わされている。
【0152】
また、
図9Bに示すように、遮光層BMを有さない構成としてもよい。これにより、受光素子110の受光面積を大きくできるため、よりセンサの感度を高めることができる。
【0153】
〔構成例1-2〕
図8Bに表示パネル100Bの断面図を示す。なお、以降の表示パネルの説明において、先に説明した表示パネルと同様の構成については、説明を省略することがある。
【0154】
図8Bに示す表示パネル100Bは、表示パネル100Aの構成に加え、レンズ149を有する。
【0155】
レンズ149は、受光素子110と重なる位置に設けられている。表示パネル100Bでは、レンズ149が基板152に接して設けられている。表示パネル100Bが有するレンズ149は、基板151側に凸面を有する凸レンズである。なお、基板152側に凸面を有する凸レンズを、受光素子110と重なる領域に配置してもよい。
【0156】
基板152の同一面上に遮光層BMとレンズ149との双方を形成する場合、その形成順は問わない。
図8Bでは、レンズ149を先に形成する例を示すが、遮光層BMを先に形成してもよい。
図8Bでは、レンズ149の端部が遮光層BMによって覆われている。
【0157】
表示パネル100Bは、光122がレンズ149を介して受光素子110に入射する構成である。レンズ149を有すると、レンズ149を有さない場合に比べて、受光素子110に入射される光122の光量を増やすことができる。これにより、受光素子110の感度を高めることができる。
【0158】
本実施の形態の表示パネルに用いるレンズの形成方法としては、基板上または受光素子上にマイクロレンズなどのレンズを直接形成してもよいし、別途作製されたマイクロレンズアレイなどのレンズアレイを基板に貼り合わせてもよい。
【0159】
〔構成例1-3〕
図8Cに、表示パネル100Cの断面概略図を示す。表示パネル100Cは、基板151、基板152、及び隔壁216を有さず、基板153、基板154、接着層155、絶縁層212、及び隔壁217を有する点で、表示パネル100Aと異なる。
【0160】
基板153と絶縁層212とは接着層155によって貼り合わされている。基板154と保護層195とは接着層142によって貼り合わされている。
【0161】
表示パネル100Cは、作製基板上に形成された絶縁層212、トランジスタ131、トランジスタ132、受光素子110、及び発光素子190等を、基板153上に転置することで作製される構成である。基板153及び基板154は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。これにより、表示パネル100Cの可撓性を高めることができる。例えば、基板153及び基板154には、それぞれ、樹脂を用いることが好ましい。
【0162】
基板153及び基板154としては、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板153及び基板154の一方または双方に、可撓性を有する程度の厚さのガラスを用いてもよい。
【0163】
本実施の形態の表示パネルが有する基板には、光学等方性が高いフィルムを用いてもよい。光学等方性が高いフィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC、セルローストリアセテートともいう)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム、及びアクリルフィルム等が挙げられる。
【0164】
隔壁217は、発光素子が発した光を吸収することが好ましい。隔壁217として、例えば、顔料もしくは染料を含む樹脂材料等を用いてブラックマトリクスを形成することができる。また、茶色レジスト材料を用いることで、着色された絶縁層で隔壁217を構成することができる。
【0165】
発光素子190が発した光123cは、基板152及び隔壁217で反射され、反射光123dが受光素子110に入射することがある。また、光123cが隔壁217を透過し、トランジスタまたは配線等で反射されることで、反射光が受光素子110に入射することがある。隔壁217によって光123cが吸収されることで、反射光123dが受光素子110に入射することを抑制できる。これにより、ノイズを低減し、受光素子110を用いたセンサの感度を高めることができる。
【0166】
隔壁217は、少なくとも、受光素子110が検出する光の波長を吸収することが好ましい。例えば、発光素子190が発する赤色の光を受光素子110が検出する場合、隔壁217は、少なくとも赤色の光を吸収することが好ましい。例えば、隔壁217が、青色のカラーフィルタを有すると、赤色の光123cを吸収することができ、反射光123dが受光素子110に入射することを抑制できる。
【0167】
〔構成例1-4〕
上記では、発光素子と受光素子が、2つの共通層を有する例を示したが、これに限られない。以下では、共通層の構成が異なる例について説明する。
【0168】
図10Aに、表示パネル100Dの断面概略図を示す。表示パネル100Dは、共通層114を有さず、バッファ層184及びバッファ層194を有する点で、表示パネル100Aと異なる。バッファ層184及びバッファ層194は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0169】
表示パネル100Dにおいて、受光素子110は、画素電極111、共通層112、活性層113、バッファ層184、及び共通電極115を有する。また、表示パネル100Dにおいて、発光素子190は、画素電極191、共通層112、発光層193、バッファ層194、及び共通電極115を有する。
【0170】
表示パネル100Dでは、共通電極115と活性層113との間のバッファ層184と、共通電極115と発光層193との間のバッファ層194とを作り分ける例を示す。バッファ層184及びバッファ層194としては、例えば、電子注入層及び電子輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0171】
図10Bに、表示パネル100Eの断面概略図を示す。表示パネル100Eは、共通層112を有さず、バッファ層182及びバッファ層192を有する点で、表示パネル100Aと異なる。バッファ層182及びバッファ層192は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0172】
表示パネル100Eにおいて、受光素子110は、画素電極111、バッファ層182、活性層113、共通層114、及び共通電極115を有する。また、表示パネル100Eにおいて、発光素子190は、画素電極191、バッファ層192、発光層193、共通層114、及び共通電極115を有する。
【0173】
表示パネル100Eでは、画素電極111と活性層113との間のバッファ層182と、画素電極191と発光層193との間のバッファ層192とを作り分ける例を示す。バッファ層182及びバッファ層192としては、例えば、正孔注入層及び正孔輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0174】
図10Cに、表示パネル100Fの断面概略図を示す。表示パネル100Fは、共通層112及び共通層114を有さず、バッファ層182、バッファ層184、バッファ層192、及びバッファ層194を有する点で、表示パネル100Aと異なる。
【0175】
表示パネル100Fにおいて、受光素子110は、画素電極111、バッファ層182、活性層113、バッファ層184、及び共通電極115を有する。また、表示パネル100Fにおいて、発光素子190は、画素電極191、バッファ層192、発光層193、バッファ層194、及び共通電極115を有する。
【0176】
受光素子110と発光素子190の作製において、活性層113と発光層193を作り分けるだけでなく、他の層も作り分けることができる。
【0177】
表示パネル100Fでは、受光素子110と発光素子190とで、一対の電極(画素電極111または画素電極191と共通電極115)間に、共通の層を有さない例を示す。表示パネル100Fが有する受光素子110及び発光素子190は、絶縁層214上に画素電極111と画素電極191とを同一の材料及び同一の工程で形成し、画素電極111上にバッファ層182、活性層113、及びバッファ層184を、画素電極191上にバッファ層192、発光層193、及びバッファ層194を、それぞれ形成した後に、バッファ層184及びバッファ層194等を覆うように共通電極115を形成することで作製できる。
【0178】
なお、バッファ層182、活性層113、及びバッファ層184の積層構造と、バッファ層192、発光層193、及びバッファ層194の積層構造の作製順は特に限定されない。例えば、バッファ層182、活性層113、及びバッファ層184を成膜した後に、バッファ層192、発光層193、及びバッファ層194を作製してもよい。逆に、バッファ層182、活性層113、及びバッファ層184を成膜する前に、バッファ層192、発光層193、及びバッファ層194を作製してもよい。また、バッファ層182、バッファ層192、活性層113、発光層193、などの順に交互に成膜してもよい。
【0179】
[表示パネルの構成例2]
以下では、表示パネルのより具体的な構成例について説明する。
【0180】
〔構成例2-1〕
図11に、表示パネル200Aの斜視図を示す。
【0181】
表示パネル200Aは、基板151と基板152とが貼り合された構成を有する。
図11では、基板152を破線で示している。
【0182】
表示パネル200Aは、表示部162、回路164、配線165等を有する。
図11では、表示パネル200AにIC(集積回路)173及びFPC172が実装されている例を示している。そのため、
図11に示す構成は、表示パネル200A、IC、及びFPCを有する表示モジュールということもできる。
【0183】
回路164としては、走査線駆動回路を用いることができる。
【0184】
配線165は、表示部162及び回路164に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC172を介して外部から入力されるか、またはIC173から配線165に入力される。
【0185】
図11では、COG(Chip On Glass)方式またはCOF(Chip On Film)方式などにより、基板151にIC173が設けられている例を示す。IC173は、例えば走査線駆動回路及び信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示パネル200A及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0186】
図12に、
図11で示した表示パネル200Aの、FPC172を含む領域の一部、回路164を含む領域の一部、表示部162を含む領域の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0187】
図12に示す表示パネル200Aは、基板151と基板152の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、トランジスタ206、発光素子190、受光素子110等を有する。
【0188】
基板152と絶縁層214は接着層142を介して接着されている。発光素子190及び受光素子110の封止には、固体封止構造または中空封止構造などが適用できる。
図12では、基板152、接着層142、及び絶縁層214に囲まれた空間143が、不活性ガス(窒素やアルゴンなど)で充填されており、中空封止構造が適用されている。接着層142は、発光素子190と重ねて設けられていてもよい。また、基板152、接着層142、及び絶縁層214に囲まれた空間143を、接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0189】
発光素子190は、絶縁層214側から画素電極191、共通層112、発光層193、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。画素電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ206が有する導電層222bと接続されている。トランジスタ206は、発光素子190の駆動を制御する機能を有する。画素電極191の端部は、隔壁216によって覆われている。画素電極191は可視光を反射する材料を含み、共通電極115は可視光を透過する材料を含む。
【0190】
受光素子110は、絶縁層214側から画素電極111、共通層112、活性層113、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。画素電極111は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと電気的に接続されている。画素電極111の端部は、隔壁216によって覆われている。画素電極111は可視光を反射する材料を含み、共通電極115は可視光を透過する材料を含む。
【0191】
発光素子190が発する光は、基板152側に射出される。また、受光素子110には、基板152及び空間143を介して、光が入射する。基板152には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。
【0192】
画素電極111及び画素電極191は同一の材料及び同一の工程で作製することができる。共通層112、共通層114、及び共通電極115は、受光素子110と発光素子190との双方に用いられる。受光素子110と発光素子190とは、活性層113と発光層193の構成が異なる以外は全て共通の構成とすることができる。これにより、作製工程を大幅に増やすことなく、表示パネル100Aに受光素子110を内蔵することができる。
【0193】
基板152の基板151側の面には、遮光層BMが設けられている。遮光層BMは、受光素子110と重なる位置及び発光素子190と重なる位置に開口を有する。遮光層BMを設けることで、受光素子110が光を検出する範囲を制御することができる。また、遮光層BMを有することで、発光素子190から受光素子110に光が直接入射することを抑制できる。したがって、ノイズが少なく感度の高いセンサを実現できる。
【0194】
トランジスタ201、トランジスタ205、及びトランジスタ206は、いずれも基板151上に形成されている。これらのトランジスタは、同一の材料及び同一の工程により作製することができる。
【0195】
基板151上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0196】
トランジスタを覆う絶縁層の少なくとも一層に、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁層をバリア層として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制でき、表示装置の信頼性を高めることができる。
【0197】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0198】
ここで、有機絶縁膜は、無機絶縁膜に比べてバリア性が低いことが多い。そのため、有機絶縁膜は、表示パネル200Aの端部近傍に開口を有することが好ましい。これにより、表示パネル200Aの端部から有機絶縁膜を介して不純物が拡散することを抑制することができる。または、有機絶縁膜の端部が表示パネル200Aの端部よりも内側に位置するように有機絶縁膜を形成し、表示パネル200Aの端部に有機絶縁膜が露出しないようにしてもよい。
【0199】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁膜が好適である。有機絶縁膜に用いることができる材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0200】
図12に示す領域228では、絶縁層214に開口が形成されている。これにより、絶縁層214に有機絶縁膜を用いる場合であっても、絶縁層214を介して外部から表示部162に不純物が拡散することを抑制できる。したがって、表示パネル200Aの信頼性を高めることができる。
【0201】
トランジスタ201、トランジスタ205、及びトランジスタ206は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。絶縁層211は、導電層221と半導体層231との間に位置する。絶縁層213は、導電層223と半導体層231との間に位置する。
【0202】
本実施の形態の表示パネルが有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタ、スタガ型のトランジスタ、逆スタガ型のトランジスタ等を用いることができる。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルが形成される半導体層の上下にゲートが設けられていてもよい。
【0203】
トランジスタ201、トランジスタ205、及びトランジスタ206には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。または、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御してもよい。
【0204】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、単結晶半導体、または単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体または結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0205】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0206】
半導体層は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0207】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0208】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットは、Mに対するInの原子数比が1以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0209】
スパッタリングターゲットとしては、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される半導体層の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0210】
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍と記載する場合、Inの原子数比を4としたとき、Gaの原子数比が1以上3以下であり、Znの原子数比が2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を5としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を1としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0211】
回路164が有するトランジスタと、表示部162が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路164が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、表示部162が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0212】
基板151の、基板152が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線165が導電層166及び接続層242を介してFPC172と電気的に接続されている。接続部204の上面は、画素電極191と同一の導電膜を加工して得られた導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC172とを接続層242を介して電気的に接続することができる。
【0213】
基板152の外側には各種光学部材を配置することができる。光学部材としては、偏光板、位相差板、光拡散層(拡散フィルムなど)、反射防止層、及び集光フィルム等が挙げられる。また、基板152の外側には、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜、衝撃吸収層等を配置してもよい。
【0214】
基板151及び基板152には、それぞれ、ガラス、石英、セラミック、サファイア、樹脂などを用いることができる。基板151及び基板152に可撓性を有する材料を用いると、表示パネルの可撓性を高めることができる。
【0215】
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0216】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0217】
発光素子190は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型などがある。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0218】
発光素子190は少なくとも発光層193を有する。発光素子190は、発光層193以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。例えば、共通層112は、正孔注入層及び正孔輸送層の一方又は双方を有することが好ましい。例えば、共通層114は、電子輸送層及び電子注入層の一方または双方を有することが好ましい。
【0219】
共通層112、発光層193、及び共通層114には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。共通層112、発光層193、及び共通層114を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0220】
発光層193は、発光材料として、量子ドットなどの無機化合物を有していてもよい。
【0221】
受光素子110の活性層113は、半導体を含む。当該半導体としては、シリコンなどの無機半導体、及び、有機化合物を含む有機半導体が挙げられる。本実施の形態では、活性層が有する半導体として、有機半導体を用いる例を示す。有機半導体を用いることで、発光素子190の発光層193と、受光素子110の活性層113と、を同じ方法(例えば、真空蒸着法)で形成することができ、製造装置を共通化できるため好ましい。
【0222】
活性層113が有するn型半導体の材料としては、フラーレン(例えばC60、C70等)またはその誘導体等の電子受容性の有機半導体材料が挙げられる。また、活性層113が有するp型半導体の材料としては、銅(II)フタロシアニン(Copper(II) phthalocyanine;CuPc)やテトラフェニルジベンゾペリフランテン(Tetraphenyldibenzoperiflanthene;DBP)、亜鉛フタロシアニン(Zinc Phthalocyanine;ZnPc)等の電子供与性の有機半導体材料が挙げられる。
【0223】
例えば、活性層113は、n型半導体とp型半導体とを共蒸着して形成することが好ましい。
【0224】
トランジスタのゲート、ソース及びドレインのほか、表示パネルを構成する各種配線及び電極などの導電層に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、及びタングステンなどの金属、並びに、当該金属を主成分とする合金などが挙げられる。これらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。
【0225】
また、透光性を有する導電材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛などの導電性酸化物またはグラフェンを用いることができる。または、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、及びチタンなどの金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。または、該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用いてもよい。なお、金属材料、合金材料(またはそれらの窒化物)を用いる場合には、透光性を有する程度に薄くすることが好ましい。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウムスズ酸化物の積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。これらは、表示パネルを構成する各種配線及び電極などの導電層や、表示素子が有する導電層(画素電極や共通電極として機能する導電層)にも用いることができる。
【0226】
各絶縁層に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料が挙げられる。
【0227】
〔構成例2-2〕
図13Aに、表示パネル200Bの断面図を示す。表示パネル200Bは、レンズ149及び保護層195を有する点で、主に表示パネル200Aと相違している。
【0228】
受光素子110及び発光素子190を覆う保護層195を設けることで、受光素子110及び発光素子190に水などの不純物が拡散することを抑制し、受光素子110及び発光素子190の信頼性を高めることができる。
【0229】
表示パネル200Bの端部近傍の領域228において、絶縁層214の開口を介して、絶縁層215と保護層195とが互いに接することが好ましい。特に、絶縁層215が有する無機絶縁膜と保護層195が有する無機絶縁膜とが互いに接することが好ましい。これにより、有機絶縁膜を介して外部から表示部162に不純物が拡散することを抑制することができる。したがって、表示パネル200Bの信頼性を高めることができる。
【0230】
図13Bに、保護層195が3層構造である例を示す。
図13Bにおいて、保護層195は、共通電極115上の無機絶縁層195aと、無機絶縁層195a上の有機絶縁層195bと、有機絶縁層195b上の無機絶縁層195cと、を有する。
【0231】
無機絶縁層195aの端部と無機絶縁層195cの端部は、有機絶縁層195bの端部よりも外側に延在し、互いに接している。そして、無機絶縁層195aは、絶縁層214(有機絶縁層)の開口を介して、絶縁層215(無機絶縁層)と接する。これにより、絶縁層215と保護層195とで、受光素子110及び発光素子190を囲うことができるため、受光素子110及び発光素子190の信頼性を高めることができる。
【0232】
このように、保護層195は、有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層構造であってもよい。このとき、有機絶縁膜の端部よりも無機絶縁膜の端部を外側に延在させることが好ましい。
【0233】
基板152の基板151側の面に、レンズ149が設けられている。レンズ149は、基板151側に凸面を有する。受光素子110の受光領域は、レンズ149と重なり、かつ、発光層193と重ならないことが好ましい。これにより、受光素子110を用いたセンサの感度及び精度を高めることができる。
【0234】
レンズ149は、受光素子110が受光する光の波長に対する屈折率が1.3以上2.5以下であることが好ましい。レンズ149は、無機材料及び有機材料の少なくとも一方を用いて形成することができる。例えば、樹脂を含む材料をレンズ149に用いることができる。また、酸化物及び硫化物の少なくとも一方を含む材料をレンズ149に用いることができる。
【0235】
具体的には、塩素、臭素、またはヨウ素を含む樹脂、重金属原子を含む樹脂、芳香環を含む樹脂、硫黄を含む樹脂などをレンズ149に用いることができる。または、樹脂と当該樹脂より屈折率の高い材料のナノ粒子を含む材料をレンズ149に用いることができる。酸化チタンまたは酸化ジルコニウムなどをナノ粒子に用いることができる。
【0236】
また、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、インジウムとスズを含む酸化物、またはインジウムとガリウムと亜鉛を含む酸化物などを、レンズ149に用いることができる。または、硫化亜鉛などを、レンズ149に用いることができる。
【0237】
また、表示パネル200Bでは、保護層195と基板152とが接着層142によって貼り合わされている。接着層142は、受光素子110及び発光素子190とそれぞれ重ねて設けられており、表示パネル200Bには、固体封止構造が適用されている。
【0238】
〔構成例2-3〕
図14Aに、表示パネル200Cの断面図を示す。表示パネル200Cは、トランジスタの構造が異なる点、遮光層BM及びレンズ149を有さない点で、主に表示パネル200Bと相違している。
【0239】
表示パネル200Cは、基板151上に、トランジスタ208、トランジスタ209、及びトランジスタ210を有する。
【0240】
トランジスタ208、トランジスタ209、及びトランジスタ210は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、チャネル形成領域231i及び一対の低抵抗領域231nを有する半導体層、一対の低抵抗領域231nの一方と接続する導電層222a、一対の低抵抗領域231nの他方と接続する導電層222b、ゲート絶縁層として機能する絶縁層225、ゲートとして機能する導電層223、並びに、導電層223を覆う絶縁層215を有する。絶縁層211は、導電層221とチャネル形成領域231iとの間に位置する。絶縁層225は、導電層223とチャネル形成領域231iとの間に位置する。
【0241】
導電層222a及び導電層222bは、それぞれ、絶縁層225及び絶縁層215に設けられた開口を介して低抵抗領域231nと接続される。導電層222a及び導電層222bのうち、一方はソースとして機能し、他方はドレインとして機能する。
【0242】
発光素子190の画素電極191は、導電層222bを介してトランジスタ208の一対の低抵抗領域231nの一方と電気的に接続される。
【0243】
受光素子110の画素電極111は、導電層222bを介してトランジスタ209の一対の低抵抗領域231nの他方と電気的に接続される。
【0244】
図14Aには、絶縁層225が半導体層の上面及び側面を覆う例を示している。一方、
図14Bには、絶縁層225が、半導体層231のチャネル形成領域231iと重なり、低抵抗領域231nとは重ならないトランジスタ202の例を示している。例えば、導電層223をマスクとして用いて絶縁層225を加工することで、
図14Bに示す構造を作製できる。
図14Bでは、絶縁層225及び導電層223を覆って絶縁層215が設けられ、絶縁層215の開口を介して、導電層222a及び導電層222bがそれぞれ低抵抗領域231nと接続されている。さらに、トランジスタを覆う絶縁層218を設けてもよい。
【0245】
〔構成例2-4〕
図15に、表示パネル200Dの断面図を示す。表示パネル200Dは、基板の構成が異なる点で、表示パネル200Cと主に相違している。
【0246】
表示パネル200Dは、基板151及び基板152を有さず、基板153、基板154、接着層155、及び絶縁層212を有する。
【0247】
基板153と絶縁層212とは接着層155によって貼り合わされている。基板154と保護層195とは接着層142によって貼り合わされている。
【0248】
表示パネル200Dは、作製基板上で形成された絶縁層212、トランジスタ208、トランジスタ209、受光素子110、及び発光素子190等を、基板153上に転置することで作製される構成である。基板153及び基板154は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。これにより、表示パネル200Dの可撓性を高めることができる。
【0249】
絶縁層212には、絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215に用いることができる無機絶縁膜を用いることができる。または、絶縁層212として、有機絶縁膜と無機絶縁膜の積層膜としてもよい。このとき、トランジスタ209側の膜を、無機絶縁膜とすることが好ましい。
【0250】
以上が、表示パネルの構成例についての説明である。
【0251】
[金属酸化物について]
以下では、半導体層に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0252】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。例えば、亜鉛酸窒化物(ZnON)などの窒素を有する金属酸化物を、半導体層に用いてもよい。
【0253】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能または材料の構成の一例を表す。
【0254】
例えば、半導体層にはCAC(Cloud-Aligned Composite)-OS(Oxide Semiconductor)を用いることができる。
【0255】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの半導体層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0256】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0257】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0258】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0259】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0260】
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0261】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0262】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0263】
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0264】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう。)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0265】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0266】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0267】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0268】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0269】
半導体層として機能する金属酸化物膜は、不活性ガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて成膜することができる。なお、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)に、特に限定はない。ただし、電界効果移動度が高いトランジスタを得る場合においては、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)は、0%以上30%以下が好ましく、5%以上30%以下がより好ましく、7%以上15%以下がさらに好ましい。
【0270】
金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがより好ましく、3eV以上であることがさらに好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0271】
金属酸化物膜の成膜時の基板温度は、350℃以下が好ましく、室温以上200℃以下がより好ましく、室温以上130℃以下がさらに好ましい。金属酸化物膜の成膜時の基板温度が室温であると、生産性を高めることができ、好ましい。
【0272】
金属酸化物膜は、スパッタリング法により形成することができる。そのほか、例えばPLD法、PECVD法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法などを用いてもよい。
【0273】
以上が、金属酸化物についての説明である。
【0274】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0275】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様のシステムに適用可能な表示パネルについて、
図16A、
図16Bを用いて説明する。
【0276】
本発明の一態様の表示パネルは、受光素子を有する第1の画素回路と、発光素子を有する第2の画素回路と、を有する。第1の画素回路と第2の画素回路は、それぞれ、マトリクス状に配置される。
【0277】
図16Aに、受光素子を有する第1の画素回路の一例を示し、
図16Bに、発光素子を有する第2の画素回路の一例を示す。
【0278】
図16Aに示す画素回路PIX1は、受光素子PD、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、トランジスタM4、及び容量素子C1を有する。ここでは、受光素子PDとして、フォトダイオードを用いた例を示している。
【0279】
受光素子PDは、カソードが配線V1と電気的に接続し、アノードがトランジスタM1のソースまたはドレインの一方と電気的に接続する。トランジスタM1は、ゲートが配線TXと電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方が容量素子C1の一方の電極、トランジスタM2のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタM3のゲートと電気的に接続する。トランジスタM2は、ゲートが配線RESと電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方が配線V2と電気的に接続する。トランジスタM3は、ソースまたはドレインの一方が配線V3と電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方がトランジスタM4のソースまたはドレインの一方と電気的に接続する。トランジスタM4は、ゲートが配線SEと電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方が配線OUT1と電気的に接続する。
【0280】
配線V1、配線V2、及び配線V3には、それぞれ定電位が供給される。受光素子PDを逆バイアスで駆動させる場合には、配線V2に、配線V1の電位よりも低い電位を供給する。トランジスタM2は、配線RESに供給される信号により制御され、トランジスタM3のゲートに接続するノードの電位を、配線V2に供給される電位にリセットする機能を有する。トランジスタM1は、配線TXに供給される信号により制御され、受光素子PDに流れる電流に応じて上記ノードの電位が変化するタイミングを制御する機能を有する。トランジスタM3は、上記ノードの電位に応じた出力を行う増幅トランジスタとして機能する。トランジスタM4は、配線SEに供給される信号により制御され、上記ノードの電位に応じた出力を配線OUT1に接続する外部回路で読み出すための選択トランジスタとして機能する。
【0281】
図16Bに示す画素回路PIX2は、発光素子EL、トランジスタM5、トランジスタM6、トランジスタM7、及び容量素子C2を有する。ここでは、発光素子ELとして、発光ダイオードを用いた例を示している。特に、発光素子ELとして、有機EL素子を用いることが好ましい。
【0282】
トランジスタM5は、ゲートが配線VGと電気的に接続し、ソースまたはドレインの一方が配線VSと電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方が、容量素子C2の一方の電極、及びトランジスタM6のゲートと電気的に接続する。トランジスタM6のソースまたはドレインの一方は配線V4と電気的に接続し、他方は、発光素子ELのアノード、及びトランジスタM7のソースまたはドレインの一方と電気的に接続する。トランジスタM7は、ゲートが配線MSと電気的に接続し、ソースまたはドレインの他方が配線OUT2と電気的に接続する。発光素子ELのカソードは、配線V5と電気的に接続する。
【0283】
配線V4及び配線V5には、それぞれ定電位が供給される。発光素子ELのアノード側を高電位に、カソード側をアノード側よりも低電位にすることができる。トランジスタM5は、配線VGに供給される信号により制御され、画素回路PIX2の選択状態を制御するための選択トランジスタとして機能する。また、トランジスタM6は、ゲートに供給される電位に応じて発光素子ELに流れる電流を制御する駆動トランジスタとして機能する。トランジスタM5が導通状態のとき、配線VSに供給される電位がトランジスタM6のゲートに供給され、その電位に応じて発光素子ELの発光輝度を制御することができる。トランジスタM7は配線MSに供給される信号により制御され、トランジスタM6と発光素子ELとの間の電位を、配線OUT2を介して外部に出力する機能を有する。
【0284】
なお、本実施の形態の表示パネルでは、発光素子をパルス状に発光させることで、画像を表示してもよい。発光素子の駆動時間を短縮することで、表示パネルの消費電力の低減、及び、発熱の抑制を図ることができる。特に、有機EL素子は周波数特性が優れているため、好適である。周波数は、例えば、1kHz以上100MHz以下とすることができる。
【0285】
ここで、画素回路PIX1が有するトランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、及びトランジスタM4、並びに、画素回路PIX2が有するトランジスタM5、トランジスタM6、及びトランジスタM7には、それぞれチャネルが形成される半導体層に金属酸化物(酸化物半導体)を用いたトランジスタを適用することが好ましい。
【0286】
シリコンよりもバンドギャップが広く、かつキャリア密度の小さい金属酸化物を用いたトランジスタは、極めて小さいオフ電流を実現することができる。そのため、その小さいオフ電流により、トランジスタと直列に接続された容量素子に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。そのため、特に容量素子C1または容量素子C2に直列に接続されるトランジスタM1、トランジスタM2、及びトランジスタM5には、酸化物半導体が適用されたトランジスタを用いることが好ましい。また、これ以外のトランジスタも同様に酸化物半導体を適用したトランジスタを用いることで、作製コストを低減することができる。
【0287】
また、トランジスタM1乃至トランジスタM7に、チャネルが形成される半導体にシリコンを適用したトランジスタを用いることもできる。特に単結晶シリコンや多結晶シリコンなどの結晶性の高いシリコンを用いることで、高い電界効果移動度を実現することができ、より高速な動作が可能となるため好ましい。
【0288】
また、トランジスタM1乃至トランジスタM7のうち、一以上に酸化物半導体を適用したトランジスタを用い、それ以外にシリコンを適用したトランジスタを用いる構成としてもよい。
【0289】
なお、
図16A、
図16Bにおいて、トランジスタをnチャネル型のトランジスタとして表記しているが、pチャネル型のトランジスタを用いることもできる。
【0290】
画素回路PIX1が有するトランジスタと画素回路PIX2が有するトランジスタは、同一基板上に並べて形成されることが好ましい。特に、画素回路PIX1が有するトランジスタと画素回路PIX2が有するトランジスタとを1つの領域内に混在させて周期的に配列する構成とすることが好ましい。
【0291】
また、受光素子PDまたは発光素子ELと重なる位置に、トランジスタ及び容量素子の一方又は双方を有する層を1つまたは複数設けることが好ましい。これにより、各画素回路の実効的な占有面積を小さくでき、高精細な受光部または表示部を実現できる。
【0292】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0293】
10:表示システム、11:表示装置、12、12a、12b:発光装置、15、15a、15b:受光モジュール、16:制御装置、20:表示パネル、21:表示部、22:画素、23、23G、23R、23B:表示素子、24:受光素子、25、26:駆動回路、30:受光部、31:受光素子、41:制御部、42、42a、42b、43、43a、43b:駆動部、51、52:スイッチ、53、54:発光素子、55、57:駆動部、56:信号生成部、58、59、59a、59b:照射領域、60、60a、60b:ユーザ、61、62、63、64、66a、66b、67a、67b、68:オブジェクト、65:軌跡、69a、69b、69c、69d:アイコン