IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-糸群を仕掛けるための方法および装置 図1
  • 特許-糸群を仕掛けるための方法および装置 図2
  • 特許-糸群を仕掛けるための方法および装置 図3
  • 特許-糸群を仕掛けるための方法および装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】糸群を仕掛けるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20231114BHJP
   D02J 11/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
D01D7/00 C
D02J11/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020569085
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019064578
(87)【国際公開番号】W WO2019238481
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】102018004768.8
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】ローラント エスターヴィント
(72)【発明者】
【氏名】エルマー オストヒュース
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066088(JP,A)
【文献】特開平04-011007(JP,A)
【文献】特開昭56-003257(JP,A)
【文献】特開昭55-106965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D02J 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴデットと該ゴデットに後置された複数の巻取り箇所とを備えた少なくとも1つの巻取り装置を備えた、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための方法であって、糸群を吸引流によりサクション装置の管片の吸引開口内に吸い込み、かつ連続的に導出し、前記糸群を、前記管片および/または糸ガイドの移動により、重畳してガイドし、前記管片内の前記吸引流を、前記サクション装置に供給される圧縮空気の制御可能な運転圧力により制御する方法において、
回転するゴデットまたは糸ガイドローラに仕掛けられる前記糸群の引出し速度または回転する糸ガイドローラに仕掛けられる前記糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度に依存して前記吸引流を変更するために、前記圧縮空気の前記運転圧力を変化させることを特徴とする、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための方法。
【請求項2】
前記糸群の前記引出し速度または前記糸の前記引出し速度を、前記糸群または前記糸への直接的な接触により、または非接触的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記糸群の前記引出し速度または前記糸の前記引出し速度を、前記糸群または前記糸が部分的に巻き掛けられている自由に回転可能な糸ガイドローラの回転数の測定により求める、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記糸群の前記引出し速度を、前記糸群または前記糸が部分的に巻き掛けられている前記ゴデットのうちの1つのゴデットの回転数の測定により求める、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記糸群の前記引出し速度または前記糸の前記引出し速度を、容量式センサ装置により非接触的に検出する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記糸群の前記引出し速度を、前記サクション装置の前記管片の前記吸引開口に対して短い間隔をおいて測定する、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記運転圧力を調節するために、前記糸群の目標引出し速度を予め設定し、測定された実際引出し速度が、前記目標引出し速度と同一である場合に、前記運転圧力が達成されていることになる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
複数の仕掛け工程のための前記糸群の複数の目標引出し速度が予め設定されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための装置であって、複数のゴデット(11.1,11.2)と該ゴデット(11.1,11.2)に後置された複数の巻取り箇所(3.1~3.4)とを備えた少なくとも1つの巻取り装置(2)と、吸引開口(18)を備えた管片(14)を有するサクション装置(1)であって、吸引流を形成するために圧縮空気管路(16)に接続されていて、屑管路(19)により屑容器(20)に接続されているサクション装置(1)と、圧縮空気の運転圧力を調節することができる制御弁(17)とを備えた装置において、
前記糸群(21)の引出し速度を検出するための測定装置(23)または前記糸群(21)の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度を検出するための測定装置(23)が設けられていて、該測定装置(23)が、制御ユニット(25)に接続されていて、該制御ユニット(25)が、前記制御弁(17)に接続されていて、該制御弁(17)により、前記圧縮空気の前記運転圧力が、回転するゴデットまたは糸ガイドローラに仕掛けられる前記糸群の引出し速度、または回転する糸ガイドローラに仕掛けられる前記糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度に依存して前記吸引流を変更するために変化させられることを特徴とする、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための装置。
【請求項10】
前記糸群の前記引出し速度を前記管片(14)の前記吸引開口(18)内への走入前に検出するために、前記測定装置(23)が、前記サクション装置(1)に配設されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記糸群(21)または前記糸群(21)の複数の糸のうちの1本の糸の前記引出し速度を検出するために、前記測定装置(23)が、前記巻取り装置(2)に配設されている、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記測定装置(23)が、少なくとも1つの回転数センサ(24.1,24.2)を有していて、該回転数センサ(24.1,24.2)が、自由に回転可能な糸ガイドローラ(9.1,28)または駆動されるゴデット(11.1)に配設されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記測定装置(23)が、少なくとも1つの容量式センサ装置(31)を有していて、該センサ装置(31)が、前記糸群(21)または前記糸群の複数の糸のうちの1本の糸に対して間隔を空けて配置されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記制御ユニット(25)が、制御プログラムを保存し実行するためのプロセッサを有していて、該制御プログラムにより、複数の仕掛けステップのための複数の目標引出し速度が、前記運転圧力を変更するために予め設定されている、請求項9から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記制御弁(17)、前記制御ユニット(25)および前記測定装置(23)が、一緒に前記サクション装置(1)に配設されている、請求項9から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記サクション装置(1)が、手動でまたは自動化されてガイドされている可動のサクションガン(15)として構成されている、請求項9から15までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式の、少なくとも1つの巻取り装置を備えた、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための方法と、請求項9の前提部に記載の形式の、少なくとも1つの巻取り装置を備えた、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための装置とに関する。
【0002】
少なくとも1つの巻取り装置を備えた、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための冒頭で述べた形式の方法および冒頭で述べた形式の装置は、たとえば欧州特許出願公開第3312121号明細書から知られている。
【0003】
溶融紡糸装置における糸の製造または加工時には、プロセス開始時に糸群をまずサクション装置により収容し、連続的に屑容器へとガイドすることが通常である。サクション装置は、好適には、手動でまたは自動的にガイドされるサクションガンとして形成されているので、サクション装置の重畳された運動により、糸群のガイドが可能である。これにより、糸群はプロセス手順に対応して巻取り装置のゴデットおよび巻取り箇所に仕掛けられる。このためには、オペレータまたはロボットは、支障のないプロセススタートを得るために、プロセスにおいて規定された糸ガイドを考慮する必要がある。特に、仕掛け工程の各時点で、糸群を連続的に引き出し、吸い込むことが必要である。
【0004】
糸群を仕掛けるための公知の方法および公知の装置では、サクション装置がロボットにより操作される。このためには、糸群をサクション装置により収容し、ロボットの予め規定された運動経過によって、巻取り装置のゴデットおよび巻取り箇所に仕掛けることが必要である。ロボットの運動経過に応じて、サクション装置の吸引流がそれぞれの仕掛け状況に適合させられることにより確実な糸ガイドが実現される、種々異なる仕掛け状況が生じる。したがって、ロボットの制御ユニットを介して、サクション装置の吸引力が増減される。
【0005】
公知の方法および公知の装置は、サクション装置においてその都度調節された吸引流を使用することができるように、ロボットの運動経過を糸群の仕掛け時に維持しなければならないという大きな欠点を有している。オペレータがサクション装置を操作する場合には、個別の仕掛けステップがオペレータに依存して種々異なる長さの期間を要求してしまうという問題が生じる。その限りでは、誤って調節された吸引流に基づいて糸の弛みまたは個別の糸破断が発生してしまう恐れがある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、少なくとも1つの巻取り装置を備えた溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための冒頭で述べた形式の方法および冒頭で述べた形式の装置を改良して、糸群を仕掛け工程の各状況において、サクション装置の手動のまたは自動化されたガイドとは関係なしに確実に引き出し、かつ屑容器へとガイドするようにすることである。
【0007】
本発明の別の目的は、糸群を仕掛けるための冒頭で述べた方法および冒頭で述べた装置を手動の操作時に確実に繰返し可能かつ再現可能であるように構成することにある。
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の特徴を備えた方法および請求項9に記載の特徴を備えた装置により解決される。
【0009】
有利な変化形は、それぞれの従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0010】
本発明は、仕掛け工程中に糸群が種々異なる引出し速度を有していて、種々異なる引出し速度は特にサクション装置の種々異なる吸引出力を要求するという知識に基づいている。たとえば、糸群は、比較的低い引出し速度で紡糸装置から引き出される。しかし、回転しているゴデットへの仕掛け時に、糸群においてより高い引出し速度が所望され、これにより仕掛け時の突然の過伸展を阻止することができる。各仕掛け状況において糸ガイドのために所望される引出し速度を得ることができるように、本発明によれば、圧縮空気の運転圧力が、糸群の引出し速度および/または糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度に依存して吸引流を変更するために、変更される。圧縮空気の運転圧力により、糸群を収容し導出するためのサクション装置内の吸引流を直接に制御することができる。これにより、各仕掛け状況において糸群を対応する引出し速度でガイドする可能性が生じる。
【0011】
このためには、本発明に係る装置は、糸群の引出し速度を検出するための測定装置または糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度を検出するための測定装置を有していて、測定装置は、制御ユニットに接続されていて、制御ユニットは、制御弁に連結され、制御弁により、圧縮空気の運転圧力を、引出し速度に依存して吸引流を変更するために変化させる。糸群の引出し速度の検出により、または代替的には糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度の検出により、仕掛け時の糸ガイドの目下の状態が判っている。その限りでは、仕掛け状況の変更時の意図的な変更をオペレータによって、または自動化して実施することができる。
【0012】
糸群の引出し速度または糸群の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度は、糸群または糸との直接的な接触により、または代替的には非接触的に測定される。糸の型に応じてかつプロセスの種類に応じて、糸にやさしい測定装置を使用することができる。
【0013】
接触による糸群の引出し速度の測定は、好適には、糸群の引出し速度または糸の引出し速度を、糸群または糸が部分的に巻き掛けられている自由に回転可能な糸ガイドローラの回転数の測定により求める方法バリエーションにより実施される。これにより、糸群における引出し速度を測定するために、既に巻取り装置に設けられている糸ガイドローラまたは付加的に設置された糸ガイドローラを使用する可能性が生じる。
【0014】
特に、糸群を紡糸装置から引き出すゴデットに糸群を仕掛けることが問題であるので、糸群の引出し速度を、糸群または糸が部分的に巻き掛けられている複数のゴデットのうちの1つのゴデットの回転数の測定により求める方法バリエーションが同様に特に有利である。この場合、ゴデットシステム内に設けられた各ゴデットが、引出し速度を特定するために適している。
【0015】
駆動されるローラまたはゴデットにおいて、引出し速度もしくはローラまたはゴデットの回転数をゴデットまたはローラの駆動装置のトルクの監視および測定により求める可能性が生じる。
【0016】
糸群の引出し速度の非接触の検出は、好適には容量式センサ装置により実施される。その限りでは、容量式センサ装置により引出し速度を検出するための方法バリエーションは、特に糸にやさしい。
【0017】
サクション装置において形成された吸引流が糸群の所望の引出し速度に対応しているように、糸群の引出し速度が、サクション装置の管片の吸引開口に対して短い間隔をおいて、即ち吸引開口の付近で測定される方法バリエーションが有利に実施される。したがって、引出し速度の測定箇所とサクション装置との間には、場合によっては引出し速度の偏差を引き起こす糸ガイドエレメントが配置されていない。
【0018】
それぞれの仕掛けステップを運転圧力の正しい調節で実施可能にするために、運転圧力を調節するために糸群の目標引出し速度を予め設定し、測定された実際引出し速度が目標引出し速度と同一である場合に、運転圧力が達成されているという方法形態が使用される。これにより、必要となる引出し速度を形成するために必要である吸引作用を得るために、サクション装置における運転圧力の極めて正確な調節が可能である。
【0019】
好適には、複数の仕掛けステップのための糸群の複数の目標引出し速度が予め設定される。
【0020】
本発明に係る装置では、引出し速度を検出するための測定装置が、サクション装置に直接に配設されているか、代替的には巻取り装置に配設されている。引出し装置の吸引開口の領域、即ち付近における配置は、極めて正確な調節が可能である特に有利な実施態様を成す。
【0021】
糸群または1本の糸の引出し速度を求めるために、測定装置は、好適には回転数センサにより構成されている。回転数センサは、糸ガイドローラまたはゴデットに対応して配設されている。したがって、自由に回転可能な糸ガイドローラに巻掛けられている糸群の引出し速度が、簡単な形式で糸ガイドローラの回転数から求められる。糸ガイドローラは、糸群が実質的にスリップなしに糸ガイドローラの周囲においてガイドされているように構成されている。しかし代替的には、回転数センサを、駆動されるゴデットに対して配設し、ゴデットの回転数から、糸群の仕掛け時にスリップのない糸ガイドを可能にする引出し速度が推論される可能性も生じる。
【0022】
引出し速度を非接触的に測定するために、測定装置は好適には容量式センサ装置を有している。容量式センサ装置は、糸群または糸群の複数の糸のうちの1本の糸に間隔を空けて配置されている。これにより、接触なしに糸群の目下の引出し速度が求められる。サクション装置の自動化された操作時に、装置は好適には、制御ユニットが制御プログラムを保存し実行するためのプロセッサを有しているように構成されていて、制御プログラムにより、複数の仕掛けステップの複数の目標引出し速度が運転圧力を変更するために予め設定されている。したがって、制御プログラムを介して運転圧力の変更の順序が制御される。
【0023】
溶融紡糸装置には、複数の巻取り装置が配置されている。これらの巻取り装置は、必要に応じて、サクション装置により操作される。その限りでは、制御弁、制御ユニットおよび測定装置が一緒にサクション装置に配設されている本発明に係る装置の変化形が特に有利である。これにより、それぞれの紡糸位置とは関係なしに、引出し速度の検出およびこれに基づくサクション装置における運転圧力の調節が可能である。
【0024】
サクション装置は、好適には、手動でまたは自動化されてガイドされている可動のサクションガンとして構成されている。
【0025】
しかし代替的には、サクション装置を、巻取り装置に配設されている固定されたサクションユニットとして実施する可能性も生じる。
【0026】
本発明に係る方法を、以下に、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための本発明に係る装置の複数の実施例につき、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための本発明に係る装置の第1の実施例を示す概略図である。
図2】溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための本発明に係る装置の別の実施例を示す概略図である。
図3図2に示した装置のためのサクション装置の1つの実施例を示す概略図である。
図4図2に示した装置のためのサクション装置の別の実施例を示す概略図である。
【0028】
図1には、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を仕掛けるための本発明に係る装置の第1の実施例が概略的に示されている。この場合単に1つの巻取り装置が複数のゴデットと一緒に示されている。巻取り装置は通常、糸群を押し出すための紡糸装置の紡糸位置の下に配置されている。
【0029】
このような紡糸装置では、紡糸されたばかりの糸がゴデットにより引き出され、延伸後に複数の巻取り箇所において並行して巻き取られてパッケージを形成することが通常である。その限りでは、図1には、複数の巻取り箇所3.1~3.4を備えた巻取り装置2と、巻取り箇所3.1~3.4の上に配置された複数のゴデット11.1~11.3とが概略的に示されている。
【0030】
ゴデット11.1~11.3は、ゴデット支持体12において突出するように保持されている。ゴデット支持体12は、巻取り装置2の機械フレーム13に支持されている。ゴデット11.1~11.3は、駆動装置(図示せず)に接続されている。
【0031】
巻取り装置2は、この実施例では、4つの巻取り箇所3.1~3.4を有していて、これにより、4本の糸から形成される糸群21を巻き取ってパッケージを形成することができる。糸の本数および巻取り箇所の個数は例示的である。したがって、1つの糸群内で10本、12本または16本の糸が並行に相並んで巻き取られてパッケージを形成することができる。このためには2つの巻取りスピンドル4.1および4.2が、回転可能に支承された巻管リボルバ6において突出するように保持されている。巻取りスピンドル4.1および4.2は、別個のスピンドル駆動装置5.1および5.2を介して駆動される。巻管リボルバ6は、リボルバ駆動装置6.1に接続されているので、巻取りスピンドル4.1、4.2は、交互に運転領域と交換領域とにガイド可能である。運転領域では、巻取りスピンドル4.1および4.2は押圧ローラ7と協働する。
【0032】
糸を敷設するためには、綾振り装置8が設けられている。綾振り装置8は、各巻取り箇所3.1~3.4に対して1つの綾振りユニットを有している。
【0033】
綾振り装置8には、各巻取り箇所3.1~3.4に対して、それぞれ1つの別個の糸ガイドローラ9.1~9.4が前置されている。糸ガイドローラ9.1~9.4は、移動可能なローラ支持体10に自由に回転可能に保持されている。糸ガイドローラ9.1~9.4は、糸群21を分離するために働く。糸群21は、運転時にゴデット11.1~11.3における一回の巻掛けによりガイドされている。
【0034】
糸群21の糸を仕掛けかつ糸通しするために、可動のサクション装置1が設けられている。このサクション装置1により、オペレータ(図示せず)は、走行する糸をゴデット11.1~11.3および巻取り箇所3.1~3.4に仕掛けかつ糸通しするためにガイドする。サクション装置1は、この実施例では、サクションガン15として構成されていて、管片14を有している。管片14は、自由端に吸引開口18を形成する。管片14は、接続部材30に保持されていて、屑管路19に接続されている。管片14において吸引流を形成するためには、圧縮空気管路16が接続部材30に接続されている。圧縮空気管路16は、インジェクタ孔(図示せず)を介して管片14のサクション通路に開口している。この実施例では、接続部材30に制御弁17が取り付けられている。制御弁17は、圧縮空気管路16に接続されていて、これにより、供給される圧縮空気の運転圧力、ひいては管片14の吸引出力を変更させることができる。
【0035】
サクション装置1の制御弁17は、この実施例では制御ユニット25にワイヤレスに接続されている。このためには、制御ユニット25が送信器26を有していて、制御弁17が受信器27を有している。
【0036】
サクション装置1は、屑管路19を介して屑容器20に接続されている。圧縮空気管路16は、サクション装置1を圧縮空気源22に接続する。
【0037】
図1に図示した実施例では、巻取り装置2に、糸群21の引出し速度を検出するための測定装置23が対応配置されている。測定装置23は、回転数センサ24.1を有している。回転数センサ24.1は、ゴデット11.1に対向して配置されている。回転数センサ24.1は、制御ユニット25に接続されている。ここでは、ゴデット11.1の回転数から、糸群21の、ゴデット11.1においてガイドされている糸の引出し速度が求められる。
【0038】
代替的または付加的には、第2の回転数センサ24.2が設けられている。第2の回転数センサ24.2は、糸ガイドローラ9.1~9.4のうちの1つの糸ガイドローラに割り当てられている。回転数センサ24.2は、図1では破線で図示されている。この回転数センサ24.2も、制御ユニット25に接続されている。
【0039】
図1に図示した状況では、サクション装置1が、糸群21を巻取り装置2に仕掛けるための、1つの仕掛けステップにある。このためには、サクション装置1が、可動のサクションガン15として構成されている。サクションガン15は、この実施例ではオペレータにより操作される。したがって、糸群21が連続的にサクション装置1により紡糸装置から引き出されることが通常である。ゴデット11.1~11.3への糸群21の仕掛け時に、所望の引出し速度を引き起こすことができるように、回転数センサ24.1を介して、ゴデット11.1の回転数から、制御ユニット25内で糸群21の引出し速度が求められる。引出し速度は、今、サクション装置1においてこのために必要となる吸引流を調節するために使用される。制御弁17により、サクション装置1における運転圧力が高められると、糸群を引き込みかつ導出するために管片14内でより高い吸引作用が生じる。これにより糸群の引出し速度が高められるので、糸群は、実質的にスリップなしにゴデット11.1~11.3において仕掛け可能である。
【0040】
別のプロセスにおいて、または代替的に、複数の糸ガイドローラ9.1~9.4のうちの1つの糸ガイドローラの回転数を回転数センサ24.2により検出し、制御ユニット25内で糸群21の複数の糸のうちの1本の糸の引出し速度を特定する可能性も生じる。この場合も、糸の引出し速度は、サクション装置1において対応する運転圧力調節のために、ひいては特定された引出し速度のための所望の吸引出力を得るために使用される。
【0041】
したがって、個別の仕掛けステップ内で種々異なる引出し速度がサクション装置における運転圧力の調節により設定される。
【0042】
特に、引出し速度の目下の実際状態を正確に検出することができるようにするために、図2には、糸群を仕掛けるための装置の別の実施例が図示されている。図2に示した実施例は、図1に示した実施例とほぼ同一であるので、ここでは差異のみを説明し、その他の点に関しては上述の説明が参照される。
【0043】
図2に図示した実施例では、糸群21の引出し速度を検出するための測定装置23が、サクション装置1に直接に配設されている。サクション装置1の説明については、付加的に図3を参照することができる。
【0044】
図3の図面から判るように、測定装置23は、自由に回転可能に支承された糸ガイドローラ28により形成されている。糸ガイドローラ28は、短い間隔で管片14の吸引開口18の手前に配置されている。糸ガイドローラ28は、保持部29により接続部材30において保持されている。糸ガイドローラ28には、回転数センサ24.2が対応配置されている。回転数センサ24.2は、制御ユニット25に接続されている。制御ユニット25は、同様にサクション装置1の接続部材30に保持されている。制御ユニット25は、制御弁17に直接に接続されている。
【0045】
サクション装置1は、この実施例でも、サクションガンとして構成されている。サクションガンは、手動でも、自動でもガイド可能である。したがって、接続部材30を介して、管片14が屑管路19に接続されている。制御弁17には、圧縮空気管路16が対応配置されているので、吸引流を形成するために、接続部材30内の運転圧力が制御可能である。
【0046】
制御ユニット内に、制御プログラムを保存し実行するためのプロセッサ(図示せず)が設けられている。制御プログラムにより、運転圧力を変更するための複数の仕掛けステップの複数の目標引出し速度が予め設定されている。したがって、制御プログラムによって、糸群の引出し速度が糸群の予め規定された目標引出し速度に、たとえば仕掛け工程の開始時に、引出し速度の実際値-目標値比較に基づいて調節される。実際引出し速度は、糸ガイドローラ28の回転数を介して連続的に検出され、制御ユニット25内で目標引出し速度に適合するように評価される。その限りでは、サクション装置1の吸引作用が所望の引出し速度に合わせて極めて正確に調節される。
【0047】
図2に示した状況では、糸群が糸ガイドローラ9.1~9.4へと分離される。この場合、糸群21の引出し速度は、直接にサクション装置1において、糸ガイドローラ28および回転数センサ24.2により検出される。その限りでは、制御ユニット25および制御弁17により、その都度所望される糸群21の引出し速度が調節される。分離は、サクションガン15のガイドにより、ローラ支持体10の移動と協働して行われる。図2にはこの状況が破線で図示されている。
【0048】
分離が行われた後に、ローラ支持体10は、運転位置に位置固定される。今、サクションガン15は、引渡し位置に位置決めされる。この引渡し位置では、補助装置(図示せず)が糸を巻取り箇所3.1~3.4に仕掛ける。この場合、継続的に糸群の引出し速度が測定され、これにより糸群のその都度所望される目標引出し速度を維持することができる。これに応じてサクション装置内の圧力設定が変化する。
【0049】
図2に図示された実施例では、測定装置23が、糸群21の引出し速度を非接触で測定可能であるように構成される。このためには、図4において別の実施例が図示されている。
【0050】
図4に図示されたサクション装置1の実施例では、測定装置23、制御ユニット25および制御弁17が、サクション装置1に統合されていて1つのユニットを構成している。サクション装置は、この実施例でもサクションガン15として構成されている。管片14の吸引開口18内に走入する糸群の引出し速度を検出するために、容量式センサ装置31が保持部29により管片14の吸引開口18の手前に短い間隔で、つまり接近して保持されている。センサ装置31は、糸群21に対して間隔を置いて配置されていて、これにより糸群における引出し速度を接触することなしに検出することができる。
【0051】
図4に図示したサクション装置1の作用形式は、図3に示したサクション装置と同一である。その限りでは、繰返しを避けるために上述の説明が参照される。
【0052】
図3および図4に図示されたサクション装置1は、例示的である。したがって、このようなサクションガン15も有利には自動的化されて、たとえばロボットアームによりガイドされる。この場合、制御弁17および測定装置23は、ロボット制御装置に接続されていてよい。
【0053】
このようなサクション装置を固定的に構成し、巻取り装置に統合する可能性も同様に生じる。この場合、制御弁17は、図1に破線で図示されているように、圧縮空気源22に割り当てられていてよい。
【0054】
本発明に係る方法ならびに本発明に係る装置は、溶融紡糸プロセスのプロセス開始時にも、溶融紡糸プロセスにおけるプロセス中断後にも使用可能である。したがって、糸群は、紡糸開始の直後にサクション装置により引き取られる。同様に、糸群をプロセス中断後に固定的なサクション装置により引き取る可能性も生じる。この場合に重要であるのは、糸群の引出し速度が吸引作用を調節するために測定されることである。
図1
図2
図3
図4