IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ケイ酸リチウム低温型石英ガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20231114BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20231114BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20231114BHJP
   A61C 5/70 20170101ALN20231114BHJP
   A61C 5/30 20170101ALN20231114BHJP
【FI】
C03C10/04
C03C10/14
C03B32/02
A61C5/70
A61C5/30
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021014801
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2018510104の分割
【原出願日】2016-08-22
(65)【公開番号】P2021066658
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】15182307.7
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15190547.8
(32)【優先日】2015-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ランプ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフラム ホランド
(72)【発明者】
【氏名】マルク ディトマー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル シュバイガー
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219367(JP,A)
【文献】特表2015-504399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0323404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322503(US,A1)
【文献】特開2011-225442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0073563(US,A1)
【文献】国際公開第2014/124879(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/067643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
C03B 32/02
A61C 5/70
A61C 5/30
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用材料としてのケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックの使用であって、前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、2.0から3.5wt%のKOを含み、2.2から3.5の範囲のモル比のSiOとLiOを含み、主な結晶相としてのケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを含み、ここで、前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、少なくとも20wt%の二ケイ酸リチウム結晶を有し、そして/または0.2から28wt%の低温型石英結晶を有する、使用。
【請求項2】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、59.0から79.0wt%のSiOを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、8.0から15.0wt%のLiOを含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、0から9.0wt%のPを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、2.0から8.0wt%の、KO、NaO、RbO、CsO、およびこれらの混合物の群から選択される、一価元素の酸化物Me Oを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、1.0から9.0wt%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびこれらの混合物の群から選択される、二価元素の酸化物MeIIOを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、1.0から6.0wt%のMgOを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、0から8.0wt%の、Al、B、Y、La、Ga、Inおよびこれらの混合物の群から選択される、三価元素の酸化物MeIII を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、1.0から6.0wt%のAlを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、主な結晶相としての二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、少なくとも20wt%の二ケイ酸リチウム結晶を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、0.2から28wt%の低温型石英結晶を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、粉末、顆粒状体、ブランク、または歯修復物の形態で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
歯修復物をコーティングするための、または歯修復物の調製のための、請求項1から13のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックの使用。
【請求項15】
前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、プレスまたは機械加工によって、所望の前記歯修復物の形状にされる、請求項14に記載の歯修復物の調製のための使用。
【請求項16】
前記歯修復物が、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットである、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
歯修復物の調製のための方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックが、プレスまたは機械加工によって、所望の歯修復物の形状にされる、方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックの調製のための方法であって、
(a)核を有する出発ガラスを形成するために、2.0から3.5wt%のKOを含み、2.2から3.5の範囲のモル比のSiOとLiOを含む出発ガラスが400から600℃の温度で熱処理を施され、
(b)前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを形成するために、核を有する前記出発ガラスが700から900℃の温度で熱処理を施される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは歯修復物の調製のために、特に歯科学において使用されるのに適
する、ケイ酸リチウム-低温型石英-ガラスセラミック、さらにはこのガラスセラミック
の調製のための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸リチウムガラスセラミックは、一般に、非常に良好な機械的特性によって特徴付
けられ、この理由で、それらは歯科分野において、またそこで主に歯科クラウンおよび小
さな歯科ブリッジの調製のために、しばらくの間、使用されてきた。
【0003】
米国特許第5,507,981号および米国特許第5,702,514号は、粘性のあ
る状態でプレスすることによって加工されて、歯修復物を形成する、二ケイ酸リチウムガ
ラスセラミックを記載する。しかし、変形可能なルツボの使用が不可欠であり、このため
、加工は非常に高価になる。
【0004】
欧州特許第827941号および欧州特許第916625号は、プレスまたは機械加工
によって、所望の歯修復物の形状にされ得る二ケイ酸リチウムガラスセラミックを開示す
る。
【0005】
欧州特許第1505041号および欧州特許第1688398号は、二ケイ酸リチウム
ガラスセラミックからの歯修復物の調製のための方法を記載する。まず、中間体生成物と
して、主な結晶相としてのメタケイ酸リチウムを有するガラスセラミックが生成され、こ
れは、例えばCAD/CAMプロセスによって、非常に容易に機械加工できる。次いで、
高強度の所望の二ケイ酸リチウムガラスセラミックを形成するために、この中間体生成物
はさらなる熱処理を施される。プロセス中に使用される熱処理は、例えばクリストバライ
トのような、所望でない結晶相の形成が防げられるように、選択されるべきである。
【0006】
国際公開第2013/053864号は、二価の金属酸化物を含み、歯修復物を形成す
るために、ホットプレスさらには機械加工によって加工できる、ケイ酸リチウムガラスセ
ラミックを開示する。
【0007】
主な結晶相としての二ケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としてのアパタイトとを有す
るガラスセラミックが、国際公開第2013/164256号により公知である。これら
のガラスセラミックは、高い化学的安定性によって特徴付けられ、機械加工またはホット
プレスによって所望の歯修復物を形成するように成形できる。
【0008】
米国特許出願公開第2015/0104655号は、結晶化のために選択される組成お
よび温度処理に応じて、結晶相として、二ケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、リン酸
リチウム、クリストバライト、トリディマイト、石英またはリチア輝石を含むことができ
る、ガラスセラミックを記載する。これらのガラスセラミックは、特に酸化ジルコニウム
セラミックに上張りすることが意図されている。
【0009】
しかし、往来の二ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工は、それらの高い強度の
故に、困難を伴ってのみ可能であり、その結果、それは、一般に、使用される工具の大き
な摩耗を伴う。前駆体としての対応するメタケイ酸リチウムガラスセラミックの同様の可
能な機械加工は、ずっと容易である。しかし、これは、機械加工による成形の後、高強度
の二ケイ酸リチウムガラスセラミックによる修復物を生成するために、さらなる熱処理を
まだ必要とする。
【0010】
したがって、容易に機械加工でき、この加工の後、生成した歯修復物に所望の機械特性
を与えるために、さらなる熱処理を必要としない、ケイ酸リチウムガラスセラミックが求
められている。これらのケイ酸リチウムガラスセラミックは、非常に良好な機械的特性だ
けでなく、さらに、それらが、修復歯科用材料に成される高い美的要求もまた満たすよう
に、非常に良好な光学的特性もまた有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,507,981号明細書
【文献】米国特許第5,702,514号明細書
【文献】欧州特許第827941号明細書
【文献】欧州特許第916625号明細書
【文献】欧州特許第1505041号明細書
【文献】欧州特許第1688398号明細書
【文献】国際公開第2013/053864号
【文献】国際公開第2013/164256号
【文献】米国特許出願公開第2015/0104655号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1から14および17に記載のケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセ
ラミックによって達成される。本発明の主題は、また、請求項15、16および17に記
載の出発ガラス、請求項18、19および22に記載の方法、さらには、請求項20およ
び21に記載の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、主な結晶相としてのケ
イ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを含むことを特徴とする。
【0014】
驚くべきことに、本発明によるガラスセラミックは、修復歯科用材料にとってまさに必
要であるような、非常に望ましい機械的および光学的特性の組合せを併せ持つことが示さ
れた。このガラスセラミックは、高強度を有するにもかかわらず、機械加工によって容易
に歯修復物の形状にすることができる。満足すべき強度を達成するために、その後の熱処
理を必要としない。さらに、主な結晶相としてのケイ酸リチウムに加えて、さらなる結晶
相としての低温型石英を提供することによって、非常に良好な光学的特性を、それでもや
はり達成できることは、期待されていなかった。これは、多くのさらなる結晶相は、ケイ
酸リチウムガラスセラミックの光学的特性に悪影響を及ぼすためである。例えば、それら
は、透光性を低下させ得、そのうえ、ガラスセラミックの被着色性能を損ね得、このため
、置き換えられる自然の歯の材料の色を模倣することが、相当に難しくなり得る。
【0015】
本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、特に、59.0から7
9.0、好ましくは64.0から78.0、特に好ましくは64.0から76.0wt%
のSiOを含む。
【0016】
別の実施形態において、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは
、特に68.0から79.0、好ましくは69.0から78.0、特に好ましくは70.
0から76.0wt%のSiOを含む。
【0017】
本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、8.0から15.0、
特に好ましくは9.0から14.0、特に非常に好ましくは10.0から13.5wt%
のLiOを含むことが、さらに好ましい。LiOは、ガラスマトリックスの粘度を下
げ、こうして、所望の相の結晶化を促進すると推測される。
【0018】
好ましいさらなる実施形態において、ガラスセラミックは、0から9.0、好ましくは
2.0から6.0、特に好ましくは3.0から5.0wt%のPを含む。P
は、核生成剤として働くと推測される。
【0019】
ガラスセラミックは、1.0から8.0、特に2.0から7.0wt%の、KO、N
O、RbO、CsO、およびこれらの混合物の群から選択される、一価元素の酸
化物Me Oを含むこともまた好ましい。
【0020】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、指定された量で、次の一価元素の酸化物Me
Oの少なくとも1つ、特に全てを含む。
【化1】
【0021】
特に好ましい実施形態において、本発明によるガラスセラミックは、0から5.0、好
ましくは1.0から4.0、特に好ましくは2.0から3.5wt%のKOを含む。
【0022】
さらに、ガラスセラミックが、1.0から9.0、好ましくは2.0から8.0、特に
好ましくは3.0から7.0wt%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびこれらの
混合物の群から選択される二価元素の酸化物MeIIOを含むことが好ましい。
【0023】
好ましいさらなる実施形態において、ガラスセラミックは、2.0wt%未満のBaO
を含む。ガラスセラミックは、特に、BaOを実質的に含まない。
【0024】
好ましくは、ガラスセラミックは、指定された量で、次の二価元素の酸化物MeII
の、少なくとも1つ、特に全てを含む。
【化2】
【0025】
特に好ましい実施形態において、本発明によるガラスセラミックは、1.0から6.0
、特に1.5から6.0、好ましくは2.0から5.5、特に好ましくは3.1から5.
5、特に非常に好ましくは3.4から5.0wt%のMgOを含む。
【0026】
0から8.0、好ましくは1.0から7.0、特に好ましくは2.0から6.5wt%
の、Al、B、Y、La、Ga、Inおよびこれ
らの混合物の群から選択される三価元素の酸化物MeIII を含むガラスセラミッ
クが、さらに好ましい。
【0027】
ガラスセラミックは、特に好ましくは、指定された量で、次の三価元素の酸化物Me
II の少なくとも1つ、特に全てを含む。
【化3】
【0028】
特に好ましい実施形態において、本発明によるガラスセラミックは、1.0から6.0
、好ましくは2.0から5.0wt%のAlを含む。
【0029】
さらに、0から10.0、特に好ましくは0から8.0wt%の、ZrO、TiO
、SnO、CeO、GeOおよびこれらの混合物の群から選択される四価元素の酸
化物MeIVを含むガラスセラミックが、好ましい。
【0030】
ガラスセラミックは、特に好ましくは、指定された量で、次の四価元素の酸化物Me
の少なくとも1つ、特に全てを含む。
【化4】
【0031】
さらなる実施形態において、ガラスセラミックは、0から8.0、好ましくは0から6
.0wt%の、V、Ta、Nbおよびこれらの混合物の群から選択さ
れる五価元素の酸化物Me を含む。
【0032】
ガラスセラミックは、特に好ましくは、指定された量で、次の五価元素の酸化物Me
の少なくとも1つ、特に全てを含む。
【化5】
【0033】
さらなる実施形態において、ガラスセラミックは、0から5.0、好ましくは0から4
.0wt%の、WO、MoOおよびこれらの混合物の群から選択される六価元素の酸
化物MeVIを含む。
【0034】
ガラスセラミックは、特に好ましくは、指定された量で、次の酸化物MeVIの少
なくとも1つ、特に全てを含む。
【化6】
【0035】
さらなる実施形態において、本発明によるガラスセラミックは、0から1.0、特に0
から0.5wt%のフッ素を含む。
【0036】
指定された量で、次の成分の少なくとも1つ、好ましくは全てを、含むガラスセラミッ
クが、特に好ましい。
【化7】

ここで、Me O、MeIIO、MeIII 、MeIV、Me 、お
よびMeVIは、上で指定された意味を有する。
【0037】
特に好ましいさらなる実施形態において、ガラスセラミックは、指定された量で、次の
成分の少なくとも1つ、好ましくは全てを含む。
【化8】
【0038】
上で挙げられた成分のいくつかは、着色剤および/または蛍光剤の役割を果たすことが
できる。本発明によるガラスセラミックは、また、その上に、さらなる着色剤および/ま
たは蛍光剤を含むこともできる。例えば、これらは、BiもしくはBiから
、特に、Mn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、EuおよびYbの酸化物の
ような、d-ブロックおよびf-ブロック元素のさらなる無機顔料および/または酸化物
から選択できる。これらの着色剤および蛍光剤の助けで、特に自然の歯の材料の、所望の
光学的特性を模倣するための、ガラスセラミックの簡単な着色が可能である。さらなる結
晶相として存在する低温型石英にもかかわらず、これが問題なく可能であることは驚くべ
きことである。
【0039】
ガラスセラミックの好ましい実施形態において、SiOのLiOに対するモル比は
、2.2から4.1、好ましくは2.2から3.8、特に好ましくは2.2から3.5の
範囲にある。主な結晶相としてのケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英
とを有する本発明によるガラスセラミックの調製が、これらの広い範囲内で達成されるこ
とは、驚くべきことである。
【0040】
用語「主な結晶相」は、ガラスセラミックに存在する全ての結晶相の中で、最大の質量
割合を有する結晶相を指す。結晶相の質量は、特にリートベルト法を使用して決定される
。リートベルト法による結晶相の定量分析のための適切な方法は、例えば、M. Dittmer
の博士論文「Glasses and glass ceramics in the MgO-Al2O3-SiO2 system with
ZrO2 as nucleating agent」、University of Jena、2011年に記載されてい
る。
【0041】
本発明によるガラスセラミックは、主な結晶相としての二ケイ酸リチウムまたはメタケ
イ酸リチウムを含むことが好ましい。特に好ましい実施形態において、本発明によるガラ
スセラミックは、主な結晶相としての二ケイ酸リチウムを含み、その理由は、このガラス
セラミックが、望ましい特性の特に利点のある組合せを有するためである。
【0042】
主な結晶相としてのメタケイ酸リチウムを有する本発明によるガラスセラミックの場合
、ガラスセラミックが、低温型石英に加えて、さらなる結晶相としての二ケイ酸リチウム
も含むことが好ましい。
【0043】
本発明によるガラスセラミックは、少なくとも20wt%、好ましくは25から55w
t%、特に好ましくは30から55wt%の二ケイ酸リチウム結晶を含むことが好ましい
【0044】
本発明によるガラスセラミックは、0.2から28wt%、特に好ましくは0.5から
25wt%の低温型石英結晶を含むことが、さらに好ましい。
【0045】
本発明によるガラスセラミックは、ケイ酸リチウムおよび低温型石英に加えて、その上
に、さらなる結晶相を、例えば、アパタイト、セシウムアルミノシリケート、および、特
にリン酸リチウムを、含むことができる。しかし、クリストバライトの量は、できるだけ
少量であるべきであり、特に、1.0wt%未満であるべきである。本発明によるガラス
セラミックがクリストバライトを実質的に含まないことが、特に好ましい。
【0046】
形成される結晶相の種類および特に量は、出発ガラスの組成、さらには、出発ガラスか
らガラスセラミックを調製するために使用される熱処理によって制御できる。実施例は、
出発ガラスの組成および使用される熱処理における変化に関して、これを例示する。
【0047】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも200MPa、特に好ましくは250から
460MPaの大きな2軸破壊強さを有する。2軸破壊強さは、ISO 6872(2008年
)(3球上ピストン試験)に従って決定された。
【0048】
この大きな破壊強さにもかかわらず、本発明によるガラスセラミックは、ガラスセラミ
ックを例えば歯修復物の形状にするために、コンピュータ支援のフライス削りおよび研削
装置によって容易に素早く機械加工できることは、特に驚くべきである。
【0049】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは9.5から14.0・10-6-1
熱膨張係数(CTE)(100から500℃の範囲で測定される)を有する。CTEは、
ISO 6872(2008年)に従って決定される。熱膨張係数は、特に、ガラスセラミック
に存在する結晶相の種類と量、さらにはガラスセラミックの化学組成によって、所望の値
に調節される。
【0050】
ガラスセラミックの透光性は、British Standard BS 5612によるコントラスト値(
CR値)の形で決定され、このコントラスト値は、好ましくは40から92であった。
【0051】
本発明によるガラスセラミックの場合に存在する、特性の特定の組合せは、歯科用材料
として、特に歯修復物の調製のための材料として、それが使用されることまで可能にする
【0052】
本発明は、さらに、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを熱処
理によってそれから調製できる、対応する組成を有する様々な前駆体に関する。これらの
前駆体は、対応する組成を有する出発ガラス、および、対応する組成を有し、核を有する
出発ガラスである。用語「対応する組成」は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同
じ成分を、同じ量で含むことを意味し、この場合、ガラスおよびガラスセラミックでは慣
例であるように、フッ素を除く成分は、酸化物として計算される。
【0053】
したがって、本発明は、また、本発明によるニケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラ
ミックの成分を含む出発ガラスにも関する。
【0054】
したがって、本発明による出発ガラスは、主な結晶相としてのケイ酸リチウムと、さら
なる結晶相としての低温型石英とを有する本発明によるガラスセラミックを形成するのに
必要である、適切な量のSiOおよびLiOを特に含む。さらに、出発ガラスは、ま
た、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックに対して上で指定された
ような、さらに他の成分も含むことができる。本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英
ガラスセラミックの成分として好ましいと指定されたこれらの全ての実施形態は、また、
出発ガラスの成分としても好ましい。
【0055】
本発明は、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/または低温型石英の結晶化
のための核を含む、出発ガラスにも関する。
【0056】
核を有するさらなる前駆体出発ガラスは、最初に、出発ガラスの熱処理によって生成さ
れ得る。次いで、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、このさ
らなる前駆体の熱処理によって生成され得る。核を有する出発ガラスの熱処理によって、
本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを形成することが、好ましい
【0057】
メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/または低温型石英の結晶化のための核
を有する出発ガラスを生成するために、出発ガラスに、400から600℃、特に450
から550℃の温度で、好ましくは5から120分、特に10から60分間、熱処理を施
すことが好ましい。
【0058】
ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを調製するために、核を有する出発ガラ
スに、700から900℃の温度で、特に1から120分、好ましくは5から120分、
特に好ましくは10から60分間、熱処理を施すことがさらに好ましい。ケイ酸リチウム
-低温型石英ガラスセラミックを調製するために、核を有する出発ガラスの熱処理は、特
に好ましくは、700から880℃、特に750から850℃で、好ましくは5から12
0分、特に好ましくは10から60分間、行われる。
【0059】
本発明は、また、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックの調製の
ための方法であって、出発ガラス、または核を有する出発ガラスは、700から900℃
の温度で、特に1から120分、好ましくは5から120分、特に好ましくは10から6
0分間の少なくとも1回の熱処理を施される、方法にも関する。
【0060】
出発ガラス、および核を有する出発ガラスは、例えば、固体ガラスブランク、粉末コン
パクトまたは粉末の形態で、少なくとも1回の熱処理を施され得る。
【0061】
本発明による方法において行われる少なくとも1回の熱処理は、また、本発明による出
発ガラス、または本発明による核を含む出発ガラスのホットプレスまたは焼結-付加の間
に行うこともできる。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、
(a)核を有する出発ガラスを形成するための、400から600℃の温度での、出発
ガラスの熱処理、および
(b)ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを形成するための、700から9
00℃の温度での、核を有する出発ガラスの熱処理
を含む。
【0063】
(a)および(b)で行われる熱処理の継続時間は、特に5から120分、好ましくは
10から60分である。
【0064】
出発ガラスを調製するために、手順は、特に、カーボネート、酸化物、ホスフェートお
よびフッ化物のような、適切な出発材料の混合物を特に1300から1600℃の温度で
2から10時間、溶融させることである。特に高い均一性を達成するために、得られたガ
ラス溶融物を、顆粒状ガラス材料を形成するように、水に注入し、次いで、得られた顆粒
状体を再び溶融させる。
【0065】
次に、溶融物は、出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリス
ブランクを生成するように、型に注入され得る。
【0066】
顆粒状体を調製するために、溶融物を水に再び投入することもまた可能である。この顆
粒状体は、すり砕き、および任意選択でさらなる成分(例えば着色剤および蛍光剤)を添
加した後、ブランクを、いわゆる粉末コンパクトを、形成するために、プレスされ得る。
【0067】
最後に、出発ガラスは、また顆粒化の後、粉末を形成するために加工されてもよい。
【0068】
次いで、例えば、固体ガラスブランク、粉末コンパクトの形態または粉末の形態の出発
ガラスは、少なくとも1回の熱処理を施される。メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム
および/または低温型石英の結晶を形成するのに適する核を有する本発明による出発ガラ
スを調製するために、1回目の熱処理が最初に行われることが好ましい。次いで、ケイ酸
リチウム、特に二ケイ酸リチウム、および低温型石英の結晶化をもたらすために、核を有
するガラスは、より高い温度での少なくとも1回のさらなる熱処理を通常施される。
【0069】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、焼結されていない、部分
的に焼結された、または高密度に焼結された形態の、特に、粉末、顆粒状体または任意の
形状と大きさのブランク、例えば、板状体、立方体もしくは円柱のようなモノリスブラン
ク、または粉末コンパクトの形態で存在する。それらは、これらの形態で、容易にさらに
加工できる。しかし、それらは、また、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセ
ット、またはアバットメントのような、歯修復物の形態でも存在できる。
【0070】
ブリッジ、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセット、またはアバットメン
トのような、歯修復物は、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスから
調製され得る。したがって、本発明は、また、歯修復物の調製のための、それらの使用に
も関する。ガラスセラミックまたはガラスは、プレスまたは機械加工によって、所望の歯
修復物の形状にされることが好ましい。
【0071】
プレスは、通常、上昇された圧力下で、上昇された温度で行われる。プレスは、700
から1200℃の温度で行われることが好ましい。プレスを2から10barの圧力で行
うことが、さらに好ましい。プレスの間、形状の所望の変化が、使用される材料の粘性流
れによって達成される。本発明による出発ガラス、特に、本発明による核を有する出発ガ
ラス、および本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、プレスに使
用できる。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、例えば、焼結されていない、
部分的に焼結された、または高密度に焼結された形態の、特に、任意の形状と大きさのブ
ランク、例えば固体ブランク、または粉末コンパクトの形態で使用され得る。
【0072】
機械加工は、通常、材料を除去するプロセスによって、特にフライス削りおよび/また
は研削によって行われる。機械加工が、CAD/CAMプロセス中に行われることが、特
に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラス、および本発
明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックは、機械加工に使用できる。本発
明によるガラスおよびガラスセラミックは、例えば、焼結されていない、部分的に焼結さ
れた、または高密度に焼結された形態の、特に、ブランク、例えば固体ブランク、または
粉末コンパクトの形態で使用できる。本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセ
ラミックが、好ましくは、機械加工に使用される。
【0073】
例えばプレスまたは機械加工によって、所望の通り成形された歯修復物の調製の後、そ
れは、使用される例えば多孔質粉末コンパクトの、多孔度を低下させるために、さらに熱
処理されてもよい。
【0074】
しかし、本発明によるガラスセラミック、および本発明によるガラスは、また、例えば
セラミックおよびガラスセラミックのための、コーティング材料としても適切である。し
たがって、本発明は、また、特にセラミックおよびガラスセラミックをコーティングする
ための、本発明によるガラス、または本発明によるガラスセラミックの使用も対象とする
【0075】
本発明は、また、セラミック、金属、金属合金およびガラスセラミックをコーティング
するための方法にも関し、この方法では、本発明によるガラスセラミック、または本発明
によるガラスが、セラミックまたはガラスセラミックに付けられ、上昇された温度に曝さ
れる。
【0076】
これは、特に、焼結-付加によって、または、CAD/CAMによって調製された上部
構造体を適切なガラスはんだまたは接着剤を使用して接合することによって、好ましくは
プレス-付加することによって行うことができる。焼結-付加の場合、ガラスセラミック
またはガラスが、コーティングされる材料に、例えばセラミックまたはガラスセラミック
に、例えば粉末として、通常の方法で、付けられ、次いで、上昇された温度で焼結される
。好ましいプレス-付加の場合、本発明によるガラスセラミック、または本発明によるガ
ラスが、例えば700から1200℃の上昇された温度で、例えば2から10barの圧
力を加えて、粉末コンパクトまたはモノリスブランクの形態に、プレス付加される。この
ために、特に、欧州特許出願公開第231773号に記載された方法、およびそこに開示
されたプレス炉を使用できる。適切な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent
AG(リヒテンシュタイン)によるProgramat EP 5000である。
【0077】
コーティングプロセスが終わった後、主な結晶相としてのケイ酸リチウム、特に二ケイ
酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを有する本発明によるガラスセラミ
ックが存在することが好ましく、その理由は、このようなガラスセラミックが特に良好な
特性を有するためである。
【0078】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上記の特性の故に、これら
は、特に、歯科学における使用に適している。したがって、また、本発明の主題は、特に
歯修復物の調製のための、歯科用材料としての、または、歯修復物、例えば、クラウン、
ブリッジおよびアバットメントのためのコーティング材料としての、本発明によるガラス
セラミックまたは本発明によるガラスの使用でもある。
【0079】
本発明は、非限定的実施例に関して、より詳細に下で説明される。
【実施例
【0080】
実施例1から34-組成および結晶相
表Iに指定された組成を有する、全部で34の本発明によるガラスおよびガラスセラミ
ックを、対応する出発ガラスを溶融させること、さらには、それに続く、制御された核生
成および結晶化のための熱処理によって調製した。
【0081】
制御された核生成および制御された結晶化のために使用された熱処理もまた、表Iに指
定されている。次の意味が適用される。
ガラス転移温度、DSCによって決定
およびt 出発ガラスを溶融させるために使用された、温度および時間
KbおよびtKb 出発ガラスの核生成のために使用された、温度および時間
およびt 結晶化のために使用された、温度および時間
pressおよびtpress ホットプレスによる結晶化に使用された、温度お
よび時間
CR値 British Standard BS 5612による、ガラスセラミックのコントラスト値
であり、
装置:CM-3700d分光計(Konica-Minolta)
測定パラメータ:
測定面積:7mm×5mm
測定方式:反射率/反射
測定範囲:400nm~700nm
試料の大きさ:
直径:15~20mm
厚さ:2mm±0.025mm
面の平行性:±0.05mm
表面粗さ:約18μm
を用いて決定。
CTE ISO 6872(2008年)によるガラスセラミックの熱膨張係数、100か
ら500℃の範囲で測定
σBiax 2軸破壊強さ、ISO 6872(2008年)に従って測定
【0082】
結晶相の量は、リートベルト法によって決定した。このために、内部標準としてのAl
(製品名:タイミクロンTM-DAR、大明化学工業(株)(日本)による)と、
50wt%のガラスセラミック対50wt%のAlの比率で混合された、個々のガ
ラスセラミックの粉末を使用した。この混合物を、できるだけ良好な完全な混合を達成す
るために、アセトンでスラリーにした。次いで、混合物を約80℃で乾燥した。次に、B
rukerによるD8 Advance回折計によって、CuKα線および0.014°
2θのステップサイズを使用して、10から100°2θの範囲のディフラクトグラムを
得た。次いで、このディフラクトグラムを、BrukerによるTOPASソフトウェア
により評価し、相の割合を決定した。全てのディフラクトグラムで、LiPO晶子サ
イズに対する約30nmの下限を使用した。
【0083】
本発明によるガラスおよびガラスセラミックを生成するために、100から200gの
範囲の出発ガラスを、通例の原材料から、最初に、1500℃または1400℃で1から
3時間、溶融させたが、ここで、溶融は、泡または筋の形成なしに、非常に容易に可能で
あった。出発ガラスを水に注入することによって、ガラスフリットを調製し、次いで、フ
リットを、均一化のために、1500℃または1400℃で1時間、再度溶融させた。
【0084】
460から550℃の温度での出発ガラスの1回目の熱処理により、核を有するガラス
が形成された。760から880℃でのさらなる熱処理の結果として、これらの核を含む
ガラスは、結晶化して、X線回折試験によって確証されたように、主な結晶相としてのケ
イ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを有するガラスセラミックを形成
した。こうして、本発明によるケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを得た。
【0085】
A)固体ガラスブロック
【0086】
実施例1~26、28および31~34において、ガラスセラミックを、固体ガラスブ
ロックから調製した。このために、得られたガラス顆粒状体を、Tの温度で、tの時
間、再び溶融させた。次いで、得られた出発ガラス溶融物を、固体ガラスブロックを生成
するために、黒鉛型に注入した。次に、これらのガラスモノリスを、TKbの温度で、t
Kbの時間、応力緩和させ、これによって、核生成を起こすことができた。次いで、核を
含む出発ガラスを、Tの温度に、tの時間、加熱した。室温でのX線回折試験によっ
て確証できたように、主な結晶相としての二ケイ酸リチウムと、さらなる相としての低温
型石英とを有する本発明によるガラスセラミックが、これによって形成された。
【0087】
この方法での変形では、二ケイ酸リチウムおよび低温型石英の体積結晶化が起こったと
推測される。
【0088】
B)粉末コンパクト
【0089】
実施例27では、ガラスセラミックを、粉末コンパクトから調製した。このために、得
られたガラス顆粒状体を、酸化ジルコニウムミルで、<90μmの粒径に、すり砕いた。
次いで、約4gのこの粉末を、プレスして、円柱ブランクを形成し、焼結炉(Progr
amat(登録商標)、Ivoclar Vivadent AGによる)において、T
の温度、tの保持時間で、焼結して、高密度のガラスセラミック体を形成した。室温
でのX線回折試験によって確証できたように、主な結晶相としてのメタケイ酸リチウム、
ならびにさらなる相としての二ケイ酸リチウムおよび低温型石英を有する、本発明による
ガラスセラミックが、焼結によって形成された。
【0090】
C)A)によるブロックからの歯修復物の調製
【0091】
実施例1~26、28および31~34により生成されたガラスセラミックブロックを
、CAD/CAM装置で機械加工して、所望の歯修復物、例えばクラウンを形成した。こ
のために、結晶化したブロックを、適切な支持具で取り付け、次いで、Sirona D
ental GmbH(ドイツ)によるinLab MC XL研削装置で、所望の形状
にした。本発明によるブランクの加工のために、市販のe.max CADブロック(I
voclar Vivadent(リヒテンシュタイン))の場合と同じ研削パラメータ
を使用することが可能であった。
【0092】
D)ガラスセラミックのホットプレス
【0093】
pressおよびtpressが指定されている実施例19では、ガラスセラミック
を、ホットプレスによって固体ガラスブロックから調製した。
【0094】
このために、得られたガラス顆粒状体を、Tの温度で、tの時間、再び溶融させた
。次いで、出発ガラスの得られた溶融物を、棒を生成するために、予め加熱されたスチー
ル型に注入した。次に、これらのモノリスガラス棒を、TKbの温度で、tKbの時間、
応力緩和させ、これによって、核生成を起こすことができた。次いで、棒を、鋸で切断し
て、約4から6gの質量を有する小円柱を形成した。次に、これらの小円柱を、Tの温
度で、tの時間、結晶化させた。次いで、核生成し、結晶化した円柱を、Tpress
の温度で、tpressの保持時間、ホットプレス炉でプレスして、成形体を形成した。
室温での、形成された成形体のX線回折試験によって確証できたように、主な結晶相とし
ての二ケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを有する本発明によるガ
ラスセラミックが、ホットプレスの後、形成された。
【0095】
E)核生成したガラスの焼結
【0096】
実施例29では、出発ガラスを、1500℃で2時間、溶融させ、次いで、水中で急冷
した。次に、得られたガラス顆粒状体を、TKbの温度で、tKbの時間、核生成させた
。核生成した出発ガラスを細かく砕いて、20μmの平均粒径を有する粉末を形成した。
熱膨張を決定し、光学的特性を決定するために、この核生成したガラス粉末から、試験片
を調製して、Tの温度で、tの時間、結晶化させ、高密度に焼結した。室温での、形
成された成形体のX線回折試験によって確証できたように、高密度に焼結した後、主な結
晶相としての二ケイ酸リチウムと、さらなる追加の相としての低温型石英とを有する本発
明によるガラスセラミックが、形成された。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
主な結晶相としてのケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としての低温型石英とを含むケイ
酸リチウム-低温型石英ガラスセラミック。
(項目2)
59.0から79.0、好ましくは64.0から78.0、特に好ましくは64.0から
76.0wt%のSiO、または68.0から79.0、好ましくは69.0から78
.0、特に好ましくは70.0から76.0wt%のSiOを含む、項目1に記載のガ
ラスセラミック。
(項目3)
8.0から15.0、好ましくは9.0から14.0、特に好ましくは10.0から13
.5wt%のLiOを含む、項目1または2に記載のガラスセラミック。
(項目4)
0から9.0、好ましくは2.0から6.0、特に好ましくは3.0から5.0wt%の
を含む、項目1から3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目5)
1.0から8.0、好ましくは2.0から7.0wt%の、KO、NaO、Rb
、CsO、およびこれらの混合物の群から選択される、一価元素の酸化物Me Oを
含む、項目1から4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目6)
0から5.0、好ましくは1.0から4.0、特に好ましくは2.0から3.5wt%の
Oを含む、項目1から5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目7)
1.0から9.0、好ましくは2.0から8.0、特に好ましくは3.0から7.0wt
%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびこれらの混合物の群から選択される、二価
元素の酸化物MeIIOを含む、項目1から6のいずれか一項に記載のガラスセラミック

(項目8)
1.0から6.0、特に1.5から6.0、好ましくは2.0から5.5、特に好ましく
は3.1から5.5、特に非常に好ましくは3.4から5.0wt%のMgOを含む、項
目1から7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目9)
0から8.0、好ましくは1.0から7.0、特に好ましくは2.0から6.5wt%の
、Al、B、Y、La、Ga、Inおよびこれら
の混合物の群から選択される、三価元素の酸化物MeIII を含む、項目1から8
のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目10)
1.0から6.0、好ましくは2.0から5.0wt%のAlを含む、項目1から
9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目11)
SiOとLiOを、2.2から4.1、好ましくは2.2から3.8、特に好ましく
は2.2から3.5の範囲のモル比で含む、項目1から10のいずれか一項に記載のガラ
スセラミック。
(項目12)
主な結晶相としての二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウム、好ましくは主な結晶相
としての二ケイ酸リチウムを含む、項目1から11のいずれか一項に記載のガラスセラミ
ック。
(項目13)
少なくとも20wt%、好ましくは25から55wt%、特に好ましくは30から55w
t%の二ケイ酸リチウム結晶を有する、項目1から12のいずれか一項に記載のガラスセ
ラミック。
(項目14)
0.2から28wt%、好ましくは0.2から25wt%の低温型石英結晶を有する、項
目1から13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目15)
項目1から11のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含む出発ガラス。
(項目16)
メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/または低温型石英の結晶化のための核を
含む、項目14に記載の出発ガラス。
(項目17)
前記ガラスセラミックおよび出発材料が、粉末、顆粒状体、ブランクまたは歯修復物の形
態で存在する、項目1から14のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または項目1
5もしくは16に記載の出発ガラス。
(項目18)
項目1から14のいずれか一項に記載のガラスセラミックの調製のための方法であって、
項目15または16に記載の出発ガラスが、700°から900℃の範囲で少なくとも1
回の熱処理を施される、方法。
(項目19)
(a)核を有する前記出発ガラスを形成するために、前記出発ガラスが400から60
0℃の温度で熱処理を施され、
(b)前記ケイ酸リチウム-低温型石英ガラスセラミックを形成するために、核を有す
る前記出発ガラスが700から900℃の温度で熱処理を施される、
項目18に記載の方法。
(項目20)
好ましくは歯修復物をコーティングするための、特に好ましくは歯修復物の調製のための
、歯科用材料としての、項目1から14もしくは17のいずれか一項に記載のガラスセラ
ミックの、または項目15、16もしくは17に記載の出発ガラスの使用。
(項目21)
前記ガラスセラミックが、プレスまたは機械加工によって、所望の前記歯修復物、特に、
ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまた
はファセットの形状にされる、項目20に記載の歯修復物の調製のための使用。
(項目22)
歯修復物、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウ
ン、クラウンまたはファセットの調製のための方法であって、項目1から14のいずれか
一項に記載のガラスセラミックが、特にCAD/CAMプロセス中に、プレスまたは機械
加工によって、所望の歯修復物の形状にされる、方法。