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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】排気管
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20231114BHJP
   F16L 23/20 20060101ALI20231114BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20231114BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F01N13/08 E
F16L23/20
F16J15/06 N
F16J15/06 P
F16J15/08 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021088421
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181467
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平松 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/127531(WO,A1)
【文献】特開平08-260951(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
F16L 23/20
F16J 15/06
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排ガスの流路を形成する排気管であって、
第1開口が形成された第1端部と、
前記第1端部に設けられる第1フランジ部と、
前記第1端部に設けられ、前記第1開口に沿って延びる細長い部材であるカバー部材と、を備え、
前記第1フランジ部は、前記排気管の前記第1端部に接続される他の排気管の第2端部に設けられた第2フランジ部に締結されるよう構成されており、
前記カバー部材は、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とが締結された際、前記第1端部と前記第2端部とにより挟持される挟持部と、
前記排気管の内周面における前記第1開口の周辺の部分を覆う内周部と、を有し、
前記排気管は、前記第1開口の中心軸に沿って突出するように前記第1端部に設けられた部位であって、前記第1開口に隣接すると共に、前記第1開口を囲む部位である突出部をさらに備え、
前記挟持部は、前記突出部の頂部に位置する頂面と前記第2端部とにより挟持され、
前記カバー部材は、前記突出部の外周面を覆う外周部をさらに有し、
前記カバー部材は、圧入により前記突出部に取り付けられ、
前記内周部は、前記排気管の前記内周面の少なくとも一部に当接する
排気管。
【請求項2】
請求項に記載の排気管であって、
前記カバー部材の前記内周部における前記挟持部の反対側の端部には、前記排気管の内周面から離れる方向に曲がっている先端部が設けられている
排気管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気管であって、
前記排気管の内周面には、少なくとも1つの凹部が設けられており、
前記内周部には、前記排気管の内周面に向かって突出し、該内周面に形成された前記少なくとも1つの凹部に係合するよう構成された少なくとも1つの凸部が設けられている
排気管。
【請求項4】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の排気管であって、
前記カバー部材は、リング状の部材であり、前記第1開口を周回するように前記第1端部に設けられるよう構成されている
排気管。
【請求項5】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の排気管であって、
前記カバー部材は、第3端部から第4端部にわたって延びるリング状に湾曲した部材であり、前記第3端部と前記第4端部とが隙間を開けて対面するように前記第1端部に設けられるよう構成されている
排気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンの過給機等に用いられる部品は、高温の排ガスに晒されるため耐高温酸化性が求められると共に、加熱と冷却とが繰り返し発生するため耐繰返し酸化性も求められる。さらに、近年では、排ガス規制の厳格化に対応するため排ガスが高温になる傾向があり、今後、このような部品には、高温環境への耐性がより一層求められると考えられる。
【0003】
特に、過給機の下流側では排ガスの偏流が生じ易い。このため、特許文献1に記載されているような、過給機の下流側の排気管におけるVクランプにより締結される部分には、偏流した排ガスの熱により局所的な損傷が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-59461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、従来、高温環境への耐性を向上させるため、部品の材料の変更等が検討されてきた。しかし、耐熱性の高い材料を用いることにより、形状の加工、溶接等が困難になったり、コストが増加したりする恐れがある。
【0006】
特に、上述したVクランプにより締結される排気管のフランジは、特殊な形状であるため、限られた方法でしか形状を加工できない。このため、排気管の材料の変更によりフランジの形状の加工方法がさらに制限されると、排気管の製造が非常に困難になるおそれがある。
【0007】
また、部分的に部品の材料を変更するのが困難な場合があるが、このような場合には、部品の一部が高温による損傷を受けるにも関わらず部品全体の材料を変更せざるを得なくなり、その結果、必要以上にコストが上昇する。
【0008】
本開示の一態様では、排気管の耐熱性を効果的に高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、車両の排ガスの流路を形成する排気管であって、第1端部と、第1フランジ部と、カバー部材と、を備える。第1端部は、第1開口が形成される。第1フランジ部は、第1端部に設けられる。カバー部材は、第1端部に設けられる。第1フランジ部は、排気管の第1端部に接続される他の排気管の第2端部に設けられた第2フランジ部に締結されるよう構成されている。カバー部材は、挟持部と、内周部と、を有する。挟持部は、第1フランジ部と第2フランジ部とが締結された際、第1端部と第2端部とにより挟持される。内周部は、排気管の内周面における第1開口に隣接する部分を覆う。
【0010】
上記構成によれば、カバー部材により排気管の内周面における第1開口の付近の部分を局所的に覆うことができ、該部分に直接排ガスが当るのを抑制できる。このため、排気管を構成する材料を耐熱性がより高い材料に変更しなくても、排ガスの熱による損傷を受けやすい部分を保護することができ、排気管の材料の変更により、鋭敏化や製造コストの上昇等を招くのを回避できる。したがって、排気管の耐熱性を効果的に高めることができる。
【0011】
本開示の一態様は、第1開口の中心軸に沿って突出するように第1端部に設けられた部位であって、第1開口に隣接すると共に、第1開口を囲む部位である突出部をさらに備えてもよい。挟持部は、突出部の頂部に位置する頂面と第2端部とにより挟持されてもよい。カバー部材は、突出部の外周面を覆う外周部をさらに有してもよい。
【0012】
上記構成によれば、突出部に嵌入させることでカバー部材を第1端部に設けることができるため、カバー部材の熱伸びを吸収できる。このため、熱伸びによりカバー部材が排気管の内周面から離れるのを抑制でき、耐久性が向上する。
【0013】
本開示の一態様では、カバー部材の内周部における挟持部の反対側の端部には、排気管の内周面から離れる方向に曲がっている先端部が設けられていてもよい。
上記構成によれば、カバー部材を排気管の第1端部に設ける作業が容易になる。また、カバー部材を第1端部に設ける際、カバー部材や第1端部に損傷が生じるのを抑制できる。
【0014】
本開示の一態様では、排気管の内周面には、少なくとも1つの凹部が設けられていてもよい。内周部には、排気管の内周面に向かって突出し、内周面に形成された少なくとも1つの凹部に係合するよう構成された少なくとも1つの凸部が設けられていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、排気管の第1端部に設けられたカバー部材がずれるのを抑制できる。
本開示の一態様では、カバー部材は、リング状の部材であり、第1開口を周回するように第1端部に設けられるよう構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、排気管の内周面における第1開口の付近の部分を、広範囲にわたってカバー部材により覆うことができる。
本開示の一態様では、カバー部材は、第3端部から第4端部にわたって延びるリング状に湾曲した部材であり、第3端部と第4端部とが隙間を開けて対面するように第1端部に設けられるよう構成されていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1端部に設けられたカバー部材の第3端部と第4端部との間には隙間が形成されているため、該隙間によりカバー部材の熱伸びを吸収できる。このため、熱伸びによりカバー部材が排気管の内周面から離れるのを抑制でき、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】締結された第1及び第2排気管の第1及び第2端部における、中心軸に沿った断面図である。
図2】第1排気管の第1端部に設けられたカバー部材における、周方向に直交する断面図である。
図3】カバー部材の斜視図である。
図4】第1排気管の第1端部に設けられた変形例1のカバー部材における、周方向に直交する断面図である。
図5】第1排気管の第1端部に設けられた変形例2のカバー部材における、周方向に直交する断面図である。
図6】第1排気管の第1端部に設けられた変形例3のカバー部材における、周方向に直交する断面図である。
図7】第1排気管の第1端部に設けられた変形例4のカバー部材における、周方向に直交する断面図である。
図8】変形例5のカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0020】
[1.第1排気管の構成]
本実施形態の第1排気管1は、車両のエンジンからの排ガスの流路を構成する(図1、2参照)。具体的には、第1排気管1は、ターボチャージャーからの排ガスを排出する第2排気管3の下流側に、Vクランプ5により締結される。また、第1排気管1は、排ガスを浄化する触媒コンバータを収容するよう構成される。
【0021】
第1、第2排気管1、3は、一例として、耐熱性を有するオーステナイト系の鋼材により構成されていても良い。しかし、第1、第2排気管1、3は、オーステナイト系の鋼材に限らず、耐熱性を有する他の鋼材により構成されていても良い。また、第2排気管3は、第1排気管1を構成する材料よりも高い耐熱性を有する材料により構成されていても良い。
【0022】
第1排気管1は、第1端部10と、第1開口11と、第1フランジ部12と、カバー部材2とを備える。
第1開口11は、第1排気管1の第1端部10に位置する円形の開口である。第1開口11は、第1排気管1における排ガスの流れ方向の上流側に位置し、第2排気管3に接続される。なお、第1開口11は、円形に限らず、様々な形状であっても良い。以後、第1開口11の中心を通過し、第1開口11に直交する直線を、中心軸11Aと記載する。
【0023】
第1フランジ部12は、第1排気管1の第1端部10に設けられ、第2排気管3との締結に用いられる。
第1端部10は、第1開口11を囲み、第1開口11の中心軸11Aに直交する向きに平面状に広がる。第1端部10は、溝部13と、突出部14とを備える。
【0024】
突出部14は、第1端部10から中心軸11Aに沿って第2排気管3側に突出する部位であり、第1開口11に隣接し、且つ、第1開口11を囲む部位である。突出部14の頂部に位置する頂面15は、中心軸11Aに直交する向きに平面状に広がる。また、突出部14の内周面は、第1排気管1の内周面17を形成する。
【0025】
溝部13は、第1端部10に設けられた溝状の部位であり、第1開口11を囲む。溝部13は、突出部14の外側に隣接して設けられており、突出部14の外周面16は、溝部13の底面から中心軸11Aに沿って突出する。
【0026】
カバー部材2は、耐熱性を有し、第1端部10に設けられる。カバー部材2の詳細な構成については、後述する。
[2.第2排気管の構成]
第2排気管3は、第2端部30と、第2開口31と、第2フランジ部32とを備える(図1、2参照)。
【0027】
第2開口31は、第2排気管3の第2端部30に位置し、ターボチャージャーからの排ガスは、第2開口31から流出する。また、第2開口31は、第1排気管1の第1開口11に接続され、その形状は、第1開口11と同様(一例として、円形)である。
【0028】
第2フランジ部32は、第2排気管3の第2端部30に設けられ、第1排気管1との締結に用いられる。
第2端部30は、第2開口31を囲み、第2開口31に接続された第1排気管1の第1開口11の中心軸10Aに直交する向きに平面状に広がる。第2端部30は、陥没部33を備える。
【0029】
陥没部33は、第2開口31に隣接し、且つ、第2開口31を囲むように第2端部30に形成され、底面34と、第1内周面35とを有する。
底面34は、第2開口31に接続された第1開口11の中心軸10Aに直交する向きに平面状に広がる部位であり、第2排気管3の内周面を一周するように設けられる。また、底面34は、第2排気管3の内周面における段差を形成しており、該内周面を第1内周面35と第2内周面36とに区切る。
【0030】
第1内周面35は、第2開口31に隣接し、第2開口31を囲む。また、第1内周面35は、底面34を挟んで第2内周面36に隣接し、第1内周面35の径は、第2内周面36の径よりも大きい。
【0031】
[3.排気管の締結]
第1排気管1の第1開口11と第2排気管3の第2開口31との接続時には、第1フランジ部12と第2フランジ部32とが、Vクランプ5により締結される(図1参照)。なお、第1、第2フランジ部12、32は、Vクランプ5以外の部材により締結されても良い。
【0032】
第1、第2フランジ部12、32の締結時には、第1排気管1の第1端部10の突出部14は、第2排気管3の第2端部30の陥没部33に嵌入する。つまり、突出部14及び陥没部33は、第1排気管1と第2排気管3とを接続する際の位置決めに用いられる。
【0033】
突出部14と陥没部33との嵌入により、突出部14の頂面15は陥没部33の底面34に対面すると共に、突出部14の外周面16は陥没部33の第1内周面35に対面する。また、このとき、第1端部10における溝部13の外側の部分は、第2端部30と当接し、第1排気管1の内周面17と第2排気管3の第2内周面36とが面一となる。また、第1開口11と第2開口31との隙間を封止するため、第1端部10の溝部13には、リング状のガスケット4が配置される。
【0034】
[4.カバー部材]
締結された第1排気管1の第1端部10と、第2排気管3の第2端部30との間には、上述したカバー部材2が挟持される(図1、2参照)。カバー部材2はリング状の部材であり、第1開口11を周回するように第1端部10の突出部14に取り付けられる(図3参照)。なお、リング状のカバー部材2は、例えば、細長い板状の部材の両端を、円を形成するように接合することで形成されてもよい。
【0035】
なお、カバー部材2は、第1排気管1の第1端部10等を構成する材料よりも高い耐熱性を有する材料により構成される。具体的には、カバー部材2は、一例としてフェライト系の鋼材により構成されていても良い。無論、カバー部材2は、他の材料により構成されていても良い。また、カバー部材2を構成する材料の耐熱性は、第1排気管1の第1端部10等を構成する材料の耐熱性と同程度であっても良いし、より低くても良い。
【0036】
カバー部材2は、挟持部20と、内周部21と、外周部24とを備える。
挟持部20は、カバー部材2の径方向に広がるリング状の部位である。
内周部21は、挟持部20の内周側の縁部から突出する壁状の部位であり、該縁部を一周するように設けられる。
【0037】
外周部24は、挟持部20の外周側の縁部から内周部21と同方向に突出する壁状の部位であり、該縁部を一周するように設けられる。
つまり、カバー部材2は、挟持部20を底部とする溝状の部材であり、突出部14に嵌入するよう構成されている。また、カバー部材2は、突出部14への嵌入の際、突出部14に圧入されるよう構成されている。また、本実施形態では、カバー部材2と突出部14とは溶接されない。しかしながら、これに限らず、カバー部材2は突出部14に溶接されていても良い。
【0038】
カバー部材2が突出部14に嵌入すると、挟持部20は突出部14の頂面15を覆い、外周部24は突出部14の外周面16を覆う。また、このとき、内周部21は第1排気管1の内周面17における第1開口11に隣接する部分を覆う。本実施形態では、一例として、内周部21は、内周面17における突出部14に相当する部分を全て覆う。しかし、内周部21は、該部分の一部を覆っても良いし、該部分と、内周面17における該部分よりもさらに下流側の部分とを覆っても良い。また、このとき、内周部21は内周面17に当接していても良いし、内周部21と内周面17との間に若干の隙間が形成されていても良い。
【0039】
そして、第1、第2フランジ部12、32の締結時には、挟持部20は、頂面15と第2端部30の陥没部33の底面34とにより挟持され、外周部24は、突出部14の外周面16と、陥没部33の第1内周面35とにより挟持される。
【0040】
[5.効果]
(1)上記実施形態によれば、カバー部材2により第1排気管1の内周面17における第1開口11の付近の部分(以後、被覆部分)を局所的に覆うことができ、被覆部分に直接排ガスが当るのを抑制できる。このため、第1排気管1全体を構成する材料を耐熱性がより高い材料に変更しなくても、排ガスの熱による損傷を受けやすい部分を保護することができる。
【0041】
これにより、耐熱性を向上させるべく、第1排気管1の材料を、カーボン量が多く、鋭敏化の懸念が生じる材料や、形状の加工や溶接が困難になる材料に変更する必要が無くなる。その結果、該材料の変更により、耐食性の低下や製造コストの上昇等を招くのを回避できる。
【0042】
特に、上記実施形態のようにVクランプ5による締結がなされる場合には、第1及び第2フランジ12、32を特殊な形状にする必要があり、第1及び第2排気管1、3の形状の加工方法は限られたものとなる。さらに、触媒コンバータを収容する第1排気管1は、大型であり、また、第1排気管1の一部のみを別の材料で構成するのが困難な可能性がある。このため、第1排気管1の材料を耐熱性の高い材料に変更するとなると、第1排気管1全体にわたる材料の変更が必要となり、製造コストが増大する恐れがある。
【0043】
これに対し、上記実施形態によれば、第1排気管1の材料を変更することなく、第1排気管1の被覆部分を局所的に保護することができる。したがって、第1排気管1の耐熱性を効果的に高めることができ、その結果、第1排気管1の耐久性が向上する。
【0044】
(2)また、耐熱性を有するコーティング材を内周面17における被覆部分に塗布することで、第1排気管1を局所的に保護することも考えられる。しかし、このような手法を用いた場合、第1排気管1とコーティング材との間の熱伸び差により、被覆部分に固着していたコーティング材が剥離し、被覆部分が露出する恐れがある。
【0045】
これに対し、上記実施形態によれば、カバー部材2は、コーティング材のように被覆部分に固着されないため、カバー部材2と第1排気管1との間の熱伸び差の影響を抑制できる。このため、コーティング材を塗布する場合に比べ、カバー部材2が内周面17から離れるのを抑制できる。
【0046】
また、第1及び第2排気管1、3を含む部品(以後、対象部品)の製造時において、被覆部分にコーティング材を塗布する工程は、カバー部材2を突出部14に取り付ける工程に比べ、環境負荷が大きくなる恐れがある。
【0047】
また、第1排気管1の第1端部10と第2排気管3の第2端部30との締結前の段階にて被覆部分にコーティング材を塗布する場合、締結時に塗布されたコーティング材が剥離する恐れがある。また、第1端部10と第2端部30との締結後に被覆部分にコーティング材を塗布する場合、第1及び第2排気管1、3の他の部分にコーディング材が付着する恐れがある。このため、被覆部分にコーティング材を塗布する場合には、対象部品の製造が困難になる。
【0048】
さらに、被覆部分にコーティング材を塗布する場合、被覆部分の保護品質を把握するためには、塗布されたコーティング材の膜厚や、コーティング材と被覆部分との固着力等を測定する必要がある。そして、このような測定を行うためには、製造された対象部品を分解する必要がある。これに対し、カバー部材2を用いる場合、カバー部材2及び突出部14の寸法の精度や、突出部14に取り付けられたカバー部材2の態様に基づき、被覆部分の保護品質を把握できる。このため、被覆部分にコーティング材を塗布する場合に比べ、品質管理が容易になる。
【0049】
(3)また、カバー部材2は、リング状である共に溝状であり、圧入により突出部14に取り付けられるため、カバー部材2の熱伸びを吸収できる。このため、熱伸びによりカバー部材2の内周部21が第1排気管1の内周面17から離れるのを抑制でき、耐久性が向上する。
【0050】
[6.カバー部材の変形例]
(1)変形例1
カバー部材2の内周部21における挟持部20の反対側の端部には、第1排気管1の内周面17から離れる方向に曲がる先端部22が設けられていても良い(図4参照)。先端部22は、内周部21における該端部の全周にわたって設けられており、先端部22における外周部24との間の距離は、挟持部20から離れるに従い長くなる。先端部22は、カバー部材2における周方向に直交する断面において、例えば、直線状に延びていても良いし、湾曲していても良い。
【0051】
変形例1によれば、カバー部材2を第1排気管1の第1端部10の突出部14に取り付ける作業が容易になる。また、カバー部材2を突出部14に取り付ける際、カバー部材2や第1端部10に損傷が生じるのを抑制でき、品質が向上する。
【0052】
(2)変形例2
第1排気管1の内周面17におけるカバー部材2の内周部21による被覆部分に、凹部18を形成しても良い(図5参照)。また、内周部21に、内周面17に向かって突出し、内周面17の凹部18に係合するよう構成された凸部23を形成しても良い。そして、カバー部材2を第1端部10の突出部14に嵌入する際、凸部23と凹部18とが係合しても良い。
【0053】
なお、凹部18及び凸部23は、それぞれ、1つずつ設けられても良い。この場合、凹部18及び凸部23は、内周面17を周回するように設けられていても良い。また、凹部18及び凸部23は、それぞれ複数設けられていても良く、このような場合には、複数の凹部18、及び複数の凸部23は、内周面17を周回するように並んで配置されていても良い。
【0054】
変形例2によれば、第1端部10の突出部14に取り付けられたカバー部材がずれるのを抑制できる。
なお、変形例1においても、同様にして、内周部21に少なくとも1つの凸部23を設けると共に、内周面17に少なくとも1つの凹部18を設けても良い。
【0055】
(3)変形例3
カバー部材2は、外周部24を有さない構成であっても良い(図6、7参照)。つまり、カバー部材2における周方向に直交する断面は、L字状であっても良い。なお、この場合においても、変形例1と同様に、カバー部材2の内周部21に先端部22を設けても良い。また、変形例2と同様に、第1排気管1の内周面17の被覆部分に少なくとも1つの凹部18を設けると共に、内周部21に少なくとも1つの凸部23を設けても良い。さらに、変形例1、2と同様にして、先端部22と少なくとも1つの凸部23とを内周部21に設けても良い。
【0056】
変形例3によれば、外周部24が設けられていないため、高温となった際、カバー部材2の挟持部20を外側(換言すれば、第1内周面35側)に向けて熱伸びさせることができる。このため、挟持部20の熱伸びにより内周部21が内周面17から離れるのを抑制でき、これにより耐久性が向上する。
【0057】
(4)変形例4
カバー部材2を、第3端部25から第4端部26にわたって延びるリング状に湾曲した部材として構成しても良い(図8参照)。そして、カバー部材2が第1端部10の突出部14に取り付けられた際、第3端部25と第4端部26とが隙間を開けて対面するようにしても良い。換言すれば、カバー部材2はC字状である。
【0058】
変形例4によれば、カバー部材2が第3及び第4端部25、26を有さないリング状である場合に比べ、カバー部材2の突出部14への取り付けが容易になる。また、突出部14に取り付けられたカバー部材2の第3端部25と第4端部26との間の隙間により、カバー部材2の熱伸びを吸収できる。このため、熱伸びによりカバー部材2の内周部21が内周面17から離れるのを抑制でき、耐久性が向上する。
【0059】
また、変形例4のカバー部材2は、第3及び第4端部25、26を有する構成であるため、溶接を伴うことなく比較的容易にカバー部材2を製造できる。このため、カバー部材2の製造コストを低減できると共に、カバー部材2における熱応力の発生を抑制でき、カバー部材2の耐久性を向上させることができる。
【0060】
(5)変形例5
カバー部材2は、リング状ではなく、円弧状の部材として構成されていても良い。そして、第1排気管1の内周面17における第1開口11に隣接する部分のうち、排ガスの熱による損傷を受けやすい部分を、カバー部材2により覆うようにしても良い。このような構成を有する場合であっても、第1排気管1の耐熱性を効果的に高めることができる。
【0061】
[7.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、第1排気管1の第1端部10に突出部14が設けられると共に、第2排気管3の第2端部30に陥没部33が設けられ、カバー部材2は、突出部14に取り付けられる。しかし、これに限らず、第1端部10に陥没部33を設けると共に、第2端部30に突出部14を設け、カバー部材2を第2端部30の突出部14に取り付けるようにしても良い。そして、カバー部材2により、第2排気管3の内周面を覆っても良い。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0062】
(2)上記実施形態では、ターボチャージャーの下流側に位置し、触媒コンバータを収容する第1排気管1の上流側に位置する第1端部10に、カバー部材2が設けられる。しかし、これに限らず、例えば、第1排気管1の下流側の端部や、車両に搭載される他の排気管の端部と、これらの端部に締結される排気管の端部とを、それぞれ、第1及び第2端部10、30と同様に構成しても良い。そして、締結されたこれらの端部に、上記実施形態と同様にしてカバー部材2を設けても良い。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0063】
(3)上記実施形態では、突出部14の頂面15は、第1端部10よりも第2排気管3側に位置する。しかし、頂面15は、第1端部10と同一平面上に位置しても良いし、第1端部10よりも第1排気管1側に位置しても良い。また、第1排気管1の第1端部10には、溝部13が設けられていなくても良い。このような構成を有する場合であっても、上記実施形態と同様にして、カバー部材2を突出部14に取り付けることができる。
【0064】
さらに、第1排気管1の第1端部10に、突出部14及び溝部13を設けない構成とすると共に、第2排気管3の第2端部30に、陥没部33を設けない構成としても良い。このような構成を有する場合であっても、カバー部材2の周方向に直交する断面をL字状とすることで、カバー部材2を第1端部10に設けることができる。
【0065】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0066】
[8.文言の対応関係]
上記実施形態の第2排気管3が、他の排気管の一例に相当する。
【符号の説明】
【0067】
1…第1排気管、10…第1端部、11…第1開口、11A…中心軸、12…第1フランジ部、14…突出部、15…頂面、16…外周面、17…内周面、18…凹部、2…カバー部材、20…挟持部、21…内周部、22…先端部、23…凸部、24…外周部、25…第3端部、26…第4端部、3…第2排気管、30…第2端部、31…第2開口、32…第2フランジ部、33…陥没部、34…底面、35…第1内周面、36…第2内周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8