(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】減圧システム及び減圧方法
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G05D16/20 A
(21)【出願番号】P 2021106843
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】河野 匠
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535215(JP,A)
【文献】特開平09-171413(JP,A)
【文献】特許第4171391(JP,B2)
【文献】特開2018-096443(JP,A)
【文献】特開2007-026056(JP,A)
【文献】特開2020-176309(JP,A)
【文献】特開2011-134164(JP,A)
【文献】特開2021-060203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを生成するガス生成装置で生成された圧縮ガスを減圧する減圧システムであって、
前記ガス生成装置から流出する前記圧縮ガスが流れる排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの流量を調整する
ことにより前記圧縮ガスを減圧する流量調整弁と、
前記排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの温度を検出する温度センサと、
前記排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記流量調整弁を制御する制御装置と、
前記ガス生成装置の外気温を検出する外気温センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記圧力センサで検出される前記圧力に基づいて、前記流量調整弁の調整量を決定し、決定した前記調整量を、前記温度センサで検出される前記温度に基づいて補正し、
前記排出流路は、前記ガス生成装置
と蓄圧器との間に接続される第1排出流路と、
前記圧縮ガスを排出するために前記第1排出流路から分岐する第2排出流路とを有し、
前記流量調整弁は、前記第2排出流路上に設けられており、
前記第2排出流路が分岐する分岐部位と、
前記蓄圧器との間の前記第1排出流路には、背圧弁が設けられており、
前記分岐部位と、前記流量調整弁との間の前記第2排出流路には、開閉弁が設けられており、
前記制御装置は、前記圧縮ガスを減圧しない場合は前記開閉弁を閉弁するとともに、前記流量調整弁を制御せず、前記圧縮ガスを減圧する場合は前記開閉弁を開放した後、補正された前記調整量に基づいて前記圧縮ガスを減圧させ
、前記流量調整弁の制御開始時に前記温度センサで検出された前記温度と、前記流量調整弁の制御開始時に前記外気温センサで検出された前記ガス生成装置の外気温とに基づいて、前記圧縮ガスの温度勾配を推定し、推定した温度勾配に基づいて、決定した前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、前記開閉弁を開けてから閉めるまでを1回としたときの減圧回数と、前記温度とに応じて、決定した前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、前記流量調整弁の制御開始時から、単位時間あたりに変化する前記圧力の変化速度を計測し、計測した前記変化速度に応じて前記調整量を決定する、減圧システム。
【請求項4】
請求項3に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、目標変化速度に対する前記変化速度の差が小さくなるように、前記調整量を可変する、減圧システム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、前記流量調整弁の制御開始時の前記温度に応じて、決定した前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか1項に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、
前記流量調整弁の制御開始時の前記温度が高いほど、前記流量が少なくなるように前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、前記流量調整弁の制御開始時から制御終了時までの処理単位を1回としたときの減圧回数と、前記温度とに応じて、決定した前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項8】
請求項
7に記載の減圧システムであって、
前記制御装置は、前記減圧回数が増えるほど、前記流量が少なくなるように前記調整量を補正する、減圧システム。
【請求項9】
圧縮ガスを生成するガス生成装置で生成された圧縮ガスを減圧する減圧方法であって、
前記減圧方法は、
前記ガス生成装置から流出する前記圧縮ガスが流れる排出流路上に設けられる圧力センサで検出される圧力に基づいて、前記排出流路上に設けられる流量調整弁の調整量を決定し、
前記排出流路上に設けられる温度センサで検出される温度に基づいて、決定した前記調整量を補正し、
補正した前記調整量となるように、前記流量調整弁を制御して
前記圧縮ガスを減圧しており、
前記排出流路は、前記ガス生成装置
と蓄圧器との間に接続される第1排出流路と、
前記圧縮ガスを排出するために前記第1排出流路から分岐する第2排出流路とを有し、
前記流量調整弁は、前記第2排出流路上に設けられており、
前記第2排出流路が分岐する分岐部位と、
前記蓄圧器との間の前記第1排出流路には、背圧弁が設けられており、
前記分岐部位と、前記流量調整弁との間の前記第2排出流路には、開閉弁が設けられており、
前記減圧方法は、前記圧縮ガスを減圧しない場合は前記開閉弁を閉弁するとともに、前記流量調整弁を制御せず、前記圧縮ガスを減圧する場合は前記開閉弁を開放した後、補正された前記調整量に基づいて前記圧縮ガスを減圧させ
、前記流量調整弁の制御開始時に前記温度センサで検出された前記温度と、前記流量調整弁の制御開始時に外気温センサで検出された前記ガス生成装置の外気温とに基づいて、前記圧縮ガスの温度勾配を推定し、推定した温度勾配に基づいて、決定した前記調整量を補正する、減圧方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の減圧方法であって、
前記減圧方法は、前記開閉弁を開けてから閉めるまでを1回としたときの減圧回数と、前記温度とに応じて、決定した前記調整量を補正する、減圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガスを生成するガス生成装置で生成された圧縮ガスを減圧する減圧システム及び減圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス生成装置として、水素圧縮装置、酸素圧縮装置、あるいは、水素昇圧装置等がある。水素圧縮装置は、水を電気分解し、発生する水素ガスを圧縮する。酸素圧縮装置は、水を電気分解し、発生する酸素ガスを圧縮する。水素昇圧装置は、水素ガスを電気分解して高圧の水素ガスを発生させる。
【0003】
ガス生成装置では、運転停止時に、電解質膜の両側の圧力差を解除する必要がある。具体的には、ガス生成装置に接続された排出流路上の圧縮ガスの圧力を減圧するように、排出流路上に設けられる流量調整弁が制御されることで、電解質膜の両側の圧力差が解除される。
【0004】
下記の特許文献1では、弁の開度を制御する制御方法が開示されている。この制御方法は、チャンバ室内の圧力降下カーブを実測し、実測した圧力降下カーブが目標圧力降下勾配に近似するように、圧力降下カーブを変更する。制御方法は、変更した圧力降下カーブに基づいて弁の開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガス生成装置で生成される圧縮ガスの温度は、ガス生成装置で発生する熱、あるいは、外気温等に応じて変化し易い。ガス生成装置で生成される圧縮ガスの温度が変化すると、圧縮ガスの体積、圧力、粘度等が変化する。目標の圧力変化速度にしたがって圧力を変化させるためには、温度の変化に応じて、流量調整弁の調整量を変える必要がある。
【0007】
したがって、ガス生成装置に対して、上記の特許文献1の制御方法が適用されても、圧縮ガスの流量が適切に調整されない場合が懸念される。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、圧縮ガスを生成するガス生成装置で生成された圧縮ガスを減圧する減圧システムであって、前記ガス生成装置から流出する前記圧縮ガスが流れる排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの温度を検出する温度センサと、前記排出流路上に設けられ、前記圧縮ガスの圧力を検出する圧力センサと、前記流量調整弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記圧力センサで検出される前記圧力に基づいて、前記流量調整弁の調整量を決定し、決定した前記調整量を、前記温度センサで検出される温度に基づいて補正する。
【0010】
本発明の別の一態様は、圧縮ガスを生成するガス生成装置で生成された圧縮ガスを減圧する減圧方法であって、前記ガス生成装置から流出する前記圧縮ガスが流れる排出流路上に設けられる圧力センサで検出される圧力に基づいて、前記排出流路上に設けられる流量調整弁の調整量を決定し、前記排出流路上に設けられる温度センサで検出される温度に基づいて、決定した前記調整量を補正し、補正した前記調整量となるように、前記流量調整弁を制御する。
【発明の効果】
【0011】
上記の減圧システム及び減圧方法は、圧縮ガスの圧力に基づいて決定した流量調整弁の調整量を、圧縮ガスの温度に基づいて補正することで、調整量を補正しない場合に比べて流量を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の減圧システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、温度及び減圧回数と、調整量との関係を例示するグラフである。
【
図4】
図4は、制御装置の制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例の減圧システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態の減圧システム10を示す模式図である。減圧システム10は、ガス生成装置12で生成された圧縮ガスを減圧するシステムである。減圧システム10は、流量調整弁14と、温度センサ16と、圧力センサ18と、制御装置20とを備える。
【0014】
ガス生成装置12は、水素昇圧装置であってもよいし、水素圧縮装置であってもよいし、酸素圧縮装置であってもよい。ガス生成装置12は、電気化学セル12Aを有する。
【0015】
電気化学セル12Aは、電解質膜と、電解質膜の一方の面上に積層されるアノード電極と、電解質膜の他方の面上に積層されるカソード電極とを有する。アノード電極とカソード電極との間に電圧が印加される。
【0016】
ガス生成装置12が水素昇圧装置である場合、電気化学セル12Aのアノード電極には水素ガスが供給される。アノード電極とカソード電極との間に電圧が印加されると、アノード電極に供給された水素ガスは電気分解し、プロトン(H+イオン)が生成される。電気化学セル12Aは、アノード電極から電解質膜を通じてカソード電極にプロトンを輸送し、輸送したプロトンから圧縮ガス(圧縮ガス)を生成する。
【0017】
ガス生成装置12が水素圧縮装置である場合、電気化学セル12Aのアノード電極には水が供給される。アノード電極とカソード電極との間に電圧が印加されると、アノード電極に供給された水が電気分解し、プロトン(H+イオン)が生成される。電気化学セル12Aは、アノード電極から電解質膜を通じてカソード電極にプロトンを輸送し、輸送したプロトンから圧縮ガス(圧縮ガス)を生成する。
【0018】
ガス生成装置12が酸素圧縮装置である場合、電気化学セル12Aのカソード電極には水が供給される。アノード電極とカソード電極との間に電圧が印加されると、カソード電極に供給された水が電気分解し、OH-が生成される。電気化学セル12Aは、カソード電極から電解質膜を通じてアノード電極にOH-を輸送し、輸送したOH-から圧縮ガス(高圧酸素ガス)を生成する。
【0019】
ガス生成装置12の排出ポート12Bには、排出流路22が接続される。排出流路22には、ガス生成装置12から流出する圧縮ガスが流れる。排出流路22は、配管であってもよい。排出流路22は、第1排出流路22Aと第2排出流路22Bとを有する。第2排出流路22Bは、第1排出流路22Aの分岐部位P1から分岐する。第1排出流路22Aを流れる圧縮ガスは、蓄圧器に流入する。第2排出流路22Bを流れる圧縮ガスは、排気される。
【0020】
分岐部位P1よりも下流の第1排出流路22Aには、背圧弁24が設けられる。第2排出流路22Bには、開閉弁26が設けられる。開閉弁26よりも下流の第2排出流路22Bには、流量調整弁14が設けられる。
【0021】
流量調整弁14は、圧縮ガスの流量を調整する弁である。流量調整弁14は、開度を可変する開度型調整弁であってもよい。また、流量調整弁14は、単位時間あたりの弁開放期間と弁閉塞期間との比(Duty比)を可変する開閉型調整弁であってもよい。流量調整弁14は、制御装置20の制御にしたがって、流量調整弁14の開度又はDuty比を可変する。
【0022】
温度センサ16は、圧縮ガスの温度を検出するためのセンサである。温度センサ16は、流量調整弁14よりも上流の排出流路22上に設けられる。
図1では、ガス生成装置12と開閉弁26との間の排出流路22上に温度センサ16が設けられる。
【0023】
圧力センサ18は、圧縮ガスの圧力を検出するためのセンサである。圧力センサ18は、流量調整弁14よりも上流の排出流路22上に設けられる。
図1では、ガス生成装置12と開閉弁26との間の排出流路22上に圧力センサ18が設けられる。
【0024】
制御装置20は、開閉弁26及び流量調整弁14を制御する装置である。制御装置20は、圧縮ガスの圧力を減圧しない場合、開閉弁26を閉じる。この場合、制御装置20は、流量調整弁14を制御しない。なお、開閉弁26が閉じている場合、背圧弁24よりも上流の圧縮ガスの圧力が、背圧弁24によって一定に調整される。一方、制御装置20は、圧縮ガスの圧力を減圧する場合、開閉弁26を開ける。この場合、制御装置20は、流量調整弁14を制御することで、流量調整弁14よりも上流の圧縮ガスの圧力を減圧させる。
【0025】
図2は、制御装置20の構成を示すブロック図である。制御装置20は、演算部30と、記憶部32とを備える。演算部30は、調整量決定部34と、調整量補正部36と、弁制御部38とを有する。記憶部32は、RAM等の揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリとを有する。
【0026】
調整量決定部34と、調整量補正部36と、弁制御部38との少なくとも一部は、ASIC等の集積回路であってもよい。また、調整量決定部34と、調整量補正部36と、弁制御部38との少なくとも一部は、記憶部32に記憶されるプログラムをプロセッサが実行することで機能する機能部であってもよい。
【0027】
調整量決定部34は、圧力センサ18で検出される圧力に基づいて、流量調整弁14の調整量を決定する。また、調整量決定部34は、単位時間ごとに、流量調整弁14の調整量を決定する。
【0028】
なお、流量調整弁14が開度型調整弁である場合、流量調整弁14の調整量は、流量調整弁14の開度である。また、流量調整弁14が開閉型調整弁である場合、流量調整弁14の調整量は、Duty比である。
【0029】
調整量補正部36は、温度センサ16で検出される温度と、減圧回数とに基づいて、調整量決定部34が決定した調整量を補正する。減圧回数は、流量調整弁14の制御開始時から制御終了時までの処理単位を1回としたときの回数である。
【0030】
ここで、温度及び減圧回数と調整量との関係を説明する。
図3は、温度及び減圧回数と、調整量との関係を例示するグラフである。
図3では、減圧回数に対応する複数の相関グラフが例示される。
図3の左側の相関グラフは、減圧回数が1回である場合に対応する。一方、
図3の右側の相関グラフは、減圧回数がN回である場合に対応する。「N」は、2以上の整数である。
【0031】
各相関グラフは、複数の温度の各々に対応する相関線を有する。
図3では、5degCに対応する相関線と、10degCに対応する相関線と、15degCに対応する相関線とが例示される。各相関線は、圧力と、流量調整弁14の調整量との相関を示すプロットを結ぶ線である。
【0032】
図3では、流量調整弁14の調整量として、Duty比が例示される。Duty比が100%の場合、単位時間あたりの弁閉塞期間がないことを意味する。この場合、流量調整弁14の流量は最大となる。一方、Duty比が0%の場合、単位時間あたりの弁開放期間がないことを意味する。この場合、流量調整弁14の流量はゼロとなる。
【0033】
背圧弁24のついた容器内に存在する圧縮ガスは、圧力、体積ともに一定となる。したがって、圧縮ガスの温度が高くなるほど、容器内に存在する圧縮ガスの物質量は少なくなる。このため、第1の温度のときの調整量と、第1の温度より高い第2の温度のときの調整量とが同じである場合には、圧縮ガスの温度の上昇に応じて、圧力の低下速度は速くなる。したがって、温度が高いほど流量が少なくなるように、調整量が補正されれば、圧縮ガスの温度上昇に起因する圧力速度の変化が抑制される。
【0034】
また、流量調整弁14が閉じるときに台座と接触して流量調整弁14又は台座が摩耗すると、流通断面積が大きくなる。このため、圧縮ガスの温度が変化しない場合、減圧回数の増加に応じて、流量調整弁14の流量が多くなる傾向がある。したがって、減圧回数が増えるほど流量が少なくなるように、調整量が補正されれば、減圧回数の増加に起因する流量の変化が抑制される。
【0035】
そこで、調整量補正部36は、温度センサ16で検出される温度が大きいほど流量が少なくなるように、調整量決定部34が決定した調整量を補正する。また、調整量補正部36は、減圧回数が増えるほど流量が少なくなるように、調整量決定部34が決定した調整量を補正する。
【0036】
弁制御部38は、開閉弁26及び流量調整弁14を制御する。弁制御部38は、開閉弁26を閉じた場合、流量調整弁14を制御しない。一方、弁制御部38は、開閉弁26を開けた場合、調整量補正部36が補正した調整量となるように、流量調整弁14を制御する。
【0037】
流量調整弁14が開度型調整弁である場合、例えば、弁制御部38は、調整量補正部36が補正した調整量(開度)に基づいて、流量調整弁14のモータを駆動する駆動信号を生成する。弁制御部38は、生成した駆動信号を流量調整弁14のモータに出力することで、流量調整弁14の開度を、調整量補正部36が補正した開度に変化させる。
【0038】
流量調整弁14が開閉型調整弁である場合、例えば、弁制御部38は、調整量補正部36が補正した調整量(Duty比)に基づいて、流量調整弁14のソレノイドを駆動するパルス信号を生成する。弁制御部38は、生成したパルス信号を流量調整弁14のソレノイドに出力することで、単位時間あたりの弁開放期間と弁閉塞期間との比(Duty比)を変化させる。
【0039】
次に、ガス生成装置12で生成された圧縮ガスを減圧する減圧方法を説明する。この減圧方法は、流量調整弁14を制御する制御装置20の制御処理によって達成される。
図4は、制御装置20の制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0040】
制御装置20は、例えば、外部から出力される減圧命令を受けた場合、制御処理を開始する。この場合、弁制御部38は、閉状態の開閉弁26を開ける。開閉弁26が開けられると、制御処理は、ステップS1に移行する。
【0041】
ステップS1において、演算部30は、減圧回数のカウント値CVを「1」だけインクリメントする。減圧回数のカウント値CVがインクリメントされると、制御処理は、ステップS2に移行する。
【0042】
ステップS2において、調整量決定部34は、流量調整弁14の制御開始時に圧力センサ18で検出される圧力(初期圧力)から、流量調整弁14の調整量(初期調整量)を決定する。
【0043】
なお、調整量(初期調整量)の決定には、記憶部32に記憶されるデータベース又は関係式が用いられてもよい。データベースは、
図3に例示するグラフのように、圧力と調整量との相関を示す情報である。関係式は、圧力に相関する調整量を導く数式である。
【0044】
調整量決定部34は、データベースを用いる場合、初期圧力に最も近似する調整量を検索し、検索した調整量を流量調整弁14の初期調整量として決定する。調整量決定部34は、関係式を用いる場合、初期圧力から調整量を算出し、算出した調整量を流量調整弁14の初期調整量として決定する。流量調整弁14の初期調整量が決定されると、制御処理は、ステップS3に進む。
【0045】
ステップS3において、調整量補正部36は、流量調整弁14の制御開始時に温度センサ16で検出される温度(初期温度)を取得する。また、調整量補正部36は、ステップS2で決定された調整量(初期調整量)を補正する。ここで、調整量補正部36は、取得した温度(初期温度)が大きいほど流量を少なくする方向に調整量を補正する。また、調整量補正部36は、取得した減圧回数(カウント値CV)が増えるほど流量を少なくする方向に調整量を補正する。ステップS3で決定された調整量(初期調整量)が補正されると、制御処理は、ステップS4に進む。
【0046】
なお、調整量(初期調整量)の補正には、記憶部32に記憶される補正用データベース又は補正用関係式が用いられてもよい。補正用データベースは、複数の温度と複数の減圧回数とで組み合わされる複数のパターンの各々に対応する補正量を示す情報である。補正用関係式は、温度に相関する補正量を導く数式である。
【0047】
ステップS4において、弁制御部38は、ステップS3で補正された調整量(初期調整量)となるように、流量調整弁14を制御する。流量調整弁14が制御されると、制御処理は、ステップS5に進む。
【0048】
ステップS5において、調整量決定部34は、圧力センサ18で検出される圧力に基づいて、単位時間あたりに変化する圧力の変化速度の計測を開始する。圧力の変化速度が計測されると、制御処理は、ステップS6に進む。
【0049】
ステップS6において、調整量決定部34は、ステップS5で計測した変化速度に応じて、流量調整弁14の調整量を決定し直す。
【0050】
例えば、調整量決定部34は、目標変化速度に対する、ステップS5で計測した変化速度との差が小さくなるように、ステップS2で決定した流量調整弁14の調整量を変更して流量調整弁14の調整量を決定し直してもよい。また、調整量決定部34は、変化速度と調整量との関係を示す関係式を用いて、計測した変化速度に応じた調整量を算出し、算出した調整量を流量調整弁14の調整量として決定し直してもよい。また、調整量決定部34は、複数の変化速度の各々に対応する調整量を示すデータベースを用いて、計測した変化速度に最も近似する調整量を検索し、検索した調整量を流量調整弁14の調整量として決定し直してもよい。流量調整弁14の調整量が決定されると、ステップS7に進む。
【0051】
ステップS7において、弁制御部38は、ステップS6で決定し直した調整量となるように、流量調整弁14を制御する。流量調整弁14が制御されると、制御処理は、ステップS8に進む。
【0052】
ステップS8において、演算部30は、流量調整弁14の制御を終了するか否かを判定する。ここで、例えば、外部から出力される減圧停止命令が供給されていない場合、演算部30は、流量調整弁14の制御を終了しないと判断する。この場合、制御処理は、ステップS5に戻る。一方、減圧停止命令が供給されている場合、演算部30は、流量調整弁14の制御を終了すると判断する。この場合、制御処理は終了する。
【0053】
このように、制御装置20は、制御開始時の圧力に応じた流量調整弁14の調整量を、制御開始時の温度及び減圧回数に応じて補正し、補正した調整量となるように流量調整弁14を制御する(S1~S4)。
【0054】
その後、制御装置20は、流量調整弁14の制御を終了するまで、フィードバック制御を実行する(S5~S8)。すなわち、制御装置20は、単位時間ごとに、圧力の変化速度に応じて調整量を可変する。
【0055】
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0056】
図5は、変形例の減圧システム10を示す模式図である。変形例の減圧システム10では、外気温センサ40が新たに備えられる。外気温センサ40は、ガス生成装置12の外気温を検出するセンサである。外気温センサ40は、例えば、ガス生成装置12の外壁表面に取り付けられる。
【0057】
本変形例の調整量補正部36は、流量調整弁14の制御開始時に温度センサ16で検出された温度と、流量調整弁14の制御開始時に外気温センサ40で検出された外気温とに基づいて、圧縮ガスの温度勾配を推定する。この推定は、
図4に示す制御処理のステップS2で実行される。
【0058】
また本変形例では、ステップS2において、調整量補正部36は、推定した圧縮ガスの温度勾配に応じて調整量決定部34が決定した調整量を補正することが好ましい。
【0059】
このように本変形例では、制御装置20は、圧縮ガスの温度と外気温とに基づいて圧縮ガスの温度勾配を推定し、推定した温度勾配に基づいて、流量調整弁14の調整量を補正する。これにより、制御装置20は、排出流路22上の温度のみならず、外気温を考慮して流量調整弁14の流量を調整することができる。
【0060】
なお、実施形態及び変形例の減圧回数は、省かれてもよい。すなわち、制御装置20は、温度センサ16で検出される温度のみに基づいて調整量を補正してもよい。制御装置20が温度のみに基づいて調整量を補正する場合、
図4に示す制御処理のステップS1は省かれる。
【0061】
以上の記載から把握し得る発明として、以下の第1の発明及び第2の発明が挙げられる。
【0062】
第1の発明は、圧縮ガスを生成するガス生成装置(12)で生成された圧縮ガスを減圧する減圧システム(10)である。減圧システム(10)は、ガス生成装置(12)から流出する圧縮ガスが流れる排出流路(22)上に設けられ、圧縮ガスの流量を調整する流量調整弁(14)と、排出流路(22)上に設けられ、圧縮ガスの温度を検出する温度センサ(16)と、排出流路(22)上に設けられ、圧縮ガスの圧力を検出する圧力センサ(18)と、流量調整弁(14)を制御する制御装置(20)と、を備える。制御装置(20)は、圧力センサ(18)で検出される圧力に基づいて、流量調整弁(14)の調整量を決定し、決定した調整量を、温度センサ(16)で検出される温度に基づいて補正する。
これにより、減圧システム(10)は、圧縮ガスの圧力に基づいて決定した流量調整弁(14)の調整量を、圧縮ガスの温度に基づいて補正しない場合に比べて、流量調整弁(14)の流量を適切に調整することができる。
【0063】
制御装置(20)は、流量調整弁(14)の制御開始時から、単位時間あたりに変化する圧力の変化速度を計測し、計測した変化速度に応じて調整量を決定してもよい。これにより、制御装置(20)は、温度を考慮しながら、圧力の変化速度に応じて流量調整弁(14)の流量を適切に調整することができる。
【0064】
制御装置(20)は、目標変化速度に対する変化速度の差が小さくなるように、調整量を可変してもよい。これにより、制御装置(20)は、目標変化速度に追随するように、流量調整弁(14)の流量を調整することができる。
【0065】
減圧システム(10)は、ガス生成装置(12)の外気温を検出する外気温センサ(40)をさらに備え、制御装置(20)は、流量調整弁(14)の制御開始時に温度センサ(16)で検出された温度と、流量調整弁(14)の制御開始時に外気温センサ(40)で検出された外気温とに基づいて、圧縮ガスの温度勾配を推定し、推定した温度勾配に基づいて、決定した調整量を補正してもよい。これにより、制御装置(20)は、排出流路(22)上の温度のみならず、外気温を考慮して流量調整弁(14)の流量を調整することができる。
【0066】
制御装置(20)は、流量調整弁(14)の制御開始時の温度に応じて、決定した調整量を補正してもよい。これにより、制御開始後に調整量を補正する場合に比べて適切に流量調整弁(14)の流量を調整することができる。
【0067】
制御装置(20)は、温度が高いほど、流量が少なくなるように調整量を補正してもよい。これにより、制御装置(20)は、温度を考慮しながら流量調整弁(14)の流量を適切に調整することができる。
【0068】
制御装置(20)は、流量調整弁(14)の制御開始時から制御終了時までの処理単位を1回としたときの減圧回数と、温度とに応じて、決定した調整量を補正してもよい。これにより、制御装置(20)は、温度の変化量だけで調整量を補正する場合に比べて補正精度を高めることができる。
【0069】
制御装置(20)は、減圧回数が増えるほど、流量が少なくなるように調整量を補正してもよい。これにより、制御装置(20)は、減圧回数を考慮しながら、圧力の変化速度に応じて流量調整弁(14)の流量を適切に調整することができる。
【0070】
第2の発明は、圧縮ガスを生成するガス生成装置(12)で生成された圧縮ガスを減圧する減圧方法である。減圧方法は、ガス生成装置(12)から流出する圧縮ガスが流れる排出流路(22)上に設けられる圧力センサ(18)で検出される圧力に基づいて、排出流路(22)上に設けられる流量調整弁(14)の調整量を決定し、排出流路(22)上に設けられる温度センサ(16)で検出される温度に基づいて、決定した調整量を補正し、補正した調整量となるように、流量調整弁(14)を制御する。
これにより、減圧方法は、圧縮ガスの圧力に基づいて決定した流量調整弁(14)の調整量を、圧縮ガスの温度に基づいて補正しない場合に比べて、流量調整弁(14)の流量を適切に調整することができる。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0072】
10:減圧システム 12:ガス生成装置
14:流量調整弁 16:温度センサ
18:圧力センサ 20:制御装置
22:排出流路 24:背圧弁
32:記憶部 34:調整量決定部
36:調整量補正部 38:弁制御部
40:外気温センサ