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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】接続端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20231114BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H01R13/03 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021123578
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019096
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇木 一高
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲史
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197641(JP,A)
【文献】特開2003-035495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子と電気的に接続される端子接続部と、
電線と電気的に接続される電線接続部と、
前記端子接続部と前記電線接続部との間に設けられてハウジングに保持される保持部と、
少なくとも前記保持部内に形成された封入空間と、
前記封入空間に封入された潜熱蓄熱材及びガスと、
前記封入空間と端子外部を連通する封入用孔と、
前記封入用孔を塞ぐ栓部材と、
を備え
前記保持部の横断面積が、前記端子接続部の横断面積より大きくなるように構成されている接続端子。
【請求項2】
前記接続端子は、前記端子接続部が一体形成された第1部材と、前記電線接続部が一体形成された第2部材とが接合されることで一体化されており、
前記第1部材の接合面と前記第2部材の接合面には、前記封入空間を画成する第1凹部及び第2凹部がそれぞれ形成されている、
請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記封入用孔が、前記第1部材より小径に形成された前記第2部材の外周面に穿設されている、
請求項2に記載の接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリに車両外部から電力を供給(充電)するべく、車両に設置されるコネクタ(充電インレット)が利用されている。
このコネクタでは、搭載された蓄電装置の大容量化や充電時間の短縮などのために、大電流化が求められている。しかしながら、大電流化すると、通電によってコネクタの端子接続部における発熱によってコネクタの温度上昇が大きくなる。そこで、充電インレット等の端子接続部を有するコネクタにおいて、通電時における温度上昇を抑制することができるコネクタが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたコネクタは、電線に接続される根元部と、根元部から遠ざかるように延在して相手側コネクタの相手側端子に外周面が接触する筒状部と、を含む端子を有する。筒状部の内周面に形成された密閉空間(封入空間)には、伝熱部材(潜熱蓄熱材)が封入されている。伝熱部材は、端子と相手側端子との導通の際に筒状部で発生した熱の一部を筒状部から吸収し、吸収した熱を根元部の側に輸送する。そこで、端子の発熱箇所の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されたコネクタは、端子接続部及び電線接続部と一体に形成された保持部を有する端子と、保持部に保持された蓄熱体とを備える。蓄熱体は、保持部に保持されたケースの内部(封入空間)に収容された蓄熱材(潜熱蓄熱材)を有する。蓄熱材は、端子において発生する熱を吸収することができる。そこで、端子の急激な温度上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-197641号公報
【文献】特開2020-187920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたコネクタでは、端子の密閉空間に伝熱部材を封入するために、有底の筒状部内に伝熱部材を収容した後、根元部又は閉塞部を筒状部の開口端に接合して閉塞しなければならず、伝熱部材の封入作業が困難であった。
また、上記特許文献2に開示されたコネクタでも、端子の保持部に蓄熱材を保持するために、有底筒状のケース本体に蓄熱材を収容した後、カバーをケース本体の開口を塞ぐように溶接して固着しなければならず、蓄熱材の封入作業が困難であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子の封入空間に潜熱蓄熱材を封入する封入作業が容易な接続端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る接続端子は、下記を特徴としている。
相手端子と電気的に接続される端子接続部と、電線と電気的に接続される電線接続部と、前記端子接続部と前記電線接続部との間に設けられてハウジングに保持される保持部と、少なくとも前記保持部内に形成された封入空間と、前記封入空間に封入された潜熱蓄熱材及びガスと、前記封入空間と端子外部を連通する封入用孔と、前記封入用孔を塞ぐ栓部材と、を備え
前記保持部の横断面積が、前記端子接続部の横断面積より大きくなるように構成されている接続端子。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る接続端子によれば、端子の封入空間に潜熱蓄熱材を封入する封入作業が容易になるという効果を奏する。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る接続端子を備えた充電インレットの全体斜視図である。
図2図2は、図1に示した充電インレットの正面図である。
図3図3は、図1に示した充電インレットの分解斜視図である。
図4図4は、図3に示したベースホルダから端子付電線が分解された状態を示す斜視図である。
図5図5は、図2のA-A断面図である。
図6図6は、図4に示した接続端子の上面図である。
図7図7は、図6のB-B断面図である。
図8図8は、本実施形態に係る接続端子の1次成形品を示す縦断面図である。
図9図9は、本実施形態に係る接続端子の2次成形品を示す縦断面図である。
図10図10は、本実施形態に係る接続端子の3次成形品を示す縦断面図である。
図11図11は、本実施形態に係る接続端子の4次成形品を示す縦断面図である。
図12図12は、図11に示した4次成形品の封入空間に潜熱蓄熱材を充填する作業を示す縦断面図である。
図13図13は、図12に示した4次成形品の封入空間に潜熱蓄熱材及びガスを封入する作業を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る接続端子である端子10を備えた充電インレット1は、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に設置されるとともに、当該車両に搭載されたバッテリから延びる電線に接続されるコネクタである。充電インレット1の嵌合凹部63(図1等参照)に、相手側コネクタ(いわゆる充電ガン)を嵌合することで、車両外部からバッテリに電力が供給されて、バッテリが充電される。
【0013】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」を定義する。これら「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、充電インレット1及び相手側コネクタ(図示省略)の嵌合方向と一致しており、充電インレット1からみて嵌合方向正面側(相手側コネクタに近づく側)を「前側」と呼び、充電インレット1からみて嵌合方向解除側(相手側コネクタから遠ざかる側)を「後側」と呼ぶ。
【0014】
充電インレット1は、図1図5に示すように、一対の端子(接続端子)10と、一対の端子10が格納されるハウジング20と、を備える。一対の端子10は、一対の電線2の一端部がそれぞれ接続されて一対の端子付電線3を構成している。一対の電線2の他端部は、バッテリ(図示省略)に接続されている。電線2は、導体芯線2aと、導体芯線2aを覆う絶縁樹脂製の被覆2bと、で構成されている(図5参照)。以下、充電インレット1を構成する各部品について順に説明する。
【0015】
まず、ハウジング20について説明する。
ハウジング20は、本例では、図1及び図5等に示すように、ベースホルダ50と、内側ハウジング本体60と、外側ハウジング本体70と、を備える。ベースホルダ50、内側ハウジング本体60、及び外側ハウジング本体70の各々は、ハウジング20の骨格部品であり、ハウジング20の外表面の一部を構成している。以下、ハウジング20を構成する各部品について順に説明する。なお、ハウジング20の「骨格部品」とは、例えば、端子10と相手側端子(図示省略)との嵌合時に端子10が受ける外力に抗して端子10の位置を保持するようにハウジング20自体の形状を保つべく、十分な硬さや強度を有する部品を表す。換言すると、端子10の動作温度の上昇に起因して形状保持が困難な程度にまで軟化や脆化等が生じないような材料で構成された部品を表す。
【0016】
ベースホルダ50は、一対の端子10を左右方向に間隔を空けて互いに絶縁した状態で保持する機能を果たす。ベースホルダ50は、図4及び図5に示すように、左右方向に並ぶ一対の端子保持部31を有する樹脂ホルダ30と、樹脂ホルダ30の外周面を覆う金属ホルダ40とを、一体に備える。
【0017】
樹脂ホルダ30における各端子保持部31は、図5に示すように、前後方向に延びる段付き円筒状の形状を有している。連結部32は、一対の端子保持部31を連結している。一対の端子保持部31の内部空間には、後側から、一対の端子10が挿入されることになる。
各端子保持部31の前端部の内壁面には、図5に示すように、端子10の段部13に対応して、径方向内側に突出する環状の係止突部37が形成されている。
【0018】
金属ホルダ40は、図4及び図5に示すように、前後方向に延びる筒状部41を備えている。筒状部41の前側部分は、樹脂ホルダ30の外周形状に対応する内周形状を有しており、一対の端子保持部31及びこれら端子保持部31を左右方向に連結する連結部32の外周面を覆うように樹脂ホルダ30の後側から装着可能となっている。
そして、各端子保持部31の後端外周面と金属ホルダ40の内周面との間は、Oリング95により止水される。
【0019】
また、筒状部41の後側部分は、左右方向に並び且つ前後方向に貫通する一対の電線挿通孔46を有しており、電線挿通孔46の後方から挿入された端子付電線3の端子10が、樹脂ホルダ30の端子保持部31に挿入される。
そして、筒状部41の電線挿通孔46に挿通された電線2(被覆2b)の外周面と電線挿通孔46の内壁面との間は、パッキン93により止水される。パッキン93は、筒状部41の後端に装着されたリアホルダ80により、抜け止めされる。
【0020】
筒状部41の前端部には、当該前端部の左右方向両側部から左右方向外側に延出する一対の延出部42と、一対の延出部42の延出端部から前方に延びる一対の側壁部43とが、一体で設けられている。一対の側壁部43は、前後方向からみて、内側ハウジング本体60の後述する筒状部61(図4、参照)の外周形状(円筒形状)の周方向の一部に対応する形状を有しており、筒状部61の後端部の外周面を覆うように筒状部61に装着可能となっている。
【0021】
一対の側壁部43の外周面(左右方向外側面)には、図3に示すように、複数箇所(本例では、4箇所)にて、ボルト挿通部44がそれぞれ設けられている。各ボルト挿通部44には、前後方向に貫通するボルト挿通孔45が形成されている。ボルト挿通孔45には、充電インレット1の組み付け用のボルト(図示省略)が挿通されることになる。
ベースホルダ50における金属ホルダ40は金属製であり、樹脂ホルダ30が前側から組み付けられると共に、一対の端子10に生じる熱を吸熱・放熱する機能を果たす。
【0022】
次いで、内側ハウジング本体60について説明する。
内側ハウジング本体60は、図1~3に示すように、ベースホルダ50における一対の側壁部43の間に前側から組み付けられると共に、充電インレット1の嵌合凹部63を構成する機能を果たす。内側ハウジング本体60は、樹脂成形品であり、前後方向に延びる円筒状の筒状部61と、筒状部61の後側開口を塞ぐ後壁部62と、を一体に有する。筒状部61及び後壁部62により、前方に開口し且つ後方に窪む嵌合凹部63が画成されている。
【0023】
後壁部62には、一対の端子10の端子接続部21に対応して、一対の円筒状のメス端子収容部64が、前方に突出するように設けられている。各メス端子収容部64は、嵌合凹部63内に位置しており、前後方向に貫通する内部空間を有している。
【0024】
筒状部61の外周面における前後方向中央より後側の位置には、図3に示すように、筒状部61の径方向外側に突出する環状のフランジ部65が設けられている。フランジ部65には、金属ホルダ40の複数のボルト挿通孔47に対応して、周方向の複数箇所(本例では、4箇所)にて、前後方向に貫通するボルト挿通孔67が形成されている。ボルト挿通孔67には、内側ハウジング本体60の組み付け用のビス90が挿通されることになる。
【0025】
次いで、外側ハウジング本体70について説明する。
外側ハウジング本体70は、内側ハウジング本体60の筒状部61に前側から組み付けられると共に、ハウジング20全体を車両に設けられた充電インレット1の取付対象部(図示省略)に固定する機能を金属ホルダ40と共に果たすことができる。外側ハウジング本体70は、樹脂成形品であり、前後方向に延びる円筒状の筒状部71を有する。筒状部71は、内側ハウジング本体60の筒状部61の外周面を覆うように筒状部61に前側から装着可能となっている(図6参照)。
【0026】
筒状部71の外周面における前後方向中央より後側の位置には、図3に示すように、筒状部71の径方向外側に突出する環状のフランジ部72が設けられている。フランジ部72は、前後方向からみて長方形状の外周形状を有している。フランジ部72の4角部にはそれぞれ、前後方向に貫通するボルト挿通孔73が形成されている。ボルト挿通孔73には、充電インレット1を上記取付対象部へ固定するための組み付け用のボルト(図示省略)が挿通されることになる。
【0027】
次に、本実施形態に係る接続端子としての一対の端子10について説明する。
本例では、一対の端子10は、同形である。各端子10は、金属製であり、図6及び図7に示すように、一端側に相手端子(オス端子)と電気的に接続される端子接続部21を有し、他端側に電線2と電気的に接続される電線接続部23を有する。そして、端子接続部21と電線接続部23との間には、ハウジング20に保持される保持部22が設けられている。
【0028】
端子接続部21は、小径部11と、小径部11の前方に設けられた複数の弾性接触片14とからなるメス端子部である。複数の弾性接触片14は、略円筒形状を呈し、内部に相手端子(オス端子)が挿入される。なお、本実施形態の端子接続部21は、メス端子部に限らず、オス端子部として構成することもできる。
【0029】
小径部11の外周面には、サーミスタ97が装着される(図3参照)。これにより、端子10の温度が計測可能となり、充電インレット1の使用時(バッテリの使用時)における端子10の温度の推移が監視可能となる。
【0030】
電線接続部23は、短寸の中実柱状に形成されており、端面23aに電線2の導体芯線2aが熱圧接により接合される。なお、電線接続部23の端面23aに凹部を設け、電線2の一端部にて露出した導体芯線2aを挿入して加締め固定してもよい。
【0031】
保持部22は、小径部11の後側に位置する大径部12と、小径部11及び大径部12の境界部に形成された環状の段部13と、からなる段付き円柱状の部分を有する。段部13は、樹脂ホルダ30の係止突部37(図5参照)に係止される。
【0032】
図6及び図7に示すように、小径部11の段部13近傍の外周面には、環状溝16が形成され、大径部12の段部13近傍の外周面には、環状溝17が形成されている。環状溝16には、端子固定用のCリング91(図4,5参照)が装着される。環状溝17には、Oリング92(図4,5参照)が装着される。
【0033】
端子10は、大径部12が樹脂ホルダ30の端子保持部31に挿入されることで、ベースホルダ50に保持される。
即ち、金属ホルダ40における電線挿通孔46の後方から挿入された端子10が、樹脂ホルダ30の端子保持部31に後側から端子10が挿入されると、端子10の小径部11及び複数の弾性接触片14が端子保持部31の前端から前側に突出し、端子10の段部13が端子保持部31の係止突部37に係止される。
【0034】
この端子10のベースホルダ50への挿入が完了した状態では、図5に示すように、端子10に装着されたCリング91が係止突部37に係止されることで、端子10はベースホルダ50から抜け止めされる。また、端子10に装着されたOリング92が端子保持部31の内壁面に押圧接触することで、樹脂ホルダ30と端子10との間は、Oリング92により止水される。
【0035】
更に、本実施形態に係る端子10は、前後方向に延びる円柱状の封入空間26が少なくとも保持部22内に形成されている。本実施形態においては、封入空間26が保持部22内と電線接続部23内の一部とに形成されている。
【0036】
封入空間26が形成された保持部22の横断面積は、端子接続部21における複数の弾性接触片14の横断面積より大きくなるように構成される。即ち、端子10の構造上、保持部22は十分な通電断面積を確保できている部分であり、端子接続部21の通電断面積と同じ熱容量を確保できれば十分である。そこで、顕熱蓄熱材料である銅やアルミニウム等の金属製の端子10の内部に封入空間26が設けられて通電断面積が減少しても、熱影響は軽微と考えられる。
【0037】
そして、封入空間26には、潜熱蓄熱材33及びガス35が封入されている。電線接続部23の外周面には、封入空間26と端子外部を連通する封入用孔29が穿設されており、栓部材36によって塞がれている。即ち、この封入用孔29から潜熱蓄熱材33及びガス35を封入空間26に充填した後、封入用孔29を栓部材36で塞ぐことで、潜熱蓄熱材33及びガス35が封入空間26内に封入される。栓部材36は、封入用孔29に対して、圧入、螺合、溶接等の種々の固定方法を採り得る。
【0038】
潜熱蓄熱材33は、液体と固体の相変化時の潜熱を利用して一時的に熱を吸収することができる材料である。潜熱蓄熱材33としては、例えば、パラフィン、硫酸ナトリウム10水和物、酢酸ナトリウム3水和物、二酸化バナジウム等を用いることができる。
ガス35は、封入空間26内において液体と固体に相変化する潜熱蓄熱材33に対応するため圧縮可能なガスであり、窒素ガスや空気を用いることができる。
【0039】
上述した一対の端子10のうち、一方の端子10の端子接続部21は陽極側端子として機能し、他方の端子10の端子接続部21は陰極側端子として機能する。充電インレット1と相手側コネクタとの嵌合時、一方の端子10の端子接続部21及び他方の端子10の端子接続部21はそれぞれ、相手側コネクタが有する陽極側のオス端子部及び陰極側のオス端子部と接続されることになる。
【0040】
次に、本実施形態の端子10における封入空間26及び封入用孔29の成形例を説明する。
まず、図8に示すように、一端側に端子接続部21を有し、他端側に電線接続部23を有し、端子接続部21と電線接続部23との間に保持部22を有する端子10の1次成形品10Aが形成される。1次成形品10Aは、複数の弾性接触片14及び小径部11が端子接続部21に切削加工され、環状溝16,17、大径部12及び段部13が保持部22に切削加工される(端子切削工程)。
【0041】
次に、1次成形品10Aは、保持部22と電線接続部23との間における図8中の二点鎖線に沿って切断され、図9に示すように、端子接続部21が一体形成された第1部材24と、電線接続部23が一体形成された第2部材25とに分割される(端子切断工程)。
【0042】
そして、第1部材24の切断面24aには、封入空間26を画成する第1凹部27が前方に向かって穿設され、第2部材25の切断面25aには、封入空間26を画成する第2凹部28が後方に向かって穿設されることにより、2次成形品10Bが形成される(封入空間形成工程)。
【0043】
次に、図10に示すように、第1部材24の大径部12より小径に形成された第2部材25の外周面には、第2凹部28に連通する封入用孔29が穿設される。これにより、3次成形品10Cが形成される(封入用孔形成工程)。ここで、封入用孔29は、潜熱蓄熱材33の充填に必要な最小限の大きさの貫通孔であり、例えば潜熱蓄熱材33を封入空間26に充填するための充填ノズルが挿入可能な大きさの貫通孔である。
【0044】
そして、第1部材24の切断面24aと第2部材25の切断面25aとが突き合わせられ、例えば熱圧接(加熱圧接)により接合されることで、第1部材24と第2部材25とが一体化される(端子接合工程)。そこで、図11に示すように、第1部材24の第1凹部27と第2部材25の第2凹部28とによって、封入空間26が画成された4次成形品10Dが形成される。ここで、第1部材24の切断面24a及び第2部材25の切断面25aは、熱圧接された接合面24b及び接合面25bとなる。
【0045】
次に、図12に示すように、4次成形品10Dの封入空間26内に、封入用孔29から潜熱蓄熱材33が充填される(蓄熱材充填工程)。この際、封入空間26内に潜熱蓄熱材33を充満させずに空間を残すことで、ガス35としての空気が充填される。勿論、空気に換えて窒素ガス等の圧縮可能なガスを充填することもできる。
【0046】
次に、図13に示すように、封入空間26内に潜熱蓄熱材33及びガス35が充填された4次成形品10Dの封入用孔29が、栓部材36により塞がれる(封入用孔封止工程)。栓部材36は、圧入、螺合、溶接等の種々の固定方法により封入用孔29に対して固定することができる。
【0047】
そして、4次成形品10Dの封入空間26内に、潜熱蓄熱材33及びガス35を封入する作業が完了し、端子10が完成する。端子10は、電線接続部23の端面23aに電線2の導体芯線2aが熱圧接により接合されることで、端子付電線3を構成する。
【0048】
次に、上述した本実施形態に係る端子10の作用を説明する。
図1に示した充電インレット1に充電ガンを嵌合すると、車両に搭載されたバッテリに対して車外の充電器から、充電ガン及び充電インレット1を通じて充電電流が供給される。特に、充電時間の短縮のため、車外の充電器からバッテリに対して大きな充電電流が供給されると、充電ガンの相手端子と充電インレット1の端子10との接触部分において発熱が生じやすい。
【0049】
この時、本実施形態の端子10では、保持部22内に形成された封入空間26に潜熱蓄熱材33とガス35が封入されている。潜熱蓄熱材33は、液体と固体の相変化時の潜熱を利用して一時的に熱を吸収することができる。即ち、潜熱蓄熱材33は、端子10において生じる熱を吸収する。これにより、端子10の急激な温度上昇を抑制できる。また、潜熱蓄熱材33が熱を吸収することにより、端子10から電線2やハウジング20等へ伝わる熱量を少なくできる。このため、電線2やハウジング20等の急激な温度上昇も抑制できる。なお、封入空間26に封入された潜熱蓄熱材33は、永久的に効果を得ることができ、メンテナンスの必要性もない。
【0050】
更に、本実施形態の端子10では、潜熱蓄熱材33の充填に必要な最小限の大きさの封入用孔29が、保持部22内に形成された封入空間26と端子外部とを連通している。なお、潜熱蓄熱材33の充填に必要な最小限の大きさとは、例えば潜熱蓄熱材33を封入空間26に充填するための充填ノズルが挿入可能な大きさである。そして、封入用孔29は、封入用孔29に対応した最小限の栓部材36により塞ぐことができる。
【0051】
そこで、有底筒状のケース本体の開口をカバーで塞いで溶接しなければならなかった従来の端子に比べ、本実施形態の端子10は、封入空間26に潜熱蓄熱材33を封入する封入作業が容易となる。
【0052】
また、本実施形態の端子10は、封入空間26が形成された保持部22の横断面積が、端子接続部21の横断面積より大きくなるように構成されている。端子10の構造上、保持部22は十分な通電断面積を確保できている部分であり、端子接続部21の通電断面積と同じ熱容量を確保できれば十分である。
そこで、顕熱蓄熱材料である銅やアルミニウム等の金属製の端子10の内部に封入空間26が設けられて通電断面積が減少しても、熱影響は軽微となる。
【0053】
また、本実施形態の端子10は、端子接続部21が一体形成された第1部材24と、電線接続部23が一体形成された第2部材25とが接合されることで一体化されており、第1部材24の接合面24bと第2部材25の接合面25bには、封入空間26を画成する第1凹部27及び第2凹部28がそれぞれ形成されている。
そこで、端子10の保持部22には、気密性を有して内部圧力の変化にも耐えられる封入空間26を容易に形成することができる。
【0054】
また、本実施形態の端子10は、封入用孔29が、第1部材24の大径部12より小径に形成された第2部材25の外周面に穿設されている。
そこで、第2部材25の第2凹部28に連通する封入用孔29は、比較的短い貫通孔となり、形成が容易となる。また、封入用孔29は、潜熱蓄熱材33の充填に必要な最小限の大きさの貫通孔であり、穿孔が容易である。
【0055】
ここで、上述した本発明に係る接続端子の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 相手端子と電気的に接続される端子接続部(21)と、
電線(2)と電気的に接続される電線接続部(23)と、
前記端子接続部(21)と前記電線接続部(23)との間に設けられてハウジング(20)に保持される保持部(22)と、
少なくとも前記保持部(22)内に形成された封入空間(26)と、
前記封入空間(26)に封入された潜熱蓄熱材(33)及びガス(35)と、
前記封入空間(26)と端子外部を連通する封入用孔(29)と、
前記封入用孔(29)を塞ぐ栓部材(36)と、
を備える接続端子(端子10)。
【0056】
上記[1]の構成の接続端子によれば、保持部(22)内に形成された封入空間(26)に封入された潜熱蓄熱材(33)が、液体と固体の相変化時の潜熱を利用して一時的に熱を吸収する。そこで、潜熱蓄熱材(33)は、接続端子(端子10)において生じる熱を吸収することができ、接続端子(端子10)の急激な温度上昇を抑制できる。
また、潜熱蓄熱材(33)の充填に必要な最小限の大きさ(例えば潜熱蓄熱材を充填するための充填ノズルが挿入可能な大きさ)の封入用孔(29)が、封入空間(26)と端子外部とを連通する。そして、封入用孔29は、封入用孔29に対応した最小限の栓部材36により塞ぐことができる。そこで、有底筒状のケース本体の開口をカバーで塞いで溶接しなければならなかった従来の端子に比べ、本構成の接続端子(端子10)は、封入空間(26)に潜熱蓄熱材(33)を封入する封入作業が容易となる。
【0057】
[2] 前記保持部(22)の横断面積が、前記端子接続部(21)の横断面積より大きくなるように構成されている、
上記[1]に記載の接続端子(端子10)。
【0058】
上記[2]の構成の接続端子(端子10)によれば、接続端子(端子10)の構造上、保持部(22)は十分な通電断面積を確保できている部分であり、端子接続部(21)の通電断面積と同じ熱容量を確保できれば十分である。そこで、顕熱蓄熱材料である銅やアルミニウム等の金属製の接続端子(端子10)の内部に封入空間(26)が設けられて通電断面積が減少しても、熱影響は軽微となる。
【0059】
[3] 前記接続端子(端子10)は、前記端子接続部(21)が一体形成された第1部材(24)と、前記電線接続部(23)が一体形成された第2部材(25)とが接合されることで一体化されており、
前記第1部材(24)の接合面(24b)と前記第2部材(25)の接合面(25b)には、前記封入空間(26)を画成する第1凹部(27)及び第2凹部(28)がそれぞれ形成されている、
上記[1]又は[2]に記載の接続端子(端子10)。
【0060】
上記[3]の構成の接続端子(端子10)によれば、接続端子(端子10)の保持部(22)には、気密性を有して内部圧力の変化にも耐えられる封入空間(26)を容易に形成することができる。
【0061】
[4] 前記封入用孔(29)が、前記第1部材(24)より小径に形成された前記第2部材(25)の外周面に穿設されている、
上記[3]に記載の接続端子(端子10)。
【0062】
上記(4)の構成の接続端子(端子10)によれば、第2部材(25)の第2凹部(28)に連通する封入用孔(29)は、比較的短い貫通孔となり、形成が容易となる。また、封入用孔(29)は、潜熱蓄熱材(33)の充填に必要な最小限の大きさの貫通孔であり、穿孔が容易である。
【符号の説明】
【0063】
2…電線
10…端子(接続端子)
20…ハウジング
21…端子接続部
22…保持部
23…電線接続部
24…第1部材
25…第2部材
26…封入空間
29…封入用孔
33…潜熱蓄熱材
35…ガス
36…栓部材
図1
図2
図3
図4
図5
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