(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】超音波式膀胱治療用薬剤送達のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20231114BHJP
【FI】
A61M25/10 520
(21)【出願番号】P 2021501145
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(86)【国際出願番号】 IL2019050378
(87)【国際公開番号】W WO2019193591
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2018-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520378218
【氏名又は名称】ベンシカ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジェバ,アブナー
(72)【発明者】
【氏名】ボルパート,ジオラ
(72)【発明者】
【氏名】エフテル,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】クシュクリー,レオニード
(72)【発明者】
【氏名】シュポランスキー,ユリ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0092667(US,A1)
【文献】特表平07-503394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0197555(US,A1)
【文献】国際公開第2016/151595(WO,A1)
【文献】特開平02-152466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルであって、
(i)1つ以上のポートを介して拡張可能な1つ以上の拡張可能部分
であって、前記1つ以上の拡張可能部分の少なくとも1つが近位拡張可能部分である、拡張可能部分、および
(ii)遠位端部
、を有する管と、
前記近位拡張可能部分と前記遠位端部との間の前記管の上に搭載された少なくとも1つの超音波トランスデューサを収容する少なくとも1つの
膨張可能なトランスデューサスリーブと、を備
え、
前記少なくとも1つの膨張可能なトランスデューサスリーブは、音響波が空洞現象を発生させることなく少なくとも1つの超音波トランスデューサから前記トランスデューサスリーブまで伝播できるように構成された脱気音響流体を含み、
前記少なくとも1つの膨張可能なトランスデューサスリーブは、1つ以上の流体ポートを介して拡張可能である、
カテーテル。
【請求項2】
前
記1つ
以上の拡張可能部分
の少なくとも1つは、収縮状態から、膀胱内に
少なくとも1つの前記拡張可能部分と前記膀胱の三角部領域との間が封止された体積を形成するように、
少なくとも1つの前記拡張可能部分が
前記膀胱
の壁に対して付勢されている拡張状態まで、前記膀胱内で拡張可能である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
少なくとも1つの追加の拡張可能部分を備えており、前記トランスデューサスリーブが、前記近位拡張可能部分と前記少なくとも1つの追加の拡張可能部分との間に配設されている、請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記トランスデューサスリーブと、前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つとが、流体連通している、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
拡張状態における前記トランスデューサスリーブの最大断面積が、少なくとも前記
1つ以上の拡張可能部分の最大円周部における、前記
1つ以上の拡張可能部分のいずれか1つの最大断面積よりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のカテーテル
。
【請求項6】
前記1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つが、回転楕円体である、請求項1~5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、および前記管が、同心である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、および前記トランスデューサが、同心である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記管が、前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つの内腔内に配置された少なくとも1つの流体ポートを含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記管が、前記トランスデューサスリーブ
の内腔と流体連通している少なくとも2つの流体ポートを含んでおり、流体の流れが、前記ポート間で維持される、請求項1~
9のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記トランスデューサが、前記ポート間に位置決めされている、請求項
10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記管が、膀胱の内腔に開口している、前記管の長さに沿った少なくとも1つの治療用流体ポートを含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記遠位端部にブラインド先端部をさらに備えており、前記少なくとも1つの治療用流体ポートが、前記先端部の円周部に沿って位置決めされている、請求項
12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記トランスデューサが、前記トランスデューサと前記管の表面との間に間隙を画定するように、前記管の前記表面から持ち上げられている、請求項1~
13のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記管の上に位置決めされた少なくとも1つのスペーサをさらに備えており、前記トランスデューサが、前記少なくとも1つのスペーサの上に搭載されている、請求項1~
14のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記トランスデューサスリーブの最大円
周が、
前記1つ以上の拡張可能部分
のうちの少なくとも1つの最大円
周の50%未満である、請求項1~
15のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記管が、前記治療用流体ポートを介して流体を供給する1つ以上の導管を含む、請求項
12または
13に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つの拡張可能部分が、環状体である、請求項1~
17のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つの拡張可能部分が、前記遠位端部に向かって遠位に膨張するように構成されている、請求項1~
18のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記トランスデューサと前記
1つ以上の拡張可能部分のうちの少なくとも1つの拡張可能部分との間に配置された前記少なくとも1つの流体ポートをさらに備える、請求項1~
19のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項21】
拡張状態
において、前記トランスデューサと前記トランスデューサスリーブとの間に
体積が画定されている、請求項1~
20のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項22】
流体圧力をモニタリングするように構成された1つ以上の圧力センサをさらに備え、前記拡張可能部分および膨張可能なトランスデューサスリーブのうちの少なくとも1つは、脱気音響流体を所定の圧力に加圧することにより拡張可能である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記拡張可能部分および/または前記トランスデューサスリーブのうちの1つ以上の内部の流体温度をモニタリングするように構成された熱電対デバイスをさらに備え、脱気音響流体の流れが、熱対流により前記トランスデューサを冷却するために、前記少なくとも2つの流体ポート間で維持される、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記管が、前記トランスデューサスリーブの内腔と流体連通している流体供給ポートおよび流体除去ポートを備え、前記トランスデューサが、前記ポート間に位置決めされ、脱気音響流体の流れが、熱対流により前記トランスデューサを冷却するために前記ポート間で維持される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記流体供給ポートおよび前記流体除去ポートが、互いに対して円周方向に回転している請求項24に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月1日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR ULTRASONIC BLADDER THERAPEUTIC AGENT DELIVERY」と題する米国仮特許出願第62/651,194号からの優先権の利益を主張する。
【0002】
本出願は、2017年9月26日に出願された「ULTRASONIC URINARY BLADDER DRUG DELIVERY」と題する米国特許出願第15/561,733号と関連する。
【0003】
上記の出願の内容は、それらの全体が本明細書に完全に記載されているごとく、参照により組み込まれる。
【0004】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルに関し、より詳細には、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0005】
膀胱の膀胱内治療は、尿路上皮と呼ばれる移行上皮の内層で覆われている膀胱内面、およびその尿路上皮の上に認められるグリコサミノグリカン(GAG)単位に関係する。尿路上皮およびGAG単位の両方は、尿内に見られる毒素および老廃物に対する重要な障壁として機能し、膀胱壁にその低い透過特性を与えることができる。しかしながら、この密集して詰まった障壁はまた、膀胱内治療の間、膀胱中に送達される治療用薬剤の有効な浸透を制限する場合もある。一部の治療用分子は、膀胱障壁を全く透通しない場合がある。
【0006】
超音波空洞現象は、音波が組織の透過性を高めることができるメカニズムである。空洞現象の気泡は、高いエネルギーを伴って組織上で崩壊し、組織内の細孔を開口し、これにより、治療用薬剤に対する組織の透過性を高める結果となる。
【0007】
関連技術の前述の例およびそれに関連する限定は、例示的であり、排他的ではないことが意図されている。関連技術の他の限定は、明細書の読み取り、および図の検討に基づいて、当業者に明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0008】
以下の実施形態およびその態様は、例示的かつ例証的であることを意味するシステム、ツール、および方法に関連して説明および図示されているが、範囲を限定するのではない。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルが提供され、そのカテーテルは、管と、その管の上に搭載された2つ以上の拡張可能部分と、2つ以上の拡張可能部分の間の管の上に搭載された1つ以上の超音波トランスデューサと、2つ以上の拡張可能部分に配設され、かつ1つ以上のトランスデューサを収容するトランスデューサスリーブと、を備える。いくつかの実施形態によれば、トランスデューサスリーブおよび拡張可能部分は、単一のバルーンを含む。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、ステントを含む。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、少なくとも拡張可能部分の最大円周部における、拡張可能部分のいずれか1つの最大断面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、回転楕円体であり、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、および管は、同心である。本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、およびトランスデューサは、同心である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、拡張可能部分のうちの少なくとも1つの内腔内に配置された少なくとも1つの流体ポート、および/または膀胱の内腔に開口している管の長さに沿った少なくとも1つの流体ポートを含む。このポートは、膀胱の内腔中に流体を供給し、かつ/または膀胱から流体を排出するように構成される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トランスデューサは、管の表面から持ち上げられて、トランスデューサと管の表面との間に間隙を画定する。本発明のいくつかの実施形態によれば、トランスデューサスリーブの最大円周部は、少なくとも1つの拡張可能部分の最大円周部の50%未満であり、かつ/またはトランスデューサスリーブの膨張圧力は、拡張可能部分の膨張圧力よりも大きい。本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、ポートを介して治療用流体を供給する1つ以上の導管を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、ポートを介してガス含有流体を供給する1つ以上の導管を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、ポートを介して流体を供給する1つ以上の導管を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トランスデューサは、ガス含有治療用流体内で空洞現象を形成するように構成される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルが提供され、そのカテーテルは、管を備え、その管は、近位部分および遠位端部を有し、近位拡張可能部分は、管の近位部分の上に搭載され、1つ以上のトランスデューサは、近位拡張可能部分と遠位端部との間の管の上に搭載され、近位拡張可能部分と遠位端部との間のトランスデューサスリーブは、1つ以上のトランスデューサを収容する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの1つ以上は、バルーンを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、バルーンは、環状体であり、かつ/または遠位端部に向かって遠位に膨張するように構成される。本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、膀胱の内腔に開口し、かつ/またはトランスデューサとバルーンとの間に配置されている、その管の長さに沿った少なくとも1つの流体ポートを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、そのポートは、膀胱の内腔中に流体を供給し、かつ/または膀胱から流体を排出するように構成される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トランスデューサスリーブの最大円周部は、バルーンの最大円周部の50%未満である。いくつかの実施形態によれば、トランスデューサとトランスデューサスリーブとの間の体積が、画定される。いくつかの実施形態によれば、トランスデューサスリーブの膨張圧力は、バルーンの膨張圧力よりも大きい。本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、ポートを介して治療用流体を供給する1つ以上の導管を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使用して膀胱を治療するための方法が提供され、その方法は、尿道を介して膀胱中にカテーテルの遠位拡張可能部分を挿入することと、拡張可能部分を拡張させることと、カテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通して、膀胱中に治療用流体を供給することと、膀胱内のカテーテルを前進させ、膀胱中にカテーテルの近位拡張可能部分を挿入することと、近位拡張可能部分を拡張し、遠位拡張可能部分と近位拡張可能部分との間に治療用流体を閉じ込めることと、超音波を適用して治療用流体内に空洞現象を形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使用して膀胱を治療するための方法は、超音波エネルギーを放出するのを停止した後に、カテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通して膀胱中に治療用流体を供給することを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法は、拡張可能部分の間のポートを通して治療用流体を供給することを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、治療用流体は、ガス状の治療用流体である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使用して膀胱を治療するための方法が提供され、この方法は、尿道を介して膀胱中にカテーテルの遠位拡張可能部分を挿入することと、拡張可能部分を拡張することと、カテーテル内の少なくとも1つの流体ポートを通して、膀胱にガス含有流体を供給することと、超音波エネルギーを放出してガス含有流体内で空洞現象を形成することと、膀胱内容物を排出することと、カテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通して、膀胱中に治療用流体を供給することと、超音波エネルギーを放出して治療用流体内で空洞現象を形成することと、を含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法は、ガス含有流体を膀胱中に供給する前に、生理食塩水を使って膀胱を排出して洗い流すことを含む。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、膀胱内容物の排出、および/またはカテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通した膀胱への治療用流体の供給の間に、超音波エネルギーを放出するのを停止することを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルが提供され、そのカテーテルは、近位拡張可能部分および遠位端部を有する管と、近位拡張可能部分と遠位端部との間の管の上に搭載された少なくとも1つの超音波トランスデューサを収容する少なくとも1つのトランスデューサスリーブと、を備える。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カテーテルが提供されており、そのカテーテルでは、少なくとも1つの拡張可能部分は、収縮状態から、膀胱内に拡張可能部分と当該膀胱の三角部領域との間が封止された体積を形成するように、拡張可能部分が膀胱壁に対して付勢されている拡張状態まで、膀胱内で拡張可能である。
【0024】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、少なくとも1つの追加の拡張可能部分を備えており、トランスデューサスリーブは、近位部分と少なくとも1つの追加の拡張可能部分との間に配設される。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブと、拡張可能部分のうちの少なくとも1つとは、流体連通する。
【0025】
いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、少なくとも拡張可能部分の最大円周部において、拡張可能部分のいずれか1つの最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、回転楕円体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、および管は、同心である。いくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、およびトランスデューサは、同心である。いくつかの実施形態では、管は、拡張可能部分のうちの少なくとも1つの内腔内に配置された少なくとも1つの流体ポートを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、管は、トランスデューサスリーブの内腔と流体連通している少なくとも2つの流体ポートを含んでおり、流体の流れは、ポート間で維持される。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、ポートの間に位置決めされる。
【0028】
いくつかの実施形態では、管は、膀胱の内腔に開口しているその管の長さに沿った少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、カテーテルは、遠位端部においてブラインド先端部を含み、少なくとも1つの治療用流体ポートは、先端部の円周部に沿って位置決めされる。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、トランスデューサと管の表面との間に間隙を画定するように、管の表面から持ち上げられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、管の上に位置決めされた少なくとも1つのスペーサを含み、トランスデューサは、少なくとも1つのスペーサの上に搭載される。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブの最大円周部は、少なくとも1つの拡張可能部分の最大円周部の50%未満である。いくつかの実施形態では、管は、当該治療用流体ポートを介して流体を供給する1つ以上の導管を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能部分は、環状体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能部分は、遠位端部に向かって遠位に膨張するように構成される。いくつかの実施形態では、カテーテルは、トランスデューサと少なくとも1つの拡張可能部分との間に配置された少なくとも1つの流体ポートを備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、拡張状態である体積は、トランスデューサとトランスデューサスリーブとの間に画定される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使用して膀胱を治療するための方法が提供され、その方法は、尿道を介して膀胱中にカテーテルの遠位拡張可能部分を挿入することと、拡張可能部分拡張させることと、カテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通して、膀胱中に治療用流体を供給することと、膀胱内のカテーテルを前進させ、膀胱中にカテーテルの近位拡張可能部分を挿入することと、近位拡張可能部分を拡張し、遠位拡張可能部分と近位拡張可能部分との間に治療用流体を閉じ込めることと、治療用流体内に空洞現象を形成することと、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、この方法は、拡張可能部分の間のポートを通して治療用流体を供給することを含む。いくつかの実施形態では、治療用流体は、ガス状の治療用流体である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使用して膀胱を治療するための方法が提供され、この方法は、尿道を介して膀胱中にカテーテルの遠位拡張可能部分を挿入することと、カテーテル内の少なくとも1つの流体ポートを通して、膀胱中に流体を供給することと、超音波エネルギーを放出し、ガス含有流体内で空洞現象を形成することと、膀胱の内容物を排出させることと、カテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通して、膀胱中に治療用流体を供給することと、を含む。いくつかの実施形態では、当該流体は、ガス含有される。
【0035】
いくつかの実施形態では、この方法は、膀胱中に治療用流体を供給する前に、カテーテルの遠位拡張可能部分を拡張することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、ガス含有流体を膀胱中に供給する前に、生理食塩水を使って膀胱を排出して洗い流すことを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、この方法は、膀胱内容物の排出、および/またはカテーテル内の少なくとも1つの治療用流体ポートを通した膀胱への治療用流体の供給の間に、超音波エネルギーを放出するのを停止することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、超音波エネルギーを放出する前に、近位拡張可能部分を前進させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、超音波エネルギーを放出する前に、近位拡張可能部分を拡張させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
例示的な実施形態は、参照図に示されている。図に示されているコンポーネントおよび機構の寸法は、概して、表示の便宜と明確さのために選択されており、必ずしも縮尺どおりに示されていない。各図は、以下に列挙されている。
【
図1A-1B】まとめて
図1と呼び、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを単純化した説明図の平面図、および
図1Aの円で囲まれた領域の拡大斜視図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の斜視図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の斜視図である。
【
図4A-4D】本発明のいくつかの実施形態による、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施方法の単純化した説明図の平面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開するための方法のフローチャートである。
【
図6A-6E】本発明のいくつかの実施形態による、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施方法の単純化した説明図の平面図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開するための方法のフローチャートである。
【
図8A-8B】まとめて
図8と呼び、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを単純化した説明図の平面図、および
図8Aの円で囲まれた領域の拡大斜視図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルの単純化した説明図の側面図である。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態による、超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施パラメータの典型的な表である。
【
図16】各治療後の排尿筋の伸縮性のグラフであり、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用した治療が、未治療組織、およびゴールドスタンダードの100単位Botox(登録商標)膀胱内注射と比較されている。
【
図17】術前膀胱機能を14日術後膀胱機能と比較した、2人の患者からの有効性データの表である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
超音波空洞現象メカニズムに存在するいくつかの課題は、空洞現象が、治療用薬剤送達を高めるために、治療される組織表面付近の流体に形成する必要がある場合が存在し得ることである。さらに、空洞現象気泡は、超音波トランスデューサ表面の近くまたはその表面上に形成するのを防止する必要があり、それによって、超音波を阻止する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルが提供される。いくつかの実施形態では、そのカテーテルは、管、その管の上に搭載された1つ以上のトランスデューサ、少なくとも1つの拡張可能部分、およびトランスデューサスリーブを備える。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、1つ以上のトランスデューサを密閉するように構成されており、密閉されたトランスデューサとトランスデューサスリーブの壁との間に、体積が画定される。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、少なくとも2つの拡張可能部分の間に配設される。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、少なくとも2つの拡張可能部分を相互接続する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、流体を、少なくとも1つの拡張可能部分のうちの少なくとも1つに供給し、またはそれから除去するように構成された少なくとも1つの流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、流体ポートを介してその部分の中に供給される流体によって膨張する。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、拡張可能である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、膀胱中に治療用流体を供給するように構成された少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、管は、その管の遠位端部において少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、管は、トランスデューサスリーブと、拡張可能部分のどちらか一方との間に少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、管は、トランスデューサスリーブと近位拡張可能部分との間に少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。本明細書で使用されるとき、「近位」という用語は、操作者に近く、治療される対象から離れることを意味し、「遠位」という用語は、操作者から隔たって、治療される対象に向かうことを意味する。いくつかの実施形態では、流体は、治療用流体ポートを介して除去することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、拡張状態における少なくとも1つの拡張可能部分は、球体または回転楕円体として成形される。いくつかの実施形態では、拡張状態における少なくとも1つの拡張可能部分は、環状体である。いくつかの実施形態では、拡張状態における少なくとも1つの拡張可能部分は、C字形断面を含む。いくつかの実施形態では、拡張状態における少なくとも1つの拡張可能部分は、傘型構成を含む。いくつかの実施形態では、カテーテルは、トランスデューサスリーブによって相互接続された2つの拡張部分を有する「犬用の骨」として、拡張状態において成形される拡張可能部分を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能部分は、トランスデューサスリーブから離れた内部膀胱表面の少なくとも一部を維持するように構成される。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、内腔を画定し、カテーテルは、内腔を介して横断する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトランスデューサが、トランスデューサスリーブ内腔内のカテーテルの一部の上に搭載される。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、流体によって取り囲まれ、その流体は、トランスデューサと、トランスデューサを取り囲むトランスデューサスリーブとの間に画定される体積を占有する。発明のいくつかの実施形態では、流体は、密閉されたトランスデューサを冷却する。いくつかの実施形態では、流体は、トランスデューサによって生成された音波の効率的な送達のための音響流体である。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、拡張状態におけるトランスデューサスリーブは、円筒形である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分のいずれか1つの最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分の最大断面積の3分の2である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分の最大断面積の3分の1である。いくつかの実施形態によれば、管、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、およびトランスデューサスリーブは、同心である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分は、膨張状態において膀胱体積の一部を占有するように構成され、同時に、トランスデューサスリーブ壁、トランスデューサスリーブの各端部に配設された拡張部分の壁、および膀胱壁によって画定される治療体積を画定する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、膨張状態において膀胱体積の少なくとも2分の1を占有する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、膀胱が膨張状態にあるときに、膀胱体積の3分の1~3分の2を占有する。この構成により、治療用薬剤が、トランスデューサ付近の治療体積中に膀胱内の流体を入れることが可能になり、同時に、膀胱の敏感領域、例えば、膀胱の内面の膀胱三角部を治療用薬剤によって処理されること、および/またはトランスデューサが伝送したエネルギーによって影響を及ぼされることから保護する。本発明のいくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの少なくともいくつかは、拡張状態において膀胱の内面に圧力を加えるように構成される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、拡張状態において膀胱壁と係合し、治療体積から、拡張可能部分と膀胱壁との間への流体の排出を阻止するように構成される。いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分が、膀胱壁と同心である管を維持する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分およびトランスデューサスリーブは、管の上に搭載された同じバルーンの一部である。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、非弾性であり、拡張した寸法を固定する。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、剛性であり、または堅くする要素を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カテーテルは、トランスデューサと管との間に間隙を含む。いくつかの実施形態では、その間隙は、0.05mm~4mmの範囲である。いくつかの実施形態によれば、その間隙は、0.1mm~2.5mmの範囲である。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、スペーサを介して管に接続される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルが提供される。このカテーテルは、管と、近位拡張可能部分と、管の近位拡張可能部分と遠位端部との間の管の上に搭載された1つ以上のトランスデューサと、トランスデューサのうちの1つ以上を密閉するトランスデューサスリーブとを、備える。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、収縮状態および拡張状態を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分およびトランスデューサスリーブは、別々のバルーンを含む。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分およびトランスデューサスリーブは、1つのバルーンの一部を含む。いくつかの実施形態では、拡張状態における近位拡張可能部分は、球体または回転楕円体として成形される。いくつかの実施形態では、拡張状態における近位拡張可能部分は、環状体として成形される。いくつかの実施形態では、拡張状態における近位拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、C字形断面を含む。いくつかの実施形態では、拡張状態における少なくとも近位拡張可能部分は、傘型構成を含む。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、管は、治療用流体を膀胱中に供給するように構成された少なくとも1つの治療用流体ポートを含む。いくつかの実施形態では、治療用流体ポートは、トランスデューサスリーブと近位拡張可能部分との間に配置される。いくつかの実施形態では、流体は、治療用流体ポートを介して除去することができる。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、近位拡張可能部分は、拡張状態において膀胱内の既定の位置に管を保持するバルーンを含む。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分は、拡張状態において膀胱壁と係合し、膀胱内の治療体積から、近位拡張可能部分壁と膀胱壁との間への流体の排出を阻止するように構成される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張状態におけるトランスデューサスリーブは、トランスデューサスリーブの長さの少なくとも一部において一様な断面を有する円筒形である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積の3分の2である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積の50%未満である。いくつかの実施形態によれば、管、近位拡張可能部分、およびトランスデューサスリーブは、同心である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張状態におけるトランスデューサスリーブは、管の遠位端部に配置された先端と、拡張状態において拡張可能部分の円周部により画定された平面との間に延在する仮想円錐とは交差しない。本発明のいくつかの実施形態によれば、トランスデューサスリーブは、非弾性であり、拡張する寸法を制限する。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブは、剛性であり、または堅くする要素を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤流体は、非ガス含有流体であってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、治療用薬剤流体内で生成する空洞現象気泡の量は、ガス含有する治療用薬剤流体を提供することによって増加する。したがって、本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを使って使用される治療用薬剤内で空洞現象気泡の量を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、その方法は、殺菌した液体を、ガスを使って加圧し、「ガス含有液体」を生成することを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、治療用薬剤を、ガス含有液体の中に解放し、ガス含有治療用流体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを介して、ガス含有治療用流体を膀胱に挿入することと、治療用流体内に空洞現象を形成することと、を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、その方法は、例えば、ガスを使って、殺菌した液体を加圧することを含み、約8~30気圧の圧力で、かつ所定の持続時間の間加圧することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤流体は、ガス含有流体ではなく、非ガス含有流体と共に混合される。
【0057】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、バルーン、ステント、またはそれらの任意の組み合わせなどの拡張可能部分を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能部分が、ステントを含む。
【0058】
以降に、
図1Aおよび1Bを参照し、まとめて
図1と呼び、これは、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを単純化した説明図である拡大斜視図を伴う側面図である。
図1に示すように、カテーテル10は、管11と、管11の上に搭載されたトランスデューサ30と、管11の上に搭載された拡張可能部分20と、密閉トランスデューサ30を備える。
図1に示す典型的な実施形態では、拡張可能部分20は、バルーンである。いくつかの実施形態では、拡張可能部分20は、2つの拡張可能部分24および26を備え、それらの拡張可能部分は、それらの間に配設されたトランスデューサスリーブ22に結合され、かつそのトランスデューサスリーブを挟んでいる。管11は、少なくとも1つの流体ポート14および15を含み、それらの流体ポートは、流体を、バルーン20の部分22、24、および26のうちの少なくとも1つに供給するか、またはそこから除去するように構成されている。トランスデューサスリーブ22は、トランスデューサ30をカプセル化し、トランスデューサスリーブ22の壁とトランスデューサの壁との間の体積を画定している。
【0059】
いくつかの実施形態では、管は、1つ以上の導管、または言い替えると、流体供給チャネルを含み(図示せず)、それらのチャネルは、流体供給源から1つ以上のポートに流体を供給する。本明細書で使用されるとき、「導管」および「流体供給チャネル」という用語は、交換可能である。1つ以上の流体供給チャネルは、管の内部、または管の外面に沿って配設されている。いくつかの実施形態では、流体ポートのうちの1つ、例えばポート14を介して流体を提供すること、および別の流体ポート、例えばポート15を介して流体を除去することによって、流体の流れが、バルーン20内、および少なくともトランスデューサスリーブ22の内部体積内で生成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、バルーン中に提供される流体は、音響流体を含む。「音響流体」という用語は、本明細書で言及されているように、高い空洞現象エネルギー閾値を有する流体と関連し、この流体は、音響波と干渉し得る超音波の動作中にこの液体内での空洞現象気泡の形成を防止し、カテーテルへの損傷を防止する。この音響流体により、超音波エネルギーの効率的な進行が可能になる。この流体の態様としては、それが空洞現象を低減することであり、この流体は、超音波エネルギーがトランスデューサから膀胱内面に進行するのを阻止することができる。このような流体は、脱気流体、例えば、沸騰処理した生理食塩水などの脱気溶液、またはその流体のガス内容物をフィルタ除去した溶液であってもよい。音響流体は、トランスデューサ30によって生成された音波を、トランスデューサスリーブ22の表面を通って、トランスデューサスリーブを取り囲む治療用流体に伝達するのを助ける。音響流体はまた、密閉されたトランスデューサ30を、例えば、熱対流によって、冷却することもできる。トランスデューサの冷却によって、トランスデューサは、より長い治療持続時間の間、所望のパラメータで動作することができる。さらに、加熱れたトランスデューサによる膀胱組織の過熱が、回避される。
【0061】
トランスデューサスリーブ22中に提供される音響流体は、空洞現象の発生のための核形成シーズとしての役割を果たすための気泡を含まず、したがって、トランスデューサ30から膀胱壁に向かう空洞現象を遠ざける。超音波は、空洞現象を発生させずに、トランスデューサから音響流体を通って伝播し、したがって、この媒体通ってスリーブ22の表面に向かって自由に移動する。次いで、この波動は、スリーブと膀胱との間の治療体積内に配置された治療用流体を通って、膀胱組織に向かって移動する。治療用流体内では、空洞現象が発生し、それによって、治療用薬剤の、膀胱への送達が生じる。これにより、膀胱内部で治療用流体に晒されるトランスデューサよりも、トランスデューサを膀胱内面からより遠くに配設することを可能になる。同じ発明者による米国特許出願第15/561,733号に詳細に記載されているように、空洞現象の生成は、超音波治療の有効性を高める。
【0062】
図1および
図1Aに図示してある典型的な実施形態に示すように、管11は、複数の流体ポート(複数可)17を含む先端部16を含む。いくつかの実施形態では、先端部16は、凸状であり、カテーテルの、膀胱へのより容易な挿入を可能にし、膀胱内でのカテーテルの展開中に膀胱の内面への不測の損傷を低減するように構成されている。いくつかの実施形態では、先端部16は、先端部の遠位端部において、流体ポートを有する長円形の幾何形状を有する。いくつかの実施形態では、先端部16は、ポートを有さない。膀胱流体ポート17は、例えば、以下の機能、すなわち、治療用流体を膀胱中に挿入すること、治療用流体を膀胱から除去すること、治療用流体を除去するための生理食塩水などの組織洗浄液を挿入すること、および膀胱から流体、例えば、治療前に尿膀胱を満たしている尿を除去すること、のうちの1つ以上のために使用することができる。
いくつかの実施形態では、先端部16の形状は、環状体、トーラス、円板、球体、および半球体のうちの1つである。いくつかの実施形態では、先端部16は、剛性または半剛性である。いくつかの実施形態では、ポート(複数可)17は、先端部16の円周部の少なくとも一部に沿って分布している。いくつかの実施形態では、先端部16は、ポート(複数可)17に対して遠位に位置決めされた表面40を含む。いくつかの実施形態では、表面40の形は、丸い。いくつかの実施形態では、先端部16は、ふさがっている。いくつかの実施形態では、管11内を流れる流体は、ポート(複数可)17を出る。
【0063】
複数の開口部(ポート)の潜在的な利点としては、複数のポートは、流体を挿入または除去するときに詰まったポートがある場合、冗長性を提供することである。トランスデューサスリーブおよび拡張可能部分が別個のバルーンに配設されているいくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療用流体ポートは、トランスデューサスリーブと拡張可能部分との間の管に配設することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療用流体ポートは、いずれの拡張可能部分によっても覆われていない近位管部分において、管に配設することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、流体ポート(複数可)17は、カテーテルおよび/または管の長手方向軸の周りの半径方向に位置決めされている。いくつかの実施形態では、流体ポート(複数可)17は、流体ポート(複数可)17から流れる流体が、カテーテルおよび/または管の長手方向軸に対して非ゼロの角度で取り出されるように、位置決めされている。
【0065】
例えば、
図1および
図1Aに図示してある典型的な実施形態では、カテーテル10が膀胱内に挿入されて、先端部16が領域5’’とマークされた膀胱の壁(例えば、三角部と反対側の表面)、または尿膀胱壁の他の部分に対して付勢されているときに、膀胱壁は、流体ポート(複数可)17を妨害しない。
【0066】
いくつかの実施形態では、先端部16は、管11の遠位部分11bの遠位開口部を含む。いくつかの実施形態では、先端部16は、表面40において、少なくとも1つのポート17を含む。いくつかの実施形態では、先端部16は、網目などの少なくとも1つの開口部を備えるカバーを含む。いくつかの実施形態では、先端部16カバーは、剛性または半剛性である。いくつかの実施形態では、カバーは、先端部16の周りの体積を画定する。
【0067】
例えば、いくつかの実施形態では、カテーテル10が膀胱中に挿入されて、先端部16のカバーが膀胱の壁、例えば、領域5’’とマークされた膀胱の遠位部分(三角部の反対側の表面など)、または尿膀胱壁の他の部分に対して付勢されるとき、膀胱壁は、先端部16のカバーの少なくとも1つの開口部を塞がない。
【0068】
いくつかの実施形態では、トランスデューサのうちの少なくとも1つ、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、および管は、同心である。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの拡張可能部分は、同心である。いくつかの実施形態では、トランスデューサ、および少なくとも1つの拡張可能部分は、同心である。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ、および少なくとも1つの拡張可能部分は、同心である。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブおよびトランスデューサは、同心である。
【0069】
カテーテル、拡張可能部分、トランスデューサスリーブ、および/またはトランスデューサの位置が同心であることの利点は、カテーテルが、内部膀胱壁とトランスデューサとの間の等距離を維持し、その結果、膀胱壁の治療される部分が、等しいかまたはほぼ等しく、治療を受けることができることである。さらに、いくつかの実施形態では、膀胱壁の治療される部分は、所定の様々な治療を受けることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、管11は、ポート14/15/17のうちの1つ以上に流体を供給する1つ以上の導管を含む。いくつかの実施形態では、各導管は、特定のポート14/15/17に開口されている。いくつかの実施形態では、各導管は、別個のポート14/15/17に開口されている。いくつかの実施形態では、ある導管が、ポート14/15/17のうちの少なくとも1つに開口されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、管の内腔11は、少なくとも1つの導管を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導管は、カテーテル10の近位開口部34/36/38と流体連通している。
【0072】
いくつかの実施形態では、カテーテル10は、少なくとも1つの近位開口部34/36/18を含み、流体は、その近位開口部を通って、1つ以上のポート14/15/17を出入りする。いくつかの実施形態では、近位開口部34/36/38は、例えば、治療用流体、流体(例えば、生理食塩水)、ガス含有流体、および音響流体などの流体のためのリザーバと流体連通している。いくつかの実施形態では、近位開口部34/36/38は、排出バッグと流体連通している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導管は、近位開口部34/36/38のうちの1つ以上に結合されている。いくつかの実施形態では、近位開口部34/36/38の各々は、ポート14/15/17のうちの少なくとも1つと流体連通している。
【0073】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、膀胱1内での超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達の実施を説明する簡略化した斜視図である。
図2に図示してある典型的な実施形態では、拡張可能部分24および26は、回転楕円体の幾何形状であり、かつ拡張状態にある。いくつかの実施形態では、拡張可能な回転楕円体部分24および26の両方は、膀胱体積の一部を占有し、それによって、拡張可能な回転楕円体部分24および26と膀胱壁5との間にトランスデューサスリーブ22を取り囲む治療体積7を形成している。この構成の潜在的な利点は、膀胱1内に配設された治療用薬剤が、トランスデューサ30と膀胱壁5との間の治療体積7に方向付けられることであり、膀胱組織および治療体積7での治療を膀胱壁の部分5’に限定し、トランスデューサ30により形成された空洞現象の完全な効果から利益を得る。さらに、いくつかの実施形態では、この構成は、膀胱1内の流体を含む治療用薬剤を治療体積7に方向付けし、同時に、例えば、膀胱1の内面での膀胱三角部の領域が、トランスデューサ30により伝達された治療用薬剤および/またはエネルギーによって処理されるのを保護する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分24および26は、拡張状態において、膀胱体積の30%~70%を占有する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分24および26は、拡張状態において、膀胱体積の40%~60%を占有する。
【0074】
通常、弛緩した状態では、膀胱壁の形状は、波状である。いくつかの実施形態では、膨張したバルーン20は、膀胱1の内面5内に複数の方向に張力を加え、それによって、
図2に示すように、拡張可能部分24と26との間の治療体積7に隣接する、少なくとも領域5’内の膀胱の膀胱壁の少なくとも一部をまっすぐにする。
【0075】
拡張したバルーンが既定の圧力において予測可能な幾何形状および寸法を有するため、トランスデューサ30を取り囲む治療体積7の測定値もまた、予測可能である。拡張可能部分24および26は、トランスデューサ30と、治療される膀胱表面5’との間の所定の距離L1を画定することになる、完全拡張状態での円周部を有するように設計することができる。いくつかの実施形態では、治療される組織をトランスデューサから等距離に置くことによって、均一な治療が達成される。いくつかの実施形態では、治療用流体内の治療用薬剤の濃度は、予測可能な治療体積7によって決定される。膀胱の組織を伸縮することは、膀胱組織への治療用薬剤の透過性を高めることによって、治療の有効性に寄与する。さらに、そのような構造上の構成は、膀胱壁を安定化させ、膀胱壁の、高温のトランスデューサ表面上での崩壊、またはそれへの接近を防止することによって、手技の安全性を高める。さらに、トランスデューサスリーブ22は、膀胱とトランスデューサ30との間の直接的な接触を防止する。
【0076】
いくつかの実施形態では、また本明細書の他所でさらに詳細に説明されているように、拡張可能部分のうちの1つ以上は、ステントである。
【0077】
いくつかの実施形態では、例えば、尿膀胱の治療では、膀胱が垂直方向またはほぼ垂直方向に位置され、三角部が尿膀胱の最も低い部分である場合に、手技が実行される。いくつかの実施形態では、
図2に示すように、遠位拡張可能部分26は、領域5’’とマークされた膀胱の遠位部分(例えば、三角部の反対側の表面)を封止しない。次いで、ポート17を通って提供される治療用流体は、例えば、重力によって、または圧力勾配によって、体積7の中に流れることができる。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分24は、
図2に例示するように、膀胱の近位表面と係合する。拡張状態において、拡張可能部分24は、膀胱壁に押し付けられる治療体積7からの流体の排出を阻止することができる。拡張可能部分24は、膀胱の近位表面に押し付けられ、その表面を封止することができる(例えば、重力、流体圧力、遠位膀胱表面を押し付ける遠位回転楕円体などの静的な力によって)。それによって、治療用流体は、治療の間、治療体積7内に留まり、同時に、拡張可能部分24の上方に位置する膀胱組織は、治療用流体および音響エネルギーによって晒され、かつ処理されることから保護される。
【0078】
いくつかの実施形態では、近位および/または遠位の拡張可能部分24/26は、膀胱壁の一部を超音波エネルギーからシールドする。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分24は、三角部を超音波エネルギーからシールドする。いくつかの実施形態では、近位および/または遠位の拡張可能部分24/26は、トランスデューサからの熱放散を高める冷却流体フローのための容器としての役割を果たす。
【0079】
いくつかの実施形態では、近位および/または遠位の拡張可能部分24/26のうちの少なくとも1つは、高音響インピーダンスを有し、したがって超音波エネルギーに対して非伝導性である流体で満たされる。いくつかの実施形態では、非伝導性流体は、近位および/または遠位の拡張可能部分24/26のうちの少なくとも1つを膨張させる。いくつかの実施形態では、非伝導性流体は、膀胱(例えば、三角部)の未治療領域への、超音波エネルギーの伝達を防止する。
【0080】
1つ以上の拡張可能部分24/26内に非伝導性流体を有することの潜在的な利点は、超音波エネルギーが、治療されない膀胱の一部に伝達されないことである。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、拡張可能部分24は、カテーテル支持体として機能し、膀胱1内の管11の位置を固定する。いくつかの実施形態では、膀胱1の内面5と係合する1つ以上の拡張部分内の流体は、膀胱壁と流体との間の熱伝達によって膀胱を冷却する。
【0082】
いくつかの実施形態では、拡張可能部分24/26の体積および/または形状は、膀胱治療表面5’とトランスデューサ30との間の距離を決定する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分24/26の体積および/または形状は、膀胱治療表面5’とトランスデューサ22との間の距離を決定する。いくつかの実施形態では、膀胱治療表面5’と、トランスデューサ30および/またはトランスデューサ22との間の距離は、予め決定されている。
【0083】
膀胱治療表面5’の温度は、トランスデューサによって放出される熱と相関している。したがって、トランスデューサ30と膀胱治療表面5’との間の距離を増やすことは、膀胱治療表面5’の過熱を防止する。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30と膀胱治療表面5’との間の距離を増やすことにより、例えば、トランスデューサによって放出される定時の時間および/または周波数を増やすことによって、トランスデューサ30をより高い温度に加熱することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、トランスデューサによって放出される周波数を高めることは、治療用流体(および/またはガス含有流体および治療用流体の混合)内の空洞現象を高めることによる治療の有効性を増加させる。いくつかの実施形態では、トランスデューサの定期時間を増やすことは、治療用流体(かつ/またはガス含有流体および治療用流体の混合)内の空洞現象を高めることによる治療の有効性を増加させる。
【0085】
図3に示すように、本発明のいくつかの実施形態によれば、拡張可能部分24および26は、それらの間にあるシリンダ23を画定し、シリンダの壁は、破線によって輪郭が示されており、Y1およびY2において、それぞれ、拡張可能部分24/26の最大円周部と一致する。いくつかの実施形態では、また本明細書の他所で詳細に説明されているように、Y3において得られるトランスデューサスリーブ22の最大断面積は、拡張部分24および26の最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張可能部分24および26の直径D10は、拡張状態において、20mm~40mmである。いくつかの実施形態では、拡張可能部分24および26の直径D10は、拡張状態において、20~40mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ22の直径D20は、5mm~15mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ22の直径D20は、6mm~12mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ22の直径D20は、8mm~10mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブの長さL30は、拡張状態において、5~25mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブの長さL30は、拡張状態において、10~15mmである。
【0086】
いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブは、その長さの少なくとも一部において、一様な断面を有する円筒形である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積の3分の2である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における近位拡張可能部分の最大断面積の50%未満である。いくつかの実施形態によれば、管、近位拡張可能部分、およびトランスデューサスリーブは、同心である。
【0087】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の長さは、3~20mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の長さは、4~14mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の長さは、5~10mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の長さは、6mmである。
【0088】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の幅は、3~14mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の幅は、3~7mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の幅は、3~5mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の幅は、4mmである。
【0089】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の厚さは、10~40mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の厚さは、15~30mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の厚さは、15~23mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30の厚さは、20mmである。
【0090】
いくつかの実施形態では、バルーン壁は、例えば、バルーン壁の一部のみが弾性的に拡張可能であるように、可変弾性を有する領域を含む。例えば、互いに正反対の、拡張可能部分24の面24aおよび24c(
図1)は、非弾性面として作製され得、これに対して、拡張可能部分24の円周部の沿った面24bは、伸縮自在に柔軟であり、したがって、部分24の拡張は、カテーテル管11に沿って半径方向により大きな拡張となり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、球体、回転楕円体、および環状体のうちの少なくとも1つとして成形される。いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、C字形断面を含む。いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、傘型構成を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブは、円筒形である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分のいずれか1つの最大断面積よりも小さい。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分の最大断面積の3分の2である。いくつかの実施形態では、拡張状態におけるトランスデューサスリーブの最大断面積は、トランスデューサスリーブの長手方向軸に沿った任意の点で、拡張状態における拡張可能部分の最大断面積の3分の1である。いくつかの実施形態では、管、拡張可能部分のうちの少なくとも1つ、およびトランスデューサスリーブは、同心である。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、拡張可能部分は、膨張状態において膀胱体積の一部を占有するように構成され、同時にトランスデューサスリーブ壁、トランスデューサスリーブの各端部に配設される拡張部分の壁、および膀胱壁によって画定される治療体積を画定する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、膨張状態において膀胱体積の少なくとも2分の1を占有する。いくつかの実施形態では、拡張可能部分は、膀胱が膨張状態にあるとき、膀胱体積の3分の1~3分の2を占有する。この構成により、治療用薬剤が、トランスデューサ付近の治療体積中に膀胱内の流体を収容することが可能になり、同時に、膀胱の敏感領域、例えば、膀胱の内面における膀胱三角を治療用薬剤によって処理されること、および/またはトランスデューサが伝送したエネルギーによって影響を及ぼされることから保護する。本発明のいくつかの実施形態では、拡張可能部分のうちの少なくともいくつかは、拡張状態において膀胱の内面に圧力を加えるように構成される。
【0094】
いくつかの実施形態では、バルーンのいずれかの成形は、成型、特異な厚さ、様々な材料、一体化要素等によって行うことができる。バルーン部分のいずれかを成形するための別の方法が、スリーブまたは網などの外部要素によるその膨張を制限することによって可能である。
【0095】
いくつかの実施形態では、管11は、その長さ全体にわたって、一様な断面を有する。いくつかの実施形態では、管11の遠位部分11bは、管11の近位部分11aの直径よりも小さい直径を含む。いくつかの実施形態では、
図1の
図Aに示すように、部分11bは、遠位先端部16を含む。いくつかの実施形態では、部分11bは、トランスデューサ30の近位縁端部の下で、管11に接続されている。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30は、トランスデューサ30の外面が管11の近位部分11aを面一に位置決めされるように、管11の部分11bの上に搭載されている。いくつかの実施形態では、部分11bは、管11内に挿入される細い管部分を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、ポート14/15の各々は、別個の流体供給チャネルによって供給されるため、拡張可能部分24/26がトランスデューサスリーブ22を介して流体連通している場合でも、流体をポート15を介して拡張可能部分26に供給することにより、必ずしも拡張可能部分24を拡張させる必要はなく、その逆もまた同様である。いくつかの実施形態では、ポート15は、管11の別個の流体供給チャネルに関連付けられている。いくつかの実施形態では、ポート14は、ポート15によって流体を提供したときに、閉鎖されるように構成されている。ポート14/15の構成の潜在的な利点は、展開中に拡張可能部分26が膨張するように構成されているが、一方では、拡張可能部分24は、依然として尿道3内にあり、すなわち、治療される被験者に苦痛を与える可能性がある、尿道3内での拡張可能部分の拡張がないことである。
【0097】
ここで、
図4A~4Dを参照すると、これらは、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施方法を説明する簡略化した平面図である。
図4a~4dに示すように、超音波駆動式治療のためのカテーテルは、以下によって展開される。
カテーテル10を尿道3を介して膀胱1内に挿入する(
図4Aに示すように)。
拡張可能部分24、26およびトランスデューサスリーブ22を含むバルーン20を、加圧された音響流体(例えば、流体の20cc~40cc)によって、所定の圧力または体積まで拡張し(
図4B)、拡張部分24/26およびトランスデューサスリーブ22を拡張状態に保つ。
治療用流体ポート(複数可)17を通して膀胱1の流体を排出する。
治療用流体ポート(複数可)17を通して生理食塩水を供給する。
本明細書の他所で説明されたように、治療用流体をガス含有液体と混合する(この工程は、カテーテルの展開前または展開中にいつでも実行することができる)。
治療用流体(例えば、20~40cc)を治療用流体ポート(複数可)17を介して膀胱に供給する(
図4C)。いくつかの実施形態では、例えば、矢印400によって図示してあるように、治療用流体は、治療用流体ポート(複数可)17を介して膀胱内腔中に供給される。
【0098】
ここで、
図5を参照すると、この図は、本発明のいくつかの実施形態による、および
図6A~6Eに対応する、膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開するための方法のフローチャートであり、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施態様の方法を説明する簡略化した側面図である。
図5に示すように、膀胱1の超音波駆動式治療のためのカテーテル10は、以下によって展開される。
ステップ1000において、カテーテル10の遠位拡張可能部分26を尿道3を通して膀胱1に挿入する。
ステップ1010において、尿を、ポート(複数可)17を介して膀胱から除去する。
ステップ1020において、流体を、ポート15を介して部分26に提供することによって、部分26を拡張状態まで拡張する。
任意選択的に、ステップ1030において、本明細書の他所で説明したように、治療用流体を、ガス含有液体と混合する(この工程は、カテーテルの展開前または展開中にいつでも実行することができる)。
ステップ1040において、治療用流体を、治療用流体ポート(複数可)17を通して供給する。
1050において、近位拡張可能部分24を、尿道3を通して膀胱1内にさらに前進させる。
ステップ1060において、流体を、ポート14を介して提供することによって、近位拡張可能部分24を拡張状態まで拡張させる。
【0099】
いくつかの実施形態では、この方法は、近位拡張可能部分を拡張し、遠位拡張可能部分と近位拡張可能部分との間に治療用流体を閉じ込めることを含む。
【0100】
超音波駆動式カテーテル10の展開のための方法を使用することの潜在的な利点は、治療用流体のほとんどが、遠位拡張可能部分26と、膀胱三角部の反対側の膀胱壁5’’との間の遠位体積に閉じ込められたままにならないことである。
【0101】
図6Aは、遠位拡張可能部分26が、尿道3を通って膀胱1中に挿入する説明を簡略化した平面図である。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分24は、尿道3内に留まっている。
【0102】
図6Bは、流体を、流体ポート15を介して遠位拡張可能部分26中に提供することによって(例えば、矢印600によって図示してあるように)、遠位拡張可能部分26を拡張状態に拡張する説明を簡略化した平面図である。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26および近位拡張可能部分24は、流体連通している。流体は、遠位拡張可能部分26内に留まり、尿道壁により近位拡張可能部分24に加えられた外部圧力によって対抗されて、近位拡張可能部分24の方向に流れる。したがって、近位拡張可能部分24は、尿道壁により近位拡張可能部分24に加えられた外部圧力に起因して、尿道内に収縮したままの状態で留まる。いくつかの実施形態では、近位拡張可能部分24は、尿道内にほとんど収縮したままの状態で留まる。
【0103】
図6Cは、治療用流体ポート(複数可)17を通して治療用流体を供給する説明を簡略化した平面図である。いくつかの実施形態では、この方法は、治療用流体を、治療ポート(複数可)17を通して、遠位拡張部分26および膀胱壁によって画定された体積46に供給することを含む(例えば、矢印602によって図示してあるように)。
【0104】
図6Dは、近位部分24を、尿道3を通して膀胱1にさらに前進させることを説明する簡略化した平面図である。いくつかの実施形態では、近位部分24を膀胱1にさらに前進させる間、近位部分24は、尿道壁によってそれに加えられる外部圧力から免れ、遠位拡張可能部分26内の流体の少なくとも一部が、近位拡張可能部分24中に流れて、ラプラスの法則に従って拡張可能部分24および26内の圧力を等化する。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26内の流体は、膀胱1内に存在する近位拡張可能部分24の一部に流れる。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26の体積は、近位拡張可能部分24への流体の流れに起因して、減少する。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26の体積のこの減少は、トランスデューサスリーブ22を取り囲む膀胱体積48への治療用流体の流れを増大させる。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26の体積の減少は、遠位拡張可能部分26と膀胱壁との間の距離50を作り出すかまたは増加させ、これにより、体積48への治療用流体の流れを増大させる。いくつかの実施形態では、部分的に拡張した近位拡張可能部分24は、治療用流体が体積48中に流れるための障壁を提供する。
【0105】
図6Eは、流体を流体ポート14を介して部分24中に提供することによって、部分24を拡張状態まで拡張することを説明する簡略化した平面図である(例えば、矢印604により図示してあるように)。いくつかの実施形態では、流体を、ポート14を介して提供することによって、近位拡張可能部分24を拡張状態まで拡張することにより、近位および遠位拡張可能部分24/26の両方の体積が増大する。
【0106】
いくつかの実施形態では、拡張可能部分24/26は、別個のバルーンである。いくつかの実施形態では、近位部分24を膀胱1中にさらに前進させる間中またはその後に、遠位拡張可能部分26内の流体の少なくとも一部が、流体ポート15を介して除去される。いくつかの実施形態では、遠位拡張可能部分26の体積は、減少する。いくつかの実施形態では、近位部分24を膀胱1中にさらに前進させる間中またはその後に、近位拡張可能部分26は、流体ポート14を介して流体を提供することによって、少なくとも部分的に拡張される。いくつかの実施形態では、治療用流体がトランスデューサスリーブ22を取り囲む体積48に入ると、遠位拡張可能部分26は、流体ポート15を介して流体を遠位拡張可能部分26中に提供することによって、拡張される。
【0107】
いくつかの実施形態では、膀胱1内に挿入されるカテーテル10によって行われる超音波駆動式治療は、本発明のいくつかの実施形態による方法によって実行され、以下を含む。
拡張したバルーン部分24が膀胱1の近位表面5に係合することを確実にすることによってカテーテル10を膀胱1内に固定する。
ステップ1070において、第1の流体ポート15を介して音響流体を提供し、また第2の流体ポート14を介して音響流体を取り出すことによって、音響流体をトランスデューサ部分22内で循環させる。
ステップ1080において、トランスデューサ30を作動させる。
ステップ1090において、膀胱治療体積内の治療用流体内で空洞現象を形成する。
【0108】
いくつかの実施形態では、膀胱1内に挿入されたカテーテル10によって行われる超音波駆動式治療は、本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の方法によって終了される。
トランスデューサ30を停止する。
治療用流体ポート(複数可)17を通して治療用流体を取り出す。
治療用流体ポート(複数可)17を通して生理食塩水を供給する(例えば、膀胱を洗浄するために)。
1つ以上の音響流体ポート14および15を介して、音響流体を解放またはポンプ排出することによって、拡張部分26、22、24を折り畳む。
尿道3を介して膀胱1からカテーテルを引き抜く。
【0109】
ここで、
図7を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、膀胱壁の超音波駆動式治療、および膀胱の治療のためのカテーテルを展開するための方法のフローチャートである。
図7に示すように、膀胱1内にカテーテル10を展開するための方法は、以下のように実行される。
ステップ1400において、尿道3を通して膀胱1中にカテーテル10を挿入する。
ステップ1410において、ポート(複数可)17を介して膀胱1から尿を除去する。
ステップ1420において、加圧された音響流体(例えば、流体のうちの20~40cc)によって拡張可能部分24、26およびトランスデューサスリーブ22を所定の圧力または体積まで拡張し、拡張部分24/26およびトランスデューサスリーブ22を拡張状態に保つ。
任意選択的に、ステップ1430において、治療用流体ポート(複数可)17を通して膀胱の流体を排出する。
本発明のいくつかの実施形態では、また
図7にさらに示すように、カテーテルの展開の後に、以下の膀胱の治療方法が続く。
ステップ1440において、治療用流体ポート(複数可)17を通して生理食塩水を供給する。
ステップ1450において、本明細書の他所で説明しているように、膀胱治療用流体ポート(複数可)17を介して、任意選択されたガス含有液体を供給する。
ステップ1460において、トランスデューサ30を作動させる。
ステップ1470において、トランスデューサ30を停止する。
ステップ1480において、治療用流体ポート(複数可)17を通して、任意選択されたガス含有流体の膀胱を排出する。
ステップ1490において、治療用流体ポート(複数可)17を通して、治療用流体(例えば、20~40cc)を供給する。
【0110】
いくつかの実施形態では、この方法は、近位拡張可能部分を拡張し、遠位拡張可能部分と近位拡張可能部分との間に治療用流体を閉じ込めることを含む。
【0111】
要約すると、また本発明のいくつかの実施形態によれば、膀胱の治療は、少なくとも以下の方法を含む。
【0112】
方法A
膀胱内の膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開する。
治療用流体(例えば、Botox(登録商標))を膀胱に供給する。
膀胱内の流体に空洞現象を形成する。
膀胱を排出する。
【0113】
方法B
膀胱内の膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開する。
治療用薬剤(例えば、Botox(登録商標))を膀胱に供給する。
所定の期間の間、膀胱内の流体内に空洞現象を形成し、その後、
所定の期間の間、膀胱内に治療用流体を残す。
膀胱を排出する。
【0114】
方法C
膀胱内の膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開する。
ガス状流体を膀胱に供給する。
ガス状流体内で空洞現象を形成する。
ガス状流体を排出する。
治療用流体を膀胱に供給する。
【0115】
方法D
膀胱内の膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルを展開する。
ガス状治療用流体を膀胱に供給する。
所定の期間の間、ガス状流体内で空洞現象を形成して、その後、
膀胱を排出する。
【0116】
ここで、集合的に
図8と呼ばれる
図8Aおよび8Bを参照すると、これらは、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを説明する簡略化した側面図および斜視図である。
図8に示すように、カテーテル110は、管111と、管111の上に搭載された近位バルーン124と、拡張可能なトランスデューサスリーブ122と、を備える。
図8Bの拡大図に転じると、いくつかの実施形態では、管111の遠位部分111bは、管111の近位部分111aの直径よりも小さい直径を含む。いくつかの実施形態では、
図8の
図Bに示すように、部分111bは、遠位先端部117を含む。いくつかの実施形態では、部分111bは、トランスデューサ130の近位縁端部の下で、管111に接続されている。いくつかの実施形態では、トランスデューサ130は、管111の部分111bの上に搭載され、その結果、トランスデューサ130の外面が管111の近位部分111aと同一平面に位置決めされている。いくつかの実施形態では、部分111bは、管111内に挿入された細い管部分を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ130は、近位拡張可能部分124と管の遠位端部117との間の管111の部分111bの上に搭載されている。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ122は、トランスデューサ130を収容およびカプセル化し、トランスデューサスリーブ122の壁によって画定される内部体積での流体の流れを可能にする。いくつかの実施形態では、管111は、管111の近位部分111aにおいて、1つ以上の治療用流体ポート(複数可)116を含み、その近位部分は、拡張可能部分122および124がなく、膀胱体積に晒されている。
【0118】
いくつかの実施形態では、近位バルーン124は、折り畳まれた状態から拡張状態まで拡張可能である。いくつかの実施形態では、拡張状態は、バルーンの最大非弾性拡張として定義される。いくつかの実施形態では、バルーンの拡張状態は、そのバルーンが弾力性を有する最大弾性拡張として定義される。管111は、1つ以上の流体ポート114、115a、および115bを含み、それらの流体ポートは、拡張可能部分122および124のうちの少なくとも1つに流体を供給するか、またはその拡張可能部分から流体を除去するように構成されている。拡張可能部分122および124は、流体ポート114、115a、および115bのうちの少なくとも1つを介して、正圧下で流体を供給することによって、拡張可能である。いくつかの実施形態では、管111は、管111内部に、かつ/または管の外面に沿ったどちらかで、1つ以上の流体供給チャネル(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、流体の流れは、流体ポートのうちの1つ、例えば、ポート115aを介して流体を提供すること、および別の流体ポート、例えば、ポート115bを介して除去することによって、トランスデューサスリーブ122の壁により画定される内腔内で生成される。いくつかの実施形態では、流体供給ポート、例えばポート115a、および流体除去ポート、例えばポート115bは、カテーテル110の全く反対側の表面に配設されている。いくつかの実施形態では、流体供給ポート、例えばポート115aは、管111の部分111bの上に配置され、一方、流体除去ポート、例えばポート115bは、管111の上に配設されている。いくつかの実施形態では、流体供給ポート、例えばポート115a、および流体除去ポート、例えばポート115bは、トランスデューサ130の両反対側に配設されている。いくつかの実施形態では、流体供給ポート、例えばポート115a、および流体除去ポート、例えばポート115bは、互いに対して円周方向に回転している。
【0119】
いくつかの実施形態では、バルーンに入力される流体は、音響流体を含む。音響流体は、トランスデューサ130の表面と、トランスデューサスリーブ122との間に、一定の距離を維持する。いくつかの実施形態では、音響流体は、密閉されたトランスデューサ130を、例えば、熱対流によって冷却するのを助ける。
【0120】
いくつかの実施形態では、トランスデューサの冷却は、より長い治療期間の間、所望のパラメータでトランスデューサを動作させることを助け、したがって、効果的な治療を提供しながら、組織の過熱を回避する。いくつかの実施形態では、また本明細書の他所でより詳細に説明されているように、トランスデューサから熱を除去することにより、膀胱組織の過熱を防止し、これにより、例えば、より長い治療時間、および/またはトランスデューサ周波数の増大などの動作パラメータの範囲を増やすことができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、例えば、尿膀胱の治療では、膀胱が垂直方向またはほぼ垂直方向に位置され、三角部が尿膀胱の最も低い部分である場合に、手技が実行される。
図9に図示してある典型的な実施形態に示すように、これは、本発明のいくつかの実施形態による、膀胱内での超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達の実施態様を説明する簡略化した側面図であり、近位バルーン124は、拡張状態において、三角部領域での膀胱の近位表面と係合する。近位バルーン124は、膀胱100の体積を占有し、それによって、治療体積107を形成する。拡張状態におけるバルーン124は、膀胱壁105に対して付勢されているバルーン壁を介して、体積107からの流体の排出を阻止する。いくつかの実施形態では、バルーン124は、例えば、重力または流体圧力などの静的な力よって、膀胱105’の近位表面(三角部領域)に対して付勢され、そして封止する。したがって、治療用流体は、治療中、体積107内に留まり、同時に、近位バルーン124の遠位に配置された膀胱105’の近位表面(三角部領域)は、治療用流体および音響エネルギーに晒されることから保護されたままである。発明のいくつかの実施形態では、バルーン124は、カテーテル基部としての役割を果たし、膀胱、ならびに膀胱100内の管の上に搭載された要素に応じて、管111の位置および配向を固定する。
【0122】
治療が膀胱の遠位領域または他の領域で必要とされない場合、治療用流体は、膀胱の一部のみを満たすことになる量で膀胱に提供され得る。治療中、重力に起因して、流体のレベルは、所定の表面よりも低くなり、その結果、治療用流体および音響エネルギーによって治療されないことになる。
図10に示すように、これは、本発明のいくつかの実施形態による、膀胱内での超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達の実施態様を説明する簡略化した側面図であり、治療用流体が、膀胱100の体積107を部分的に満たしている。膀胱100は、垂直に、すなわち、矢印(G)によって示される重力の方向に配向しているため、治療用流体は、レベルE1とE2との間に留まる。治療中、領域105’’内および体積107内で遠位(上方)の近位バルーン124に配置されている膀胱壁の一部のみが、治療用流体および音響エネルギーを受け取ることになる。
【0123】
いくつかの実施形態では、治療により影響を受ける膀胱壁の各領域は、例えば、近位バルーン124の断面、ポート116と面124bとの間の距離、およびポート116とトランスデューサスリーブ122との間の距離などの、カテーテル100の要素の以下の寸法によって定義される。
【0124】
トランスデューサスリーブ122は、治療用薬剤からトランスデューサ130を隔離し、空洞現象気泡がトランスデューサ表面の近くまたは上に形成するのを防止する。それによって、トランスデューサは、トランスデューサスリーブ122がないときよりも、膀胱内壁からより遠くに配設することができる。これにより、治療体積107内での空洞現象気泡を分布させ得、膀胱壁に空洞現象を引き起こし、したがって、トランスデューサにより膀胱壁に向かって放出されるエネルギーの有効性を高めることができる。トランスデューサスリーブ122の拡張した幾何学的形状を決定するいくつかのパラメータは、トランスデューサ130が密閉するサイズおよび数量、トランスデューサスリーブの内部体積内の流体の流量特性、トランスデューサスリーブとは無関係の膀胱の所望の体積などであり得る。トランスデューサスリーブ122は、剛性であるかまたは堅くする要素を含む、一定の拡張した長さを有する非弾性であることを特徴付けられ得、いくつかの実施形態では、スリーブは、他の拡張可能部分よりも高い圧力に加圧され得る。
【0125】
図11に転じると、これは、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱治療用薬剤送達のためのカテーテルを説明する簡略化した側面図である。
図11に図示してある典型的な実施形態に示すように、実施中、カテーテル150の幾何形状は、膀胱壁がトランスデューサスリーブ122の上に折り畳むことから保護する。
図11に示すように、膀胱壁は、架空の線の三角形143によって
図11に図示してある円錐140を形成する、カテーテル10の幾何形状に適合しやすい。いくつかの実施形態では、カテーテル150の先端部117は、円錐140の頂点141を形成し、円錐140の基部142は、膨張状態における近位バルーン124の最大断面積で形成される。この構成では、膀胱の壁は、膨張状態において、トランスデューサスリーブ122上への折り畳みおよび接触が防止される。この制約は、例えば、膀胱表面が折り畳まれてスリーブ122と係合する場合、例えば、トランスデューサスリーブ壁と、密閉されたトランスデューサとの間の距離を維持するための要件によって駆動され得、スリーブの屈曲等を回避することができる。いくつかの実施形態では、近位バルーン124の直径D110は、拡張状態において、20mm~50mmである。いくつかの実施形態では、近位バルーン124の直径D110は、拡張状態において、30mm~38mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ122の直径D120は、5mm~20mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ122の直径D120は、8mm~17mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブ122の直径D120は、12mm~14mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブの長さL130は、拡張状態において、5~50mmである。いくつかの実施形態では、トランスデューサスリーブの長さL130は、拡張状態において、15~40mmである。
【0126】
いくつかの実施形態では、カテーテル150は、例えば、
図8~12に示すような2つの別個のバルーンを備えることができる。いくつかの実施形態では、異なる圧力、または異なる加圧流体が、近位バルーン124およびトランスデューサスリーブ122部分の拡張のために使用されることができる。いくつかの実施形態では、バルーン124の壁の部分のみが、弾性膨張可能であり、これに対して他の部分は非弾性である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式カテーテルを展開するための方法は、以下を含む。
遠位端部117が膀胱遠位(三角部と反対側)内面105と係合するまで、尿道103を介してカテーテル110を膀胱100に挿入する。
バルーン124およびトランスデューサスリーブ122を、加圧された流体によって所定の圧力または体積まで拡張し、すべての拡張部分を拡張状態に維持する。
治療用流体ポート(複数可)116を通して膀胱100を排出する。
生理食塩水を挿入することによって膀胱を洗浄し、そしてポート(複数可)116を通して生理食塩水を排出する。
本明細書の他所で説明しているように、治療用流体を、ガス含有液体と混合する(このステップは、カテーテルの展開の前または最中にいつでも任意選択可能であるかまたは実行することができる)。
治療用流体ポート(複数可)116を通して治療用流体を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態による超音波駆動式カテーテルを使用して、膀胱壁を治療するための方法は、以下を含む。
拡張したバルーン124が膀胱の近位の側壁(三角部領域)105’と係合するのを確実にすることによって、カテーテル110を膀胱100内に固定する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の流体ポート115aを介して流体を供給し、第2の流体ポート115bを介して音響流体を除去することによって、音響流体をトランスデューサ部分122内で循環させる。
トランスデューサ130を作動させる。
【0129】
いくつかの実施形態では、膀胱100内に挿入されたカテーテル110によって実行される超音波駆動式治療は、本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の方法によって、終了される。
トランスデューサ130の動作を停止する。
治療用流体ポート116を介して治療用流体を除去する。
ポート116を通して膀胱表面105に生理食塩水を挿入する(例えば、膀胱を洗浄するため)。
音響流体ポート114、115a、および115bを介して、音響流体を解放または排出することによって、拡張部分124、122を折り畳む。
尿道103を介してカテーテル110を膀胱100から引き抜く。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態によれば、膀胱壁の超音波駆動式治療のためのカテーテルおよび治療の展開は、以下の方法によって膀胱内で実行される。
カテーテル110を、尿道103を介して膀胱100に挿入する。
バルーン124およびトランスデューサスリーブ122を、加圧された音響流体(例えば、流体の20~40cc)によって、所定の圧力または体積まで拡張し、拡張したバルーン124およびトランスデューサスリーブ122を拡張状態に保つ。
治療用流体ポート(複数可)116を通して、膀胱の流体を排出する。
治療用流体ポート(複数可)116を通して、生理食塩水を供給する。
本明細書の他所で説明したように、ガス含有液体を、膀胱治療用流体ポート(複数可)116を通して供給する。
トランスデューサ130を作動させる。
トランスデューサ130を停止させる。
治療用流体ポート(複数可)116を通して、膀胱100のガス含有流体を排出する。
治療用流体ポート(複数可)116を通して、治療用流体(例えば、20~40cc)を供給する。
【0131】
膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルのいくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分の少なくとも1つは、球体、回転楕円体、または環状体のうちの少なくとも1つとして成形される。いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、C字形断面を含む。いくつかの実施形態では、拡張状態における拡張可能部分のうちの少なくとも1つは、傘型構成を含む。
【0132】
例えば、
図12は、拡張可能部分824が幾何学的に環状体である実施形態を示す。いくつかの実施形態では、カテーテル811は、トランスデューサスリーブ822と拡張可能部分824との間に治療用流体ポート816を備える。
図12に示す典型的な実施形態では、膨張時の環状体拡張可能部分824は、矢印850によって示されているように、カテーテル管811に沿って先端部802に向かって遠位に拡張し、治療用流体ポート816を介して供給される任意の治療用流体を、トランスデューサ830を取り囲む治療体積807に方向付けし、したがって、治療の有効性を高める。
【0133】
この構成の潜在的な利点は、治療領域がより限定され、したがって、より正確に画定されることであり、また治療用流体の浪費を制限しながら、膀胱壁の所与の領域を治療するのに、最低量の治療用流体で済むことである。
【0134】
バルーンのうちのいずれの成形も、成型、特異な厚さ、様々な材料、一体化要素等によって行うことができる。バルーン部分のいずれかを成形するための別の方法が、スリーブまたは網などの外部要素による、その拡張を制限することによって可能である。
【0135】
いくつかの実施形態では、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルは、超音波トランスデューサ30/130/830のためのエネルギー供給導管を備えるように構成されている。さらに、いくつかの実施形態では、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルは、拡張可能部分のうちの1つ以上内に配設された1つ以上の熱電対を備える。いくつかの実施形態では、この熱電対は、治療体積内の流体温度を測定するように構成されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の熱電対は、膀胱壁組織の温度を測定して、膀胱の壁の過熱を防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、熱電対のうちの1つ以上は、膀胱壁に結合されている。いくつかの実施形態では、熱電対は、拡張可能部分および/またはトランスデューサスリーブのうちの1つ以上の内部で流体温度を測定するように構成されている。いくつかの実施形態では、熱電対は、トランスデューサの表面にわたって温度を測定するように構成されている。いくつかの実施形態では、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルは、拡張可能部分内の流体圧力をモニタリングするように構成された、拡張可能部分のうちの少なくとも1つの中に、1つ以上の圧力センサを備える。
図1および
図4に例示された典型的な実施形態では、トランスデューサ30/130は、円筒形である。しかしながら、他の実施形態では、トランスデューサは、平坦であり得る。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30/130は、スペーサ32/132、および33/133によって、管11/111の上に搭載されている。トランスデューサを管上の所定の位置に固定することにより、予測可能でかつ再現可能なエネルギーパラメータを規定する。
【0136】
いくつかの実施形態では、スペーサ32/132、および33/133は、管11/111から持ち上げられたトランスデューサを支持するように構成され、このため、トランスデューサと管11/111との間に、間隙を形成する。いくつかの実施形態では、間隙は、0.05mm~4mmの範囲である。いくつかの実施形態では、間隙は、0.1mm~2.5mmの範囲である。いくつかの実施形態では、間隙は、密閉するトランスデューサスリーブ22/122内で流れる音響流体によって満たされ、これにより、結果としてトランスデューサの冷却をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、間隙は、トランスデューサスリーブ22/122内に流れる音響流体によって満たされ、それによって、トランスデューサを形成する熱を伝達する。
【0137】
いくつかの実施形態では、スペーサ32/33/132/133のうちの1つ以上は、管11/111の上に搭載されている。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30/130は、スペーサ32/33/132/133のうちの1つ以上の上に搭載されている。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30/130が、1つのスペーサ32/33/132/133に位置決めされている。いくつかの実施形態では、トランスデューサ30/130は、複数のスペーサ32/33/132/133に位置決めされている。いくつかの実施形態では、スペーサ32/33/132/133の長さは、スペーサ32/33/132/133のうちの最も外側の半径よりも大きい。いくつかの実施形態では、スペーサの長さは、トランスデューサ30/130の長さの少なくとも50%である。いくつかの実施形態では、スペーサ32/33/132/133の長さは、トランスデューサ30/130の長さの最大30%である。
【0138】
いくつかの実施形態では、スペーサ32/33/132/133は、超音波駆動式膀胱薬送達のためのカテーテルに、同心性、電気的保護、および機械的足場を追加する。いくつかの実施形態では、カテーテルおよび/または管からトランスデューサを遠ざけることは、トランスデューサとカテーテルとの間に分離媒体(例えば、空気)を持たせることによって、電気的な絶縁を提供する。
【0139】
図13および
図14に転じると、これらは、本開示のいくつかの実施形態による超音波駆動式膀胱薬送達のためのカテーテルを説明する簡略化した側面図である。
図13および
図14に示すように、通常、開口ステント、例えば、拡張可能なステント224、324、326は、24、26、124などの、以前の実施形態に開示された拡張可能部分のうちの少なくともいくつかを置き換えることができ、通常開口しているステント、例えば拡張可能なステント224、324、326によって置き換えることができる。ステント224、324、326の各々は、通常は開口されるように構成され、カテーテル210/310を膀胱中に挿入する前には、ステントスリーブ(図示せず)内に密閉されたままである。それらのステントは、ステントスリーブから露出すると開口され、そして膀胱壁と係合するように構成されている。それらのステントのうちのいずれも、流体封止表面を有することができ、この流体封止表面は、その封止表面の一方の側面上の膀胱内に画定された膀胱空洞体積内の流体を阻止して、そのステント封止表面の反対側の側面上に画定された膀胱空洞体積に流すことができる。
【0140】
図1および
図8に図示された実施形態では、トランスデューサは、スペーサ(例えば、32/132、および33/133)によって管に固定されている。所定の位置、および管の中心に置かれたトランスデューサの固定により、予測可能で再現可能なエネルギーパラメータを提供するのを助ける。スペーサは、トランスデューサを支持し、その結果、トランスデューサと管との間に、間隙が画定される。いくつかの実施形態では、間隙は、0.05~4mmの範囲である。いくつかの実施形態では、間隙は、0.1~2.5mmの範囲である。いくつかの実施形態では、間隙は、密閉するトランスデューサスリーブ22/122/222/322822内で流れる音響流体によって満たされ、それによって、トランスデューサを冷却する。
【0141】
いくつかの実施形態では、ステント224、324、326のうちの少なくとも1つは、バルーンによって置き換え可能である。いくつかの実施形態では、超音波駆動式膀胱薬送達のためのカテーテルは、少なくとも1つのバルーン、少なくとも1つのステント、またはそれらの任意の組み合わせを備える。
【0142】
以下は、本発明のいくつかの実施形態による、効果的で安全な治療を可能にする治療パラメータのいくつかの例である。
【0143】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、100~400kHzである。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、125~350kHzである。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、150~300kHzである。
【0144】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサデューティサイクルは、5~50%である。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサデューティサイクルは、7~45%である。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサデューティサイクルは、10~40%である。
【0145】
いくつかの実施形態では、超音波Isppa強度は、5~60W/cm2である。いくつかの実施形態では、超音波Isppa強度は、8~55W/cm2である。いくつかの実施形態では、超音波Isppa強度は、10~50W/cm2である。
【0146】
超音波トランスデューサからの膀胱距離は、1~30mmの範囲である。
【0147】
いくつかの実施形態では、トランスデューサが使用中である全治療時間は、5~30分の範囲である。いくつかの実施形態では、トランスデューサが使用中である全治療時間は、10~25分の範囲である。いくつかの実施形態では、トランスデューサが使用中である全治療時間は、15~20分の範囲である。
【0148】
いくつかの実施形態では、音響流体圧力は、0.3MPa~2MPaの範囲である。いくつかの実施形態では、音響流体圧力は、0.5MPa~1MPaの範囲である。
【0149】
いくつかの実施形態では、3~40mLの流体が、トランスデューサスリーブの体積を満たす。いくつかの実施形態では、5~20mLの流体が、トランスデューサスリーブの体積を満たす。いくつかの実施形態では、10~14mLの流体が、トランスデューサスリーブの体積を満たす。
【0150】
いくつかの実施形態では、3~100mLの流体が、少なくとも1つの拡張可能部分24/26/124/824の体積を満たす。いくつかの実施形態では、10~70mLの流体が、少なくとも1つの拡張可能部分24/26/124/824の体積を満たす。いくつかの実施形態では、30~55mLの流体が、少なくとも1つの拡張可能部分24/26/124/824の体積を満たす。
【0151】
いくつかの実施形態では、5~300mLの流体が、膀胱体積に流れ込む。いくつかの実施形態では、15~100mLの流体が、膀胱体積に流れ込む。いくつかの実施形態では、25~50mLの流体が、膀胱体積に流れ込む。
【0152】
液体内の気泡は、空洞現象の発生のための核形成シーズとして機能する。したがって、治療用流体内の気泡の量を増やすことにより、超音波治療の効率を向上させる。
【0153】
さらに、膀胱に導入される超音波トランスデューサは、通常、それが放出することができるエネルギーのレベルで制限される。さらに、流体媒体は、トランスデューサから膀胱壁に向かって移動する超音波を部分的に阻止または減速させ、それによって、組織上の治療用薬剤を駆動するには不十分であり得るエネルギーに、膀胱壁を晒す。したがって、膀胱壁の効果的な治療を達成するためには、超音波トランスデューサは、膀胱壁の直近で作動する必要があり、このことは、トランスデューサから発生される過剰な熱に晒すことに起因して、壁組織への損傷の危険性を高める。
【0154】
治療用流体内に、固体粒子、半固体、微小気泡などの核形成シーズを導入することにより、流体全体にわたって気泡が分散する。トランスデューサにより近い気泡は、空洞現象を形成することによって、超音波放射の一部を吸収するが、治療体積全体にわたって、特に膀胱壁の近くに気泡が存在すると、核形成シーズが存在しない非効率的である低エネルギー超音波による場合であっても、気泡の活性化(すなわち、空洞現象の発生)が可能である。治療用流体内の空洞現象を分散させることにより、トランスデューサスリーブの直近の環境に放出される超音波により発生した層内だけでなく、治療用流体全体にわたる空洞現象が可能になる。
【0155】
したがって、これらの気泡の存在により、空洞現象発生に必要とされるエネルギー閾値を低減する。これにより、より小さい音響エネルギーを使用することが可能になり、したがって、組織に対するより安全な治療を行うことができる。いくつかの実施形態では、治療用流体液体内の空洞現象気泡の量を増やすことは、治療用薬剤内の生理食塩水などのガス含有および殺菌した液体を加えることによって調製される。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態では、治療用流体液体内の空洞現象気泡の量を増やすための方法が提供され、以下を含む。
-殺菌した液体をガスで加圧して、ガス含有液体を生成する。
-圧縮されたガス含有液体を、所定の期間の間、維持する。
-治療用薬剤(粉体または液体として形成される)を、ガス含有液体に解放することによって、治療用流体を調製する。
例えば、いくつかの実施形態では、ガスは、空気、ヘリウム、窒素、酸素、またはこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、ガスを使った殺菌した液体の加圧は、8~30気圧においてである。いくつかの実施形態では、所定の期間は、0.5~2時間である。いくつかの実施形態では、所定の期間は、1時間である。
【0157】
ガス含有液体を治療用流体に加えると、ガスの平衡は、治療用薬剤に向かって揺れ、それによって、その中にガスの含有量を増加させている。治療用流体が治療用薬剤内で減圧されると(圧力が直ちに解放されると)、ガスの平衡は、影響を受けて環境大気圧に戻り、過剰なガスが、小さな気泡の形態で解放される。これらの小さな気泡は、治療中に、空洞現象の核形成場所として機能する。
【0158】
いくつかの実施形態では、治療用流体は、ガス含有流体に混合される。いくつかの実施形態では、ガス含有流体は、治療用流体のための希釈液である。
【0159】
実施例1
以下の実験は、未治療組織、およびゴールドスタンダードの100単位Botox(登録商標)膀胱内注射と比較するために、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用する治療の有効性を判定するために行われた。
【0160】
図15を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施態様のパラメータの典型的なチャートである。以下の実験は、8頭の豚で試験された。
【0161】
本実施例では、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施態様による膀胱の超音波駆動式治療は、膀胱1に局部麻酔を適用することによって、開始する。次に、ステップ1400において、カテーテル10は、尿道3を介して膀胱1に挿入され、テップ1420において、拡張可能部分24、26、およびトランスデューサスリーブ22は、10~15mLを膨張させることによって、拡張される。本実施例では、膀胱1は、ステップ1440において、生理食塩水を供給することによって、生理食塩水で2回洗浄され、次いでステップ1430において、治療用流体ポート(複数可)17を通して膀胱1を排出する。
【0162】
次に、30mLの治療用流体は、その後、膀胱に注入され、拡張可能部分24、26、およびトランスデューサスリーブ22は、膀胱内に35mLまで完全に膨張する。ポンプが始動されて、拡張可能部分24、26、およびトランスデューサスリーブ22内に音響流体を循環させる。
図15によって図示されているように、トランスデューサは、15分間、周波数200kHzでスイッチオンされ、そしてスイッチオフされる。トランスデューサのデューティサイクルは、15%である。最後に、
図15によって図示してあるように、治療用流体は、10分間、膀胱内で定温での後処理が行われる。
【0163】
本実施例では、この治療法は、生理食塩水中のボツリヌス毒素A(Botox(登録商標))溶液である。この毒素の用量は、100~200単位である。この例では、生理食塩水は、通常の殺菌生理食塩水である。いくつかの実施形態では、またこの例では、流体は、ガス含有されていない。
【0164】
さらに、3頭のブタは、ゴールドスタンダードの100単位のBotox(登録商標)膀胱内注射を使って治療された。
【0165】
膀胱、腎臓、尿道、尿管、および他の臓器の病理学的報告が得られた。さらに、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルの治療の有効性は、ゴールドスタンダードの100単位のBotox(登録商標)膀胱内注射と比較し、どんな治療も受けていないブタの対照群を、各治療後に排尿筋の収縮性を測定することによって、測定した。
【0166】
図16を参照すると、これは、各治療後の排尿筋の収縮性のグラフであり、膀胱の超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用した治療が、未治療組織、およびゴールドスタンダードの100単位のBotox(登録商標)膀胱内注射と比較されている。y軸によって示された各治療後の排尿筋の収縮性は、カルバコール(CCh)を受け取った後の排尿筋の収縮性に対する治療後の収縮性のパーセント比である。収縮性対CCh比は、各排尿筋が、CCh治療により達成された最大収縮に対してどれだけ収縮したかを示す。
【0167】
図16のグラフにおいて、100%収縮性対CChは、Botox(登録商標)の活性がない場合と一致するが、筋肉活動の割合がより低いことは、Botox(登録商標)投与がある場合と相関する。超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用する治療と、ゴールドスタンダードの100単位のBotox(登録商標)膀胱内注射との両方が、未治療の対照群よりも良好な結果を達成したことを示しているが、超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用した治療の有効性が、ゴールドスタンダードの膀胱腔内注射治療とは少なくとも同じかまたはより高いことが示されている。
【0168】
例えば、周波数8Hzにおいて、カテーテルを使用して治療を受けた膀胱は、約39%の収縮性対CCh比を有したが、膀胱腔内注射を受けた膀胱は、約44%の収縮性対CCh比を有し、対照群は、約61%であった。
【0169】
周波数32Hzにおいて、カテーテルを使用して治療を受けた膀胱は、約78%の収縮性対CCh比を有したが、膀胱腔内注射を受けた膀胱は、約82%の収縮性対CCh比を有し、対照群は、100%であった。
【0170】
実施例2
以下の実験を行って、ヒトの患者の過活動膀胱(OAB)における、超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用した治療の有効性を判定した。超音波駆動式治療のためのカテーテルの実施態様のパラメータは、
図16によって図示してある表、および実施例1に示したブタの治療のパラメータに対応する。10人のヒトを治療して、術後14日間観察した。
【0171】
超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用したヒトの膀胱の治療の結果は、有害な事象、重篤または非重篤の事象を示さなかった。さらに、膀胱機能の具体的なデータが、術前および術後の2人の患者から得られた。
【0172】
過活動膀胱に苦しんでいる患者は、排尿筋による意図しない収縮によって引き起こされる、昼夜の間での突然の尿意および頻尿を経験する。
【0173】
図17を参照すると、これは、術前の膀胱機能を、術後14日の膀胱機能と比較した2人のヒト患者からの有効性データの表である。
図17に示すように、各排尿の平均量は、患者3002および3004の場合、それぞれ、22%および27%だけ増加した。各排尿の量の増加は、排尿前に、より多くの尿が患者の膀胱をいっぱいにしていることを示している。さらに、夜間の排尿の平均回数は、患者3002および3004の場合、それぞれ、60%および10%だけ減少し、これは、各排尿の量の増加に対応している。各排尿の量の増加は、患者が排尿する必要がある回数を減らしている。
【0174】
図17に示すように、患者3004の尿失禁の平均回数は、62.5%まで減少した。患者3002は、尿失禁の平均回数には、変化がなかった。尿失禁の回数の減少は、OABを患っているヒトの患者における、超音波駆動式治療のためのカテーテルを使用した治療の有効性を示している。
【0175】
最後に、術後OAB-q(術後14日)を、患者3002および3004の術前OAB-qと比較した結果、それぞれ、4.1%および38.6%の減少を示した。OAB-qスコアの減少は、全般的な健康の増進、およびOABの症状の重症度の低減を示している。
【0176】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本発明の範囲に関する確固たる限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに、例えば、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示していると考えるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0177】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、表示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を含むことを意味している。第1の表示数~第2の表示数の「間の範囲にある/範囲」および第1の表示数「~」第2の表示数の「範囲にある/範囲」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の表示数ならびにそれらの間のすべての分数と整数の数字を含むことを意味する。
【0178】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「備える(comprise)」、「含む(include)」および「有する(have)」という語、ならびにそれらの形態のそれぞれは、必ずしも、その語が関連付けられ得るリスト内のメンバーに限定されない。さらに、本出願と参照により組み込まれる任意の文書との間に不一致がある場合、本出願が支配することがここに意図されている。
【0179】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されたが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることは意図されていない。説明された実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の応用、もしくは市場で見られる技術に対する技術的改善を最もよく説明するために、または当業者以外の人が本明細書で開示される実施形態を理解できるように選択されたものである。