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特許7384897切り替え可能な光学デバイスおよび切り替え可能な光学デバイスを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】切り替え可能な光学デバイスおよび切り替え可能な光学デバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20231114BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/13 505
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021503880
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019069622
(87)【国際公開番号】W WO2020020804
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】18185131.2
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ニー
(72)【発明者】
【氏名】ティース デ ヨング
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/198585(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/122704(WO,A1)
【文献】特表2012-503122(JP,A)
【文献】実開平01-075218(JP,U)
【文献】実開平01-073831(JP,U)
【文献】特開2002-314104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0147449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1345
G02F 1/15 - 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り替え可能な光学デバイス(1)であって、前記切り替え可能な光学デバイス(1)は、第1の基板(11)、第2の基板(12)およびシール(114)を有し、前記2つの基板(11,12)およびシール(114)は、セルギャップを有するセルが形成され、切り替え可能な媒体(10)が前記セルギャップの内側に位置するように配置されており、前記第1の基板(11)は第1の透明電極(21)を有し、前記第2の基板(12)は第2の透明電極(22)を有し、前記第1の透明電極(21)および前記第2の透明電極(22)は前記セルギャップに面しており、前記2つの基板(11,12)は、前記第2の基板(12)と重なっていない前記第1の基板(11)の第1のエッジ(41)に隣接する第1の領域(71)を前記第1の基板(11)が有するように、かつ前記第1の基板(11)と重なっていない前記第2の基板(12)の第2のエッジ(42)に隣接する第2の領域(72)を前記第2の基板(12)が有するように配置されており、前記第1の領域(71)内に第1の導電性バスバー(31)が配置されており、前記第2の領域(72)内に第2の導電性バスバー(32)が配置されており、前記第1の導電性バスバー(31)に第1の端子が電気的に接続されており、前記第2の導電性バスバー(32)に第2の端子が電気的に接続されている、切り替え可能な光学デバイス(1)において、前記第1の基板(11)および前記第2の基板(12)はそれぞれ、前記第1の透明電極(21)および前記第2の透明電極(22)が除去されたエッジデリーション(116)を有し、ここで前記エッジデリーション(116)は、バスバー(31,32)に隣接していないエッジで完全となっており、またバスバー(31,32)に隣接するエッジでは、エッジデリーションが部分的にしかなく、
前記第1の基板(11)の前記エッジデリーション(116)が、前記第1のエッジ(41)の第1の端部および/もしくは第2の端部に部分領域をさらに含み、かつ/または前記第2の基板(12)の前記エッジデリーション(116)が、前記第2のエッジ(42)の第1の端部および/もしくは第2の端部に部分領域をさらに含み、ここで前記各部分領域が、前記各エッジ(41,42)に平行な少なくとも2mmの長さを有することを特徴とする、切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項2】
前記第1の導電性バスバー(31)が、前記第1の透明電極(21)と接触してかつ前記第1の領域(71)内に配置された連続的なはんだ付け線(105)として構築されており、かつ/または前記第2の導電性バスバー(32)が、前記第2の透明電極(22)と接触してかつ前記第2の領域(72)内に配置された連続的なはんだ付け線(105)として構築されていることを特徴とする、請求項1記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項3】
前記第1の導電性バスバー(31)が、前記第1の領域(71)内の前記第1の透明電極(21)を電気的に接続する第1の導電性ストリップ(51)として構築されており、かつ/または前記第2の導電性バスバー(32)が、前記第2の領域(72)内の前記第2の透明電極(22)を電気的に接続する第2の導電性ストリップ(52)として構築されていることを特徴とする、請求項1または2記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項4】
前記第1の導電性ストリップ(51)と前記第1の透明電極(21)との間の電気的接続および/または前記第2の導電性ストリップ(52)と前記第2の透明電極(22)との間の電気的接続が、連続的なはんだ付け線(105)、連続的な溶接線または導電性接着剤の連続線により達成されることを特徴とする、請求項3記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項5】
前記第1の導電性ストリップ(51)と前記第1の透明電極(21)との間の電気的接続および/または前記第2の導電性ストリップ(52)と前記第2の透明電極(22)との間の電気的接続が、前記各導電性ストリップ(51,52)の長さに沿って分布した複数のはんだ付け点(106)、溶接スポットまたは導電性接着剤点により達成されることを特徴とする、請求項3記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項6】
前記第1の端子が、前記第1のエッジ(41)に平行に配置された第1の端子線(61)であり、前記第2の端子が、前記第2のエッジ(42)に平行に配置された第2の端子線(62)であり、前記第1の端子線(61)の位置および長さ、ならびに/または前記第2の端子線(62)の位置および長さは、前記第1の端子線(61)が前記第1の基板(11)から突出しないように、かつ/または前記第2の端子線(62)が前記第2の基板(12)から突出しないように選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項7】
前記第1の端子が、第1の端子線(61)であるか、または前記第1のエッジ(41)に平行に配置されたバスバーの導電性部分の延長部であり、前記第2の端子が、第2の端子線(62)であるか、または前記第2のエッジ(42)に平行に配置されたバスバーの導電性部分の延長部であり、ここで、前記第1の端子線(61)もしくは前記バスバーの前記導電性部分の前記延長部の位置および長さ、ならびに/または前記第2の端子線(62)もしくは前記バスバーの前記導電性部分の前記延長部の位置および長さは、前記第1の端子線(61)もしくは前記バスバーの前記導電性部分の前記延長部が前記第1の基板(11)から突出するように、かつ/または前記第2の端子線(62)もしくは前記バスバーの前記導電性部分の前記延長部が前記第2の基板(12)から突出するように選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1の基板(11)の少なくとも前記第1のエッジ(41)および/または前記第2の基板(12)の少なくとも前記第2のエッジ(42)のエッジ仕上げが、丸形のエッジ、ペンシルエッジ、ベベルエッジまたは出隅エッジであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項9】
電気絶縁材料(101)が、前記第1の領域(71)内に位置する前記第1の透明電極(21)の一部と前記第1の導電性バスバー(31)とが前記電気絶縁材料(101)により封入されるように、前記第1の基板(11)上に配置されており、かつ/または電気絶縁材料(101)が、前記第2の領域(72)内に位置する前記第2の透明電極(22)の一部と前記第2の導電性バスバー(32)とが前記電気絶縁材料(101)により封入されるように、前記第2の基板(12)上に配置されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項10】
前記電気絶縁材料(101)が、単一成分エポキシ材料、二成分エポキシ接着剤、単一成分シリコーン材料、二成分シリコーン接着剤、アクリレートシーラント、ポリウレタン、ホットメルトシーラント、UV硬化シーラント、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項11】
前記第1の端子および/または前記第2の端子が、電気絶縁外装(112)を有する端子線(61,62)として構成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項12】
トップコーティングが、前記第1の透明電極(21)および/または前記第2の透明電極(22)に塗布されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項13】
前記第1の基板(11)および前記第2の基板(12)が、同じサイズおよび形状のものであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項14】
前記第1の透明電極(21)および前記第2の透明電極(22)のシート抵抗が、10~150オーム/平方の範囲で選択され、前記セルギャップが、6μm~50μmの範囲で選択され、そのため、前記第1の端子(61)と前記第2の端子(62)との間に形成される回路のRC時定数τが、50ms~1μsの範囲にあることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)。
【請求項15】
前記第1の端子(61)および前記第2の端子に、AC駆動信号を発する信号源が電気的に接続されており、AC信号は、前記信号源により生成され、前記AC信号の周波数は、前記AC信号の周期Tがτよりも大きくなるように選択され、τは、前記第1の透明電極(21)、前記第2の透明電極(22)および前記切り替え可能な媒体(10)の配置により形成されるRC回路のRC時定数であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)を電気的に駆動する方法。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項記載の切り替え可能な光学デバイス(1)を製造する方法であって、
- 第1の透明電極(21)を有する第1の基板(11)と、第2の透明電極(22)を有する第2の基板(12)とを準備すること、
- エッジデリーションを、前記第1の基板(11)上および前記第2の基板(12)上で実施し、前記第1の透明電極(21)および前記第2の透明電極(22)を、前記第1の基板(11)および第2の基板(12)のエッジに隣接する領域で除去し、前記第1の基板(11)の前記エッジデリーション(116)は、第1のエッジ(41)については部分的にのみであり、前記第1の基板(11)のそれ以降のすべてのエッジについては完全となっており、前記第2の基板(12)の前記エッジデリーション(116)は、第2のエッジ(42)については部分的にのみであり、前記第2の基板(12)のそれ以降のすべてのエッジについては完全となっていること、
- 前記第1の基板(11)、前記第2の基板(12)およびシール(114)を、セルギャップを有するセルが形成され、かつ前記セルに少なくとも1つの切り替え可能な媒体(10)が満たされるように配置し、前記2つの基板(11,12)を、前記第2の基板(12)と重なっていない前記第1の基板(11)の前記第1のエッジ(41)に隣接する第1の領域(71)を前記第1の基板(11)が有するように、かつ前記第1の基板(11)と重なっていない前記第2の基板(12)の前記第2のエッジ(42)に隣接する第2の領域(72)を前記第2の基板(12)が有するように配置すること、
- 任意選択的に、前記第1の領域(71)内に位置する前記第1の透明電極(21)の一部および前記第2の領域(72)内に位置する前記第2の透明電極(22)の一部を前洗浄すること、
- 任意選択的に、前記第1の基板(11)の少なくとも前記第1の領域(71)を予熱すること、および前記第2の基板(12)の少なくとも前記第2の領域(72)を予熱すること、
- 前記第1の透明電極(21)に第1の導電性バスバー(31)を接続し、前記第2の透明電極(22)に第2の導電性バスバー(32)を接続すること、
- 任意選択的に、前記第1の導電性バスバー(31)に第1の端子(61)を接合し、前記第2の導電性バスバー(32)に第2の端子(62)を接合すること、
電気絶縁材料(101)を、前記第1の領域(71)内に位置する前記第1の透明電極(21)の一部と前記第1の導電性バスバー(31)とが前記電気絶縁材料(101)により封入されるように、前記第1の基板(11)上に分配し、かつ/または前記第2の領域(72)内に位置する前記第2の透明電極(22)の一部と前記第2の導電性バスバー(32)とが前記電気絶縁材料(101)により封入されるように、前記第2の基板(12)上に分配すること、
- 前記電気絶縁材料(101)を硬化させること、
- 任意選択的に、中間層を用いて、前記第1の基板(11)および/または前記第2の基板(12)の露出面にガラス板を積層すること
を特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項記載の少なくとも1つの切り替え可能な光学デバイス(1)と、前記少なくとも1つの切り替え可能な光学デバイスにAC駆動を印加する少なくとも1つのコントローラとを備えるシステムにおいて、前記コントローラが、請求項15に記載の駆動方法を実施するように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り替え可能な光学デバイスであって、該切り替え可能な光学デバイスは、2つの基板およびシールを有し、2つの基板およびシールは、セルギャップを有するセルが形成され、切り替え可能な媒体がセルギャップの内側に位置するように配置されており、第1の基板は第1の透明電極を有し、第2の基板は第2の透明電極を有し、電極はセルギャップに面しており、2つの基板は、第2の基板と重なっていない第1の基板の第1のエッジに隣接する第1の領域を第1の基板が有するように、かつ第1の基板と重なっていない第2の基板の第2のエッジに隣接する第2の領域を第2の基板が有するように配置されている、切り替え可能な光学デバイスに関する。
【0002】
本発明のさらなる態様は、切り替え可能な光学デバイスを設計する方法、切り替え可能な光学デバイスを駆動する方法、切り替え可能な光学デバイスを製造する方法、ならびに切り替え可能な光学デバイスと、切り替え可能な光学デバイスを駆動するコントローラとを備えるシステムに関する。
【0003】
R.Baetens等による総説論文”Properties, requirements and possibilities of smart windows for dynamic daylight and solar energy control in buildings: A state-of-the-art review”, Solar Energy Materials & Solar Cells 94 (2010) pages 87-105には、着色可能なスマートウィンドウについて記載されている。スマートウィンドウには、エレクトロクロミズムに基づくデバイス、液晶デバイス、および電気泳動デバイスまたは浮遊粒子デバイスなど、光の透過率を変調する幾つかの技術が利用され得る。液晶ベースのデバイスは、電界の印加による2つの導電性電極間の液晶分子の配向変化を利用し、それにより、それらの透過率を変化させる。
【0004】
スマートウィンドウをある状態から別の状態に切り替えるために、電気駆動信号が印加される。液晶ベースのスマートウィンドウは、AC電圧で駆動されることが一般的である。状態を切り替えるには、液晶に対する電圧が閾値電圧に達する必要がある。特に窓が大型である場合、中央領域の電圧は、窓の他の箇所よりも低いことが分かっている。均一な外観の窓を達成するために、窓の領域全体の電圧分布をできるだけ均一にすべきである。さらに、電気接続は信頼できるものであるべきであり、かつスマートウィンドウの長期安定性を確実にするために周囲から保護されるべきである。
【0005】
米国特許出願公開第2013/265511号明細書の文書には、シーリングガスケットにより封止された第1のガラス板および第2のガラス板を含む液晶多重グレージングが開示されている。第1のガラス板は、第1の突出側で突出しており、電力供給域を含む。電力供給域は、電気ケーブルおよび絶縁材料を含む。第3のガラス板は、第2のガラス板とともに積層されており、第3のガラス板は、電気絶縁材料を覆う側で第2のガラス板から突出している。
【0006】
本発明の課題は、信頼性があり、かつ大型デバイスに対してさえ均一なスイッチングを可能にする、改善された切り替え可能な光学デバイスを提供することである。本発明のさらなる課題としては、そのような切り替え可能な光学デバイスを設計する方法、そのような切り替え可能な光学デバイスを駆動する方法、およびそのような切り替え可能な光学デバイスを製造する方法を提供することが挙げられる。
【0007】
切り替え可能な光学デバイスが提供される。切り替え可能な光学デバイスは、第1の基板、第2の基板およびシールを有する。2つの基板およびシールは、セルギャップを有するセルが形成され、かつ切り替え可能な媒体がセルギャップの内側に位置するように配置されている。第1の基板は第1の透明電極を有し、第2の基板は第2の透明電極を有する。電極はセルギャップに面している。2つの基板は、第2の基板と重なっていない第1の基板の第1のエッジに隣接する第1の領域を第1の基板が有するように、かつ第1の基板と重なっていない第2の領域を第2の基板が有するように配置されている。第1の導電性バスバーが第1の領域内に配置されており、第2の導電性バスバーが第2の領域内に配置されている。第1の端子が第1のバスバーに電気的に接続されており、第2の端子が第2のバスバーに電気的に接続されている。
【0008】
第1の基板および第2の基板はそれぞれ、各透明電極が除去されたエッジデリーション(edge deletion)を有する。エッジデリーションは、バスバーに隣接していないエッジで完全となっている(complete)。バスバーに隣接するエッジでは、エッジデリーションがないか、または部分的なエッジデリーションしかない。
【0009】
バスバー自体により覆われている領域は、このバスバーに隣接するエッジの部分的なエッジデリーションの一部ではないことが好ましい。バスバーにより覆われていないエッジに隣接する領域は、エッジデリーションの一部であることが好ましい。
【0010】
基板は、光学的に透明であることが好ましい。第1の基板および第2の基板は、ポリマーまたはガラスから独立して選択され得る。適切なガラス基板としては、例えば、フロートガラス、ダウンドローガラス、化学強化ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノケイ酸ガラスが挙げられる。
【0011】
適切なポリマー基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(環状オレフィンポリマー)およびセルローストリアセテート(TAC)が挙げられる。
【0012】
切り替え可能な光学デバイスの2つの基板は、異なる形状およびサイズを有していてもよい。あるいは、2つの基板は、同じサイズおよび形状のものである。基板は、例えば、正方形、長方形または三角形の形状のものであり得る。他の形状も可能である。
【0013】
2つの基板および切り替え可能な媒体は、2つの基板により形成されたギャップ内に切り替え可能な媒体が置かれたセルとして配置される。ギャップのサイズは、1μm~300μm、好ましくは3μm~100μm、より好ましくは5μm~100μm、最も好ましくは10μm~50μmであることが好ましい。セルは、通常はエッジにまたはその近くに位置する接着剤層により封止されている。セルの封止に適した材料の例としては、エポキシベースのシーラント、ポリウレタン、ホットメルトシーラントおよびアクリレートが挙げられる。
【0014】
セル、特に液晶層の適切な厚さを維持するために、スペーサーがギャップ内に配置されていてもよい。一般に、非導電性スペーサーは、所定の直径の球形を有し、例えば、ポリマーまたはガラス製であり得る。
【0015】
切り替え可能な光学デバイスの2つの基板は、もう一方の基板と重なっていない少なくとも1つの領域を各基板が有するように配置されている。これらの重なっていない領域により、各透明電極に達することができ、これらの重なっていない領域内にバスバーが位置する。基板が1つより多くの重なっていない領域を有する場合、1つのバスバーまたは複数のバスバーを、幾つかまたはそれぞれの重なっていない領域内に設けることができる。
【0016】
重なっていない領域は、1mm~20mmの範囲、好ましくは2mm~10mmの範囲、例えば約4mmである、第1の基板と第2の基板との間のオフセットであることが好ましい。
【0017】
2つの基板はそれぞれ、切り替え可能な媒体、特に液晶媒体の状態を制御するために使用される透明電極を有する。切り替え可能な光学媒体は、2つの透明基板の間に配置されており、切り替え可能な光学媒体の状態は、2つの透明電極にAC駆動電圧を印加することにより制御され得る。
【0018】
透明電極は、可視光が材料を少なくとも部分的に透過することを可能にする導電性層である。透明度は波長依存性であり得るので、特定の波長または波長範囲の光のみが透明電極を透過する。この場合、透明電極を通過する光は、色付きの外観を有するだろう。また、透明電極を通る光透過は、透明電極を通る光が灰色または白色の外観を有するように、可視波長範囲において均一であってもよい。好ましくは、透明電極を通る可視光は散乱されない。
【0019】
透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)もしくはドープ酸化亜鉛などの導電性酸化物、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)もしくはポリ(4,4-ジオクチルシクロペンタジチオフェン)などの導電性ポリマーの層であることが好ましい。透明電極は、コーティングプロセスにより基板に塗布されることが好ましい。
【0020】
好ましくは、第1の透明電極および/または第2の透明電極のシート抵抗は、第1のバスバーと第2のバスバーとの間の距離が1.8m未満である切り替え可能な光学デバイスの場合、100オーム/平方未満である。シート抵抗は、2つのバスバーの間の距離が1.8m~2.6m未満である場合、50オーム/平方未満であることが好ましく、シート抵抗は、距離が2.6m~3.5mである場合、30オーム/平方未満であることが好ましい。
【0021】
透明電極に加えて、基板は、絶縁層および/またはパッシベーション層などの1つ以上のさらなるコーティングを含み得る。
【0022】
例えば、トップコーティングが透明電極に塗布され得る。トップコーティングは、各基板に面していない側の各電極に位置する電気絶縁膜である。トップコーティングの材料は、酸化ケイ素(SiO)、SiOおよび酸窒化ケイ素から選択されることが好ましい。さらに、他の非導電層が使用されてもよい。
【0023】
さらなる例として、透明電極は、2つのパッシベーション層の間に埋め込まれ得る。パッシベーション層は、酸化ケイ素(SiO)層であり得る。
【0024】
さらに、配向層または配向膜は、配向層が切り替え可能な媒体と接触するように、一方または双方の透明電極に配置され得る。配向膜は、配向方向にラビングされてもよい。
【0025】
さらなるコーティングおよび/または透明電極自体のうちの1つ以上は、エッジデリーションにより部分的に除去される。
【0026】
エッジデリーションは、基板の一方のエッジの少なくとも一部に隣接する領域において基板のコーティングの少なくとも1つの層を除去するプロセスである。切り替え可能な光学デバイスの場合、第1の基板および第2の基板は、それぞれ第1の透明電極および第2の透明電極によりコーティングされている。
【0027】
エッジデリーションにより、透明電極層と、任意選択的に絶縁層またはパッシベーション層などのさらなる層とが選択的に除去される。有利には、各基板の少なくとも一方のエッジに隣接する領域内の透明電極層を選択的に除去することにより、周囲への透明電極の露出が回避されるか、または少なくとも最小限に抑えられる。これにより、透明電極の腐食が防止され、したがって、切り替え可能な光学デバイスの信頼性が改善される。
【0028】
さらに、エッジデリーションは、透明電極に印加された駆動信号により生じる電界が切り替え可能な光学デバイスのシールを越えて広がるのを防止することにより、切り替え可能な光学デバイスの耐久性を改善する役割を果たす。電界が強いと、使用されるシーラントの耐久性が制限される可能性がある。さらに、ほとんどのシーラント材料はコーティングのうちの1つよりも基板との接合がより良好であるため、エッジデリーションによりシーラントの接着性が改善される。
【0029】
第1の端子および第2の端子は、セルギャップ内に位置する切り替え可能な媒体の状態を制御するための駆動信号を生成するコントローラまたはドライバへの接続を形成するために使用され得る。端子は、例えば、端子線として、または電線を取り付けるためのコネクタとして構成され得る。また、代替実施形態では、端子は、バスバーからの延長部分であり得る。
【0030】
端子がバスバーに接合されている場合、バスバーへの端子の接合は、はんだ付けにより、溶接により、または導電性接着剤もしく導電性膜の使用により達成され得る。特に、ディスプレイデバイスの製造において電気接点を形成するための一般的な方法である異方性導電膜ボンディングを使用して、端子線としてのフラットケーブルを各バスバーに接合することができる。
【0031】
切り替え可能な光学デバイスの切り替え可能な媒体は、少なくとも1つの液晶媒体を含む。液晶媒体は、液晶の特性を有する材料として定義される。一般的な液晶媒体は、細長い棒状の分子を有する少なくとも1つの組成物を含む。本発明に関連して使用される液晶媒体は、少なくとも2つの状態を有する。2つの透明電極に印加された駆動信号により生じる電界に応答して、液晶媒体の状態が制御され得る。
【0032】
例えば、少なくとも1つの液晶媒体を含む切り替え可能な媒体は、明るい状態および暗い状態を有する。明るい状態では、暗い状態よりも多くの光が切り替え可能な媒体を透過する。さらにまたはあるいは、切り替え可能な媒体は、透明状態および散乱状態を有し、可視光の光散乱は、透明状態では実質的に生じず、光は、散乱状態では散乱する。切り替え可能な媒体はまた、複合状態、特に、明るく透明な状態および/または暗く散乱した状態を有し得る。
【0033】
好ましくは、第1のバスバーは、第1の透明電極と接触してかつ第1の領域内に配置された連続的なはんだ付け線として構築されており、かつ/または第2のバスバーは、第2の透明電極と接触してかつ第2の領域内に配置された連続的なはんだ付け線として構築されている。
【0034】
はんだ付けにより、特に超音波はんだ付けにより、導電性材料が第1の電極および/または第2の電極に付けられ、バスバーとして機能する連続線が形成される。一般的なはんだ材料は、スズ、インジウムおよび/または鉛を含む合金である。
【0035】
好ましくは、第1のバスバーは、第1の領域内の第1の透明電極を電気的に接続する第1の導電性ストリップとして構築されており、および/または第2のバスバーは、第2の領域内の第2の透明電極を電気的に接続する第2の導電性ストリップとして構築されている。
【0036】
導電性ストリップは、例えば、各透明電極に付けられる金属部品の形態または金属の他の形態の金属化線であることが好ましい。導電性ストリップは、金属ストリップ、例えば銅ストリップであり得る。あるいは、導電性ストリップは、印刷プロセスにより第1の基板および/または第2の基板に銀粒子などの導電性材料を付けることで得られる印刷ストリップであり得る。
【0037】
導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、はんだ付けにより、溶接により、または接着テープなどの導電性接着剤の使用により達成され得る。
【0038】
一実施形態では、導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、連続的なはんだ付け線、連続的な溶接線(continuous soldered line)または導電性接着剤の連続線(continuous line)により達成される。
【0039】
別の実施形態では、導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、各導電性ストリップの長さに沿って分布した複数のはんだ付け点(soldered dots)、溶接スポットまたは導電性接着剤点(dots of a conductive adhesive)により達成される。
【0040】
導電性ストリップが印刷ストリップである場合、はんだ付け線および/またははんだ付け点の使用も好ましい。連続的なはんだ付け線および/またははんだ付け点により、各透明電極と印刷ストリップとの間で、良好な低抵抗の電気接続が確実になる。
【0041】
特に、各透明電極が絶縁層またはパッシベーション膜で覆われている場合、連続的なはんだ付け線またははんだ付け点は、はんだ付けに使用される導電性材料が絶縁層またはパッシベーション膜に浸透することで、各透明電極と電気的接続を形成する。
【0042】
バスバーの形状は、バスバーに隣接する各エッジの形状に相応することが好ましい。エッジが直線エッジである場合、バスバーは直線状の細長い形状になる。エッジが湾曲している場合、バスバーも湾曲していることが好ましい。さらに、2つより多くの隣接するエッジにわたりバスバーを延長することが可能である。
【0043】
好ましくは、電気絶縁材料は、第1の領域内に位置する第1の透明電極の一部と第1のバスバーとが絶縁材料により封入されるように、より好ましくは完全に封入されるように、第1の基板上に配置されており、および/または電気絶縁材料は、第2の領域内に位置する第2の透明電極の一部と第2のバスバーとが絶縁材料により封入されるように、より好ましくは完全に封入されるように、第2の基板上に配置されている。
【0044】
好ましくは、絶縁材料は、各透明電極のすべての露出部分を覆っている。第1の端子または第2の端子を除く各バスバーのすべての部分を覆うことが特に好ましい。
【0045】
電気絶縁材料は、基板への良好な接着性を有し、かつ積層プロセスおよび/または適用時に生じ得る高温に耐えることができるように選択されることが好ましい。好ましくは、絶縁材料は、単一成分エポキシ材料、二成分エポキシ接着剤、単一成分シリコーン材料、二成分シリコーン接着剤、アクリレートシーラント、ポリウレタン、ホットメルトシーラント、UV硬化シーラント、および前述の材料のうちの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、第1の基板のエッジデリーションが、第1のエッジの第1の端部および/もしくは第2の端部に部分領域をさらに含み、かつ/または第2の基板のエッジデリーションが、第2のエッジの第1の端部および/もしくは第2の端部に部分領域をさらに含み、ここで各部分領域は、各エッジに平行な少なくとも2mmの長さを有する。好ましくは、各部分領域の長さは、5mm~100mm、より好ましくは20mm~50mmである。例えば、各エッジに平行な長さは30mmであり得る。
【0047】
このさらなる部分領域/これらのさらなる部分領域により、「G」型のエッジデリーションが形成される。
【0048】
好ましくは、第1の端子は、第1のエッジに平行に配置された第1の端子線であり、第2の端子は、第2のエッジに平行に配置された第2の端子線であり、第1の端子線の位置および長さ、ならびに/または第2の端子線の位置および長さは、第1の端子線が第1の基板から突出しないように、かつ/または第2の端子線が第2の基板から突出しないように選択される。「G」型のエッジデリーションと組み合わせると、端子線の端部は、透明電極またはバスバーに干渉しない。
【0049】
端子線(複数可)がそのような配置になると、切り替え可能な光学デバイスを扱うまたは保管する際に、電線が保護される。電線が突き出ていないため、切り替え可能な光学デバイスを、バスバーのない任意のエッジに安全に置くことができる。
【0050】
本発明によると、導電性バスバーは、第1の領域および第2の領域内で基板上に配置されている。好ましい実施形態では、バスバーは、これらの領域内にのみ配置されている。この実施形態では、バスバーは、特に基板から突出しておらず、この場合、端子線も、基板から突出しないように容易な手法で設けられ得る。切り替え可能な光学デバイスにさらなるガラス板を積層することも可能である。このさらなるガラス板は、バスバーが設けられている領域を覆うように、好ましくは完全に覆うように突出していてもよい。あるいは、さらなるガラス板は、バスバーが設けられている領域が全く覆われないように積層されていてもよい。さらなる実施形態では、さらなるガラス板は、バスバーが設けられている領域を覆うように積層されるが、この板の角は、切り取られるか、またはそれぞれ省略されており、特に好ましくは、かつ有利には、バスバーと、端子、特に端子線との接続は、角を切り取ったこの部分において形成されているので、積層される板は、バスバーが設けられている領域を覆っていない。
【0051】
別の実施形態では、端子線は、基板から突出していてもよい。コネクタを使用することも可能である。
【0052】
本発明によると、代替的には、導電性バスバーが、部分的にのみ第1の領域および第2の領域内で基板上に配置されるように設けられ得ることも可能である。特に、この代替実施形態では、導電性バスバーは、この場合、重なっていない領域内で部分的にのみ配置されており、基板を越えて延在する。この実施形態では、端子は、基板を越えて延在するまたはこれからそれぞれ突出する前述のバスバーに部分的に電気的に接続されていることが好ましい。さらなる板が積層されている場合、この板はまた、端子線と突出したバスバーとの間の電気的接続が形成される領域を覆わないことが好ましい。好ましくは、バスバー、特にバスバーの突出部分、ならびにバスバーと端子線との間の接続は、チューブ、例えばシリコーンチューブを、好ましくはさらなる封入剤の使用とともに、例えばDELO封入剤を用いて使用して、保護、遮蔽または絶縁することが可能である。
【0053】
好ましくは、第1の基板の少なくとも第1のエッジおよび/または第2の基板の少なくとも第2のエッジのエッジ仕上げは、丸形のエッジ、ペンシルエッジ、ベベルエッジまたは出隅エッジ(arrised edge)である。
【0054】
平坦なエッジとは対照的に、好ましいエッジ仕上げのうちの1つを有するエッジは、コーティングにより覆われていないことが好ましい拡大された表面領域を有する。さらに、バスバーは、エッジ仕上げの拡大された表面領域内に延在しない。この拡大された領域により、バスバーを覆う電気絶縁材料のためのさらなる接触領域がもたらされ、したがって接着性が改善される。さらに、好ましいエッジ仕上げの機械的安定性は、普通の平坦なエッジよりも強く、各基板が損傷する可能性が低くなる。
【0055】
好ましいエッジ仕上げのうちの1つを有する基板を上から見ると、エッジ仕上げは、基板の主(平坦)表面領域から突出したオフセットを形成している。好ましくは、オフセットは、0.1mm~2mmの範囲、より好ましくは0.5mm~1mmの範囲にある。
【0056】
好ましくは、第1の端子および/または第2の端子は、電気絶縁外装を有する端子線(複数可)として構成されている。端子線は、例えば、シリコーンゴム、PVCまたはPTFEベースの外装を有し得る。
【0057】
代替実施形態では、第1の端子および/または第2の端子は、バスバーからの延長部分(複数可)であり、これらは、絶縁外装、例えば、シリコーンまたはPVCチューブとともに用いられることが好ましい。
【0058】
切り替え可能な光学デバイスは、第1の基板および/または第2の基板に積層されたさらなるガラス板を含み得る。
【0059】
切り替え可能な光学デバイスは、スマートウィンドウとしての使用に特に適している。そのようなスマートウィンドウは、例えば、建物内の窓として使用することが可能であり、また、乗り物の窓などの輸送用途で使用することも可能である。
【0060】
切り替え可能な光学デバイスの状態を制御するために、AC駆動信号が印加される。AC信号発生器として機能するドライバまたはコントローラにより形成される電気回路において、切り替え可能な光学デバイスは、セルの幾何学的形状に依存するRC時定数τを有する抵抗器-コンデンサ(RC)回路として機能する。特に、RC時定数τは、切り替え可能な光学デバイスのサイズまたは面積に依存する。AC駆動信号の周波数は、切り替え可能な光学デバイスのちらつきが観察者に見えないように、十分に高く選択される必要がある。AC駆動信号の周波数は、好ましくは20Hz~1kHzの範囲、より好ましくは50Hz~750Hzの範囲にあり、特に好ましくは100Hz~500Hzの範囲にある。さらに、AC駆動信号の周波数は、通常、RC回路のRC時定数に相応しているべきであり、そのため、均一な電界、ひいては切り替え可能な光学デバイスの均一な応答が達成される。
【0061】
切り替え可能な光学デバイスのRC時定数τは、デバイスのサイズ、電極のシート抵抗、セルギャップのサイズ、セルギャップ内に位置する切り替え可能な媒体の誘電率、デバイス形状などのデバイスの幾何学的形状、バスバーのサイズ、およびバスバーの位置により影響を受ける。
【0062】
したがって、本発明のさらなる態様は、第1の端子と第2の端子との間に形成されるRC回路のRC時定数τが、50ms~1μs、好ましくは50ms~1msの範囲内にあるように、かつ10~150オーム/平方の範囲の第1の透明電極および第2の透明電極のシート抵抗を選択することにより、かつ6μm~50μmの範囲のセルギャップを選択することにより、本明細書に記載の切り替え可能な光学デバイスを設計する方法を提供することである。
【0063】
好ましい実施形態では、液晶媒体は、1.5以上、好ましくは1.5~50、より好ましくは3~40、さらにより好ましくは3~30の範囲の正の誘電異方性Δεを有する。
【0064】
別の実施形態によると、液晶媒体は、好ましくは-2~-8の範囲、より好ましくは-3~-6の範囲、特に好ましくは-3.5~-5の負の誘電異方性を有する。
【0065】
すべての物理的特性は、”Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals”, Status Nov. 1997, Merck KGaA, Germanyに従って決定され、特に明記されていない限り、20℃の温度で引用される。誘電異方性(Δε)は、1kHzの周波数で決定される。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。
【0066】
液晶媒体は、70℃~170℃、より好ましくは80℃~160℃、さらにより好ましくは90℃~150℃、特に100℃~140℃の温度範囲の澄明点、好ましくはネマチック液晶状態から等方性状態への相転移を有することが好ましい。
【0067】
本発明のさらなる態様は、記載の切り替え可能な光学デバイスのうちの1つを電気的に駆動する方法を提供することである。この方法は、第1の端子および第2の端子に、AC駆動信号を発する信号源を電気的に接続することを含み、AC信号は、信号源により生成され、AC信号の周波数は、AC信号の周期Tが、好ましくはτよりも大きく、より好ましくは5τよりも大きくなるように選択される。例えば、周期Tは、τ~5τの範囲にあり、τは、第1の透明電極、第2の透明電極および切り替え可能な媒体を配置することにより形成されるRC回路のRC時定数である。
【0068】
本発明のさらなる別の態様では、記載の切り替え可能な光学デバイスのうちの1つを製造する方法が提供される。
【0069】
この方法の第1のステップでは、第1の透明電極を有する第1の基板と、第2の透明電極を有する第2の基板とが準備される。
【0070】
続く第2のステップでは、エッジデリーションは、第1の基板上および第2の基板上で実施され、透明導電性電極は、基板エッジに隣接する領域が除去され、第1の基板のエッジデリーションは、少なくとも第1のエッジについては部分的にのみであり、第1の基板のそれ以降のすべてのエッジについては完全となっており、第2の基板のエッジデリーションは、少なくとも第2のエッジについては部分的にのみであり、第2の基板のそれ以降のすべてのエッジについては完全となっている。
【0071】
少なくとも1つの第1のエッジは、バスバーに隣接する第1の基板の1つ以上のエッジに相応する。したがって、少なくとも1つの第2のエッジは、バスバーに隣接する第2の基板の1つ以上のエッジに相応する。
【0072】
エッジデリーションは、エッジデリーションホイールが各基板から1つ以上のコーティング層を機械的に除去するように、回転するエッジデリーションホイールを基板のエッジ領域に押し付けることにより実施され得る。あるいは、レーザーアブレーションをエッジデリーションに使用してもよい。
【0073】
第3のステップでは、第1の基板、第2の基板およびシールは、セルギャップを有するセルが形成され、かつセルに切り替え可能な媒体が満たされるように配置される。セルを形成する際、2つの基板は、第2の基板と重なっていない第1の基板の第1のエッジに隣接する第1の領域を第1の基板が有するように、かつ第1の基板と重なっていない第2の基板の第2のエッジに隣接する第2の領域を第2の基板が有するように配置されている。
【0074】
あるいは、上記のようにセルを満たす代わりに、切り替え可能な媒体は、基板のうちの1つへのワンドロップフィリング(one drop filling)と、それに続く2つの基板の組み立てとにより形成され得る。
【0075】
次に、第1の基板および第2の基板に、バスバーを接続するための準備が行われる。基板の準備は、前洗浄および予熱などの幾つかの任意選択的なステップを含み得る。
【0076】
任意選択的な前洗浄ステップでは、第1の領域内に位置する第1の透明電極の一部および第2の領域内に位置する第2の透明電極の一部の前洗浄が実施され得る。
【0077】
任意選択的な予熱ステップでは、第1の基板の少なくとも第1の領域の予熱および/または第2の基板の少なくとも第2の領域の予熱が実施される。好ましくは、各基板は、30℃~150℃の範囲、特に好ましくは40℃~100℃の範囲の温度に予熱される。予熱により、プロセスに導入されるエネルギーに基づいて、続くはんだ付けの接着レベルおよび接合強度が向上する。
【0078】
続く第4のステップでは、第1のバスバーが第1の透明電極に接続され、第2のバスバーが第2の透明電極に接続される。
【0079】
バスバーがはんだ付け線として構成されている場合、バスバーを形成するために、はんだ材料などの導電性材料が各基板に付けられる。導電性材料は、超音波はんだ付けにより付けられることが好ましい。
【0080】
あるいは、バスバーは、導電性ストリップとして構成されていてもよい。第1の導電性ストリップは、第1の透明電極に付けることができ、第2の導電性ストリップは、第2の透明電極に付けることができる。導電性ストリップは、例えば、各透明電極に付けられる金属部品の形態または金属の他の形態の金属化線であることが好ましい。導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、はんだ付けにより、溶接により、または導電性接着剤の使用により達成され得る。
【0081】
一実施形態では、導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、連続的なはんだ付け線、連続的な溶接線または導電性接着剤の連続線により達成される。
【0082】
別の実施形態では、導電性ストリップと各透明電極との間の電気的接続は、各導電性ストリップの長さに沿って分布した複数のはんだ付け点、溶接スポットまたは導電性接着剤点により達成される。
【0083】
あるいは、導電性ストリップは、印刷プロセスにより第1の基板および/または第2の基板に導電性材料を付けることで得られる印刷ストリップであり得る。
【0084】
続く第5のステップでは、第1の端子が第1のバスバーに接合され、第2の端子が第2のバスバーに接合される。この接合は、重なっていない領域内で基板上に位置していることが好ましい。しかしながら、代替実施形態では、バスバー、特に導電性ストリップは、基板を越えて延在し得て、バスバーへの端子の接合は、基板領域の外側で行われ得る。
【0085】
バスバーへの端子の接合は、はんだ付けにより、溶接により、導電性接着剤または導電性膜の使用により達成され得る。特に、ディスプレイデバイスの製造において電気接点を形成するための一般的な方法である異方性導電膜ボンディングを使用して、端子線としてのフラットケーブルを各バスバーに接合することができる。
【0086】
続く第6のステップでは、絶縁材料は、第1の領域内に位置する第1の透明電極の一部と第1のバスバーとが絶縁材料により封入されるように、好ましくは完全に封入されるように、第1の基板上に分配され、かつ/または第2の領域内に位置する第2の透明電極の一部と第2のバスバーとが絶縁材料により封入されるように、好ましくは完全に封入されるように、第2の基板上に分配される。
【0087】
絶縁材料の分配後に、絶縁材料が硬化される。
【0088】
任意選択的な続くステップでは、中間層を用いて、第1の基板および/または第2の基板の露出面にさらなるガラス板が積層され得る。
【0089】
積層について、中間層は、さらなるガラス板と切り替え可能な光学要素との間に配置されることが好ましい。熱および/または高圧の適用を伴うことが一般的な続く処理では、各板、中間層および切り替え可能な光学要素が接合される。オートクレーブ処理または真空バッグ処理などの適切な積層プロセスは、合わせ(安全)ガラスの技術分野において既知である。
【0090】
第1の基板および第2の基板は、第2の方法ステップおよび方法のステップ4~6で、同時にまたは順次に加工され得る。例えば、ステップ3でセルが形成された後に、ステップ4~6が、まず第1の基板上で実施され、次に第2の基板上で実施され得る。
【0091】
本発明のさらなる態様は、記載の切り替え可能な光学デバイスのうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの切り替え可能な光学デバイスにAC駆動信号を印加する少なくとも1つのコントローラとを備えるシステムを提供することである。好ましくは、少なくとも1つのコントローラは、本明細書に記載の駆動方法を実施するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】切り替え可能な光学デバイスの断面図である。
図2図1の断面図の拡大図である。
図3】第1の実施形態のバスバーを有する基板の上面図である。
図4】第2の実施形態のバスバーを有する基板の上面図である。
図5】第1の実施形態のエッジデリーションを有する基板の概略図である。
図6】第2の実施形態のエッジデリーションを有する基板の概略図である。
【0093】
図1は、第1の基板11および第2の基板12を有する切り替え可能な光学デバイス1を示す。切り替え可能な媒体10は、2つの基板11,12の間に挟まれており、図2を参照されたい。
【0094】
2つの基板11,12は、第1の基板11の第1の領域71が第2の基板12と重ならないように、かつ第2の領域72が第1の基板11と重ならないように配置されている。
【0095】
第1の基板11の第1のエッジ41に隣接して、第1のバスバー31が配置されている。第1のバスバー31は、第1の端子線61により電気的に接触されており、第1のバスバー31は、絶縁材料101で封入されている。
【0096】
第2の基板12の第2のエッジ42に隣接して、第2のバスバー32が配置されている。第2のバスバー32は、第2の端子線62により電気的に接触されており、第2のバスバー32は、絶縁材料101で封入されている。
【0097】
図2は、第2の基板12の第2のエッジ42に隣接する領域を含む、図1の断面図の左半分の拡大図を示す。この拡大図では、2つの基板11,12の間に挟まれた切り替え可能な材料10が見られる。
【0098】
切り替え可能材料10は、第1の基板11、第1の透明電極21、切り替え可能な材料10、第2の透明電極22および第2の基板12をこの順序で備えるセルの一部である。セルは、シール114により封止されている。図2に見られるように、第1の透明電極21は、シール114が第1の基板11と直接接触するように、エッジデリーションにより部分的に除去した。
【0099】
第2のバスバー32は、第2の領域72内で第2の基板12上に配置されている。第2のバスバー32は、導電性材料32により第2の電極22に電気的に接続された第2の導電性ストリップ52を備える。導電性材料32は、例えば、はんだ材料であり、超音波はんだ付けなどのはんだ付けプロセスで付けた。
【0100】
図2の拡大図に見られるように、第2の端子線62は、電線コア110および電気絶縁外装112により形成されている。図2では見えない位置で、電線コア110は、第2の導電性ストリップ52に電気的に接続されている。
【0101】
第2のバスバー32、および第2の領域72内に位置する第2の透明電極22の露出部分は、バスバー32を保護および封止する絶縁材料101により封入されている。
【0102】
さらに、図2は、第2の基板の第2のエッジ42のエッジ仕上げが、丸形のエッジまたは「C」型のエッジであることを示す。丸形のエッジは、エッジ仕上げ領域80内において、第2の基板12の平坦領域から突出している。エッジ仕上げ領域80により、絶縁材料101と第2の基板12との間の接触面積が有利に拡大され、それにより、絶縁材料101の接着性が改善される。
【0103】
図3は、第1の実施形態のバスバー31,32を有する基板11,12の上面図を示す。図3の上面図に見られるように、透明電極21,22は、エッジデリーション116により部分的に除去した。エッジデリーション116は、バスバー31,32に隣接するエッジ41,42を除いて、基板11,12のすべてのエッジで完全となっている。また、エッジデリーション116は、エッジ仕上げ領域80においても実施した。バスバー31,32に隣接するエッジ41,42には、エッジデリーション116はない。エッジデリーション116は左右対称である。
【0104】
図3の実施形態では、バスバー31,32は、連続的なはんだ付け線105の形態で透明電極21,22に付けられた導電性材料103である。端子線61,62は、導電性材料103に接合されている。
【0105】
図4は、第2の実施形態のバスバー31,32を有する基板11,12の上面図を示す。図4の上面図に見られるように、透明電極21,22は、エッジデリーション116により部分的に除去した。エッジデリーション116は、バスバー31,32に隣接するエッジ41,42を除いて、基板11,12のすべてのエッジで完全となっている。また、エッジデリーション116は、エッジ仕上げ領域80においても実施した。さらに、バスバー31,32に隣接するエッジ41,42には、部分的なエッジデリーション116がある。エッジデリーション116は左右対称ではない。
【0106】
図4の実施形態では、バスバー31,32は、はんだ付け点106により透明電極21,22に電気的に接続された金属部品の形態の導電性ストリップ51,52である。端子線61,62は、導電性ストリップ51,52に接合されている。
【0107】
図5は、第1の基板11、第2の基板12、および第1の実施形態のエッジデリーションを有する2つの基板11,12を配置したものの概略図を示す。各基板11,12のエッジデリーションは、バスバーに隣接する一方のエッジにおいて不完全となっている。エッジデリーションは左右対称ではない。
【0108】
図6は、第1の基板11、第2の基板12、および第1の実施形態のエッジデリーションを有する2つの基板11,12を配置したものの概略図を示す。各基板11,12のエッジデリーションは、バスバーに隣接する一方のエッジにおいて不完全となっている。エッジデリーションは左右対称である。
【0109】
好ましい実施形態では、切り替え可能な媒体、特に液晶媒体は、切り替え可能な光学デバイスの他の要素とともに、かつデバイスを駆動する方法に適切に適合しながら、特に信頼性の改善の点で、例えば、電圧保持率(VHR)と、光、熱、化学薬品または電界による不所望な応力に対する安定性の改善とに関して、全体的な好ましい性能に好ましく寄与するように選択される。
【0110】
以下の実施例に、特に有利にかつ好ましく使用できる液晶媒体を示す。
【0111】
本発明および特に以下の実施例において、メソゲン化合物の構造は、頭字語とも呼ばれる略語により示される。これらの頭字語において、化学式は、以下の表A~Cを使用して、以下のように略記される。すべての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n-1、C2m-1およびC2l-1はそれぞれ、n、mおよびl個のC原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、好ましくは1E-アルケニルを示す。表Aには、化合物のコア構造の環要素に使用される記号を列記し、一方、表Bには、連結基を示す。表Cには、左手側または右手側の末端基についての記号の意味を示す。頭字語は、任意の連結基を有する環要素についての記号、続く第1のハイフンおよび左手側末端基についての記号および第2のハイフンおよび右手側末端基についての記号から構成される。表Dには、化合物の例示的な構造を、それらのそれぞれの略語と共に示す。
【0112】
【表1-1】
【0113】
【表1-2】
【0114】
【表1-3】
【0115】
【表1-4】
【0116】
ここで、nおよびmはそれぞれ整数を表し、3つの点「...」は、本表の他の略語の代用語である。
【0117】
以下の表に、例示的な構造をそれらのそれぞれの略語と共に示す。これらは、略語の規則の意味を説明するために示されるものである。これらはさらに、好ましく使用できる化合物を表す。
【0118】
【表2-1】
【0119】
【表2-2】
【0120】
【表2-3】
【0121】
【表2-4】
【0122】
【表2-5】
【0123】
【表2-6】
【0124】
【表2-7】
【0125】
【表2-8】
【0126】
【表2-9】
【0127】
【表2-10】
【0128】
【表2-11】
【0129】
【表2-12】
【0130】
【表2-13】
【0131】
【表2-14】
【0132】
【表2-15】
【0133】
【表2-16】
【0134】
【表2-17】
【0135】
【表2-18】
【0136】
【表2-19】
【0137】
【表2-20】
【0138】
ここで、n、mおよびlは、好ましくは互いに独立して、1~9、より好ましくは1~7を表す。
【0139】
一実施形態において、本発明により使用されるスイッチング媒体、特に液晶媒体は、1つ以上の安定剤、1つ以上のキラルドーパントおよび/または1つ以上の二色性色素を含み得る。この点に関して、以下の表Eに、任意に媒体で使用することができる例示的で好ましい化合物を示す。
【0140】
表E
【表3-1】
【0141】
【表3-2】
【0142】
【表3-3】
【0143】
【表3-4】
【0144】
【表3-5】
【0145】
液晶媒体は、好ましくは、安定剤を0~10重量%、特に1ppm~5重量%、特に好ましくは1ppm~1重量%含む。
【0146】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、表Dの化合物の群から選択される7つ以上、好ましくは8つ以上の個々の化合物、表Dに示される式から選択される異なる式を有する好ましくは3つ以上、特に好ましくは4つ以上のものを含む。
【0147】
本明細書に記載されているすべてのパーセントデータおよび量比は、特に明記しない限り、重量パーセントである。
【0148】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、何ら本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。本開示を考慮すれば、当業者には、実施例およびその変形形態または他の均等物が明らかになるであろう。
【0149】
実施例
例において、
は、20℃での容量性閾値電圧[V]を表し、
は、20℃、589nmでの異常屈折率を表し、
は、20℃、589nmでの常屈折率を表し、
Δnは、20℃、589nmでの光学異方性を表し、
ε||は、20℃、1kHzでのダイレクタに平行な誘電率を表し、
εは、20℃、1kHzでのダイレクタに垂直な誘電率を表し、
Δεは、20℃、1kHzでの誘電率異方性を表し、
cl.p., T(N,I)は、澄明点[℃]を表し、
γは、磁場で回転法により求められた、20℃で測定された回転粘度[mPa・s]を表し、
は、20℃での「スプレイ」変形の弾性定数[pN]を表し、
は、20℃での「ツイスト」変形の弾性定数[pN]を表し、
は、20℃での「ベンド」変形の弾性定数[pN]を表す。
【0150】
本発明に関する「閾値電圧」という用語は、特に明記しない限り、容量性閾値(V)に関する。例においては、一般的に通常であるように、光学的閾値を10%の相対コントラスト(V10)に対して示す場合もある。
【0151】
参照例1
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-1を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0152】
【表4】
【0153】
99.97%の混合物B-1を0.03%の化合物ST-1と混合することにより、ホスト混合物H-1を製造する。このホスト混合物H-1に、表Eに示す0.17%のD-1、0.26%のD-2、0.09%のD-3、0.17%のD4および0.20%のD-5を加えることにより、混合物M-1を製造する。
【0154】
参照例2
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-2を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0155】
【表5】
【0156】
表Eに示す0.05%のS-811、0.03%のST-1、0.085%のD-3、0.16%のD-4および0.21%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.1を製造する。
【0157】
表Eに示す0.1%のST-2、0.1%のST-3、0.33%のD-3、0.58%のD-4および0.69%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.2を製造する。
【0158】
表Eに示す0.30%のST-2、0.25%のST-3、0.34%のD-3、0.72%のD-4および0.87%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.3を製造する。
【0159】
表Eに示す0.10%のD-3、0.17%のD-4および0.17%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.4を製造する。
【0160】
表Eに示す0.03%のST-1、1.0%のD-3、1.7%のD-4および0.185%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.5を製造する。
【0161】
表Eに示す0.03%のST-1、0.05%のS-811、0.13%のD-3、0.27%のD-4および0.34%のD-5を混合物H-2に加えることにより、混合物M-2.6を製造する。
【0162】
参照例3
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-3を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0163】
【表6】
【0164】
表Eに示す0.030%のST-1、0.86%のS-811、0.28%のD-3、0.51%のD-4および0.79%のD-5を混合物H-3に加えることにより、混合物M-3を製造する。
【0165】
参照例4
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-4を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0166】
【表7】
【0167】
表Eに示す0.054%のD-3、0.10%のD-4および0.11%のD-5を混合物H-4に加えることにより、混合物M-4を製造する。
【0168】
参照例5
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-5を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0169】
【表8】
【0170】
表Eに示す0.005%のD-3、0.007%のD-4および0.008%のD-5を混合物H-4に加えることにより、混合物M-5を製造する。
【0171】
参照例6
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-6を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0172】
【表9】
【0173】
表Eに示す0.11%のD-3、0.22%のD-4および0.24%のD-5を混合物H-4に加えることにより、混合物M-6を製造する。
【0174】
参照例7
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ホスト混合物H-7を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0175】
【表10】
【0176】
表Eに示す0.26%のD-3、0.40%のD4および0.74%のD-5をホスト混合物H-7に加えることにより、混合物M-7を製造する。
【0177】
参照例8
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-8を製造し、その一般的な物理特性に関して特性決定する。
【0178】
【表11】
【0179】
97.01%の混合物B-8、上記の表Eに示す0.42%のR-5011、1.25%の式RM-A
【化1】
の化合物、0.62%の式RM-B
【化2】
の化合物、0.62%の式RM-C
【化3】
の化合物および0.08%のIrgacure(登録商標)651(スイス国Cibaより入手可能)
【化4】
を混合することにより、コレステリック混合物C-8を製造する。
【0180】
得られた混合物C-8のピッチは、1.84μmである。方形波電圧(70V、60 Hz)の印加下にUV光(UVAおよびUVB、光強度3.5mW/cm)を照射することにより、切り替え可能なデバイスでこの混合物を重合させる。
【0181】
参照例9
以下の表に示す組成を有する液晶ベース混合物B-9を製造する。
【0182】
【表12】
【0183】
0.03%のST-1、および上記の表Eに示す0.45%のR-5011、および0.75%の式RM-D
【化5】
の化合物をベース混合物B-9に加えることにより、コレステリック混合物C-9を製造する。
【0184】
方形波電圧(70V、60 Hz)の印加下にUV光(UVAおよびUVB、光強度3.5mW/cm)を照射することにより、切り替え可能なデバイスでこの混合物を重合させる。
【0185】
参照例10
上記の参照例3に示す98.98%の混合物H-3、表Eに示す0.08%のST-1、0.16%のD-3、0.35%のD-4および0.43%のD-5を混合することにより、混合物M-10を製造する。
【0186】
実施例1~10
参照例1~10で製造した混合物をそれぞれ、本発明による切り替え可能な光学デバイスのセルに充填して使用する。
【符号の説明】
【0187】
1 切り替え可能な光学デバイス
10 切り替え可能な媒体
11 第1の基板
12 第2の基板
21 第1の透明電極
22 第2の透明電極
31 第1のバスバー
32 第2のバスバー
41 第1のエッジ
42 第2のエッジ
51 第1の導電性ストリップ
52 第2の導電性ストリップ
61 第1の端子線
62 第2の端子線
71 第1の領域
72 第2の領域
80 エッジ仕上げ領域
101 絶縁材料
103 導電性材料
105 連続的なはんだ付け線
106 はんだ付け点
110 電線コア
112 電線外装
114 シール
116 エッジデリーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6